例えば、ラインハウゼンプラズマ社の「プラズマダスト」という低温プラズマ溶射法が、基板表面を被覆する方法として知られている。この方法では、粉末が、低温プラズマ噴流に供給され、このプラズマ噴流中で一部が溶融されて化学的に活性化され、このプラズマ噴流によって被覆対象の基板表面に塗布される。
この技術では、マスクなしの状態で塗布層のライン幅を約1ミリメートル以上にするしかできない。その結果、このラインのエッジは、あまり明瞭には成形されず、その原因は、ガウス分布に類似した、該プラズマ噴流の不均一な密度輪郭にある。マスクを使用すると、手間がかかるのでコスト高になる。特に、被覆対象の基板の数が少なくても、塗布層の望ましい形状の各々に対応するマスクを提供する必要がある。
DE 10 2008 001 580 A1により、層の材料をナノ粒子を分散する形で基板表面に塗布する方法が知られている。この方法で塗布されたナノ粒子は、CO2レーザを用いて熱的に後処理することでその層の所望の導電率と透明度が得られる。まだ熱的に後処理されていない層領域は基板表面から容易に除去することができるが、熱的に後処理された層領域は非常によく付着する。(参照:Zieris R他、2003、レーザ支援型大気プラズマによる付着被膜の特性(Characterization of coatings deposited by laser-assisted atmospheric plasma)、オハイオ州マテリアルズパーク、ASMインターナショナル、頁567〜572、ISBN:0−87170−785−3)。
このような熱的な後処理には高レーザ出力が必要となるので、熱に敏感な基板の破壊につながってしまう。
RU 2010 120 868により、粉末が詰まったプラズマビームにプラズマノズル内のレーザ光を当てて粉末をもっと溶かす方法が知られている。粉末は、レーザ照射後にノズルを通って流れるので、レーザ照射は、より微細な構造体の形成に寄与しない。
DE 10 2007 011 235 A1により、レーザビームとプラズマ噴流を基板表面で同時に動作させる方法が知られている。この方法では、レーザビームとプラズマ噴流の両方が、基板表面をきれいにするように作用する。プラズマ噴流による、特に、レーザビームと連携した状態での、表面の被膜には言及していない。
EP 0 903 423 A2および類似のDE 197 40 205 B4には、プラズマ溶射によって層を塗布する方法が記載されている。それによれば、少なくとも一つの連続レーザビームを、霧状噴流の中を通って、基板表面、または、既にそこに塗布された層に、所定の相互作用時間、直接に当てて、部分的に溶かす。この方法は、プラズマトーチを用いた、ほぼ1500〜2000℃程度の融点を有する材料の処理を対象とする高温法である。レーザビームは、霧状噴流の入射領域内で基板表面に当たる。
DE 199 41 563 A1およびDE 199 41 564 A1には、各々、レーザと共にプラズマトーチを用いたプラズマ被膜方法が記載されている。被膜される表面はレーザビームによって局所的に溶かされ、プラズマビームが、レーザビームの後に続いてプラズマに含まれた被膜材料を溶かす。別のやり方として、レーザビームで融かすことが、被膜材をプラズマビームで塗布した後に行なわれてもよい。
レーザを使用することとプラズマ溶射方法との組み合わせに関する概要は、S.E.ニールセンによる「表面改善のためにレーザ技術とプラズマ溶射技術を組み合わせたレーザー溶融」(Laser fusing - combining laser and plasma spraying techniques for surface improvements)に記載されている。
本発明は、構造体を基板表面に容易にかつコスト効率よく作成することができる方法を提供することを目的とする。この方法によれば、典型的な寸法が1ミリメートルを大きく下回る構造体を作成することも当然可能となる。
この目的は、請求項1に係る方法によって実現される。
また、本発明は、構造体を基板表面に容易にかつコスト効率よく作成することができる装置を提供することを目的とする。この装置によれば、典型的な寸法が1ミリメートルを大きく下回る構造体を作成することも当然可能となる。
