JPH11350107A - 高温耐摩耗性皮膜の形成方法 - Google Patents

高温耐摩耗性皮膜の形成方法

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JPH11350107A
JPH11350107A JP10173959A JP17395998A JPH11350107A JP H11350107 A JPH11350107 A JP H11350107A JP 10173959 A JP10173959 A JP 10173959A JP 17395998 A JP17395998 A JP 17395998A JP H11350107 A JPH11350107 A JP H11350107A
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plasma
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Hidenori Shirasawa
秀則 白沢
Nobu Shu
展 周
Noritaka Eguchi
法孝 江口
Akira Omori
明 大森
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 TiC系サーメット材料のプラズマ溶射に
よる高温耐摩耗性皮膜の形成において、溶融粒子相互の
融合性を高めて皮膜の硬質粒子と金属マトリックスとの
結合を強化するとともに皮膜と基材界面との結合をより
密にすることによって、皮膜自体および基材に対する密
着強度に優れた高温耐摩耗性皮膜を形成し得る手段を提
供する。 【解決手段】 基材Wの表面にTiC系硬質粒子を含有
するサーメット材料をプラズマ溶射Pによって吹き付け
て高温耐摩耗性皮膜Mを形成するに当たり、上記の吹き
付けと同時に基材W表面の吹き付け位置Zにレーザビー
ムLを照射する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種産業分野で使
用される様々な部材の高温耐摩耗性を必要とする表面
に、プラズマ溶射を利用して緻密な高温耐摩耗性皮膜を
形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術及びその課題】一般に、プラズマ溶射による
皮膜形成技術は、放電アークにアルゴンなどのキャリア
ガスを供給して高温のプラズマ噴流を発生させ、この噴
流中に硬質粒子含有金属の粉末を供給することにより、
当該材料を溶融あるいは半溶融状態として基材表面に吹
き付け、堆積させて皮膜を形成するものである。
【0003】このようなプラズマ溶射方法は、他の溶射
方法に比べ、高融点材料の溶射が可能であって材料選択
の自由度が大きい上に、密着強度および密度の高い皮膜
が形成できるとともに熱源に起因した溶射材料の汚染が
なく、また高出力化によって時間当たりの溶射量を多く
して皮膜形成能率を高め得る利点がある。従って、この
プラズマ溶射による皮膜形成技術は、現在、製鋼分野で
のマッドガンノズル、連続焼鈍炉用ハースロール、溶融
亜鉛めっきラインの浴中ロール、製紙分野でのヤンキー
ドライヤロール、ワインダドラムドローロール、発電分
野や航空・宇宙分野におけるタービン翼、圧縮機、燃焼
器、一般産業分野での各種ガイドロール、スリーブやカ
ラーの如き摺動部品など多様な器材の表面に耐摩耗性、
耐熱性、耐腐食性などを付与するのに利用されている。
【0004】しかしながら、従来のプラズマ溶射による
皮膜は、他の溶射方法によるものと比べれば皮膜の密着
性は優れているが、サーメット、セラミックスなどの高
融点材料の溶射では溶滴粒子間の結合が必ずしも十分で
なく、皮膜品質の一層の向上の妨げとなっている。
【0005】特に、比較的高温での耐摩耗性に優れたT
iC系硬質粒子を含有するサーメット材料は、絞り成
形、バーリング成形などの板金加工工具、冷間鍛造工
具、切削加工治具などの耐摩耗性向上、焼き付き防止効
果が大きく、これらの表面加工用に多用されているが、
この種材料のプラズマ溶射では硬質粒子が3000℃以
上の融点を示すことから比較的溶融し難く、また溶融領
域では高温下で分解し易い性質をもっており、従来の技
