JP2015199625A - コア−シェル型構造体、その製造方法および熱伝導性樹脂組成物 - Google Patents

コア−シェル型構造体、その製造方法および熱伝導性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】モリブデン酸金属塩の特異な性質を持った金属酸化物を提供すること、当該コア−シェル型構造体の簡便且つ効率的で、環境負荷も小さな製造方法、および耐水性や熱伝導性等に優れた樹脂組成物を提供する。【解決手段】金属酸化物(A)を主成分とするコアと、モリブデン酸金属塩(B)を主成分とするシェルとを有することを特徴とするコア−シェル型構造体、及び加熱して金属酸化物(A)とモリブデン化合物との反応を行い、金属酸化物(A)の表面からモリブデン酸金属塩(B)を形成させることで、コア−シェル構造とすることを特徴とする、上記したコア−シェル型構造体の製造方法を提供する。【選択図】図2

Description

本発明は、金属酸化物を主成分とするコア層と、モリブデン酸金属塩を主成分とするシェル層とを有する、コア−シェル型構造体とその簡便な製造方法およびそのコア−シェル型構造体を含む熱伝導性樹脂組成物に関する。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)の様なものがよく知られている。例えば、酸化マグネシウムは、耐熱性、熱伝導性、電気絶縁性などに優れた金属酸化物であり、その工業的な用途としてはフィラー(充填剤)、触媒、光学材料、電子材料、インクジェット用紙のコーティング剤及びゴムの加硫促進剤等が挙げられる。酸化マグネシウムは、フィラーとして、モース硬度が低く、電気抵抗値が高く、優れた熱伝導性を有するという特徴を持つ。しかしながら、酸化マグネシウムは耐水性・耐酸性に劣るものであるという欠点を有するため、水や水蒸気等の影響を受けるような使用条件においては、水酸化マグネシウムに変質してしまい、水や水蒸気に対する耐久性が必要な用途には使用が困難であるという問題がある。
金属酸化物自体の物性を改善するために、金属酸化物の表面を改質方法が試みられており、表面にシェル層の形成される事は、物性改善や新規機能性発見などの重要な方法のひとつである。
代表的な金属酸化物である酸化マグネシウムにおいては、その耐水性を改善するために、例えば、特許文献1と特許文献2には酸化マグネシウム微粒子の表面にシリカで被覆、特許文献3と特許文献4では、酸化マグネシウム微粒子の表面をリン酸マグネシウム系化合物による被覆層を形成し、被覆酸化マグネシウム粉末に対してさらにエチルシリケートを被覆、特許文献5では、ケイ素とマグネシウムとの複酸化物により、酸化マグネシウム粉末の表面を被覆、特許文献6と特許文献7では、アルミニウムとマグネシウムとの複酸化物により、酸化マグネシウム粉末の表面を被覆して耐水和性(耐湿性)を改善している。また、特許文献8では、PbO系ガラスを被覆して耐水性を改善していることも開示されている。しかし、これら従来の方法では酸化マグネシウム微粒子表面の完全な被覆が難しくて、ある程度の耐水性を付与することはできるが充分ではないという問題点がある。また、製造プロセスが煩雑であり、生産性やコスト面の問題も解決されていなかった。さらに、これらの酸化マグネシウムに施された被覆層は熱伝導性の低い組成であるため、被覆した酸化マグネシウムの熱伝導性は下がる場合が多く、熱伝導性を維持した状態での耐水性の改善はできていない。
また、金属酸化物は触媒の担体としても利用されている。例えば、多孔質な酸化マグネシウムを用いて、酸性触媒である三酸化モリブデン(MoO)を担持させるとき、酸化マグネシウムと三酸化モリブデンとの固体粉末の混合物を高温焼成する方法が開示されている(非特許文献1と2)。
この触媒担持方法では、酸化マグネシウムと三酸化モリブデンとの反応でモリブデン酸マグネシウム(MgMoO)の形成が副生成物として確認されている。副生成物であるモリブデン酸マグネシウムは、酸化マグネシウム中の空洞を高温において維持する機能を有しているに過ぎない。つまり、この研究は多孔質な酸化マグネシウムの細孔の表面に触媒である三酸化モリブデンを担持する事を目的にしており、本発明の様に、粒子表面から内部に繋がる細孔を有さない、三酸化モリブデン微粒子の外表面にモリブデン酸マグネシウムを形成させた構造体ではないため、例えば、熱伝導性を期待できる構造体ではない。
昭61−283648号公報 特開2012−116715号公報 特開2008−74683号公報 特開2006−151778号公報 特開2003−34523号公報 特開2003−34522号公報 特開2004−27177号公報 特開平7−188579号公報
J.M.M.Llorente and V.Rives,SolidState Ionics,1990,38,119−122 J.M.M.Llorente and V.Rives,Solid State Ionics,1992,50,59−65
上記の実情を鑑み、本発明が解決しようとする課題は、モリブデン酸金属塩の特異な性質を持った金属酸化物を提供すること、より具体的には、加熱により金属酸化物を主成分とするコアと、当該コアの金属酸化物の表面層とモリブデン化合物とを反応させることで得られる、モリブデン酸金属塩を主成分とするシェルとを有するコア−シェル型構造体を提供すること、当該構造体の簡便且つ効率的な製造方法、および当該構造体と有機高分子化合物とからなる熱伝導性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、金属酸化物(A)のコアと、モリブデン酸金属塩(B)のシェルとを有するコア−シェル型構造体とすることで、より少量のモリブデン酸金属塩(B)で金属酸化物(A)を改質できること、モリブデン化合物の存在下で、金属酸化物(A)を加熱することで、モリブデン化合物とコアとなる金属酸化物(A)の表面層との間を選択的に反応させ、モリブデン酸金属塩(B)のシェルを形成することにより、簡便且つ高効率で金属酸化物(A)とモリブデン酸金属塩(B)とのコア−シェル型構造体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、金属酸化物(A)を主成分とするコアと、モリブデン酸金属塩(B)を主成分とするシェルとを有することを特徴とするコア−シェル型構造体を提供するものである。また本発明は、加熱して金属酸化物(A)とモリブデン化合物との反応を行い、金属酸化物(A)の表面からモリブデン酸金属塩(B)を形成させることで、コア−シェル構造とすることを特徴とする、上記したコア−シェル型構造体の製造方法を提供するものである。
本発明のコア−シェル型構造体は、任意形状の金属酸化物(A)を主成分とするコアと、その金属酸化物の形状を基本的に維持したまま、モリブデン酸金属塩(B)を主成分とするシェルとを有するので、金属酸化物(A)単体では奏し得ないモリブデン酸金属塩(B)に固有の性質、すなわち化学的または物理的な機能を、より少量のモリブデン酸金属塩(B)を使用するだけで発現させることが出来るという格別顕著な効果を奏する。この様な本発明の効果は、両者を単純混合した混合物では奏し得ないものである。
