JP6536882B2 - 樹脂組成物、硬化物及び熱伝導性材料 - Google Patents

樹脂組成物、硬化物及び熱伝導性材料 Download PDF

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Description

本発明は、熱伝導性と接着強度に優れる樹脂組成物、及び硬化物に関する。
電子部品の小型化・高集積化に伴い、基板や回路、そしてモジュールを結合させるための高品質な接着剤が求められている。特に、高集積化による熱影響を最小限に抑えるため、高い放熱性を有する接着剤や接着シートが、特に求められている。
高い放熱性と接着性を提供するために、エポキシ樹脂などの樹脂組成物に高熱伝導の無機フィラーとシランカップリング剤を含有した組成物が開示されている。例えば、特許文献1では、エポキシ樹脂、無機フィラーからなる組成物に、エポキシ基を有するシランカップリング剤と炭素数4〜12のアルキル基を有するシランカップリング剤とを含む、熱伝導体を接着する為の樹脂組成物が提案されている。
しかし、当該樹脂組成物自体の熱伝導性は十分ではないため、高い熱伝導性を有する熱伝導体を接着させたとしても、接着層で熱抵抗が生じるという課題は解決されていない。
特開2012−77172号公報
本発明の課題は、高い熱伝導性と接着強度を両立する樹脂組成物、及び該樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供することにある。また、本発明の課題は、熱伝導性と接着性とを有する熱伝導性材料及び熱伝導性部材を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、熱硬化性樹脂と、熱伝導性フィラーと、特定のシランカップリング剤とを含有する樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出した。
すなわち本発明は、熱硬化性樹脂と、熱伝導性フィラーと、シランカップリング剤(A)とを含有する樹脂組成物であって、
シランカップリング剤(A)が、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする、樹脂組成物、及び該樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供することで、上記課題を解決する。
Figure 0006536882
・・・(1)
(式(1)において、R1はメチル基又はエチル基を表し、R2は炭素数が4−10のアルキル基を表し、nは1−3の整数を表す。)
また、本発明は、樹脂組成物を含有することを特徴とする、熱伝導性材料、及び該熱伝導性材料を硬化してなる硬化物を含有する熱伝導性部材を提供することで、上記課題を解決する。
本発明の樹脂組成物は高い熱伝導性と接着性を有する為、熱伝導性接着剤や熱伝導性シートに好適に利用可能である。よって、本発明の樹脂組成物は、回路や基板、モジュールを結合させる接着剤あるいは接着シートとして好適に用いることが可能であり、本発明の樹脂組成物を含有する積層体は、放熱性が高く、電子電気材料用途に好適に使用可能である。
<熱硬化性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂である。
熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
本発明の樹脂組成物を、熱伝導性接着剤や熱伝導性シートとして用いる場合、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の、芳香族構造を有しエポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、その中でも芳香族構造を有しエポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物が好ましい。
芳香族構造を有しエポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物としては、具体的には、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSの構造を有する3官能以上のエポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
更に好ましくは、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルのごとき多環芳香族の構造を有する3官能以上のエポキシ化合物が、熱伝導性粒子同士に高い拘束力を与え、具体的には、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、ビフェニルジオールの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ化合物が挙げられる。より具体的には、1,1−ビス(2,7−ジヒドロキシ−1−ナフチル)アルカンのテトラグリシジルエーテル化合物、[1,1‘−ビナフタレン]−2,2’、7,7’−テトラオールのテトラグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
<フェノキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、更に、フェノキシ樹脂を含有することができる。フェノキシ樹脂とは、ビスフェノール化合物とエピハロヒドリンとを強アルカリ存在下で反応させて得られる樹脂であり、例えば、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールA変性フェノキシ樹脂、ビスフェノールSとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールS変性フェノキシ樹脂などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物にフェノキシ樹脂を配合する場合、フェノキシ樹脂のエポキシ当量は、1,000g/当量以上100,000g/当量以下であると、エポキシ樹脂との相溶性が向上し、平滑なシートを得られるので好ましい。フェノキシ樹脂のエポキシ当量は、より好ましくは2,000〜50,000g/当量であり、さらに好ましくは3,000〜20,000g/当量である。
<硬化剤>
本発明の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤は、エポキシ樹脂用として公知慣用に用いられるものであればよく、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤などが挙げられる。
具体的には、イミダゾール系硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2-フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1-シアノエチル−2-フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4-ジアミノ−6−〔2’−ウンデシルイミダゾリル(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4-ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体、グアナミン誘導体等が挙げられる。
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
硬化剤の中でも、アミン系又はアミド系の硬化剤は、熱伝導性接着剤又は熱伝導性接着シートでの接着性が向上するため好ましい。
本発明の樹脂組成物において、硬化促進剤を前記の硬化剤と併用することもできる。硬化促進剤としてエポキシ樹脂の硬化反応を促す種々の化合物が使用でき、例えば、リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。この中でも、イミダゾール化合物、リン系化合物、第3級アミン化合物の使用が好ましく、特に半導体用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
<熱伝導性フィラー>
本発明の熱伝導性フィラーは、熱伝導性が高いフィラーであればよく、より好ましくは絶縁性も高いフィラーである。
熱伝導フィラーとしては、具体的には金属系フィラー、無機化合物フィラー、炭素系フィラー等が使用される。具体的には、例えば、銀、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属系フィラー、アルミナ、マグネシア、ベリリア、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン等の無機系フィラー、ダイヤモンド、黒鉛、グラファイト、炭素繊維等の炭素系フィラーなどが挙げられる。少なくとも1種の熱伝導性フィラーが選択されて使用されるが、結晶形、粒子サイズ等が異なる1種あるいは複数種の熱伝導性フィラーを組み合わせて使用する事も可能である。電子機器等の用途で放熱性が必要とされる場合には、電気絶縁性が求められる事が多く、これらのフィラーの内、熱伝導性と体積固有抵抗のいずれも高い、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンドから選択される少なくとも1種の絶縁性の熱伝導性フィラーの使用が好ましい。複合樹脂組成物に対する熱伝導性フィラーの充填量には限りがあり、充填量が多くなりすぎると成形性等の物性を低下させてしまうため、熱伝導率の高い熱伝導フィラーの使用が好ましく、10W/m・K以上の熱伝導性フィラーの使用がより好ましい。
中でもアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウムが熱伝導性と絶縁性の確保の点で好ましく、特にアルミナが熱伝導性と絶縁性に加えて樹脂に対する充填性が良くなるのでより好ましい。
これらの熱伝導性フィラーとして、表面処理を行ったものを使用してもよい。また、これらの熱伝導性フィラーとしては、1種類を用いても複数種類を混合して用いてもかまわない。
