JP2016210957A - 蓄熱ポリマ成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】放熱対象物との密着性を高くでき、また、放熱対象物が膨張した場合にその応力を吸収でき、周囲との温度差が小さい環境下でも放熱対象物の温度上昇を抑制し緩和する効果が高いこと。【解決手段】熱可塑性樹脂としてのPVC樹脂からなるベースポリマと、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素と、蓄熱材としてのミリスチン酸ミリスチルがメラミン樹脂からなるカプセルに内包された蓄熱カプセルとを含有するポリマ組成物をシート状等に成形してなる蓄熱ポリマ成形体においては、熱伝導性フィラによって熱伝導経路が確保され、放熱対象物に接触させたときに放熱対象物の熱が伝導されやすく、放熱対象物から伝導された熱は熱伝導経路で拡散されて、蓄熱材に蓄熱され、また、外部への放散も確保される。【選択図】図3

Description

本発明は、発熱による温度上昇を良好に抑える蓄熱ポリマ成形体に関するものであり、特に、自動車等のバッテリにおけるリチウムイオン電池等の二次電池の発熱源に対してその温度上昇を効果的に抑制して緩和することができる蓄熱ポリマ成形体に関するものである。
自動車等の車両に搭載される電子部品等の自動車部品においては、小型化、高性能化等に伴い、その発熱量が高くなってきている。部品の発熱量が高くなると、部品や部品を収めた筺体内の温度が上昇して、その熱により部品や機器の機能が低下したり、誤作動が生じたり、破損したりする可能性がある。このため、各種自動車部品においては、発生する熱による温度上昇を抑える熱対策設計が非常に重要な課題になっている。
例えば、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)等の自動車用動力電源として市場が拡大しているリチウムイオン電池(LIB)等の二次電池のバッテリ(電池パック)では、小型化、高出力化等により、充放電時の際に二次電池で生じた熱が筺体内に滞留して二次電池の使用限界温度(例えば、リチウムイオン電池では通常、60℃〜70℃が使用限界温度)を超え、連続作動可能な時間が限定される問題がある。とりわけ、リチウムイオン電池では、温度上昇が高くなると、電解質が不安定となり発電要素が劣化して、電池性能が低下したり、電池寿命が短くなったりし、また、使用限界温度を超える高温状態が長く続く場合には、電池の破損が生じる恐れがあることから、電池温度が上昇し過ぎないようにする熱対策が必要である。
また、自動車は真夏の炎天下等の熱的に厳しい環境でも使用され、このような高温環境下での使用では、自動車の外気温が高くなることで、発熱源である二次電池を収めた筺体とその周辺との温度差が小さくなる。このため、対流熱や伝導熱の熱伝導による放熱では効率が悪く限界があり、このように周囲環境との温度差が小さくなる環境下では、温度上昇が速く長時間の連続作動可能な時間を確保するのが困難である。よって、環境変化による温度上昇を効果的に抑制できることが重要となってくる。
ここで、発熱源の熱対策部材として、特許文献1では、シリコーンゴムに熱伝導性粒子とマイクロカプセル化した蓄熱材粒子を充填した蓄熱性シリコーン材料が開示されており、特許文献2では、熱伝導性フィラとパラフィンワックスパウダーを充填したシリコーンエラストマからなる熱対策部材が開示されている。
また、特許文献3には、多数のセルを有する樹脂からなるハニカム構造体を備え、各セル内に、蓄熱材が内包されたカプセルと、熱伝導性フィラとが充填されてなる蓄熱部材が開示されている。特許文献3によれば、ハニカム構造体に蓄熱材が内包されたカプセルと熱伝導性フィラとを充填させることによって、蓄熱部材が厚い場合であっても熱伝導性が良く、宇宙機の内部に設定される電子機器にも適用可能であることが記載されている。
更に、二次電池のバッテリに関し、特許文献4には、バッテリモジュール及びセル間の電気接続部に接続したヒートシンクが容易に熱を放散することができるように、パラフィン等の相変化材料からなる吸熱材料及び金属糸やグラファイト糸等の高い熱伝導性を有する繊維形部材を含んだシート部材でヒートシンクを構成することが記載されている。
特開2014−208728号公報 特開2012−102264号公報 特開2011−178867号公報 特表2012−523085号公報
ここで、発熱源(以下、放熱対象物とも呼ぶ)の熱対策として、熱対策部材を接触させて放熱対象物の昇温を抑制する設計においては、放熱対象物の熱が放熱対象物内に滞留しないように放熱対象物から速やかに熱を移動させる必要がある。そして、速やかな熱の移動は放熱対象物との密着性が高い程良好となり、密着性は熱対策部材が低硬度である程良好となる。
特に、リチウムイオン電池等の二次電池に熱対策部材を接触させる設計の場合、二次電池自体が熱膨張する場合、熱対策部材があると熱膨張が阻害されて二次電池には熱対策部材による応力が負荷されて二次電池の破損に繋がる事態が生ずる恐れがある。これを防止するためにその応力を吸収して二次電池を収納する筐体に内圧がかかるのを防止する必要がある。また、大容量化のためにリチウムイオン電池等の複数個のセルが連結された二次電池モジュールでは、各セルの寸法公差を吸収しセル間の温度ばらつきを防止する必要もある。これらのことからも、二次電池等の放熱対象物に接触させる熱対策部材は低硬度であることが望ましい。
ところが、特許文献1及び特許文献2の発明では、熱伝導性フィラの配合量が多く、材料としての熱伝導性能は良好となるが、この材料を成形した成形体では硬くなり過ぎて放熱対象物との密着性が劣り、結果として成形体としては熱の速やかな移動が損なわれ、所望の昇温抑制の性能が得られにくくなる。
また、特許文献3の発明では、金属等から形成されるハニカム構造体のセル内に蓄熱材が内包されたカプセルと熱伝導性フィラとを充填させる構造であり、セル内のカプセルと熱伝導性フィラを保持するための保形性が必要であることから、低硬度化とするのは困難である。なお、簡易な工具により形状を変化させ得るとの記載があるものの、基本的には成形自由度が低く、適用範囲が限定される。
更に、特許文献4のヒートシンクに吸熱材料や繊維系部材を配設する構造では、ヒートシンクが、ヒートシンクに設けたスリットに電気接続部が挿入されることによって接続される構造を有する。このため特許文献3と同様に保形性が重要であり、低硬度化することが困難である。
したがって、特許文献3及び特許文献4の発明においても、特許文献1及び特許文献2の発明と同様に所望の昇温抑制の性能が得られにくい。
そこで、本発明は、放熱対象物との密着性を高くでき、また、放熱対象物が膨張した場合にその応力を吸収でき、周囲との温度差が小さい環境下でも放熱対象物の温度上昇を抑制し緩和する効果が高い蓄熱ポリマ成形体の提供を課題とするものである。
請求項1の蓄熱ポリマ成形体は、熱可塑性ベースポリマと、熱伝導性フィラと、蓄熱材とを含有するポリマ組成物を成形してなり、前記ポリマ組成物を成形した成形体のショアA硬度が30以上、ショアD硬度が60以下の範囲内であるものである。
ここで、上記ショアA硬度は、JIS K6253に準拠したデュロメータタイプA(JIS A硬度計)の常温(25℃)での測定値、ショアD硬度はJIS K6253に準拠したデュロメータタイプD(JIS D硬度計)の常温(25℃)での測定値である。
請求項2の蓄熱ポリマ成形体は、前記熱可塑性ベースポリマ100重量部に対し、前記熱伝導性フィラが20重量部〜1060重量部の範囲内で配合され、前記蓄熱材が40重量部〜1100重量部の範囲内で配合されるものである。
請求項3の蓄熱ポリマ成形体は、前記蓄熱材が20℃以上50℃未満の範囲内に相変化温度を有する潜熱蓄熱材であるものである。
請求項4の蓄熱ポリマ成形体は、前記ポリマ組成物中における前記熱伝導性フィラと前記蓄熱材の合計の最大配合量が95重量%であるものである。
請求項1の発明の蓄熱ポリマ成形体によれば、熱伝導性フィラ及び蓄熱材が含有されている。この含有された熱伝導性フィラによって熱伝導経路が確保されるため、放熱対象物に接触させたときに放熱対象物の熱が伝導されやすく、放熱対象物から伝導された熱は蓄熱ポリマ成形体中に容易に拡散する。更に、蓄熱ポリマ成形体中には蓄熱材が含有されているため、蓄熱ポリマ成形体中に拡散した熱は蓄熱材に蓄熱されると共に、放熱対象物の周辺外部へも放熱される。このため、放熱対象物と放熱対象物の周辺外部との温度差が小さい環境下でも、放熱対象物の熱を逃して温度上昇を抑制し緩和することができる。特に、蓄熱ポリマ成形体の硬度がショアA硬度が30以上、ショアD硬度が60以下の範囲内であることから、蓄熱ポリマ成形体は放熱対象物に良好な密着ができると共に、放熱対象物が膨張した場合にその応力を効率よく吸収でき、安定して放熱対象物の昇温抑制効果を発揮できる。
ここで、ショアA硬度が常温で30未満のものは、成形体を射出成形や押出成形で形成するときに支障が生じやすくなり、一方で、ショアD硬度が60を超えると、放熱対象物との密着性が悪くなり、放熱対象物が膨らんだときにその応力を吸収できず内圧の増加を抑制することができにくくなる。
したがって、ショアA硬度が30以上、ショアD硬度が60以下の範囲内とすることで、成形性も良く、放熱対象物に対して良好な密着を確保でき、放熱対象物が膨張した場合にはその応力を効率よく吸収できる。
加えて、ベースポリマが熱可塑性であることから、熱可塑性の特性を生かして複雑な形状にも成形可能であり、放熱対象物の形状や大きさに対応することができて、成形性や成形自由度(形状選択の自由度)が高く、幅広い放熱対象物に適用することができる。
請求項2の発明の蓄熱ポリマ成形体は、前記熱可塑性ベースポリマ100重量部に対し、前記熱伝導性フィラが20重量部〜1060重量部の範囲内で配合され、前記蓄熱材が40重量部〜1100重量部の範囲内で配合される。
ここで、熱伝導性フィラの配合割合が少なすぎると、放熱対象物の熱を移動させる十分な熱伝導性が得られず、蓄熱材を配合しても放熱対象物の温度上昇を顕著に抑制して緩和する効果が得らない。一方で、配合割合が多すぎると、ポリマ組成物調製時の流動性が低下して成形性が低下したり、また、蓄熱ポリマ成形体が所定の硬度より高くなりすぎて放熱対象物との密着性が低下したりする。その結果、放熱対象物の熱を効果的に逃すことができず、放熱対象物の温度上昇を抑制して緩和する効果が低下する。
