JP2016222593A - ムカデの歩行を阻害する方法及びムカデの歩行阻害剤 - Google Patents

ムカデの歩行を阻害する方法及びムカデの歩行阻害剤 Download PDF

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Abstract

【課題】毒餌剤を喫食したムカデの喫食後の歩行を困難にさせて、毒餌剤の設置場所から遠くに移動することを阻害し、結果、毒餌剤の設置場所近辺の領域で死に至らしめる方法、並びにムカデの歩行を困難にさせる毒餌剤を提供すること。
【解決手段】本発明のムカデの歩行を阻害する方法は、毒餌剤にネオニコチノイド系化合物を0.01質量%以上含有させ、それをムカデに喫食させることでムカデの歩行を困難にして、前記毒餌剤の設置場所近辺の領域でムカデを死に至らしめる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ムカデの歩行を阻害する方法及びムカデの歩行阻害剤に関し、より詳しくは、毒餌剤を喫食したムカデを該毒餌剤の設置場所近辺の領域で致死させるためにムカデの歩行を阻害する方法及びムカデの歩行阻害剤に関する。
ムカデは匍匐害虫の一例であり、草むら、石垣の間、土壌中等に生息し、小型の昆虫、クモ、ミミズ等を食物とし、時には食物を求めて家屋の内部に侵入したり、家具や靴の中に潜んで、人と接触した場合に咬害を引き起こすことがある。また、その容姿や行動には恐怖や不快感を感じることから、ムカデが発生する地域では防除に対するニーズが非常に高い。
従来、ムカデの防除には、ムカデの通り道や住み処となる場所に殺虫剤を広範囲にわたって散布するという方法や毒餌剤を設置する方法、スプレー剤を用いてムカデに噴霧する方法等が提案されている。
例えば、特許文献1には、シフルトリンと、脂肪族炭化水素系溶剤及び/又は芳香族エーテル系溶剤と、グリコール系溶剤とを、それぞれ特定配合量にて鉱物質担体に担持させた匍匐害虫防除用粉剤を散布して、匍匐害虫を致死させて駆除することが提案されており、特許文献2には、ムカデの毒餌剤への誘引性を高めるために、イカの乾燥粉末、魚白子の乾燥粉末、カニ殻の粉末のうち、少なくとも1種を含有した多足類用誘引剤を毒餌剤に含有させて使用することが提案されている。
特開2012−232964号公報 特開2005−35922号公報
毒餌剤を用いてムカデを駆除する方法は、毒餌剤を設置するだけでよいため取り扱いが容易であるが、ムカデが毒餌剤を喫食した後に移動して毒餌剤の設置場所近辺から離れてしまうと、使用者はムカデの死虫が確認できず、ムカデに対する駆除効果を実感できないという問題があった。
そこで本発明は、毒餌剤を喫食したムカデの喫食後の歩行を困難にさせて、毒餌剤の設置場所から離れた場所に移動することを阻害し、結果、毒餌剤の設置場所近辺の領域で死に至らしめる方法、並びにムカデの歩行を困難にさせるムカデの歩行阻害剤を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ネオニコチノイド系化合物がムカデに対して歩行阻害を生じさせることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の(1)〜(4)によって達成されるものである。
(1)毒餌剤を喫食したムカデを前記毒餌剤の設置場所近辺の領域で死に至らしめるためにムカデの歩行を阻害する方法であって、前記毒餌剤にネオニコチノイド系化合物を0.01質量%以上含有させ、それをムカデに喫食させることを特徴とするムカデの歩行を阻害する方法。
(2)前記毒餌剤の設置場所から半径1m以内で死に至らしめることを特徴とする前記(1)に記載のムカデの歩行を阻害する方法。
(3)前記毒餌剤が、糖及びアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1種の誘引成分を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のムカデの歩行を阻害する方法。
