JP2016222646A - ペプチドを含む炎症抑制のための組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ミクログリアの抗炎症効果に優れたオリゴペプチドを見出し、その知見に基づき、ミクログリアの炎症を抑制するために用いられる組成物を提供する。【解決手段】ミクログリアの炎症性サイトカインの産生を指標としてジペプチドの炎症抑制作用を網羅的に解析した。その結果、配列LH、DV、MHを含むオリゴペプチドに優れた炎症抑制効果があることを明らかにした。これらオリゴペプチドを含む組成物によって、ミクログリアの過剰な炎症作用を抑制する効果を有する組成物を提供することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、ミクログリアの炎症を抑制するための組成物、及びその飲食品等への利用に関する。
脳内で唯一の免疫細胞として存在するミクログリアは、脳の10%を占め、脳内における老廃物の貪食除去、損傷を受けた組織の修復等、脳内の恒常性の維持に不可欠な機能を有していることが明らかとなっている。ミクログリアは、脳内の恒常性を維持することによって、認知機能の維持、向上、及び改善に貢献している。しかしながら、ミクログリアの過剰な活性化により炎症を惹起し、活性酸素(ROS)やTNF-α、IL-1β等の炎症性サイトカインが慢性的に産生され、ニューロンにストレスを与えることが知られている。
例えば、うつ病のような気分障害の患者においても、慢性の炎症が生じており、炎症性サイトカインや活性酸素の持続的な産生亢進が認められている。気分障害患者では血中CRP、炎症性サイトカインの値の上昇が見られ、これらの値と症状や治療抵抗性との相関が認められている。また、症状消褪後にはこれらマーカー値が正常化することが報告されている。IFN-γやTNF-αなどの炎症性サイトカインや活性酸素はそれ自体が神経細胞、神経幹細胞やオリゴデンドロサイトに対する組織障害性を有する。気分障害患者の脳では、シナプス病変、神経新生抑制、白質病変などの組織学的変化が認められているが、ミクログリアが産生する炎症性サイトカインや活性酸素が、これら病変を引き起こしている可能性がある(非特許文献1)。
過剰に活性化したミクログリアが産生する活性酸素やTNF-α等の炎症性サイトカインは、うつ病を含む気分障害の他にも疼痛、慢性疲労症候群の病態と密接に関係していると報告されている(非特許文献2〜7)。これら知見から、ミクログリアの過剰な活性化を抑制することができれば、うつ病をはじめ、疼痛、慢性疲労症候群、認知症、多発性硬化症といったミクログリアの過剰な活性化と相関が認められている疾患の治療、緩和、さらに予防に役立つものと考えられる。
ミクログリアの炎症を抑制する、あるいは神経を保護する効果のある物質としていくつかのペプチドが開示されている。特許文献1には、ミクログリアの炎症を抑制し神経を保護するペプチドが開示されている。特定の性質を備えた5アミノ酸からなるペプチドを配列に含むポリペプチドに、ミクログリアの活性化を抑制し、炎症を抑制する作用があることが示されている。また、前記ペプチドには、ミクログリアの炎症に関連すると考えられている急性疾患、慢性疾患を含む種々の疾患に効果がある可能性が示唆されている。また、特許文献1では、ペプチドの投与方法として、注射、吸入等により投与することが記載されている。
特許文献2には、トリペプチドGly-Pro-Glu(GPE)を注射によって静脈内投与することにより、神経が持続的に保護されることが開示されている。特に、急性虚血性損傷のような形態学的にも大きな損傷を伴う疾患を対象としている。また、標的がミクログリアであることが開示されているわけではない。
特表2014−509594号公報 特表2007−509169号公報
門司 晃、2012、精神経誌、114巻、2号、124-133頁 Berta, T., et al., 2014, J. Clin.Invest., Vol.124(3), pp.1173-1186 Riazi, K., et al., 2008, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.105(44), pp.17151-17156 Grinberg, Y.Y., et al., 2013, J. Neurochem., Vol.126(5), pp.662-672 Couch, Y., et al., 2013, Brain Behav. Immun., Vol.29, pp.139-146 Yasui, M., et al., 2014, Glia, doi: 10.1002/glia.22687 Nakatomi, Y., et al., 2014, J. Nucl. Med., Vol.55, pp.945-950
特許文献1及び2に記載のペプチドは、神経変性を伴う疾患に対して注射によって投与することが前提となっている。したがって、比較的症状の重い状態の患者に投与することが目的であったと理解される。
本発明では、症状の重い患者はもちろんであるが、比較的症状の軽い者に対しても効果があり、継続的に摂取が可能な組成物を提供することを課題とする。ミクログリアの炎症に起因する疾患として、上述のように疼痛、慢性疲労症候群、認知症、多発性硬化症があり、また、うつ病等に見られる気分障害がある。本発明の組成物はこれら疾患を発症している患者はもちろんのこと、発症リスクの高い群に対しても効果のある組成物を提供することを課題とする。
例えば、社会的敗北感、意欲、モチベーションの欠如など、意欲や精神状態の不調もうつ病などの気分障害へつながることが指摘されている。モチベーション、やる気のなさに顕れる意欲や活力の欠如、また、自信、好奇心の欠如、さらには、落ち込んだ気持ちが回復せず前向きになれないなど、「気分」、「感情」の問題は、個人の性格の問題として捉えられることも多い。しかし、うつ病として顕在化する前から、あるいは回復期にも存在する脳の器質的な病的状態が含まれているものと考えられている。
さらに、同じような精神的ストレス、肉体的ストレスを受けたとしても、個人によってストレスによる反応が異なることは良く知られている。ストレスへの脆弱性もうつ病などの気分障害の発症へつながることが指摘されている。
日常生活において慢性的に受けるストレスにより生じる脳内の炎症は、ミクログリアの過剰な炎症を抑制することにより正常な状態に維持される。いわゆる「ストレスに強い」正常な状態にするためには、ミクログリアの炎症が適切に制御されていることが重要であると考えられる。
本発明は、ミクログリアの炎症によって惹起される種々の疾患や状態に対して効果を有するペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分とする組成物を提供することを課題とする。ミクログリアが脳内で引き起こす炎症状態を緩和及び抑制し、慢性疲労症候群、認知症、気分障害といった疾患だけではなく、疾患を発症する以前に認められる状態を改善することを可能にする組成物や飲食品を提供することを課題とする。特に、今まで、気分、感情の問題として片づけられていたような意欲、モチベーションの欠如、活力の低下といった病気とは診断されないような状態を改善可能な組成物や飲食品を提供することを課題とする。
