JP2016221441A - 水溶液中の溶質成分の抽出法 - Google Patents

水溶液中の溶質成分の抽出法 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶液等に含まれる目的成分について成分組成を維持しつつ高い回収率にて抽出する方法の提供。【解決手段】−5℃以下の温度で流動性を有する樹脂である疎水性の有機溶媒を用いて水溶液等から香気成分を抽出する操作において、凍結濃縮により水を選択的に除去しつつ低温で抽出することにより、成分変化を抑え、成分組成を維持しつつ高い回収率にて目的成分を抽出する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、溶質成分を含む水溶液等から、疎水性の有機溶媒を用いて該溶質成分を液々抽出するに際し、液々抽出と同時に水分除去工程を併用せしめることを特徴とする高効率な溶質成分の抽出法に関する。
水溶液等、すなわち水溶液や疎水性成分が分散した水溶液から、溶質成分を有機溶媒に抽出する機会は、生理活性物質、タンパク質、香料や金属の分離・抽出等多岐にわたる。たとえば香料の取り扱いにおいては、動植物原料等を水蒸気蒸留や水抽出して得られる水溶液の香気成分を分析する場合、香気成分を水溶液等から揮発性の高い有機溶媒に移行させ、不揮発性成分を取り除いた後に溶媒を回収して分析試料とすることがなされる。
また、キャンディー、ベーカリー製品、調理食品、チョコレート、チューインガム、マーガリン等のように生地が油に馴染む食品に香り付けをする場合には、水溶液等の香気成分を油脂等に移行させ、調製した油溶性香料を添加することがなされる。
水溶液等の香気成分を油脂類に移行させた場合、不安定な香気成分の安定化も期待できる(特許文献1)。
水溶液等の溶質成分を有機溶媒に抽出する一般的な方法としては、合成吸着剤等の担体に溶質成分を吸着せしめ有機溶媒で分離回収するクロマト分離法や、溶解度差を利用して水と任意の割合で混和しない有機溶媒に移行せしめて回収する液々抽出法を挙げることができる。
しかしながら、クロマト分離法や液々抽出法では次に掲げる問題があり、水溶液等の溶質成分を有機溶媒に抽出する方法として必ずしも満足できるものではない。
クロマト分離法の例として、特許文献2には多孔性重合樹脂または化学結合型シリカゲルで水溶液等の溶質成分を吸着させ、次いで液状のトリグリセドを用いて溶質成分を溶出させる方法が記載されているが、単一成分の分離には好適であるものの、溶質成分が複数成分に亘る場合は、担体への吸着効率が個々の成分ごとに異なるため、それら成分をバランス良く回収することが難しい。
液々抽出法では、溶解度差を利用して疎水性の有機溶媒に溶質成分を移行させるため、水への溶解性が高い溶質成分の回収には適さない。
また、液々抽出法で効果的に溶質成分の回収を行おうとする場合、一般に複数回の抽出操作を伴い多量の有機溶媒を要するため、減圧等による溶媒留去操作が必要となるが、溶質成分が低沸点化合物である場合には散逸の問題が生じる。
液々抽出の回収効率を向上させる手段として、水溶液の塩析処理や、目的成分を含む均一溶液から相分離現象を利用して回収する均一液々抽出法(非特許文献1)が挙げられる。
しかしながら、これらの手法においても、天然物由来の溶質成分のように多種多様な極性化合物の混合成分を、バランス良く回収するのに十分な高親水性成分に対する抽出効率の向上は達成されない。
さらに、均一液々抽出法では、使用可能な溶媒が限られるため用途も限定される。
水溶液等の成分を分析する際の精度向上や、より天然らしさが求められる香料分野の抽出操作においては、前述の問題は無視できるものではない。
特開昭49−047562号公報 特開昭59−169464号公報
押手茂克著 八戸工業高等専門学校紀要 第45号 2010年12月 11−14頁
従って本発明の課題は、水溶液等から目的成分を散逸させることなくバランス良くかつ高回収率に回収する方法を提供することである。
本発明者らは、水溶液等から成分を液々抽出する過程で水分を系外へ排除することにより、水−有機溶媒間の成分分配を有機溶媒側に偏りが生じ、従来の液々抽出における高親水性成分の回収率の低さを解消可能と考えた。また、水溶液中の水分量が減少することにより、少量の有機溶媒での液々抽出が可能となるため、液々抽出後の溶媒留去の必要性が下がり溶質成分の揮発による散逸の課題も同時に解決可能と考えた。
これらの考えに基づき鋭意研究を進めた結果、水溶液等から溶質成分を液々抽出する過程で、水溶液から水分を除去する方法として凍結濃縮法を適用することにより、課題に対して顕著な効果が得られることを見出した。