また本発明のコア−シェル型構造体は、コアでなくむしろシェルの性質を専ら発現させることが出来、例えば、シェルとなるモリブデン酸金属塩は、例えば、コアとなる金属酸化物よりも濡れ難いことから、コア単体よりも、耐水性を向上させることが出来る。また、コアである酸化マグネシウムの表面に形成されるモリブデン酸マグネシウムのシェルは緻密な結晶体となるため、コア単体よりも、熱伝導性を向上させることも出来る。さらに、モリブデン酸金属塩が触媒機能や発光性などを有することで、本来その様な機能を有しないコアである金属酸化物にこれらの機能を更に付与することが出来る。従って、本発明のコア−シェル型構造体は、機能性フィラー、光学材料、電子材料、触媒、など多くの領域での応用展開が可能である。
本発明のコア−シェル型構造体の製造方法は、金属酸化物とモリブデン化合物とを加熱して、金属酸化物の表面からモリブデン化合物に由来するモリブデン酸金属塩を形成させるだけの簡便な工程であり、溶剤・廃液排出、高価な設備、複雑のプロセス及び後処理などがなく、環境負荷を伴わないばかりでなく、生産性にも優れるという格別顕著な効果を奏する。
さらに、本発明のコア−シェル型構造体と有機高分子化合物とからなる熱伝導性樹脂組成物は、用いるコア−シェル型構造体が特定の化学物質から形成されていることから、電子機器等の、より高い放熱性が要求される用途に適用できるという格別顕著な効果を奏する。
実施例1で用いた酸化マグネシウム(A,B)と、製造したモリブデン酸マグネシウムのシェル層を有するコア−シェル型構造体(C,D)の各走査型電子顕微鏡(SEM)写真画像である。 実施例1で用いた酸化マグネシウム、三酸化モリブデン及び合成したモリブデン酸マグネシウムのシェル層を有するコア−シェル型構造体のXRDチャートである。 実施例2で合成したコア−シェル型構造体の断面の電子線像である。 実施例2で合成したコア−シェル型構造体の断面のマグネシウムの元素マッピング像である。 実施例2で合成したコア−シェル型構造体の断面のモリブデンの元素マッピング像である。 実施例3で用いたアルミナ(A,B)と、製造したモリブデン酸アルミニウムのシェル層を有するコア−シェル型構造体(C,D)の各走査型電子顕微鏡(SEM)写真画像である。 実施例3で合成したコア−シェル型構造体の断面の電子線像である。 実施例3で合成したコア−シェル型構造体の断面のアルミニウムの元素マッピング像である。 実施例3で合成したコア−シェル型構造体の断面のモリブデンの元素マッピング像である。 実施例3で用いたアルミナ、三酸化モリブデン及び合成したモリブデン酸アルミニウムのシェル層を有するコア−シェル型構造体のXRDチャートである。上段が本発明のコア−シェル型構造体、下段が三酸化モリブデンの各XRDチャートである。
本発明は、加熱によりモリブデン化合物を、コアの金属酸化物構造体の表面層と選択的に反応させ、金属酸化物構造体の表面にモリブデン酸金属塩のシェルを形成させる、コア−シェル型構造体、その製造方法、および当該構造体と有機高分子化合物とからなる熱伝導性樹脂組成物に関する。
本発明のコア−シェル型構造体は、金属酸化物(A)を主成分とするコアと、モリブデン酸金属塩(B)を主成分とするシェルとを有することを特徴とするコア−シェル型構造体である。この様な構造体とすることで、より少量のモリブデン酸金属塩(B)で金属酸化物(A)を改質できる。
[金属酸化物(A)]
コアである金属酸化物(A)は、高温においてモリブデン化合物と反応して、モリブデン酸金属塩(B)を形成できるものである。理論上、後記するモリブデン化合物以外のどの様な金属酸化物でも用いることが出来る。この金属酸化物は、基本的に、塩基性金属酸化物、両性金属酸化物、酸性金属酸化物の3種類に分類される。
塩基性金属酸化物は、酸と反応して塩を生じる金属酸化物である。アルカリ金属,アルカリ土類金属および低原子価状態の遷移金属の酸化物が挙げられる。水に溶かすと OHを生じる金属酸化物である。両性金属酸化物は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる金属酸化物であり、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉛などである。酸性金属酸化物は塩基と反応して塩を生じる金属酸化物である。水に溶けて酸になる酸化物であり、酸化ケイ素、酸化マンガン、三酸化モリブデン、酸化リン、五酸化ヒ素、三酸化硫黄、酸化ホウ素などである。
本発明において、後記するモリブデン化合物として三酸化モリブデンを用いる場合は、それが酸性を示すことから、金属酸化物の表面にモリブデン酸金属塩のシェルをより容易に形成するために、金属酸化物(B)としては、三酸化モリブデンとは逆極性である塩基性、また両性の金属酸化物を選択して用いることが好ましい。
金属酸化物(A)としては、具体的には、酸化マグネシウム、酸化カリウム、酸化アルミニウム、酸化ナトリウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化ビスマス、酸化鉄から選択される少なくともひとつの金属酸化物あるいはそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化バリウムから選択される少なくともひとつの金属酸化物あるいはそれらの混合物であり、さらに好ましくは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウムである。
コアとなる金属酸化物(A)は、モリブデン酸化物以外の金属酸化物自体であっても良いが、後記する様にモリブデン化合物との反応が生起する前の温度において、上記の金属酸化物(A)を生成する金属や金属化合物及びこれらの混合物を用いることも出来る。この様なものとしては、例えば、水酸化物、塩化物、硫酸化物、硝酸化物、燐酸化物、複合体酸化物及びこれらの混合物などが挙げられる。
また、コアとなる金属酸化物(A)は、金属酸化物のみからなるものであっても、金属酸化物と有機化合物との複合体であってもよい。例えば、有機シランを用いて、金属酸化物を修飾して得られる有機/無機複合体、ポリマーを吸着した金属酸化物複合体などであっても好適に用いることができる。これらの複合体を用いる場合の、有機化合物の含有率としては、特に制限はないが、焼成してコア金属酸化物構造体の形状を維持できる観点から、当該含有率は80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
コアとなる金属酸化物(A)の形状は、特に限定はなく、目的用途に応じて適切な形状の金属酸化物(A)を選択することができる。例えば、球状、無定形、アスペクトのある構造体(ワイヤ、ファイバー、リボン、チューブなど)、シート、モノリスなど、いずれの形状であっても、好適に用いることができる。サイズについても、特に限定はなく、目的用途に応じてサブミクロンから巨視的なサイズまでの金属酸化物(A)を好適に選択することができる。