本発明の第1の形態は、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含む、ミクログリアの炎症を抑制するための組成物を提供するものある。
LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチドには、ミクログリアの炎症を抑制する作用がある。したがって、これを含む組成物にはミクログリアの炎症を抑制する効果が期待できる。
本発明の第2の形態は、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含む、慢性疲労症候群、認知症及び/又は気分障害の症状を緩和、治療、又は予防するための組成物を提供するものである。
LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチドには、ミクログリアの炎症を抑制する作用がある。ミクログリアの炎症は慢性疲労症候群、認知症、さらに、うつ病などの気分障害と関連が認められている。したがって、上記ジペプチドを含む組成物、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチドを含む組成物には、ミクログリアの炎症作用を抑制することによって、慢性疲労症候群、認知症、及び/又は気分障害の症状を緩和、治療、又は予防する効果が期待できる。
本発明の第3の形態は、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含む、ストレスにより引き起こされる状態を緩和又は予防するための組成物を提供するものである。
LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチドには、ミクログリアの炎症を抑制する作用がある。ミクログリアの炎症はストレスにより引き起こされる状態と関連が認められている。したがって、上記ジペプチドを含む組成物、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチドを含む組成物には、ミクログリアの炎症作用を抑制することによって、ストレスにより引き起こされる状態を緩和又は予防する効果が期待できる。ストレスにより引き起こされる状態としては、特に、意欲・モチベーションの欠如、及び/又は活力の低下などがある。
本発明において、上記組成物は、食品組成物であってもよい。
本発明において、上記組成物は、医薬組成物であってもよい。
本発明において、上記組成物は、飲食品に含有せしめてもよい。
本発明において、上記組成物は、各組成物にLH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含有せしめることにより製造することができる。
上記ジペプチド又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチドは、食品等に由来するタンパク質を加水分解物して得られたものであってもよい。特に、酒粕に含まれるものであってもよい。この場合、上記タンパク質加水分解物、あるいは上記酒粕は、組成物中の上記ジペプチド又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチドの濃度を上げるため、さらに精製・濃縮する処理を施してもよい。
上記ジペプチド又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチドが食品等に由来するものであれば、安心して摂取可能な組成物を提供することができる。
本発明の製造方法の第1の形態は、以上の組成物の製造方法であって、タンパク質を加水分解して、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を得る工程を含む組成物の製造方法を提供する。
前記、タンパク質を加水分解して、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を得る工程により得られた組成物を、精製・濃縮する工程をさらに含んでもよい。
前記、タンパク質を加水分解して、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を得る工程により得られた組成物は、酒粕であってもよい。
本発明の製造方法の第2の形態は、ストレスにより引き起こされる状態を緩和又は予防するための組成物の製造方法であって、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含有する酒粕を含有させる工程を含む製造方法を提供する。
前記、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含有する酒粕を、精製・濃縮する工程をさらに含んでもよい。
本発明によれば、ミクログリアの炎症を抑制する機能を備えた組成物を提供することができる。そして、それを摂取することで、ミクログリアの炎症によって惹起される慢性疲労症候群、認知症、気分障害等の疾患の緩和、治療、予防や症状の軽減だけではなく、ストレスによって引き起こされる、病気とは診断されないような状態の緩和、予防、改善を図ることができる。
試験例2においてジペプチドによるミクログリアに対する炎症抑制効果を調べた結果を示す図である。 試験例3においてジペプチドをコア配列として有するトリペプチド、テトラペプチドによるミクログリアに対する炎症抑制効果を調べた結果を示す図である。 試験例4における試験スケジュールの概要を示す図表である。 試験例4においてジペプチドのマウス脳内投与による脳内炎症抑制効果を調べた結果を示す図である。 試験例5における社会的相互作用試験の試験概念図である。 試験例5における試験スケジュールの概要を示す図表である。 試験例5における探索行動評価の試験装置の概要を示す図である。 試験例5においてAvoidance Zone滞在時間の経時変化を調べた結果を示す図である。 試験例5においてAvoidance Zone滞在時間の群間比較を調べた結果を示す図である。 試験例7(1)において焼酎粕の水抽出物(限外濾過前)によるミクログリアに対する炎症抑制効果を調べた結果を示す図である。 試験例7(2)において焼酎粕の水抽出物(限外濾過後)によるミクログリアに対する炎症抑制効果を調べた結果を示す図である。
本発明においては、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチドを、ミクログリアの炎症を抑制するための組成物に用いる。オリゴペプチドとは、具体的には、上記ジペプチドをコア配列として含むトリペプチド、テトラペプチドをいう。これらは複数種類を併用して用いてもよい。以下、これらは、単に「ジペプチド」又は「オリゴペプチド」という場合がある。
