本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、導電性部材を磁気空隙に備えていても、その振動による放射音が再生音質に与える影響が少ない磁気回路、および、これを用いた動電型スピーカーを提供することにある。
本発明の磁気回路は、マグネットと、マグネットとともに環状の磁気空隙を有する磁路を形成する複数の磁路構成部材と、導電平面部、ならびに、導電平面部の外周側端部から略直角方向に延設される導電筒状部、を有する導電性部材と、導電性部材の導電平面部の振動を抑制する制振部材と、を備え、磁路構成部材が、磁気空隙の内周側を形成するセンタープレート又はポールを含み、導電性部材の導電筒状部が、磁気空隙の内周側を覆うようにセンタープレートの側面又はポールの凸状部の側面に固着され、制振部材が、導電性部材の導電平面部の一方面に固着される。
好ましくは、本発明の磁気回路は、制振部材が、磁路構成部材を兼用して磁路ならびに磁気空隙の内周側を形成するセンタープレートであり、複数の磁路構成部材が、磁気空隙の外周側を形成するヨークを含み、センタープレートの底面に導電性部材の導電平面部の一方面を固着し、かつ、センタープレートの側面に導電性部材の導電筒状部を固着し、導電性部材の導電平面部の他方面にマグネットの一方面を固着し、マグネットの他方面にヨークの内底面部を固着する。
さらに、好ましくは、本発明の磁気回路は、マグネットの着磁方向に対して逆方向に着磁した反発マグネットをさらに備え、センタープレートの上面に、反発マグネットの底面を固着する。
また、好ましくは、本発明の磁気回路は、制振部材が、磁路構成部材を兼用して磁路ならびに磁気空隙の内周側を形成するセンタープレートであり、複数の磁路構成部材が、ポールと、磁気空隙の外周側を形成するトッププレートと、を含み、センタープレートの底面に導電性部材の導電平面部の一方面を固着し、かつ、センタープレートの側面に導電性部材の導電筒状部を固着し、導電性部材の導電平面部の他方面にポールの凸状部を固着し、ポールのアンダープレートにマグネットの底面を固着し、マグネットの上面にトッププレートを固着する。
また、好ましくは、本発明の磁気回路は、導電性部材の導電平面部の一方面に固着される制振部材が、平板状の弾性体と、弾性体に振動可能に固着される非磁性かつ非導電性の質量体と、であり、複数の磁路構成部材が、磁気空隙の内周側を形成するセンタープレートと、磁気空隙の外周側を形成するヨークと、を含み、センタープレートの上面に導電性部材の導電平面部の他方面を固着し、かつ、センタープレートの側面に導電性部材の導電筒状部を固着し、センタープレートの底面にマグネットの上面を固着し、マグネットの底面にヨークの内底面部を固着する。
また、好ましくは、本発明の磁気回路は、導電性部材の導電平面部の一方面に固着される制振部材が、平板状の弾性体と、弾性体に振動可能に固着される非磁性かつ非導電性の質量体と、であり、複数の磁路構成部材が、磁気空隙の内周側を形成するポールと、磁気空隙の外周側を形成するトッププレートと、を含み、ポールの凸状部に導電性部材の導電平面部の他方面を固着し、かつ、ポールの凸状部の側面に導電性部材の導電筒状部を固着し、ポールのアンダープレートにマグネットの底面を固着し、マグネットの上面にトッププレートを固着する。
また、本発明の動電型スピーカーは、振動板と、コイルが巻回されて振動板と連結するボビンを有するボイスコイルと、振動板の外周端側を支持するエッジと、ボビンと連結して振動板の内周端側を支持するダンパーと、エッジおよびダンパーの外周端側をそれぞれ固定するフレームと、フレームと連結して磁気空隙にコイルを配置する磁気回路と、を備える。
以下、本発明の作用について説明する。
本発明の磁気回路は、マグネットと、複数の磁路構成部材と、導電性部材と、導電平面部の振動を抑制する制振部材と、を備え、これらは接着剤によって固着される。具体的には、マグネットは、希土類磁石等の強磁性体を含む永久磁石であり、複数の磁路構成部材は、ヨーク、プレート、ポール等の透磁率が高い鉄等の金属で形成された部材であり、磁気空隙の内周側を形成するセンタープレート又はポールを含む。複数の磁路構成部材は、マグネットとともに環状の磁気空隙を有する磁路を形成し、マグネットの材料、形状、及び、磁気空隙との配置関係によって内磁型磁気回路、もしくは、外磁型磁気回路、さらに反発マグネットを備える場合には反発型磁気回路、のいずれかを構成する。