コアとなる金属酸化物(A)の比表面積については、モリブデン化合物と金属酸化物(B)との反応が金属酸化物の表面だけで発現する様に制御することができれば、特に限定されるものではない。この様な観点から、金属酸化物(A)としては、その内部に空洞を有さない中密構造のものか、又はその内部に独立した空洞を有する構造のものであることが好ましい。
金属酸化物(A)は、その表面から内部に向けて細孔が続いている様な構造のものでも良く、その細孔構造は均質であっても不均質であっても良いが、後記する製造方法で用いる場合、前記した様な細孔構造を有する金属酸化物は、モリブデン化合物がその細孔に侵入し、その細孔内でモリブデン酸金属塩(B)が形成されてしまう。そのため、後記するモリブデン化合物をかなり多量に用いないと、反応により生じるモリブデン酸金属塩(B)は当該細孔径を小さくしたり、細孔を埋めるだけに止まり、表面でのモリブデン酸金属塩(B)の生成が充分に生起せず、コア−シェル型構造体とはなり難いので好ましくない。このため、コア−シェル型構造体とするために、目的となるコア表面での反応を選択的に行わせるためには、比表面積の小さい金属酸化物(A)を選択して用いることが好ましい。
金属酸化物(A)の比表面積は、金属酸化物(A)とモリブデン化合物との反応性に相関する。例えば、モリブデン化合物との反応性の高い金属酸化物(A)に対しては、比表面積の小さい金属酸化物(A)を選択することが好ましく、例えば、モリブデン化合物として三酸化モリブデンを用い、かつ金属酸化物として酸化マグネシウムを用いる場合は、当該酸化マグネシウムの比表面積は40m/g以下であることが好ましく、25m/g以下であることがより好ましく、10m/g以下であることが最も好ましい。
[モリブデン酸金属塩(B)]
上記金属酸化物(A)が、本発明のコア−シェル型構造体のコアの主成分と形成するのに対し、モリブデン酸金属塩(B)が、当該金属酸化物(A)の表面にシェルの主成分として形成されたものである。
シェルのモリブデン酸金属塩(B)は、上記金属酸化物(A)が一価金属(M)の酸化物である場合には、化学式MMOで表され、金属酸化物(A)が二価金属(M2+)の酸化物である場合には、化学式MMOで表され、金属酸化物(A)が三価金属(M3+)の酸化物である場合には、化学式M(MOで表される。
この様なシェルを構成するモリブデン酸金属塩(B)としては、例えば、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ビスマス、モリブデン酸鉄を挙げることができる。中でも、水や有機溶剤といった液媒体に溶解しがたいなど、優れた耐液性等が求められる場合は、モリブデン酸金属塩(B)としては、二価以上の金属の塩であることが好ましい。
モリブデン酸金属塩(B)のシェルは緻密な構造であっても、空洞のある多孔質であっても良い。コアとして、その表面から内部に向けて細孔が続いている様な構造を有する金属酸化物(A)を用いた場合には、後記するモリブデン化合物との反応で形成したモリブデン酸金属塩(B)のシェルも、空洞構造が形成されやすい。よって、コアとして用いられる上記金属酸化物(A)としては、その内部に空洞を有さない中密構造のものか、又はその内部に独立した空洞を有する構造のものの様な、表面が緻密な構造を有するものである方が、後記するモリブデン化合物との反応で、緻密なモリブデン酸金属塩(B)のシェルが形成しやすいので好ましい。
本発明のコア−シェル型構造体は、金属酸化物(A)を主成分とするコアと、金属酸化物(A)とモリブデン化合物との加熱反応からなるモリブデン酸金属塩(B)を主成分とするシェルとを有するコア−シェル型構造体である。ここで、主成分とするとは、金属酸化物(A)のコア層にモリブデン酸金属塩(B)が少量で入っていても、モリブデン酸金属塩(B)のシェルに反応しきれない金属酸化物(A)が少量で存在してもよいことを意味する。
本発明のコア−シェル型構造体は、シェルの厚みが1〜5000nmの範囲であり、コア−シェルの両方の厚みを含めると、特に1〜1000nmの範囲のコア−シェル型構造体である。例えば、金属酸化物(A)として、その内部に空洞を有さない中密構造のものか、又はその内部に独立した空洞を有する構造のものを用いたり、モリブデン化合物をより多く使用することで、厚いシェルを有するコア−シェル型構造体を得ることができる。
本発明のコア−シェル型構造体は、任意形状の金属酸化物を用い、その金属酸化物の形状を基本的に維持したまま、コア−シェル型構造体が形成されているものである。コアである金属酸化物の種類、形状、サイズ、モリブデン化合物の用量や、後記する様な反応条件などを調節することで、得られた構造体のコア−シェル構造、表面ナノ構造、組成などを幅広い範囲内で制御することが出来る。中でも、粒子状である本発明のコア−シェル型構造体は、取扱いも容易であるので好ましい。
ある試料が、本発明の様なコア−シェル型構造体を形成しているか否かは、例えば、エネルギー分散型X線分光分析(EDS)により確認することが出来る。EDSは、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)と組み合わせて用いることが出来る。TEM−EDSやSEM−EDSといった分析装置では、TEMやSEMでは、その電子線像から試料中の粒子の大きさ、外観形状或いは断面形状を測定でき、一方、EDSでは、その試料に含まれている粒子内の元素の種類の同定や、粒子内の特定元素のマッピング(存在分布)を測定することが出来る。
また、原料である(コアに相当する)金属酸化物(A)と、モリブデン化合物と、モリブデン酸金属塩(B)について、事前に、X線回折(XRD)を測定しておくことにより、金属酸化物(A)に固有の特定回折角度2θでのピーク強度や、用いたモリブデン化合物に固有の特定回折角度2θでのピーク強度の各低下や、生成したモリブデン酸金属塩(B)に固有の新たな特定回折角度2θでのピーク出現などにより、試料が、本発明のコア−シェル型構造体であるのかを同定することが出来る。
本発明のコア−シェル型構造体は、シェルであるモリブデン酸金属塩(B)に由来する化学的、または物理的な機能を備える。コアである金属酸化物(A)及びシェルであるモリブデン酸金属塩(B)として、それぞれ、どの様な化合物を選択して組み合わせるかで、モリブデン酸金属塩(B)がシェルであることによる、より優れた性質は変わってくるが、この様な有利な性質としては、例えば、密度、融点、熱容量、蒸気圧、磁性、電気抵抗率、熱伝導率、熱膨帳率、ヤング率、剛性率、体積弾性率、硬度、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性、耐溶剤性、毒性、外観等が挙げられる。
具体的には、例えば、モリブデン酸マグネシウムやモリブデン酸カルシウムといったモリブデン酸金属塩(B)などが、酸化マグネシウムや酸化カルシウムといった金属酸化物(A)の表面を被覆した構造をとった場合、金属酸化物(A)と比べ、モリブデン酸金属塩(B)が高い耐水性を示すことから、金属酸化物(A)の耐水性を向上することが出来る。また、コアである、緻密な表面を有する金属酸化物(A)の表面に形成されるモリブデン酸金属塩(B)のシェルは同様に緻密な結晶体となり易いため、金属酸化物(A)の熱伝導性も向上できる。さらに、モリブデン酸金属塩(B)は、触媒機能や発光性などを有することで、コアである金属酸化物(A)の表面にこれらの機能を更に付与することが出来る。
