JP2018048260A - 硬化性樹脂組成物、熱伝導性接着剤、熱伝導性接着シート及び積層体 - Google Patents

硬化性樹脂組成物、熱伝導性接着剤、熱伝導性接着シート及び積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】
高い熱伝導性と接着性とを有する高機能な硬化性樹脂組成物、熱伝導性接着剤、熱伝導性接着シート、及び積層体を提供する。
【解決手段】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、スピネル粒子(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記スピネル粒子(C)が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であるスピネル粒子である硬化性樹脂組成物、それを含有してなる熱伝導性接着剤、熱伝導性接着シート、及び積層体。
【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、スピネル粒子を含有する硬化性樹脂組成物、及び該樹脂組成物を含有する熱伝導性接着剤、熱伝導性接着シート、及び積層体に関する。
電子部品の小型化・高集積化に伴い、基板や回路、そしてモジュールを結合させるための高品質な接着剤が求められている。特に、高集積化による熱影響を最小限に抑えるため、高い放熱性を有する接着剤や接着シートが、特に求められている。
高い放熱性を有する樹脂組成物とは、高熱伝導性の樹脂組成物であればよい。この様な樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂組成物と、熱硬化性樹脂組成物の様な樹脂組成物が知られている。硬化性樹脂組成物に熱伝導性を付与する方法としては、エポキシ樹脂と硬化剤に高熱伝導の無機フィラーを配合する方法が良く知られている。特許文献1においては、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む硬化性樹脂組成物に対し、高い熱伝導性を付与する為に、更に粒径の異なる複数のアルミナの様な熱伝導性フィラーを配合する発明が開示されている。しかし、熱伝導性と接着性を兼ね備えた硬化性樹脂組成物という課題は解決されていなかった。
特開平10−237311号公報
本発明の課題は、高い熱伝導性と接着性とを有する高機能な硬化性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の課題が、熱伝導性と接着性とを有する熱伝導性接着剤及び熱伝導性接着シートを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、スピネル粒子(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、スピネル粒子(C)として、特定の結晶面の結晶子径が大きいスピネル粒子であると、最も高い水準で上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、スピネル粒子(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記スピネル粒子(C)が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であるスピネル粒子である硬化性樹脂組成物を提供する。
また本発明は、上記硬化性樹脂組成物を含有する熱伝導性接着剤、熱伝導性接着シート、積層体を提供する。
本発明の硬化性樹脂組成物は高い熱伝導性と接着性を有する為、熱伝導性接着剤や熱伝導性シートに好適に利用可能である。よって、本発明の硬化性樹脂組成物は、回路や基板、モジュールを結合させる接着剤あるいは接着シートとして好適に用いることが可能であり、本発明の硬化性樹脂組成物を含有する積層体は、放熱性が高く、電子電気材料用途に好適に使用可能である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、スピネル粒子(C)を必須成分として含有するものである。
<エポキシ樹脂(A)>
本発明におけるエポキシ樹脂(A)とは、公知慣用のエポキシ樹脂でよく、具体的にはエポキシ基を有する化合物であればよく、特にグリシジル基を有する化合物が好ましい。特に、芳香族構造を有しグリシジル基を3個以上有するエポキシ化合物であると、剛直性と多官能の構造が、熱伝導性粒子同士の間に拘束力を与えるため、伝熱経路の形成に効果的に働くと考えられるため、好ましい。
エポキシ樹脂(A)としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSの構造を有する3官能以上のエポキシ化合物、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
芳香族構造を有しエポキシ基を3個以上住するエポキシ化合物としては、具体的には、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSの構造を有する3官能以上のエポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
更に好ましくは、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルのごとき多環芳香族の構造を有する3官能以上のエポキシ化合物が、熱伝導性粒子同士に高い拘束力を与え、具体的には、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、ビフェニルジオールの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ化合物が挙げられる。より具体的には、1,1−ビス(2,7−ジヒドロキシ−1−ナフチル)アルカンのテトラグリシジルエーテル化合物、[1,1‘−ビナフタレン]−2,2’、7,7’−テトラオールのテトラグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
<硬化剤(B)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤(B)を含有する。本発明の硬化剤(B)は、エポキシ樹脂用として公知慣用に用いられるものであればよく、例えば、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤などが挙げられる。
具体的には、アミン系硬化剤としてはジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体、グアナミン誘導体等が挙げられる。
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
硬化剤の中でも、アミン系又はアミド系の硬化剤は、熱伝導性接着剤又は熱伝導性接着シートでの接着性が向上するため好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物において、硬化促進剤を前記の硬化剤と併用することもできる。硬化促進剤としてエポキシ樹脂の硬化反応を促す種々の化合物が使用でき、例えば、リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。この中でも、イミダゾール化合物、リン系化合物、第3級アミン化合物の使用が好ましく、特に半導体用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