本発明に用いるジペプチド又はオリゴペプチドを構成するアミノ酸は、L体のアミノ酸のみから構成されていてもよいし、D体のアミノ酸のみから構成されていてもよいし、あるいは両者が混在したジペプチド又はオリゴペプチドのいずれであってもよい。また、天然に存在するアミノ酸のみから構成されていてもよいし、アミノ酸に任意の官能基が結合した修飾アミノ酸のみから構成されていてもよいし、あるいは両者が混在したジペプチド又はオリゴペプチドのいずれであってもよい。また、ジペプチド又はオリゴペプチドが2以上の不斉炭素を含む場合には、エナンチオマー、ジアステレオマー、あるいは両者が混在したジペプチド又はオリゴペプチドのいずれであってもよい。
本発明に用いるジペプチド又はオリゴペプチドは、その薬学上許容される塩もしくは溶媒和物であってもよい。例えば、薬学上許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩などが挙げられる。また、薬学上許容される金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。また、薬学上許容されるアンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩などが挙げられる。また、薬学上許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の付加塩などが挙げられる。
本発明に用いるジペプチド又はオリゴペプチドは、化学合成によって得られたものを用いてもよく、乳、大豆、小麦、卵、畜肉、魚肉、魚介、大麦、米、さつま芋、ジャガイモなどに由来するタンパク質やポリペプチド原料等から化学的もしくは酵素的に分解して得られたものを用いてもよい。具体的には、例えば、本発明に用いるジペプチド又はオリゴペプチドの配列はいずれも、少なくとも、乳蛋白のαカゼイン、βカゼイン、κカゼイン、ラクトグロブリン、ラクトアルブミン、免疫グロブリン、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、アルブミン、大豆蛋白のグリシニン、コングリシニン、小麦蛋白のグリアジン、グルテニン、卵黄蛋白のリボビテリン、卵白蛋白のオボアルブミン、オボムコイド、オボトランスフェリン、ムチン、リゾチウム、チキン蛋白のコラーゲン、大麦蛋白のグロブリン、米蛋白のグルテリン、さつま芋蛋白のスポラミンのいずれかに含まれているから、それらを含むような食品や食品原料を酸加水分解や酵素処理に供して、上記ジペプチド又はオリゴペプチドを調製することができる。例えば、脱脂粉乳や脱脂大豆たんぱく質を溶解し、適宜酵素処理することにより、上記ジペプチド又はオリゴペプチドを1%程度含む組成物を得ることもできる。ここで、前記分解には発酵が含まれることは言うまでもなく、タンパク質を含む原料を発酵させて得られた食品組成物としては酒類、酒粕類、味噌類、なれ鮨類、ヨーグルト、チーズ、発酵乳、納豆、酢類、麹類、しょうゆ類(魚醤を含む)、塩辛やアンチョビなどの発酵魚、サラミなどの発酵肉、熟成肉、などが挙げられる。その組成物はそのまま用いてもよいし、あるいはさらに任意の程度の精製・濃縮を施して用いてもよい。精製・濃縮とは、たとえば、分離、分画、抽出、透析、塩析、再沈殿、膜処理等の手段により組成物中の上記ジペプチド又はオリゴペプチドの含有量を増加させることを意味し複数手段を組合わせて施してもよい。好ましい手段としては抽出(より好ましくは水抽出)、膜処理が選択される。
本発明に用いるジペプチド又はオリゴペプチドは、当業者であれば適宜適切な方法により分析、定量することが可能である。例えば、組成物や食品中のジペプチド又はオリゴペプチドは、後記実施例に示すLC/MSMSにより分析、定量することができる。
気分障害とは、世界保健機構(WHO)の疾病及び関連保健問題の国際統計分類によれば、ある程度の期間にわたって持続する気分の変調により、日常生活に支障をきたすような状態をいうと定義されている。本発明では、気分障害とはさらにより軽度の症状、例えば、活力が低下している状態、好奇心が低下している状態も含めるものとする。さらに、本発明で活力の向上、好奇心の向上とは以下のような状態を含むものとする。活力の向上とは、例えば、本発明の組成物を摂取する前より摂取した後の方が身体活動量が大きくなること、好奇心の向上とは、例えば、新たな課題に興味を示すことをいう。なお、ストレスとは生活上のプレッシャーおよび、それを感じたときの感覚である。
活力の向上や好奇心の向上はマウスなどの実験動物を用い、以下のようにして測定することが可能である。活力の向上は、後記実施例記載の方法のほかに、マウスモデルにおいて、例えば組成物摂取前及び後の一定時間におけるローターロッドなど滑車操作時間の比較により評価することができる。また、好奇心の向上は、組成物摂取前及び後のマウスモデルに、例えば新たな玩具を与え、該玩具を操作し始めるまでの時間又は該玩具を操作している時間を比較したり、自分とは別の新たなマウスに遭遇した際にそのマウスにどれくらいアプローチを掛けるかなどの社会性を比較したりすることにより評価することができる。
本発明の組成物の使用形態については特に制限はない。例えば、食品組成物、その食品組成物に配合するために用いられる添加物、あるいは、医薬組成物、その医薬組成物に配合するために用いられる添加物などとして使用することができる。また、ヒトだけでなく愛玩動物(犬、猫、爬虫類、鳥類、魚類など)や家畜(家禽含む)、養殖魚などに用いてもよい(好ましくは哺乳類である動物・家畜に用いる)。
ヒトや動物に上記ジペプチド又はオリゴペプチドを有効に作用させるためには、上記ジペプチド又はオリゴペプチド(複数種類含む場合にはその合計換算)を、0.00001〜100質量%含有する形態であることが好ましく、0.0001〜100質量%含有する形態であることがより好ましく、0.001〜100質量%含有する形態であることが最も好ましい。
上記ジペプチド又はオリゴペプチドはミクログリアの炎症を抑制する方法に使用することができる。また、慢性疲労症候群、認知症及び/又は気分障害の症状を緩和、治療、又は予防する方法に使用することができる。また、例えば、意欲・モチベーションの欠如、及び/又は活力の低下など、ストレスにより引き起こされる状態を緩和又は予防する方法に使用することができる。それらは、有効量の上記ジペプチド又はオリゴペプチドを摂取又は投与することにより実施しうる。なお、該方法は、ヒトにおいてはいわゆる医療行為を含まない。
本発明により提供される組成物は、その形態に特に制限はなく、液状、半液体状、固体状のいずれであってもよく、飲料のような食品組成物の形態も包含する。また、いわゆる健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメントを包含し、疾病リスク低減表示を付した食品などの保健機能食品(特定保険用食品、栄養機能性食品、機能性表示食品)、病者用食品も包含される。
食品組成物が酢類・酒類やその絞り粕である場合は、添加された酵素・微生物により原料中のタンパク質が分解したり、また、原料にもともと含まれる酵素により分解した結果として、上記ジペプチド又はオリゴペプチドが含まれるものである。もちろん、酢類・酒類やその絞り粕に上記ジペプチド又はオリゴペプチドを新たに又はさらに添加して製造したものでもよい。酢類・酒類の原料はタンパク質を含めばよく、好ましくは麦類(麦芽を含む)、米類(胚芽米を含む)、いも類、とうもろこし、豆類、そば類などが挙げられる。より好ましくは、大麦、米、さつま芋である。また、形態としては酒類の絞り粕がより好ましい。該絞り粕はアルコールを含有してもしなくてもよいが、アルコールを含有しないものが好ましい。アルコールの除去は公知の方法、たとえば風乾などにより行えばよい。
