JP2016213613A - 開放型ヘッドホン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ヘッドホンユニット5を備え、前記ヘッドホンユニットの後部側が開放された開放型のヘッドホン1であって、前記ヘッドホンユニットの後に配置された保護ネット25と、前記保護ネットを保持する保持部材29を有し、後部側に配置される前記保護ネットは、後方に突出するドーム状に形成されている。
【選択図】図1
Description
以下、コンデンサヘッドホンを例に説明する。コンデンサヘッドホンに用いられる電気音響変換器(コンデンサヘッドホンユニットと呼ぶ)には、シングル型と、プッシュプル型とがある。シングル型では、振動板の片側に固定極が配置され、プッシュプル型では、振動板の両側に固定極が配置される。前記シングル型では、低域共振周波数を下げることに問題があるため、全帯域型の実現が困難とされている。そのため、特許文献1、2に示されるように現在実用化されているものの殆どがプッシュプル型である。
コンデンサヘッドホンユニット55において、その振動板51は前記のように数μmの厚みであるため、変換効率を高めるためには、音響機械振動系のインピーダンスが低く設計されなければならない。このため音波が自由空間に効率良く放射されるためには、振動板の近傍にこれを妨げるような音響インピーダンスを形成する構造物が無いことが好ましい。
一方、後部側(耳側とは反対側)は大気に開放されているため、図5に示すように振動板中央から球面波として音波が放射される。そのため、保護ネットには空気分子の流れを伴う応力が加わる。より具体的には、音波が振動板中央から拡散し、音波の粒子変位の振幅が大きくなるため、保護ネットの中央部およびその付近が振動しやすくなる。このため、特に後部側の保護ネット56の機械強度は高くなければならない。
しかしながら、機械強度の高い線径が太い金属網の空間率は低い。このような金属網は不要な音響インピーダンスを構成し、自由空間への音波の放射を妨げる。そのため、細い線径で一定の空間率を備え、機械強度が高い保護ネットを用いた開放型コンデンサヘッドホンが望まれている。
尚、前記保持部材は、前記ヘッドホンユニット後部側において、前記保護ネットの周端部が係止可能な係止部を有し、前記保護ネットは、周端部が径方向外側に付勢する状態で前記係止部に係止していることが望ましい。
また、前記保護ネットは、少なくとも40〜60%の空間率を有する金属網により形成されていることが望ましい。
また、前記ヘッドホンユニットとして、固定極板に振動板が対向配置されたコンデンサヘッドホンユニット、或いは、動電型ヘッドホンユニットを適用することができる。
また、保護ネットをドーム状に形成したことにより、ネットが平坦形状の場合よりも、振動板中央からネットまでの距離が長くなる。そのため、球面波として放射される音波による振動が抑制される。
さらに、前記保護ネットはネット周端部が径方向外側に付勢する状態で係止部に係止し支持される。そのため、保護ネットには応力が掛かり続け、保護ネットの張力が小さくなる。したがって、細径で空間率が高い金属網であっても、機械的強度が向上し、放射された音波による不要な振動が予防できる。
以上から、音波による保護ネットの振動を抑制し、ネットの振動に起因する異音の発生を防止することができる。
前記コンデンサヘッドホンユニット5は、図において左右に相対向して接着された一対の振動板リング6、7を備えている。また、それら振動板リング6,7の間には、薄い振動板8が張設されている。
また、前記振動板8は、例えば厚さ1.5μmの薄いフィルム状に形成されている。この振動板8は、例えばPET、PPS、PENなどの高分子フィルムからなる。
固定極9,10には、多数の孔(図示せず)が開けられている。この多数の孔は、振動板からの音声波を放出するために設けられている。尚、固定極9,10の振動板8との対向面には、高分子フィルムを帯電処理してなるエレクトレット材が貼付されている。
また、この一対の固定極9,10の一面側の周縁部には、絶縁座11、12が当接している。この絶縁座11、12は絶縁性材料からなる枠体である。絶縁座11、12は、接着剤により固定極9,10を支持している。
このように大気(自由空間)に開放された後部側に配置される保護ネット25にあっては、ドーム状に形成されることによって、ネットが平坦の場合よりも開口面が大きくなり、音波の通過可能な面積が大きくなる。さらに、保護ネットが平坦の場合と比較して、保護ネット25はドーム形状であるため、保護ネット25の中央部の音源からの距離が遠くなる。また、保護ネット25は保持部材29の内周面に形成された溝部29aに係止して支持されるため、保護ネット25の周端部には応力が加わる。したがって、保護ネット25の機械的強度は向上する。さらに、保護ネット25の張力はこの応力によって発生しないため、保護ネット25の不要な振動が抑制される。
