JP2016221536A - プレス成形方法、プレス成形装置およびプレス成形の基準特定システム - Google Patents
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Abstract
【課題】割れ等を回避しつつ効率的に鋼板を深絞り成形できるプレス成形方法を提供する。【解決手段】本発明のプレス成形方法は、成形凹部を有するダイと成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチとの間に被加工材である鋼板を配置する配置工程と、パンチを内挿するブランクホルダとダイとによって保持された鋼板を、ダイとパンチを近接方向に相対移動させて絞り成形する成形工程とを備える。そして本発明に係る成形工程は、ダイとパンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を、相対移動量が所定値となる変速点で、変速点前の加工速度である前期加工速度から、変速点後の加工速度であり前期加工速度よりも大きい後期加工速度へ変更することを特徴とする。加工速度の急増により歪み集中部が高強度化して、歪み集中部における板厚減少率が抑制され、割れ等の発生が回避される。【選択図】図1
Description
本発明は、割れ等を回避しつつ鋼板の絞り成形(特に深絞り成形)を効率的に行うことができるプレス成形方法と、そのようなプレス成形の実施に適したプレス成形装置と、そのようなプレス成形の加工速度を決定するに必要となる基準を特定できるプレス成形の基準特定システムに関する。
自動車、家電、家具・雑貨等の各種分野で、プレス成形(特に絞り成形)した製品(「プレス成形品」という。)が多用されている。プレス成形品は、通常、ダイの周縁部とブランクホルダ(「皺押さえ」等ともいう。)により挟持された金属板を、ダイの成形凹部とパンチの成形凸部の間で展伸または延伸させ、その金属板を所望形状に塑性変形させることにより得られる。このようなプレス成形を行うことにより、複雑な形状の部材も効率的に量産可能となる。
しかし、深絞り成形品のように金属板の塑性変形量(特に板厚減少率)が大きくなると、パンチ肩部により引き伸ばされる特定の部位(例えば、プレス成形品の底部または頂部)に割れや破損等が生じ易くなり成形性が低下する。この課題に対する提案が種々なされており、例えば、下記の特許文献に関連する記載がある。
プレス技術48巻11号(2010.11)p40−43
特許文献1は、ダイとパンチのクリアランスを一定にしつつ、段階的に成形する方法を提案している。このような成形方法では、複数の金型や多段成形が必要となり、効率的なプレス成形を行うことはできない。
特許文献2は、絞り成形部分と張出し成形部分が混在している場合に、適切な成形速度を迅速に決定できる成形条件決定システムを提案している。具体的にいうと、特許文献2には、亀裂危険度最大点の最小主ひずみが0以下であるときは成形速度を増加させ、最小主ひずみが0より大きいときは成形速度を減少させる旨が記載されている。
これを絞り成形に当てはめた場合、亀裂危険度最大点は、成形後半にパンチ肩部が鋼板と接触する特定部位に現れる。この特定部位の最小主ひずみは、通常、0より大きい。そこで特許文献2の記載に従うなら、絞り成形の成形後半では、成形速度(加工速度)を減少させることが好ましいことになる。しかし、実際には、成形後半で成形速度を減少させると、その特定部位に板厚歪みが集中し、板厚が過度に減少して、却って割れ等を生じ易くなる。
また、特許文献2は、張出成形部分において、成形速度を速くするとワークの伸びが減少するため成形速度を遅くする方が好ましい旨を述べている。しかし、このような知見は、ひずみ速度がプレス加工速度より極めて大きい場合に限られ、一般的なプレス成形の加工速度域では妥当しない。さらにいえば、特許文献2の知見は、非特許文献1に記載されている「途中から加工速度を大きくすることで張出し成形の板厚ひずみ集中を抑制できる」という知見とも矛盾する。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、鋼板を絞り成形する場合に、割れ等を回避しつつ効率的にプレス成形できるプレス成形方法を提供する。また、そのようなプレス成形の実施に適したプレス成形装置と、そのようなプレス成形の加工速度を決定するときの基準を特定できるプレス成形の基準特定システムを提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、特定部位に板厚歪みが集中して割れ等が生じ易くなる絞り成形の後半において、加工速度(パンチまたはダイのストローク速度)を急増させることにより、割れ等の発生を回避しつつ、効率的に絞り成形できることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《プレス成形方法》