ここで酒類の製造は主に、(i)ウイスキーや果実酒のように原料を1次処理(酵素・微生物の添加による分解処理、又は原料そのもの由来の酵素による分解処理)して固液分離した後に液体を発酵工程に供して酒を得る方法と、(ii)日本酒や焼酎のように原料を1次処理(酵素・微生物の添加によったり、原料そのもの由来の酵素による分解処理)したものにさらに原料や酵素・微生物を添加して発酵工程を行い、発酵後に固液分離や蒸留をして酒を得る方法がある。本発明の酒類の絞り粕は(i)(ii)のいずれにより得られたものでもよいが、好ましくは(ii)により得られたものである。(i)で得られた固体にはウイスキー粕、ぶどう粕などがあり、(ii)で得られた固体には日本酒の酒粕、焼酎粕がある。本明細書においては酒類の絞り粕を総称して酒粕という。
食品組成物を非アルコール飲料に適用する場合の非アルコール飲料としては、例えば、ミネラルウォーター、ニア・ウォーター、スポーツドリンク、茶飲料、乳飲料、コーヒー飲料、果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁飲料、炭酸飲料、アルコールを含まないビールテイスト飲料などが挙げられるが、これらに限定はされない。ノンアルコールビール等、アルコール含有量が1%未満のビール飲料であってもよい。ミネラルウォーターは、発泡性および非発泡性のミネラルウォーターのいずれもが包含される。
上記非アルコール飲料における茶飲料とは、ツバキ科の常緑樹である茶樹の葉(茶葉)、又は茶樹以外の植物の葉若しくは穀類等から抽出したものからなる飲料をいい、発酵茶、半発酵茶、及び不発酵茶のいずれもが包含される。茶飲料の具体例としては、日本茶(例えば、緑茶、麦茶)、紅茶、ハーブ茶(例えば、ジャスミン茶)、中国茶(例えば、中国緑茶、烏龍茶)、ほうじ茶等が挙げられる。乳飲料とは、生乳、牛乳等またはこれらを原料として製造した食品を主原料とした飲料をいい、牛乳等そのものを材料とするものの他に、例えば、栄養素強化乳、フレーバー添加乳、加糖分解乳等の加工乳を原料とするものも包含される。
果汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる果物としては、例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナ、ナシ、モモ、マンゴー、アサイー、ブルーベリーなどが挙げられる。また、野菜汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる野菜としては、例えば、トマト、ニンジン、セロリ、カボチャ、キュウリなどが挙げられる。
食品組成物として用いる場合、通常 、成人1人1日当たりの摂取量は、上記ジペプチド又はオリゴペプチド0.0001〜40g、好ましくは上記ジペプチド又はオリゴペプチド0.001〜20g、さらにより好ましくは上記ジペプチド又はオリゴペプチド0.001〜2gである(複数種類含む場合にはその合計換算)。また、上記オリゴペプチドを有効に作用させるためには、上記ジペプチド又はオリゴペプチド(複数種類含む場合にはその合計換算)を0.00001〜100質量%含有する形態であることが好ましく、0.0001〜100質量%含有する形態であることがより好ましく、0.001〜100質量%含有する形態であることがさらに好ましく、0.01〜90質量%含有する形態であることがなお一層好ましく、0.1〜80質量%含有する形態であることが最も好ましい。また、1食分ないしは1食分として小分けされた容器中に、上記ジペプチド又はオリゴペプチド(複数種類含む場合にはその合計換算)を0.0001〜40g含有する形態であることが好ましく、0.001〜20g含有する形態であることがより好ましく、0.001〜2g含有する形態であることがさらにより好ましい。飲料として用いる場合には、上記ジペプチド又はオリゴペプチド(複数種類含む場合にはその合計換算)を0.000001〜10質量%含有する形態であることが好ましく、0.00001〜5質量%含有する形態であることがより好ましく、0.0001〜5質量%含有する形態であることがさらに好ましく、0.001〜5質量%含有する形態であることがなお一層好ましく、0.01〜1質量%含有する形態であることが最も好ましい。
上記ジペプチド又はオリゴペプチドはミクログリアの炎症抑制作用・ストレス緩和作用などを有するため、日常摂取する食品やサプリメントとして摂取する食品に含有させても提供することができる。
また、健康食品および機能性食品、好適にはミクログリアの炎症抑制作用、気分障害抑制作用、またはストレス緩和効果の発揮を意図した成分を含有する食にさらに含有させることもできる。ミクログリアの炎症抑制作用、気分障害抑制作用、またはストレス緩和効果の発揮を意図した成分とは、たとえばテアニン、ポリフェノール類、ローズマリー加水分解産物、ユビデカレノン、エゾウコギ、アクティン、乳酸菌発酵酸乳、βユーデスモールなどである。
さらに近年、長期の気分障害の治療が認知機能障害への移行をある程度予防し得るとも言われていることから、認知機能障害の予防・治療を意図した食品を摂取するに際し、気分障害やストレスに対し抵抗性が低下した状態を緩和・改善できる成分を併せて摂取することが有用であると考えられる。本発明により提供される組成物は、ミクログリア炎症抑制作用を有することから、認知機能障害の予防・治療を意図した成分を含有する食品にさらに含有させることもできる。認知機能障害の予防を意図した成分とはたとえば、エイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサヘキサエン酸(DHA)などのω‐3系列脂肪酸、イチョウ葉エキス、レスベラトロール、クルクミンなどのポリフェノール類、レシチン、イソフムロン、アルツハイマー病の危険因子であるホモシステインの代謝異常を防ぐビタミン類などである。
上記ジペプチド又はオリゴペプチドは単回摂取でも効果が認められるが、飲食品として継続的に摂取することにより、ミクログリアの過剰な炎症作用を抑制し、適度に調整することができれば、ストレスなどの環境要因に対する脆弱性を低くする、すなわちストレスに対して抵抗性を備えるような状態にすることも可能となる。
医薬組成物は、上記ジペプチド又はオリゴペプチドのうち、少なくともいずれか1つを有効成分として含み、担体、賦形剤、結合剤、希釈剤等を混合することにより製造できる。経口、非経口的に投与することが可能であり、経口投与する場合には、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、シロップ剤等、どのような形態であってもかまわない。また、非経口用の投与形態としては、注射剤、点滴剤、経鼻投与製剤等の外用剤等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