また本発明のコア−シェル型構造体の表面(主にその表面は、シェルであるモリブデン酸金属塩を主成分とするものである)は、フラットな構造であっても、凹凸構造を有する構造であっても良い。金属酸化物(A)とモリブデン化合物との反応で、シェルである、一次粒子または結晶体の小さいモリブデン酸金属塩(B)の連続膜をコアの表面に形成することにより、例えば、フラットな表面を有するコア−シェル型構造体を形成することが出来る。一方、コアである金属酸化物(A)の表面にモリブデン酸金属塩(B)を大きな結晶体として形成させることで、例えば、凹凸構造の表面を有するコア−シェル型構造体を形成することも出来る。
本発明の好適なコア−シェル型構造体に対応した、同様の粒子径や粒子分布のモリブデン酸金属塩(B)を単体で得ようとしても、粒子制御が難しかったりして、容易には得られない。モリブデン酸金属塩(B)単体や、コア−シェル型構造体であっても、モリブデン酸金属塩(B)のシェルが著しく厚い場合には、コアとして用いる金属酸化物(A)より高価格となったりするので好ましくない。
本発明の好適なコア−シェル型構造体において、コアである金属酸化物(A)の粒子径と、シェルであるモリブデン酸金属塩(B)の層厚との比率は、モリブデン酸金属塩(B)の特異な性質が発現されれば特に制限されるものではないが、例えば、EDSによる粒子断面の元素マッピングに基づいて、金属酸化物(A)の断面半径とモリブデン酸金属塩(B)の層厚の合計に対して、後者のモリブデン酸金属塩(B)の層厚が、1/20〜1/4、中でも1/15〜1/8の範囲となっていることが好ましい。
[コア−シェル型構造体の製造方法]
本発明の製造方法は、加熱して金属酸化物(A)とモリブデン化合物との反応を行い、金属酸化物(A)の表面からモリブデン酸金属塩(B)を形成させることで、コア−シェル構造の構造体とすることを特徴とする。
上記した製造方法では、例えば、モリブデン化合物の存在下で、コアとなる金属酸化物(A)を加熱することで、モリブデン化合物と金属酸化物(A)とを、金属酸化物(A)の表面で反応させ、コアである金属酸化物(A)の表面にモリブデン酸金属塩(B)のシェルを形成させる。
本発明では、高温で後記するモリブデン化合物と金属酸化物(A)の表面との選択的な反応を利用して、コア−シェル型構造を形成するため、モリブデン酸金属塩(B)のシェルがコアである金属酸化物(A)の表面を均一かつ効率よく被覆することが出来る。これはシェルの化学組成に由来する新規物性の発現や、コアである金属酸化物の物性改善に重要なファクターとなる。
[モリブデン化合物]
モリブデン化合物としては、前記した金属酸化物(A)以外のモリブデン化合物が挙げられ、モリブデン酸化物も、モリブデン金属が酸素と結合してなる酸根アニオン(MO n−;以下、Mは金属を表す)を含有する化合物も、いずれも用いることが出来る。
前記モリブデン酸化物としては、例えば、三酸化モリブデンが、前記モリブデン金属が酸素と結合してなる酸根アニオン(MO n−)を含有する化合物としては、例えば、モリブデン酸、HPMo1240、HSiMo1240、NHMo12などの加熱により三酸化モリブデンに転化することができる化合物を好適に用いることができる。
モリブデン化合物として、三酸化モリブデンを用いた場合における金属酸化物(A)との反応では、当該金属酸化物(A)の金属の価数に応じて、次の様な反応式に基づいてモリブデン酸金属塩(B)が生成する。
Figure 2015199625
上記反応を行うに当たっての、モリブデン化合物の使用量は、特に限定はなく、反応により生成する、目的とするモリブデン酸金属塩(B)に基づくシェルの厚みに応じて適宜使用することが出来る。金属酸化物(A)として、その内部に空洞を有さない中密構造のものか、又はその内部に独立した空洞を有する構造のものを用いると、同じシェル膜厚のモリブデン酸金属塩(B)を得るに当たっても、細孔構造を有するものを用いるより、より少量のモリブデン化合物を用いれば良く、原料の使用量を削減できるので好ましい。
上記の反応におけるモリブデン化合物と、金属酸化物(A)との状態は特に限定されず、モリブデン化合物が金属酸化物(A)の表面に作用できる同一の空間に存在すれば良い。具体的には、両者が混ざっていない状態であっても、粉体を混ぜ合わせる簡便な混合、粉砕機等を用いた機械的な混合、乳鉢等を用いた混合であっても良く、乾式状態、湿式状態での混合であっても良い。また、モリブデン化合物として、三酸化モリブデン又は加熱や分解によりそれを生ずる三酸化モリブデン以外のモリブデン化合物を、別の空間で加熱して蒸気化(ガス化)し、その蒸気が発生した空間から、当該蒸気を配管などを通して、気体状態で移動させ、金属酸化物(A)が存在する空間に導入しても良い。
反応温度については、上記モリブデン化合物と金属酸化物(A)とが反応し、モリブデン酸金属塩(B)を形成できる温度以上、且つ、形成したモリブデン酸金属塩(B)の分解温度以下であれば、特に限定されるものではない。上記反応温度は、用いる金属酸化物(A)の種類によっても相違し、例えば、酸化マグネシウムを用いた場合は、500℃〜1400℃の範囲内にすることが好ましく、600℃〜1300℃の範囲内にすることがより好ましく、800℃〜1200℃の範囲内にすることが最も好ましい。同様に、酸化カルシウムを用いた場合は、750℃〜1800℃の範囲内にすることが好ましく、800℃〜1600℃の範囲内にすることがより好ましく、800℃〜1400℃の範囲内にすることが最も好ましい。同様に、酸化アルミニウムを用いた場合は、600℃〜1000℃の範囲内にすることが好ましく、700℃〜950℃の範囲内にすることがより好ましく、800℃〜900℃の範囲内にすることが最も好ましい。
反応時間については、特に限定はなく、金属酸化物(A)の種類や反応温度によって変化するが、例えば、10分〜24時間の範囲内となる様に選択することができる。
また、三酸化モリブデンをモリブデン化合物として用いる本発明の製造方法は、反応に当たっての原料仕込み時は、乾燥固体のモリブデン化合物と金属酸化物の各粉末同士を混合するだけで良く、上記したモリブデン酸金属塩(B)が生ずる温度に到達する前に、三酸化モリブデンだけが昇華して、蒸気となって金属酸化物(A)の表面に作用するという簡便な製造工程であり、溶剤・廃液排出、高価な設備、複雑のプロセス及び後処理など不要な生産性に優れた製造方法であるばかりでなく、環境負荷をも伴わない製造方法であるため、好ましい。
本発明のコア−シェル型構造体の製造方法では、シェルであるモリブデン酸金属塩(B)が、コアである金属酸化物(B)の表面と、蒸気化したモリブデン化合物とが選択的に高温で反応することで生成するため、極めて優れた均一性を有したコア−シェル型構造体を製造することが可能である。しかも、本発明のコア−シェル型構造体の製造方法では、原料の金属酸化物(A)に物理的な応力が発生しないことから、基本的にコアである金属酸化物(A)の形状を維持したまま、その表面にシェルであるモリブデン酸金属塩(B)を形成させることが出来る。