そして、本発明の動電型スピーカーは、これらの磁気回路のいずれかを用いて構成され、振動板と、コイルが巻回されて振動板と連結するボビンを有するボイスコイルと、振動板の外周端側を支持するエッジと、ボビンと連結して振動板の内周端側を支持するダンパーと、エッジおよびダンパーの外周端側をそれぞれ固定するフレームと、を備え、磁気回路は、フレームと連結して磁気空隙にコイルを配置する。
導電性部材は、環状の磁気空隙が規定する内側平面に対応する導電平面部、ならびに、導電平面部の外周側端部から略直角方向に延設される導電筒状部、を有する。すなわち、導電性部材は、円盤状の導電平面部とその外周側端部から略直角方向に延設される導電筒状部を有し、代表的には、全体として凹形状を有する銅合金からなる銅キャップである。本発明の磁気回路では、導電性部材は、その導電筒状部が磁気空隙の内周側を覆うように磁路構成部材に固着される。導電性部材は、円盤状の導電平面部に加えて磁気空隙中に位置するボイスコイルに近接する導電筒状部を有するので、ボイスコイルから発生する交流磁束が交叉しやすくなり、動電型スピーカーの高音域における再生音圧レベルを上昇させる、または、歪特性を改善する、等の導電性部材を設ける効果を、発揮することができる。
一方、本発明の磁気回路では、制振部材が、導電性部材の導電平面部の一方面に固着される。制振部材は、磁路構成部材を兼用して磁路ならびに磁気空隙の内周側を形成するセンタープレートであるか、平板状の弾性体と、この弾性体に振動可能に固着される非磁性かつ非導電性の質量体と、の組み合わせであるか、のいずれかである。なお、導電性部材の導電平面部の一方面とは、凹形状の凹側もしくは凸側のいずれか一方の円盤状の面であり、例えば、凹側を一方面とする場合には、凸側が他方面である。
制振部材は、磁気回路で発生する振動に起因して導電性部材が振動して放射する振動放射音、および、導電性部材に流れる誘導電流に起因して導電性部材が振動して放射する振動放射音を、それぞれ抑制する。具体的には、導電性部材の導電平面部の一方面にセンタープレートが固着されると、導電性部材の導電平面部の振動の振幅が制限されるので、導電性部材の振動放射音は減少する。もしくは、導電性部材の導電平面部の一方面に平板状の弾性体および非磁性かつ非導電性の質量体が固着されると、導電性部材の導電平面部の振動は、平板状の弾性体および非磁性かつ非導電性の質量体が形成する振動系で吸収されるので、その結果、導電性部材の振動放射音は減少する。
本発明の動電型スピーカーは、これらの磁気回路のいずれかを用いて構成されるので、導電性部材を磁気空隙に備えていても、その振動による放射音が再生音質に与える影響を少なくすることができる。したがって、導電性部材を設けて、動電型スピーカーの高音域における再生音圧レベルを上昇させる、または、歪特性を改善する、等の利点を得るとともに、導電性部材の振動放射音を抑制して、再生音質の改善を図ることができる。
導電性部材を設けて、動電型スピーカーの高音域における再生音圧レベルを上昇させる、または、歪特性を改善する、等の利点を得るとともに、導電性部材を磁気空隙に備えていても、その振動による放射音が再生音質に与える影響が少ない磁気回路、および、これを用いた動電型スピーカーを提供することができる。
図1は、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する図である。図1(a)は、動電型スピーカー1の断面図であり、図1(b)は、動電型スピーカー1を構成する内磁型磁気回路10について説明する断面図である。動電型スピーカー1は、コーン型振動板2と、ボイスコイル3と、内磁型磁気回路10を備えるコーン型スピーカーである。なお、説明に不用な動電型スピーカー1の一部の構造や、内部構造等は、省略している。
