JP2013014671A - 樹脂組成物シート、金属箔付樹脂組成物シート、メタルベース配線板材料、メタルベース配線板、及び電子部材 - Google Patents

樹脂組成物シート、金属箔付樹脂組成物シート、メタルベース配線板材料、メタルベース配線板、及び電子部材 Download PDF

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Abstract

【課題】熱伝導率及び電気絶縁性に優れる樹脂硬化物を形成可能な樹脂組成物シート、金属箔付樹脂組成物シート、ならびにこれらを用いて形成されるメタルベース配線板材料、メタルベース配線板、及びLED光源部材を提供すること。
【解決手段】本発明の樹脂組成物シートは、分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、絶縁性無機フィラーと、非加水分解性基及び加水分解性基又は該加水分解性基が加水分解した水酸基を有するシランカップリング剤とを含み、前記非加水分解性基が、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一つを含む有機基である。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物シート、金属箔付樹脂組成物シート、メタルベース配線板材料、メタルベース配線板、及び電子部材に関する。
電子機器の高密度化、コンパクト化の進行に伴い、回路上等での局所的な発熱量は増大傾向にあり、半導体素子等の電子部品を搭載した回路基板には高い放熱性能が要求されている。一方、従来のように高い電気絶縁性は必要となる。そのため、高い熱伝導率と高い電気絶縁性を有する樹脂組成物が、熱伝導性封止材や熱伝導性接着剤として実用化されてきている。
上記に関連して、液晶性を示すエポキシ樹脂と絶縁性無機フィラーとを含むエポキシ樹脂組成物が開示され、高い熱伝導率と優れた加工性を有するとされている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−13759号公報
しかしながら、特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物では、十分に高い熱伝導率が得られない場合があった。
本発明は、熱伝導率及び電気絶縁性に優れる樹脂硬化物を形成可能な樹脂組成物シート、金属箔付樹脂組成物シート、ならびにこれらを用いて形成されるメタルベース配線板材料、メタルベース配線板、及び電子部材を提供することを課題とする。
本発明は、次のものに関する。
<1> 分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、絶縁性無機フィラーと、非加水分解性基及び加水分解性基又は該加水分解性基が加水分解した水酸基を有するシランカップリング剤とを含み、前記非加水分解性基が、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一つを含む有機基である樹脂組成物シート。
なお、本発明における加水分解性基とは、加水分解により水酸基となってシラノールを生成する基をいう。
<2> 前記非加水分解性基が、炭素原子よりも電気陰性度の大きい窒素原子以外の原子Aを含み、前記非加水分解性基の式量に対する前記原子Aの原子量の比率が1%〜60%である<1>に記載の樹脂組成物シート。
<3> 前記非加水分解性基が窒素原子を含み、前記非加水分解性基の式量に対する窒素原子の原子量の比率が1%〜20%である前記<1>に記載の樹脂組成物シート。
<4> 前記絶縁性無機フィラーが、固形分中、40vol%以上82vol%以下で含有される前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。
<5> 前記絶縁性無機フィラーは、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が7μm以上25μm以下である第1の絶縁性無機フィラー群、前記粒子径D50が1μm以上7μm未満である第2の絶縁性無機フィラー群、及び前記粒子径D50が1μm未満である第3の絶縁性無機フィラー群を含む前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。
<6> 前記第1の絶縁性無機フィラー群、第2の絶縁性無機フィラー群及び第3の絶縁性無機フィラー群の総質量中、前記第1の絶縁性無機フィラー群の含有率が60質量%以上80質量%以下であり、前記第2の絶縁性無機フィラー群の含有率が5質量%以上30質量%以下であり、且つ前記第3の絶縁性無機フィラー群の含有率が1質量%以上25質量%以下であり、前記第3の絶縁性無機フィラー群に対する前記第2の絶縁性無機フィラー群の含有比率(第2の絶縁性無機フィラー群/第3の絶縁性無機フィラー群)が、質量基準で1.0以上1.7以下である前記<5>に記載の樹脂組成物シート。
<7> 前記絶縁性無機フィラーが、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、及びフッ化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種のフィラーである前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。
<8> 前記フェノール樹脂が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。
一般式(I)中、Rは、各々独立にアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、mは0〜2の整数を、nは1〜10の整数を表わす。
<9> 平均厚みが、20μm以上500μm以下である前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。
<10> 前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の樹脂組成物シートと、金属箔と、を有する金属箔付樹脂組成物シート。
<11> 金属箔と、
金属基板と、