また、蓄熱材の配合割合が少なすぎると、十分な蓄熱量が得られず、放熱対象物の周辺外部となる周囲環境との温度差が小さい場合に放熱対象物の温度上昇を顕著に抑制して緩和する効果が得らない。一方、配合割合が多すぎると、ポリマ組成物中のベースポリマの配合量が少なくなって必要な強度が得られなくなり、成形自体が困難となる場合がある。
熱伝導性フィラの配合がベースポリマ100重量部に対して20重量部〜1060重量部の範囲内であり、蓄熱材の配合がベースポリマ100重量部に対して40重量部〜1100重量部の範囲内であれば、必要な強度を有した成形が可能となり、また、所望の熱伝導性や蓄熱性と低い硬度の両立が確保される。これより、周囲との温度差が小さい環境下でも、確実に放熱対象物の温度上昇を効果的に抑制して緩和することが可能となる。
請求項3の発明の蓄熱ポリマ成形体によれば、前記蓄熱材が20℃以上50℃未満の範囲内に相変化温度を有する潜熱蓄熱材である。蓄熱材が20℃以上50℃未満の範囲内に相変化温度を有する潜熱蓄熱材であることから放熱対象物からの熱をすばやく取り込むことができ、放熱対象物からの熱を十分に蓄えることができる。これによって、放熱対象物の温度上昇を効率よく抑えることができる。
請求項4の発明の蓄熱ポリマ成形体によれば、前記ポリマ組成物中における前記熱伝導性フィラと前記蓄熱材の合計の配合量が最大でも95重量%である。前記熱伝導性フィラと前記蓄熱材の合計配合量を95重量%以下とすることで、蓄熱ポリマ成形体の硬度を所定の範囲内に収めることが可能となる。
図1は昇温抑制効果の評価試験装置の説明図である。 図2は本発明の実施例1に係る蓄熱ポリマ成形体による昇温抑制効果を評価する試験において、20℃の温度調整下で評価試験を行ったときの放熱対象物と蓄熱ポリマ成形体との境面の温度の経時的な測定結果を比較例との比較で示したグラフである。 図3は本発明の実施例1に係る蓄熱ポリマ成形体による昇温抑制効果を評価する試験において、35℃の温度調整下で評価試験を行ったときの放熱対象物と蓄熱ポリマ成形体との境面の温度の経時的な測定結果を比較例との比較で示したグラフである。 図4は本発明の実施例2乃至実施例9に係る蓄熱ポリマ成形体について昇温抑制効果の評価試験を35℃の温度調整下で行ったときの放熱対象物と蓄熱ポリマ成形体との境面の温度の経時的な測定結果を示したグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態の蓄熱ポリマ成形体は、熱可塑性ベースポリマと、熱伝導性フィラと、蓄熱材とを含有するポリマ組成物を成形してなるものである。
熱可塑性ベースポリマとしては熱可塑性樹脂が使用でき、例えば、エンジニアリング・プラスチック(エンプラ)に属するポリアミド46(PA46)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂(ナイロン等)、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等や、スーパー・エンジニアリング・プラスチック(スーパーエンプラ)に属するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、非晶ポリアリレート(PAR)樹脂、液晶ポリマ(LCP)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアミドイミド樹脂等や、汎用樹脂に属するポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)樹脂、ABS樹脂、アクリルニトリルスチレン(AS)樹脂、アクリル(PMMA)樹脂等が挙げられ、これら1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、熱可塑性エラストマも使用でき、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマ(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマ(TPO)、塩化ビニル系熱可塑性エラストマ(TPVC)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ(TPU)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TBA)、ポリエステル系熱可塑性エラストマ(TPEE)等が挙げられ、これら1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明を実施する場合には、これらの中でも、高い耐熱性、機械的物性、耐薬品性、難燃焼性(低燃焼性)・自己消火性等を有し電気・電子機器部品材料、自動車部品材料等に広く使用できるスチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマが好ましい。特に、ポリ塩化ビニル樹脂等の溶融温度が比較的低いものを使用することで、成形時に高温条件下とする必要がないことから、使用可能な蓄熱材の選択幅が広くなる。即ち、ベースとなるポリマ材料の溶融温度が高い場合、成形時に高い熱量を加える必要があることから、後述する蓄熱材として蓄熱カプセルを使用したときカプセルの材質によっては溶融してしまい、カプセル内の蓄熱材が染み出す恐れがある。しかし、ベースとなるポリマ材料の溶融温度が比較的低いものを使用した際には、そのような問題が生じないことから、蓄熱材の選択自由度を高めることができる。
なお、熱可塑性ベースポリマの配合は、ポリマ組成物中において5重量%〜40重量%の範囲内であるのが好ましい。配合割合が少なすぎると脆くなり強度が不足してしまう一方で、配合割合が多すぎると、ポリマ組成物全体における熱伝導性フィラ及び蓄熱材の配合割合が少なくなることから、放熱対象物の温度上昇抑制効果が十分に得られず、実用的でなくなる。熱可塑性ベースポリマの配合が、ポリマ組成物全体において5重量%〜40重量%の範囲内であれば、得られる蓄熱ポリマ成形体において、安定的な強度を確保でき、放熱対象物に対する効果的な温度上昇抑制効果を発揮することができる。
熱伝導性フィラは、電気的に絶縁性であっても導電性であってもよく、絶縁性の熱伝導性フィラとしては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化ベリリウム、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物や、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素等の金属窒化物や、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化スズ等の金属水酸化物や、炭化珪素、ダイヤモンド等の炭素化合物や、マグネサイト、炭酸マグネシウム、ホウ化チタン、チタン酸カルシウム、石英等が挙げられる。
導電性の熱伝導性フィラとしては、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維(特に石炭ピッチ系(Pitch)、PAN系が好ましい)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の炭素化合物や、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、チタン、SUS等の金属粉末または金属繊維、酸化スズ等の金属酸化物、フェライト類等の金属系化合物が使用できる。
なお、導電性の熱伝導性フィラをシリカ等で被覆することにより、導電性フィラに絶縁性を付与した絶縁性フィラとし、これを熱伝導性フィラとして使用することも可能である。また、熱伝導性フィラは、シランカップリング処理、チタネートカップリング処理、エポキシ処理、ウレタン処理、酸化処理等の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理が施されていることで、樹脂界面との親和性が向上したり、混合・混練等の作業性が容易であったりする。更に、高熱伝導率を達成できる範囲内であれば、原料等に由来する不純物が少量含まれていても良い。
これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できるが、絶縁性または導電性の電気特性については、蓄熱ポリマ成形体を用いる部材等に応じて選択される。
絶縁性の熱伝導性フィラについては、熱伝導性、成形体のそり等の観点から、窒化ホウ素等の窒素化合物が好適である。なお、窒化ホウ素は、c−BN(立方晶構造)、w−BN(ウルツ鉱構造)、h−BN(六方晶構造)、r−BN(菱面体晶構造)、t−BN(乱層構造)等の何れの構造であっても良いが、グラファイトと類似の構造を有する六方晶構造型が好ましい。六方晶構造の窒化ホウ素を用いることにより、成形体を得る際に用いる成型機や金型の摩耗を低減できる。また、窒化ホウ素の形状には、球状のものと鱗片状のものがあり、本発明には何れも用いることができるが、鱗片状のものを用いると、絶縁性に優れ、機械的特性が良好な成形体が得られる。
導電性の熱伝導性フィラでは、安価で、かつ、熱伝導性や導電性を効果的に向上できる点から、炭素繊維等の炭素化合物が好適である。
なお、熱伝導性フィラの形状としては、例えば、繊維状、板状、球状、鱗片状、棒状、粒子状、粉末状、ロッド状、チューブ状、曲板状、針状、曲板状、針状等の形状があるが、何れの形状のものでも使用可能である。
また、熱伝導性フィラの中位径(≒平均粒子径)は、好ましくは1μm〜300μmの範囲内であり、より好ましくは2μm〜250μmの範囲内である。熱伝導性フィラの粒子径が小さすぎると、ポリマ組成物調製時に凝集が生じ易くなり均一な高分散性に欠け、また、成形性が劣ってくる。その結果、蓄熱ポリマ成形体において安定した熱伝導性を確保できなくなる場合がある。そして、成形性が劣ることで放熱対象物との密着性が低下して、蓄熱ポリマ成形体による熱伝導効果が低下する恐れがある。一方、粒子径が大きすぎると、充填性が低下し、また、均一な分布に欠け、安定して十分な熱伝導性が得られなくなる場合がある。また、外観に悪影響を及ぼす恐れがあり、更に、シート状に成形した際には、脆くなり裂け易くなる可能性がある。熱伝導性フィラの中位径(≒平均粒子径)が1μm〜300μmの範囲内、より好ましくは2μm〜250μmの範囲内であれば、安定した高い熱伝導性を確保することが可能となる。なお、中位径(≒平均粒子径)の異なるものを2種以上混合した場合には、小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性を高めることが可能となる。