医薬として用いる場合、その投与量としては、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度等により異なるが、通常、経口投与の投与量は、成人1人1日当たり、上記ジペプチド又はオリゴペプチド0.0001〜40g、好ましくは上記ジペプチド又はオリゴペプチド0.001〜20gであり、さらにより好ましくは上記ジペプチド又はオリゴペプチド0.001〜2gである(複数種類含む場合にはその合計換算)。非経口投与の場合、たとえば静脈内投与の投与量は、成人1人1日当たり、上記ジペプチド又はオリゴペプチド0.00001〜4g、好ましくは上記ジペプチド又はオリゴペプチド0.0001〜2gであり、さらにより好ましくは上記ジペプチド又はオリゴペプチド0.0001〜0.2gである(複数種類含む場合にはその合計換算)。なお、これら投与量に関しては、種々の条件により、適宜最適な形態を選択すればよいことは勿論である。
上記ジペプチド又はオリゴペプチドは、その分子量が比較的小さいことから、体内への摂取後、脳関門を通過しやすく、脳内でその効果を発揮しやすい。また、食品に含まれるタンパク質を原材料とすれば安全性の高い組成物を提供することができる。
以下に実施例を記載して本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<試験例1>
ミクログリアの炎症性サイトカイン産生に及ぼすオリゴペプチドの影響を網羅的に調べるために、まず、ジペプチドを合成し以下の試験を行った。
[ジペプチド]
タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうちシステイン(C)を除く19種類のアミノ酸で構成され得るジペプチドの組み合わせ361通りのうち、そのN末端アミノ酸(第一アミノ酸)及びC末端アミノ酸(第二アミノ酸)の組合わせとして、下記表1に示すように、25種のジペプチドを除く336通りの組合せのジペプチドを準備した。なお、立体異性体がある場合はL体が用いられた。
[ミクログリア]
ミクログリアは、マウス脳から磁気細胞分離法によって単離した。具体的には、マウスより摘出した脳をパパイン処理することにより脳組織分散液を得、酵素反応を停止させた。次に、超常磁性マイクロビーズによって磁性標識された汎ミクログリアマーカーであるCD11b抗体(Miltenyi Biotec社製)と反応させ、それを磁気分離することにより、ミクログリアを単離した。
[抗炎症作用の評価]
単離したミクログリア細胞を、上記336種のジペプチドを各々50μM濃度で添加した培地で12時間培養した。その後、5ng/ml lipopolyshccaride (LPS、SIGMA-ALDRICH社製)及び0.5ng/ml IFN-γ(R&D system社製)を添加して、さらに12時間培養し、培養上清中に含まれるTNF-αをELISAキット(eBioscience社製)を用いて定量した。ペプチドを添加していないウェルをコントロールとし、コントロールを1としたときのTNF-αの産生割合を算出した。結果を表1に示す。なお、結果は3連のデータの平均値である。また、以下、アミノ酸は一文字略号で示す。
336種のジペプチドのうち、TNF-αの産生をコントロールに対して0.80以下に抑制する活性を備えたジペプチドは、AG、AH、AI、DA、DD、DF、DG、DH、DT、DV、DY、EA、EG、EM、EN、EW、EY、FA、FD、FI、FL、FM、FW、FY、GH、GS、GT、HS、HV、IE、IF、IQ、IR、IS、KD、KE、KG、KI、KK、KL、KM、KN、KQ、KR、KT、KV、KW、KY、LA、LD、LF、LG、LH、LI、LL、LV、LY、MA、MD、ME、MF、MH、MM、MN、MQ、MS、MT、MV、MW、MY、NA、ND、NE、NF、NG、NH、NI、NK、NL、NM,NQ、NR、PG、PK、PS、PV、PW、PY、QE、QF、QH、QI、QK、QP、QQ、QY、RD、RE、RF、RG、RK、RL、RN、RV、RW、SD、SL、SM、SN、ST、SV、VDの112種のジペプチドであった。
また、TNF-αの産生を1/4抑制する、すなわちコントロールに対して0.75以下に抑制する活性を備えたジペプチドは、AG、AH、AI、DA、DD、DH、DV、EA、EY、GH、IE、IQ、KI、KL、KM、KQ、KT、KV、KY、LG、LH、LI、LV、LY、MA、MD、ME、MF、MH、MN、MT、MW、MY、NA、ND、NF、NG、NH、NL、NM、PS、PW、QF、QH、QI、QK、QQ、RF、RK、SLの50種のジペプチドであった。
さらに、TNF-αの産生を0.70以下に抑制する活性を備えたジペプチドは、AI、DV、GH、KI、KL、KM、KV、LG、LH、LI、MA、MD、MH、NAの14種のジペプチドであった。中でも、0.5以下に抑制する3種のジペプチド、LH、DV、MHは、TNF-αの産生を夫々0.06、0.20、0.44と非常に優れた炎症抑制効果を備えていることがわかった。
<試験例2>
試験例1で優れた抗炎症効果が認められたジペプチドのうち、LH、DVについてさらに解析を行った。まず、これらジペプチドの抗炎症作用が濃度依存的であるか解析を行った。
1μM〜50μMまでジペプチドの濃度を変えてミクログリアと培養した他は試験例1と同様にしてTNF−αの産生をELISAにより測定した。なお、コントロールとしては、試験例1と同様に、ペプチドを添加せずに培養を行ったものを用いた。また、比較のために、同じアミノ酸組成であって、配列の異なるジペプチド、すなわち、VD、HLも同様に濃度を変えてTNF-αの産生を測定した。結果を図1に示す。
図1に示すように、ジペプチドDV、LHの抗炎症作用は濃度依存的である。一方、同じアミノ酸組成ではあるが、N末とC末を入れ替えた配列のジペプチドVD、HLはともに抗炎症活性を示さなかった。
<試験例3>
次に、これらジペプチドがコア配列として機能するか解析するために、DV、LHをコア配列として有するトリペプチド、テトラペプチドのミクログリアに対する炎症抑制効果の解析を行った。結果を図2に示す。2種のペプチドDV、LHをコア配列として有するトリペプチド、DVE、TDV、LHL、NLH、テトラペプチドTDVE、NLHLについて抗炎症作用を解析した。
上記ペプチドを夫々10μM、50μMの濃度で用いてミクログリアを培養した他は、試験例1と同様にしてTNF-αをELISAによって測定した。結果を図2に示す。
解析に用いたオリゴペプチドのうちDVE以外はミクログリアの炎症作用を抑制する効
果が見られた。ミクログリアに対する炎症抑制効果とアミノ酸配列には、現在のところ規則性を認めるには至っていない。例えば、DVをコア配列として含むDVE、TDV、TDVEの抗炎症作用を比較すると、TDVEが炎症抑制効果が一番強く、Tの有無が炎症作用を左右しているわけではない。また、ペプチドの鎖長と活性に相関が見られるわけでもない。
上記解析結果を考慮すると、コア配列として本願発明で開示しているジペプチド配列を備えているものであれば、トリペプチド、テトラペプチドとして用いた場合であっても、炎症抑制作用を備えている可能性がある。