上記の熱伝導フィラーの粒子径は特に限定されないが、好ましい粒子径としては、90%累積粒子径が55〜80μmであり、この粒子径範囲であれば、樹脂組成物の作業性と成形性が両立でき、更には電冷熱サイクル下等においての耐クラック性又は耐剥離性に優れるため好ましい。より好ましい範囲としては、90%累積粒子径が60〜70μmである。
上記の熱伝導フィラーとしては、粒子径が100μm以上の成分が、0〜10重量%の範囲であることが好ましい。粗大粒子がこの範囲内であれば、樹脂組成物の絶縁性の確保の点で好ましい。より好ましい範囲としては、粒子径100μm以上の成分が0〜1重量%である。
前記熱伝導性フィラーは、粒子径分布密度が高い部分が、単一であっても、複数個所存在してもかまわない。例えば、粒子径が大きいフィラーと小さいフィラーを組み合わせてもよく、大・中・小と3種類のフィラーを組み合わせてもかまわない。
前記の熱伝導性フィラーの形状は特に限定されないが、樹脂組成物の流動性からは真球に近い方が好ましい。例えば、アスペクト比(粒子の短径の長さに対する粒子の長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ))は、特に限定されないが、1に近いほど好ましく、好ましくは、1〜80であり、さらに好ましくは1〜10である。
前記の熱伝導性フィラーの熱伝導性組成物中の配合量は特に限定されず、用途で求められる熱伝導率の程度に応じて配合されるが、好ましくは、フィラーと樹脂と硬化剤の不揮発分合計を100容積%としたときに、熱伝導性フィラーの配合量は60〜90容積%である。前記の熱伝導性フィラーの含有量であれば、熱伝導性と接着性が良好に両立される。より好ましい配合量は65〜88容積%であり、さらに好ましくは70〜85容積%である。
<シランカップリング剤(A)>
本発明のシランカップリング剤(A)は、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 0006536882
・・・(1)
(式(1)において、R1はメチル基又はエチル基を表し、R2は炭素数が4−10のアルキル基を表し、nは1−3の整数を表す。)
本発明のシランカップリング剤(A)は、長いアルキル鎖とエポキシ基を有することを特徴とする。長鎖のアルキル基を有することから、樹脂との親和性が高く、組成物の低粘度化が可能となることから、性能低下の原因となる成型後の空隙の低減が可能となる。本発明のシランカップリング剤(A)を樹脂組成物に配合することで、フィラーと樹脂間の密着性を高めて、界面熱抵抗を低下させるとともに、熱伝導性フィラーを多量に配合した場合でも空隙が少なく、緻密な硬化物を得ることができるため、熱伝導性および電気絶縁性に優れた硬化物となる。また、本発明のシランカップリング材(A)もエポキシ基を有していることから、特に熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、シランカップリング剤(A)自身も硬化反応に寄与することから、硬化後のブリードアウトが起こりにくいため、特に熱履歴のかかりやすい部材に対して特に好適に使用可能である。
本発明のシランカップリング剤(A)としては、具体的には、式(1)におけるR2の炭素数が4〜10のアルキル基を有するものが挙げられ、特に好ましくは炭素数が6〜9のものである。
本発明のシランカップリング剤(A)の配合量としては、フィラーと樹脂と硬化剤の不揮発分合計を100重量部としたときに、本発明のシランカップリング剤(A)の配合量は0.05〜5.0重量部である。配合量が前記範囲であれば、熱硬化性樹脂の性能を維持しつつ、シランカップリング剤としての効果を発揮することができる。より好ましくは0.05〜3.0重量部であり、特に好ましくは、0.2〜2.0重量部である。
シランカップリング剤(A)の配合方法は、特に規定はなく、熱硬化性樹脂に予め混合してもよく、硬化剤に予め混合してもよく、フィラーと予め混合してもよい。また、熱硬化性樹脂、硬化剤、フィラーと同時に添加してもよく、分割添加してもかまわない。
中でも好ましくは、フィラーを予めシランカップリング剤(A)と混合させる方法である。フィラーとの混合方法は、公知慣用の方法で行えばよく、例えば、流体ノズルを用いた噴霧方式、せん断力のある攪拌、ボールミル、ミキサー等の乾式法、水系または有機溶剤系等の湿式法を採用することができる。せん断力を利用した表面処理は、フィラーの破壊が起こらない程度にして行うことが望ましい。
本発明のシランカップリング剤(A)のほかに、他のカップリング剤を併用してもよく、シラン系、チタネート系およびアルミネート系カップリング剤を併用してもかまわない。また、これらのカップリング剤で表面処理をした熱伝導性フィラーを含有する樹脂組成物にシランカップリング剤(A)を用いてもかまわない。
他のカップリング剤を併用する場合、シラン系カップリング剤の使用が好ましく、例えば、シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β(3,4エポキシシンクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシリメトキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