<フェノキシ樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、フェノキシ樹脂を含有することができる。フェノキシ樹脂とは、ビスフェノール化合物とエピハロヒドリンとを強アルカリ存在下で反応させて得られる樹脂であり、例えば、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールA変性フェノキシ樹脂、ビスフェノールSとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールS変性フェノキシ樹脂などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物にフェノキシ樹脂を配合する場合、フェノキシ樹脂のエポキシ当量は、1,000g/当量以上100,000g/当量以下であると、エポキシ樹脂との相溶性が向上し、平滑なシートを得られるので好ましい。フェノキシ樹脂のエポキシ当量は、より好ましくは2,000〜50,000g/当量であり、さらに好ましくは3,000〜20,000g/当量である。
<スピネル粒子(C)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、スピネル粒子(C)を含有する。
本発明の一形態によれば、スピネル粒子は、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含む。この際、前記スピネル粒子の[111]面の結晶子径は、220nm以上である。
本形態に係る「スピネル粒子」は、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子を含むことから、通常、MgAlの化学組成で表される。この際、スピネル粒子は、モリブデンを含む。モリブデンの含有形態は特に制限されないが、モリブデンがスピネル粒子表面に付着、被覆、結合、その他これに類する形態で配置される形態、モリブデンがスピネルに組み込まれる形態、これらの組み合わせが挙げられる。この際、「モリブデンがスピネルに組み込まれる形態」としては、スピネル粒子を構成する原子の少なくとも一部がモリブデンに置換する形態、スピネル粒子の結晶内部に存在しうる空間(結晶構造の欠陥により生じる空間等を含む)にモリブデンが配置される形態等が挙げられる。なお、前記置換する形態において、置換されるスピネル粒子を構成する原子としては、特に制限されず、マグネシウム原子、アルミニウム原子、酸素原子、他の原子のいずれであってもよい。
これらのうち、モリブデンは少なくともスピネルに組み込まれる形態で含有されることが好ましい。なお、モリブデンがスピネルに組み込まれている場合、例えば、洗浄による除去がされにくい傾向がある。
スピネル粒子の[111]面の結晶子径は、220nm以上である。ここで、[111]面はスピネル粒子の主要な結晶ドメインの1つであり、当該[111]面の結晶ドメインの大きさが[111]面の結晶子径に相当する。当該結晶子径が大きいほど粒子の緻密性および結晶性が高く、フォノンの散乱が起こる乱れ部分がないことを意味するため、熱伝導性が高いということができる。なかでもスピネル粒子の[111]面の結晶子径は、260nm以上であるのが最適である。なお、スピネル粒子の[111]面の結晶子径は、後述する製造方法の条件を適宜設定することで制御することができる。また、本明細書において「[111]面の結晶子径」の値は、実施例で記載された方法で測定された値を採用するものとする。
また、本発明の一実施形態において、スピネル粒子の[311]面の結晶子径は、100nm以上であることが好ましい。ここで、[311]面についてもスピネル粒子の主要な結晶ドメインの1つであり、当該[311]面の結晶ドメインの大きさが[311]面の結晶子径に相当する。当該結晶子径が大きいほど粒子の緻密性および結晶性が高く、フォノンの散乱が起こる乱れ部分がないことを意味するため、熱伝導性が高いということができる。なお、スピネル粒子の[311]面の結晶子径は、後述する製造方法の条件を適宜設定することで制御することができる。また、本明細書において「[311]面の結晶子径」の値は、実施例で記載された方法で測定された値を採用するものとする。
なかでも[111]面の結晶子径が220nm以上であり、かつ[311]面の結晶子径が100nm以上である、左記両方の条件を兼備するスピネル粒子は、より熱伝導性が高くなる。
スピネル粒子の[311]面の結晶ピーク強度に対する[111]面の結晶ピーク強度の比([111]/[311])は、0.30以上であることが好ましく、0.33以上であることがより好ましく、0.36以上であることがさらに好ましい。一般に、スピネル粒子を焼成により結晶成長させようとすると、スピネル結晶の各結晶面は選択性なく成長する傾向がある。しかし、[111]面についてはエネルギー的に結晶成長しにくいことから、[311]面の結晶ピーク強度に対する[111]面の結晶ピーク強度の比([111]面/[311]面)の値は小さくなりうる(通常、0.30未満)。しかしながら、本発明の一実施形態によれば、結晶成長の制御を行うことにより、スピネル粒子の[111]面/[311]面のピーク強度の比を大きくすることができる。本形態に係るスピネル粒子の[111]面の結晶子径は220nm以上であり、スピネル粒子の[111]面/[311]面のピーク強度の比が0.30以上であると、より高い熱伝導性が得られうる。また、[111]面は、自形面であり、当該自形面で囲まれた八面体の形成に寄与するため、スピネル粒子の[111]面/[311]面のピーク強度の比が0.30以上であると、スピネル粒子が樹脂への分散に好適な多面体の形状を形成しやすくなる。
上記した様に、[111]面の結晶子径が220nm以上であり、かつ[311]面の結晶子径が100nm以上のスピネル粒子は、更に[311]面の結晶ピーク強度に対する[111]面の結晶ピーク強度の比([111]/[311])が、0.30以上である、左記三条件を兼備するスピネル粒子は、最も熱伝導性が高く、その多面体形状に基づき、例えば樹脂への分散がより優れたものになりやすいので、硬化性樹脂組成物の調製には最適である。
なお、前記ピーク強度比([111]/[311])の値は、後述する製造方法を適宜調整することで制御することができる。また、本明細書において、「スピネル粒子の[311]面の結晶ピーク強度および[111]面の結晶ピーク強度」および「スピネル粒子の[311]面の結晶ピーク強度に対する[111]面の結晶ピーク強度の比([111]/[311])」の値は、実施例に記載の方法により測定された値を採用するものとする。
スピネル粒子の平均粒径は、特に制限されるものではないが、例えば、0.1〜1000μmであることが好ましく、0.2〜100μmであることがより好ましく、0.3〜80μmであることがさらに好ましく、0.3〜60μmであることが特に好ましい。スピネル粒子の平均粒径が0.1μm以上であると、樹脂と混合して得られる組成物の粘度が過度に大きくならないことから好ましい。一方、スピネル粒子の平均粒径が1000μm以下であると、樹脂と混合して得られた組成物を成形した場合、得られる成形物の表面が平滑になりうる、成形物の機械物性が優れている等の観点から好ましい。
上記した[111]面の結晶子径、[311]面の結晶子径及び[311]面の結晶ピーク強度に対する[111]面の結晶ピーク強度の比([111]/[311])は、スピネル粒子の結晶子に関する特性であるが、これらの特性だけでなく、上記した平均粒径をも兼備したスピネル粒子を用いることで、低粘度過ぎずしかも高粘度過ぎない、所望の形状としやすく、取扱いが容易な硬化性樹脂組成物を調製でき、しかも、そこから得られた硬化性樹脂組成物の硬化成形物も、表面平滑性や機械物性に優れたものにすることができる。
なお、本明細書において、「粒径」とは、粒子の輪郭線上の2点間の距離のうち、最大の長さを意味し、「平均粒径」の値は実施例に記載の方法により測定、算出された値を意味する。
スピネル粒子の形状は、特に制限されるものではないが、例えば、多面体状、球状、楕円状、円柱状、多角柱状、針状、棒状、板状、円板状、薄片状、鱗片状等が挙げられる。これらのうち、樹脂に分散しやすいことから多面体状、球状、楕円状、板状であることが好ましく、なかでも硬化性樹脂組成物への高い充填性が求められる用途への適用を考慮すると、多面体状、球状であることがより好ましい。なお、本明細書において、「多面体」とは、通常、6面体以上、好ましくは8面体以上、より好ましくは10〜30面体であることを意味する。