この目的は、請求項9に係る装置によって実現される。
プラズマ内には、粉末粒子が部分的または全体的に溶けた状態で、したがって後者の場合には溶滴として、存在する。このような粉末粒子と基板表面とが十分に付着するためには、粉末粒子の材料が表面に拡散することが必要であり、粉末粒子の材料と基板表面との間の接触面積が増加すれば、粉末粒子の基板上での付着度が改善する。このように基板表面で粉末粒子材料を拡散させることができるためには、粉末粒子の材料が表面に拡散することができるように、粉末粒子が、表面に当たった後に、部分的または全体的に溶けた状態で、十分な時間、留まる必要がある。
基板表面が冷たすぎる場合、少なくとも、基板と溶けた粉末材料の熱伝導率、粉末粒子と基板との間の温度差、基板と溶けた粉末材料との間の熱伝達、粉末の溶融温度および粉末粒子の熱容量が関与して、溶けた材料が速く固化し過ぎ、この物質の拡散が十分にはできなくなる。
本発明の基本的な考え方は、溶けた粉末粒子の材料が固化するのが遅れるように、少なくとも一つのレーザビームによって、基板表面または基板表面に塗布された粉末に有向熱注入を発生させることである。有向熱注入とは、ここでは、構造体を作成するために被膜される、場合によっては空間的に隙間なく限定された、基板表面の規定領域だけにレーザビームが当てられ、そして、被膜する前に規定領域から注入熱が大量に失われて熱注入がそれ以上は所望の効果を出すことができなくなるので、基板のある位置に不必要に長くレーザが作用することによって基板に損傷を与えることがないように、レーザ照射も時間的にみて被膜する直近に行なわれることを意味している。
表面を被膜することによって構造体を作成する基板表面の構造体に材料を塗布するのは、材料が粉末として添加されたプラズマ噴流によって行なわれる。このプラズマ噴流は、低温プラズマ噴流である。プラズマ噴流のプラズマに粉末を供給することは、プラズマ溶射法として当業者に公知のいずれかの方法で行なわれる。粉末は、プラズマ噴流を形成する前にプラズマに供給することもでき、すなわち、プラズマが生成されるガスに粉末を供給することも考えられる。基板表面に粉末を塗布するために、低温プラズマ噴流と基板は、構造体が作成される基板表面の少なくとも規定領域に粉末が当たるように、互いに相対的に移動される。
構造体が作成される基板表面の被膜すべき規定領域、すなわち、規定領域内への有向熱注入を実現するためには、前述したように、基板上に向けられた少なくとも一つのレーザビームが使用される。これによって基板上に少なくとも一つのレーザビームのレーザ入射領域ができるが、この領域では、基板に既に粉末が当たった状態であり、この場合、レーザビームは、主として基板上の粉末に当たる。低温プラズマ噴流は、基板上のプラズマ入射領域に作用する。任意の時点において、基板上のレーザ入射領域とは、この時にレーザ照射が当てられた基板の、または、基板上に塗布された粉末の領域のことである。ある時点でレーザ光が当たっていない基板上の、または基板上に塗布された粉末の位置は、レーザ入射領域に含まれない。類似の定義は、プラズマ入射領域にもあてはまる。該少なくとも1つのレーザビームは、レーザ入射領域とプラズマの発生領域との規定相対位置が決まるように、基板上に向けられる。レーザ入射領域は、常に被覆すべき規定領域内に位置し、それを端から端に移動する。レーザ入射領域内の熱注入量は、レーザが基板表面を端から端に移動する、レーザビームの出力や速度などによって影響される。
規定領域の外側、すなわち、レーザによる熱注入が発生しない場所では、上記の理由によって、基板表面と、プラズマ噴流によってそこに塗布された粉末粒子とが十分に付着することはできないので、規定領域の外側にあるこれらの粉末粒子は、表面から容易に除去することができる。このようにして、典型的な小さいサイズの規模として50マイクロメートルまでの構造体を、マスクを使用しなくても作成することができる。典型的なサイズの規模の例としては、線として塗布された被膜の幅が挙げられる。規定領域内のみ十分に付着させることによって、これらの線は、端部が今まで以上に明確な形状となり、その結果、ガウス分布と同様の線輪郭とは対照的に、上記したプラズマダスト法によって得られる矩形断面を有している。