凍結濃縮法は水分を氷晶として分離する濃縮法で、非加熱処理であることから水中の成分の劣化が少なく、濃縮の際の成分ロスは個々の成分の特性に左右されにくい特徴を有する。
しかしながら、凍結濃縮法では水中の成分を氷晶外部へ排除しつつ氷を成長させる必要があるため、通常は氷と水の接触効率が重要と考え、あえてそれを阻害すると想像されうる、水と混和しない有機溶媒を加えるという発想には容易に至らない。
かくして、溶質成分を水溶液等から液々抽出する過程において、凍結濃縮法により水分を除去する工程を同時に併用することにより、従来の液々抽出と比較して溶質成分バランスが飛躍的に良好で高回収率かつ高濃度に抽出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、水溶液等から疎水性の有機溶媒を用いて溶質成分を回収するに際し、凍結濃縮により水分を除去する工程を同時に行うことにより、溶質成分をきわめて効率的に有機溶媒に移行せしめることを特徴とする高効率液々抽出法である。
本発明によれば、抽出もしくは回収する目的成分を含む水溶液等から、組成を損なうことなく目的成分を高回収率かつ高濃度に抽出することができる。また、本発明は低温下に行われるため、加熱による変化を起こしやすい成分を、より高回収率かつ高濃度に抽出もしくは回収することができる。
実施例1において使用した界面前進凍結濃縮装置の概略図である。 図2は、水分除去率に対してピリジン、アセトイン、酢酸の回収率をプロットして各プロット間を直線でつないだグラフである。
本発明の抽出法は、目的成分を含む水溶液等から液々抽出によって目的成分を抽出分離する方法であって、液々抽出と同時に凍結濃縮を行うものである。本発明によれば、抽出工程後は、凍結濃縮によって生成した氷晶である固体相と液相を分離し、液相に水相が残存するときは公知の方法によって適宜、水相と疎水性有機溶媒相とに分離される。分離された有機溶媒相は、必要に応じて公知の方法によって有機溶媒を除去し、目的成分を得ることができる。
本発明における目的成分を含む水溶液等としては、目的成分が水に溶解しているもの、目的成分が水中に乳化状態で分散するものなど、いかような形態のものでも使用できるが、「特許庁 標準技術集(香料)2−1−4−1 濃縮」に記載されているように、凍結濃縮法は固形分30%程度以上の水溶液からは水を満足に除去できないため、固形分30%未満の水溶液等が本発明の適用対象とされる。本発明は、液々抽出時に水相の水を選択的に分離し、水相の濃度を上昇させることによって疎水性溶媒相への目的成分の移行を促進する方法であるため、より低濃度の水溶液等に対して好ましく用いられる。具体的には、実質的に固形分を含まない水を主体とする液体、たとえば動植物原料の水蒸気蒸留液のような低濃度の無固形分の水溶液等から、香気成分などの目的成分を抽出もしくは回収する手段として、特に好ましく用いられる。
本発明の液々抽出法で用いられる、疎水性有機溶媒としては、凍結濃縮操作において工業的に現実的な速度かつスケールで対象試料から氷晶を生成可能な冷却温度、すなわち−5℃以下の温度で流動性を有するものが使用される。具体的には、ヘキサン、ペンタン、酢酸エチル、ジクロロメタン等の各種有機溶媒を任意に使用することができるが、回収した香気成分を飲食品に適用する場合には食品製造に適した溶剤が選択され、好ましくは抽出液から溶媒を回収せずに使用できる食品や食品添加物である油脂類が例示される。さらに具体的な油脂類としては、例えばナタネ油、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ種子油、ゴマ油、トウモロコシ油、ヌカ油、コーヒー豆油、ヒマシ油、ピスタチオナッツ油、ココナッツ油、ツバキ油、魚油、飽和脂肪酸トリグリセリド等のトリグリセリドあるいはこれらの任意の混合物の如きトリグリセリドを例示することができる。
本発明の液々抽出法において、目的成分を含む水溶液等と抽出溶媒である疎水性溶媒との比率は特に限定されないが、水の除去量を勘案して決定され、一般的な液々抽出法と比較して疎水性溶媒の比率を低く設定することができる。具体的な比率としては、たとえば水溶液等:疎水性溶媒の比率として1:1〜100:1の数値を例示できる。