(モリブデン)
モリブデンは、後述する製造方法に起因して含有されうる。当該モリブデンは、スピネル粒子中にスピネル粒子表面に付着、被覆、結合、その他これに類する形態で配置される形態、モリブデンがスピネルに組み込まれる形態、これらの組み合わせにより含有されうる。なお、前記モリブデンには、モリブデン原子および後述するモリブデン化合物中のモリブデンを含む。
モリブデンの含有量は、特に制限されないが、スピネル粒子の高熱伝導性の観点から、スピネル粒子に対して、酸化モリブデン換算で10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、スピネル粒子が高い緻密性を示す観点から、1質量%以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、スピネル粒子中のモリブデンの含有量の値は実施例に記載の方法により測定された値を採用するものとする。
<スピネル粒子の製造方法>
スピネル粒子の製造方法は、特に制限されるものではないが、1−A)マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を、モリブデン存在下で、固溶化および晶出により前記スピネル粒子に結晶成長させてスピネル粒子を得る焼成工程、または、1−B)モリブデン化合物およびマグネシウム化合物を焼成してモリブデン酸マグネシウムを得る焼成工程、そこで得られたモリブデン酸マグネシウムとアルミニウム化合物とを焼成してスピネル粒子を得る焼成工程と、2)前記焼成工程で結晶成長したスピネル粒子を冷却する冷却工程と、を含む製造方法である。以下、まず1−A)の焼成工程を経て2)の冷却工程を経るスピネル粒子の製造方法につき、詳述する。
[焼成工程]
焼成工程は、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を、モリブデン存在下で、固溶化および晶出により前記スピネル粒子に結晶成長させる工程である。
前記固溶化および晶出は、通常、いわゆる固相法により行われる。具体的には、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物が界面において反応して核を形成し、マグネシウム原子および/またはアルミニウム原子が、前記核を介して固相拡散し、アルミニウム化合物および/またはマグネシウム化合物と反応する。これにより、緻密な結晶体、すなわちスピネル粒子を得ることができる。この際、前記固相拡散において、マグネシウム原子のアルミニウム化合物への拡散速度は、アルミニウム原子のマグネシウム化合物への拡散速度よりも相対的に高いため、アルミニウム化合物の形状が反映されたスピネル粒子が得られる傾向がある。このため、アルミニウム化合物の形状や平均粒径を適宜変更することで、スピネル粒子の形状および平均粒径を制御することが可能となりうる。
ここで、上述の固相反応は、モリブデン存在下で行われる。金属成分を複数有するスピネル粒子では、焼成過程において、欠陥構造等が生じやすいため、結晶構造を精密に制御することが困難であるが、モリブデンを用いることにより、スピネル結晶の結晶構造を制御することができる。これにより、[111]面の結晶子径は大きくなり、熱伝導性に優れるスピネル粒子が得られうる。また、一実施形態において、[311]面の結晶子径が大きくなる、[311]面の結晶ピーク強度に対する[111]面のピーク強度の比([111]/[311])が大きくなる等の効果も得られうる。なお、固相反応は、モリブデン存在下で行われるため、得られるスピネル粒子には、モリブデンが含まれうる。
本実施形態に係る製造方法によれば、高い熱伝導性を有しつつ、平均粒径が1000μm以下、特に100μm以下のスピネル粒子を容易に製造することができる。
なお、スピネル粒子の[111]面の結晶子径、[311]面の結晶子径、[311]面の結晶ピーク強度に対する[111]面のピーク強度の比([111]/[311])等の結晶制御は、モリブデンの使用量、マグネシウム化合物の種類、焼成温度、焼成時間、マグネシウム化合物とアルミニウム化合物との混合状態を変更することにより行うことができる。これらの条件の選定により、例えば、[111]面および[311]面の結晶子径を大きくすることができる。
(マグネシウム化合物)
マグネシウム化合物としては、特に制限されないが、反応性が高く、得られるスピネル粒子の結晶子径が大きくなりうることから、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウムを用いることが好ましい。なお、上述のマグネシウム化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
マグネシウム化合物のマグネシウム元素に対する後述するアルミニウム化合物のアルミニウム元素のモル比(アルミニウム元素/マグネシウム元素)は、2.2〜1.9の範囲であることが好ましい。前記モル比が2.2〜1.9の範囲であると、[111]面の結晶子径の大きい高熱伝導率のスピネル粒子が得られうることから好ましい。
(アルミニウム化合物)
アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、アルミニウム金属、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、酸化アルミニウム等が挙げられる。上述のアルミニウム化合物は、酸化アルミニウムであることが好ましく、α結晶型を有する酸化アルミニウムであることがより好ましい。
また、上述のアルミニウム化合物はモリブデンを含むことが好ましい。この際、前記モリブデンを含むアルミニウム化合物のモリブデン含有形態は、特に制限されないが、スピネル粒子と同様に、モリブデンがアルミニウム化合物表面に付着、被覆、結合、その他これに類する形態で配置される形態、モリブデンがアルミニウム化合物に組み込まれる形態、これらの組み合わせが挙げられる。この際、「モリブデンがアルミニウム化合物に組み込まれる形態」としては、アルミニウム化合物を構成する原子の少なくとも一部がモリブデンに置換する形態、アルミニウム化合物の結晶内部に存在しうる空間(結晶構造の欠陥により生じる空間等を含む)にモリブデンが配置される形態等が挙げられる。なお、前記置換する形態において、置換されるアルミニウム化合物を構成する原子としては、特に制限されず、アルミニウム原子、酸素原子、他の原子のいずれであってもよい。
上述のアルミニウム化合物のうち、モリブデンを含むアルミニウム化合物を用いることが好ましく、モリブデンが組み込まれたアルミニウム化合物を用いることがより好ましい。
アルミニウム化合物は、市販品を使用してもよいし、自ら調製したものを使用してもよい。アルミニウム化合物を自ら調製する場合、例えば、モリブデンを含むアルミニウム化合物は、以下に詳述するフラックス法により調製することができる。すなわち、好ましい一実施形態において、スピネル粒子の製造方法は、フラックス法によりアルミニウム化合物を調製する工程をさらに含む。
フラックス法によりアルミニウム化合物を調製する工程
フラックス法は、上述した固相法とは異なり、液相法、なかでも溶液法に分類される。フラックス法とは、より詳細には、結晶−フラックス2成分系状態図が共晶型を示すことを利用した結晶成長の方法である。
フラックス法は、融点よりもはるかに低い温度で結晶成長をさせることができる、結晶構造を精密に制御できる、自形をもつ多面体結晶体を形成できる等のメリットを有する。
アルミニウム化合物をフラックス法で調製する場合において、フラックス剤としてモリブデン化合物を使用すると、中間化合物であるモリブデン酸アルミニウムを経由して、モリブデンを含むアルミニウム化合物が得られうる。この際、アルミニウム化合物に含まれるモリブデンは、フラックス法のデメリットと言われるフラックス不純物に該当しうるが、上述のように、本発明の一実施形態においてはアルミニウム化合物に含有されるモリブデンは、スピネル粒子を製造する際に好適な作用効果を発揮しうる。