本発明の好適なコア−シェル型構造体は、金属酸化物(A)と三酸化モリブデンとの高温反応で形成されたシェルのモリブデン酸金属塩(B)により、金属酸化物(A)の物性改善や新規機能の発現を行なうことができる。
物性改善としては、金属酸化物(A)の耐水性向上などが挙げられる。例えば、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムを用い、かつ三酸化モリブデンを用いて、コア層の表面だけで三酸化モリブデンとの高温反応を行い、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム表面に水に溶けにくいモリブデン酸マグネシウムまたはモリブデン酸カルシウムのシェル層を形成することで、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムの耐水性を向上することができる。
特に、酸化マグネシウムを放熱フィラーとしての用途については、結晶性の高い緻密なモリブデン酸マグネシウムで被覆することで、耐水性の改善と熱伝導性の向上とを両立することが可能となる。
本発明で得られるコア−シェル型構造体は、粒子状の粉体としての使用が可能であり、その他の樹脂等の化合物へ混合して、フィラーとして用いることもできる。乾燥後の粉体を溶媒に再分散させてなる分散体、又は分散液として、その他の化合物へ配合することも可能である。また、本発明で得られるコア−シェル型構造体が基材の表面に薄膜としての使用も可能である。
さらに、本発明のコア−シェル型構造体と、有機高分子化合物(C)とからなる熱伝導性樹脂組成物は、電子機器等の高度な性質が要求される用途に適用できる有用な材料である。上記した様な、本発明のコア−シェル型構造体と、有機高分子化合物(C)とを混合することで、例えば、放熱性に優れた本発明の熱伝導性樹脂組成物を調製することが出来る。特に、コアの金属酸化物(A)として、酸化マグネシウムを用いて得たコア−シェル型構造体は熱伝導性フィラーとして、酸化マグネシウムの表面に結晶性の高い緻密なモリブデン酸マグネシウムのシェルを有することで、耐水性の改善と熱伝導性の向上とを両立することができる。
[有機高分子化合物(C)]
本発明で使用される有機高分子化合物(C)とは、熱可塑性樹脂あるいは硬化性樹脂である。
<硬化性樹脂>
本発明で使用する硬化性樹脂は、例えば、成形材料等に使用される公知慣用の樹脂である。具体的には、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールA エポキシ樹脂、ビスフェノールF エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪鎖変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ポリアルキレングルコール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア( 尿素) 樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記した硬化性樹脂は、硬化剤とともに用いられる場合が多く、その際に用いられる硬化剤は、熱硬化性樹脂と公知慣用の組み合わせで用いる事ができる。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化剤として常用されている化合物は何れも使用することができ、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
本発明の樹脂組成物における、硬化性樹脂と前記の硬化剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合は、得られる硬化物特性が良好である点から、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤中の活性基が0.7〜1.5当量になる量の使用が好ましい。
また必要に応じて、本発明の樹脂組成物における、硬化性樹脂に硬化促進剤を適宜併用することもできる。例えば、硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
<熱可塑性樹脂>
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、成形材料等に使用される公知慣用の樹脂である。具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。少なくとも1種の熱可塑性樹脂が選択されて使用されるが、目的に応じて、2種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせての使用も可能である。
上記した有機高分子化合物(C)としては、寸法安定性や耐熱性に優れる点で、エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせや、ポリフェニレンスルフィド樹脂がより好ましい。中でも、有機高分子化合物(C)としては、エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせが、絶対値として最も優れた熱伝導性が得られるので最適である。
本発明の樹脂組成物は、有機高分子化合物(C)が硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂のいずれであっても、必要に応じてその他の配合物を含有してもよく、発明の効果を損ねない範囲で、外部滑剤、内部滑剤、酸化防止剤、難燃剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ガラス繊維、カーボン繊維等の補強材、熱伝導性フィラー以外のフィラー、各種の着色剤等を添加してもよい。また、シリコーンオイル、液状ゴム、ゴム粉末、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体などのブタジエン系共重合体ゴムやシリコーン系化合物などの低応力化剤(応力緩和剤)の使用も可能である。
本発明の樹脂組成物は、コア−シェル型構造体と有機高分子化合物(C)、さらに必要に応じてその他の配合物を混合することにより得られる。その混合方法に特に限定はなく、公知慣用の方法により、混合される。
有機高分子化合物(B)が硬化性樹脂である場合の一般的な手法としては、所定の配合量の熱硬化性樹脂と、本発明で用いる、コア−シェル型構造体と必要に応じてその他の成分をミキサー等によって充分に混合した後、三本ロール等で混練し、流動性ある液状の組成物として、あるいは、所定の配合量の熱硬化性樹脂と、本発明で用いるコア−シェル型構造体と、必要に応じてその他の成分をミキサー等によって充分に混合した後、ミキシングロール、押出機等で、溶融混練した後、冷却する事で、固形の組成物として得られる。その混合状態は、硬化剤や触媒等を配合した場合は、硬化性樹脂とそれらの配合物が充分に均一に混合されていれば良いが、本発明で用いるコア−シェル型構造体とも均一に分散混合された方がより好ましい。