方法に関する一つの実施形態では、レーザ入射領域とプラズマの発生領域との規定相対位置は、レーザ入射領域が、プラズマ入射領域の外側にあってまだ粉末に当たっていないようになっている。この実施形態では、粉末粒子は、部分的にまたは完全に溶けた状態で基板表面に当たる。熱注入は、レーザビームで表面の被膜すべき規定領域内で行なわれ、規定領域内にある基板の温度上昇を引き起こすので、規定範囲内において粉末粒子と基板との間の温度差は低減される。したがって、粉末粒子から基板への熱流出が低減され、粉末粒子が溶けた材料の固化は、規定領域の外側に塗布された粉末粒子と比較して遅くなる。この実施形態での該方法に明らかに求められるのは、基板が、必要な熱注入を基板に対して行なうのに十分な程度にレーザ光を吸収するということである。
この実施形態をさらに発展させたものでは、該少なくとも一つのレーザビームは、低温プラズマ噴流を横切らないように向けられている。レーザ光に対する粉末粒子の吸収特性は、この方法の開発では重要ではない。
先に論じた実施形態をさらに発展させた別のものでは、該少なくとも一つのレーザビームは、低温プラズマ噴流を横切るように向けられている。したがって、該方法をこのように発展させたものでは、レーザ光を通過する、プラズマ噴流の粉末粒子がレーザ光を吸収することができる限り、これらの粉末粒子に追加の熱注入が発生する。粉末粒子に追加の熱注入を行なうと、これらの粉末粒子が溶けた材料が、基板表面の規定領域に当たった後に固化するのを遅らせることに寄与する。
さらなる実施形態では、レーザ入射領域がプラズマ入射領域と重なる。レーザ入射領域は、完全にまたは部分的にプラズマ入射領域内に位置してもよい。したがって、この実施形態では、レーザ放射の少なくとも一部は、既に基板表面に塗布された、レーザ入射領域内の粉末に当たる。この実施形態の場合は粉末粒子がレーザ光を吸収することが必要であるが、該方法は、基板がレーザ光を直接吸収することによって基板表面の規定領域に十分な熱注入を行なうことは不可能であるぐらい、基板自体が使用レーザ光を通過させる場合にも適用することができる。レーザ入射領域内の粉末は、レーザ放射を吸収する。このようにして生じる粉末粒子への熱注入は、粉末粒子から基板への熱流出と相殺される。したがって、この実施形態においても、粉末粒子が溶けた材料の固化は、規定領域の外側に塗布される粉末粒子と比較して遅くなる。
レーザ入射領域とプラズマ入射領域の相対位置は、レーザ入射領域が一部はプラズマ入射領域の内側に一部はその外側に位置し、さらにプラズマ入射領域の外側にあるレーザ入射領域の部分がまだ粉末に当たっていない場合、前述した実施形態の効果の組み合わせと見なすことができる効果を得ることができる。一方では、粉末粒子と被膜すべき規定領域との温度差は基板自体へのレーザ光の効果によって低減され、他方では、これらの粉末粒子から基板への熱流出はレーザビームの一部が既に基板表面に塗布されている粉末粒子に当たることによって相殺される。
少なくともニつのレーザビームを使用し、そのうち少なくとも一つは完全にプラズマ入射領域の外側に位置するレーザ入射領域の一部を形成し、そのうち上記とは別の少なくとも一つは完全にプラズマ入射領域の内側に位置するレーザ入射領域の一部を形成することが考えられる。したがって、この場合には、レーザ入射領域がつながっていない。
この方法の一つの実施形態では、レーザ入射領域の直径は、プラズマ入射領域の直径より小さい。レーザ放射は、プラズマ噴流を用いて可能となる場合よりも小さい直径の領域に焦点を合わせることができるので、該方法のこの実施形態によれば、標準的な大きさの規模が、マスクなしにプラズマ噴流によって生成することができる大きさの規模や幅を大幅に下回る構造体、例えば、幅を有する線、を生成することができる。1ミリメートルを下回る線幅はマスクなしにプラズマ噴流のみではほとんど不可能であるのに対し、該方法のこの実施形態によれば、線幅を50マイクロメートルにまで小さくして作成することができる。