一実施形態において、フラックス法は、アルミニウム源およびモリブデン化合物を含む混合物を焼成するフラックス蒸発工程と、前記焼成工程で結晶成長したアルミニウム化合物を冷却する冷却工程と、を含む(フラックス蒸発法)。
アルミニウム源
アルミニウム源としては、特に限定されないが、水酸化アルミニウム、遷移アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナ水和物であることが好ましく、水酸化アルミニウム、遷移アルミナ、ベーマイトを用いることがより好ましい。なお、上述のアルミニウム源は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルミナ水和物または遷移アルミナは、高温において構造安定性が高いため、モリブデンの存在下で焼成すると、平均粒径の大きいモリブデンを含むアルミニウム化合物が得られる傾向がある。
モリブデン化合物
モリブデン化合物としては、特に制限されないが、三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウムであることが好ましく、三酸化モリブデンを用いることがより好ましい。なお、上述のモリブデン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルミニウム化合物のアルミニウム元素に対するモリブデン化合物のモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/アルミニウム元素)は、0.01〜3.0であることが好ましい。前記モル比が0.01以上であると、モリブデンを含むアルミニウム化合物の結晶成長が好適に進行しうることから好ましい。一方、前記モル比が3.0以下であると、モリブデンを含むアルミニウム化合物の調製が工業的に効率よくできることから好ましい。
モリブデンを含むアルミニウム化合物
フラックス法により得られるアルミニウム化合物は、モリブデンを含むため、通常、着色されている。
モリブデンを含むアルミニウム化合物のモリブデンの含有量は、特に制限されないが、三酸化モリブデン換算で、0.001〜10質量%以下であることが好ましい。モリブデンの含有量が0.001質量%以上であると、スピネルの結晶成長がより効率よく進行できることから好ましい。一方、モリブデンの含有量が10質量%以下であると、アルミニウム化合物の結晶品質が向上しうることから好ましい。なお、本明細書において、アルミニウム化合物中のモリブデンの含有量の値は実施例に記載の方法により測定された値を採用するものとする。
モリブデンを含むアルミニウム化合物は、モリブデン化合物がフラックス剤として働き、[001]面以外の結晶面を主結晶面とした高α結晶化率であることが好ましく、α結晶化率が90%以上であることがより好ましい。
モリブデンを含むアルミニウム化合物の最大平坦面積の割合は、全表面積に対して、8分の1以下であることが好ましく、16分の1以下であることがより好ましい。
モリブデンを含むアルミニウム化合物の平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜1000μmであることが好ましい。アルミニウム化合物の平均粒径が0.1μm以上であると、スピネル結晶化において粒子凝集を防止しうることから好ましい。一方、アルミニウム化合物の平均粒径が1000μm以下であると、スピネル結晶化が粒子の中心部まで効率よく進行しうることから好ましい。
(モリブデン)
モリブデンは、モリブデン金属およびモリブデンを含む化合物中のモリブデンが用いられうる。モリブデンを含む化合物の具体例としては、上述したモリブデン化合物、モリブデンを含むアルミニウム化合物が挙げられる。
モリブデンの使用量として、アルミニウム化合物のアルミニウム元素に対するモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/アルミニウム元素)は、0.00001〜0.05であることが好ましい。前記モル比が0.00001〜0.05の範囲であると、マグネシウム化合物とアルミニウム化合物との固溶化およびスピネル晶出が好適に進行しうることから好ましい。
(焼成)
焼成は、モリブデン存在下で、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を混合させた状態で行われる。この際、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物の混合状態は、特に限定されない。この混合物は、乾式状態、湿式状態のいずれであってもよいが、コストの観点から乾式状態であることが好ましい。
焼成温度は、特に制限されないが、800〜2000℃であることが好ましい。焼成温度が800℃以上であると、短時間で[111]面の結晶子径の大きいスピネル粒子を得ることができるため好ましい。一方、焼成温度が2000℃以下であると、形成したスピネル粒子同士のネッキングを防ぎ、スピネル粒子の形状および/または分散性制御が容易となることから好ましい。
焼成時間は、特に制限されないが、0.1〜1000時間であることが好ましい。焼成時間が0.1時間以上であると、[111]面の結晶子径の大きなスピネル粒子を得ることができるため好ましい。一方、焼成時間が1000時間以内であると、製造コストが低くなり得ることから好ましい。
なお、焼成においては、マグネシウム化合物とアルミニウム化合物との固溶化および晶出を促進するため添加剤を使用することも可能である。
焼成雰囲気は、空気雰囲気であっても、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であっても、酸素雰囲気であっても、アンモニアガス雰囲気であっても、二酸化炭素雰囲気であってもよい。この際、製造コストの観点からは空気雰囲気であることが好ましい。
焼成時の圧力についても特に制限されず、常圧下であっても、加圧下であっても、減圧下であってもよいが、焼成時に生成する酸化モリブデン蒸気を効率的に焼成炉から排出できる観点から減圧下で行うことが好ましい。
加熱手段としては、特に制限されない、焼成炉を用いることが好ましい。焼成炉は酸化モリブデン蒸気と反応しない材質で構成されていることが好ましく、密閉性の高い焼成炉を用いることがより好ましい。
[冷却工程]
冷却工程は、焼成工程において結晶成長したスピネル粒子を冷却する工程である。冷却速度についても特に制限されないが、1〜1000℃/時間であることが好ましい。冷却速度が1℃/時間以上であると、製造時間が短縮されうることから好ましい。一方、冷却速度が1000℃/時間以下であると、焼成容器がヒートショックで割れることが少なく、長く使用できることから好ましい。冷却方法は特に制限されず、自然放冷であっても、冷却装置を使用してもよい。
以上、1−A)の焼成工程を経て2)の冷却工程を経るスピネル粒子の製造方法につき、詳述してきたが、1−A)の焼成工程に代えて、1−B)モリブデン化合物およびマグネシウム化合物とアルミニウム化合物とを焼成してスピネル粒子を得る焼成工程を適用することができる。
1−B)の焼成工程を経てスピネル粒子を得る製造方法は、モリブデン化合物がフラックス剤としてより効果的に作用しスピネル粒子の結晶成長が精密に制御されることで結晶子サイズが大きいスピネル粒子を製造できるという別の長所を有している。1−B)の製造方法によれば、1−A)の製造方法に比べて、より熱伝導性に優れたスピネル粒子が得られる。
本発明における硬化性樹脂組成物の調製に当たり、そこに含有させるスピネル粒子(C)は、特定平均粒径のスピネル粒子(C)を単独で用いることもできるし、異なる特定平均粒径の異なる粒径分布をもった二種以上のスピネル粒子(C)を併用することもできる。例えば、硬化物により高い熱伝導性が要求される用途の硬化性樹脂組成物では、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)に含有させるスピネル粒子(C)をより多くすることが好ましいが、大粒子、中粒子及び小粒子といった、異なる特定平均粒径の異なる粒径分布をもった三種のスピネル粒子を併用することで、大粒子の隙間を中粒子や小粒子が埋めパッキング構造を容易に形成させることができる。こうして、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)に含有させるスピネル粒子(C)をより増加させることができ、熱伝導パスの増加でより優れた熱伝導性を達成することが可能となる。