有機高分子化合物(C)が熱可塑性樹脂である場合の一般的な手法としては、熱可塑性樹脂、本発明で用いるコア−シェル型構造体と、必要に応じてその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー、混合ロールなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
本発明の樹脂組成物を調製するに当たっての、本発明で用いるコア−シェル型構造体と、有機高分子化合物(C)の不揮発分との混合割合は特に制限されるものではないが、有機高分子化合物(C)の不揮発分の質量換算100部当たり、66.7〜900部の範囲から選択することが好ましい。また、本発明で用いるコア−シェル型構造体との、本発明の樹脂組成物中の含有量は特に限定されず、それぞれの用途で求められる熱伝導率の程度に応じて混合されるが、好ましくは、樹脂組成物の100容量部中、本発明で用いるコア−シェル型構造体との含有量は30〜90容量部である。
本発明で用いるコア−シェル型構造体の含有量が30容量部未満であると、その樹脂硬化物あるいは樹脂成形物について、熱伝導性が不充分となるので好ましくない。一方、本発明で用いるコア−シェル型構造体の含有量が90容量部を超えると、例えば、金属等の基材間を接着するために樹脂組成物を使用した場合、硬化物と基材の接着力が不足して、電子部品の反りが大きくなったり、冷熱サイクル下等においてクラック又は電子部品の剥離が生じたり、接着界面で剥離が生じたりすることがあるので好ましくない。また、本発明で用いるコア−シェル型構造体の含有量が90容量部を超えると、樹脂組成物の粘度が高くなって塗布性や作業性等が低下したりすることがあるので好ましくない。本発明で用いるコア−シェル型構造体の熱伝導性フィラーとしての機能を効果的に発現させ、高い熱伝導性を得るためには、本発明で用いるコア−シェル型構造体が高充填されている方が好ましく、40〜90容量部の使用が好ましい。硬化性樹脂組成物の場合、その流動性を考慮すると、より好ましくは、60〜85容量部使用である。
本発明で用いるコア−シェル型構造体としては、樹脂組成物の調製時に、2種類以上の粒子径の異なるものを併用したり、これらを予め混合した混合物を用いることもできる。これにより、大粒子径のコア−シェル型構造体の空隙に、より小粒子径のコア−シェル型構造体がパッキングされることによって、単一粒子径の本発明で用いるコア−シェル型構造体を使用するよりも密に充填されるために、より高い熱伝導率を発揮することが可能である。熱伝導率の温度依存性が小さくなるなどの効果も得られる。
本発明で用いるコア−シェル型構造体としては、表面処理を行ったものを使用する事ができる。その際、カップリング剤、例えば、シラン系、チタネート系およびアルミネート系カップリング剤などで、表面改質されたものを使用する事ができる。
樹脂組成物の流動性やその樹脂成形物あるいは樹脂硬化物の熱伝導率をより高められることから、前記のカップリング剤で表面処理された、本発明で用いるコア−シェル型構造体を用いた方が良い場合が多く、例えば、表面処理により、樹脂成形物あるいは樹脂硬化物における有機高分子化合物(C)とコア−シェル型構造体ととの密着性が更に高められ、有機高分子化合物(C)とコア−シェル型構造体との間での界面熱抵抗が低下し、熱伝導性が向上する。
カップリング剤の中でも、シラン系カップリング剤の使用が好ましく、例えば、シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β(3,4エポキシシンクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシリメトキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
表面処理は、公知慣用のフィラーの表面改質方法により行なう事ができ、例えば、流体ノズルを用いた噴霧方式、せん断力のある攪拌、ボールミル、ミキサー等の乾式法、水系または有機溶剤系等の湿式法を採用することができる。せん断力を利用した表面処理は、コア−シェル型構造体の破壊が起こらない程度にして行うことが望ましい。
乾式法における系内温度ないしは湿式法における処理後の乾燥温度は、表面処理剤の種類に応じ、表面処理剤が熱分解しない領域で適宜決定される。例えば、上記した様なアミノ基を有するシランカップリング剤で処理する場合は、80〜150℃の温度が望ましい。
本発明で用いるコア−シェル型構造体としては、上記した様に、2種類以上の粒子径の異なるもの準備し、それぞれを、上記した様に、予めカップリング剤にて表面処理した上で、これらを併用して、本発明の樹脂組成物を調製し、硬化あるいは成形することが、得られる硬化物や成形物が、最も熱伝導性に優れたものとなる上、その温度依存性も小さく出来る点から、最も好ましい。
熱伝導性を向上するために、本発明で用いるコア−シェル型構造体に加えて、その他の熱伝導性フィラーを使用する事ができる。その様な熱伝導性フィラーとして、公知慣用の金属系ファイラー、無機化合物フィラー、炭素系フィラー等が使用できる。具体的には、例えば、銀、銅、アルミニウム、鉄等の金属系フィラー、アルミナ、マグネシア、ベリリア、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン等の無機系フィラー、ダイヤモンド、黒鉛、グラファイト、炭素繊維等の炭素系フィラーなどが挙げられる。結晶形、粒子サイズ等が異なる1種あるいは複数種の熱伝導性フィラーを組み合わせて使用する事も可能である。電子機器等の用途で放熱性が必要とされる場合には、電気絶縁性が求められる事が多く、これらのフィラーの内、体積固有抵抗の高いアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンドから選択される熱伝導性フィラーの使用が好ましい。これらの熱伝導性フィラーとして、表面処理を行ったものを使用する事もできる。例えば、無機系フィラーなどは、シラン系およびまたはチタネート系カップリング剤などで表面改質されたものを使用する事ができる。
<樹脂硬化物>
本発明の有機高分子化合物(C)が硬化性樹脂である樹脂組成物から樹脂硬化物を得る方法としては、一般的なエポキシ樹脂組成物等の硬化性の樹脂組成物の硬化方法に準拠すればよいが、例えば、有機高分子化合物(C)がエポキシ樹脂である樹脂組成物などは、熱で硬化を行う事ができ、その際の加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すれば良く、室温〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