<溶剤>
本発明の樹脂組成物は、使用用途に応じて溶剤を配合してもかまわない。溶剤としては有機溶剤が挙げられ、例えばメチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得る。
<その他の配合物>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲であれば、反応性化合物、有機フィラー、無機フィラー、有機溶剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、カップリング剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等を配合してもかまわない
〈配合〉
本発明の樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られ、公知慣用の混合方法を用いればよく、押出機、ニ−ダー、ロ−ル、プラネタリミキサー、自転−公転型混練装置等を用いればよい。所定の配合量の樹脂に熱伝導粒子を配合し、攪拌機等で十分に混合した後、ニーダー、ロール、プラネタリミキサー等で混練することで、熱伝導粒子を均一に分散させた組成物を得ることができる。混練の際には、加温したり、溶剤を用いたりしてもよい。
<硬化物>
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有することから、硬化行程を経て硬化物とすることができる。本発明の硬化物は、熱伝導性が高い上、硬化物内の空隙が少ないことから、絶縁抵抗性に優れる特徴がある。
<熱伝導性材料>
本発明の樹脂組成物は、熱伝導性に優れることから、熱伝導性材料として好適に使用可能である。特に、接着性にも優れることから、熱伝導性接着剤として特に好適に使用可能である。特に電子電気材料用として優れており、パワーモジュールなどの電気・電子機器の放熱させたい部位と放熱部材(例えば、金属板やヒートシンク)を接着させ、良好な放熱を発現させるために使用することができる。接着対象となる基材は特に限定は無く、無機素材であっても有機素材であっても、異なる素材が混在する基材であってもかまわない。無機素材としては、例えば銅・アルミ・鉄・金・銀・タングステン・スズ、炭素といった金属やその金属酸化物、ガラスなどが挙げられ、有機素材としては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂といった樹脂や、木材などが挙げられる。異なる素材が混在する基材としては、例えば、電子回路、半導体部品、繊維強化樹脂、樹脂上に金属が配線された基板等が挙げられる。
基材同士を接着させる際の熱伝導性接着剤の形態には特に制限はないが、液状あるいはペースト状に設計した熱伝導性接着剤の場合は、液状あるいはペースト状の熱伝導性接着剤を接着面の界面に注入後、接着し、硬化させれば良い。固形状に設計されたものは、粉体状、チップ状であってもよく、接着面の界面に置き、熱溶融させる事で接着し、硬化させれば良い。
発明の樹脂組成物は、熱伝導性接着剤をシート状に加工した、熱伝導性接着シートとしても好適に使用可能である。この場合、樹脂組成物をシート状に加工し、接着面の界面に置き、熱溶融させる事で接着し、硬化させることができる。接着させる際、接着シートは未硬化の状態であってもよいし、半硬化の状態であってもよい。
<積層体>
本発明の熱伝導性接着剤または熱伝導性接着シートを用いて基材同士を接着させた上で硬化させることで、本発明の樹脂組成物を含有する積層体を製造することができる。
本発明の積層体は、中間層である樹脂組成物層が高い熱伝導性を有することから、基材あるいは上層の一方から一方へ熱伝導させる用途で好適に用いることができ、特に半導体やパワーモジュールといった発熱性の電子電気部材と、金属板やヒートシンクといった放熱部材を積層した積層体である、放熱部品として好適に使用可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳述するが、本記述は本発明を限定するものではない。
〈合成例1〉エポキシ樹脂1の合成
2,2‘,7,7’−テトラグリシジルオキシ−1,1‘−ビナフタレンの合成
温度計、撹拌機、還流冷却器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、塩化鉄(III)六水和物278g(1.0モル)、水2660mLを仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した後、ナフタレン−2,7−ジオール164g(1.0モル)をイソプロピルアルコール380mLにあらかじめ溶解した溶液を加え、40℃で30分撹拌した。塩化鉄(III)六水和物278g(1.0モル)及び水1328mL、イソプロピルアルコール188mLの混合溶液を加え、40℃まで昇温してから、さらに1時間撹拌した。反応液に酢酸エチル1000mLを加え、撹拌した。反応液を分液漏斗で有機層を分離した後、さらに、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した。真空下で溶媒を400mL程度になるまで留去した後、溶液を温度計、攪拌機、ディーンスタークトラップを備えたSUS容器に移し、トルエン10Lを加えた後、酢酸エチル及び水からトルエンに置換した。トルエン溶液を室温まで冷却した後、不溶物をろ別した。ろ液を沸点以上の温度に加熱し、トルエンを1000mL程度になるまで留去することで濃縮し、[1,1’−ビナフタレン]−2,2’,7,7’−テトラオールの結晶を析出させた。析出物と溶媒を80℃以上の温度での熱時ろ過でろ取した後、110℃で5時間乾燥させ、フェノール化合物1として、[1,1’−ビナフタレン]−2,2’,7,7’−テトラオールを収量106g(収率68%)で得た。