異なる特定平均粒径の異なる粒径分布をもった三種のスピネル粒子(C)としては、具体的には、50%累積粒径が10〜100μmで、球状又は多面体形状のスピネル粒子(C1)と、50%累積粒径が1〜30μmかつスピネル粒子(C1)の50%累積粒径に対して1/10以上1/2以下であって、球状又は多面体形状のスピネル粒子(C2)と、50%累積粒径が5μm以下でありかつスピネル粒子(C2)の50%累積粒径に対して1/100以上1/2以下であって、球状又は多面体形状のスピネル粒子(C3)の3種類のスピネル粒子(C)を挙げることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物において、スピネル粒子(C)の量は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とスピネル粒子(C)とを含有する樹脂組成物固形分量中において88〜95質量%である。88質量%以上であれば、硬化した際に熱伝導性に優れた成形物となり、95質量%までであれば、十分な接着性が得られる。熱伝導性と接着性の兼備の点から、より好ましくは90〜95質量%であり、特に好ましくは91〜94質量%である。
<その他の無機フィラー>
本発明の硬化性樹脂組成物の調製に当たっては、本発明の効果を損なわない範囲において、スピネル粒子(C)以外にも、その他の熱伝導性フィラーを含有してもかまわない。無機フィラーとしては、公知慣用のものを使用すればよく、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、鉄、アルミニウム、ステンレス、グラファイト(黒鉛)等の導電性の粉体、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、硼酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド等の非導電性の粉体などが挙げられる。また、これらの無機充填剤は1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。
その他の無機フィラーの中でも、酸化アルミニウム粒子はスピネル粒子(C)と併用した際に、より優れた熱伝導性と絶縁性を両立できるので好ましい。上記スピネル粒子の場合と同様に、大粒子、中粒子及び小粒子のものを準備して、スピネル粒子と酸化アルミニウム粒子にて各大粒子同士を組み合わせて用いたり、大粒子のスピネル粒子に、中粒子や小粒子の各酸化アルミニウム粒子を組み合わせて用いたりすることもできる。
<溶剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、使用用途に応じて溶剤を配合してもかまわない。溶剤としては有機溶剤が挙げられ、例えばメチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得る。
<その他樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲で、エポキシ樹脂(A)以外のその他の樹脂を配合してもかまわない。その他の樹脂としては、エポキシ樹脂以外の硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられる。
硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
<その他の配合物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲であれば、反応性化合物、有機フィラー、無機フィラー、有機溶剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、カップリング剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等を配合してもかまわない。
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤とを含有しているので、例えば、加熱することにより硬化させることができる。この際の加熱温度及び加熱時間は、用いるエポキシ樹脂と硬化剤に必要に応じて併用される硬化促進剤により異なったものとなるが、具体的には、例えば、30〜250℃にて5分〜24時間である。
<熱伝導性接着剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱伝導性と接着性に優れることから、本発明の硬化性樹脂組成物を含有する熱伝導性接着剤は、特に電子電気材料用として優れており、パワーモジュールなどの電気・電子機器の放熱させたい部位と放熱部材(例えば、金属板やヒートシンク)を接着させ、良好な放熱を発現させるために使用することができる。接着対象となる基材は特に限定は無く、無機素材であっても有機素材であっても、異なる素材が混在する基材であってもかまわない。無機素材としては、例えば銅・アルミ・鉄・金・銀・タングステン・スズ、炭素といった金属やその金属酸化物、ガラスなどが挙げられ、有機素材としては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂といった樹脂や、木材などが挙げられる。異なる素材が混在する基材としては、例えば、電子回路、半導体部品、繊維強化樹脂、樹脂上に金属が配線された基板等が挙げられる。
基材同士を接着させる際の熱伝導性接着剤の形態には特に制限はないが、液状あるいはペースト状に設計した熱伝導性接着剤の場合は、液状あるいはペースト状の熱伝導性接着剤を接着面の界面に注入後、接着し、硬化させれば良い。固形状に設計されたものは、粉体状、チップ状であってもよく、接着面の界面に置き、熱溶融させる事で接着し、硬化させれば良い。
<熱伝導性接着シート>
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱伝導性接着剤をシート状に加工した、熱伝導性接着シートとしても好適に使用可能である。この場合、硬化性樹脂組成物をシート状に加工し、接着面の界面に置き、熱溶融させる事で接着し、硬化させることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物を熱伝導性接着シートとする場合、硬化剤(B)としてはアミノ系硬化剤を含有していると、成形性に優れるため好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物がフェノキシ樹脂を含有していると、成形性に優れるためさらに好ましい。
<積層体>
本発明の熱伝導性接着剤または熱伝導性接着シートを用いて基材同士を接着させた上で硬化させることで、本発明の樹脂組成物を含有する積層体を製造することができる。
本発明の積層体は、中間層である硬化性樹脂組成物の硬化層が高い熱伝導性を有することから、基材あるいは上層の一方から一方へ熱伝導させる用途で好適に用いることができ、特に半導体やパワーモジュールといった発熱性の電子電気部材と、金属板やヒートシンクといった放熱部材を積層した積層体である、放熱部品として好適に使用可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳述するが、本記述は本発明を限定するものではない。実施例中、特に言及のない場合は質量換算である。
〈合成例1〉エポキシ樹脂(EP−1)
2,2’,7,7’−テトラグリシジルオキシ−1,1’−ビナフタレンの合成