(1)本発明のプレス成形方法は、成形凹部を有するダイと該成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチとの間に被加工材である鋼板を配置する配置工程と、該パンチを内挿するブランクホルダと該ダイとによって保持された該鋼板を、該ダイと該パンチを近接方向に相対移動させて絞り成形する成形工程と、を備えるプレス成形方法であって、前記成形工程は、前記ダイと前記パンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を、該相対移動量が所定値となる変速点で、該変速点前の加工速度である前期加工速度から、該変速点後の加工速度であり該前期加工速度よりも大きい後期加工速度へ変更することを特徴とする。
(1)本発明のプレス成形方法は、成形凹部を有するダイと該成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチとの間に被加工材である鋼板を配置する配置工程と、該パンチを内挿するブランクホルダと該ダイとによって保持された該鋼板を、該ダイと該パンチを近接方向に相対移動させて絞り成形する成形工程と、を備えるプレス成形方法であって、前記成形工程は、前記ダイと前記パンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を、該相対移動量が所定値となる変速点で、該変速点前の加工速度である前期加工速度から、該変速点後の加工速度であり該前期加工速度よりも大きい後期加工速度へ変更することを特徴とする。
(2)本発明のプレス成形方法(単に「成形方法」ともいう。)によれば、深絞り成形を行う場合でも、割れ等を生じることなく、良好な成形性が確保される。また本発明の成形方法では、金型の変更等によらず、成形後半で加工速度が増加するのみで対応可能であるため、生産性の向上も図り易い。また本発明の成形方法によれば、割れ等の不具合を抑止できる結果、従来よりも深い絞り成形が可能となり、絞り成形品の形状自由度を一層拡大することが可能となる。
(3)本発明の成形方法により、そのような優れた成形性が得られる理由は次のように考えられる。絞り成形品の割れ等は、加工量(ダイとパンチの相対移動量、ストローク量)が増加すると、特定部位の板厚が過度に減少し、その特定部位が破断して生じる。換言するなら、絞り成形の深さを大きくしたときに、被加工材である鋼板の板厚減少歪み(単に「板厚歪み」ともいう。)が集中する部位(適宜「歪み集中部」または単に「集中部」という。)の破断が割れとなる。
ところで本発明では、特定部位に歪み集中が生じ易い成形後半(変速点以降)において、加工速度を増加させている。これにより、その特定部位(歪み集中部)における歪み速度も増加することになるが、鋼板は、歪み速度が大きくなると、材料強度も大きくなる性質を有する。このため、加工速度の増大により、歪み集中部は周囲よりも高強度となり、その周囲の塑性変形が促進され、歪み集中部における板厚減少歪みは逆に抑制されるようになる。こうして本発明のように成形後半で加工速度を増加させると、深絞り成形した場合でも、特定部位における割れ等を抑止できるようになる。
なお、加工速度を成形当初から大きくすると、歪み速度の増加に応じて鋼板全体が高強度化し、却って成形性が低下する。従って、歪みが特定部位に集中し難い成形前半では、加工速度を抑制して成形性を確保する。そして、歪みが特定部位に集中し易くなる成形後半では、加工速度を増加させて特定部位における歪み集中を抑制する。これにより、割れ等を生じることなく、より深い絞り成形を効率的に行うことが可能となる。
(4)本発明に係る変速点は、実機による実験を繰り返して求めることもできるし、シミュレーション解析により求めることもできる。いずれにしても、変速点を定める際の基準があると、変速点を効率的に設定できる。そこで本発明に係る変速点は、一定な第一加工速度で連続的に鋼板を絞り成形するリニアモーション成形を行ったときに得られる該鋼の板厚減少率の極大値である第一ピークが、第一加工速度よりも大きな第二加工速度で断続的に鋼板を絞り成形するステップモーション成形を行ったときに得られる鋼板の板厚減少率の極大値である第二ピークよりも大きくなるときの相対移動量である変移点(基準)に基づいて決定されると好適である。なお、リニアモーション成形やステップモーション成形は、シミュレーション解析する場合の他、例えば、サーボプレス機を用いれば実機で行うことも可能である。