前記金属箔と前記金属基板との間に、前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の樹脂組成物シートの硬化物である熱伝導性絶縁層と、
を有するメタルベース配線板材料。
<12> 配線層と、
金属基板と、
前記配線層と前記金属基板との間に、前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の樹脂組成物シートの硬化物である熱伝導性絶縁層と、
を有するメタルベース配線板。
<13> 前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート、前記<10>に記載の金属箔付樹脂組成物シート、前記<11>に記載のメタルベース配線板材料、又は前記<12>のメタルベース配線板、のいずれか1つを用いて形成された電子部材。
本発明によれば、熱伝導率及び電気絶縁性に優れる樹脂硬化物を形成可能な樹脂組成物シート、金属箔付樹脂組成物シート、ならびにこれらを用いて形成されるメタルベース配線板材料、メタルベース配線板、及び電子部材を提供することができる。
本発明のメタルベース配線板材料の一例における断面構造を示す。 本発明のメタルベース配線板の一例における断面構造を示す。 本発明の電子部材の一例における断面構造を示す。
本発明において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
<樹脂組成物シート>
本発明の樹脂組成物シートは、分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、絶縁性無機フィラーと、非加水分解性基及び加水分解性基又は該加水分解性基が加水分解した水酸基を有するシランカップリング剤とを含み、前記非加水分解性基が、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一つを含む有機基である樹脂組成物シートである。
以下では、樹脂組成物シートに用いる材料及び物性について説明する。本発明の樹脂組成物シートは、更に必要に応じて、その他の成分を含んでもよい。
(シランカップリング剤)
本発明の樹脂組成物シートは、シランカップリング剤を含む。このシランカップリング剤は、非加水分解性基及び加水分解性基又は該加水分解性基が加水分解した水酸基を有し、前記非加水分解性基として、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一つを含む有機基を有する。以下、本発明に係るシランカップリング剤を「特定シランカップリング剤」と称する場合があり、本発明に係る前記非加水分解性基を「特定非加水分解性基」と称する場合がある。
樹脂組成物シートが特定シランカップリング剤を含むことで、熱を効率よく伝達することができる。この効果は、特定シランカップリング剤が絶縁性無機フィラーの表面とその周りを取り囲む有機樹脂の間で共有結合を形成し、バインダ剤に相当する役割を果たすためであると考える。この作用は以下のように考えることができる。
特定シランカップリング剤は、加水分解性基又は該加水分解性基が加水分解した水酸基を有する珪素化合物である。加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解するとシラノール基(Si−OH)を生じさせる。このシラノール基は、絶縁性無機フィラーの表面に存在する水酸基や極性基と結合し、特定シランカップリング剤を絶縁性無機フィラーに結合させる機能を有する。結合の種類としては、水素結合や脱水縮合による共有結合が挙げられる。更に、前記シラノール基は、同様に、樹脂組成物シートに含まれる樹脂成分の極性基や水酸基と、水素結合や脱水縮合による共有結合し、特定シランカップリング剤を樹脂成分に結合させる機能を有する。あるいは、シラノール基はエポキシ基と共有結合することができ、これにより特定シランカップリング剤をエポキシ樹脂に結合させる機能を有する。
また、加水分解されずに残存した加水分解性基は、絶縁性無機フィラーの表面の水酸基や極性基と水素結合し、更には樹脂組成物シート中の樹脂成分の極性基や水酸基と水素結合することができるため、各成分の結合に寄与する。
また、特定シランカップリング剤は非加水分解性基を有する。前記非加水分解性基は、樹脂組成物シートに含まれる樹脂成分との相溶性を向上させる。前記非加水分解性基は、樹脂組成物シートに含まれる樹脂成分の有機基と共有結合や疎水性相互作用により結合すると考えられる。例えば、前記特定非加水分解性基がエポキシ基の場合には、後述のフェノール樹脂における水酸基と共有結合し得る。また、前記非加水分解性基がアミノ基の場合は、後述のエポキシ樹脂と共有結合し得る。
特に本発明における非加水分解性基は、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一つを含む有機基である。シランカップリング剤がこれらの有機基を非加水分解性基として有することで、フェノール樹脂やエポキシ樹脂と効果的に共有結合し、熱を効率よく伝達することができるものと考えられる。
このように特定シランカップリング剤は、絶縁性無機フィラーと樹脂成分を共有結合により結合することができる。その結果、絶縁性無機フィラーと樹脂成分との間でのフォノンの伝導損失が抑えられ、熱伝導率が向上する。
更には、樹脂がフィラーから剥離しにくくなるため、フィラーと樹脂の界面に空隙が発生しにくいことから水分の浸入を妨げることにより、絶縁信頼性の向上にも寄与するものと考えられる。
以下、本発明に係る特定シランカップリング剤について詳細に説明する。
本発明に係る特定シランカップリング剤は、加水分解性基又は該加水分解性基が加水分解した水酸基を有する。前記加水分解性基は反応性を制御しやすいアルコキシ基であることが好ましく、炭素数が1〜6のアルコキシ基であり、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が更に好ましく、加水分解の反応性の高さの観点からメトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。
また、本発明に係る特定シランカップリング剤は特定非加水分解性基を有する。前記特定非加水分解性基は、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一つを含む有機基であり、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、メルカプト基から選ばれる少なくとも一つを含む有機基であることが熱伝導性を高める観点からより好ましい。