<樹脂成形物>
本発明の樹脂組成物は、各種の成形法で成形して成形物とすることができる。その成形法は、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を成形する公知慣用の方法が利用でき、例えば、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、活性エネルギー線成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。成形品の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形品の用途に応じて任意に設定すればよい。
本発明の樹脂組成物は、基材と基材を接着するいわゆるサーマルインターフェースマテリアル(TIM)として基材間の界面の熱伝導性を向上する材料として、あるいは、樹脂硬化物、樹脂成形物との形態で放熱部品として使用する事ができる。
例えば、パワーモジュールなどの電気・電子機器の放熱させたい部位と放熱部材(例えば、金属板やヒートシンク)を接着させ、良好な放熱を発現させるために使用される接着剤として用いる事ができる。その際の使用される樹脂組成物の形態には特に制限はないが、液状あるいはペースト状に設計した樹脂組成物の場合は、液状あるいはペースト状の樹脂組成物を接着面の界面に注入後、接着し、硬化させれば良い。固形状に設計されたものは、粉体状、チップ状あるいはシート状にしたものを、接着面の界面に置き、熱溶融させる事で接着し、硬化させれば良い。
また、本発明の樹脂組成物は、プリント配線基板等の樹脂基板に使用する事ができ、樹脂放熱基板材としても有用である。
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂製のヒートシンク等の放熱部品等に成形して使用する事ができ、LED等の放熱材として有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断わりがない限り、「%」は「質量%」を表わす。
[コア−シェル型構造体の製造方法]
混合された原料を反応させる際の加熱焼成は、株式会社アサヒ理化製作所製セラミック電気管状炉ARF−100K型にAMF−2P型温度コントローラ付きの焼成炉装置にて行った。
[走査型電子顕微鏡による、コア−シェル型構造体の形状分析]
試料を両面テープにてサンプル支持台に固定し、それを株式会社キーエンス製表面観察装置VE−9800にて観察した。
[SEM−EDSによる、コア−シェル型構造体の組成分析]
断面として作成された試料を白金蒸着し、それを日本電子製走査型電子顕微鏡(SEM、JSM7800F)とOxford製エネルギー分散型X線分析(EDS,X−MAX 80mm2)にて組成分析を行った。
[X線回折法による、コア−シェル型構造体の結晶状態分析]
作製した試料を測定試料用ホルダーにのせ、それを株式会社リガク製広角X線回折装置[Rint−Ultma]にセットし、Cu/Kα線、40kV/30mA、スキャンスピード1.0°/分、走査範囲5〜80°の条件で測定を行った。
実施例1
酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、RF−98、体積平均粒径40−70μm、比表面積0.09m/g)の4.75gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の0.25gとを均一に混合し、酸化マグネシウムと三酸化モリブデンとの原料混合物5gを得た(三酸化モリブデンが含有量は5%)。得られた原料混合物を坩堝に入れ、坩堝に蓋をしてから、セラミック電気炉にて1000℃で3時間焼成を行なった。降温後、坩堝を取り出し、内容物を回収、4.95gの粒子状の乾燥粉末を得た。
得られた粉末のSEM写真画像を撮影し、それを観察した(図1)。図1Aは、原料の酸化マグネシウムのSEM写真、図1Bは、その酸化マグネシウムの粒子表面の拡大写真である。図1Cは、モリブデン酸マグネシウムをシェルとして有する酸化マグネシウム構造体の粒子のSEM写真であり、図1Dは、その構造体の粒子表面のモリブデン酸マグネシウムの被覆状態を示す拡大写真である。得られた粉末は、SEM観察により、用いられる酸化マグネシウム(コア)粒子の形状を維持したまま、粒子の表面に大きさが50nmから500nmまでの範囲内にあるモリブデン酸マグネシウム結晶体からなる連続層(シェル)が形成されていることを確認した。
SEM−EDS測定を行ったところ、モリブデンが酸化マグネシウムの表面に選択的に存在することが分かった。
更に、XRD測定により、三酸化モリブデンに由来する散乱ピークが消失し、コアである酸化マグネシウムに由来する鋭い散乱ピークとモリブデン酸マグネシウムに由来する散乱ピークが表れることが確認された(図2)。
以上の結果により、三酸化モリブデンが酸化マグネシウム粒子の表面に選択的に反応し、コアである酸化マグネシウムの表面にモリブデン酸マグネシウムのシェルが形成されていることが示唆された。
実施例2
実施例1で用いたのと同一の、酸化マグネシウムの1.0gと、三酸化モリブデンの0.25gとを均一に混合し、酸化マグネシウムと三酸化モリブデンとの原料混合物1.25gを得た(三酸化モリブデンが含有量は20%)。得られた原料混合物を坩堝に入れ、坩堝に蓋をしてから、セラミック電気炉にて1000℃で1時間焼成を行なった。降温後、坩堝を取り出し、内容物を回収、1.24gの粒子状の乾燥粉末を得た。
得られた粉末断面のSEM写真画像を撮影し、それを観察した(図3〜図5)。図3が電子線像であり、図4及び図5が、それぞれ、マグネシウム及びモリブデンの元素マッピングである。これら元素マッピングでは、背景が黒色で画像の境界が見え難いため、反転画像として、図4〜5に示した。図4では黒色の濃い部分がマグネシウム、図5では黒色の濃い部分がモリブデンの存在を意味している。このSEM−EDS画像により、三酸化モリブデンの使用量をより多くした結果、実施例1に比べて、より厚いモリブデン酸マグネシウムのシェルを有するコア−シェル型構造体となっていることが確認できた(図4〜図5)。金属酸化物(A)の断面半径とモリブデン酸金属塩(B)の層厚の合計に対する、後者のモリブデン酸金属塩(B)の層厚は、1/15〜1/8の範囲内であった。
これら画像から、実施例2のコア−シェル型構造体は、実施例1のコア−シェル型構造体と同様に、酸化マグネシウム(コア)粒子の形状を維持したまま、モリブデン酸マグネシウム結晶体からなる連続層(シェル)が形成されており、モリブデンが酸化マグネシウムの表面に選択的に存在し、三酸化モリブデンの不存在と、コアである酸化マグネシウムと、シェルであるモリブデン酸マグネシウムとの存在が確認された。この実施例2のコア−シェル型構造体は、実施例1のそれに比べて、より長期に亘って、優れた耐水性を発揮できる。
実施例3