術では健全皮膜の形成が難しい状況にある。
【0006】すなわち、硬質粒子が比較的大きく、また
プラズマエネルギーが比較的小さい場合には、TiC粒
子の溶融が不十分となって粒子間及び皮膜・基材界面の
結合が十分図れないため、皮膜からの硬質粒子の脱落や
皮膜全体の摩耗を容易にする。また、エネルギーが過度
になると、TiCが溶融・蒸発するほか、基材成分の溶
射皮膜への拡散によって皮膜の軟化、耐熱性劣化などを
もたらし、皮膜の品質が著しく劣化する。皮膜の耐摩耗
性、耐熱性などは皮膜中のTiC系硬質粒子が多いほど
向上するが、皮膜の成膜はこれにつれてより困難とな
る。
【0007】対応策の一つとして個々のTiC粒子の周
りをNiめっきした粉末材料を用いる方法も研究されて
いるが、製造コストの問題もあって広くは使われていな
い。また、プラズマ溶射皮膜の組織構造を改善する方法
として、皮膜表面部に金属や樹脂などを化学的、物理的
操作によって充填する方法や、溶射皮膜にレーザビーム
を照射して皮膜全体を再溶融させることによって皮膜の
緻密化や結合強化を図る方法が提案されているが、前者
の充填方法では、煩雑な操作を必要としてコスト上昇が
大きい弊害があるほか、現状ではTiC系サーメット皮
膜が多用される500℃以上の高温に耐え得る樹脂は開
発されていない。また、後者のレーザ照射の方法では、
皮膜全体の緻密化や結合の強化が図れる反面、皮膜材料
の多くは基材よりも融点が高いことから、皮膜の再溶融
は基材の著しい温度上昇あるいは皮膜・基材界面部の比
較的広い領域を溶融させることになり、基材側化学元素
の皮膜内部への拡散によって硬さ、耐摩耗性、耐腐食性
などの皮膜物性の劣化を招く欠点がある。
【0008】以上のように、従来のプラズマ溶射による
TiC系サーメット皮膜の形成方法では、健全皮膜の安
定形成がなされない問題があった。
【0009】本発明は、上述のような事情に鑑みて、T
iC系サーメット材料のプラズマ溶射による高温耐摩耗
性皮膜の形成において、溶融粒子相互の融合性を高めて
皮膜の硬質粒子と金属マトリックスとの結合を強化する
とともに皮膜と基材界面との結合をより密にすることに
よって、皮膜自体および基材に対する密着強度に優れた
高温耐摩耗性皮膜を形成し得る手段を提供することを目
的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために、まず従来のプラズマ溶射法による皮
膜の問題点について検討した結果、溶射された溶滴粒子
が飛散中の冷却や酸化によって固化膜を生じるため、溶
滴粒子が相互に融合せずに結合の弱い積層構造となり、
しかもそのような溶滴粒子が低温の基材表面に着床する
際にも冷却がさらに進行するため、皮膜の密着性が不十
分になり易いことが判明した。さらに、TiC系サーメ
ット材料においては、Ni、Crなどのマトリックス金
属とTiC系硬質粒子との融点が大きく異なるために、
マトリックス金属が十分溶融しても硬質粒子はまったく
溶融しないか、周辺部がわずかに軟化する場合も考えら
れる。このような場合には、溶射時の基材表面での成膜
過程で未溶融の硬質粒子が溶融凝固(成膜)過程にある
マトリックス金属皮膜をブラスト研削する方向に寄与す
ることになって、成膜効率を大きく低下させるほか、皮
膜の密着性を阻害する結果になる。TiCはNiなどの
金属とはぬれ性が比較的よい関係にあるので、双方の溶
融条件が適正であれば、相互の結合が強固で基材との密
着性が良好な健全皮膜の形成は可能と考えられる。
【0011】そこで、本発明者らは、プラズマ溶射され
た溶滴粒子間、溶滴粒子と基材表面との界面、マトリッ
クス金属と硬質粒子間のそれぞれの結合を強化する方法
を鋭意検討した結果、プラズマ溶射に際して溶射領域に
レーザビームを同時に照射する方法、すなわちプラズマ
・レーザ複合溶射法が有効であることを見出し、本発明
をなすに至った。
【0012】請求項1に係る発明の高温耐摩耗性皮膜の
形成方法は、基材表面にTiC系硬質粒子を含有するサ
ーメット材料をプラズマ溶射により吹き付けて高温耐摩
耗性皮膜を形成するに当たり、この吹き付けと同時に基
材表面の吹き付け位置にレーザビームを照射することを
特徴とするものである。
【0013】請求項2に係る発明は、請求項1に記載の
