JP6926423B2 - 硬化性樹脂組成物、熱伝導性接着剤、熱伝導性接着シート及び積層体 - Google Patents
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Description
高い放熱性を有する樹脂組成物とは、高熱伝導性の樹脂組成物であればよい。この様な樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂組成物と、熱硬化性樹脂組成物の様な樹脂組成物が知られている。硬化性樹脂組成物に熱伝導性を付与する方法としては、エポキシ樹脂と硬化剤に高熱伝導の無機フィラーを配合する方法が良く知られている。特許文献1においては、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む硬化性樹脂組成物に対し、高い熱伝導性を付与する為に、更に粒径の異なる複数のアルミナの様な熱伝導性フィラーを配合する発明が開示されている。しかし、熱伝導性と接着性を兼ね備えた硬化性樹脂組成物という課題は解決されていなかった。
本発明におけるエポキシ樹脂(A)とは、公知慣用のエポキシ樹脂でよく、具体的にはエポキシ基を有する化合物であればよく、特にグリシジル基を有する化合物が好ましい。特に、芳香族構造を有しグリシジル基を3個以上有するエポキシ化合物であると、剛直性と多官能の構造が、熱伝導性粒子同士の間に拘束力を与えるため、伝熱経路の形成に効果的に働くと考えられるため、好ましい。
更に好ましくは、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルのごとき多環芳香族の構造を有する3官能以上のエポキシ化合物が、熱伝導性粒子同士に高い拘束力を与え、具体的には、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、ビフェニルジオールの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ化合物が挙げられる。より具体的には、1,1−ビス(2,7−ジヒドロキシ−1−ナフチル)アルカンのテトラグリシジルエーテル化合物、[1,1‘−ビナフタレン]−2,2’、7,7’−テトラオールのテトラグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤(B)を含有する。本発明の硬化剤(B)は、エポキシ樹脂用として公知慣用に用いられるものであればよく、例えば、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤などが挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、フェノキシ樹脂を含有することができる。フェノキシ樹脂とは、ビスフェノール化合物とエピハロヒドリンとを強アルカリ存在下で反応させて得られる樹脂であり、例えば、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールA変性フェノキシ樹脂、ビスフェノールSとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールS変性フェノキシ樹脂などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物にフェノキシ樹脂を配合する場合、フェノキシ樹脂のエポキシ当量は、1,000g/当量以上100,000g/当量以下であると、エポキシ樹脂との相溶性が向上し、平滑なシートを得られるので好ましい。フェノキシ樹脂のエポキシ当量は、より好ましくは2,000〜50,000g/当量であり、さらに好ましくは3,000〜20,000g/当量である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、スピネル粒子(C)を含有する。
モリブデンは、後述する製造方法に起因して含有されうる。当該モリブデンは、スピネル粒子中にスピネル粒子表面に付着、被覆、結合、その他これに類する形態で配置される形態、モリブデンがスピネルに組み込まれる形態、これらの組み合わせにより含有されうる。なお、前記モリブデンには、モリブデン原子および後述するモリブデン化合物中のモリブデンを含む。
スピネル粒子の製造方法は、特に制限されるものではないが、1−A)マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を、モリブデン存在下で、固溶化および晶出により前記スピネル粒子に結晶成長させてスピネル粒子を得る焼成工程、または、1−B)モリブデン化合物およびマグネシウム化合物を焼成してモリブデン酸マグネシウムを得る焼成工程、そこで得られたモリブデン酸マグネシウムとアルミニウム化合物とを焼成してスピネル粒子を得る焼成工程と、2)前記焼成工程で結晶成長したスピネル粒子を冷却する冷却工程と、を含む製造方法である。以下、まず1−A)の焼成工程を経て2)の冷却工程を経るスピネル粒子の製造方法につき、詳述する。
焼成工程は、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を、モリブデン存在下で、固溶化および晶出により前記スピネル粒子に結晶成長させる工程である。
マグネシウム化合物としては、特に制限されないが、反応性が高く、得られるスピネル粒子の結晶子径が大きくなりうることから、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウムを用いることが好ましい。なお、上述のマグネシウム化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、アルミニウム金属、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、酸化アルミニウム等が挙げられる。上述のアルミニウム化合物は、酸化アルミニウムであることが好ましく、α結晶型を有する酸化アルミニウムであることがより好ましい。