本発明においては、水を氷晶として分離させる方法として凍結濃縮法を用いる。本発明の操作により、液相と固体相の二相に分離し、さらに液相は水相と疎水性溶媒相とに分離する。本発明の液相では、水相と疎水性溶媒相からなる二相系の液々抽出が行われ、水相の水が結晶(氷晶)として析出し水相から固体相へと移行する(分離する)。水の結晶構造中には基本的に他分子を含みにくいため、氷晶とすることで水相から高精度に水を分離することができる。これにより、水が減少することで水相の濃度が上昇し、これに伴い目的成分はさらに疎水性溶媒相へと移行する。したがって本発明における目的成分の回収量および抽出液の濃度は、水と使用される疎水性溶媒における目的成分の分配係数と氷晶の形成による水の除去量に依存する。
本発明の水分を除去する工程を同時に行う液々抽出法において、除去する水の量は限定されないが、高親水性成分の回収率を高め、よりバランスの良い抽出液を得るために水溶液に含まれる水分の50〜100%、より好ましくは90〜100%除去することが望ましい。
本発明で利用する凍結濃縮法は既知の装置・方法で実施することができるが、氷晶の形成及び成長の制御がより容易な方法が好ましい。具体的な方法としては、界面前進凍結法が挙げられる。また本発明においては、氷晶と水溶液の固液界面において液相に疎水性の液滴を含み、固液界面付近における液相の撹拌速度に影響される氷晶成長の均一性が、固液界面の形状の複雑さによる氷晶のマクロ構造における液滴の取込み量に直接的に影響するため、固液界面付近の撹拌速度が調整可能な方法であることが好ましい。このことから、界面前進凍結法においても、流下液膜式界面前進凍結法として知られている方法よりも、氷晶面付近の液相を撹拌する、「Journal of Food Science(1998),63号,756-758頁(Miyawaki O. et al.)」や「Journal of Food Engineering(2005),69号,107-113頁(Miyawaki O.et al.)」に記載の如き装置を用いた界面前進凍結濃縮法がより好ましい。
本発明の水を除去する工程を同時に行う液々抽出法において、凍結濃縮による水の除去速度(1分間あたりに形成する氷晶量の水溶液の量に対する比率で規定)は、特に限定されないが、速度が速いほど氷晶のマクロ構造への水相または疎水性溶媒相の液滴を取り込む量が増加するため、1wt%/min以下、より好ましくは0.7wt%/min以下とすることが望ましい。
液々抽出法により得られる有機溶媒相は、分液操作を行って水相を除去することができ、さらには、脱水剤を用いて適宜に精製することもできる。
以下実施例により本発明の好ましい態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
焙煎コーヒー豆粉砕物400gを蒸留釜に仕込み、常法の水蒸気蒸留により蒸留液(A)400gを得た。このコーヒー蒸留液400gおよびトリアセチン75gを何れも0℃に冷却してから界面前進凍結濃縮装置に仕込み、下記の条件下で水を氷晶として除去しながら香気成分の液々抽出を行った。なお本実施例では図1に示す凍結濃縮装置を使用して液々抽出を行った。すなわち有底円筒形のステンレス製容器1内に入れた試料液・抽出溶剤2を撹拌翼3で固液界面付近を撹拌しながら該容器を冷媒4中へ、モーター5とその回転軸に接続されたベルトプーリー6およびボールネジ7の機構によって制御された速度で沈め、一塊の氷晶8を一次元方向に成長させることで水分を除去しながらその上部に抽出液と残留した水溶液とを得た。
撹拌翼の回転速度:600rpm
冷媒温度:−15℃
容器の下降速度:1cm/時
凍結時間:15時間
(水の除去速度:0.1wt%/min)
得られたトリアセチン相とは分離して得られた水相2gを分液操作により除き、本発明の実施例1のコーヒーアロマ抽出液50gを得た。
(比較例1)
実施例1と同様にしてコーヒー蒸留液(A)400gを得た。このコーヒー蒸留液400gおよびトリアセチン75gをビーカー中で30分間激しく撹拌し、成分の液々抽出を行った。次に、水相を分液操作により除き、本発明の比較例1のコーヒーアロマ抽出液50gを得た。
(香気成分分析1)
実施例1および比較例1をガスクロマトグラフィーにより分析した。分析結果から算出した総香気成分濃度[{検出ピーク面積(ガスクロマトグラム上の総ピーク面積から内部標準物質およびその溶媒及びトリアセチンのピーク面積を減算した面積)/内部標準物質のピーク面積}×内部標準物質の濃度]を表1に示す。また分析結果を酸、エステル、アルコール、ケトン、ピラジン、ピリジン、ピロール、フェノール、フラン、ラクトン部位を有する化合物群に分類し、それら化合物群について蒸留液Aに対する実施例1および比較例1の回収率を表2に示す。