ここで、大気に開放された後部側において、振動板8の後部(防湿膜21の後部)には、保護ネット25により覆われた空気室(スチフネスsb)が形成されている。この空気室が無い場合には、振動板8の駆動を阻害する要因がないため、音響的には好ましい。本発明の構成にあっては、保護ネット25をドーム状に形成しているため、ネットが平坦の場合よりも、ネット全体の面積が大きくなる。即ち、空気の連通可能な領域が大きくなり、音響抵抗r1は小さくなる。また、保護ネットが平坦な場合と比較して、振動板8の後部側の容積が大きくなる。そのため、等価的に前記スチフネスが小さくなる。これらの結果、自由空間への音波の放射を妨げる音響インピーダンスを形成する構造物が無く、自由空間、すなわち、大気との音響インピーダンスの整合が取れ、振動板8の駆動がスムーズになる。
また、保護ネット25をドーム状に形成したことにより、ネットが平坦形状の場合よりも振動板中央からネットまでの距離が長くなり、球面波として放射される音波による振動の発生を抑制することができる。
さらに、前記保護ネット25は、ネット周端部が径方向外側に付勢する状態で溝部29aに係止し支持されるため、保護ネット25に応力を与え続けることができ、細径で開口が高い金属網であっても機械的強度を確保することができる。
また、前記応力により、保護ネット25は張力が発生しない状態で保持部材29の内周面に支持される。
以上から、音波による保護ネット25の振動を抑制し、ネットの振動に起因する異音の発生を防止することができる。
例えば、図4は、本発明に係るヘッドホンを開放型のダイナミック型ヘッドホンに適用した場合の断面図である。
図4に示すように、ヘッドホン30は、電気音響変換器であるヘッドホンユニット31を備える。ヘッドホンユニット31は、振動板32、磁気回路部33を含んで構成されている。図示しない音声再生機器からヘッドホンユニット31のボイスコイル34に音声信号が電流として通電されることにより、振動板32が振動してスピーカとして動作する。振動板32が振動することで、ヘッドホンユニット31から音声が放音される。
一方、前記イヤーパッド36とは反対側(後部側)には、ヘッドホンユニット31を機械的に保護するドーム状(半球状)の保護ネット37が設けられている。バッフル板35の後部側には、環状の保持部材37が設けられており、この保持部材37の内周面に形成された溝部37a(係止部)にその周端部(ネット周端部)が係止されることで、保護ネット37は支持されている。保護ネット37には、例えば細い線径で十分な空間率を有する金属網等(例えば、直径0.35mm、20メッシュ)が用いられる。
2 イヤーパッド
5 コンデンサヘッドホンユニット
8 振動板
9 固定極
10 固定極
25 保護ネット
29 保持部材
29a 溝部(係止部)
30 ダイナミックヘッドホン(開放型ヘッドホン)
31 ダイナミックヘッドホンユニット
32 振動板
33 磁気回路
34 ボイスコイル
37 保持部材
37a 溝部(係止部)
38 保護ネット
Claims (5)
- ヘッドホンユニットを備え、前記ヘッドホンユニットの後部側が開放された開放型のヘッドホンであって、
前記ヘッドホンユニットの後に配置された保護ネットと、前記保護ネットを保持する保持部材を有し、
後部側に配置される前記保護ネットは、後方に突出するドーム状に形成されていることを特徴とする開放型ヘッドホン。 - 前記保持部材は、前記ヘッドホンユニット後部側において、前記保護ネットの周端部が係止可能な係止部を有し、
前記保護ネットは、周端部が径方向外側に付勢する状態で前記係止部に係止していることを特徴とする請求項1に記載された開放型ヘッドホン。 - 前記保護ネットは、少なくとも40〜60%の空間率を有する金属網により形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたコンデンサヘッドホン。
- 前記ヘッドホンユニットは、固定極板に振動板が対向配置されたコンデンサヘッドホンユニットであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載された開放型ヘッドホン。
- 前記ヘッドホンユニットは、動電型ヘッドホンユニットであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載された開放型ヘッドホン。
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