フラックス法は、上述した固相法とは異なり、液相法、なかでも溶液法に分類される。フラックス法とは、より詳細には、結晶−フラックス2成分系状態図が共晶型を示すことを利用した結晶成長の方法である。
アルミニウム源としては、特に限定されないが、水酸化アルミニウム、遷移アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナ水和物であることが好ましく、水酸化アルミニウム、遷移アルミナ、ベーマイトを用いることがより好ましい。なお、上述のアルミニウム源は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
モリブデン化合物としては、特に制限されないが、三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウムであることが好ましく、三酸化モリブデンを用いることがより好ましい。なお、上述のモリブデン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フラックス法により得られるアルミニウム化合物は、モリブデンを含むため、通常、着色されている。
モリブデンは、モリブデン金属およびモリブデンを含む化合物中のモリブデンが用いられうる。モリブデンを含む化合物の具体例としては、上述したモリブデン化合物、モリブデンを含むアルミニウム化合物が挙げられる。
焼成は、モリブデン存在下で、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を混合させた状態で行われる。この際、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物の混合状態は、特に限定されない。この混合物は、乾式状態、湿式状態のいずれであってもよいが、コストの観点から乾式状態であることが好ましい。
冷却工程は、焼成工程において結晶成長したスピネル粒子を冷却する工程である。冷却速度についても特に制限されないが、1〜1000℃/時間であることが好ましい。冷却速度が1℃/時間以上であると、製造時間が短縮されうることから好ましい。一方、冷却速度が1000℃/時間以下であると、焼成容器がヒートショックで割れることが少なく、長く使用できることから好ましい。冷却方法は特に制限されず、自然放冷であっても、冷却装置を使用してもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物の調製に当たっては、本発明の効果を損なわない範囲において、スピネル粒子(C)以外にも、その他の熱伝導性フィラーを含有してもかまわない。無機フィラーとしては、公知慣用のものを使用すればよく、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、鉄、アルミニウム、ステンレス、グラファイト(黒鉛)等の導電性の粉体、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、硼酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド等の非導電性の粉体などが挙げられる。また、これらの無機充填剤は1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、使用用途に応じて溶剤を配合してもかまわない。溶剤としては有機溶剤が挙げられ、例えばメチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得る。
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲で、エポキシ樹脂(A)以外のその他の樹脂を配合してもかまわない。その他の樹脂としては、エポキシ樹脂以外の硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲であれば、反応性化合物、有機フィラー、無機フィラー、有機溶剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、カップリング剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等を配合してもかまわない。
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱伝導性と接着性に優れることから、本発明の硬化性樹脂組成物を含有する熱伝導性接着剤は、特に電子電気材料用として優れており、パワーモジュールなどの電気・電子機器の放熱させたい部位と放熱部材(例えば、金属板やヒートシンク)を接着させ、良好な放熱を発現させるために使用することができる。接着対象となる基材は特に限定は無く、無機素材であっても有機素材であっても、異なる素材が混在する基材であってもかまわない。無機素材としては、例えば銅・アルミ・鉄・金・銀・タングステン・スズ、炭素といった金属やその金属酸化物、ガラスなどが挙げられ、有機素材としては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂といった樹脂や、木材などが挙げられる。異なる素材が混在する基材としては、例えば、電子回路、半導体部品、繊維強化樹脂、樹脂上に金属が配線された基板等が挙げられる。