上述のように、レーザビームは、プラズマ噴流よりも小径の領域に焦点を合わせることができる。したがって、プラズマ入射領域の直径よりも小さい幅を有する線など、それに応じて小さい寸法を有する構造体を作成する際、まず、被膜すべき規定領域の外側に、したがって、レーザビームとプラズマ噴流とによって基板に作成される構造体の外側にある基板領域にも、粉末がプラズマ噴流によって塗布される。基板上に粉末粒子を付着させるというこの事前説明から、構造体の外に堆積した粒子は、せいぜい弱く基板に付着することになる。このような粒子は、基板表面から容易に除去することができ、例えば、基板上に作成された構造体のみが残るように吹き飛ばすことができる。ときには、被膜すべき規定領域の外側に塗布されてすぐに固化する粒子があるが、その前にプラズマ噴流自体のガス流によって一掃される。
この方法は、平面基板に限定されるものではなく、任意に設計された基板に適用することができる。
少なくとも一つの構造体を基板の表面に作成するための、本発明に係る装置は、低温プラズマ噴流を形成するためのノズルを有する加工ヘッドを提示している。低温プラズマを発生させるためには、既知のプラズマ発生器を使用することができる。本発明に係る装置は、さらに、構造体を作成する基となる粉末を、プラズマ噴流自体に、または、これからプラズマ噴流を発生させる基となるプラズマに、または、プラズマを生成する基となるガスに供給することができる粉末供給器を備える。本発明によれば、少なくとも一つのレーザ発光器が、加工ヘッドに割り当てられる。この割り当てによって、レーザ発光器からのレーザビームを、基板上のレーザビームのレーザ入射領域と基板上の低温プラズマ噴流のプラズマ入射領域との規定相対位置を実現できるように基板に向けることができる。例えば、レーザ発光器は、レーザ入射領域とプラズマ入射領域との規定相対位置が決まる、プラズマ噴流の中心軸に対する規定角度でレーザビームが発光されるように、加工ヘッドに取り付けられる。
一つの実施形態では、レーザ発光器は、加工ヘッドに取り付けられたレーザである。レーザは、例えば、半導体レーザである。
あるいは、少なくとも一つのレーザビーム用のレーザ光は、少なくとも一つの光ファイバを介して加工ヘッドにガイドし、そこで該少なくとも一つの光ファイバからデカップリングすることができる。ここで、レーザ発光器は、加工ヘッドに装着された、光ファイバの端部であって、レーザ光を光ファイバからデカップリングするデカップリング光学系によって補完された開発成果である。
装置に関するこれらの実施形態は、プラズマ噴流と少なくとも一つのレーザビームとの幾何学的関係が、レーザ入射領域とプラズマ入射領域との規定相対位置も容易に設定可能となるように、必要に応じてデカップリング光学系を包み込んで、レーザまたは光ファイバの端部をそれぞれ加工ヘッドに取り付けることによって、設定可能になるという利点を有している。
レーザ発光器も同様に、加工ヘッドに調整可能に取り付けることができる。この調整作業は、装置のユーザまたは制御システムによって生成される制御信号の結果として、オペレータによって、またはアクチュエータによって行なうことができ、これも同様に、基板に構造体を作成する間に行なうことができる。
別の実施形態では、少なくとも一つの可動反射器が、基板の端から端にレーザビームをガイドするために設けられている。この少なくとも一つの可動反射器は、レーザ入射領域が基板上で被覆すべき規定領域内の所望経路を描くように制御することができる。このような実施形態では、プラズマ噴流と少なくとも一つのレーザビームとの幾何学的関係は必ずしも固定されている必要はなく、この幾何学的関係は、該少なくとも一つの反射器を制御することによって変更可能である。少なくとも一つの制御可能なレーザ光用可動反射器を、加工ヘッド自体に取り付けることも考えられる。
プラズマ噴流と該少なくとも一つのレーザビームとの幾何学的関係は、例えば、該少なくとも一つのレーザビームとプラズマ噴流との間の角度として、より一般的には、基板表面のプラズマ入射領域と基板表面のレーザ入射領域との間の相対位置も決定する、プラズマ噴流と該少なくとも一つのレーザビームとの間の相対経路として理解することができる。この相対位置は、該方法の実施形態や、粉末および基板など、例えば基板の材料や形状あるいは他のパラメータ、に応じて合わせることができる。
該装置は、さらに、基板と加工ヘッドとの間の相対運動を発生させることができる手段を備えることができる。したがって、ロボットアームを設けて加工ヘッドを基板に対して移動させるか、あるいは、ガントリーロボットを使用することなどができる。同様に、基板を可動ステージ上に配置したり、ロボットが基板をプラズマ噴流に対して移動したりすることもできる。