<試験例4>
LH投与によって脳内の炎症が緩和されることを確認した。
6週齢のICR(CD−1)雄マウス(日本チャールズリバー社製)を4群に分けた。
LH0mg群4匹、LH10mg群3匹、LH50mg群5匹にはそれぞれ、0、10、50mg/kg体重となるように調製したLH(国産化学社製)を1日1回、7日間連続で胃内へ強制経口投与した。
脳内炎症を惹起する目的で、LH投与7日目にはLH投与30分後に1.5mg/mLとなるよう蒸留水に溶解させたLPS(SIGMA-ALDRICH社製)をLPSとして0.5mg/kg体重となるように脳室内投与した。LPS投与から3時間後にマウスを安楽殺し、大脳皮質、海馬を採材した。LHおよびLPS投与を行わないLPS非投与群3匹については、LPSに代えて蒸留水10μLを脳室内投与したうえで上記3群と同様にして組織を採材した。
次に、採材組織中のTNF-α量を評価した。すなわち、採材した大脳皮質および海馬をRIPAバッファー(WAKO社製)中でビーズ破砕し、ELISA キット(「Mouse TNF alpha ELISA Ready-SET-Go!」eBioscience社製)を用いてTNF-αを定量した。得られたTNF‐α定量値は、BCA法で定量した破砕液中の総タンパク質濃度で除し、単位タンパク質質量あたりのTNF-α含量とした。
試験スケジュール概要を図3に、結果を図4にそれぞれ示す。結果は各群において測定値の平均値±標準誤差で示した。
その結果、LH0mg群と比較して、50mg群においては大脳皮質および海馬においてTNF-α量が少ない傾向が認められ、海馬におけるLH0mg群と50mg群の差は有意であった。このことから、経口投与したLHが脳内の炎症作用を抑制したことが明らかとなった。
<試験例5>
(1)社会的相互作用試験
ストレスを受け、それに伴い慢性疲労や意欲低下、抑うつの状態が見られることがあるが、メカニズムとして脳内の炎症が関与していることが近年の研究により明らかとなっている(古屋敷智之“心理ストレスにおける炎症関連分子の役割とミクログリア活性化への関与”実験医学Vol.30-No.13 2012, 65-71)。
そこで、試験例4において脳内での炎症抑制作用を発揮することが確認されたLHについて、ストレスへの緩和・抑制効果を奏するか否か動物を用いて評価した。具体的には、ストレス付与モデルを使った社会的相互作用試験により、LH投与によるストレス状態の緩和および意欲改善・活力向上効果を確認した。
マウスは本来、新規個体の入ったチャンバー内に入れられると社会的探索行動を示す性質をもつため、主に新規個体(Aggressor)の存在する場所(新規個体ケージ)付近に滞在するようになり、新規個体(Aggressor)から最も離れた領域(Avoidance Zone)にはほとんど滞在しないようになる(Vaishnav Krishanan., et al Cell, 2007, Vol.131(2), p391-404)。しかし、ストレスを付与されたマウスは新規個体(Aggressor) に対する不安の亢進や意欲低下が生じているため、新規個体(Aggressor)付近での滞在を避け、Avoidance Zoneでの滞在時間が増加する。したがって、新規個体(Aggressor)の入ったチャンバー内に社会的敗北モデルマウス差し入れてAvoidance Zone滞在時間を計測することにより、該マウスのストレスに対する状態を評価することができる。この場合、LHを摂取させたモデルマウスについてストレスの緩和や意欲改善、活力向上が生じていれば、LH非摂取マウスに比してAvoidance Zoneでの滞在時間が減少することになる。
(2)方法
試験概要を図5A〜図5Cに示す。
Repeated Social Defeat Stressモデル(社会的敗北モデル)として8週齢オスのC57BL/6Nマウス(日本チャールズリバー社製。以下「試験動物」ともいう)を、ストレスを付与しない群(ND群)、ストレスを付与し0.1%(W/W)LH含有飼料を摂取した群(LH食群)、ストレスを付与しLH非含有食を摂取した群(コントロール食群)の3群に分けた。各群10匹であり、飼育は1匹ずつ個別ケージにて行った。
LH食群にはストレス付与の開始日より前7日間、LHを終濃度0.1%(W/W)となるように添加調製したAIN93-G(オリエンタル酵母社製)飼料(以下「試験食」という)を自由に摂食させ、ストレス付与終了翌日(探索行動評価の終了日)まで継続した。ND群およびコントロール食群には、LH食群が試験食の摂取を開始したのと同日からLHを添加しないAIN93-G飼料を自由摂食させた(ND群においても、LH群およびコントロール食群におけるストレス付与開始日を「1日目」とした。)。
LH食群およびコントロール食群には、ストレス付与開始日から1日1回10分間ずつAggressorとしてICR(CD−1)マウス(日本チャールズリバー社製)と同居させることでストレスを付与した。
探索行動評価は、各群ともストレス付与−1、2、4、8、11日目に実施した。
探索行動評価は新規個体(Aggressor)に対する試験動物の探索行動を評価する試験である。試験装置の概略は図5Cに示す。縦40cm、横30 cm、高さ30cmのチャンバーの壁際にケージに入った新規個体(Aggressor)であるICR(CD−1)マウスを置いたうえで該チャンバー内に試験動物を置き、5分間(300秒間)自由に探索させ、Avoidance Zoneにおける滞在時間を計測した。なお、−1日目の探索行動評価は、新規個体(Aggressor)不在状況下での、試験動物の探索行動を評価している。
(3)結果
各群におけるAvoidance Zoneでの滞在時間の経時変化を図6Aに示した。滞在時間は各群の測定値の平均値±標準誤差として示している。各群ともAvoidance Zone滞在時間が経時的に増加する傾向が認められた。ND群と比較して、ストレスを付与した群(Defeated群;LH群およびコントロール食群)において経時的増加の程度が大きい傾向にあった。また、コントロール食群と比較して、LH食群においては、経時的増加の程度が抑制される傾向にあった。
ストレス付与2、4、8、11日目におけるAvoidance Zone滞在時間を図6Bに示した。滞在時間は各群の平均値±標準誤差で示している。いずれの時点においても、コントロール食群と比較してLH食群において、Avoidance Zoneでの滞在時間が短い傾向にあった。さらに、8日においては、コントロール食群のAvoidance Zone滞在時間とLH食群のそれとの差は有意なものであった。
以上より、LHを摂取しないとストレス付与により活力が低下していくが、LH摂取により活力低下が抑制されることが示された。すなわち、LHにより慢性的なストレスを緩和でき、意欲・モチベーションの欠如や活力の低下が抑制されることがわかった。
<試験例6>
試験例1でミクログリアの高い炎症抑制活性を有する効果が見出されたジペプチド及び該ジペプチドを含むオリゴペプチドが、食品に用いられるタンパク質の配列中に含まれているかを調べた。具体的には、下記表2に示す34種類のタンパク質の配列中に、LH、DV、MH、LHL、NLH、TDVE、NLHLの配列が現れるかを調べた。