基材同士を接着させる際の熱伝導性接着剤の形態には特に制限はないが、液状あるいはペースト状に設計した熱伝導性接着剤の場合は、液状あるいはペースト状の熱伝導性接着剤を接着面の界面に注入後、接着し、硬化させれば良い。固形状に設計されたものは、粉体状、チップ状であってもよく、接着面の界面に置き、熱溶融させる事で接着し、硬化させれば良い。
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱伝導性接着剤をシート状に加工した、熱伝導性接着シートとしても好適に使用可能である。この場合、硬化性樹脂組成物をシート状に加工し、接着面の界面に置き、熱溶融させる事で接着し、硬化させることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物を熱伝導性接着シートとする場合、硬化剤(B)としてはアミノ系硬化剤を含有していると、成形性に優れるため好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物がフェノキシ樹脂を含有していると、成形性に優れるためさらに好ましい。
本発明の熱伝導性接着剤または熱伝導性接着シートを用いて基材同士を接着させた上で硬化させることで、本発明の樹脂組成物を含有する積層体を製造することができる。
本発明の積層体は、中間層である硬化性樹脂組成物の硬化層が高い熱伝導性を有することから、基材あるいは上層の一方から一方へ熱伝導させる用途で好適に用いることができ、特に半導体やパワーモジュールといった発熱性の電子電気部材と、金属板やヒートシンクといった放熱部材を積層した積層体である、放熱部品として好適に使用可能である。
2,2’,7,7’−テトラグリシジルオキシ−1,1’−ビナフタレンの合成
温度計、撹拌機、還流冷却器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、塩化鉄(III)六水和物278g(1.0モル)、水2660mLを仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した後、ナフタレン−2,7−ジオール164g(1.0モル)をイソプロピルアルコール380mLにあらかじめ溶解した溶液を加え、40℃で30分撹拌した。塩化鉄(III)六水和物278g(1.0モル)及び水1328mL、イソプロピルアルコール188mLの混合溶液を加え、40℃まで昇温してから、さらに1時間撹拌した。反応液に酢酸エチル1000mLを加え、撹拌した。反応液を分液漏斗で有機層を分離した後、さらに、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した。真空下で溶媒を400mL程度になるまで留去した後、溶液を温度計、攪拌機、ディーンスタークトラップを備えたSUS容器に移し、トルエン10Lを加えた後、酢酸エチル及び水からトルエンに置換した。トルエン溶液を室温まで冷却した後、不溶物をろ別した。ろ液を沸点以上の温度に加熱し、トルエンを1000mL程度になるまで留去することで濃縮し、[1,1’−ビナフタレン]−2,2’,7,7’−テトラオールの結晶を析出させた。析出物と溶媒を80℃以上の温度での熱時ろ過でろ取した後、110℃で5時間乾燥させ、フェノール化合物1として、[1,1’−ビナフタレン]−2,2’,7,7’−テトラオールを収量106g(収率68%)で得た。
次に、温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、上記フェノール化合物1を79.5g(0.25モル)、エピクロルヒドリン462g(5.0モル)、n−ブタノール126gを仕込み溶解させた。40℃に昇温した後に、48%水酸化ナトリウム水溶液100g(1.20モル)を8時間要して添加し、その後更に50℃に昇温し更に1時間反応させた。反応終了後、水150gを加えて静置した後、下層を棄却した。その後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン230gを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液100gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水洗を繰り返した。次いで系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ樹脂(EP−1)として2,2’,7,7’−テトラグリシジルオキシ−1,1’−ビナフタレン135gを得た。得られたエポキシ樹脂(EP−1)の軟化点は61℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は1.1dPa・s、エポキシ当量は144g/当量であった。
温度計、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコにビスフェノールAを114g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製EPICLON−850S)191.6g(エポキシ当量:188)、シクロヘキサノン130.9g(不揮発分:70%)を仕込み、系内を窒素置換し、窒素をゆっくりフローし、攪拌しながら80℃まで昇温し、2E4MZ(四国工業化成(株)製)120mg(理論樹脂固型分に対して400ppm)を加え、さらに150℃まで昇温した。その後、150℃で20時間攪拌し、不揮発分(N.V.)が30.3%(MEK:シクロヘキサノン=1:1)となるようにMEK、シクロヘキサノンを加えて調整した。得られたフェノキシ樹脂溶液の粘度は5200mPa・s、不揮発分のエポキシ当量は12600g/当量であった。