動電型スピーカー1のコーン型振動板2は、その外周端にエッジ4が接着されており、また、内周端にボイスコイル3のボビン3bが接着されている。コーン型振動板2は、スピーカーの振動板として代表的に用いられるものであり、その材料やコーンカーブの形状を問わない。ボイスコイル3は、音声電流が供給されるコイル3aと、コイル3aがその一端側に巻回されるボビン3bから形成される。コイル3aからの引出線は錦糸線8にハンダ付けされ、フレーム6に固定されるターミナル9にハンダ付けされる。ダストキャップ7は、コーン型振動板2の内周側を閉塞するように連結され、接着剤で固定される。
エッジ4は、柔軟性を有するロールエッジであり、後述するフレーム6の固定部にその外周側が固定される。また、ダンパー5は、柔軟性を有するコルゲーションダンパーであり、ボビン3bのコイル3aが巻回されない他端側と連結してコーン型振動板2の内周端側を支持する。ダンパー5の外周端側は、フレーム6の固定部に固定される。フレーム6は、バスケット状に成形されており、底部に内磁型磁気回路10を連結する。
したがって、コーン型振動板2、ボイスコイル3、エッジ4、ダンパー5およびダストキャップ7からなるスピーカー振動系は、フレーム6および内磁型磁気回路10に対して振動可能に支持され、ボイスコイル3のコイル3aは、後述する内磁型磁気回路10の磁気空隙15に配置される。ターミナル9および錦糸線8を通じてコイル3aに音声電流が供給されると、磁気空隙15での直流磁界によって駆動力が発生し、コーン型振動板2での振動が音波に変換されて、その結果、動電型スピーカー1から音声が再生される。
内磁型磁気回路10は、マグネット11と、センタープレート12と、ヨーク13と、銅キャップ16と、から構成され、これらは接着剤で固着される。銅キャップ16は、厚さ0.2〜0.3mmの銅板をプレス成型したものであり、円盤状の導電平面部16aと、その外周側端部から略直角方向に延設される導電筒状部16bを有し、全体として凹形状である。内磁型磁気回路10では、センタープレート12の底面に銅キャップ16の導電平面部16aの凹側が固着し、センタープレート12の側面に銅キャップ16の導電筒状部16bが固着し、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側にマグネット11の上面が固着し、マグネット11の底面にヨーク13の内底面部が固着する。
着磁されたマグネット11を含む内磁型磁気回路10では、マグネット11が発生する直流磁束が通過する磁路が形成され、センタープレート12とヨーク13との間に円環状の磁気空隙15が形成される。センタープレート12は磁気空隙15の内周側を形成し、ヨーク13は磁気空隙15の外周側を形成する。上記のように、磁気空隙15では、銅キャップ16の導電筒状部16bが磁気空隙15の内周側、つまり、センタープレート12の側面を覆うように固着される。
その結果、内磁型磁気回路10を備える動電型スピーカー1では、磁気空隙15に配置される銅キャップ16がボイスコイル3に近接するので、ボイスコイル3から発生する交流磁束が銅キャップ16に交叉しやすくなる。動電型スピーカー1では、その電気インピーダンス特性が高音域で上昇せず、動電型スピーカー1の高音域における再生音圧レベルが上昇し、歪特性が改善される。また、内磁型磁気回路10では、銅キャップ16の導電平面部16aの凹側にセンタープレート12が固着されるので、後述するように、センタープレート12は、内磁型磁気回路10の磁路を形成するとともに、銅キャップ16が振動して放射する振動放射音を抑制する制振部材として機能する。
図2は、本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカーを構成する他の磁気回路を説明する図である。図2(a)は、反発型磁気回路17の断面図であり、図2(b)は、外磁型磁気回路20について説明する断面図である。前述の内磁型磁気回路10と、反発型磁気回路17と、外磁型磁気回路20とは、それぞれ同形状のセンタープレート12、および、それぞれ同形状の銅キャップ16を有する点で共通する。反発型磁気回路17および外磁型磁気回路20は、動電型スピーカー1を構成するのと同一のスピーカー振動系およびフレームをそれぞれ連結することにより、(図示しない)本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカーを構成する。なお、これらの動電型スピーカーの構造は、共通するので説明を省略する。