表3に、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質、及びBSAのそれぞれについてジペプチド配列、トリペプチド及びテトラペプチドの出現の結果を示す。なお、γ-Casein及びproteose peptoneはβ-Caseinの分解産物であることから、β-Caseinに出現が確認されたオリゴペプチドについてはγ-Casein及びproteose peptoneにおいても出現している可能性があると考えられる。
表4に、グリシニン 、β−コングリシニン、グリアジン、グルテニン、及びリポビテリンのそれぞれについて、ジペプチド、トリペプチド及びテトラペプチドの出現の結果を示す。
表5に、オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボムチン(ムチン5B)、オボムチン(ムチン6)、リゾチウム、及びコラーゲンのそれぞれについて、ジペプチド、トリペプチド及びテトラペプチドの出現の結果を示す。
その結果、試験例1でミクログリアの抗炎症活性を有する効果が見出されたジペプチドの配列及び試験例3で抗炎症活性を備えることを確認したトリペプチド、テトラペプチドが、上記34種類のタンパク質のいずれかに含まれることがわかり、それらのタンパク質を含む原料から酸加水分解や酵素処理により調製可能であることが確認された。
さらに、上記オリゴペプチドについて、食由来のタンパク質にどの程度含有しているかを解析した。結果を表6〜表7に示す。
上記で示した食由来のタンパク質には、少なくともいずれかのコアとなるジペプチドが含まれることを確認した。また、試験例3で炎症抑制活性を備えることを確認したトリペプチド、テトラペプチドについては、βカゼイン等に含まれる。これら食品に含まれるタンパク質に含まれるオリゴペプチドを用いることによって、ミクログリアの炎症抑制効果の高いペプチド組成物を製造することができる。
<試験例7>
(1)焼酎粕の水抽出物による、ミクログリアの炎症抑制効果
常法にしたがって麹原料(白米(うるち米)、大麦又はさつま芋)を蒸煮、冷却したものに種麹(白麹又は黒麹)を添加し製麹した。ここに酵母を加えて発酵させた。さらに、蒸煮のうえ冷却した主原料(白米(うるち米)、大麦又はさつま芋)を加えさらに発酵させた。発酵で得られたもろみを蒸留して焼酎原酒を製造した。
本試験は焼酎製造時のもろみの蒸留残渣を対象に行った。すなわち、もろみの蒸留残渣(以下、「もろみ残渣」「焼酎粕」ともいう。)に対してそれぞれ5倍重量(W/W)の水を添加し15分間超音波処理を施した(水抽出)。水抽出は25℃にて行った。抽出液の遠心分離(HITACHI製、Himac CR20GIIを使用、5,000 rpm×10分)上清を回収、凍結乾燥し、凍結乾燥サンプルとした。
表8にサンプルを示す。
試験例1に記載した方法でマウス脳より採取し精製した初代培養ミクログリアについて、凍結乾燥サンプルを添加した際の炎症抑制作用を評価した。具体的には、精製した初代培養ミクログリアを播種した培養プレートに凍結乾燥サンプルをそれぞれ終濃度0.1、0.3、1、3mg/mLになるように添加して24時間培養し、LPSおよびIFN-γをそれぞれ終濃度5ng/mL、0.5ng/mLとなるように添加して培養を行った(0.1mg群、0.3mg群、1mg群、3mg群)。そして、培養12時間後の培養上清中のTNF-αの量をELISAにて定量した。なお、凍結乾燥サンプルを添加せずLPS及びIFN‐γを添加した系をコントロール(+)群と称し、LPSとIFN‐γいずれも添加しない系をコントロール(‐)群と称している。
結果を図7Aに示す 。なお、結果は2連のデータの平均値である。
その結果、いずれの凍結乾燥サンプル添加した系においても、凍結乾燥サンプルを添加しない系に比してTNF-αの産生量が少ない傾向が認められ、凍結乾燥サンプルの終濃度が高いほどTNF-α産生量が少なくなる傾向が認められた。このことから、凍結乾燥サンプル中にミクログリアの炎症状態を抑制する成分が含まれることがわかった。
(2)焼酎粕の水抽出物によるミクログリアの炎症抑制効果に対する膜処理の影響
(1)で得られた凍結乾燥サンプルを、終濃度としていずれも0.3、1、3mg/mLとなるように加えて調製した培養液を2kDaの限外濾過膜で濾過し、(1)と同様の方法でミクログリアの炎症抑制効果を評価した。
結果を図7Bに示す。濾過後の凍結乾燥サンプルについて、濾過前(図7A)と比較して、TNF-α量が少ない傾向が認められ、濾過前と同等かそれ以上の炎症抑制効果があることがわかった。このことから、関与成分は2kDa以下の画分に含まれることがわかった。
(3)凍結乾燥サンプル中のLH濃度
LC/MSMS法によりLH濃度を定量した。すなわち、上記凍結乾燥サンプルを水に溶解し遠心分離したものの上清を限外濾過(10kDa)して得られた分析サンプルを適宜希釈し、以下の分析条件でLC/MSMSにて測定した。濃度換算は検量線法によった。
(分析条件)
質量分析計: 4000Q TRAP(エービー・サイエックス社製)
ポンプ: Agilent 1200 Binary Pump(アジレント・テクノロジー社製)
オートサンプラ:Agilent 1200 High Performance Autosampler(アジレント・テクノロジー社製)
ソフトウェアバージョン:Analyst 1.6.2
カラム: TSK ge1 ODS-100V 3 μm 2.0 mm I.D.×150 mm(東ソー社製)
カラム温度: 70℃
穆動相A: 0.1 vol%ギ酸
稿動相B: 0.1 vol%ギ酸/アセトニトリル
注入量: 2 μL
スキャンタイプ:MRM(MRM)
極性: 陽性
スキャンモード:N/A
イオン源: ターボスプレー
分解能 Q1: ユニット
分解能 Q3: ユニット
強度閾値: 0.00 cps
セトリング時間:0.0000 msec
MRポーズ: 5.0000 msec
MCA: なし
ステップサイズ:0.00 Da
結果を表11に示す。LHの濃度は焼酎粕水抽出物の乾燥質量あたりとして計算している。主原料としてうるち米、大麦、さつま芋のいずれを使用した場合でも、発酵によりLHが生成していることが確認され、LHがミクログリアの炎症抑制作用に関与していることが示された。また、麹原料としてうるち米、大麦、さつま芋のいずれを使用した場合でも、麹菌として白麹、黒麹のいずれを使用した場合でも、発酵によりLHが生成していることが確認され、LHがミクログリアの作用に関与していることが示された。
(4)文献調査
上記主原料中および一般に焼酎原料として汎用されるジャガイモのタンパク質にLHなるアミノ酸配列が含まれるかウェブサイト情報から予測した。結果は表12に示すとおりである。主原料として使用する大麦、米、さつま芋、ジャガイモのいずれにおいてもLH配列を含むタンパク質が存在することが確認され、これらを発酵させることでLHが生成する可能性が、文献的にも示された。
(5)まとめ