因みに、JIS Z 8901「試験用粉体及び試験用粒子」の本文及び解説の用語の定義によれば、中位径とは、粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数(または質量)が、全粉体のそれの50%を占めるときの粒子径(直径)、即ち、オーバサイズ50%の粒径であり、通常、メディアン径または50%粒子径といいD50と表わされる。定義的には、平均粒子径と中位径で粒子群のサイズを表現されるが、ここでは、商品説明の表示、レーザ回折・散乱法によって測定した値である。
そして、この「レーザ回折・散乱法によって測定した中位径」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いてレーザ回折・散乱法によって得られた粒度分布において積算重量部が50%となる粒子径(D50)をいう。
なお、上記数値は、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。この誤差の観点から見ると、平均粒子径との差も僅少であり、平均粒子径≒中位径であり、平均粒子径=中位径と見做すこともできる。
また、熱伝導性フィラは、熱伝導率が0.2W/(m・K)〜200W/(m・K)の範囲内であるものが好ましい。熱伝導率が小さいものでは、十分な熱伝導性を確保するために多量に配合する必要が生じ、蓄熱ポリマ成形体の低硬度化を達成するのが困難となる。一方で、熱伝導率が高いものは、価格が高く入手も困難となる。熱伝導率が0.2W/(m・K)〜200W/(m・K)の範囲内である熱伝導性フィラを使用することで、高い熱伝導性及び低硬度の両立が確保され、また、低コスト化を図ることができる。
ここで、熱伝導性フィラの配合は、蓄熱ポリマ成形体において所望とする硬度及び熱伝導性の双方を満足するように設定され、単体または複数組み合わせて用いられる。熱伝導性フィラの配合割合が少なすぎると、放熱対象物の熱を移動させる十分な熱伝導性が得られず、蓄熱材を配合しても放熱対象物の温度上昇を顕著に抑制して緩和する効果が得らない。一方で、配合割合が多すぎると、ポリマ組成物調製時の流動性が低くなって成形性が低下したり、蓄熱ポリマ成形体の硬度が高くなったりするため、放熱対象物との密着性が低下して、放熱対象物の温度上昇を抑制して緩和する効果が低下する。また、熱伝導性フィラ単体では硬度が所望の範囲とすることができない場合には、別の熱伝導性フィラとの組み合わせによって所望の範囲とする。
そこで、熱伝導性フィラの配合は、熱可塑性ベースポリマ100重量部に対して20重量部〜1060重量部の範囲内とするのが好ましい。該範囲内であれば、放熱対象物において高い熱伝導性及び低硬度の両立が確保され、周囲(放熱対象物の周辺外部)との温度差が小さい環境下でも、放熱対象物の温度上昇を効果的に抑制して緩和することができる。
蓄熱材としては、蓄熱方式の違いにより潜熱蓄熱材、顕熱蓄熱材、化学蓄熱材が挙げられるが、蓄熱性(蓄熱密度等)、安定性、安全性、コスト、耐久性等の観点から、材料の相が特定温度で変化するときの潜熱を有する相変化材料からなる潜熱蓄熱材が最適である。
ここで、潜熱蓄熱材としては、固液相転移型の潜熱蓄熱材、電子相転移型の潜熱蓄熱材、固固相転移型の潜熱蓄熱材が挙げられる。
具体的に、電子相転移型の潜熱蓄熱材としては、例えば、バナジウム酸化物、LiMn24、LiVS2、LiVO2、NaNiO2、REBaFe25、REBaCo25.5(ここでREはY,Sm,Pr,Eu,Gd,Dy,Ho,Tb等の希土類元素)等が挙げられる。
固固相転移型の潜熱蓄熱材としては、例えば、マルテンサイト変態を生じる材料(NiTi、CuZnAl、CuAlNi等の形状記憶合金)、サーモクロミック材料(N,N−ジエチルエチレンジアミン銅錯体等)、柔粘性結晶(トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール等)、磁気相転移物質(Mn−Znフェライト、NiFe合金等)、常誘電体−強誘電体転移物質(BaTiO3等)が挙げられる。
固液相転移型の潜熱蓄熱材としては、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−エイコサン、n−ノナデカン、n−イコサン、n−ヘンイコサン、n−ドコサン、n−トリコサン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、n−ヘキサコサン、n−ヘプタコサン、n−オクタコサン、n−ノナコサン、n−トリアコンタン、n−ヘントリアコンタン、n−ドトリアコンタン、n−トリトリアコンタン、パラフィンワックス等のパラフィン類や、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキギン酸、ヘンイコシル酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、トリアコンタン酸、ヒドロキシステアリン酸、セバシン酸、クロトン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の脂肪酸類(脂肪酸エステルを含む)や、ナフタレン、ベンゼン、p-キシレン等の芳香族炭化水素化合物や、セチルアルコール、ステアリルアルコール、テトラデカノール、ドデカノール、キシリトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、マン二トール、ソルビトール、ガラクチトール、スレイトール、ポリエチレングリコール等のアルコール類や、プロピオンアミド、アセトアミド等のアミド類や、ポリエチレンや、塩化カルシウム水和物、酢酸ナトリウム水和物、酢酸カリウム水和物、水酸化ナトリウム水和物、水酸化カリウム水和物、水酸化ストロンチウム水和物、水酸化バリウム水和物、塩化ナトリウム水和物、塩化マグネシウム水和物、塩化亜鉛水和物、硝酸リチウム水和物、硝酸マグネシウム水和物、硝酸カルシウム水和物、硝酸アルミニウム水和物、硝酸カドミウム、硝酸鉄水和物、硝酸亜鉛水和物、硝酸マンガン水和物、硫酸リチウム水和物、硫酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、硫酸マグネシウム水和物、硫酸カルシウム水和物、硫酸カリウムアルミニウム水和物、硫酸アルミニウムアンモニウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、リン酸カリウム水和物、リン酸ナトリウム水和物、リン酸水素カリウム水和物、リン酸水素ナトリウム水和物、ホウ酸ナトリウム水和物、臭化カルシウム水和物、フッ化カリウム水和物、炭酸ナトリウム水和物、塩化カルシウム六水塩、炭酸水素カリウム水溶液、硫酸ナトリウム十水塩等の無機水和物・無機系共晶物等が挙げられる。
これらのうち潜熱蓄熱材としては、固液相転移型の潜熱蓄熱材の使用が好適である。
この固液相転移型の潜熱蓄熱材とは、熱を吸収する際に固相から液相へと相変化し、その相変化(融解)の潜熱によって熱を蓄える(吸収する)相変化型の蓄熱材(相変化材)のことである。固液相転移型の潜熱蓄熱材の中でも、特にパラフィン類、脂肪酸類(脂肪酸エステルを含む)等の有機系化合物は、比較的大きい潜熱を有し単位体積当たりの蓄熱量が大きく、融解と凝固を繰り返しても安定した放熱と蓄熱作用が得られる。また、腐食し難く、安価であり、更に分子量等に応じて相変化温度(融点)を容易に調節できるため相変化温度(融点)を異にした材料種が多く存在し、材料の選択幅が広い。このため、好ましく用いられる。
なお、これら潜熱蓄熱材は、1種を単独で用いても良いし2種以上の材料の混合物や共晶を用いても良いし、1種以上の材料を主成分として更に他の副成分(安息香酸、尿素、水等)を添加した混合物を用いてもよい。
特に、潜熱蓄熱材として固液相転移型等の相変化材を使用する場合には、必要とする相変化温度(固液相転移型の相変化材の場合、融点に相当)に応じた材料、即ち、目的の温度範囲に相変化温度(融点)を有する材料が選択される。例えば、本実施の形態の蓄熱ポリマ成形体を自動車に搭載されるリチウムイオン電地のバッテリに適用する場合、電池(放熱対象物)の作動温度の範囲内(温度変化の範囲内)に相変化温度(融点)を有する固液相転移型の潜熱蓄熱材を使用することで、電池の温度が上昇しようとする際に、潜熱蓄熱材が固体から液体へ相変化することによって相変化の融解熱により潜熱を吸収するため、電池の温度上昇を抑制することが可能となる。具体的には、性能や耐久性等の観点から、相変化温度が20℃以上、50℃未満の範囲内にあるものが好ましい。相変化温度が20℃未満のものでは、高温下において蓄熱容量がすぐに限界を超えて、効果的に電池の温度上昇を抑制することができない。また、電池の作動時以外でもバッテリの周囲の温度変化により相変化の繰り返しが生じやすいため、性能低下や劣化の速度が速く耐久性に欠ける。一方、リチウムイオン電地の使用限界温度が通常、60℃〜70℃であることから、相変化温度が50℃以上のものでは相変化の潜熱をほとんど利用できず、相変化して蓄熱するまでに電池の発熱温度が高くなりすぎ、リチウムイオン電地の作動時間を長くすることができない。相変化温度が20℃以上、50℃未満の範囲内にある潜熱蓄熱材を使用することで、放熱対象物からの熱をすばやく取り込むことができ、放熱対象物からの熱を十分に蓄えることができて、放熱対象物の温度上昇を効率よく抑えることができる。
なお、相変化温度(融点)の異なる2種以上の材料を混合して用いることも可能である。
