JP2016210991A - メカノクロミック化合物及びそれを含むメカノクロミック材料 - Google Patents
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Abstract
Description
従って、本発明の目的は、力学的刺激により安定なラジカル構造を発生させ、発色及び蛍光発光する化合物を提供することである。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]下記式〔1〕:
[2]ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクトン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアルキレンオキシド、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリラクチド、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、ポリアセチレン、及びポリビニルからなる群から選択される繰り返し単位を有する、[1]に記載のメカノクロミック化合物、
[3]下記式〔2〕
R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立して、分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、エステル基、シラン基、アルコキシシラン基、エポキシ基、アミノ基、アルデヒド基、アミド基、又はイソシアネート基;
R3、R4、R5、及びR6の2つが一緒になって、単結合、分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の2価の炭化水素基、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、アミド基(−CONH−)、第二級アミノ基、又はオキシカルボニル基であってもよく;又は
R3、R4、R5、又はR6が、それぞれ2つ以上である場合、2つの置換基が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、置換又は非置換の1〜3の芳香環、ヘテロ芳香環、炭素数3〜7のシクロアルキル環、又は炭素数3〜7のヘテロシクロアルキル環であってもよく、
前記ヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、フッ素原子、硫黄原子、リン原子、アルミニウム原子、又はセレン原子である)
で表される[1]に記載のメカノクロミック化合物、
[4]下記式〔3〕:
[5]力学的刺激により発色及び/又は蛍光発光する、[1]〜[4]のいずれかに記載のメカノクロミック化合物、及び
[6]前記力学的刺激が、圧縮、延伸、衝撃、せん断、粉砕、曲げ、摩擦、超音波、及びその2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、[5]に記載のメカノクロミック化合物、
[7][1]〜[6]のいずれかに記載のメカノクロミック化合物を含む、メカノクロミック材料、
[8][7]に記載のメカノクロミック材料に付与された力学的刺激を、発色及び/又は蛍光発光の変化を測定することにより検出する工程を含む、力学的刺激の検出方法、
[9]前記力学的刺激が、圧縮、延伸、衝撃、せん断、粉砕、曲げ、摩擦、超音波、及びその2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、[8]に記載の力学的刺激の検出方法、
に関する。
なお、テトラアリールスクシノニトリル構造を有する化合物は、有機溶媒中で60℃程度の加熱によって、活性ラジカル種が発生することが知られている(非特許文献1及び2)。この非特許文献1及び2に記載の化合物を含めて、加熱により活性ラジカル種が発生する化合物は、従来から多数報告されている。しかしながら、本発明者らの知る限りにおいて、このような化合物が、力学的な刺激によって発色及び蛍光発光することは、報告されておらず、驚くべきことである。
更に、特許文献3に記載のように、力学的刺激によりラジカル構造の発生に基づき発色する化合物は知られていた。しかしながら、力学的刺激によりラジカル構造が発現し安定的に蛍光発光する化合物は、本発明者の知る限りにおいて、報告されておらず、驚くべきことである。
更に、本発明のメカノクロミック化合物は可逆性を有しており、ラジカル構造が再結合することにより、容易に元の状態に戻すことができる。すなわち、力学的刺激を取り除くと、形状が元に戻り、自発的に退色する性質を有する。従って、ラジカル構造の再結合に基づく可逆的な性質を利用することにより、高性能な安定ラジカルの機能化が期待できる。