《プレス成形装置》
本発明はプレス成形方法としてのみならず、プレス成形装置としても把握できる。すなわち本発明は、成形凹部を有するダイと該成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチを近接方向に相対移動させる駆動源を制御して、該ダイと該パンチの間に配置されると共に該パンチを内挿するブランクホルダと該ダイとにより保持された被加工材である鋼板を絞り成形する制御手段を備えるプレス成形装置であって、前記制御手段は、前記ダイと前記パンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を、該相対移動量が所定値となる変速点で、該変速点前の加工速度である前期加工速度から、該変速点後の加工速度であり該前期加工速度よりも大きい後期加工速度へ変更することを特徴とするプレス成形装置でもよい。
本発明はプレス成形方法としてのみならず、プレス成形装置としても把握できる。すなわち本発明は、成形凹部を有するダイと該成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチを近接方向に相対移動させる駆動源を制御して、該ダイと該パンチの間に配置されると共に該パンチを内挿するブランクホルダと該ダイとにより保持された被加工材である鋼板を絞り成形する制御手段を備えるプレス成形装置であって、前記制御手段は、前記ダイと前記パンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を、該相対移動量が所定値となる変速点で、該変速点前の加工速度である前期加工速度から、該変速点後の加工速度であり該前期加工速度よりも大きい後期加工速度へ変更することを特徴とするプレス成形装置でもよい。
《プレス成形の基準特定システム》
さらに本発明は、変速点や加工速度を特定する際に用いるシミュレーションシステムとしても把握できる。例えば、本発明は、成形凹部を有するダイと該成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチを近接方向に相対移動させて、該ダイと該パンチの間に配置されると共に該パンチを内挿するブランクホルダと該ダイとにより保持された被加工材である鋼板を絞り成形するときに、該ダイと該パンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を決定するときの基準を特定するプレス成形の基準特定システムであって、一定な第一加工速度で連続的に前記鋼板を絞り成形するリニアモーション成形を行ったときに得られる該鋼板の板厚減少率を算出する第一算出ステップと、該第一加工速度よりも大きな第二加工速度で断続的に該鋼板を絞り成形するステップモーション成形を行ったときに得られる該鋼板の板厚減少率を算出する第二算出ステップとを備え、該第一算出ステップで得られる板厚減少率の極大値である第一ピークが該第二算出ステップで得られる板厚減少率の極大値である第二ピークよりも大きくなるときの前記相対移動量である変移点を前記加工速度を決定するときの基準とすることを特徴とするプレス成形の基準特定システムでもよい。
さらに本発明は、変速点や加工速度を特定する際に用いるシミュレーションシステムとしても把握できる。例えば、本発明は、成形凹部を有するダイと該成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチを近接方向に相対移動させて、該ダイと該パンチの間に配置されると共に該パンチを内挿するブランクホルダと該ダイとにより保持された被加工材である鋼板を絞り成形するときに、該ダイと該パンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を決定するときの基準を特定するプレス成形の基準特定システムであって、一定な第一加工速度で連続的に前記鋼板を絞り成形するリニアモーション成形を行ったときに得られる該鋼板の板厚減少率を算出する第一算出ステップと、該第一加工速度よりも大きな第二加工速度で断続的に該鋼板を絞り成形するステップモーション成形を行ったときに得られる該鋼板の板厚減少率を算出する第二算出ステップとを備え、該第一算出ステップで得られる板厚減少率の極大値である第一ピークが該第二算出ステップで得られる板厚減少率の極大値である第二ピークよりも大きくなるときの前記相対移動量である変移点を前記加工速度を決定するときの基準とすることを特徴とするプレス成形の基準特定システムでもよい。