因みに、固液相転移型の潜熱蓄熱材は、融点以上で液体に相変化するため、相変化による溶融時の染み出しや混入時の分散性を考慮すると、カプセル内に内包して粒子状の蓄熱カプセル(マイクロカプセル)として使用されることもある。潜熱蓄熱材がカプセル内に内包されることによって、形状が安定化されるため、取扱いが容易となり、分散安定性も高いものとなる。このため、蓄熱材の蓄熱性を十分に生かすことができ、少ない量でも高い蓄熱効果を得ることが可能となる。
なお、蓄熱カプセルの外殻を構成する膜材(カプセル膜材)としては、界面重合法、インサイチュー(in−situ)法等の手法で得られるポリスチレン、アクリル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン類、アミノ類、メラミン等の樹脂や、カルボキシメチルセルロースまたはアラビアゴムとゼラチンとのコアセルベーション法を利用した樹脂が挙げられる。これらの中でも、物理的、化学的に安定で熱的にも強く、加工性も良好な熱硬化性樹脂皮膜を形成する膜材が好ましく、例えば、インサイチュー法によるメラミン樹脂皮膜、尿素樹脂皮膜を用いた蓄熱カプセルが好ましい。
なお、蓄熱材を内包した蓄熱カプセルは、レーザ回折式粒度分布による体積平均粒子径(レーザ回折式粒度分布測定装置を用いてレーザ回折・散乱法によって得られた粒度分布において積算体積部が50%となる粒子径(D50)をいう)が1μm〜100μmの範囲内であるものを使用するのが好ましい。体積平均粒子径が小さすぎるものでは、ポリマ組成物の調製時や成形時の物理的圧力(機械的せん断力や衝撃等の外力等)により破壊される恐れがある。また、ポリマ組成物の調製時に粘度が上昇して均一な高分散性が低下し、成形性も劣ってくる。その結果、蓄熱ポリマ成形体において安定した十分な蓄熱性が発揮されない可能性がある。更に、成形性が劣ることで放熱対象物との密着性が低下して、放熱対象物の温度上昇抑制効果が低下する恐れがある。一方で、体積平均粒子径が大きすぎると、充填性が低下し、また、均一な分布に欠け、安定した高い蓄熱性の確保が困難となる。体積平均粒子径が1μm〜100μmの範囲内である蓄熱カプセルを使用することで、安定した十分な蓄熱性を得ることができる。より好ましい体積平均粒子径は、5μm〜50μmの範囲内である。
また、蓄熱材や蓄熱材を内包した蓄熱マイクロカプセルの形状は、特に限定されるものでなく、例えば、球状、楕円状、だるま型、錘型、箱形、棒状等のものが使用される。なお、蓄熱カプセルは、シート状、ペレット状、ゲル状、粒子(パウダー)状、顆粒状、液状等の何れの形態で配合しても構わない。なお、本発明を実施する場合、蓄熱材を内包した蓄熱カプセルの他にも、例えば、蓄熱材を樹脂等でパッキングしたもの等の使用も可能である。
ここで、潜熱蓄熱材の配合は、熱可塑性ベースポリマ100重量部に対して40重量部〜1100重量部の範囲内とするのが好ましい。配合割合が少なすぎると、十分な蓄熱量が得られず、放熱対象物と放熱対象物の周囲との温度差が小さい場合に放熱対象物の温度上昇を顕著に抑制して緩和する効果が得られない。一方で、配合割合が多すぎると、ポリマ組成物中の熱可塑性ベースポリマの配合量が少なくなって必要な強度が得られなくなり、場合によっては成形自体が不能となる。蓄熱カプセルの配合が、熱可塑性ベースポリマ100重量部に対して40重量部〜1100重量部の範囲内であれば、蓄熱ポリマ成形体において、必要な強度を有した成形が可能となり、低硬度化及び高い蓄熱性の両立を確保することが可能となる。これによって周囲との温度差が小さい環境下でも、放熱対象物の温度上昇を効果的に抑制して緩和することができる。
更に、蓄熱材は、蓄熱量が10KJ/m(KJ/g)〜250KJ/m(KJ/g)の範囲内であるものが好ましい。蓄熱量が少ないと、特に放熱対象物と放熱対象物の周囲との温度差が小さい場合に放熱対象物の熱量を多く蓄熱できないことで放熱対象物の温度上昇を顕著に抑制して緩和する効果が得らない。十分な蓄熱性を確保するために蓄熱材を多量に配合することも考えられるが、蓄熱材を多量に配合した場合、蓄熱ポリマ成形体において低硬度化を達成するのが困難となる。一方で、蓄熱量が250KJ/m(KJ/g)のものは、価格が高くなる。蓄熱量が10KJ/m(KJ/g)〜250KJ/m(KJ/g)の範囲内である蓄熱材を使用することで、高い蓄熱性が確保され、周囲との温度差が小さい環境下でも放熱対象物の温度上昇を効果的に抑制して緩和することができる。
本実施の形態の蓄熱ポリマ成形体は、熱可塑性ベースポリマと、熱伝導性フィラと、蓄熱材とを少なくとも含有するポリマ組成物から形成されるが、本発明を実施する場合、必要に応じて、強度や剛性を向上させるための補強充填材を、蓄熱ポリマ成形体の硬度が所定の硬度範囲内になる限りにおいてポリマ組成物に配合することも可能である。
本実施の形態のポリマ組成物に適宜配合される補強充填材としては、例えば、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、ベントナイト、パイロフェライト、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、MOS、アラミド繊維、炭素繊維(カーボンファイバー)、ガラス繊維(グラスファイバー、チョップドファイバー、ミルドファイバー)等の各種繊維系、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウィスカー等が挙げられ、これら1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
更に、本発明を実施する場合には、柔軟性や加工性等を改良するためにポリブテン系、ポリイソブチレン系、プロセスオイル系(パラフィン系プロセスオイル等)、フタル酸エステル系、エポキシエステル系、ニトリル系、塩素化物系の軟化剤、特に、ベースポリマに熱可塑性樹脂を使用したときには、必要に応じて熱可塑性樹脂を可塑化し、また分散性を高め作業性や柔軟性を改良するために可塑剤が配合される。可塑剤は、ポリマ組成物に可塑性を付与できるものであれば、特に限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂系の熱可塑性樹脂の可塑剤としては、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘキシルフタレート(DHP)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−n−オクチルフタレート(DnOP)、ジイソオクチルフタレート(DIOP)、ジデシルフタレート(DDP)、ジノニルフタレート(DNP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ビス−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、C6〜C10混合高級アルコールフタレート、ブチルベンジルフタレート(BBP)、オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、ジメチルシクロヘキシルフタレート(DMCHP)等のエステル類や、アジピン酸ポリエステル、フタル酸系ポリエステル等のポリエステル類等が使用される。これらは1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。中でも、フタル酸エステルは最も一般的な可塑剤で入手も容易で低コストであり、特に、環境負荷とならない点、取り扱い易さ、溶解性、貯蔵安定性等を考えると、フタル酸エステルの中でもフタル酸ジイソノニル(DINP)やジオクチルフタレート(DOP)が最も一般的に使用される。
そして、本実施の形態のポリマ組成物を構成するこれら原料は、通常、ディスパー、プラネタリーミキサー、ビーズミル、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、メカノケミカル装置、スタティックミキサー、ダイナミックミキサー、タンブラー、スーパーミキサー、プラストミル、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー、ブラベンダー、エクストルーダ等の混合・混練機により混合され、必要に応じて脱泡処理され、その後、公知の成形加工法によって所望の形状に成形して蓄熱ポリマ成形体とされる。
成形加工法としては、ポリマ組成物について一般に用いられている成形法、例えば、圧縮成形(プレス成形)、射出成形、押出成形、ブロー成形、ガスアシスト等の中空成形、真空成形、カレンダー成形、異型成形、回転成形、トランスファー成形、フィルム成形、発泡成形(超臨界流体も含む)、熱成形、積層成形等が利用できる。
成形形態としては、放熱対象物の構造や放熱対象物への適用形態等に応じて、シート状、フィルム状、成型品等に成形することができる。
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池パックに適用する場合には、ポリマ組成物をシート状や、二次電池パック筐体に成形し、このように成形した蓄熱ポリマ成形体をリチウムイオン電池等の放熱対象物に密着させることで、放熱対象物であるリチウムイオン電池等の温度上昇を効果的に抑制して緩和することが可能である。
更に詳しく説明すると、放熱対象物としてリチウムイオン電池が複数配された電池パックの個々のリチウム電池間にシート状蓄熱ポリマ成形体を介在させたときや、仕切りを有する筐体を蓄熱ポリマ組成物で成形し、この筐体内に個々のリチウムイオン電池を収納したときを想定する。このような状態にあるとき、個々のリチウム電池はシート状蓄熱ポリマ成形体または蓄熱ポリマ成形筐体と密着して効率よく熱の移動が図られ、個々のリチウム電池は使用時に温度上昇が抑えられる。このとき、複数のリチウム電池の一部の温度が高くなったとしても、蓄熱ポリマ成形体が蓄熱性を有することから隣のリチウム電池に熱を伝達することがなく、隣のリチウム電池が本来の昇温以上に温度が上昇することを防ぐことができる。
また、リチウム電池の一部が異常発熱を起こし、この異常発熱したリチウム電池が膨張しても蓄熱ポリマ成形体の硬度が後述するように所定の低硬度に設定されているため、膨張したリチウム電池による膨張圧(内圧)の上昇を吸収することができる。これによって隣のリチウム電池は膨張圧上昇による影響を受けることがない。