本発明のメカノクロミック化合物は、従来の発色によるメカノクロミック化合物と比較すると、蛍光発色できるため、高感度に力学的刺激を検出することができる。すなわち、蛍光発光は、特定波長の吸収による発色と比較して、はるかに鋭敏な可視変化であり、桁違いに優れた感度をもたらすものである。特に、本発明のポリマーのメカノクロミック化合物は力学的刺激に対する感度が高く、少量で力学的刺激を検出することができる。
本発明のメカノクロミック材料は、力学センサー、又は材料の寿命予測に用いることができる。
本発明のメカノクロミック化合物は、下記式〔1〕:
前記TASN類縁体骨格を有するメカノクロミック化合物として、例えば下記式〔4〕:
本発明のメカノクロミック化合物が力学的刺激により発色及び蛍光発光を発生するメカニズムは、以下のように推定される。しかしながら、本発明は以下の推定によって限定されるものではない。
本発明のメカノクロミック化合物のTASN構造又はTASN類縁体構造を形成する2つのジアリールアセトニトリル構造間の炭素−炭素結合の結合解離エネルギー(開裂エネルギー)は、約26kcal/molである。この開裂エネルギーは、あまり大きくないため、下記式〔5〕に示すように、容易に力学的刺激により開裂し、安定したジアリールアセトニトリルラジカルを生成すると考えられる。
しかしながら、テトラアリールスクシノニトリル基本骨格等の開裂部分に、力学的刺激が効果的に伝達される構造を有するメカノクロミック化合物が好ましい。このような構造を有するメカノクロミック化合物としては、ポリマーの主鎖にTASN基本骨格等を有する化合物、又はポリマーの架橋点にTASN基本骨格等を有する化合物を挙げることができる。特に、ポリマー鎖の中心にTASN基本骨格等を有するものが、最も効率的に力学的刺激を伝達できると考えられる。
本発明のメカノクロミック化合物の分子量は、力学的刺激によりTASN基本骨格等が開裂される限りにおいて限定されるものではないが、比較的高分子量のものが好ましい。例えば分子量は、好ましくは400以上であり、より好ましくは1000以上であり、更に好ましくは5000以上であり、最も好ましくは10000以上である。
(1)R3、R4、R5、及びR6が独立して存在する場合、R3、R4、R5、及びR6は、分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、エステル基、シラン基、アルコキシシラン基、エポキシ基、アミノ基、アルデヒド基、アミド基、又はイソシアネート基であってもよい。前記炭素数1〜40の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1〜40のアルキル基、炭素数1〜40のアルキニル基、又は炭素数2〜40のアルケニル基)、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基を挙げることができる。
(2)R3、R4、R5、及びR6の2つが一緒になって、単結合又は2価の基を形成する場合、前記2価の基は、分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の2価の炭化水素基、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、アミド基(−CONH−)、第二級アミノ基、又はオキシカルボニル基であってもよい。特に、2つのフェニル基のオルト位に存在するR3、R4、R5、及びR6のうちの2つが一緒になって、単結合又は2価の基を形成する化合物は、TASN類縁体骨格を有するメカノクロミック化合物である。
(3)R3、R4、R5、又はR6がそれぞれ2つ以上である場合、それぞれの2つの置換基が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、置換又は非置換の1〜3の芳香環、ヘテロ芳香環、炭素数3〜7のシクロアルキル環、又は炭素数3〜7のヘテロシクロアルキル環であってもよい。
前記式〔2〕において、ヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、フッ素原子、硫黄原子、リン原子、アルミニウム原子、又はセレン原子であってよい。
R3、R4、R5、及びR6の置換基は1〜5であり、その位置は、特に限定されるものではなく、オルト位、メタ位、又はパラ位のいずれでもよい。しかしながら、置換基がTASN基本骨格等の開裂部分に影響を与えないという観点から、好ましくはメタ位又はパラ位であり、最も好ましくはパラ位である。また、本発明のメカノクロミック化合物の製造の観点からも、好ましくはメタ位又はパラ位であり、最も好ましくはパラ位である。
