JP6601570B2 - 熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形体、放熱材料及び放熱部材 - Google Patents
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Description
また、自動車においても電気自動車、ハイブリッド自動車等の普及に伴い、車両に搭載される電子部品数は増加しつつあり、かつ、小型・軽量化、高性能化等に伴い、電子部品の発熱量が高くなっている。電子部品の発熱量が高くなると、部品内の温度が上昇することにより誤作動を起こしたり、部品を破損したりする恐れが生じる。このため、電子部品内で発生する熱を効率良く放熱させることが求められており、高い放熱性を有する素材の開発が行われている。
これまで、高い放熱性を必要とする部材には、主に金属材料やセラミックス材料が用いられてきたが、電気・電子部品の小型化に適合する上で金属材料やセラミックス材料は、軽量性や成形加工性の面で難があり、樹脂材料への代替が進みつつある。
特許文献1においては、熱伝導性を向上させるために、ポリアリーレンサルファイド樹脂と非晶性熱可塑性樹脂からなる樹脂混合物に酸化アルミニウム等の金属酸化物を配合した樹脂組成物が開示されているが、例えば上記した電子機器部品、照明装置部品等に対して要求される熱伝導性のレベルを満たすものではなかった。また、酸化アルミニウムは硬度が高く、製造装置の摩耗が問題になっている。
この様な熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体、及び該成形体を含有する放熱部材は、優れた熱伝導性を有していることから、蓄熱することなく、優れた熱放散能力を有する放熱部品を提供することが出来るという格別顕著な技術的効果を奏する。
本発明で使用する熱可塑性樹脂(A)は、成形材料等に使用される公知慣用の樹脂である。具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。少なくとも1種の熱可塑性樹脂が選択されて使用されるが、目的に応じて、2種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせての使用も可能である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、スピネル粒子(B)を含有する。
モリブデンは、後述する製造方法に起因して含有されうる。当該モリブデンは、スピネル粒子中にスピネル粒子表面に付着、被覆、結合、その他これに類する形態で配置される形態、モリブデンがスピネルに組み込まれる形態、これらの組み合わせにより含有されうる。なお、前記モリブデンには、モリブデン原子および後述するモリブデン化合物中のモリブデンを含む。
スピネル粒子の製造方法は、特に制限されるものではないが、1−A)マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を、モリブデン存在下で、固溶化および晶出により前記スピネル粒子に結晶成長させてスピネル粒子を得る焼成工程、または、1−B)モリブデン化合物およびマグネシウム化合物を焼成してモリブデン酸マグネシウムを得る焼成工程、そこで得られたモリブデン酸マグネシウムとアルミニウム化合物とを焼成してスピネル粒子を得る焼成工程と、2)前記焼成工程で結晶成長したスピネル粒子を冷却する冷却工程と、を含む製造方法である。以下、まず1−A)の焼成工程を経て2)の冷却工程を経るスピネル粒子の製造方法につき、詳述する。
焼成工程は、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を、モリブデン存在下で、固溶化および晶出により前記スピネル粒子に結晶成長させる工程である。
マグネシウム化合物としては、特に制限されないが、反応性が高く、得られるスピネル粒子の結晶子径が大きくなりうることから、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化マグネシウムを用いることが好ましい。なお、上述のマグネシウム化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、アルミニウム金属、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、酸化アルミニウム等が挙げられる。上述のアルミニウム化合物は、酸化アルミニウムであることが好ましく、α結晶型を有する酸化アルミニウムであることがより好ましい。
フラックス法は、上述した固相法とは異なり、液相法、なかでも溶液法に分類される。フラックス法とは、より詳細には、結晶−フラックス2成分系状態図が共晶型を示すことを利用した結晶成長の方法である。
アルミニウム源としては、特に限定されないが、水酸化アルミニウム、遷移アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナ水和物であることが好ましく、水酸化アルミニウム、遷移アルミナ、ベーマイトを用いることがより好ましい。なお、上述のアルミニウム源は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
モリブデン化合物としては、特に制限されないが、三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウムであることが好ましく、三酸化モリブデンを用いることがより好ましい。なお、上述のモリブデン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フラックス法により得られるアルミニウム化合物は、モリブデンを含有する。
モリブデンは、モリブデン金属およびモリブデンを含む化合物中のモリブデンが用いられうる。モリブデンを含む化合物の具体例としては、上述したモリブデン化合物、モリブデンを含むアルミニウム化合物が挙げられる。