(4)ネオニコチノイド系化合物からなり、毒餌剤に含有させることで前記毒餌剤を喫食したムカデが前記毒餌剤の設置場所近辺の領域から離れて移動しないようにムカデの歩行を阻害することを特徴とするムカデの歩行阻害剤。
本発明によれば、毒餌剤を喫食したムカデの喫食後の歩行を困難にさせるため、毒餌剤の設置場所から遠くに移動させないようにすることができ、ムカデを毒餌剤の設置場所近辺の領域で致死させることができる。よって、使用者は探さずともムカデの死虫を確認できるため、使用者に強い効果感を与えることができる。
以下、本発明に係るムカデの歩行を阻害する方法及びムカデの歩行阻害剤について、詳細に説明する。
なお、本発明において、「ムカデの歩行を阻害する(歩行阻害)」とは、ムカデが脚が縮まった状態や全身が痙攣した状態となって歩行能力が低下し、ムカデの移動を困難にさせることを意味する。
本発明のムカデの歩行を阻害する方法は、ムカデ用毒餌剤にムカデの歩行阻害剤としてのネオニコチノイド系化合物を0.01質量%以上含有させ、それをムカデに喫食させることを特徴とする。ネオニコチノイド系化合物によるムカデの歩行能力を低下させる機構は定かではないが、ネオニコチノイド系化合物は、ムカデに対して喫食させることで、他の施用方法と比べてより低濃度で歩行能力を低下させることができる。
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、ジノテフラン、アセタミプリド、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアメトキサム、チアクロプリド、クロチアニジン等が挙げられる。ネオニコチノイド系化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、歩行の阻害とともに、十分な致死効果を発揮させる等の観点から、ジノテフラン、アセタミプリドを用いることが好ましい。
毒餌剤中のネオニコチノイド系化合物の含有量は、歩行の阻害効果を勘案して決定されればよく、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上とすればよい。
さらに毒餌剤の設置場所近辺の領域で十分な致死効果を得るには、例えば、0.8質量%以上がよく、0.8〜25質量%が好ましく、0.8〜10質量%がより好ましい。毒餌剤中のネオニコチノイド系化合物の含有量が0.8質量%以上であれば、毒餌剤を喫食したムカデを毒餌剤の設置場所近辺の領域に留めるのに十分な歩行阻害効果を発揮することができる。一方、毒餌剤中にネオニコチノイド系化合物を多量に配合した場合は、忌避効果が出やすくなってムカデが毒餌剤を喫食しなくなる場合がある。また、ムカデが喫食した場合であってもムカデが激しく暴れて挙動が激しくなり、その勢いで毒餌剤の設置場所から遠くに離れてしまい、ムカデの死虫を確認できなくなる場合がある。よって、ネオニコチノイド系化合物の上限は25質量%程度とすることが好ましい。
なお、ムカデを毒餌剤の設置場所近辺の領域で致死させるためには、喫食後のムカデが急激に移動しないようにすることが好ましい。毒餌剤の設置場所から遠く離れてムカデが移動しないようにムカデの歩行を阻害するためには、ムカデに急激な殺虫効果を与えることなく、喫食時に徐々にネオニコチノイド系化合物がムカデの体内に蓄積するようにすることが好ましい。一般に、ムカデは喫食を始めると10〜20分程度は食べ続けるため、喫食を止める頃に歩行阻害効果が発現するようにネオニコチノイド系化合物の含有量を調整することが好ましい。
本発明において、使用者がムカデの死虫を確認するために、ムカデは毒餌の設置場所から半径1m以内で死に至らしめることが好ましい。半径1m以内にムカデを留め置くことで、使用者がムカデの姿を探さずとも容易に視界に入る。
本発明において、毒餌剤には殺虫成分を含有させてもよい。殺虫成分としては、例えば、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、トランスフルトリン、エトフェンプロックスなどのピレスロイド系殺虫剤、フェニトロチオン、マラチオンなどの有機リン系殺虫剤、プロポクスル、カルバリルなどのカーバメイト系殺虫剤、ホウ酸、ヒドラメチルノン、フィプロニル、シラフルオフェン、ピリプロキシフェンなどが挙げられる。