また、それぞれのフェニル基の置換基の数も限定されるものではない。従って、R3、R4、R5、及びR6は、前記のとおり、それぞれ5つでもよく、4つでもよく、3つでもよく、2つでもよく、1つでもよい。しかしながら、置換基がTASN基本骨格等の開裂部分に影響を与えないという観点から、好ましくは4つ以下であり、より好ましくは3つ以下であり、更に好ましくは2つ以下であり、もっと好ましくは1つである。
また、R3、R4、R5、又はR6がそれぞれ2つ以上である場合、前記の通り、それぞれのフェニル基の2つの置換基が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、1〜3の芳香環、ヘテロ芳香環、炭素数3〜7のシクロアルキル環、又は炭素数3〜7のヘテロシクロアルキル環を形成してもよい。また、前記芳香環、ヘテロ芳香環又はシクロアルキル環の水素原子は、ハロゲン原子、又は分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキニル基、又は炭素数2〜20のアルケニル基)、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基)で置換されてもよい。前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、フッ素原子、硫黄原子、リン原子、アルミニウム原子、又はセレン原子を挙げることができる。
R3、R4、R5、及びR6がポリマー鎖を含まないTASN誘導体又はTASN類縁体は、そのまま本発明のメカノクロミック化合物として用いることができる。また、ポリマー鎖を含むメカノクロミック化合物の製造原料として用いることもできる。
R3、R4、R5、及びR6が、ポリマー鎖を含まないTASN誘導体又はTASN類縁体の場合、限定されるものではないが、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1〜40のアルキル基、炭素数1〜40のアルキニル基、又は炭素数2〜40のアルケニル基)、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基)でよく、ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、フッ素原子、硫黄原子、リン原子、アルミニウム原子、又はセレン原子を挙げることができる。
前記ポリマー鎖を含まないTASN誘導体等は、ポリマー鎖を含むTASN誘導体等の製造に用いることができる。ポリマー鎖を含まないTASN誘導体等は、一般的には、ジアリールアセトニトリル誘導体を合成し、必要な化学修飾を行った後に光反応により二量化を行うことによって、目的のTASN誘導体等を得ることができる。
また、前記2つの置換基が一緒になって芳香環を形成するTASN誘導体としては、下記式〔10〕:
また、前記2つの置換基が一緒になって2価の基を形成するTASN類縁体としては、例えば下記式〔11〕:
更に、2つの置換基が一緒になって2価の基を形成するTASN誘導体としては、例えば下記式〔12〕:
本発明のメカノクロミック化合物は、ポリマー鎖を含む高分子化合物(ポリマー)でもよい。すなわち、前記式〔2〕のR3、R4、R5、及びR6の少なくとも1つに、ポリマー鎖を含んでもよい。ポリマー鎖は、R3、R4、R5、及びR6のうちの4つに含まれてもよく、3つに含まれてもよく、2つに含まれてもよく、1つに含まれてもよい。しかしながら、製造工程を考慮すると、R3及びR5にポリマー鎖を含むメカノクロミック化合物、R4及びR6にポリマー鎖を含むメカノクロミック化合物、が好ましい。
また、メカノクロミック化合物全体をポリマーと考えた場合、前記TASN基本骨格又はTASN類縁体骨格が、ポリマーの主鎖、又はポリマーの架橋点に含まれることが好ましい。ポリマーの主鎖又はポリマーの架橋点にTASN基本骨格又はTASN類縁体骨格が含まれることによって、TASN基本骨格又はTASN類縁体骨格の開裂部分に、力学的刺激が効果的に伝達されるからである。従って、この点からも、R3及びR5にポリマー鎖を含むメカノクロミック化合物、又はR4及びR6にポリマー鎖を含むメカノクロミック化合物が好ましい。
例えば、原料となる前記TASN-diolから、逐次重合や連鎖重合を利用することにより合成できる。また、末端に2つのアルキニル基を有するTASN-dialkyneと、アジド基末端を有する各種ポリマー化合物との結合反応を利用することによって、合成することが可能である。