特に、本発明に係る装置は、本発明に係る方法を実行するのに適している。
図1は、本発明に係る、構造体2を基板100上に作成する方法の第一実施形態を示している。粉末20は、低温プラズマ噴流10に供給され、プラズマ噴流によって基板100の表面1に堆積される。粉末20は、ここでは概略的にのみ示した粉末供給器21によってプラズマ噴流10に供給される。プラズマ噴流10は、ここでは示されていないプラズマ発生器に接続された加工ヘッド11から出る。ここでレーザ31によって発生されたレーザビーム30は、基板の表面1に向けられ、まだプラズマ噴流10によって粉末20が当たっていない領域において、レーザ入射領域35(図2参照)が規定される。加工ヘッド11、レーザ31、および粉末供給部21の配置は、基板100の表面1に対して矢印50の方向にガイドされる。こうすることによって、プラズマ噴流10およびレーザビーム30も、基板100の表面1に対して矢印50の方向にガイドされる。
この図および次の図において、粉末20は、加工ヘッド11の外側でプラズマ噴流10に供給される。しかし、これは本発明を限定するものではない。粉末20がプラズマに供給された後に、低温プラズマ溶射業者に公知の任意の方法でプラズマ噴流10を形成することができる。同様に、レーザビーム30がレーザ31によって直接に基板100上に向けられることと、レーザ31が表面1に対して移動されることとは、本発明を限定するものではない。レーザビーム30が基板100上に当たることと、レーザビーム30が表面1に対して移動することとは、レーザビーム30がどこで発生され最終的にどのように基板100に向けられるのかとは無関係に、該方法に関連している。
図2は、基板100の表面1の平面図を示していて、この平面図は、図1で示した、本方法の実施形態に対応している。レーザ入射領域35、すなわち、レーザビーム30(図1参照)が基板100上に当たる領域、が示され、レーザ入射領域35の図示した円形形状は、本発明を限定するものではない。被膜すべき規定領域37の一部も示されている。レーザ入射領域35は、矢印50の方向に規定領域37を端から端にガイドされ、基板100に熱注入を行なう。したがって、レーザ入射領域35は、矢印50の方向に動かされるときに、まだ粉末20(図1参照)と当たっていない予熱領域36を基板100の表面1に残す。図1に示したプラズマ噴流10は、ここでは円形状であるとして示されている、基板100の表面1のプラズマ入射領域15に当たるが、この円形形状は、本発明を限定するものではない。レーザ入射領域35とプラズマ入射領域15は、互いに対して規定相対位置Rを有している。まだ粉末20と当たっていない予熱領域36は、プラズマ入射領域15とレーザ入射領域35との間に位置している。プラズマ噴流10、したがって、プラズマ入射領域15もまた矢印50の方向に表面1を端から端に動かされた場合、粉末20は、表面1のプラズマ入射領域15のトレースSに沿って堆積されるが、プラズマ噴流10はレーザビーム30の後に続き、その結果、プラズマ入射領域15がレーザ入射領域35の後に続くので、この移動でプラズマ入射領域15もそれぞれの予熱領域36を全体に亘って掃引する。上記の説明によれば、とりわけ、プラズマ噴流10内の粉末粒子と予熱領域36との温度差が領域36を予熱することによって減少するので、予熱領域36内に堆積した粉末20と基板100の表面1との付着性を良くすることができる。こうして、ここでは幅3の線状をした構造体2が、基板100の表面1に最終的に作成される。
プラズマ噴流10内の粉末粒子と対応する領域16との温度差のこのような減少は、予熱領域36の外側の領域16では発生しないので、粉末粒子の基板100への付着性が領域16で良くなることはない。堆積した粉末20は、これらの領域16から公知の方法によって容易に除去することができる。
冒頭で述べたように、本発明の方法によれば、低温プラズマ噴流だけで、すなわち、レーザビームを使用しないで実現可能な線幅よりもはるかに小さい線幅3が可能となる。この理由は、レーザビーム30をそれに対応した、ほぼ所望の線幅3に相当する、小径に集束させることは、プラズマ噴流10の同様の集束動作よりも容易であるからである。したがって、図2において、プラズマ入射領域15の直径DPは、レーザ入射領域35の直径DLよりも大きく示してある。