合成例1で得られたエポキシ樹脂(EP−1)6.0質量部、EX−201(レゾルシノールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製、エポキシ当量117g/eq.)1.3質量部、および、合成例2で得られたフェノキシ樹脂溶液8.9質量部を混合することによって、固形分量62質量%の樹脂組成物(X−2)を調製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製EPICLON−850S)(エポキシ当量:188)を用いた。
アルミナるつぼに水酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)1.53g(アルミニウム元素:9.8mmol)、酸化マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.40g(マグネシウム元素:9.8mmol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)2.22g(モリブデン元素:15.5mmol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、粉末サンプルを得た。
得られたサンプルを、10%アンモニア水、次いで水で洗浄して、サンプル中に含まれる残存モリブデン酸マグネシウムを除去することで、熱伝導性フィラー(Y−1)を製造した。
得られた熱伝導性フィラー(Y−1)の平均粒径は6μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.15質量%であり、[111]面の結晶子径は270nmであり、[311]面の結晶子径は260nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.369であった。
製造した熱伝導性フィラーについて、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により平均粒径を測定した。具体的には、表面観察装置であるVE−9800(株式会社キーエンス製)を用いて、平均粒径を測定した。
製造した熱伝導性フィラーについて、蛍光X線測定(XRF)によりモリブデン含有量を測定した。具体的には、蛍光X線分析装置であるZSX100e(株式会社リガク製)を用いて測定を行った。この際、測定方法はFP(ファンクションポイント)法を用いた。また、測定条件として、EZスキャンを用い、測定範囲はB〜Uであり、測定径は10mmであり、試料重量は50mgである。なお、粉末のまま測定を行い、この際、飛散防止のためポリプロピレン(PP)フィルムを使用した。
製造したスピネル粒子について、[111]面および[311]面の結晶子径を測定した。具体的には、X線回折装置であるSmartLab(株式会社リガク製)を用い、検出器として高強度・高分解能結晶アナライザ(CALSA)(株式会社リガク製)を用いて測定を行った。また、解析ソフトはPDXLを用いて解析を行った。この際、測定方法は粉末X線回折法であり、解析はPDXLのCALSA関数を用いて、[111]面の結晶子径については、2θ=19度付近に出現するピークの半値幅からシェラー式を用いて算出し、[311]面の結晶子径については、2θ=37度付近に出現するピークの半値幅からシェラー式を用いて算出した。なお、測定条件として、2θ/θ法、管電圧45kV、管電流200mAであり、スキャンスピードは0.05度/分であり、スキャン範囲は10〜70度であり、ステップは0.002度であり、βs=20rpmである。装置標準幅は米国立標準技術研究所が作製している標準シリコン粉末(NIST、640d)を用いて算出した0.026度を使用した。
γ−アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm)50gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の50gと、を乳鉢で混合した。得られた混合物を坩堝に入れ、AMF−2P型温度コントローラ付きセラミック電気炉ARF−100K型の焼成炉(セラミック電気炉、株式会社アサヒ理化製作所製)にて1100℃で10時間焼成を行った。室温まで放冷した後、坩堝を取り出し、内容物を10%アンモニア水およびイオン交換水で洗浄した。最後に、150℃で2時間乾燥を行い、青色のモリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−1)の粉末を得た。得られた粉末の平均粒径は5μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で2.5質量%であった。
次いで、モリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−1)1.00gと、酸化マグネシウム(和光純薬工業社製)0.40g(マグネシウム元素:0.01mol)とを乳鉢で乾式混合した。得られた混合物をアルミナルツボに仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。12時間後、自然放冷により常温まで冷却し、熱伝導性フィラー(Y−2)を製造した。得られた熱伝導性フィラー(Y−2)の平均粒径は5μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.30質量%であり、[111]面の結晶子径は251nmであり、[311]面の結晶子径は281nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.363であった。