(1)Xは、それぞれ独立して、単結合又は分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の炭化水素基であり、R1及びR2は、それぞれ独立して、単結合又はポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクトン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアルキレンオキシド、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリラクチド、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、ポリアセチレン、及びポリビニルからなる群から選択される繰り返し単位であり、Yは水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルキニル基、アルケニル基、チオール基、カルボキシル基、エステル基、シラン基、アルコキシシラン基、エポキシ基、アミノ基、アルデヒド基、アミド基、ハロゲン化アルキル基、及びイソシアネート基からなる群から選択される基であり、nはそれぞれ独立して1〜500の整数であってもよい。
(2)−X−(R1)−Y及び−X−(R2)−Yのいずれか2つが一緒になって、単結合、分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の2価の炭化水素基、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、アミド基(−CONH−)、第二級アミノ基、又はオキシカルボニル基であってもよい。特に、2つのフェニル基のオルト位に存在する−X−(R1)−Y及び−X−(R2)−Yのうちの2つが一緒になって、単結合又は2価の基を形成する化合物は、TASN類縁体骨格を有するメカノクロミック化合物である。
(3)−X−(R1)−Y又は−X−(R2)−Yがそれぞれのフェニル基において2つ以上である場合、2つの置換基が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、置換又は非置換の1〜3の芳香環、ヘテロ芳香環、炭素数3〜7のシクロアルキル環、又は炭素数3〜7のヘテロシクロアルキル環を形成してもよい。
前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、フッ素原子、硫黄原子、リン原子、アルミニウム原子、又はセレン原子を挙げることができる。
また、前記TASN類縁体化合物としては、前記式〔13〕〜〔15〕において2つのフェニル基のオルト位の置換基が一緒になって、単結合、アルキレン基、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、アミド基(−CONH−)、第二級アミノ基、又はオキシカルボニル基を形成する化合物を挙げることができる。
本発明のポリマー鎖を含むメカノクロミック化合物は、ポリマー鎖を含まないメカノクロミック化合物と比較して、一般的に力学的刺激による発色又は蛍光発光において、高い感度を示す。例えば、実施例2で得られたTASN-diol及び実施例5で得られたTASN含有ポリマー(ポリスチレン)を、電子スピン共鳴(ESR)により測定すると、いずれもg値は2.003と算出され、一般的な炭素ラジカルと同じである。しかしながら、TASN含有ポリマー(ポリスチレン)のラジカル発生量は、TASN-diolのラジカル発生量と比較して、約100倍大きかった。これは、TASN含有ポリマー(ポリスチレン)は、高分子鎖中央にTASN基本骨格が存在するため、力学的刺激が伝わりやすくなったためであると考えられる。すなわち、ポリマー主鎖、又はポリマーの架橋点にTASN基本骨格を有するメカノクロミック化合物は、低分子量のポリマー鎖を含まないメカノクロミック化合物と比較すると、1分子の分子量に対するTASN基本骨格のモル比が少なくても、高い感度を示すことがあると考えられる。
本発明のメカノクロミック化合物は、力学的刺激を付与されることによって発色する。発色の色は、特に限定されるものではないが、桃色系の発色をする。
本発明のメカノクロミック化合物は、力学的刺激を付与されることによって蛍光発光する。蛍光発色を検出するために、紫外線照射をすることが好ましい。波長は限定されるものではないが、例えば330nm〜390nmの波長の照射で検出することが可能であり、好ましくは365nmである。
本発明のメカノクロミック化合物の発色及び蛍光発光は、可逆性を有する。すなわち、発色又は蛍光発光したメカノクロミック化合物を溶媒に溶解させることによって、瞬時に消色し、蛍光発光も消失する。そして、溶媒を揮発させることによって、機械的刺激を付与する前の白色粉末へ戻る。また、一定時間放置することによって、発色及び蛍光発光が消失する。
本発明のメカノクロミック化合物の発色及び蛍光発光可逆性に関するメカニズムに関しては、次のように推察される。しかしながら、本発明はこの推察によって限定されるものではない。