また、本発明において、ムカデの喫食性を高めるために、毒餌剤に誘引成分を含有させることが好ましい。誘引成分としては、例えば、グルコース,果糖,ガラクトース,麦芽糖,ショ糖,デキストリン,グラニュー糖,黒糖等の糖類、アラニン,グリシン,バリン,アスパラギン酸,グルタミン酸等のアミノ酸,さなぎ粉、コーンスターチ、ハチノコ、ビーフ、タマゴ、オキアミ、エビ、チーズ、畜肉、魚肉、澱粉、小麦粉、フスマ、豆、米ぬか、種子、綿実、やし油、オリーブ油、肉油、魚油、ゴマ油、ピーナッツペースト等が挙げられる。誘引成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
毒餌剤に糖類やアミノ酸を配合した場合、これらが継時的に大気中の水分を吸収して潮解し、液状となって毒餌剤の表面を覆い、毒餌剤表面が濡れたような状態(吸湿状態)となる。ムカデは表面が軟化した製剤のほうがその口部に触れた際に食べ物と認識しやすいため喫食性が高まる。よって、誘引成分として糖類やアミノ酸を用いることが好ましい。なお、「潮解」とは、物質が大気中の水分を取り込んで水溶液となる現象のことである。
毒餌剤中の誘引成分の含有量は、ムカデの誘引および喫食性を勘案して適宜決定することができる。
なお、糖類やアミノ酸を配合する場合は、設置された毒餌剤が空気中の水分を吸って液状となり、毒餌剤の表面に滲み出てくるような量が含有されていればよく、毒餌剤の形状、大きさ等により適宜設定すればよい。
本発明において、潮解した誘引成分が毒餌剤の表面に滲み出るようにするためには、毒餌剤の表面から重心までの最短距離が関係している。なお、毒餌剤の重心とは、毒餌剤の軸心上に位置する質量中心だけでなく、軸心上の幾何学的中心であってもよい。
本発明において、毒餌剤の表面から重心までの最短距離が10mm以下となるように毒餌剤を成形することが好ましい。毒餌剤の表面から重心までの最短距離を10mm以下とすることで、毒餌剤中の表面部分に近い誘引成分だけでなく、内部の誘引成分も空気中の水分を吸着して液状化し、毒餌剤の表面に滲み出やすくなる。
本発明の毒餌剤には、必要に応じて、公知の各種成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、賦形剤、酸化防止剤、保存剤、誤食防止剤、溶剤等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、ホワイトカーボン、珪藻土、結晶セルロース、クレー、カオリン、タルク、ベントナイト、シリカ、カルボキシメチルセルロース、パラフィン、ポリエチレングリコール、スチレン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、dl−α−トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等が挙げられる。
保存剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。
誤食防止剤としては、例えば、安息香酸デナトニウム、トウガラシ末等が挙げられる。
溶剤としては、水、イソプロピルアルコール、エタノール、グリセリン等のアルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、パラフィン類等が挙げられる。
この他にも、必要に応じて、香料、着色剤、pH調整剤等を用いることができる。
本発明の毒餌剤の調製方法としては、公知の手法が採用され、例えば、原料成分を混合、打錠する方法、造粒する方法等が挙げられる。
このようにして、得られた毒餌剤を家屋の内部や庭、畑等の所望の場所に設置しておくことにより、喫食したムカデの歩行を困難にさせて、毒餌剤の設置場所近辺の領域で死に至らしめることができる。
以下、本発明を以下の試験例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
<試験例1>