反発型磁気回路17は、前述の銅キャップ16を含む内磁型磁気回路10に、反発マグネット18をさらに加えて構成されている。すなわち、マグネット11の着磁方向に対して逆方向に着磁した反発マグネット18をさらに備え、センタープレート12の上面に、反発マグネット18の底面が固着する。反発型磁気回路17では、センタープレート12とヨーク13との間に円環状の磁気空隙19が形成される。
したがって、反発型磁気回路17の磁気空隙19には、さらに強い直流磁界が発生する。反発型磁気回路17を備える動電型スピーカーは、前述の動電型スピーカー1と同様に、その電気インピーダンス特性が高音域で上昇せず、歪特性が改善される。また、動電型スピーカーの再生音圧レベルは、全体的にさらに上昇する。なお、前述の内磁型磁気回路10と共通するところの説明は省略するが、センタープレート12は、反発型磁気回路17においても磁路を形成するとともに、銅キャップ16が振動して放射する振動放射音を抑制する制振部材として機能する。
一方、外磁型磁気回路20は、マグネット21と、センタープレート12と、ポール23と、トッププレート24と、銅キャップ16と、から構成され、これらは接着剤で固着される。外磁型磁気回路20では、センタープレート12の底面に銅キャップ16の導電平面部16aの凹側が固着し、センタープレート12の側面に銅キャップ16の導電筒状部16bが固着し、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側にポール23の凸状部が固着し、ポール23のアンダープレートにマグネット21の底面が固着し、マグネット21の上面にトッププレート24が固着する。
着磁されたマグネット21を含む外磁型磁気回路20では、マグネット21が発生する直流磁束が通過する磁路が形成され、センタープレート12とトッププレート24との間に円環状の磁気空隙25が形成される。センタープレート12は磁気空隙25の内周側を形成し、トッププレート24は磁気空隙25の外周側を形成する。上記のように、外磁型磁気回路20の磁気空隙25では、銅キャップ16の導電筒状部16bが磁気空隙25の内周側、つまり、センタープレート12の側面を覆うように固着される。
その結果、外磁型磁気回路20を備える動電型スピーカーでも、磁気空隙25に配置される銅キャップ16がボイスコイルに近接するので、ボイスコイルから発生する交流磁束が銅キャップ16に交叉しやすくなり、その電気インピーダンス特性が高音域で上昇せず、動電型スピーカーの高音域における再生音圧レベルが上昇し、歪特性が改善される。なお、外磁型磁気回路20でも、銅キャップ16の導電平面部16aの凹側にセンタープレート12が固着されるので、センタープレート12は、外磁型磁気回路20の磁路を形成するとともに、銅キャップ16が振動して放射する振動放射音を抑制する制振部材として機能する。
図3は、本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカーを構成する他の磁気回路を説明する図である。図3(a)は、内磁型磁気回路30の断面図であり、図3(b)は、外磁型磁気回路40について説明する断面図である。内磁型磁気回路30と、外磁型磁気回路40とは、それぞれ同形状の銅キャップ16、および、それぞれ同形状の弾性体37、そして、それぞれ同形状の質量体38を有する点で共通する。内磁型磁気回路30および外磁型磁気回路40は、前述の動電型スピーカー1を構成するのと同一のスピーカー振動系およびフレームをそれぞれ連結することにより、(図示しない)本発明の動電型スピーカーを構成する。なお、これらの動電型スピーカーの構造等は、共通するので説明を省略する。