前記のようにTASN基本骨格又はTASN類縁体骨格を形成する2つのジアリールアセトニトリル構造間の炭素−炭素結合は強くない。従って、容易に力学的刺激により開裂し、ジアリールアセトニトリルラジカルを生成する。室温下の空気中の条件においても、自発的に可逆的な解離−再結合(発色−退色)を実現できる。また、生成するラジカルが酸素耐性を有しているため、良好な可逆性を有していると考えられる。更に、良溶解性の溶媒中においては、開裂した2つのジアリールアセトニトリルラジカルが、比較的自由に移動するため、炭素ラジカル間の結合が瞬時におき、発色及び蛍光発光が消失すると考えられる。
本発明のメカノクロミック材料は、本発明のメカノクロミック化合物を含む。メカノクロミック材料は、実質的にメカノクロミック化合物からなるものでもよく、他の化合物及びメカノクロミック化合物を含むものでもよい。
メカノクロミック材料に対するメカノクロミック化合物の含有率は、力学的刺激による発色又は蛍光発光が検出できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜99%であり、より好ましくは1〜95%であり、更に好ましくは2〜90%である。特に、本発明のポリマー鎖を含むメカノクロミック化合物は、力学的刺激による発色又は蛍光発光の感度が高い。従って、少量の化合物の添加によって、十分な感度を有するメカノクロミック材料を得ることができる。
本発明の力学的刺激の検出方法は、前記メカノクロミック材料に付与された力学的刺激を、発色又は蛍光発光の変化を測定することにより検出する工程を含む。力学的刺激は、特に限定されるものではないが、圧縮、延伸、衝撃、せん断、粉砕、曲げ、摩擦、又はその2つ以上の組み合わせからなる力学的刺激を挙げることができる。
力学的刺激の強度は、発色又は蛍光発光の変化量によって、測定することが可能である。例えば、力学的刺激の強度と、発色量又は蛍光発光量との関係とを、あらかじめ計測することによって、メカノクロミック材料に付与された力学的刺激の強度を数値化することが可能である。
ジフェニルアセトニトリル3.14g(16.2mmol)、ベンゼン40.5mL、ジ−tert−ブチルペルオキシド34.1mL(186mmol)からなる混合溶液を調整した。室温にて400W高圧水銀ランプによる光照射を2時間行った。反応後、溶媒留去を行い、析出した白色固体をメタノールで洗浄し、白色固体のテトラフェニルスクシノニトリルを得た。収量は2.44g、収率は78%であった。以下、この化合物をTPSNと表記する。
下記反応式〔20〕に従い、本発明のメカノクロミック化合物であるTASN-diol(5)及びTASN-dialkyne(6)を製造した。
反応容器に亜硫酸水素ナトリウム66.6g(640mmol)を蒸留水230mLに溶解させた後、p−アニスアルデヒド35.0mL(288mmol)をゆっくりと加え、窒素雰囲気下室温で2.5時間撹拌した。氷浴中で、滴下漏斗を用いてシアン化カリウム41.7g(640mmol)の水溶液156mLをゆっくりと滴下し、室温で2時間反応を行った。反応後、酢酸エチルで抽出し、溶媒留去後に得られた固体をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄することで白色固体の4−メトキシマンデロニトリルを得た。収量は39.8g、収率は85%であった。
反応容器に蒸留水122mL、硫酸40.8mL、4−メトキシマンデロニトリル32.6g(200mmol)、フェノール45.7g(486mmol)を加え、窒素雰囲気下50℃で21時間反応を行った。反応後、ろ別を行い固体を回収し、得られた固体をTHFに溶解させ、多量の蒸留水に投入した。析出した白色粉末を回収することで、目的のジアリールアセトニトリル(DAAN)を得た。収量は36.6g、収率は77%であった。以下、この化合物をDAANと表記する。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) : δ/ppm 3.73 (s, 3H, OCH3), 6.77 (d, J = 9.0 Hz, 2H, aromatic), 5.57 (s, 1H, CH), 6.95 (d, J = 9.0 Hz, 2H, aromatic), 7.15 (d, J = 9.0 Hz, 2H, aromatic), 7.27 (d, J = 9.0 Hz, 2H, aromatic), 9.56 (br, 1H, OH). ; 13C NMR (75 MHz, DMSO) : δ/ppm 55.19, 114.52, 115.93, 121.07, 128.67, 128.70, 129.23, 157.20, 158.87. ; FT-IR (KBr, cm-1) : 3466, 3021, 2955, 2904, 2839, 2370, 2337, 2243, 2046, 1886, 1765, 1604, 1511, 1445, 1350, 1299, 1256, 1224, 1180, 1110, 1026, 969, 825, 766, 692, 594, 536, 518.