なお、成形量(相対移動量)があまり大きくない成形前半では、大きな板厚歪みが特定部位に集中することが少なく、第一算出ステップと第二算出ステップとの算出結果にも大差は生じ難い。このため、第二算出ステップは、相対移動量が大きくなる成形後半のみで行ってもよい。また、変移点を特定する際に、相対移動量の他、第一加工速度や第二加工速度等も種々変更してシミュレーションすることにより、成形前半の加工速度(前期加工速度)や成形後半の加工速度(後期加工速度)に関する好適な範囲の予測も可能となる。
《その他》
本明細書でいう「相対移動量」は、鋼板(ブランク材)を絞り成形をする際に、ダイとパンチが基準点から近接する距離である。ダイまたはパンチの一方が移動する場合、ダイまたはパンチが成形開始点(例えば、パンチ頂面が鋼板に接触する位置)から移動した距離、つまりストローク量となる。
本明細書でいう「相対移動量」は、鋼板(ブランク材)を絞り成形をする際に、ダイとパンチが基準点から近接する距離である。ダイまたはパンチの一方が移動する場合、ダイまたはパンチが成形開始点(例えば、パンチ頂面が鋼板に接触する位置)から移動した距離、つまりストローク量となる。
「加工速度」はその相対移動量(通常はストローク量)の時間変化率であり、「変速点」はその加工速度が変化するポイント(位置、時間)である。変速点は、加工速度の増加により歪み集中が抑制される点に設定されればよい。但し、絞り成形する成形品の形状(全ストローク量)が同じでも、加工速度の大きさ等に応じて変速点を設定すべき位置(相対移動量の所定値)は異なり得る。また、変速点の設定位置は、特定の相対移動量(ストローク量)そのもので指標されてもよいし、特定の時間(例えば、加工速度を考慮した成形開始からの経過時間)で指標されてもよい。この点は、後述する変移点についても同様である。
変速点後の加工速度である後期加工速度は、その大きさを一概に特定することは困難であるが、例えば、変速点前の加工速度である前期加工速度の2〜30倍さらには10〜30倍であると好適である。後期加工速度が過小では特定部位における歪み集中の抑制効果が不十分となる。一方、過大な後期加工速度は現実的ではなく、却って成形性を低下させ得る。なお、成形前半(変速点前の区間)と成形後半(変速点後の区間)で加工速度が一定でないときは、変速点近傍の前後における加工速度をそれぞれ前期加工速度および後期加工速度とする。
「変移点」は、上述した変速点を設定する際の基準となるポイントである。変速点は、変移点と必ずしも一致している必要はないが、少なくとも変移点の近傍に設定されることが好ましい。例えば、変速点は、変移点を中心として、全相対移動量の20%以内さらには10%以内の位置に設定されると好ましい。
プレス成形品(ダイとパンチ)の形状に応じて、板厚減少歪みが集中する特定部位(歪み集中部)が複数存在する場合もあり得る。このため本明細書でいう「板厚減少率の極大値(第一ピークまたは第二ピーク)」は、必ずしも、リニアモーション成形またはステップモーション成形を行ったときに得られる板厚減少率の最大値でなくてもよい。例えば、絞り成形中に歪み集中が最初に生じる特定部位について、その板厚減少率の極大値を第一ピークまたは第二ピークとしてもよい。なお、通常、歪み集中部はパンチ肩部と接触(摺接)する鋼板部分(成形部分)に生じ易い。
本発明に係るプレス成形は絞り成形を対象としており、成形の進行に伴い、ブランク材(鋼板)の外周囲長は縮小する。この点で、その外周長が維持される張出し成形と本発明に係る絞り成形とは異なる。なお、本発明に係るプレス成形は、冷間成形でも、熱間成形でもよい。
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
本明細書で説明する内容は、プレス成形方法のみならず、プレス成形装置やプレス成形の基準特定システム、さらにはその成形方法を用いて得られたプレス成形品にも適宜該当し得る。方法に関する構成要素は、プロダクトバイプロセスクレーム等として理解すれば物(成形装置やプレス成形品)に関する構成要素ともなり得る。上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《鋼板》