温度計、撹拌機、還流冷却器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、塩化鉄(III)六水和物278g(1.0モル)、水2660mLを仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した後、ナフタレン−2,7−ジオール164g(1.0モル)をイソプロピルアルコール380mLにあらかじめ溶解した溶液を加え、40℃で30分撹拌した。塩化鉄(III)六水和物278g(1.0モル)及び水1328mL、イソプロピルアルコール188mLの混合溶液を加え、40℃まで昇温してから、さらに1時間撹拌した。反応液に酢酸エチル1000mLを加え、撹拌した。反応液を分液漏斗で有機層を分離した後、さらに、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した。真空下で溶媒を400mL程度になるまで留去した後、溶液を温度計、攪拌機、ディーンスタークトラップを備えたSUS容器に移し、トルエン10Lを加えた後、酢酸エチル及び水からトルエンに置換した。トルエン溶液を室温まで冷却した後、不溶物をろ別した。ろ液を沸点以上の温度に加熱し、トルエンを1000mL程度になるまで留去することで濃縮し、[1,1’−ビナフタレン]−2,2’,7,7’−テトラオールの結晶を析出させた。析出物と溶媒を80℃以上の温度での熱時ろ過でろ取した後、110℃で5時間乾燥させ、フェノール化合物1として、[1,1’−ビナフタレン]−2,2’,7,7’−テトラオールを収量106g(収率68%)で得た。
次に、温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、上記フェノール化合物1を79.5g(0.25モル)、エピクロルヒドリン462g(5.0モル)、n−ブタノール126gを仕込み溶解させた。40℃に昇温した後に、48%水酸化ナトリウム水溶液100g(1.20モル)を8時間要して添加し、その後更に50℃に昇温し更に1時間反応させた。反応終了後、水150gを加えて静置した後、下層を棄却した。その後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン230gを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液100gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水洗を繰り返した。次いで系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ樹脂(EP−1)として2,2’,7,7’−テトラグリシジルオキシ−1,1’−ビナフタレン135gを得た。得られたエポキシ樹脂(EP−1)の軟化点は61℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は1.1dPa・s、エポキシ当量は144g/当量であった。
〈合成例2〉フェノキシ樹脂溶液
温度計、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコにビスフェノールAを114g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製EPICLON−850S)191.6g(エポキシ当量:188)、シクロヘキサノン130.9g(不揮発分:70%)を仕込み、系内を窒素置換し、窒素をゆっくりフローし、攪拌しながら80℃まで昇温し、2E4MZ(四国工業化成(株)製)120mg(理論樹脂固型分に対して400ppm)を加え、さらに150℃まで昇温した。その後、150℃で20時間攪拌し、不揮発分(N.V.)が30.3%(MEK:シクロヘキサノン=1:1)となるようにMEK、シクロヘキサノンを加えて調整した。得られたフェノキシ樹脂溶液の粘度は5200mPa・s、不揮発分のエポキシ当量は12600g/当量であった。
〈調製例1〉樹脂混合物(X−2)
合成例1で得られたエポキシ樹脂(EP−1)6.0質量部、EX−201(レゾルシノールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製、エポキシ当量117g/eq.)1.3質量部、および、合成例2で得られたフェノキシ樹脂溶液8.9質量部を混合することによって、固形分量62質量%の樹脂組成物(X−2)を調製した。
エポキシ樹脂(X−1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製EPICLON−850S)(エポキシ当量:188)を用いた。
〈合成例3〉熱伝導性フィラー(Y−1)
アルミナるつぼに水酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)1.53g(アルミニウム元素:9.8mmol)、酸化マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.40g(マグネシウム元素:9.8mmol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)2.22g(モリブデン元素:15.5mmol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、粉末サンプルを得た。
得られたサンプルを、10%アンモニア水、次いで水で洗浄して、サンプル中に含まれる残存モリブデン酸マグネシウムを除去することで、熱伝導性フィラー(Y−1)を製造した。
得られた熱伝導性フィラー(Y−1)の平均粒径は6μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.15質量%であり、[111]面の結晶子径は270nmであり、[311]面の結晶子径は260nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.369であった。
平均粒径、モリブデン含有量、結晶子径、および、結晶ピーク強度比は以下の方法で評価した(以下の合成例においても同様である。)。
<平均粒径>
製造した熱伝導性フィラーについて、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により平均粒径を測定した。具体的には、表面観察装置であるVE−9800(株式会社キーエンス製)を用いて、平均粒径を測定した。
<モリブデン含有量>
製造した熱伝導性フィラーについて、蛍光X線測定(XRF)によりモリブデン含有量を測定した。具体的には、蛍光X線分析装置であるZSX100e(株式会社リガク製)を用いて測定を行った。この際、測定方法はFP(ファンクションポイント)法を用いた。また、測定条件として、EZスキャンを用い、測定範囲はB〜Uであり、測定径は10mmであり、試料重量は50mgである。なお、粉末のまま測定を行い、この際、飛散防止のためポリプロピレン(PP)フィルムを使用した。
<結晶子径>
製造したスピネル粒子について、[111]面および[311]面の結晶子径を測定した。具体的には、X線回折装置であるSmartLab(株式会社リガク製)を用い、検出器として高強度・高分解能結晶アナライザ(CALSA)(株式会社リガク製)を用いて測定を行った。また、解析ソフトはPDXLを用いて解析を行った。この際、測定方法は粉末X線回折法であり、解析はPDXLのCALSA関数を用いて、[111]面の結晶子径については、2θ=19度付近に出現するピークの半値幅からシェラー式を用いて算出し、[311]面の結晶子径については、2θ=37度付近に出現するピークの半値幅からシェラー式を用いて算出した。なお、測定条件として、2θ/θ法、管電圧45kV、管電流200mAであり、スキャンスピードは0.05度/分であり、スキャン範囲は10〜70度であり、ステップは0.002度であり、βs=20rpmである。装置標準幅は米国立標準技術研究所が作製している標準シリコン粉末(NIST、640d)を用いて算出した0.026度を使用した。
〈合成例4〉熱伝導性フィラー(Y−2)