高温耐摩耗性皮膜の形成方法において、皮膜中のTiC
系析出物量が体積率25%以上であることを特徴とする
ものである。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る高温耐摩耗
性皮膜の形成方法を示す模式図である。この図におい
て、Wはステンレス鋼板などよりなる基材であり、この
基材Wを図示矢印Aのように移動させつつ、その表面に
TiC系硬質粒子含有サーメットをプラズマ溶射Pによ
り連続的に溶射することによって、TiC系硬質粒子含
有サーメットからなる高温耐摩耗性皮膜Mが形成されて
ゆくが、この溶射領域ZにはレーザビームLを同時照射
している。この高温耐摩耗性皮膜Mは、上記のプラズマ
・レーザ複合溶射を複数回にわたって重ねて行うことに
より、所要の膜厚に設定する。なお、プラズマ溶射Pと
レーザビームLは、溶射領域Zで重ねるためにそれぞれ
の軸線を垂直線Sに対して角度α,βだけ傾けている
が、これらの角度α,βは任意に設定できる。
【0015】上記の方法によれば、溶射されるTiC系
硬質粒子含有サーメット材料の溶滴粒子は、飛散中の冷
却や酸化(大気中溶射の場合)によって表面部に固化膜
を生じるが、この固化膜が溶射領域Zに照射されるレー
ザビームLによって基材Wへの着床直前に瞬時に融解す
るため、着床した溶滴粒子は相互に溶融して連続した溶
融層を形成し、この溶融層中に硬質粒子が均一に分散し
た状態になるとともに、気体の巻き込みも少なくなり、
溶融粒子と基材表面あるいは先に形成されている皮膜の
表面との結合が強固になる。さらに、形成された皮膜M
はTiC系の硬質粒子相(微細析出物)が均一に分散し
ていることからすぐれた高温耐摩耗性を発揮するものと
なる。しかして、レーザビームLは上記の溶滴粒子の固
化膜を溶解できる程度の低いエネルギー密度に設定すれ
ばよく、これによって基材Wの表面や先に形成されてい
る皮膜Mの再溶融を回避できるから、表面性状などの皮
膜品質も良好なものとなし得る。
【0016】本発明において溶射材料として使用するT
iC系硬質粒子含有サーメット材料の種類は、特に制約
はなく、Ni、Crなどの合金とのサーメット材料でも
よく、それらの元素にSi、Bなどを添加した自溶性合
金とのサーメット材料でもよい。
【0017】本発明においてはプラズマ溶射を大気中で
おこなうこともできるが、より好ましくはアルゴン、窒
素、ヘリウムなどの不活性(非酸化性)ガスで置換した
減圧雰囲気中で行うのがよい。プラズマ溶射のための装
置の構成やレーザビームLを発生させるレーザ発振器の
種類や発振方法などについては、特に制約はない。ま
た、基材Wの表面上でのプラズマ溶射Zの移動は、基材
Wを移動させる代わりにプラズマ溶射Pおよびレーザビ
ームLの出射装置側を移動させたり、この出射装置側の
移動と基材W側の移動との組み合わせによって行うよう
にしてもよい。
【0018】本発明の方法でTiC系サーメット皮膜の
高温耐摩耗性能を最大限に発揮させるためのもっとも重
要なポイントは、TiC系硬質粒子とマトリックス金属
との融合性である。プラズマ・レーザ複合溶射時に高融
点のTiC系粒子が溶融する時点では融点がより低いマ
トリックス金属は既に十分溶融しているので、マトリッ
クス構成元素のNiなどは硬質粒子の表面部のTiと相
互に拡散し合う。これによってTiC系硬質粒子はマト
リックス金属中に析出したような様相で均一分散する。
相互の結合を強固に保ちながら均一に分散するTiC系
粒子が多いほど皮膜の高温耐摩耗性は優れることになる
が、両者間の反応には溶射材料の粒度分布、プラズマ溶
射条件、レーザ照射条件、基材寸法などによって決まる
条件を適正に制御する必要がある。
【0019】図2は、本発明に係る高温耐摩耗性皮膜の
形成方法を実施するプラズマ・レーザ複合溶射装置を示
す。この図2において、1は減圧チャンバーであり、密
閉状態として内部の雰囲気を前記不活性(非酸化性)ガ
スで置換し、外部に付設された真空ポンプ2によって所
要の真空度に設定できるようになっている。そして、こ
の減圧チャンバー1内には、台車3上に多関節ロボット
4とワーク支持台5とを搭載した溶射装置ユニット6が
収容されている。
【0020】この溶射装置ユニット6の多関節ロボット