次に、温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、上記フェノール化合物1の79.5g(0.25モル)、エピクロルヒドリンの462g(5.0モル)、n−ブタノールの126gを仕込み溶解させた。40℃に昇温した後に、48%水酸化ナトリウム水溶液の100g(1.20モル)を8時間要して添加し、その後更に50℃に昇温し更に1時間反応させた。反応終了後、水150gを加えて静置した後、下層を棄却した。その後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトンの230gを加え溶解した。更にこの溶液に10重量部水酸化ナトリウム水溶液の100gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水洗を繰り返した。次いで系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ樹脂1として2,2’,7,7’−テトラグリシジルオキシ−1,1’−ビナフタレンの135gを得た。得られたエポキシ樹脂(EP−1)の軟化点は61℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は1.1dPa・s、エポキシ当量は144g/当量であった。
〈合成例2〉フェノキシ樹脂溶液
温度計、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコにビスフェノールAを114g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製EPCLON−850S)を191.6g(エポキシ当量:188)、シクロヘキサノンを130.9g(不揮発分:70%)仕込み、系内を窒素置換し、窒素をゆっくりフローし、攪拌しながら80℃まで昇温し、2E4MZ(四国工業化成(株)製)120mg(理論樹脂固型分に対して400ppm)を
加え、さらに150℃まで昇温した。その後、150℃で20時間攪拌し、不揮発分(N.V.)が30重量%(MEK:シクロヘキサノン=1:1)となるようにMEK、シクロヘキサノンを加えて調整した。得られたフェノキシ樹脂溶液の粘度は5200mPa・s、不揮発分のエポキシ当量は12500g/当量であった。
〈調製例1〉樹脂混合物1(X−1)
合成例1で得られた2,2‘,7,7’−テトラグリシジルオキシ−1,1‘−ビナフタレン 60重量部、EX−201(レゾルシノールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製、エポキシ当量117g/eq.)10重量部、および、合成例2で得られたフェノキシ樹脂溶液 99重量部、2P4MHZ−PW(イミダゾール系硬化剤、四国化成(株)製)2.5重量部、AH−154(ジシアンジアミド、味の素ファインテクノ(株)製)3.13重量部、を混合することによって、不揮発分が60重量%であって不揮発分の比重が1.2g/cm3の樹脂組成物1(X−1)を調製した。
〈調製例2〉アルミナ混合物1(AL−1)
アルミナとして、DAW45((株)デンカ製;50%粒径45μm 比重3.90g/cm3)を60容積%、、AA―3(住友化学(株)製;50%粒径3μm 比重3.95g/cm3)を20容積%、AA−04(住友化学(株)製;50%粒径0.4μm 比重3.95g/cm3)を20容積%を混合し、比重が3.92g/cm3のアルミナ混合物1(AL−1)を調整した。得られたアルミナ混合物1の90%累積粒子径は65μmであった。
〈調製例3〉アルミナ混合物1(AL−1)
アルミナとして、DAW45((株)デンカ製;50%粒径45μm 比重3.90g/cm3)を70容積%、AA―3(住友化学(株)製;50%粒径3μm 比重3.95g/cm3)を10容積%、AA−04(住友化学(株)製;50%粒径0.4μm 比重3.95g/cm3)を20容積%を混合し、比重が3.91g/cm3のアルミナ混合物2(AL−2)を調整した。得られたアルミナ混合物2の90%累積粒子径は68μmであった。
〈実施例1〉
調製例1で得られた樹脂混合物1を不揮発分で18容積%、調製例2で得られたアルミナ混合物1を82容積%を混合し、アルミナ配合樹脂1を得た。更にKBM−4803(グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)をアルミナ配合樹脂1の不揮発分100質量%に対し、0.47重量部配合した後、メチルエチルケトン(MEK)を不揮発分87重量部となるよう配合し、自転−公転型混練装置で混練することで、樹脂組成物1を得た。