このように、本発明の蓄熱ポリマ成形体は後述する所定の硬度と蓄熱性を備えていることから、放熱対象物の温度上昇を効率的に抑えることができ、放熱対象物を収納している筺体の収納容器の膨張圧上昇を効率的に抑えて収納容器や放熱対象物が破損される事態を回避することが可能となる。
また、蓄熱ポリマ成形体は熱伝導性を有しているため、蓄熱ポリマ成形体に移動した熱は、筐体の収納容器から外部へと放散が行われ、これによってもリチウム電池の温度上昇が抑制される。
ここで、シート状に成形する方法としては、例えば、圧縮成形(プレス成形)、押出成形、カレンダー成形等が挙げられ、筐体に成形するには射出成形等が挙げられる。なお、このときのシートの厚さは、0.3mm〜10mmの範囲内が好ましい。シートの厚さを0.3mm以上とすることで、蓄熱ポリマ成形体において十分な熱伝導性及び蓄熱性を確保でき、また、シートの厚さを10mm以下とすることで、接触熱抵抗を低く抑え、放熱対象物の熱を効率的に逃すことができ、放熱対象物の温度上昇を効果的に抑制して緩和する効果を確保できる。筐体の厚さは筐体保持のため最低1.0mm以上の厚みが好適である。また、筐体の最大厚みはシートと同じ理由で10mm以下が好適である。
このようにして形成される本実施の形態の蓄熱ポリマ成形体によれば、熱伝導性フィラ及び蓄熱材が含有されていることで、熱伝導性フィラによって熱伝導経路が確保され、放熱対象物に接触させたときに放熱対象物の熱が伝導されやすく、放熱対象物から伝導された熱は熱伝導経路で拡散されて、蓄熱材に吸収されて蓄熱されると共に、放熱対象物の周辺外部にも放散される。
特に、放熱対象物と放熱対象物の周辺外部との温度差が小さい環境下では、放熱対象物の熱を吸収して蓄熱する蓄熱材が有効に機能することで、周囲との温度差が小さくても放熱対象物の温度上昇が効果的に抑制され緩和される。
ここで、熱伝導性フィラを含有せず蓄熱材のみ含有する場合、本発明に使用するベースポリマとなる熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマは一般に熱伝導性が低いものが多いため、放熱対象物の熱が効率的に蓄熱材に伝導されにくく蓄熱材の蓄熱性を十分に生かすことができないうえ、外部にも放熱されにくい。このため、放熱対象物の温度上昇を抑制して緩和する効果が小さく、特に、外部に放熱されにくいことで、蓄熱材の蓄熱容量の限界を超えるのがはやく、蓄熱材の蓄熱容量の限界を超えた場合には、蓄熱ポリマ成形体の温度が高くなり、放熱対象物の温度上昇速度が増大する。したがって、蓄熱材のみの配合では、放熱対象物に対する温度上昇を抑制して緩和する効果に限度があり、放熱対象物と放熱対象物の周辺外部との温度差が小さい環境下では、効果的に放熱対象物の温度上昇を抑制して緩和することができない。
しかし、本発明では、蓄熱材のみならず熱伝導性フィラを含有していることで、熱伝導性フィラによって熱伝導経路が確保されるため、放熱対象物の熱が効率的に蓄熱材に伝導されやすく蓄熱材の蓄熱性を十分に生かすことができ、また、外部にも放熱されやすくなる。即ち、熱伝導性フィラによって放熱対象物の熱を効率よく伝えて逃すことができると共に、蓄熱材によって放熱対象物の熱を蓄熱することもできる。このため、周囲との温度差が小さい環境下でも、効果的に放熱対象物の温度上昇を抑制して緩和することができる。
このように本実施の形態の蓄熱ポリマ成形体によれば、熱可塑性ベースポリマに熱伝導が劣る材料を使用しても熱伝導性フィラによって熱伝導路が確保され、放熱対象物に接触させたときに放熱対象物の熱が蓄熱ポリマ成形体に効率的に伝導され、放熱対象物からの熱を蓄熱材によって蓄熱可能としつつ、放熱対象物の周辺外部への放熱も確保されるため、放熱対象物の熱を効率的に逃し、放熱対象物の温度上昇を抑制して緩和することが可能となる。勿論、熱伝導性に優れる材料を熱可塑性ベースポリマに使用すれば更なる温度上昇抑制効果が期待できる。
また、本実施の形態の蓄熱ポリマ成形体によれば、熱可塑性ベースポリマに熱伝導性フィラ及び蓄熱材を配合しており、ベースとなるポリマが熱可塑性であるため、ポリマ組成物を調製する時に適度な流動性や粘度を示して、熱伝導性フィラ及び蓄熱材が均一に高分散されやすく、成形性も良好となる。熱伝導性フィラ及び蓄熱材が均一に高分散されることで、熱伝導性フィラによる熱伝導性及び蓄熱材による蓄熱性を効果的に発揮させることができる。
このとき、熱伝導性フィラと蓄熱材の配合量は蓄熱ポリマ成形体の硬度が所定の低硬度の範囲内となる範囲で要求仕様に合わせて適宜決定される。蓄熱ポリマ成形体の硬度を所定の低硬度の範囲内とすることで、放熱対象物が凹凸形状である場合にもそれに十分に追随し、放熱対象物との接触面積が大きく高い密着性を得ることが可能である。これにより、接触熱抵抗や放熱対象物との間隙で生じる断熱性が低減し、放熱対象物の熱が伝導されやすくなることで蓄熱材によって蓄熱されると共に、放熱対象物の熱を効率的に逃すことができる。よって、放熱対象物の温度上昇を抑制して緩和する効果を十分に発揮させることができる。
ここで、所定の低硬度の範囲内とは、放熱対象物との良好な密着性を確保でき、かつ、放熱対象物の膨張を吸収できる硬度の範囲内である。例えば、リチウムイオン電池等の二次電池バッテリで使用する場合においては、ショアA硬度で30以上、ショアD硬度が60以下(常温時の測定)の範囲内とするが最適である。
蓄熱ポリマ成形体をリチウムイオン電池等の二次電池の放熱対象物に接触させて放熱対象物の温度上昇の抑制を図る場合、蓄熱ポリマ成形体のショアD硬度が60を超えるものでは、放熱対象物との密着性が悪く、放熱対象物が膨らんだときにその応力を吸収できず内圧の増加を抑制することができにくくなる。蓄熱ポリマ成形体のショアD硬度が60以下であると、放熱対象物である電池との高い密着性を確保できるうえ、劣化により電池自体が膨らんだ場合でもその応力を吸収して内圧がかかるのを防止し、破損を防ぐことができる。また、防振・防音といった振動対策にも有効である。更に、大容量化のために二次電池の複数個のセルが連結された二次電池モジュールにおいては、各セルの寸法公差をも吸収して、セル間の温度ばらつきを防止し、全体で高い温度抑制効果を得ることができる。
ただし、ショアA硬度が30未満のものは、射出成形や押出成形といった成形方法を採用した場合に成形時に不具合が生じ成形不能となりやすく不適である。
そこで、蓄熱ポリマ成形体のショアA硬度が30以上、ショアD硬度が60以下の範囲内であれば、成形性も良く、放熱対象物に対して良好な密着を確保でき、放熱対象物が膨張した場合にはその応力を効率よく吸収できる。
そして、本発明者の実験研究によれば、ポリマ組成物中における熱伝導性フィラと蓄熱材の合計配合量を最大でも95重量%とすることで、蓄熱ポリマ成形体のショアA硬度を30以上、ショアD硬度が60以下の範囲内に収めることができることを確認している。即ち、熱伝導性フィラと蓄熱材の合計配合量を95重量%以下とすることで、所定の低硬度を確保できる。
また、蓄熱材として固液相転移型の潜熱蓄熱材を使用した場合には、放熱対象物の作動による温度上昇に伴い、固体から液体に相変化することによって潜熱を吸収する一方で、放熱対象物の作動停止による温度低下に伴い、液体から固体に相変化することによって潜熱を放出する。特に固液相転移型の潜熱蓄熱材は、状態変化がゆっくりであり、熱量が外部から供給されない場合には、蓄熱した潜熱を徐々に外部に放熱するという性質を有している。
このような性質により、自動車に搭載されるリチウムイオン電池等の二次電池バッテリ等で使用する蓄熱ポリマ成形体において相変化温度(融点)が50℃未満の比較的低い潜熱蓄熱材を用いた場合、冬場の低温環境下のように自動車の車外の環境温度とバッテリ等の二次電池温度の差が大きくなる際には、リチウムイオン電池等二次電池の作動停止後、蓄熱ポリマ成形体に吸収された潜熱の放出によりリチウムイオン電池等の二次電池の保温が促され、電池の温度低下が緩和されることで、低温化による起電力の低下を防止して、起動時や充電時の電池性能を良好に保持することができる。
以上説明してきたように、本実施の形態の蓄熱ポリマ成形体によれば、熱伝導性フィラによって熱伝導経路を確保しつつ、放熱対象物の熱を蓄熱材に吸収して蓄熱させることにより、放熱対象物と放熱対象物の周辺外部との温度差が小さい環境下では、放熱対象物の温度上昇の効果的な抑制・緩和を可能とし、温度差が大きい環境下では放熱対象物の保温を可能とする。そして、熱伝導性フィラと蓄熱材の配合量は、放熱対象物に対する良好な密着性を確保でき、かつ、放熱対象物が膨張した時の筐体内の内圧増加の抑制が図れる低硬度を確保できる範囲内としている。
加えて、ベースポリマの熱可塑性の特性を生かして複雑な形状にも成形可能であり、放熱対象物の形状や大きさに対応することができて、成形性や成形自由度(形状選択の自由度)が高く、幅広い放熱対象物に適用することができる。また、ベースとなるポリマが熱可塑性であるため他の樹脂材料や金属材料と一体成型することも可能である。
このため、発熱源の熱による昇温を抑制する熱対策部材として、幅広い部品等に適用可能である。
したがって、本実施の形態の蓄熱ポリマ成形体は、例えば、発熱源の発熱量が大きく、放熱対象物の使用時に放熱対象物の周囲環境の温度が高い等の熱的に厳しい環境条件下におかれる自動車部品、具体的には、放熱対象物と放熱対象物の周囲環境との温度差が小さくて放熱対象物の熱が放散しにくいリチウムイオン電池等の二次電池バッテリや、キャパシタ等に好適に使用することができる。