内磁型磁気回路30は、前述のマグネット11と、センタープレート12と、ヨーク13と、銅キャップ16と、これらに加えて、平板状の弾性体37、および、非磁性かつ非導電性の質量体38、から構成される。マグネット11、センタープレート12、ヨーク13、および、銅キャップ16は接着剤で固着される。内磁型磁気回路30における銅キャップ16は、前述の内磁型磁気回路10の場合とは上下を逆にして使用される。つまり、内磁型磁気回路30では、センタープレート12の上面に銅キャップ16の導電平面部16aの凹側が固着し、センタープレート32の側面に銅キャップ16の導電筒状部16bが固着し、センタープレート12の底面にマグネット11の上面が固着し、マグネット11の底面にヨーク13の内底面部が固着する。
また、平板状の弾性体37は、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側に固着され、非磁性かつ非導電性の質量体38は、弾性体37に振動可能に固着される。具体的には、平板状の弾性体37は、例えば、スポンジ状の多孔質体を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ゴム、等を材料とする発泡フォームを円盤状に成形したものであり、弾性を有して厚み方向に変形可能である。また、非磁性かつ非導電性の質量体38は、例えば、密度並びに硬度の高いゴム、樹脂、等を弾性体37の形状に沿った円盤状に成形したものである。銅キャップ16および弾性体37は、接着剤で固着され、質量体38は、弾性体37を覆うように接着剤で固着される。
着磁されたマグネット11を含む内磁型磁気回路30では、マグネット11が発生する直流磁束が通過する磁路が形成され、センタープレート12とヨーク13との間に円環状の磁気空隙35が形成される。センタープレート12は磁気空隙35の内周側を形成し、ヨーク13は磁気空隙35の外周側を形成する。上記のように、内磁型磁気回路30の磁気空隙35では、銅キャップ16の導電筒状部16bが磁気空隙35の内周側、つまり、センタープレート12の側面を覆うように固着される。
その結果、内磁型磁気回路30を備える動電型スピーカーでは、磁気空隙35に配置される銅キャップ16がボイスコイルに近接するので、ボイスコイルから発生する交流磁束が銅キャップ16に交叉しやすくなり、その電気インピーダンス特性が高音域で上昇せず、動電型スピーカーの高音域における再生音圧レベルが上昇し、歪特性が改善される。また、内磁型磁気回路30では、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側に平板状の弾性体37および非磁性かつ非導電性の質量体38が固着されるので、弾性体37および質量体38は、後述するように、銅キャップ16が振動して放射する振動放射音を抑制する制振部材として機能する。
また、外磁型磁気回路40は、前述のマグネット21と、ポール43と、トッププレート24と、銅キャップ16と、平板状の弾性体37、および、非磁性かつ非導電性の質量体38と、から構成される。マグネット21、ポール43、トッププレート24、および、銅キャップ16は接着剤で固着される。外磁型磁気回路40では、ポール43の凸状部に銅キャップ16の導電平面部16aの凹側が固着し、ポール43の凸状部の側面に銅キャップ16の導電筒状部16bが固着し、ポール43のアンダープレートにマグネット21の底面が固着し、マグネット21の上面にトッププレート24が固着する。
外磁型磁気回路40の平板状の弾性体37は、内磁型磁気回路30と同様に、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側に固着され、非磁性かつ非導電性の質量体38は、弾性体37に振動可能に固着される。
着磁されたマグネット21を含む外磁型磁気回路40では、マグネット21が発生する直流磁束が通過する磁路が形成され、ポール43とトッププレート24との間に円環状の磁気空隙45が形成される。ポール43の凸状部は磁気空隙45の内周側を形成し、トッププレート24は磁気空隙45の外周側を形成する。上記のように、外磁型磁気回路40の磁気空隙45では、銅キャップ16の導電筒状部16bが磁気空隙45の内周側、つまり、ポール43の凸状部の側面を覆うように固着される。