γ−アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm)50gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の50gと、を乳鉢で混合した。得られた混合物を坩堝に入れ、AMF−2P型温度コントローラ付きセラミック電気炉ARF−100K型の焼成炉(セラミック電気炉、株式会社アサヒ理化製作所製)にて1100℃で10時間焼成を行った。室温まで放冷した後、坩堝を取り出し、内容物を10%アンモニア水およびイオン交換水で洗浄した。最後に、150℃で2時間乾燥を行い、青色のモリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−1)の粉末を得た。得られた粉末の平均粒径は5μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で2.5質量%であった。
次いで、モリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−1)1.00gと、酸化マグネシウム(和光純薬工業社製)0.40g(マグネシウム元素:0.01mol)とを乳鉢で乾式混合した。得られた混合物をアルミナルツボに仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。12時間後、自然放冷により常温まで冷却し、熱伝導性フィラー(Y−2)を製造した。得られた熱伝導性フィラー(Y−2)の平均粒径は5μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.30質量%であり、[111]面の結晶子径は251nmであり、[311]面の結晶子径は281nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.363であった。
〈合成例5〉熱伝導性フィラー(Y−3)
γ−アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm)50gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の50gと、を乳鉢で混合した。得られた混合物を坩堝に入れ、AMF−2P型温度コントローラ付きセラミック電気炉ARF−100K型の焼成炉(セラミック電気炉、株式会社アサヒ理化製作所製)にて1100℃で10時間焼成を行った。室温まで放冷した後、坩堝を取り出し、内容物を10%アンモニア水およびイオン交換水で洗浄した。最後に、150℃で2時間乾燥を行い、青色のモリブデンを含むα−酸化アルミニウムである熱伝導性フィラー(Y−3)の粉末を得た。得られた粉末の平均粒径は5μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で2.5質量%であった。
熱伝導性フィラー(Y−4)
酸化アルミニウム粉末(商品名DAW−07(デンカ(株)、平均粒径7μm)を用いた。
〈合成例6〉熱伝導性フィラー(Y−5)
アルミナるつぼに酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)1.00g(アルミニウム元素:19.6mmol)、酸化マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.40g(マグネシウム元素:9.8mmol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)2.22g(モリブデン元素:15.5mmol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、粉末サンプルを得た。得られたサンプルを、10%アンモニア水、次いで水で洗浄して、サンプル中に含まれる残存モリブデン酸マグネシウムを除去することで、熱伝導性フィラー(Y−5)を製造した。得られた熱伝導性フィラー(Y−5)の平均粒径は45μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.15質量%でありであり、[111]面の結晶子径は280nmであり、[311]面の結晶子径は270nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.362であった。
〈合成例7〉熱伝導性フィラー(Y−6)
γ−アルミナ(STREM CHEMICALS社製、平均粒子径40〜70μm)50gと、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)の280gと、を乳鉢で混合した。得られた混合物を坩堝に入れ、AMF−2P型温度コントローラ付きセラミック電気炉ARF−100K型の焼成炉(セラミック電気炉、株式会社アサヒ理化製作所製)にて1100℃で10時間焼成を行った。室温まで放冷した後、坩堝を取り出し、内容物を10%アンモニア水およびイオン交換水で洗浄した。最後に、150℃で2時間乾燥を行い、青色のモリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−2)の粉末を得た。得られた粉末の平均粒径は40μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で1.8質量%であった。
次いで、モリブデンを含むα−酸化アルミニウム(A−2)1.00gと、酸化マグネシウム(和光純薬工業社製)0.40g(マグネシウム元素:0.01mol)と、を乳鉢で乾式混合した。得られた混合物をアルミナルツボに仕込み、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で1500℃まで昇温した。12時間後、自然放冷により常温まで冷却し、熱伝導性フィラー(Y−6)を製造した。得られた熱伝導性フィラー(Y−6)の平均粒径は45μmであり、モリブデン含有量は三酸化モリブデン換算で0.30質量%であり、[111]面の結晶子径は270nmであり、[311]面の結晶子径は260nmであり、結晶ピーク強度比([111]/[311])は0.369であった。
熱伝導性フィラー(Y−7)
酸化アルミニウム粉末(商品名DAW−45(デンカ(株)、平均粒径45μm)を用いた。
熱伝導性フィラー(Y−8)
酸化アルミニウム粉末(商品名AA−04(住友化学(株)、平均粒径0.4μm)を用いた。
尚、後記する表1及び表2における、樹脂Xまたは樹脂組成物Xと熱伝導性フィラーYの枝番号は、それぞれ、上記した樹脂Xまたは樹脂組成物Xと熱伝導性フィラーYの枝番号と対応させた。
〈実施例1〉
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製EPICLON−850S)(エポキシ当量:188)(X−1)を10.00質量部、熱伝導性充填剤(Y−1)を26.86質量部を配合した後、自転−公転型混練装置で混練し、AH−154(ジシアンジアミド、味の素ファインテクノ(株)製)0.95質量部を配合し、自転−公転型混練装置で混練することにより熱伝導性樹脂組成物を得た。得られた熱伝導性樹脂組成物を用いて、加熱プレス成形により樹脂硬化物(20mm×20mm×0.5mm厚)を作成した(硬化条件170℃×20分)。その樹脂硬化物を乾燥器内で170℃×2時間、200℃×2時間で更に硬化させた。樹脂組成物中のフィラーの含有量(容量%)は、熱伝導性充填剤の密度、および、熱伝導性充填剤以外の成分の密度を1.2g/cmとして質量より計算した。
(熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率の測定方法)
得られた樹脂硬化物から10×10mmに切り出した試験片について、熱伝導率測定装置(LFA467 HyperFlash、NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱伝導率の測定を行った。熱伝導率が2.0W/m・K以上の場合を◎、1.8W/m・Kを超えて、2.0W/m・K未満であった場合を○、1.8W/m・K未満であった場合を×とした。
〈実施例2及び比較例1、2〉