(毒餌剤の作製)
表1に記載の処方に従い、まずビニール袋の中にグラニュー糖を計り取り、そこに有効成分を加えて十分に混合した。つぎに水飴、ピーナッツペースト、濃グリセリンを加え、十分に攪拌・混合し、ペースト状の毒餌剤(実施例1〜5、比較例1)を製造した。
Figure 2016222593
(試験方法)
上記で得られた毒餌剤(ペースト)を約1g測り取り、縦50cm、横40cm、高さ30cmのプラスチック製の容器(バット)の側面に沿った位置に設置した。バットにトビズムカデ(体長約15cm)を1頭放ち、喫食開始からムカデの観察を行い、喫食した後のムカデの状態を継時的に確認した。なお、ムカデは喫食開始から20分程度、毒餌剤を食べ続けた。観察は1時間毎に行い、2時間後に歩行阻害効果を確認し、15時間後に致死の有無を確認した。評価基準は以下の通りである。
試験は3回行い、結果を表2に示す。
〔評価基準〕
○:歩行阻害あり(ムカデの脚が縮まった状態又は全身が痙攣している状態であり、ムカデが正常に歩行できない)
×:通常挙動
●:瀕死又は致死
(参考試験)
参考例1として、実施例1の毒餌剤を用い、クロゴキブリ(体長約5cm)に対して同様に試験した。結果を表2にあわせて示す。
Figure 2016222593
表2の結果から、実施例1〜5は喫食後1時間以内にムカデが歩行阻害を起こし、2時間後には全てのムカデに歩行阻害が見られた。そして、15時間後には瀕死又は致死させることができた。
これに対し、比較例1はムカデに歩行阻害を起こさせることが出来ず、15時間経過後も3匹のうち2匹は通常の挙動を示した。また、ゴキブリで試験した参考例1は、喫食後30分でゴキブリが激しく暴れ、歩行阻害を起こすことなく1時間後には瀕死の状態となった。
<試験例2>
(試験方法)
上記で得られた実施例1及び比較例1の毒餌剤(ペースト)を用いて、ムカデの歩行距離を計測した。
KPカップ(直径約10cm)内で飼育したトビズムカデ(体長約15cm)に毒餌剤を約1g与えて喫食させた。
20分後、喫食が終了したことを確認し、ムカデをKPカップから出して屋外の地面(砂利の上)に静置した。ムカデを静置した場所に印をつけ、ムカデの移動距離を経時的に確認した。
また、致死したムカデの静置場所からの距離を計測し、1m以内で致死した場合を、歩行阻害効果が認められる「〇」と判断し、1mを超えて離れた場所で致死した場合を、歩行阻害効果により毒餌剤の近くで致死する効果がない「×」と判断した。
試験は2回行い、結果を表3に示す。
Figure 2016222593
表3の結果から、実施例1の毒餌剤を喫食させたムカデは、ほとんど移動することなく静置場所近くで致死した。一方、比較例1の毒餌剤を喫食させたムカデは、試験開始から10分後には1m以上移動してしまった。これにより、ネオニコチノイド系化合物を喫食させることにより、ムカデに歩行阻害を起こさせ、移動を困難にさせて、静置場所から1m以内で致死させることがわかった。

Claims (4)

  1. 毒餌剤を喫食したムカデを前記毒餌剤の設置場所近辺の領域で死に至らしめるためにムカデの歩行を阻害する方法であって、前記毒餌剤にネオニコチノイド系化合物を0.01質量%以上含有させ、それをムカデに喫食させることを特徴とするムカデの歩行を阻害する方法。
  2. 前記毒餌剤の設置場所から半径1m以内で死に至らしめることを特徴とする請求項1に記載のムカデの歩行を阻害する方法。
  3. 前記毒餌剤が、糖及びアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1種の誘引成分を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のムカデの歩行を阻害する方法。
  4. ネオニコチノイド系化合物からなり、毒餌剤に含有させることで前記毒餌剤を喫食したムカデが前記毒餌剤の設置場所近辺の領域から離れて移動しないようにムカデの歩行を阻害することを特徴とするムカデの歩行阻害剤。
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