その他にも、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料等の各種の部品、例えば、家電、OA機器部品、AV機器部品、精密機器、自動車内外装部品等の発熱源(一例として、コンピュータのCPU、液晶バックライト、プラズマディスプレイパネル、LED素子、有機EL素子、ペルチェ素子、熱電変換素子、温度センサー、コンバータ、トランス、インバータ、(ハイ)パワートランジスタ等の発熱源)の放熱を図る放熱材としても用いることができる。具体的な製品部品としては、パソコン、ゲーム機、VTR、テレビ、アイロン、エアコン、空気清浄機、マイナスイオン発生器、掃除機、冷蔵庫、アイロン、ドライヤー等の美容機器、照明器具、炊飯器、電子レンジ、マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具等の家庭電気製品部品や、携帯情報端末(いわゆるPDA)、電子辞書、電子書籍、携帯テレビ、コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、記録媒体(CD、MD、DVD、次世代高密度ディスク、ハードディスク、ICカード、スマートメディア、メモリースティック等)のドライブ・読取装置、光ケーブル用フェルール、コイル、半導体素子・抵抗等の封止物、端子台、プリント基板、回路基板、チップ、サーマルヘッド、センサー、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、LSI、CPU、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品や、LED照明、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジングなど照明器具部品や、CRT、液晶、プラズマ、プロジェクタ、有機EL、オーディオバックパネル等のディスプレー装置や、ステレオ、スピーカー等の音響製品部品や、プリンタ、コピー機、スキャナー、ファックス、分離爪、ヒータホルダー等の複写機・印刷機関連部品や、パチンコ、スロットマシーン等の遊戯機関連部品や、インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品、ブレーカー等の配電部品、自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、ランプリフレクター、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター、ランプ、カーステレオ、カーナビケーション、カーオーディオビジュアル、オートモバイルコンピューター部品等の電装・内装部品等の自動車等の車両部品や、航空機・宇宙機用の部品や、センサー類の部品や、電話機(携帯電話、固定電話等)、モデム等の通信機器部品や、光学カメラ、デジタルカメラ、タイプライター等の画像表示・記録機器や、パラボラアンテナ、電動工具等の製品部品等が挙げられる。
例えば、コンピュータのCPUで使用する場合においては、蓄熱材の相変化温度を70℃〜90℃の範囲内とするが最適である。また、シリコン半導体で使用する場合においては、蓄熱材の相変化温度を50℃〜70℃の範囲内とするが最適である。車両部品の中のキャニスタで使用する場合においては、蓄熱材の相変化温度を30℃〜50℃の範囲内とするが最適である。
次に本発明の実施の形態に係る蓄熱ポリマ成形体の実施例について、図1乃至図4を参照しながら、具体的に説明する。
まず、実施例1に係る蓄熱ポリマ成形体について説明する。
本実施例1の蓄熱ポリマ成形体においては、ベースポリマとしてポリ塩化ビニル(PVC)樹脂((株)カネカ製『PCH−72』)を用い、熱伝導性フィラとして窒化ホウ素(モメンティブ・マテリアルズ・パフォーマンス・ジャパン合同会社製『PT110』)を用いた。また、自動車に搭載されるリチウムイオン電池バッテリでの使用を想定して、蓄熱材としては融点が39℃のミリスチン酸ミリスチルをメラミン樹脂からなるカプセルに内包してなる蓄熱カプセル(三菱製紙(株)製『FP−39』(平均粒子径:50μm))を配合した。更に、可塑剤としてジイソノニルフタレート(DINP:(株)ジェイ・プラス)を使用した。
実施例1では、ベースポリマとしてのPVC樹脂を13重量%、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素を10重量%、蓄熱材としてのミリスチン酸ミリスチルを内包した蓄熱カプセルを40重量%、可塑剤としてのDINPを37重量%配合することにより、ポリマ組成物を合計100重量%としている。この実施例1の配合では、ベースポリマ100重量部に対し、熱伝導性フィラの配合量が77重量部、蓄熱カプセルの配合量が308重量部となる。
本実施例の蓄熱ポリマ成形体を製造するにあたっては、表1に示す配合量で配合したポリマ組成物を、攪拌容器に入れてディスパーで攪拌混合し、更に、混合した材料を、脱泡処理することにより調製した。
次に、このように調製したポリマ組成物を、断面凹形状の金型(下型)に流し込み、その後、下型の凹形状に係合する凸形状の金型(上型)を下型に挿入して上型が移動しないように下型に固定した。この際、下型と上型によって、ポリマ組成物が縦50mm、横100mm、厚み5mmのシート形状となる成形品が形成される設計となっている。そして、この状態で150℃のオーブンに入れて30分加熱した後、取り出して常温まで自然冷却することによって評価用のシート状蓄熱ポリマ成形体を得た。このようにして得られたシート状の蓄熱ポリマ成形体について、硬度及び熱伝導率の測定並びに昇温抑制効果(放熱対象物の温度上昇抑制・緩和効果)の評価試験を行った。
硬度については、JIS K6253に準拠し、デュロメータタイプA(JIS A硬度計、高分子計器(株)製)を用いて1秒以内に測定した。
熱伝導率については、熱伝導率測定装置(アルバック理工(株)製『TC−7000H』を使用し、レーザフラッシュ法(JIS−R1611)によって測定した。
レーザフラッシュ法は、円板形状(10mmφ,厚さ2mm)とした試料(ポリマ成形体)の表面にレーザ光源からレーザ光を照射し、試料の裏面の温度を熱電対で測定するものである。
ここで、比較のために実施例1と同様の製造手順で、比較例1として、蓄熱材を配合せず、熱伝導性フィラ(窒化ホウ素)と熱可塑性樹脂(PVC樹脂)と可塑剤(DINP)を原料として表1に示す配合量で配合し、シート状に成形した比較例1を作製した。
そして、この比較例1についても、実施例1と同様の評価を行った。
表1の上段に、実施例1と比較例1の配合内容を示し、表1の下段にそれらの硬度及び熱伝導率の測定結果をまとめて示す。なお、表1の上段に示した数値は各配合成分を重量部と重量%で示したものである。
Figure 2016210957
表1に示すように、実施例1に係る蓄熱ポリマ成形体においては、比較例1と比べると、常温でのショアA硬度が32°と略同程度の低い硬度を示すが、熱伝導率が0.3W/(m・k)と、比較例1の1.6W/(m・k)より約1/5程度の熱伝導率となっている。
このような特性の実施例1と比較例1を用いて昇温抑制の評価試験を行った。
以下、昇温抑制の評価試験について説明する。
昇温抑制効果の評価試験については、自動車に搭載されるリチウムイオン電池バッテリでの使用を想定して、図1に示す評価用試験機11を作製し、この評価用試験機11を使用して昇温抑制効果の評価を行った。
図1に示すように評価用試験機11は、上面に凹部を有する土台13の凹部に、ヒータH(放熱対象物に相当)を内包するスポンジ状の断熱材14を配置している。この際、ヒータHと断熱材14の上面は一致するようにヒータHは断熱材14に内包されている。このためヒータHの上面のみ断熱材14で覆われていないことになる。そして、この断熱材14で覆われていないヒータHの上面に評価用のポリマ成形体Aを接して配置し、ヒータHの上面と評価用のポリマ成形体Aとの間に温度を測定する熱電対Tを配置している。この熱電対TによってヒータHとポリマ成形体Aの境面部分の温度が測定できるようになっている。
更に、ポリマ成形体Aの上面にはPP樹脂板15が配置され、このPP樹脂板15は錘設置台16と500gの錘17によってポリマ成形体Aを下方に押す力が働くようになっている。したがって、ポリマ成形体Aは、PP樹脂板15、設置台16、錘17によってヒータHに密着するようになっている。そして、土台13上に配置されたこれらヒータHを内包する断熱材14、ポリマ成形体A、PP樹脂板15、設置台16、錘17は土台13の凹部の内壁に接して設けられたアクリル樹脂の筐体18によって覆われて密閉されている。これによって筐体18の外部に発生する風の影響を排除している。
そして、アクリルの筐体18によってヒータHを内包する断熱材14、ポリマ成形体A等を密閉状に配置した土台13はアクリル樹脂で作製された温調用容器12内に配置されている。温調用容器12には図示しない温調機によって温調された温風が流入される温調用開口部12aが温調用容器12に設けられ、この温調用開口部12aから所定の温度に温調された温風が温調用容器12内に送風され、アクリルの筐体18と、その内部空間を温調する。
このように構成した評価用試験機11において、温調の温度を20℃と35℃とし、ヒータHのワット数が3.6Wになるように調整して通電し、通電時間に対しヒータHと評価用のポリマ成形体Aとの境の温度を熱電対Tで経時的に測定した。
昇温抑制の評価試験における温調温度20℃の測定結果を図2に示し、温調温度35℃の測定結果を図3のグラフに示す。
ここで、自動車に搭載されるリチウムイオン電池バッテリのリチウムイオン電池の使用限界温度を60℃とすると、通常使用領域の最大温度は安全を見込むと55℃と思われる。そこで本評価試験では、この55℃までの時間を20℃の温度調整下と35℃の温度調整下で比較した。この際、20℃と35℃は自動車の車外の環境温度を模したものであり、車外温度による影響を評価したものである。
図2のグラフに示した20℃の温度調整下においては、熱伝導性フィラが配合されているものの蓄熱材を配合していない比較例1では72分で放熱対象物であるヒータHと比較例1に係るポリマ成形体の境の温度が55℃に達した。
これに対し、熱伝導性フィラ及び蓄熱材を配合した実施例1に係る蓄熱ポリマ成形体Aでは94分を要した。即ち、比較例1に対して22分延びて55℃に達するまでの使用可能時間が1.3倍増大している。
また、35℃の温度調整下における測定でも、図3のグラフに示したように、比較例1では31分で55℃に達したのに対し、実施例1では42分と55℃に達するまでの時間が延長されている。即ち、比較例1に対して9分延びて55℃に達するまでの使用可能時間が1.4倍増大している。
これらの結果から、昇温抑制について、実施例1では比較例1と比べて、放熱対象物と蓄熱ポリマ成形体の境面の温度上昇が抑えられ、この傾向は環境温度が変化しても同じである。つまり、熱伝導性は実施例1よりも比較例1の方が5倍程度高いが、昇温抑制の観点からは蓄熱性を有する実施例1の方が優れている。このことから、単に熱伝導を向上させるより、熱伝導と蓄熱を併用することが昇温抑制に大きく寄与し、環境温度に依存しないことが判明した。