500mL反応容器にDAAN19.1g(80.0mmol)、DMF160mL、炭酸カリウム16.6g(120mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃で1時間撹拌した。その後、3−ブロモ−1−プロパノール10.4mL(120mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃で3時間撹拌した。ろ過にて炭酸カリウムを除去後、酢酸エチルを加えて抽出し、溶媒留去の後に、シリカゲルカラムトクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)にて単離し、淡黄色粘性液体を得た。収量は12.3g、収率は52%であった。以下、この化合物をDAAN−OHと表記する。
収量 (収率) : 12.3 g (52%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) : δ/ppm 2.01 (quin, J = 6.0 Hz, 2H, CH2), 2.16 (t, J = 6.0 Hz, 2H, OH), 3.78 (s, 3H, OCH3), 3.82 (q, J = 6.0 Hz, 2H, CH2), 4.08 (t, J = 6.0 Hz, 2H, CH2), 5.03 (s, 1H, CH), 6.86-6.90 (br, 4H, aromatic), 7.20-7.24 (br, 4H, aromatic). ; 13C NMR (75 MHz, CDCl3) : δ/ppm 31.91, 59.75, 65.41, 114.47, 115.02, 120.21, 128.22, 128.33, 128.59, 128.76, 158.61, 159.32. ; FT-IR (NaCl, cm-1) : 3428, 2945, 2883, 2842, 2553, 2244, 2051, 1888, 1609, 1509, 1467, 1302, 1252, 1179, 1114, 1035, 952, 829, 590, 548, 417.
DAAN−OH(4)6.22g(20.9mmol)、ベンゼン52.2mL、ジ−t−ブチルペルオキシド43.9mL(23.9mmol)の混合溶液を調製した。その後、室温にて400W高圧水銀ランプ光照射を2時間行った。反応終了後、溶媒留去し、シリカゲルカラムトクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=3:1)にて単離した。溶媒留去した後、クロロホルムに溶解させ、多量のヘキサンに再沈殿させた。吸引ろ過にて回収し、淡黄色固体を得た。収量(収率):2.97g(48%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) : δ/ppm 1.74 (br, 2H, OH), 2.04 (quin, J = 6.0 Hz, 4H, CH2), 3.79 (s, 6H, OCH3), 3.84 (br, 4H, CH2), 4.09 (t, J = 6.0 Hz, 4H, CH2), 6.75-6.77 (br, 8H, aromatic), 7.15-7.18 (br, 8H, aromatic). ; 13C NMR (75 MHz, CDCl3) : δ/ppm 31.98, 55.35, 58.44, 60.06, 65.51, 113.34, 113.83, 121.53, 129.26, 129.43, 131.35, 158.64, 159.38. ; FT-IR (KBr, cm-1) : 3416, 3048, 2948, 2844, 2558, 2374, 2337, 2243, 2048, 1890, 1744, 1607, 1509, 1468, 1301, 1256, 1185, 1127, 1036, 952, 827, 632, 598, 545.
