JP4459540B2 - 機能性健康飲食品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性健康飲食品に関するものであり、更に詳細には、本発明に係る機能性健康飲食品は、酒粕及び米麹を含有するものであって、抗肥満作用、血中脂質改善作用、学習記憶改善作用(健忘症抑制作用)、血圧降下作用という数多くのすぐれた機能性を有しており、健康飲食品として、各種疾病の治療や症状の軽減のほか、予防や保健あるいは予後のために長期に亘って摂取するのに特に好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、食生活の欧米化に伴う肥満をはじめ、血中脂質や血圧の上昇といった生活習慣病の増加、高齢化社会に伴う痴呆症や健忘症患者が増加しており、また、これらの患者になり得る潜在的患者は更に増加しており、しかも若年層にまで拡大しており、大きな社会問題となっている。
【0003】
これらの病態を予防、改善、治療するために、各種の薬剤が開発されており、一部は実用に供されている。本発明は、薬剤にかえ、特に安全性及び継続性の面から、飲食品、特に酒粕と米麹という特定の材料を使用し、しかも両者を混合して使用するものであるが、酒粕は、清酒もろみを圧搾して清酒を分離した残りであって、食用、漬物用、粕取り焼酎の原料として利用され(例えば、非特許文献1参照)、また、米麹は、蒸した米に麹菌を繁殖させたものであって、酒や味噌等の製造原料として使用されるほか、白米に添加してこれをかゆ状に糖化させて甘酒を製造するのにも利用されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
このように、酒粕及び米麹は各種の食品用途に使用されているが、両者を併用することによって、抗肥満、血中脂質改善、学習記憶改善、血圧降下の各作用が奏されることは、未だ報告されていない。
【0005】
【非特許文献1】
「食品工業総合事典」、光琳、昭和54年10月25日、p.379
【0006】
【非特許文献2】
「食品工業事典」、光琳、昭和54年10月25日、p.31
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
肥満等が主に生活習慣からひき起こされるものであって、その発症には比較的長期間を要することから、その発症を予防ないし抑制するには、有効性が高いだけでなく、長期間服用することのできる安全性が高く且つ嗜好性にもすぐれていること(服用しやすいこと)が必要であるとの認識にたち、本発明者らは、飲食品や飲食品原料に着目し、これらを利用することとした。すなわち、本発明は、抗肥満性等すぐれた機能性を有する健康飲食品を開発する目的でなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため、先ずはじめに、マウスにおいて、肥満試験、血圧試験、学習記憶試験の各実験系を確立するのに成功し、各種食材を対象に、マウスin vivo試験による機能性評価を行った。その結果、米麹と白米から製造した甘酒に酒粕を添加したところ、抗肥満、血中脂質改善、学習記憶改善、血圧降下の作用があることをはじめて見出し、そしてこの新知見に着目して、同様に酒粕を使用した甘酒(以下酒粕甘酒ということもある)に米麹を添加して、機能性評価を行ったところ、同じくすぐれた上記作用があることを見出し、更に研究を行い、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、酒粕及び米麹を利用することによって、抗肥満、血中脂質改善、学習記憶改善、血圧降下作用などの機能性を有する飲料あるいは食品を新たに提供するものである。
【0010】
本発明に係る機能性飲食品は、酒粕及び米麹を必須の成分として含有するものであって、酒粕及び米麹のみからなるものであってもよいし、水を添加して飲料としてもよいし、更に調味成分として、砂糖、蜂蜜、水アメ、オリゴ糖、ステビア等の甘味料を添加してもよく、所望すれば、酸味料、食塩、ショウガ、梅肉エキスその他呈味性を有する調味成分、及び、デンプン、着香料等を添加してもよい。
【0011】
また、甘酒も利用することができ、例えば、酒粕のみでなく更に米麹も原料として製造した甘酒(以下米麹入り酒粕甘酒ということもある)のほか、酒粕甘酒についてはこれに別途米麹を添加したものも使用可能であるし、米麹と白米を原料として用いて白米を糖化させてなる甘酒にあっては、これに酒粕を添加したもの等が適宜使用可能である。