ここで、放熱対象物と蓄熱ポリマ成形体の密着性については、実施例1と比較例1とでは常温でのショアA硬度が32°と30°と略同程度の硬度となっていることから共に良好な密着性を示しているものと推察される。
次に、実施例2乃至実施例9に係る蓄熱ポリマ成形体について説明する。
実施例2乃至実施例9の蓄熱ポリマ成形体においては、ベースポリマとしてSEBS(クレイトンポリマージャパン(株)製『G1651HU』)を用い、熱伝導性フィラとして窒化ホウ素(モメンティブ・マテリアルズ・パフォーマンス・ジャパン合同会社製『PT110』)、アルミナ(昭和電工(株)製『CB−A50BC』)、及びガラスビーズ(ポッターズ バロティーニ製『GB301S』、平均粒径50μm)を用いた。また、自動車に搭載されるリチウムイオン電池バッテリでの使用を想定して、蓄熱材としては相変化温度(融点)が44℃のラウリン酸(日油(株)製『NAA−122』)を配合した。更に、実施例3乃至実施例5及び実施例7では、軟化剤としてダイアナプロセスオイル(出光興産(株)製『PW380』)を使用した。
実施例2では、ベースポリマとしてのSEBSを5重量%、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素を13重量%、同じく熱伝導性フィラとしてのアルミナを39重量%、蓄熱材としてのラウリン酸を43重量%配合することにより、ポリマ組成物を合計100重量%としている。この実施例2の配合では、ベースポリマ100重量部に対し、熱伝導性フィラの配合量が合計で1040重量部、蓄熱材の配合量が860重量部となる。また、ポリマ組成物中における熱伝導性フィラと蓄熱材の合計の配合量は95重量%である。
実施例3では、ベースポリマとしてのSEBSを5重量%、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素を13重量%、アルミナを39重量%、蓄熱材としてのラウリン酸を38重量%、軟化剤としてのプロセスオイルを5重量%配合することにより、ポリマ組成物を合計100重量%としている。即ち、実施例2よりも蓄熱材の配合量を減らし、その分、軟化剤を加えている。
この実施例3の配合では、ベースポリマ100重量部に対し、熱伝導性フィラの配合量が合計で1040重量部、蓄熱材の配合量が760重量部となる。また、ポリマ組成物中における熱伝導性フィラと蓄熱材の合計の配合量は90重量%である。
実施例4では、ベースポリマとしてのSEBSを5重量%、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素を13重量%、アルミナを39重量%、蓄熱材としてのラウリン酸を33重量%、軟化剤としてのプロセスオイルを10重量%配合することにより、ポリマ組成物を合計100重量%としている。即ち、実施例3よりも蓄熱材の配合量を更に減らし、その分、軟化剤の配合量を増やしている。
この実施例4の配合では、ベースポリマ100重量部に対し、熱伝導性フィラの配合量が合計で1040重量部、蓄熱材の配合量が660重量部となる。また、ポリマ組成物中における熱伝導性フィラと蓄熱材の合計の配合量は85重量%である。
実施例5では、ベースポリマとしてのSEBSを5重量%、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素を13重量%、アルミナを39重量%、蓄熱材としてのラウリン酸を28重量%、軟化剤としてのプロセスオイルを15重量%配合することにより、ポリマ組成物を合計100重量%としている。即ち、実施例4よりも蓄熱材の配合量を更に減らし、その分、軟化剤の配合量を増やしている。
この実施例5の配合では、ベースポリマ100重量部に対し、熱伝導性フィラの配合量が合計で1040重量部、蓄熱材の配合量が560重量部となる。また、ポリマ組成物中における熱伝導性フィラと蓄熱材の合計の配合量は80重量%である。
こうして実施例3乃至実施例5では、実施例2とベースポリマ及び熱伝導性フィラの配合量は同一としており、蓄熱材と軟化剤の配合量のみが異なる。
また、実施例6では、ベースポリマとしてのSEBSを5重量%、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素を10重量%、アルミナを30重量%、蓄熱材としてのラウリン酸を55重量%配合することにより、ポリマ組成物を合計100重量%としている。即ち、実施例2よりも蓄熱材の配合量を増やし、その分、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素及びアルミナの配合量を減らしている。
この実施例6の配合では、ベースポリマ100重量部に対し、熱伝導性フィラの配合量が合計で800重量部、蓄熱材の配合量が1100重量部となる。また、ポリマ組成物中における熱伝導性フィラと蓄熱材の合計の配合量は90重量%である。
更に、実施例7では、ベースポリマとしてのSEBSを5重量%、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素を10重量%、アルミナを30重量%、蓄熱材としてのラウリン酸を38重量%、軟化剤としてのプロセスオイルを17重量%配合することにより、ポリマ組成物を合計100重量%としている。即ち、実施例6よりも蓄熱材の配合量を減らし、その分、軟化剤を加えている。
この実施例7の配合では、ベースポリマ100重量部に対し、熱伝導性フィラの配合量が合計で800重量部、蓄熱材の配合量が760重量部となる。また、ポリマ組成物中における熱伝導性フィラと蓄熱材の合計の配合量は78重量%である。
このように実施例6及び実施例7では、ベースポリマ及び熱伝導性フィラの配合量は同一としており、蓄熱材と軟化剤の配合量のみが異なる。
また、実施例8では、ベースポリマとしてのSEBSを5重量%、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素を15重量%、ガラスビーズを35重量%、蓄熱材としてのラウリン酸を45重量%配合することにより、ポリマ組成物を合計100重量%としている。この実施例8の配合では、ベースポリマ100重量部に対し、熱伝導性フィラの配合量が合計で1000重量部、蓄熱材の配合量が900重量部となる。
更に、実施例9では、ベースポリマとしてのSEBSを5重量%、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素を13重量%、ガラスビーズを40重量%、蓄熱材としてのラウリン酸を42重量%配合することにより、ポリマ組成物を合計100重量%としている。この実施例9の配合では、ベースポリマ100重量部に対し、熱伝導性フィラの配合量が合計で1060重量部、蓄熱材の配合量が840重量部となる。
実施例2乃至実施例7において熱伝導性フィラとして窒化ホウ素及びアルミナを使用したのに対して、実施例8及び実施例9では熱伝導性フィラとして窒化ホウ素とガラスビーズを使用した。
本実施例2乃至実施例9の蓄熱ポリマ成形体を製造するにあたっては、表2に示した配合量で材料を配合したポリマ組成物を、ドライブレンドし、オーブンで100〜150℃、30分間加熱した。この加熱によって、融解した蓄熱材としてのラウリン酸(NA−122)がベースポリマとしてのSEBS中に均質に分布され(吸収され)、全体が膨潤する。
そして、100〜150℃、30分間の加熱後に、1度オーブンから取り出して、すぐに混練・脱泡((株)シンキー社製、『あわとり練太郎(登録商標)』、混練:2000rpm×1分+脱泡:2000rpm×1分)を行い、次いで、上記実施例1のときと同様の断面凹形状の金型(下型)に流し込み、その後、下型の凹形状に係合する凸形状の金型(上型)を下型に挿入して上型が移動しないように下型に固定し、その状態で再度オーブンに入れて100〜150℃、30分間加熱を行った。この際、下型と上型によって、ポリマ組成物が縦50mm、横100mm、厚み5mmのシート形状となる成形品が形成される設計とした。加熱後、成形金型ごとオーブンから取り出して、常温まで自然冷却した後、金型から取り外して評価用のシート状蓄熱ポリマ成形体を得た。
このようにして得られた実施例2乃至実施例9に係るシート状の蓄熱ポリマ成形体についても、上記実施例1のときと同様、硬度及び熱伝導率の測定並びに昇温抑制効果(放熱対象物の温度上昇抑制・緩和効果)の評価試験を行った。
硬度については、実施例1乃至実施例8においては、JIS K6253に準拠し、デュロメータタイプA(JIS A硬度計、高分子計器(株)製)を用いて1秒以内の測定値を測定した。実施例9においては、JIS K6253に準拠し、デュロメータタイプD(JIS D硬度計、高分子計器(株)製)を用いて1秒以内の測定値を測定した。ショアAまたはショアD硬度の測定に際しては、常温(25℃)下とポリマ成形体を40℃に加熱したときの2種の温度帯で測定を行った。
熱伝導率の測定方法は、上記実施例1のときと同様に行った。
また、昇温抑制効果の評価試験についても、上記実施例1のときと同様に行った。ここでは、図1の評価試験機11において、ヒータHのワット数が2.4Wになるように調整して通電し、また、温調の温度を35℃として35℃の雰囲気下で評価試験を行った。
表2の左欄に、実施例2乃至実施例9の配合内容を示し、表2の右欄にそれらのショアA硬度またはショアD硬度、及び、熱伝導率の測定結果をまとめて示す。なお、表2の左蘭に示した数値は各配合成分を重量部と重量%で示したものである。
また、昇温抑制効果の評価試験における熱電対Tの経時的測定結果を図4のグラフに示す。
Figure 2016210957