被加工材である鋼板は、その種類を問わず、一般的な炭素鋼板でも、合金鋼板でも、ステンレス鋼板(特にマルテンサイト系ステンレス鋼板)等でもよい。
被加工材である鋼板は、その種類を問わず、一般的な炭素鋼板でも、合金鋼板でも、ステンレス鋼板(特にマルテンサイト系ステンレス鋼板)等でもよい。
《金型》
本発明に係るダイとパンチは、その具体的な形態は問わない。また、本発明に係るブランクホルダ(皺押さえともいう。適宜ダイクッションを含む。)も、鋼板をプレス成形する際に、成形部の外周囲(フランジ部)を保持できれば足りる。ダイとパンチは、少なくともどちらかが駆動されれば足る。
本発明に係るダイとパンチは、その具体的な形態は問わない。また、本発明に係るブランクホルダ(皺押さえともいう。適宜ダイクッションを含む。)も、鋼板をプレス成形する際に、成形部の外周囲(フランジ部)を保持できれば足りる。ダイとパンチは、少なくともどちらかが駆動されれば足る。
《プレス成形品》
本発明に係るプレス成形品は、その形態や用途は問わないが、例えば、車両ボディ、バンパー、オイルパン、インナーパネル、ピラー、ホイルハウス等に用いられる。
本発明に係るプレス成形品は、その形態や用途は問わないが、例えば、車両ボディ、バンパー、オイルパン、インナーパネル、ピラー、ホイルハウス等に用いられる。
円板状の薄い鋼板(ブランク材)を冷間で深絞り成形して、有底円筒状のプレス成形品を得る場合についてシミュレーション解析を行い、成形速度(加工速度)と板厚減少率の関係を明らかにした。以下、このような具体例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
《モデリング》
シミュレーションに用いたモデルを図1に示した。具体的にいうと、プレス成形用金型は、先端外周部が丸め面取りされた円柱状のパンチ(φ33mmの剛体)と、開口周縁部が丸め面取りされた円筒状のダイ(φ36.52mmの剛体)と、そのパンチを囲繞する円環状のブランクホルダ(剛体)とにより構成した。また、ブランク材は、自動車用外板等に用いる軟鋼板(JIS規格:SCGA270D相当)からなる薄円板(φ66mm×板厚:0.7mm)とした。
シミュレーションに用いたモデルを図1に示した。具体的にいうと、プレス成形用金型は、先端外周部が丸め面取りされた円柱状のパンチ(φ33mmの剛体)と、開口周縁部が丸め面取りされた円筒状のダイ(φ36.52mmの剛体)と、そのパンチを囲繞する円環状のブランクホルダ(剛体)とにより構成した。また、ブランク材は、自動車用外板等に用いる軟鋼板(JIS規格:SCGA270D相当)からなる薄円板(φ66mm×板厚:0.7mm)とした。
《シミュレーション解析》
上述したダイおよびブランクホルダは固定とし、パンチをダイに向けて(図中下方へ)移動させて、絞り成形のシミュレーションを行った。シミュレーションには、動的陽解法FEMソフトウェア(米国LSTC社製LS−DYNA)を用いた。
上述したダイおよびブランクホルダは固定とし、パンチをダイに向けて(図中下方へ)移動させて、絞り成形のシミュレーションを行った。シミュレーションには、動的陽解法FEMソフトウェア(米国LSTC社製LS−DYNA)を用いた。
(1)リニアモーション成形とステップモーション成形
先ず、パンチを図2Aに示すように二通りでストロークさせて、リニアモーション(Linea motion)成形とステップモーション(Step motion)成形を行った場合について解析した。リニアモーション成形は、パンチの先端面が鋼板に接触した成形開始点(ストローク量=0mm)から成形終了点(ストローク量=9〜15mm)まで、ストローク速度(加工速度)をほぼ一定な0.17mm/sで成形した場合である。ステップモーション成形は、成形開始点から成形中間点(ストローク量=7.8mm)まではリニアモーションと同様にストローク速度をほぼ一定な0.17mm/sで成形し、その成形中間点から成形終了点まで、最大ストローク速度を3.3mm/sとして断続的に成形した場合である。なお、ステップモーション成形では、1ステップのストローク量:1.2mm、ステップ毎の停止時間:7秒とした。