遷移アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm、比表面積206m/g)の2gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の2gとを乳鉢で均一に混合し、得られた4.0gの原料混合物を坩堝に仕込んだ。坩堝に蓋をしてから、セラミック電気炉にて700℃で6時間焼成を行なった。降温後、坩堝を取り出し、内容物を回収、3.9gの粒子状の乾燥粉末を得た。
得られた粉末のSEM写真画像を撮影し、それを観察した(図6)。図6Aは、原料のアルミナのSEM写真、図6Bは、そのアルミナの粒子表面の拡大写真である。図6Cは、モリブデン酸アルミニウムをシェルとして有するアルミナ構造体の粒子のSEM写真であり、図6Dは、その構造体の粒子表面のモリブデン酸アルミニウムの被覆状態を示す拡大写真である。この画像から、用いられる酸化アルミニウム(コア)粒子の形状を基本的に維持したまま、粒子の表面に大きさが50nmから2000nmまでの範囲のモリブデン酸アルミニウム結晶体からなる連続層(シェル)が形成されていることが確認された。
得られた粉末断面のSEM写真画像を撮影し、それを観察した(図7〜図9)。図7が電子線像であり、図8及び図9が、実施例2と同様に画像反転させた、それぞれ、アルミニウム及びモリブデンの元素マッピングである。図8では黒色の濃い部分がアルミニウム、図9では黒色の濃い部分がモリブデンの存在を意味している。SEM−EDS測定により、モリブデン酸アルミニウムがアルミナの表面層(シェル)に選択的に存在することが分かった。金属酸化物(A)の断面半径とモリブデン酸金属塩(B)の層厚の合計に対する、後者のモリブデン酸金属塩(B)の層厚は、1/15〜1/8の範囲内であった。
更に、XRD測定により、三酸化モリブデンに由来する散乱ピークが消失し、コアである酸化アルミニウムに由来する散乱ピークとモリブデン酸アルミニウムに由来する散乱ピークが表れることが確認された(図10)。
以上の結果により、三酸化モリブデンが酸化アルミニウム粒子の表面に選択的に反応し、コアである酸化アルミニウムの表面にモリブデン酸アルミニウムのシェルが形成されていることが示唆された。この実施例3のコア−シェル型構造体は、アルミナ単体に無い、モリブデン酸アルミニウムに固有の優れた性質を発揮できる。
上記各実施例では、比表面積が小さい金属酸化物を原料で用いたことから、比表面積が大きい金属酸化物を用いた場合において使用するモリブデン化合物より、より少量で同一膜厚のシェルを形成させることが出来た。これは、三酸化モリブデンが金属酸化物の細孔に侵入せず、そのために、生じたモリブデン酸金属塩が、当該細孔径を小さくすることなく、また細孔を埋めることにも寄与せずに、専ら、コアである金属酸化物の表面に選択的にシェルとして形成されたと思われる。
実施例4
熱可塑性樹脂としてDIC−PPS LR100G(DIC株式会社製ポリフェニレンスルフィド樹脂、比重1.35)の33.9g、実施例1で製造した酸化マグネシウムからのコア−シェル型構造体の66.1gを均一にドライブレンドした後、樹脂溶融混練装置ラボプラストミルにより混練温度300℃、回転数80rpmの条件で溶融混練処理し、コア−シェル型構造体の充填率が40容量%のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を得た。ラボプラストミルによる混練中も特に問題なく、容易に樹脂組成物が得られた。
次に、得られた樹脂組成物を金型に入れ加工温度300℃で熱プレス成形を行うことで、1mm厚のプレス成形体を作製した。作製したプレス成形体から10mm×10mmのサンプルを切り出し、熱伝導率測定装置(LFA447nanoflash、NETZSCH社製)を用いて熱伝導率の測定を行なった結果、1.7W/m・Kであった。
比較例1
DIC−PPS LR100Gの34.2g、酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、RF−98、体積平均粒径40−70μm、比表面積0.09m/g)の65.8gを用いる以外は、上記実施例4と同様の操作を行い、1mm厚のプレス成形体を作製した。また実施例4と同様に、サンプルを得てその熱伝導率の測定を行なった結果、1.2W/m・Kであった。
[吸水率評価]
上記実施例4と比較例1で調製された、各熱伝導性樹脂組成物を用いて、実施例4と同様にして、1mm厚、70×110×1mmのサイズのプレス成形体からサンプル得て、それを温度が120℃、湿度が100%RHの高速加速寿命試験装置(EHS−411M,エスペック社製)に100時間静置(曝露)した。この曝露により、サンプルが吸水すれば、サンプル重量は、曝露前より重くなる。曝露前後の重量変化(吸水率)を、下記の式で求めた。吸水率は耐水性の尺度であり、吸水率が高いほど、耐水性は低いと評価した。
Figure 2015199625
[表面外観評価]
上記耐水性評価の曝露前後のサンプルの外観を目視で観察した。
曝露前後で、サンプルの表面外観に変化がないものを「○」、曝露後にサンプルの外観に荒れが観察されたものを「×」として評価した。
上記熱伝導性、吸水率及び表面外観を表1にまとめた。
表1
Figure 2015199625
本発明は、金属酸化物を主成分とするコアと、その金属酸化物の形状を基本的に維持したまま、モリブデン酸金属塩を主成分とするシェルとを有するコア−シェル型構造体であるので、モリブデン酸金属塩に固有の性質、すなわち化学的または物理的な機能を発現させることができ、機能性フィラー、光学材料、電子材料、触媒、など多くの領域での応用展開が可能である。この様なコア−シェル型構造体を含む本発明の樹脂組成物は、プリント配線基板等の樹脂基板に使用する事ができ樹脂放熱基板材や、樹脂製のヒートシンク等の放熱部品等に成形して使用する事ができ、LED等の放熱材として使用できる。

Claims (7)

  1. 金属酸化物(A)を主成分とするコアと、モリブデン酸金属塩(B)を主成分とするシェルとを有することを特徴とするコア−シェル型構造体。
  2. モリブデン酸金属塩(B)が、金属酸化物(A)とモリブデン化合物との反応から得られる請求項1記載のコア−シェル型構造体。
  3. 前記金属酸化物(A)が、塩基性酸化物又は両性酸化物である請求項1または2に記載のコア−シェル型構造体。
  4. 加熱して金属酸化物(A)とモリブデン化合物との反応を行い、金属酸化物(A)の表面からモリブデン酸金属塩(B)を形成させることで、コア−シェル構造とすることを特徴とする、請求項1記載のコア−シェル型構造体の製造方法。
  5. モリブデン酸金属塩(B)が、金属酸化物(A)とモリブデン化合物との反応から得られる請求項4記載のコア−シェル型構造体の製造方法。
  6. 前記金属酸化物(A)が、塩基性酸化物又は両性酸化物である請求項4または5に記載のコア−シェル型構造体の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項記載のコア−シェル型構造体と、有機高分子化合物(C)とからなる熱伝導性樹脂組成物。
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