図2(A)に1H-NMRスペクトル測定の結果を示す。
反応容器にTASN-diol2.07g(3.50mmol)を加え、脱気、窒素置換を3回行った後、塩化メチレン20.4mL、ピリジン3.38mL(42.0mmol)を加えた。氷浴中にて、5−ヘキシン酸クロリド1.68mL(14.0mmol)をゆっくりと滴下し、その後、室温で4時間撹拌した。蒸留水を加えて反応を停止した後、塩化メチレンを用いて抽出し、溶媒留去の後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)にて単離し、黄色の粘性液体を得た。収量は2.15g、収率は76%であった。1H-NMRを用いて構造解析を行った。1H NMR (400 MHz, CDCl3) : δ/ppm 1.85 (quin, J = 9.6 Hz, 4H, CH2), 1.97 (t, J = 2.4 Hz, 2H, CH), 2.11 (quin, J = 8.1 Hz, 4H, CH2), 2.27 (t, J = 6.9 Hz, 4H, CH2), 2.47 (t, J = 7.4 Hz, 4H, CH2), 3.79 (s, 6H, OCH3), 4.02 (t, J = 5.6 Hz, 4H, CH2), 4.27 (t, J = 6.3 Hz, 4H, CH2), 6.73-6.77 (m, 8H, aromatic), 7.15-7.18 (m, 8H, aromatic).
下記反応式〔21〕の反応ルートに従い、TASN含有ポリマー(ポリε−カプロラクトン)を調製した。
1H-NMRスペクトル測定の結果を図3(A)に示す。
下記反応式〔22〕の反応ルートに従い、TASN含有ポリマー(ポリスチレン)の調製を調製した。
なお、本実施例で測定を行った1H-NMRスペクトル測定の結果を図4(A)に示す。
Claims (9)
- 下記式〔1〕:
- ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクトン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアルキレンオキシド、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリラクチド、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、ポリアセチレン、及びポリビニルからなる群から選択される繰り返し単位を有する、請求項1に記載のメカノクロミック化合物。
- 下記式〔2〕
R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立して、分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、エステル基、シラン基、アルコキシシラン基、エポキシ基、アミノ基、アルデヒド基、アミド基、又はイソシアネート基であってもよく;
R3、R4、R5、及びR6の2つが一緒になって、単結合、分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の2価の炭化水素基、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、アミド基(−CONH−)、第二級アミノ基、又はオキシカルボニル基であってもよく;又は
R3、R4、R5、又はR6が、それぞれ2つ以上である場合、少なくとも2つの置換基が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、置換又は非置換の1〜3の芳香環、ヘテロ芳香環、炭素数3〜7のシクロアルキル環、又は炭素数3〜7のヘテロシクロアルキル環であってもよく、
前記ヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、フッ素原子、硫黄原子、リン原子、アルミニウム原子、又はセレン原子である)
で表される請求項1に記載のメカノクロミック化合物。 - 下記式〔3〕:
−X−(R1)−Y及び−X−(R2)−Yのいずれか2つが一緒になって、単結合、分子鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜40の2価の炭化水素基、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、アミド基(−CONH−)、第二級アミノ基、又はオキシカルボニル基であってもよく;又は
−X−(R1)−Y又は−X−(R2)−Yが、それぞれのフェニル基において2つ以上である場合、2つの置換基が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、置換又は非置換の1〜3の芳香環、ヘテロ芳香環、炭素数3〜7のシクロアルキル環、又は炭素数3〜7のヘテロシクロアルキル環を形成してもよい)で表される化合物である、請求項2に記載のメカノクロミック化合物。 - 力学的刺激により発色及び/又は蛍光発光する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のメカノクロミック化合物。
- 前記力学的刺激が、圧縮、延伸、衝撃、せん断、粉砕、曲げ、摩擦、超音波、及びその2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載のメカノクロミック化合物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のメカノクロミック化合物を含む、メカノクロミック材料。
- 請求項7に記載のメカノクロミック材料に付与された力学的刺激を、発色及び/又は蛍光発光の変化を測定することにより検出する工程を含む、力学的刺激の検出方法。
- 前記力学的刺激が、圧縮、延伸、衝撃、せん断、粉砕、曲げ、摩擦、超音波、及びその2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の力学的刺激の検出方法。
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