焼酎粕(好ましくは焼酎粕水抽出物)が、ミクログリアの炎症を抑制する効果を有することが明らかとなった。試験例4及び5の結果も併せて考えると、焼酎粕にはストレスを緩和する効果を有し、活力低下の抑制効果や意欲・モチベーション維持効果を有する成分が含まれることが推測された。焼酎粕はヒトが食することはもちろん、飼料などとして動物も食することが知られている。そのため、焼酎粕の利用によりヒトや家畜、ペットなどのストレスの緩和などが期待できることがわかった。
[調製例1]
脱脂粉乳又は脱脂大豆たんぱく質を水に溶解し酵素処理を施し、LH、DV又はMHを約1%含有するペプチドエキスを製造する。このペプチドエキスを使用して、表13に示す組成のLH、DV又はMHを含有するレモン風味炭酸飲料を調製する。なお、ペプチドエキス及び飲料中のLH、DV及びMHはそれぞれ試験例7に示したLC/MSMS法で定量することができる。
このレモン風味炭酸飲料を摂取することにより、LH、DV又はMHを有効に摂取することができる。
[調製例2]
調製例1と同様に、LH、DV又はMHを約1%含有するペプチドエキスを製造する。このペプチドエキスを使用して、表14に示す組成のLH、DV又はMHを含有するコーヒー調製液を調製し、121℃で10分間殺菌し缶入りコーヒー飲料とする。なお、ペプチドエキス及び飲料中のLH、DV及びMHはそれぞれ試験例7に示したLC/MSMS法で定量することができる。
このコーヒー飲料を摂取することにより、LH、DV又はMHを有効に摂取することができる。
[調製例3]
調製例1と同様に、LH、DV又はMHを約1%含有するペプチドエキスを製造する。このペプチドエキスを使用して、表15に示す組成のLH、DV又はMHを含有するミルクティ調製液を調製し、121℃で10分間殺菌し缶入りミルクティ飲料とする。なお、ペプチドエキス及び飲料中のLH、DV及びMHはそれぞれ試験例7に示したLC/MSMS法で定量することができる。
このミルクティ飲料を摂取することにより、LH、DV又はMHを有効に摂取することができる。
[調製例4]
調製例1と同様に、LH、DV又はMHを約1%含有するペプチドエキスを製造する。このペプチドエキスを使用して、表16に示す組成のLH、DV又はMHを含有する果汁飲料を調製する。なお、ペプチドエキス及び飲料中のLH、DV及びMHはそれぞれ試験例7に示したLC/MSMS法で定量することができる。
この果汁飲料を摂取することにより、LH、DV又はMHを有効に摂取することができる。
[調製例5]
調製例1と同様に、LH、DV又はMHを約1%含有するペプチドエキスを製造する。このペプチドエキスを使用して、表17に示す組成のLH、DV又はMHを含有するスポーツドリンク飲料を調製する。なお、ペプチドエキス及び飲料中のLH、DV及びMHはそれぞれ試験例7に示したLC/MSMS法で定量することができる。
このスポーツドリンク飲料を摂取することにより、LH、DV又はMHを有効に摂取することができる。
[調製例6]
調製例1と同様に、LH、DV又はMHを約1%含有するペプチドエキスを製造する。このペプチドエキスを使用して、表18に示す組成のLH、DV又はMHを含有するヨーグルト風味飲料を調製する。その調製は、スターター以外の原料を、約70℃でホモジナイズし(15MPa)、加熱殺菌(95℃15分)後、スターターを添加し、30℃で10時間発酵させる。pHが4.60に達した時点で攪拌し、25℃付近まで冷却し、乳化(15MPa)処理をする。なお、ペプチドエキス及び飲料中のLH、DV及びMHはそれぞれ試験例7に示したLC/MSMS法で定量することができる。
このヨーグルト風味飲料を摂取することにより、LH、DV又はMHを有効に摂取することができる。
[調製例7]
LH、DV又はMHを含有するペプチドエキス、又はLH、DV又はMHの合成ジペプチドを製造する。このペプチドエキス又は合成ジペプチドを使用して、LH、DV又はMHを含有するタブレットを製造する。原料にはセルロース、環状オリゴ糖、ショ糖エステル、糊料 (プルラン)、リン酸カルシウム等を配合することができる。このタブレットを摂取することにより、LH、DV又はMHを有効に摂取することができる。

Claims (12)

  1. LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含む、ミクログリアの炎症を抑制するための組成物。
  2. LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含む、慢性疲労症候群、認知症及び/又は気分障害の症状を緩和、治療、又は予防するための組成物。
  3. LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含む、ストレスにより引き起こされる状態を緩和又は予防するための組成物。
  4. LHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含む、ストレスにより引き起こされる状態を緩和又は予防するための組成物。
  5. 前記ストレスにより引き起こされる状態が、意欲・モチベーションの欠如、及び/又は活力の低下である、請求項3又は請求項4記載の組成物。
  6. 飲食品組成物である請求項1乃至請求項5いずれか1項記載の組成物。
  7. 医薬組成物である請求項1乃至請求項5いずれか1項記載の組成物。
  8. タンパク質を加水分解して、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を得る工程を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項7いずれか1項記載の組成物の製造方法。
  9. 前記、タンパク質を加水分解して、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を得る工程により得られた組成物を、精製・濃縮する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項8記載の方法。
  10. 前記、タンパク質を加水分解して、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を得る工程により得られた組成物が、酒粕であることを特徴とする、請求項8又は請求項9記載の方法。
  11. LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含有する酒粕を含有させる工程を含むことを特徴とする、ストレスにより引き起こされる状態を緩和又は予防するための組成物の製造方法。
  12. 前記、LH、DVもしくはMHで表されるアミノ酸配列を有するジペプチド、又は該アミノ酸配列をコア配列として含むオリゴペプチド、又はその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含有する酒粕を、精製・濃縮する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項11記載の方法。
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