γ−アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm)50gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の50gと、を乳鉢で混合した。得られた混合物を坩堝に入れ、AMF−2P型温度コントローラ付きセラミック電気炉ARF−100K型の焼成炉(セラミック電気炉、株式会社アサヒ理化製作所製)にて1100℃で10時間焼成を行った。室温まで放冷した後、坩堝を取り出し、内容物を10%アンモニア水およびイオン交換水で洗浄した。最後に、150℃で2時間乾燥を行い、青色のモリブデンを含むα−酸化アルミニウムである熱伝導性フィラー(Y−3)の粉末を得た。得られた粉末の平均粒径は5μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で2.5質量%であった。
酸化アルミニウム粉末(商品名DAW−07(デンカ(株)、平均粒径7μm)を用いた。
アルミナるつぼに酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)1.00g(アルミニウム元素:19.6mmol)、酸化マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.40g(マグネシウム元素:9.8mmol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)2.22g(モリブデン元素:15.5mmol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、粉末サンプルを得た。得られたサンプルを、10%アンモニア水、次いで水で洗浄して、サンプル中に含まれる残存モリブデン酸マグネシウムを除去することで、熱伝導性フィラー(Y−5)を製造した。得られた熱伝導性フィラー(Y−5)の平均粒径は45μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.15質量%でありであり、[111]面の結晶子径は280nmであり、[311]面の結晶子径は270nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.362であった。
γ−アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm)50gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の280gと、を乳鉢で混合した。得られた混合物を坩堝に入れ、AMF−2P型温度コントローラ付きセラミック電気炉ARF−100K型の焼成炉(セラミック電気炉、株式会社アサヒ理化製作所製)にて1100℃で10時間焼成を行った。室温まで放冷した後、坩堝を取り出し、内容物を10%アンモニア水およびイオン交換水で洗浄した。最後に、150℃で2時間乾燥を行い、青色のモリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−2)の粉末を得た。得られた粉末の平均粒径は40μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で1.8質量%であった。
次いで、モリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−2)1.00gと、酸化マグネシウム(和光純薬工業社製)0.40g(マグネシウム元素:0.01mol)と、を乳鉢で乾式混合した。得られた混合物をアルミナルツボに仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。12時間後、自然放冷により常温まで冷却し、熱伝導性フィラー(Y−6)を製造した。得られた熱伝導性フィラー(Y−6)の平均粒径は45μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.30質量%であり、[111]面の結晶子径は270nmであり、[311]面の結晶子径は260nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.369であった。
酸化アルミニウム粉末(商品名DAW−45(デンカ(株)、平均粒径45μm)を用いた。
酸化アルミニウム粉末(商品名AA−04(住友化学(株)、平均粒径0.4μm)を用いた。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製EPICLON−850S)(エポキシ当量:188)(X−1)を10.00質量部、熱伝導性充填剤(Y−1)を26.86質量部を配合した後、自転−公転型混練装置で混練し、AH−154(ジシアンジアミド、味の素ファインテクノ(株)製)0.95質量部を配合し、自転−公転型混練装置で混練することにより熱伝導性樹脂組成物を得た。得られた熱伝導性樹脂組成物を用いて、加熱プレス成形により樹脂硬化物(20mm×20mm×0.5mm厚)を作成した(硬化条件170℃×20分)。その樹脂硬化物を乾燥器内で170℃×2時間、200℃×2時間で更に硬化させた。樹脂組成物中のフィラーの含有量(容量%)は、熱伝導性充填剤の密度、および、熱伝導性充填剤以外の成分の密度を1.2g/cm3として質量より計算した。
得られた樹脂硬化物から10×10mmに切り出した試験片について、熱伝導率測定装置(LFA467 HyperFlash、NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱伝導率の測定を行った。熱伝導率が2.0W/m・K以上の場合を◎、1.8W/m・Kを超えて、2.0W/m・K未満であった場合を○、1.8W/m・K未満であった場合を×とした。