焼成は、モリブデン存在下で、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を混合させた状態で行われる。この際、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物の混合状態は、特に限定されない。この混合物は、乾式状態、湿式状態のいずれであってもよいが、コストの観点から乾式状態であることが好ましい。
冷却工程は、焼成工程において結晶成長したスピネル粒子を冷却する工程である。冷却速度についても特に制限されないが、1〜1000℃/時間であることが好ましい。冷却速度が1℃/時間以上であると、製造時間が短縮されうることから好ましい。一方、冷却速度が1000℃/時間以下であると、焼成容器がヒートショックで割れることが少なく、長く使用できることから好ましい。冷却方法は特に制限されず、自然放冷であっても、冷却装置を使用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の調製に当たっては、本発明の効果を損なわない範囲において、スピネル粒子(B)以外にも、その他の熱伝導性フィラーを含有してもかまわない。無機フィラーとしては、公知慣用のものを使用すればよく、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、鉄、アルミニウム、ステンレス、グラファイト(黒鉛)等の導電性の粉体、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、硼酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の非導電性の粉体、ガラス繊維、炭素繊維、酸化亜鉛ウィスカ、アラミド繊維、PBO繊維(ザイロン)、ナイロン繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、金属繊維等の繊維状フィラーなどが挙げられる。また、これらの無機充填剤は1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。中でも、ガラス繊維、炭素繊維を用いた熱可塑性樹脂組成物は、成形物の機械強度が高くなるので好ましい。なお、繊維状フィラーの量は、熱可塑性樹脂組成物全体に対して50重量%以下とするのが好ましい。50重量%以下であると、成形物の機械強度が高くなるので好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、使用用途に応じて溶剤を配合してもかまわない。溶剤としては有機溶剤が挙げられ、例えばメチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲で、熱可塑性樹脂(A)以外の樹脂を配合してもかまわない。その他の樹脂としては、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲であれば、反応性化合物、有機フィラー、無機フィラー、有機溶剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、カップリング剤、安定剤、流動調整剤、染料、着色剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、潤滑剤、離型剤等を配合してもかまわない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を所望の形状となるように成形することで、樹脂成形体を得ることができる。樹脂成形体を得るには、公知慣用の方法で行うことができる。例えば、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、活性エネルギー線成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。成形品の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形品の用途に応じて任意に設定すればよい。
アルミナるつぼに水酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)1.53g(アルミニウム元素:9.8mmol)、酸化マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.40g(マグネシウム元素:9.8mmol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)2.22g(モリブデン元素:15.5mmol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、焼成塊を得た。得られた焼成塊をボールミルで12時間粉砕し、熱水で洗浄した後、目開き75μmのメッシュで篩って、篩下を熱伝導性フィラー(Y−1)として得た。
得られた熱伝導性フィラー(Y−1)の平均粒径は6μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.15質量%であり、[111]面の結晶子径は270nmであり、[311]面の結晶子径は260nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.369であった。
製造した熱伝導性フィラーについて、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により平均粒径を測定した。具体的には、表面観察装置であるVE−9800(株式会社キーエンス製)を用いて、平均粒径を測定した。
製造した熱伝導性フィラーについて、蛍光X線測定(XRF)によりモリブデン含有量を測定した。具体的には、蛍光X線分析装置であるZSX100e(株式会社リガク製)を用いて測定を行った。この際、測定方法はFP(ファンクションポイント)法を用いた。また、測定条件として、EZスキャンを用い、測定範囲はB〜Uであり、測定径は10mmであり、試料重量は50mgである。なお、粉末のまま測定を行い、この際、飛散防止のためポリプロピレン(PP)フィルムを使用した。