Figure 2016221441
Figure 2016221441
表1の通り実施例1では、比較例1と比較して総香気成分濃度の高い抽出液を得た。また表2の通り実施例1は、比較例1と比較して回収した香気成分組成バランスが飛躍的に改善した。
コーヒー蒸留液中の成分のうちで、比較的親水性の高い酢酸、γ-ブチロラクトン、及びピリジンについて比較例1の含有量に対する実施例1の含有量の倍率がそれぞれ36.2倍、6.8倍、25.2倍であったことからも、本発明が親水性の高い香気成分の抽出に対して特に効果的であることが示唆された。
(官能評価1)
本実施例1および比較例1を市販の缶コーヒー(ブラック・無糖タイプ・フレーバー無添加)に0.05%量それぞれ添加し、これらについてよく訓練されたパネル10名により官能評価を行った。香気強度、コーヒー感の2項目に関して、市販の缶コーヒー(ブラック・無糖タイプ・フレーバー無添加)と比較したときの効果を5点法で評価した。10名のパネラーによる評点の平均値を表3に示す。
Figure 2016221441
表3の通り、何れの評価項目でも実施例1は比較例1を凌駕する得点を得た。これにより分析結果、すなわち実施例1における香気成分組成バランスの飛躍的改善ならびに酸や窒素化合物といったコーヒーの重要な香気成分の回収率の著しい向上、を支持する官能評価結果が得られた。
実施例1と同様にしてコーヒー蒸留液(A)400gを得た。このコーヒー蒸留液400gおよび飽和中鎖脂肪酸油混合物であるスコレー(日清オイリオグループ株式会社登録商標)50gを何れも0℃に冷却してから、実施例1と同一の凍結濃縮装置ならびに条件下で水を氷晶として除去しながら香気成分の液々抽出を行った。次に、得られたスコレー相とは分離して得られた水相2gを分液操作により除き、本発明の実施例2のコーヒーアロマ抽出液50gを得た。
(比較例2)
実施例2と同様にしてコーヒー蒸留液(A)400gを得た。このコーヒー蒸留液400gおよびスコレー50gをビーカー中で30分間激しく撹拌し、成分の液々抽出を行った。次に、水相を分液操作により除き、本発明の比較例2のコーヒーアロマ抽出液50gを得た。
(香気成分分析2)
実施例2および比較例2をガスクロマトグラフィーにより分析した。分析結果から算出した総香気成分濃度[{検出ピーク面積(ガスクロマトグラム上の総ピーク面積から内部標準物質およびその溶媒及びスコレー由来のピーク面積を減算した面積)/内部標準物質のピーク面積}×内部標準物質の濃度]を表4に示す。また分析結果を酸、エステル、アルコール、ケトン、ピラジン、ピリジン、ピロール、フェノール、フラン、ラクトン部位を有する化合物群に分類し、それら化合物群について蒸留液Aに対する実施例2および比較例2の回収率を表5に示す。
Figure 2016221441
Figure 2016221441
表5の通り実施例2では、比較例2と比較して総香気成分濃度の高い抽出液を得た。スコレーはトリアセチンと比較して極性が低いため、極性の高い成分に関する実施例2の回収率は比較例に対して実施例1ほど向上しなかったが、香気成分組成バランスは改善した。
(官能評価2)
0.05%量のコーヒープレスオイルを添加した市販のサラダ油をベースとし、該ベースに実施例2および比較例2をそれぞれ0.1%添加し、これらについてよく訓練されたパネル10名により官能評価を行った。香気強度、コーヒー感の2項目に関して、ベースと比較したときの効果を5点法で評価した。10名のパネラーによる評点の平均値を表6に示す。
Figure 2016221441
表6の通り、何れの評価項目でも実施例2は比較例2を凌駕する得点を得た。すなわち官能評価1の場合と同様に分析結果を支持する官能評価結果が得られた。
本発明において抽出溶剤への成分移行率に及ぼす氷晶として除去する水分量(水分除去率)の影響を検証するため、実施例1で得たコーヒーアロマ中に検出された比較的親水性の高い化合物のピリジン、アセトイン、および酢酸を検証成分としてそれぞれ1%溶液となるように添加したモデル水溶液をまず調製した。該モデル水溶液400gおよびトリアセチン75gを何れも0℃に冷却してから、実施例1と同一の凍結濃縮装置ならびに条件下で水を氷晶として除去しながら香気成分の液々抽出を行い、表7に示す水分除去率の異なる5水準のサンプル3−1、3−2、3−3、3−4、3−5を得た。ここで水分除去率は、{(処理前のモデル水溶液重量−液々抽出後の水相重量)/処理前のモデル水溶液重量}×100の算出式で求めた。
Figure 2016221441