その結果、外磁型磁気回路40を備える動電型スピーカーでも、磁気空隙45に配置される銅キャップ16がボイスコイルに近接するので、ボイスコイルから発生する交流磁束が銅キャップ16に交叉しやすくなり、その電気インピーダンス特性が高音域で上昇せず、動電型スピーカーの高音域における再生音圧レベルが上昇し、歪特性が改善される。また、外磁型磁気回路40では、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側に平板状の弾性体37および非磁性かつ非導電性の質量体38が固着されるので、弾性体37および質量体38は、銅キャップ16が振動して放射する振動放射音を抑制する制振部材として機能する。
図4は、比較例としての従来の動電型スピーカーを構成する比較例の磁気回路を説明する図である。図4(c)、図4(d)、図4(e)、図4(f)は、それぞれ比較例の内磁型磁気回路50、60、70、および、80について説明する断面図である。比較例の内磁型磁気回路50、60、70、および、80は、実施例1および2の内磁型磁気回路10および30が有する制振部材を備えない点で共通する。なお、これらの比較例の内磁型磁気回路を構成する各部品は、実施例1および2の内磁型磁気回路10および30を構成する各部品と同一であれば、同一の番号を付して説明を省略する。これらの比較例の内磁型磁気回路は、動電型スピーカー1を構成するのと同一のスピーカー振動系およびフレームをそれぞれ連結することにより、(図示しない)比較例の動電型スピーカーを構成する。また、これらの動電型スピーカーの構造は、共通するので説明を省略する。
比較例1の内磁型磁気回路50は、銅キャップ16を備え、円環状の磁気空隙55を有する。つまり、比較例1の内磁型磁気回路50は、実施例2の内磁型磁気回路30から、平板状の弾性体37と非磁性かつ非導電性の質量体38とを取り除いたものであり、一般的な銅キャップを備える内磁型磁気回路の従来例である。この内磁型磁気回路50では、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側が、広い面積で露出する。
また、比較例2の内磁型磁気回路60は、銅キャップ16と、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側に固着される質量体68とを備え、円環状の磁気空隙65を有する。つまり、比較例2の内磁型磁気回路60は、比較例1の内磁型磁気回路50の銅キャップ16の導電平面部16aの凸側に、単なる質量体68を固着した場合の従来例である。ここで、質量体68は、実施例2における質量体38とほぼ同一の質量を有する部材である。この内磁型磁気回路60では、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側に代わって、質量体68が広い面積で露出する。
また、比較例3の内磁型磁気回路70は、センタープレート12および銅キャップ16に代えて、薄いセンタープレート72を3枚と、円盤状の銅板76を4枚、交互に積層したセンタープレート部材を備え、円環状の磁気空隙75を有する。つまり、内磁型磁気回路70は、それを構成する導電部材が、磁気空隙75の内周側を覆うような導電筒状部を備えない場合の従来例である。この内磁型磁気回路70でも、最も上側に積層された銅板76が広い面積で露出する。
また、比較例4の内磁型磁気回路80は、銅キャップ16を備えず、円環状の磁気空隙85を有する。つまり、比較例4の内磁型磁気回路80は、比較例1の内磁型磁気回路50から、銅キャップ16を取り除いたものであり、一般的な銅キャップをも備えない内磁型磁気回路の従来例である。
図5および図6は、実施例1および2の内磁型磁気回路と、比較例1〜4の内磁型磁気回路と、を比較する周波数特性のグラフである。ここでは、導電性部材を磁気空隙に備えた磁気回路において発生する導電性部材の振動による放射音を測定するために、それぞれの磁気空隙にボイスコイル3のみからなる振動系を配置し、(図示しない)測定用磁気回路を構成する。具体的には、測定用磁気回路に配置されるそれぞれのボイスコイル3は、そのボビン3bの内周側に接着剤を塗布されて、単独でそれぞれの磁気回路に接着されて固定される。実施例1および2の内磁型磁気回路と、比較例1〜4の内磁型磁気回路と、を用いた動電型スピーカーにおいても、これらの測定用磁気回路において測定されるような放射音が放射され、再生音質に影響を与えている。