(樹脂シートの作成)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン化合物で剥離処理された離型フィルムの表面に、棒状の金属アプリケータを用いて、樹脂組成物1を乾燥後の厚さが110μmになるように塗工した。
次に、前記塗工物を85℃で乾燥させた後、その塗工面に、前記離型フィルムを貼付し、貼付物1を得た。得られた貼付物1について、表面への圧力が0.2MPaとなるように90℃の熱ロールで圧をかけたのち、離型フィルムをはがすことにより、厚さ100μmの樹脂シート1を得た。
(硬化物の作成)
前記樹脂シート1を、200℃で90分加熱することで硬化させ、硬化物1を得た。
(熱伝導率の測定方法)
硬化物1を10mm角に裁断したものを試験サンプルとし、熱伝導率測定装置(LFA447nanoflash、NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱伝導率の測定を行った。
(接着強度の測定方法)
前記接着シート1をアルミ片同士の片側(25mm×100mm×1.6mm)の一端部(25mm×12.5mm)に載せ、もう一枚同型の金属片の一端部と互い違いになるように貼り合わせたうえ、170℃×2時間、次いで200℃×1.5時間で硬化させて、接着試験片1を作成した。
得られた接着試験片1を、引っ張りせん断接着強さの試験方法(JISK6850)により、接着強度測定装置「ストログラフ APII(東洋精機製作所)」を使用して接着強度を測定した。接着面に対し、平行に引っ張り、破断した際の最大荷重を接着(せん断)面積で割り、接着強度を求めた。
(絶縁破壊電圧の測定方法)
アルミ箔(60mm×60mm×厚み100μm)に対し、同形の前記樹脂シート1とその上に銅箔(厚み35μm)を貼付けたうえ、150℃の真空熱プレスで貼り合わせた。そのあと、170℃×2時間、次いで200℃×1.5時間で硬化させ、積層体1を作成した。積層体1の銅箔を塩化第二鉄溶液でエッチングして、中央部に直径25mmの円形の銅箔部を形成した。
上記の積層体1を絶縁破壊試験器「YST−243−100RHO(ヤマヨ試験器有限会社)」を使用し、絶縁破壊の強さの試験方法(JISC2110)により、23℃における絶縁破壊電圧の測定を行った。
実施例1と同様に、下記表1及び2の配合に基づいて、実施例及び比較例を行った。
Figure 0006536882
Figure 0006536882
表中、使用している原料は以下の通り。
KBE−403(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン) 信越化学工業(株)
KBM−3063(ヘキシルトリメトキシシラン) 信越化学工業(株)
KBM−573(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン) 信越化学工業(株)
KBM−1083(オクテニルトリメトキシシラン) 信越化学工業(株)

本発明の樹脂組成物は高い熱伝導性と接着性を有する為、熱伝導性接着剤や熱伝導性シートに好適に利用可能である。よって、本発明の樹脂組成物は、回路や基板、モジュールを結合させる接着剤あるいは接着シートとして好適に用いることが可能であり、本発明の樹脂組成物を含有する積層体は、放熱性が高く、電子電気部材用途に好適に使用可能である。

Claims (9)

  1. 熱硬化性樹脂と、熱伝導性フィラーと、シランカップリング剤(A)とを含有する樹脂組成物であって、熱伝導性フィラーが90%累積粒子径55〜80μmであり、かつ
    シランカップリング剤(A)が、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする、樹脂組成物。
    Figure 0006536882
    (式(1)において、Rはメチル基又はエチル基を表し、Rは炭素数が4−10のアルキル基を表し、nは1−3の整数を表す。)
  2. さらに、硬化剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 熱伝導性フィラーと熱硬化性樹脂と硬化剤の不揮発分合計を100重量%としたとき、シランカップリング剤(A)の配合量が0.05〜3.0重量部である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 熱伝導性フィラーの配合量が、樹脂組成物の固形分量中において65−90容積%である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする、硬化物。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする、熱伝導性材料。
  7. 接着剤である、請求項6に記載の熱伝導性材料。
  8. 請求項7に記載の接着剤を含有することを特徴とする積層体。
  9. 請求項5に記載の硬化物を含有することを特徴とする、熱伝導性部材。
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