実施例1と同様にして、下記表1の配合率にて熱伝導性接着剤組成物を作成し、熱伝導率の測定を行った。
また、上記実施例1と実施例2との対比から、[111]面の結晶子径220nm以上のスピネル粒子を含有する樹脂組成物から得られた成形物同士であっても、それがより大きいスピネル粒子を含有する樹脂組成物から得られた成形物(実施例1)の方が、実施例2の成形物より、更に熱伝導性に優れていることがわかる。
調製例1で得られた樹脂混合物(X−2)を16.2質量部、熱伝導性充填剤(Y−5)を93.1質量部、熱伝導性充填剤(Y−1)を31.0質量部、および、熱伝導性充填剤(Y−8)を34.1質量部を配合した後、自転−公転型混練装置で混練し、2P4MHZ−PW(イミダゾール系硬化剤、四国化成(株)製)0.25質量部、AH−154(ジシアンジアミド、味の素ファインテクノ(株)製)0.35質量部、KBM−4803(グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、信越化学(株)製)0.79質量部、および、メチルエチルケトン(MEK)50.0質量部を配合し、自転−公転型混練装置で混練したものを、常温下、0.1MPaの減圧下で5分、減圧器を用いて脱泡することによって、熱伝導性接着剤組成物を得た。固形物中の熱伝導性充填剤の合計量(容量%)は、熱伝導性充填剤の密度、および、熱伝導性充填剤以外の成分の密度を1.2g/cm3として質量より計算した。
前記離型フィルムを除去して得た熱伝送製接着シートを200℃環境下に90分静置し熱硬化させた。得られた硬化物を10mm角に裁断したものを試験サンプルとし、熱伝導率測定装置(LFA467 HyperFlash、NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱伝導率の測定を行った。熱伝導率が14W/m・K以上の場合を◎、10W/m・Kを超えて、14W/m・K未満であった場合を○、10W/m・K未満であった場合を×とした。
前記離型フィルムを除去して得た熱伝送製接着シートを銅片同士の片側(25mm×100mm×1.6mm)の一端部(25mm×12.5mm)に載せ、もう一枚同型の金属片を貼り合わせたうえ、170℃×2時間、次いで200℃×1.5時間で硬化させ、積層体を作成した。
実施例1と同様にして、下記表2の配合率にて熱伝導性接着剤組成物および熱伝導性接着シートを作成し、熱伝導率および接着強度の測定を行った。
また、実施例3と実施例4との対比から、[111]面の結晶子径220nm以上のスピネル粒子を含有する樹脂組成物から得られた積層体同士であっても、それがより大きいスピネル粒子を含有する樹脂組成物から得られた積層体(実施例3)の方が、実施例4の積層体より、更に熱伝導性に優れていることがわかる。
尚、上記表2の各実施例では、エポキシ樹脂(A)として、芳香族構造を有しグリシジル基を3個以上有するエポキシ化合物を用いているので、上記表1の各実施例で用いたエポキシ樹脂からの積層体より、熱伝導性粒子同士の間に拘束力を与えるため、伝熱経路の形成に効果的に働き、熱伝導率がかなり高くなっていることがわかる。
Claims (8)
- エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、スピネル粒子(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記スピネル粒子(C)が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、且つ前記スピネル粒子が、モリブデンがスピネル粒子表面に配置される形態、及び/又はモリブデンがスピネルに組み込まれる形態で含有されているスピネル粒子である硬化性樹脂組成物。
- 前記スピネル粒子が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、かつ[311]面の結晶子径が、100nm以上である、スピネル粒子である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記スピネル粒子が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、[311]面の結晶子径が、100nm以上であり、かつ[311]面の結晶ピーク強度に対する前記[111]面の結晶ピーク強度の比([111]面/[311]面)が、0.3以上である、スピネル粒子である請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記スピネル粒子が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、[311]面の結晶子径が、100nm以上であり、[311]面の結晶ピーク強度に対する前記[111]面の結晶ピーク強度の比([111]面/[311]面)が、0.3以上であり、かつ平均粒径が、0.1〜1000μmである、スピネル粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記スピネル粒子におけるモリブデンの含有量が、酸化モリブデン換算で0.15質量%〜10質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含有してなる熱伝導性接着剤。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含有してなる熱伝導性接着シート。
- 請求項7の熱伝導性接着シートを硬化成形してなる熱伝導性積層体。
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