4は、台車3に固定された摺動基台7上に水平摺動自在
に載置されると共に、その垂直面内揺動自在なアーム4
aの先端部にプラズマガン8とレーザガン9とが取付け
られており、レーザガン9には外部に設置されたYAG
レーザ装置10より出射されるレーザ光が光ファイバー
11を介して伝送されるようになっている。また、ワー
ク支持台5は、下部の回転テーブル5a上に加工テーブ
ル5bが設置され、この加工テーブル5bの前面に被加
工物である基材Wを取り付けるようになっている。そし
て、プラズマガン8とレーザガン9の向きは、プラズマ
溶射領域とレーザビーム照射領域とが基材Wの表面で重
なるように設定されている。12は制御装置であって、
多関節ロボット4の水平移動及びアーム4aの垂直面内
揺動、レーザ装置10のオン・オフ及び出力調整、プラ
ズマガン8によるプラズマ溶射Pの出射・停止、レーザ
ガン9によるレーザビームLの出射・停止、真空ポンプ
2のオン・オフなど、プラズマ・レーザ複合溶射に必要
な各部の作動制御を司るようになっている。
【0021】上記構成のプラズマ・レーザ複合溶射装置
においては、前記不活性ガスで置換した減圧チャンバー
2内を所定の真空度に減圧した状態で、多関節ロボット
4の水平移動とアーム4aの垂直面内揺動とによって溶
射領域を更新移動させつつ、基材Wの表面にプラズマガ
ン8より硬質粒子含有サーメットのプラズマ溶射Pを行
うと同時に、その溶射領域にレーザガン9よりレーザビ
ームLを適性なエネルギー密度で照射することにより、
基材Wの表面に硬質粒子含有サーメット材料からなる耐
摩耗性皮膜を形成する。
【0022】
〔溶射材料〕
サーメット材料A…TiC−17S6(TiC/S6の
重量比83/17) 注)S6;重量%でC0.97、Si4.48、Cr16.81 、F
e3.87、B3.35、残余Niの自溶合金 サーメット材料B…TiC−40Ni(TiC/Niの
重量比60/40) 〔基材〕SUS306L(縦60mm、横50mm、厚
さ3mm)を脱脂後、皮膜形成表面をアルミナ(♯24 )
でブラスト処理したもの。
【0023】実施例 図2に示される構成のプラズマ・レーザ複合溶射装置を
使用し、その減圧チャンバー1内を100TorrのA
rガス減圧雰囲気とし、多関節ロボット4の水平移動と
アーム4aの垂直面内揺動とによって溶射領域を速度5
0mm/秒、ピッチ4mmで更新移動させつつ、下記の
プラズマ溶射条件及びレーザビーム照射条件において、
ワーク支持台5に取り付けた基材Wの表面に、プラズマ
ガン8によるサーメット材料A及びBのプラズマ溶射P
とレーザガン9によるレーザビームLの照射とを同時に
行うことより厚さ160μmの皮膜を形成した。
【0024】 〔プラズマ溶射条件〕 プラズマ出力(電流−電圧)・・・・・・・600A、 58V メインガス(Ar)送給量 ・・・・・・・60リットル/分 アシストガス(N2)送給量・・・・・・・5リットル/分 溶射距離 ・・・・・・・・・・・・・・・150mm 粉末送給ガス量 ・・・・・・・・・・・・5リットル/分 粉末供給量(円盤回転数) ・・・・・・・1.0rpm 〔レーザビーム照射条件〕 レーザの種類および波形 ・・・・・・・・YAGレーザの連続波形 レーザ出力 ・・・・・・・・・・・・・・0.5〜4.0KW 焦点はずし量 ・・・・・・・・・・・・・±0mm ビーム径 ・・・・・・・・・・・・・・・11.2〜16.0mm
【0025】比較例 レーザビームLの照射を行わず、プラズマ溶射Pのみで
溶射領域の移動速度を250mm/秒とした以外は、実
施例と同様にして皮膜を形成した。
【0026】〔溶射皮膜の断面組織〕溶射皮膜組織の一
例として、TiC−17S6(サーメット材料A)皮膜
の断面組織の走査型電子顕微鏡観察結果を図3の写真
(A)〜(C)に示す。写真(A)は、プラズマ溶射の
みによる皮膜の断面組織を示したもので、黒く見えるマ
トリックス金属中に白く見えるTiC系硬質粒子が分散
しているのが分かる。このプラズマ溶射のみの皮膜は、
組織観察のための研磨過程で硬質粒子のマトリックス金
属からの脱落が激しく、両者の結合はきわめて弱いこと
がこの写真からも分かる。
【0027】図3の写真(B)は、レーザ出力2KWで