図5は、測定用磁気回路から距離1mでの音圧周波数特性のグラフである。また、図6は、測定用磁気回路の電気インピーダンス特性のグラフである。図5および図6では、それぞれ、(a)が実施例1、(b)が実施例2、(c)が比較例1、(d)が比較例2、(e)が比較例3、(f)が比較例4、の場合を表している。測定用磁気回路のボイスコイルには、約5kHz〜約20kHzの正弦波入力信号(1W)を供給する。これらの測定用磁気回路では、ボイスコイル3は、動電型スピーカーを構成した場合のスピーカー振動系に含まれている場合、つまり、エッジ4およびダンパー5で振動可能なように支持されている場合のようには振動しないが、ボイスコイルに電流が供給されれば、磁気空隙の直流磁界により駆動力が発生する。その結果、それぞれの測定用磁気回路は、振動して音波を放射し、図5のような測定結果が得られる。また、図6の電気インピーダンス特性には、それぞれの測定用磁気回路に含まれる導電部材の影響が現れる。
まず、(f)銅キャップ16を備えない比較例4を基準にして、(c)銅キャップ16を備える比較例1を対比する。図6に示すように、比較例1では、銅キャップ16が作用して比較例4に比べて電気インピーダンスのインダクタンス成分が低下している。しかし、図5に示すように、比較例1の測定用磁気回路から放射される音波の音圧レベルは、比較例4に比べて約9kHz付近と、約16kHz付近で著しく上昇する。これは、比較例1の内磁型磁気回路50では、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側が広い面積で露出し、かつ、これが振動しているからである。つまり、銅キャップ16は、磁気回路に接着剤で固着されているものの、磁気回路で発生する振動に起因して振動し、もしくは、銅キャップ16に流れる誘導電流に起因して振動し、放射音を放射している。
つぎに、(c)銅キャップ16を備える比較例1を基準にして、(d)さらに質量体68を備える比較例2を対比する。図6に示すように、比較例1および比較例2では、銅キャップ16が作用して電気インピーダンスのインダクタンス成分が低下している。ただし、図5に示すように、比較例2の測定用磁気回路から放射される音波の音圧レベルは、比較例1に比べて約9kHz付近では低下するものの、約16kHz付近では十分低下しない。これは、比較例2の内磁型磁気回路60では、銅キャップ16の導電平面部16aの振動を質量体68が抑制するものの、質量体68のみでは、振動の抑制が十分でないことを示している。
同様に、(c)銅キャップ16を備える比較例1を基準にして、(a)銅キャップ16を備え、かつ、銅キャップ16の振動を抑制する制振部材(センタープレート12)を備える実施例1を対比する。比較例1および実施例1では、銅キャップ16が作用して電気インピーダンスのインダクタンス成分が低下している。さらに、図5に示すように、実施例1の測定用磁気回路から放射される音波の音圧レベルは、比較例1に比べて約9kHz付近と、約16kHz付近で著しく低下する。これは、実施例1の内磁型磁気回路10では、センタープレート12が、その底面に銅キャップ16の導電平面部16aの凹側を固着し、その側面に銅キャップ16の導電筒状部16bを固着し、銅キャップ16の振動放射音を抑制する制振部材として機能するからである。すなわち、センタープレート12によって銅キャップ16の導電平面部16aの振動の振幅が制限されるので、銅キャップ16の振動放射音は減少する。