先ず、パンチを図2Aに示すように二通りでストロークさせて、リニアモーション(Linea motion)成形とステップモーション(Step motion)成形を行った場合について解析した。リニアモーション成形は、パンチの先端面が鋼板に接触した成形開始点(ストローク量=0mm)から成形終了点(ストローク量=9〜15mm)まで、ストローク速度(加工速度)をほぼ一定な0.17mm/sで成形した場合である。ステップモーション成形は、成形開始点から成形中間点(ストローク量=7.8mm)まではリニアモーションと同様にストローク速度をほぼ一定な0.17mm/sで成形し、その成形中間点から成形終了点まで、最大ストローク速度を3.3mm/sとして断続的に成形した場合である。なお、ステップモーション成形では、1ステップのストローク量:1.2mm、ステップ毎の停止時間:7秒とした。
このような絞り成形により得られるプレス成形品の1/4カットモデルの立体平面図を図2Bに示した。このモデルについて、その中心(O)を通るA−A断面について、各位置における板厚減少率を求めた(算出ステップ)。板厚減少率は、初期の板厚(t0)に対する板厚減少量(Δt)の割合(百分率)である。なお、板厚減少量(Δt)は、初期の板厚(t0)から成形後の各部位における板厚(t)を差し引いたものである。
成形終了点に至るストローク量を9〜15mmの範囲で種々変更して、リニアモーション成形とステップモーション成形をそれぞれ行った得られる各位置における板厚減少率を図2Cに併せて示した。
図2Cから明らかなように、中心から15〜20mmの範囲で板厚減少が集中していることがわかる。つまり、上記のモデルの場合、その範囲内に、板厚減少歪みが集中する歪み集中部が現れることがわかる。なお、その範囲は、パンチ肩部が接触する領域でもある。
また図2Cから明らかなように、全ストローク量が小さい浅絞り成形のとき、リニアモーション成形を行ったときの板厚減少率の極大値(第一ピーク)は、ステップモーション成形を行ったときの板厚減少率の極大値(第二ピーク)と同等か、それよりも少し小さくなっている。しかし、全ストローク量が大きい深絞り成形になると、逆に、第一ピークが第二ピークよりも大きくなった。具体的にいうなら、全ストローク量が11.4mmのときと12.6mmのときとの間で、第一ピークと第二ピークの大小が逆転し、その境界(変移点)がそれらの間に存在することになる。本実施例では、両者の中間値(平均値)であるストローク量:12mmを変移点とした。
(2)深絞り成形
上記の変移点を基準として、同じ位置(変速点)でストローク速度を変更して絞り成形(深さ:15mm)した場合についてシミュレーションを行った。このときのストローク速度(ストローク量と時間の関係)を図3に示した。図3中、変速点以前のストローク速度(前期加工速度)は0.17mm/sとし、変速点以降のストローク速度(後期加工速度)は3.3mm/sとした。なお、比較例として、全ストローク量(15mm)を一定のストローク速度(0.17mm/s)で絞り成形した場合についてもシミュレーションした。
上記の変移点を基準として、同じ位置(変速点)でストローク速度を変更して絞り成形(深さ:15mm)した場合についてシミュレーションを行った。このときのストローク速度(ストローク量と時間の関係)を図3に示した。図3中、変速点以前のストローク速度(前期加工速度)は0.17mm/sとし、変速点以降のストローク速度(後期加工速度)は3.3mm/sとした。なお、比較例として、全ストローク量(15mm)を一定のストローク速度(0.17mm/s)で絞り成形した場合についてもシミュレーションした。
それぞれの場合について得られた1/4カットモデルを図4に示した。図4から明らかなように、成形後半でストローク速度を大幅に上昇させることにより、15mmの深絞り成形を行っても、最大板厚減少率は22%に抑制されることがわかった。一方、一定の低いストローク速度で全成形工程を行った場合、最大板厚減少率は41%となることもわかった。このように大きな板厚減少率は、軟鋼板の破断領域である。
以上のことから、従来のようにストローク速度を一定としたままでは割れ(破断)を生じるような場合でも、適切なポイントまたはタイミングでストローク速度を大幅に増加させることにより、(最大)板厚減少率を抑制でき、割れ等を生じることなく、深絞り成形できることがわかった。
Claims (4)
- 成形凹部を有するダイと該成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチとの間に被加工材である鋼板を配置する配置工程と、
該パンチを内挿するブランクホルダと該ダイとによって保持された該鋼板を、該ダイと該パンチを近接方向に相対移動させて絞り成形する成形工程と、
を備えるプレス成形方法であって、