複合溶射した皮膜の断面組織を示したもので、黒く見え
るTiC系硬質粒子がまわりのマトリックス金属に十分
なじんだ状態でしかも微細均一に分散しているのが分か
る。また、写真(C)は、レーザ出力4KWで複合溶射
した皮膜の断面組織で、黒く見えるTiC系硬質粒子の
分解が激しく、粒子の多くは散逸した状態になってお
り、マトリックス中への残存はわずかとなっている。
【0028】複合溶射皮膜中のTiC系粒子(析出物)
の体積分率を調査した結果を、レーザエネルギー密度ρ
との関係で整理して図4及び図5のグラフにそれぞれ示
す。ここで、レーザエネルギー密度ρはレーザ出力を基
材表面上のレーザビーム面積で除した値(W/mm2
で定義している。図4は、TiC−17S6(サーメッ
ト材料A)の使用によるプラズマ・レーザ複合溶射皮膜
の場合で、●はレーザ出力を変化させて複合溶射した皮
膜、○はレーザビーム径を変化させて複合溶射した皮膜
を示す。この図4のTiC−17S6皮膜において、T
iC系析出物量は、レーザエネルギー密度ρの増大につ
れて増加し、最大値を示した後は減少している。レーザ
ビーム径を変化させて複合溶射した皮膜のTiC系析出
物量の変化も同様の傾向線上に沿っていることから、皮
膜中の硬質粒子の挙動におよぼすレーザ出力およびレー
ザビーム径の影響はレーザエネルギー密度ρの変化で一
義的に整理できそうである。以上のことは、図5に示す
TiC−40Ni(サーメット材料B)の使用による複
合溶射皮膜の場合も同じである(図5の●はレーザ出力
を変化させて複合溶射した場合、○はレーザビーム径を
変化させて複合溶射した場合を示す)。但し、図4と図
5の両図を比較すると、TiC系析出物の最大量(体積
分率)は、溶射粉末段階でのTiC量が多い図4のTi
C−17S6皮膜でより多くなっている。
【0029】〔溶射皮膜の高温耐摩耗特性〕溶射皮膜の
高温摩耗試験は標準化されたものがなく、それぞれの用
途、使用条件に応じて試験がなされている。本発明者ら
はセラミックスパウダーを高温条件下にてプラズマ噴射
する方法によって皮膜の高温エロージョン特性を調査し
た。エロージョンテストの模式図を図6に示し、その試
験条件を下記表1に示す。試験は、皮膜表面温度を73
0℃としてZrO2 パウダー噴射によって実施し、皮膜
減量速度を評価した。なお、エロージョンテストの模式
図を示す図6において、Wは基材、Mは複合溶射皮膜、
15はプラズマノズル、16はプラズマジェット、17
はパウダージェット、18は熱電対、19はエロージョ
ン領域を示す。なお、基材Wの縦寸法aは60mm、横
寸法b50mmで、基材Wの厚さtは3mmである。
【0030】
【0031】複合溶射皮膜の試験結果をレーザエネルギ
ー密度ρとの関係で整理して図7に示す。図において、
●はTiC−17S6(サーメット材料A)によるプラ
ズマ・レーザ複合溶射皮膜、○はTiC−40Ni(サ
ーメット材料B)によるプラズマ・レーザ複合溶射皮膜
を示し、▲はTiC−17S6によるプラズマ溶射のみ
の皮膜、△はTiC−40Niによるプラズマ溶射のみ
の皮膜を示している。この図7から分かるように、プラ
ズマ・レーザ複合溶射皮膜では、高温摩擦速度はレーザ
エネルギー密度ρの増大につれて低下し、最小値を示し
た後に上昇している。また、溶射材料間の比較では、粉
末材料に硬質粒子を多く含むTiC−17S6複合溶射
皮膜がより低い摩耗速度を示している。レーザエネルギ
ー密度ρの変化にともなう摩擦速度の変化は、図4およ
び図5に示した複合溶射皮膜中のTiC系析出物量の変
化と相対しており、皮膜の高温耐摩耗性とTiC系析出
物量とは密接な関係にあることが分かる。
【0032】この図7にはプラズマ溶射のみの皮膜につ
いての試験結果を併せて示しているが、図3(A)の写
真に示す皮膜組織でも観察されたように、マトリックス
金属と硬質粒子間の結合が弱いプラズマ溶射のままの皮
膜はいずれも大きい摩耗速度を示している。即ち、図7
に▲で示すTiC−17S6によるプラズマ溶射のみの
皮膜の高温摩擦速度は63mg/min、また△で示す
TiC−40Niによるプラズマ溶射のみの皮膜の高温
摩擦速度は76mg/minとなっている。
【0033】〔溶射皮膜のTiC系析出物量と高温耐摩
耗特性との関係〕複合溶射皮膜中のTiC系析出物量と