実施例1と同様にして、下記表1の配合率にて熱伝導性接着剤組成物を作成し、熱伝導率の測定を行った。
表1
Figure 2018048260
上記比較例1〜2と実施例2との対比から、熱伝導性フィラーの平均粒径をほぼ同等に揃えた場合、従来の酸化アルミニウムを含有する樹脂組成物から得られた成形物(比較例1〜2)に対して、本発明で用いる特定スピネル粒子を含有する樹脂組成物から得られた成形物(実施例1)は、熱伝導性に優れていること明白である。
また、上記実施例1と実施例2との対比から、[111]面の結晶子径220nm以上のスピネル粒子を含有する樹脂組成物から得られた成形物同士であっても、それがより大きいスピネル粒子を含有する樹脂組成物から得られた成形物(実施例1)の方が、実施例2の成形物より、更に熱伝導性に優れていることがわかる。
〈実施例3〉
調製例1で得られた樹脂混合物(X−2)を16.2質量部、熱伝導性充填剤(Y−5)を93.1質量部、熱伝導性充填剤(Y−1)を31.0質量部、および、熱伝導性充填剤(Y−8)を34.1質量部を配合した後、自転−公転型混練装置で混練し、2P4MHZ−PW(イミダゾール系硬化剤、四国化成(株)製)0.25質量部、AH−154(ジシアンジアミド、味の素ファインテクノ(株)製)0.35質量部、KBM−4803(グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、信越化学(株)製)0.79質量部、および、メチルエチルケトン(MEK)50.0質量部を配合し、自転−公転型混練装置で混練したものを、常温下、0.1MPaの減圧下で5分、減圧器を用いて脱泡することによって、熱伝導性接着剤組成物を得た。固形物中の熱伝導性充填剤の合計量(容量%)は、熱伝導性充填剤の密度、および、熱伝導性充填剤以外の成分の密度を1.2g/cmとして質量より計算した。
次に、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン化合物で剥離処理された離型フィルムの表面に、前記熱伝導性接着剤組成物を、棒状の金属アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが100μmになるように塗工した。
次に、前記塗工物を50℃の乾燥器に2分間投入した後、85℃の乾燥器に3分間投入し乾燥した後、その塗工面に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン化合物で剥離処理された離型フィルムを貼付した。
次に、前記貼付物の表面への圧力が0.2MPaとなるように、前記貼付物を、90℃に熱した熱ロールと、樹脂ロールとの間に、分速1.5mでとおすことによって、厚さ100μmの熱伝導性接着シートが前記2種の離型フィルムによって挟持された積層体を得た。
(熱伝導性接着シートの熱伝導率の測定方法)
前記離型フィルムを除去して得た熱伝送製接着シートを200℃環境下に90分静置し熱硬化させた。得られた硬化物を10mm角に裁断したものを試験サンプルとし、熱伝導率測定装置(LFA467 HyperFlash、NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱伝導率の測定を行った。熱伝導率が14W/m・K以上の場合を◎、10W/m・Kを超えて、14W/m・K未満であった場合を○、10W/m・K未満であった場合を×とした。
(接着強度の測定方法)
前記離型フィルムを除去して得た熱伝送製接着シートを銅片同士の片側(25mm×100mm×1.6mm)の一端部(25mm×12.5mm)に載せ、もう一枚同型の金属片を貼り合わせたうえ、170℃×2時間、次いで200℃×1.5時間で硬化させ、積層体を作成した。
接着強度測定装置「ストログラフ APII(東洋精機製作所)」を使用し、引っ張りせん断接着強さの試験方法(JISK6850)により、測定した。得られた積層体の接着面に対し、平行に引っ張り、破断した際の最大荷重を接着(せん断)面積で割り、接着強度を求めた。接着強度が5MPa以上の場合を◎、3MPaを超えて、5MPa未満であった場合を○、3MPa未満であった場合を×とした。
〈実施例3〜6及び比較例3〉
実施例1と同様にして、下記表2の配合率にて熱伝導性接着剤組成物および熱伝導性接着シートを作成し、熱伝導率および接着強度の測定を行った。
表2
Figure 2018048260
上記比較例3と実施例5との対比から、中粒子と小粒子としていずれも同等の平均粒径の酸化アルミニウム粒子を用いて、大粒子として、特定スピネル粒子(C)を用いた場合(実施例5)と従来の酸化アルミニウムを用いた場合(比較例3)からは、特定スピネル粒子を用いた方が、より熱伝導性に優れた積層体が得られることがわかる。
また、実施例3と実施例4との対比から、[111]面の結晶子径220nm以上のスピネル粒子を含有する樹脂組成物から得られた積層体同士であっても、それがより大きいスピネル粒子を含有する樹脂組成物から得られた積層体(実施例3)の方が、実施例4の積層体より、更に熱伝導性に優れていることがわかる。
尚、上記表2の各実施例では、エポキシ樹脂(A)として、芳香族構造を有しグリシジル基を3個以上有するエポキシ化合物を用いているので、上記表1の各実施例で用いたエポキシ樹脂からの積層体より、熱伝導性粒子同士の間に拘束力を与えるため、伝熱経路の形成に効果的に働き、熱伝導率がかなり高くなっていることがわかる。
本発明の樹脂組成物は高い熱伝導性と接着性を有する為、熱伝導性接着剤や熱伝導性シートに好適に利用可能である。よって、本発明の樹脂組成物は、回路や基板、モジュールを結合させる接着剤あるいは接着シートとして好適に用いることが可能であり、本発明の樹脂組成物を含有する積層体は、放熱性が高く、電子電気部材用途に好適に使用可能である。

Claims (7)

  1. エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、スピネル粒子(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記スピネル粒子(C)が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であるスピネル粒子である硬化性樹脂組成物。
  2. 前記スピネル粒子が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、かつ[311]面の結晶子径が、100nm以上である、スピネル粒子である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 前記スピネル粒子が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、[311]面の結晶子径が、100nm以上であり、かつ[311]面の結晶ピーク強度に対する前記[111]面の結晶ピーク強度の比([111]面/[311]面)が、0.3以上である、スピネル粒子である請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 前記スピネル粒子が、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデンと、を含み、[111]面の結晶子径が、220nm以上であり、[311]面の結晶子径が、100nm以上であり、[311]面の結晶ピーク強度に対する前記[111]面の結晶ピーク強度の比([111]面/[311]面)が、0.3以上であり、かつ平均粒径が、0.1〜1000μmである、スピネル粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項4の硬化性樹脂組成物を含有してなる熱伝導性接着剤。
  6. 請求項4の硬化性樹脂組成物を含有してなる熱伝導性接着シート。
  7. 請求項6の熱伝導性接着シートを硬化成形してなる熱伝導性積層体。
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