製造したスピネル粒子について、[111]面および[311]面の結晶子径を測定した。具体的には、X線回折装置であるSmartLab(株式会社リガク製)を用い、検出器として高強度・高分解能結晶アナライザ(CALSA)(株式会社リガク製)を用いて測定を行った。また、解析ソフトはPDXLを用いて解析を行った。この際、測定方法は粉末X線回折法であり、解析はPDXLのCALSA関数を用いて、[111]面の結晶子径については、2θ=19度付近に出現するピークの半値幅からシェラー式を用いて算出し、[311]面の結晶子径については、2θ=37度付近に出現するピークの半値幅からシェラー式を用いて算出した。なお、測定条件として、2θ/θ法、管電圧45kV、管電流200mAであり、スキャンスピードは0.05度/分であり、スキャン範囲は10〜70度であり、ステップは0.002度であり、βs=20rpmである。装置標準幅は米国立標準技術研究所が作製している標準シリコン粉末(NIST、640d)を用いて算出した0.026度を使用した。
γ−アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm)50gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の50gと、を乳鉢で混合した。得られた混合物を坩堝に入れ、AMF−2P型温度コントローラ付きセラミック電気炉ARF−100K型の焼成炉(セラミック電気炉、株式会社アサヒ理化製作所製)にて1100℃で10時間焼成を行った。室温まで放冷した後、焼成塊を得た。得られた焼成塊をボールミルで12時間粉砕し、10%アンモニア水およびイオン交換水で洗浄した。最後に、150℃で2時間乾燥を行い、モリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−1)の粉末を得た。得られた粉末の平均粒径は5μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で2.5質量%であった。
次いで、モリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−1)1.00gと、酸化マグネシウム(和光純薬工業社製)0.40g(マグネシウム元素:0.01mol)と、を乳鉢で乾式混合した。得られた混合物をアルミナ坩堝に仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。12時間後、自然放冷により常温まで冷却し、焼成塊を得た。得られた焼成塊をボールミルで12時間粉砕し、熱水で洗浄した後、目開き75μmのメッシュで篩って、篩下を熱伝導性フィラー(Y−2)として得た。得られた熱伝導性フィラー(Y−2)の平均粒径は5μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.30質量%であり、[111]面の結晶子径は251nmであり、[311]面の結晶子径は281nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.363であった。
アルミナ坩堝に酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)1.00g(アルミニウム元素:19.6mmol)、酸化マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.40g(マグネシウム元素:9.8mmol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)2.22g(モリブデン元素:15.5mmol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却し焼成塊を得た。得られた焼成塊をボールミルで12時間粉砕し、熱水で洗浄した後、目開き75μmのメッシュで篩って、篩下を熱伝導性フィラー(Y−3)として得た。得られた熱伝導性フィラー(Y−3)の平均粒径は45μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で、0.15質量%であり、[111]面の結晶子径は280nmであり、[311]面の結晶子径は270nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.362であった。
γ−アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm)50gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の280gと、を乳鉢で混合した。得られた混合物を坩堝に入れ、AMF−2P型温度コントローラ付きセラミック電気炉ARF−100K型の焼成炉(セラミック電気炉、株式会社アサヒ理化製作所製)にて1100℃で10時間焼成を行った。室温まで放冷した後、焼成塊を得た。得られた焼成塊をボールミルで12時間粉砕し、10%アンモニア水およびイオン交換水で洗浄した。最後に、150℃で2時間乾燥を行い、モリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−2)の粉末を得た。得られた粉末の平均粒径は40μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で1.8質量%であった。
次いで、モリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−2)1.00gと、酸化マグネシウム(和光純薬工業社製)0.40g(マグネシウム元素:0.01mol)と、を乳鉢で乾式混合した。得られた混合物をアルミナ坩堝に仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。12時間後、自然放冷により常温まで冷却し、焼成塊を得た。得られた焼成塊をボールミルで12時間粉砕し、熱水で洗浄した後、目開き75μmのメッシュで篩って、篩下を熱伝導性フィラー(Y−4)として得た。得られた熱伝導性フィラー(Y−4)の平均粒径は45μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.30質量%であり、[111]面の結晶子径は270nmであり、[311]面の結晶子径は260nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.369であった。