実施例1のときと同様、自動車に搭載されるリチウムイオン電池バッテリのリチウムイオン電池の通常使用領域の最大温度を安全を見込んで55℃と想定したうえで、図1において放熱対象物であるヒータHと蓄熱ポリマ成形体A(実施例2乃至実施例9の蓄熱ポリマ成形体)の境の熱電対Tの温度が55℃に達するまでの時間を見ると、図4のグラフから、ベースポリマ、蓄熱材、及び熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素及びアルミナのみの配合の実施例2及び実施例6では、55℃に達するまでに要する時間が180分(10800秒)以上であり、昇温抑制効果に優れることが分かる。また、ベースポリマ、蓄熱材、及び熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素及びガラスビーズのみの配合の実施例8でも、55℃に達するまでに要する時間が180分(10800秒)程度であり、昇温抑制効果に優れることが分かる。
そして、実施例3乃至実施例5でも、実施例2と比較して蓄熱材の配合量を減らし軟化剤を加えたことで、表2右蘭に示したように、実施例2よりも熱伝導率が低下したものの、硬度が低下したことで、55℃に達するまでに要する時間が実施例3では約148分、実施例4では約167分、実施例5では約175分であり、高い昇温抑制効果が示された。
特に、実施例3乃至実施例5では蓄熱材及び軟化剤の配合量を異にするものの熱伝導性フィラの配合量が同一であることで、熱伝導率が略同一であったが、蓄熱材の配合量を減らして軟化剤の配合量を増やしたものほど、ショアA硬度が低下し、このショアA硬度は40℃と温度が高い条件での測定下では極めて小さい値を示した。そして、ショアA硬度が低いほど55℃に達するまでに要する時間が長く、昇温抑制効果が高かった。
更に、実施例7においても、実施例6と比較して蓄熱材の配合量を減らし軟化剤を加えたことで、実施例6よりも熱伝導率が低下したものの、硬度が低下したことで、55℃に達するまでに要する時間が151分であり、高い昇温抑制効果が示された。
また、ベースポリマ、蓄熱材、及び熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素及びガラスビーズのみの配合の実施例9でも、常温でのショアD硬度が60であることで、55℃に達するまでに要する時間が149分であり、高い昇温抑制効果が示された。
なお、実施例2と実施例6から、蓄熱材の配合量を増やし熱伝導フィラの配合量を減らすことでも、熱伝導率が低下するが、ショアA硬度も低下する。
そして、実施例5と実施例7では、常温でのショアA硬度が同一であるが、実施例7よりも熱伝導性フィラの配合量が多く蓄熱材の配合量が少ない実施例5において、熱伝導率が高く、また、40℃でのショアA硬度が低いことで、55℃に達するまでに要する時間が長く、昇温抑制効果が高かった。
このように、実施例2乃至実施例9においても、放熱対象物Hと蓄熱ポリマ成形体Aの境面の温度上昇が抑えられ、特に、ベースポリマとしてPVC樹脂、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素、蓄熱材としてのミリスチン酸ミリスチルを内包した蓄熱カプセル、及び可塑剤としてのDINPを配合した実施例1のときよりも、放熱対象物Hと蓄熱ポリマ成形体Aの境面の温度が55℃に達するまでに要する時間が長く、放熱対象物(ヒータH)の温度上昇を顕著に抑制して緩和することができた。また、実施例3乃至実施例5から、硬度が低いと、放熱対象物Hと蓄熱ポリマ成形体Aの密着性が良くなることで、高い昇温抑制効果が得られることが分かった。
なお、ベースポリマとしてSEBS等のスチレン系熱可塑性エラストマを使用しても、ポリ塩化ビニル樹脂等と同様、溶融温度が比較的低く、成形時に高温条件下とする必要がないことから、使用可能な蓄熱材の選択幅が広くなる。また、SEBS等のスチレン系熱可塑性エラストマは、ポリ塩化ビニル樹脂のように焼却時にダイオキシン等の有害物質を発生する恐れもなく、環境に優しいものである。更に、熱伝導性フィラとしてのアルミナ(酸化アルミニウム)は比較的入手が容易で安価であり比重が小さいうえ、熱伝導性が高い。また、熱伝導性フィラとしてのガラスも、比較的入手が容易で安価であり比重が小さく、熱伝導性が良好であるうえ、補強充填材としての機能も有する。
このように、本実施例1乃至実施例9に係る蓄熱ポリマ成形体によれば、蓄熱ポリマ成形体の硬度を所定の低硬度の範囲内に抑えて熱伝導フィラと蓄熱材を配することで、放熱対象物(ヒータH)と蓄熱ポリマ成形体との密着性も良く、放熱対象物(ヒータH)の温度上昇を顕著に抑制して緩和することができる。よって、例えば、自動車に搭載されるリチウムイオン電池等の二次電池に接触させた場合、二次電池の作動可能時間を延長することができる。そして、これにより、電池の機能低下や寿命低下を抑制し、高寿命化を図ることが可能となる。
ここで、硬度(°)について、実施例1乃至実施例9から、常温でショアA硬度が30°以上、ショアD硬度が60°以下の範囲内であれば、放熱対象物との密着性が良好で、放熱対象物の温度上昇を抑制して緩和する効果が高い。なお、表2に示したように、蓄熱ポリマ成形体の温度が高くなるほどショアA硬度は小さくなる。
そして、本発明者の実験研究によれば、常温でのショアA硬度が30未満のものを得ようとすると、成形体を射出成形や押出成形で形成するときの成形性が低下する。一方で、常温でのショアD硬度が60を超えるものは、放熱対象物との密着性が悪くなり、放熱対象物が膨らんだときにその応力を吸収できず内圧の増加を抑制することができにくくなる。
したがって、常温でのショアA硬度が30以上、ショアD硬度が60以下の範囲内とすることで、成形性も良く、放熱対象物に対して良好な密着を確保でき、放熱対象物が膨張した場合にはその応力を効率よく吸収できる。上記において、特にショアA硬度が30〜95が最適である。
このとき、実施例1乃至実施例9から、熱伝導性フィラの配合がベースポリマ100重量部に対して20重量部〜1060重量部の範囲内であり、蓄熱材の配合がベースポリマ100重量部に対して40重量部〜1100重量部の範囲内であれば、必要な強度を有した成形が可能で、所望の熱伝導性や蓄熱性と低い硬度の両立が確保され、周囲との温度差が小さい環境下でも、確実に放熱対象物の温度上昇が効果的に抑制されて緩和される。
また、ポリマ組成物中における熱伝導性フィラと蓄熱材の合計の配合量が95重量%以下であれば、蓄熱ポリマ成形体の常温でのショアA硬度が30以上、ショアD硬度が60以下の範囲内に収まる。
以上説明してきたように、実施例1に係る蓄熱ポリマ成形体は、熱可塑性樹脂としてのPVC樹脂からなるベースポリマと、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素と、蓄熱材としてのミリスチン酸ミリスチルがメラミン樹脂からなるカプセルに内包された蓄熱カプセルと、可塑剤としてのDINPとを含有するポリマ組成物をシート状に成形してなるものである。
また、実施例2乃至実施例9に係る蓄熱ポリマ成形体は、SEBSからなるベースポリマと、熱伝導性フィラとしての窒化ホウ素、アルミナ(酸化アルミニウム)、ガラスビーズと、蓄熱材としてラウリン酸と、軟化剤としてのプロセスオイルとを含有するポリマ組成物をシート状に成形してなるものである。
この本実施例1乃至実施例9に係る蓄熱ポリマ成形体によれば、熱伝導性フィラによって熱伝導経路が確保され、放熱対象物に接触させたときに放熱対象物の熱が伝導されやすく、放熱対象物から伝導された熱は熱伝導経路で拡散して蓄熱材に蓄熱することで温度上昇を顕著に抑え緩和することができる。また、周囲(筺体外部)環境の温度が高く、周囲(筺体外部)との温度差が小さい環境下でも、蓄熱材による蓄熱性が効果的に発揮されることで周囲との温度差に起因する温度上昇を緩和できる。更に、熱伝導性フィラによる熱伝導経路の確保により、外部(筺体外)への放散も可能であることから、放熱対象物の熱を効果的に蓄熱し、また、放熱することができる。
なお、上記実施例の蓄熱ポリマ成形体におけるポリマ組成物の配合組成及び成形においては、自動車の動力源として搭載されるリチウムイオン電池バッテリでの使用を想定し、リチウムイオン電池に接触させて熱対策を図るシートとして具体化した例を説明したが、本発明を実施する場合には、この例に限定されるものではなく、ベースポリマ、熱伝導性フィラ、蓄熱材の配合割合やポリマ組成物の成形形態は種々に変更することが可能である。
また、本発明の蓄熱ポリマ成形体におけるポリマ組成物には、必要に応じて、分散剤、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線防止剤、耐候剤、光安定剤等の各種安定剤、増粘剤、潤滑剤、離型剤、耐炎剤、カップリング剤、核剤、光拡散剤、発泡剤、帯電防止剤、架橋剤、着色防止剤、顔料、染料、着色剤等の添加剤を加えることも可能である。
そして、本発明を実施するに際しては、蓄熱ポリマ成形体のその他の部分の構成、成分、配合、製造方法等についても、上記実施例に限定されるものではない。
なお、本発明の実施の形態及び実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は製造コスト、製造が容易な形態等から決定した値であり、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を許容値内で若干変更してもその実施を否定するものではない。
A 蓄熱ポリマ成形体

Claims (4)

  1. 熱可塑性ベースポリマと、熱伝導性フィラと、蓄熱材とを含有するポリマ組成物を成形してなり、ショアA硬度が30以上、ショアD硬度が60以下の範囲内であることを特徴とする蓄熱ポリマ成形体。
  2. 前記熱可塑性ベースポリマ100重量部に対し、前記熱伝導性フィラが20重量部〜1060重量部の範囲内であり、前記蓄熱材が40重量部〜1100重量部の範囲内で配合されることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱ポリマ成形体。
  3. 前記蓄熱材が、20℃以上、50℃未満の範囲内に相変化温度を有する潜熱蓄熱材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄熱ポリマ成形体。
  4. 前記ポリマ組成物中における前記熱伝導性フィラと前記蓄熱材の合計の配合量は最大でも95重量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の蓄熱ポリマ成形体。
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