(比較例3)
実施例3で調製したモデル水溶液400gおよびトリアセチン75gをビーカー中で30分間激しく撹拌し、成分の液々抽出を行った。次に、水相を分液操作により除き、本発明の比較例2の抽出液50gを得た。
実施例3で得たサンプルおよび比較例3をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、各水準におけるピリジン、アセトイン、酢酸の回収率は表8に示す通りであった。実施例3−5のみ比較例3に対する優位性が認められなかったが、水分除去率の上昇に伴い何れの成分も飛躍的に回収率が向上し、水分除去率80%程度以上の領域では比較例3すなわち通常の液々抽出法による回収率をはるかに凌駕した。
Figure 2016221441
水分除去率の成分回収率に対する影響をピリジン、アセトイン、酢酸の別にグラフ化して図2に示す。
白ゴマ粉砕物400gを蒸留釜に仕込み、常法の水蒸気蒸留により蒸留液400gを得た。この白ゴマ蒸留液400gおよびトリアセチン75gを何れも0℃に冷却してから、実施例1と同一の凍結濃縮装置ならびに条件下で水を氷晶として除去しながら香気成分の液々抽出を行った。次に、得られたトリアセチン相とは分離して得られた水相2gを分液操作により除き、本発明の実施例4の白ゴマアロマ抽出液50gを得た。
(比較例4)
実施例3と同様にして白ゴマ蒸留液400gを得た。この白ゴマ蒸留液400gおよびトリアセチン75gをビーカー中で30分間激しく撹拌し、成分の液々抽出を行った。次に、水相を分液操作により除き、本発明の比較例4のコーヒーアロマ抽出液50gを得た。
(官能評価4)
実施例4および比較例4を市販のゴマドレッシングに0.1%量それぞれ添加し、これらについてよく訓練されたパネル10名により官能評価を行った。香気強度、ゴマ焙煎感の2項目に関して、市販のゴマドレッシングと比較したときの効果を5点法で評価した。10名のパネラーによる評点の平均値を表9に示す。
Figure 2016221441
表9の通り、実施例4の香気香味は比較例4と比較して高い香気強度と焙煎感を有していた。
セロリシード400gを蒸留釜に仕込み、常法の水蒸気蒸留によりセロリシード蒸留液400gを得た。このセロリシード蒸留液400gおよびトリアセチン75gを何れも0℃に冷却してから、実施例1と同一の凍結濃縮装置ならびに条件下で水を氷晶として除去しながら香気成分の液々抽出を行った。次に、得られたトリアセチン相とは分離して得られた水相5gを分液操作により除き、本発明の実施例5のセロリシードアロマ抽出液50gを得た。
(比較例5)
実施例5と同様にしてセロリシード蒸留液400gを得た。このセロリシード蒸留液400gおよびトリアセチン75gをビーカー中で30分間激しく撹拌し、成分の液々抽出を行った。次に、水相を分液操作により除き、本発明の比較例5のコーヒーアロマ抽出液50gを得た。
(官能評価5)
実施例5および比較例5を市販インスタントのトマトベース野菜スープに0.1%量それぞれ添加し、これらについてよく訓練されたパネル10名により官能評価を行った。香気強度、コク味、風味の天然らしさの3項目に関して、市販インスタントのトマトベース野菜スープと比較したときの効果を5点法で評価した。10名のパネラーによる評点の平均値を表10に示す。
Figure 2016221441
表10の通り、実施例5の香気香味は、比較例5と比較して高い香気強度とコク味を有しており、風味の複雑性が増したことによる天然らしさの向上が確認された。
1 有底円筒形のステンレス製容器
2 試料液・抽出溶剤
3 撹拌翼
4 冷媒
5 モーター
6 ベルトプーリー
7 ボールネジ
8 氷晶

Claims (7)

  1. 水溶液もしくは疎水性成分が分散した水溶液から、疎水性溶媒を用いて成分を抽出または回収する液々抽出法において、水相から水を除去しつつ抽出または回収を行う方法。
  2. 水を除去する手段が、凍結濃縮法である請求項1に記載の方法。
  3. 凍結濃縮法が、界面前進凍結濃縮法である請求項1に記載の方法。
  4. 界面前進凍結濃縮法が、固液界面付近で液相を撹拌しつつ行う請求項3に記載の方法。
  5. 疎水性有機溶媒が、−5℃以下の温度で流動性を有する油脂である請求項1に記載の方法。
  6. 請求項1乃至5に記載の方法を用いる香気成分の抽出または回収方法。
  7. 請求項6の方法を用いて製造された香料組成物。
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