前記成形工程は、前記ダイと前記パンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を、該相対移動量が所定値となる変速点で、該変速点前の加工速度である前期加工速度から、該変速点後の加工速度であり該前期加工速度よりも大きい後期加工速度へ変更することを特徴とするプレス成形方法。 - 前記変速点は、一定な第一加工速度で連続的に前記鋼板を絞り成形するリニアモーション成形を行ったときに得られる該鋼板の板厚減少率の極大値である第一ピークが、該第一加工速度よりも大きな第二加工速度で断続的に該鋼板を絞り成形するステップモーション成形を行ったときに得られる該鋼板の板厚減少率の極大値である第二ピークよりも大きくなるときの前記相対移動量である変移点に基づいて決定される請求項1に記載のプレス成形方法。
- 成形凹部を有するダイと該成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチを近接方向に相対移動させる駆動源を制御して、該ダイと該パンチの間に配置されると共に該パンチを内挿するブランクホルダと該ダイとにより保持された被加工材である鋼板を絞り成形する制御手段を備えるプレス成形装置であって、
前記制御手段は、前記ダイと前記パンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を、該相対移動量が所定値となる変速点で、該変速点前の加工速度である前期加工速度から、該変速点後の加工速度であり該前期加工速度よりも大きい後期加工速度へ変更することを特徴とするプレス成形装置。 - 成形凹部を有するダイと該成形凹部に対応する成形凸部を有するパンチを近接方向に相対移動させて、該ダイと該パンチの間に配置されると共に該パンチを内挿するブランクホルダと該ダイとにより保持された被加工材である鋼板を絞り成形するときに、該ダイと該パンチの相対移動量の時間変化率である加工速度を決定するときの基準を特定するプレス成形の基準特定システムであって、
一定な第一加工速度で連続的に前記鋼板を絞り成形するリニアモーション成形を行ったときに得られる該鋼板の板厚減少率を算出する第一算出ステップと、
該第一加工速度よりも大きな第二加工速度で断続的に該鋼板を絞り成形するステップモーション成形を行ったときに得られる該鋼板の板厚減少率を算出する第二算出ステップとを備え、
該第一算出ステップで得られる板厚減少率の極大値である第一ピークが該第二算出ステップで得られる板厚減少率の極大値である第二ピークよりも大きくなるときの前記相対移動量である変移点を前記加工速度を決定するときの基準とすることを特徴とするプレス成形の基準特定システム。
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JP2015109025A JP2016221536A (ja) | 2015-05-28 | 2015-05-28 | プレス成形方法、プレス成形装置およびプレス成形の基準特定システム |
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JP2015109025A Pending JP2016221536A (ja) | 2015-05-28 | 2015-05-28 | プレス成形方法、プレス成形装置およびプレス成形の基準特定システム |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019181517A (ja) * | 2018-04-11 | 2019-10-24 | 日本製鉄株式会社 | 凹状エンボス部を有する自動車外板パネルの製造方法およびプレス成形装置 |
JP2020142286A (ja) * | 2019-03-07 | 2020-09-10 | 株式会社豊田中央研究所 | ショックラインの評価方法および評価装置 |
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2015
- 2015-05-28 JP JP2015109025A patent/JP2016221536A/ja active Pending
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JP2019181517A (ja) * | 2018-04-11 | 2019-10-24 | 日本製鉄株式会社 | 凹状エンボス部を有する自動車外板パネルの製造方法およびプレス成形装置 |
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