酸化アルミニウム粉末(商品名DAW−05(デンカ(株)、平均粒径5μm)を用いた。
酸化アルミニウム粉末(商品名DAW−45(デンカ(株)、平均粒径45μm)を用いた。
熱可塑性樹脂としてDIC−PPS LR100G(X−1、DIC株式会社製ポリフェニレンスルフィド樹脂、密度1.35g/cm3)の27.3質量部、合成例1で製造した熱伝導性フィラー(Y−1)の72.7質量部を均一にドライブレンドした後、樹脂溶融混練装置ラボプラストミルにより混練温度300℃、回転数80rpmの条件で溶融混練処理し、熱伝導性フィラーの充填率が50容量%のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得た。樹脂組成物中のフィラー含有量(容量%)は、熱可塑性樹脂の密度と熱伝導性フィラーの密度より計算した。
得られた樹脂組成物を金型に入れ加工温度300℃で熱プレス成形を行うことで、0.5mm厚のプレス成形体を作製した。作製したプレス成形体から10mmX10mmのサンプルを切り出し、熱伝導率測定装置(LFA467 HyperFlash、NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱伝導率の測定を行った。熱伝導率が1.9W/m・K以上の場合を◎、1.7W/m・Kを超えて、1.9W/m・K未満であった場合を○、1.6W/m・K未満であった場合を×とした。
混練温度300℃、回転数80rpmの条件で溶融混練した際の、ラボプラストミル装置の混練部の磨耗を目視で評価した。磨耗がなかった場合を〇、磨耗があった場合を×とした。
熱可塑性樹脂としてユーピロンS3000F(X−2、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ポリカーボネート樹脂、密度1.20g/cm3)の25.0質量部、合成例1で製造した熱伝導性フィラー(Y−1)の75.0質量部を均一にドライブレンドした後、樹脂溶融混練装置ラボプラストミルにより混練温度250℃、回転数80rpmの条件で溶融混練処理し、熱伝導性フィラーの充填率が50容量%のポリカーボネート樹脂組成物を得た。樹脂組成物中のフィラー含有量(容量%)は、熱可塑性樹脂の密度と熱伝導性フィラーの密度より計算した。
実施例1と同様にして、下記表1の配合率にてポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を作成し、ラボプラストミル装置の混練部の磨耗性の評価、および、熱伝導率の測定を行った。
また、上記実施例1と実施例3との対比(中粒子のスピネル粒子系)及び実施例4と実施例5との対比(大粒子のスピネル粒子系)から、粒子径の大きさを問わず、[111]面の結晶子径220nm以上のスピネル粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物から得られた樹脂成形体同士であっても、それがより大きいスピネル粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物から得られた樹脂成形体(実施例1及び3)の方が、実施例4及び5の樹脂成形体より、更に熱伝導性に優れていることがわかる。
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂(A)とスピネル粒子(B)を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記スピネル粒子(B)が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であるスピネル粒子であり、かつ前記熱可塑性樹脂(A)が、エンジニアリングプラスチックである熱可塑性樹脂組成物。
- 前記スピネル粒子が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、かつ[311]面の結晶子径が、100nm以上である、スピネル粒子である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記スピネル粒子が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、[311]面の結晶子径が、100nm以上であり、かつ[311]面の結晶ピーク強度に対する前記[111]面の結晶ピーク強度の比([111]面/[311]面)が、0.3以上である、スピネル粒子である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記スピネル粒子が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、[311]面の結晶子径が、100nm以上であり、[311]面の結晶ピーク強度に対する前記[111]面の結晶ピーク強度の比([111]面/[311]面)が、0.3以上であり、かつ平均粒径が、0.1〜1000μmである、スピネル粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項4の熱可塑性樹脂組成物を含有してなる樹脂成形体。
- 請求項4の熱可塑性樹脂組成物を含有することを特徴とする放熱材料。
- 請求項5の樹脂成形体を含有することを特徴とする放熱部材。
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2017
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