さらに、(c)銅キャップ16を備える比較例1を基準にして、(b)銅キャップ16を備え、かつ、銅キャップ16の振動を抑制する制振部材(弾性体37および質量体38)を備える実施例2を対比する。比較例1および実施例2では、銅キャップ16が作用して電気インピーダンスのインダクタンス成分が低下している。また、図5に示すように、実施例2の測定用磁気回路から放射される音波の音圧レベルは、比較例1に比べて約9kHz付近と、約16kHz付近で著しく低下する。これは、実施例2の内磁型磁気回路30では、平板状の弾性体37が、銅キャップ16の導電平面部16aの凸側に固着し、非磁性かつ非導電性の質量体38が、弾性体37に振動可能に固着し、これらが銅キャップ16の振動放射音を抑制する制振部材として機能するからである。平板状の弾性体37および非磁性かつ非導電性の質量体38が形成する振動系において、銅キャップ16の振動が吸収されるので、その結果、銅キャップ16の振動放射音は減少する。
最後に、(c)銅キャップ16を備える比較例1を基準にして、(e)センタープレート12および銅キャップ16に代えて、薄いセンタープレート72を3枚と、円盤状の銅板76を4枚、交互に積層したセンタープレート部材を備える比較例3を対比する。図6に示すように、比較例1では銅キャップ16が作用して電気インピーダンスのインダクタンス成分が低下しているのに対して、比較例3では十分に電気インピーダンスが低下しておらず、導電筒状部を備えない積層した円盤状の銅板76が、そもそも導電性部材として十分に機能していないことを示している。また、図5に示すように、比較例3の測定用磁気回路から放射される音波の音圧レベルは、比較例1に比べて約16kHz付近では比較的に低下しているものの、約9kHz付近では低下しておらず、増加している。これは、比較例3の内磁型磁気回路70では、最も上側に積層された銅板76の振動が抑制されていないことを示している。
上記のように、実施例1の内磁型磁気回路10、および、実施例2の内磁型磁気回路30では、導電性部材として備える銅キャップ16が振動して放射する振動放射音を、制振部材を備えることでそれぞれ抑制することができる。したがって、これらの磁気回路を備える動電型スピーカーも、銅キャップ16の振動による放射音が再生音質に与える影響が少なくなり、良好な再生音質を確保することができる。すなわち、銅キャップ16を設けて動電型スピーカーの高音域における再生音圧レベルを上昇させる、または、歪特性を改善する、等の利点を得るとともに、制振部材を備えることで銅キャップ16の振動放射音を抑制して、再生音質の改善を図ることができる。
なお、上記の実施例1で説明する反発型磁気回路17、および、外磁型磁気回路30と、実施例2で説明する外磁型磁気回路40と、においても、同様に導電性部材として備える銅キャップ16が振動して放射する振動放射音を、制振部材を備えることでそれぞれ抑制することができる。したがって、これらの磁気回路を備える動電型スピーカーも、銅キャップ16の振動による放射音が再生音質に与える影響が少なくなり、良好な再生音質を確保することができる。
なお、本発明の磁気回路が備える導電性部材は、上記の実施例で説明する銅キャップに限られず、非磁性で電気抵抗が低いアルミニウム等を含む合金で形成されるリングであってもよい。導電性部材の全体形状が、キャップ形状もしくはリング形状であっても、導電性部材が、導電平面部、ならびに、導電平面部の外周側端部から略直角方向に延設される導電筒状部を有しており、磁気回路に形成される磁気空隙の内周側を覆うように磁路構成部材に固着されていればよい。導電筒状部を有する導電性部材は、ボイスコイルの近傍に位置することで、より電気インピーダンスのインダクタンス成分を低下するように作用するからである。
また、上記実施例で説明する磁気回路構成部材は、ヨーク、プレート、ポール等の透磁率が高い鉄等の金属で形成された部材であるとしたが、これらの金属に限定されない。磁気回路構成部材は、フェライト等の磁性体であってもよく、また、樹脂に金属又はフェライトの粉末を含む透磁率の高い部材であればよい。
また、上記実施例で説明する動電型スピーカーは、コーン型振動板を用いる動電型スピーカーであるが、動電型スピーカーの構成は本実施例に限られない。コーン型振動板は、平面型振動板であってもよく、動電型スピーカーの構成も、ダンパーを備えない小型スピーカー、もしくは、高音域再生用のツィーター等であってもよい。