【0012】
米麹入り酒粕甘酒としては、例えば総量100L中の組成として、次の組成が例示される。砂糖1〜40kg、好ましくは5〜25kg、更に好ましくは7〜20kg;酒粕0.5〜30kg、好ましくは1〜15kg、更に好ましくは3〜10kg;米麹(乾燥麹)0.05〜10kg、好ましくは0.1〜10kg、更に好ましくは0.5〜5kg;蜂蜜50〜500g;ショウガ10〜500g、好ましくは100〜300g;梅肉エキス1〜100ml、好ましくは5〜30ml;酸味料(乳酸、クエン酸、酢酸、グルコン酸、酒石酸、フマル酸等)1〜50g、好ましくは2〜20g。また、酒粕甘酒は、砂糖、酒粕、澱粉、食塩、水等からなり、その組成は上記に準ずるものである。酒粕と米麹のみを使用する場合も、上記に基づいて90:10〜10:90の配合比率の範囲で、組成、配合を適宜規定すればよい。
【0013】
本発明に係る機能性健康飲食品を製造するには、酒粕、米麹のほか、所望により上記した各成分を適宜混合、攪拌すればよいが、その際、加温してもよい。加温は、甘酒製造と同様に行えばよく、糖化促進や各成分の可食化をはかる等の目的で、例えば20〜80℃、好ましくは50〜65℃、更に好ましくは60℃前後とするのがよい。また、米麹には米粒が残っており、甘酒にももち米等の米粒が残っている場合があるし、酒粕やショウガ等も固形分を含んでいるため、磨砕処理を行って飲用しやすくしたりすることも可能である。
【0014】
また、本発明に係る機能性健康飲食品は、更に、濃縮したり、ペースト化したり、乾燥したり、ゼリー状に固めたりして加工するほか、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等サプリメントの剤型に製剤化してもよい。必要に応じて、抗肥満、血中脂質改善、学習記憶改善、血圧降下作用を有する食品成分、医薬成分等を添加してもよい。
【0015】
本発明に係る機能性健康飲食品は、これを直接飲用したり食用したりできるほか、飲食品素材としても利用することができ、ほかの飲食品に添加したり、更に調理したりすることも可能である。これらの際、、安全性には格別の問題がないので、市販されている甘酒や自家製の甘酒等と同様に適宜、適量を摂取すればよいし、食品素材として使用するときも通常の食品素材と同様に使用すればよい。
【0016】
このようにして、本発明に係る機能性健康飲食品は、抗肥満性飲食品、血中脂質改善飲食品、抗痴呆飲食品、血圧降下飲食品等として、直接飲食できるだけでなく、食品素材としても適宜使用可能である。これらの機能性が得られるメカニズムの詳細は今後の研究にまたねばならないが、ペプチド、アミノ酸、繊維、オリゴ糖、有機酸、ポリフェノール、酵素などの有効成分が相乗的に作用しているものと考えられる。
【0017】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。
【0018】
【実施例1】
酒粕6kg、米麹(乾燥麹)1kg、砂糖10kg、水アメ1kg、蜂蜜0.5kg、酸味料(乳酸)10kg、ショウガ200gに水を加えて100Lとし、品温60℃で充分に攪拌、混合し、10時間保持した後、195gずつスケール缶に充填して、健康ドリンクを製造した。この健康ドリンクは、甘酒として加温して又は加温することなく直接飲用可能であった。
【0019】
【実施例2】
肥満試験の実験系を確立し、実施例1で製造した米麹入り酒粕甘酒タイプに調製した健康ドリンク(以下、単に甘酒という)の抗肥満効果を評価した。
【0020】
コントロール群として、ICRマウス4週齢メスに対し、高脂肪飼料(牛脂粉末20%を配合)と水道水を自由摂取させた。その結果、CE−2(上記高脂肪飼料)のみを摂取させたブランク群と比較して、18日目から体重増加量が高値を示し、肥満モデルマウスの作成が認められた。
【0021】
甘酒投与群として、甘酒の固形部分は高脂肪飼料に配合し、また水溶性部分は飲料として自由摂取させた。その方法は次の通りである。甘酒を遠心分離して沈殿画分を上清画分に分けた。沈殿は等量の水で洗浄したのち乾燥重量が全体の10%になるように高脂肪飼料に配合した。沈殿を洗浄したあとの洗液は回収して、上清画分に合一させて飲料として与えた。その他については、コントロール群と同一条件で試験を行った。
【0022】
その結果、高脂肪飼料のみを摂取させたコントロール群と比較して、10日目から体重増加量が有意に抑制されて(p<0.05)、甘酒投与による抗肥満が認められた(図1)。
【0023】
【実施例3】