高温耐摩耗特性との関係を図8に示す。この図にはTi
C−17S6複合溶射皮膜(●で示す)及びTiC−4
0Ni複合溶射皮膜(○で示す)の結果をまとめて示
す。複合溶射皮膜中のTiC系析出量の増大につれて高
温摩耗速度は低下し、析出物量が30%以上の領域では
高温摩耗速度は低位に安定することが分かる。プラズマ
溶射のみの皮膜が著しく高い高温摩耗速度を示す(図
7)のに比べると、プラズマ・レーザ複合溶射は、いず
れの条件においても皮膜の高温耐摩耗性を改善する効果
が認められるが、この効果が一層顕著で且つ安定した皮
膜性能が達成できるTiC系析出物量の範囲としては、
25%以上であることが好ましい。
【0034】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、基材表面
にTiC系硬質粒子を含有するサーメット材料をプラズ
マ溶射によって吹き付けて高温耐摩耗性皮膜を形成する
のに、基材表面へのサーメット材料の吹き付けと同時に
基材表面の吹き付け位置にレーザビームを照射するプラ
ズマ・レーザ複合溶射を行うことから、溶融粒子相互の
融合性を高めて皮膜の硬質粒子と金属マトリックスとの
結合を強化するとともに皮膜と基材界面との結合をより
密にすることができて、皮膜自体および基材に対する密
着強度に優れた高温耐摩耗性皮膜を得ることができる。
【0035】請求項2に係る発明のように、皮膜中のT
iC系析出物量が体積率25%以上である場合には、皮
膜の高温耐摩耗性を改善する効果が一層顕著で且つ安定
した皮膜性能が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る高温耐摩耗性皮膜形成方法を示
す模式図である。
【図2】 同形成方法を実施するプラズマ・レーザ複合
溶射装置を示す概略縦断面図である。
【図3】 溶射皮膜組織の走査型電子顕微鏡観察結果を
示す写真で、(A)はプラズマ溶射のみによる皮膜の断
面組織を示し、(B)はレーザ出力2KWで複合溶射し
た皮膜の断面組織を示し、(C)は、レーザ出力4KW
で複合溶射した皮膜の断面組織を示す。
【図4】 TiC−17S6皮膜のレーザエネルギー密
度とTiC系析出物量との関係を示すグラフである。
【図5】 TiC−40Ni皮膜のレーザエネルギー密
度とTiC系析出物量との関係を示すグラフである。
【図6】 高温エロージョンテストの模式図である。
【図7】 レーザエネルギー密度と皮膜の高温耐摩耗性
との関係を示すグラフである。
【図8】 複合溶射皮膜のTiC系析出物量と高温耐摩
耗性との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
W 基材 A 基材の移動方向 M 高温耐摩耗性皮膜 P ブラズマ溶射 L レーザビーム Z 溶射領域(吹き付け位置)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大森 明 兵庫県尼崎市道意町7丁目1番8 財団法 人近畿高エネルギー加工技術研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材表面にTiC系硬質粒子を含有する
    サーメット材料をプラズマ溶射により吹き付けて高温耐
    摩耗性皮膜を形成するに当たり、この吹き付けと同時に
    基材表面の吹き付け位置にレーザビームを照射すること
    を特徴とする高温耐摩耗性皮膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 皮膜中のTiC系析出物量が体積率25
    %以上であることを特徴とする上記皮膜の形成方法。
JP10173959A 1998-06-05 1998-06-05 高温耐摩耗性皮膜の形成方法 Withdrawn JPH11350107A (ja)

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JP10173959A JPH11350107A (ja) 1998-06-05 1998-06-05 高温耐摩耗性皮膜の形成方法

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