図3は、かなりの程度まで図1と同様である。しかし、図3に示した実施形態では、レーザビーム30は、プラズマ噴流10を通り抜けて基板100の表面1に向けられている。レーザビーム30は、プラズマ噴流10の外側で基板100の表面1に当たる。平面図では、図2のような配置になる。図3に示す方法の実施形態では、レーザビーム30によって規定される基板100のレーザ入射領域35は、移動方向50に対してプラズマ入射領域15の前方に位置しているので、本実施形態においても、プラズマ噴流10はレーザ入射領域35の後追いとなる。基板100の領域への熱注入に加えて、ここでは、レーザビーム30も、プラズマ噴流10内のレーザビーム30を横切る粉末粒子を加熱することができる。このように粉末粒子をさらに加熱することで、上述したように、粉末粒子が基板100に当たった後に固化するのを遅らせることにつながる。
図4は、図1に示したものと同様の、本発明に係る方法の実施形態をさらに示している。図示したほとんどの要素は、図1との関連で既に議論されている。分かりやすくするために、プラズマ噴流10とレーザビーム30は、図1に比べて大きく示してある。また、プラズマ噴流10内の粉末20の密度輪郭22、および密度輪郭22によって決定されるプラズマ入射領域15が、図4に示してある。この実施形態では、レーザビーム30は、すでに粉末20が当たった基板100の表面1の領域に向けられている。より正確には、レーザービーム30は、プラズマ噴流10が表面1に対して方向50に移動することを考慮して、密度輪郭22の先端傾斜面22Fに当たるように、プラズマ噴流10に向けられる。したがって、既に基板100でこの先端傾斜面22Fに堆積された薄い粉末層2dは、レーザー放射線と当たる。こうすることで、薄い粉末層2dにある粉末粒子に熱注入が行なわれる。この熱注入は、これらの粉末粒子から基板100への熱流出を妨げ、上記のように、粉末粒子が溶けた材料の固化を遅らせるので、十分に付着する構造体2が最終的に基板100の表面1に作成される。
図5は、図4に示した、方法の実施形態に対応する、基板100の表面1の平面図を示している。図示したすべての要素は、図1に示した、方法の実施形態の対応する描写である図2ですでに説明されている。図2とは対照的に、図5では、レーザ入射領域35は、プラズマ入射領域15内に位置している。レーザ入射領域35内の熱注入は、図4に示したように、既に表面1に堆積された粉末に行なわれるので、図2のような予熱領域36はここでは存在しない。図4および図5に示した実施形態に必要なことは、粉末20がレーザ光を十分に吸収することができることである。一方、この実施形態では、基板100がレーザ光を通過させてもよい。
図6は、本発明に係る装置300の実施形態を示している。加工ヘッド11は、プラズマからプラズマ噴流10を形成するためのノズル12を有している。プラズマを発生させるためには、当業者に公知のプラズマ発生器を使用することができる。レーザ31は、加工ヘッド11に取り付けられている。レーザ31は、特に、上述した、プラズマ入射領域15とレーザ入射領域35との相対位置Rを設定することができるように、アクチュエータ32によって調整可能である。レーザは、半導体レーザであってもよい。
図7は、本発明に係る装置300の実施形態をさらに示している。図示した要素のうちのいくつかは、図6との関連ですでに説明されている。光ファイバ33の端部33eは、加工ヘッド11の保持部33hに取り付けられている。保持部33hは、特に、上述した、プラズマ入射領域15とレーザ入射領域35との相対位置Rを設定することができるように、アクチュエータ32によって調整可能である。また、この実施形態は、光ファイバ33からのレーザ光をデカップリングするためのデカップリング光学系34を備えている。この実施形態では、デカップリング光学系34が加工ヘッド11に取り付けられている。レーザ光は、当業者に公知の方法で、レーザ31によって光ファイバ33に供給される。レーザは、半導体レーザであってもよい。