実施例1の試験系を用いて、甘酒の血中脂質改善効果を評価した。コントロール群ではブランク群と比較して、14日目から血中トリグリセリド濃度が有意に高くなり(p<0.05)、高脂血症モデルマウスの作成が認められた。
【0024】
甘酒投与群ではコントロール群と比較して、14日目から血中トリグリセリド濃度が有意に抑制され(p<0.05)、血中脂質改善効果が認められた(図2)。
【0025】
【実施例4】
血圧試験の実験系を確立し、甘酒の血圧降下作用を評価した。
【0026】
コントロール群として、ICRマウス4週齢メスに対し、高塩分飼料(食塩10%を配合)と水道水を自由摂取させた。その結果、CE−2(上記高塩分飼料)のみを摂取させたブランク群と比較して、19日目から血圧が高値を示し、高血圧モデルマウスの作成が認められた。
【0027】
甘酒投与群として、甘酒の固形部分は高塩分飼料に配合し、また水溶性部分は飲料として自由摂取させた。その方法は実施例2、3と同様である。以下コントロール群と同一条件で試験を行った。
【0028】
その結果、高塩分飼料のみを摂取させたコントロール群と比較して、19日目から血圧が低値を示し、甘酒投与による血圧降下作用が認められた(図3)。
【0029】
【実施例5】
学習記憶試験の実験系を確立し、甘酒の健忘症抑制効果を評価した。
【0030】
学習記憶試験にはプラットホーム式水迷路装置を用い、プラットホームへの到達時間でマウスの学習記憶能力を評価した。マウスはICRメス9週齢を用いた。獲得試行として、1日2回ずつ5日間連続で遊泳させて、マウスにプラットホームの位置を学習させた。その結果、到達時間は短縮されて、ほぼ一定値に収束した。
【0031】
コントロール群として獲得試行が終了した直後のマウスに対し、生理食塩水(20ml/kg)をゾンデで強制経口投与した。60分経過した後、スコポラミン(2mg/kg)を皮下投与して、30分後にテスト試行を行った。その結果、スコポラミン投与前と比べて到達時間は有意に延長し(p<0.05)、
健忘症モデルマウスの作成が認められた。
【0032】
甘酒投与群として、獲得試行が終了した直後のマウスに対し、甘酒(20ml/kg)をゾンデで強制経口投与した。60分経過したのち、コントロール群と同様の手順でスコポラミン投与、テスト試行を行った。その結果、コントロール群のテスト試行と比べて、到達時間は抑制されて(p<0.05)、甘酒による健忘症抑制効果が認められた(図4)。
【0033】
【実施例6】
もち米白米10kgに水20kg加えて煮た後、70℃に冷却し、米麹10kgを加えて良く混合し、55〜60℃に2日間保持して糖化した後、酒粕50kgを添加混合して、機能性健康飲料を製造した。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係る新規機能性健康飲食品は、すぐれた抗肥満作用、血中脂質改善作用、学習記憶改善作用、血圧降下作用を有し、これらの病態の予防、抑制、改善、治療に有用である。しかも、本健康飲食品は、安全性については問題はなく、更に、上記した作用をひとつではなくすべての作用を有する点できわめて特徴的である。したがって、特に生活習慣病の患者、その予防等のために、日常的に服用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る機能性健康飲食品の肥満に対する抑制効果を示す。なお、BKはブランクを示し、CONTはコントロールを示す。以下同じ。
【図2】同じく高脂血症に対する抑制効果を示す。
【図3】同じく高血圧に対する抑制効果を示す。
【図4】同じく健忘症に対する抑制効果を示す。

Claims (5)

  1. 酒粕及び米麹を混合、攪拌し、50〜65℃で加温、保持したもののみを含有してなることを特徴とする健忘症抑制性及び/又は血中脂質改善性食品。
  2. 酒粕と米麹との含有比が90:10〜10:90であることを特徴とする請求項1に記載の食品。
  3. 酒粕及び米麹を混合、攪拌し、50〜65℃で加温、保持したもののみを含有してなることを特徴とする健忘症抑制及び/又は血中脂質改善剤。
  4. 酒粕及び米麹を混合、攪拌し、50〜65℃で加温、保持したものを有効成分として含有してなることを特徴とする健忘症抑制及び/又は血中脂質改善剤。
  5. 酒粕と米麹との含有比が90:10〜10:90であることを特徴とする請求項3又は4に記載の剤。
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