前記特定非加水分解性基としての前記エポキシ基を含む有機基は、グリシドキシアルキル基を含むことが好ましい。グリシドキシアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数2〜12のアルキル基が好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数3〜6のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルなどが挙げられる。
前記特定非加水分解性基としての前記2級又は3級アミノ基を含む有機基は、2級又は3級アミノ基とアルキル基とを含む有機基であることが好ましく、アミノアルキル基を含む有機基であることがより好ましい。前記アミノアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数2〜10のアルキル基が好ましく、炭素数2〜6のアルキル基がより好ましく、プロピル基が更に好ましい。
前記2級又は3級アミノ基を含む有機基としては、アミノプロピル基を含む有機基であることが好ましく、具体的には、N−フェニル−3−アミノプロピル基などが挙げられる。
前記特定非加水分解性基としての前記(メタ)アクリル基を含む有機基は、(メタ)アクリロキシアルキル基等を含むことが好ましい。(メタ)アクリロキシアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数2〜10のアルキル基が好ましく、炭素数2〜6のアルキル基がより好ましく、プロピル基が更に好ましい。具体的には、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基などが挙げられる。
前記特定非加水分解性基としての前記メルカプト基を含む有機基は、メルカプトアルキル基を含むことが好ましい。メルカプトアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数2〜6のアルキル基が好ましく、炭素数2〜10のアルキル基がより好ましく、プロピル基が更に好ましい。具体的には、3−メルカプトプロピル基などが挙げられる。
前記特定非加水分解性基としての前記スルフィド基を含む有機基は、X−(S)−Yで表される構造を含む有機基であり、X及びYは各々独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。X又はYで表されるアルキル基は、各々独立に炭素数2〜10アルキル基が好ましく、炭素数2〜6のアルキル基がより好ましく、プロピル基が更に好ましい。X又はYで表されるアリール基は、フェニル基が好ましい。また、nは1〜10の整数であることが好ましく、2〜6の整数であることがより好ましい。スルフィド基として具体的には、ジプロピルテトラスルフィド基などが挙げられる。
前記特定非加水分解性基における前記ハロゲン原子を含む有機基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含む有機基が挙げられ、入手や合成の容易さからフッ素又は塩素を含む有機基が好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基や3,3,3−トリフルオロプロピル基等のフルオロアルキル基が挙げられる。
前記特定非加水分解性基は、炭素原子よりも電気陰性度の大きい原子を含むことが好ましい。これにより、より確実に絶縁性無機フィラーと樹脂成分を結合させることができる。この効果は、以下のように考えることができる。
前記特定非加水分解性基が、電気陰性度の大きい原子を含むことで、その特定非加水分解性基の内部において電子の偏りが生じ、共有結合や疎水性相互作用が起きやすくなるものと考えられる。
ここで電気陰性度はポーリングの電気陰性度をいう。電気陰性度の大きい原子とは、炭素原子の電気陰性度2.55よりも電気陰性度の大きい原子をいい、例えば、窒素3.04、酸素3.44、フッ素3.98、硫黄2.58、塩素3.16等が例として挙げられる。
炭素原子よりも電気陰性度の大きい原子を含む特定非加水分解性基としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリル基(以上、酸素原子を含む有機基)、メルカプト基、スルフィド基(以上、硫黄原子を含む有機基)、フルオロアルキル基(以上、ハロゲン原子を含む有機基)、2級又は3級アミノ基(以上、窒素原子を含む有機基)を含む有機基が挙げられる。
また、上記効果を有効に発揮させる観点から、炭素原子よりも電気陰性度の大きい原子が窒素原子以外の場合には、このような電気陰性度の大きい原子を原子Aと称すると、前記特定非加水分解性基の式量に対する前記原子Aの原子量の比率が1%〜60%であることが好ましく、4%〜55%であることがより好ましく、8%〜50%であることが更に好ましい。
前記比率Hの値が低すぎると、極性が低くなりすぎ、絶縁性無機フィラーと樹脂との結合を高める効果が弱くなる傾向にある。他方、比率Hの値が高すぎるシランカップリング剤は一般的に流通しておらずに入手が困難である。
前記特定非加水分解性基の式量に対する、前記原子Aの原子量の比率H[%]は、次式から求める。
H[%]=特定非加水分解性基中の前記原子Aの総原子量/特定非加水分解性基の式量×100
例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランでは、特定非加水分解性基CSHの式量が75.2[g/mol]、炭素よりも電気陰性度の大きい原子である硫黄Sの原子量32.1[g/mol]であるため、H[%]=32.1/75.2×100=43[%]となる。
ただし、非加水分解性基が1級アミノ基を含む場合、前記加水分解により生成したシラノール基は1級アミノ基と急速に静電吸着してしまい、更には、シラノール基とアミノ基が結合してしまう。そのため、シランカップリング剤のゲル化が速やかに進行し、前述のような絶縁性無機フィラーと樹脂シート内の樹脂成分とを結合する機能が損なわれる。従って、特定非加水分解性基がアミノ基を有する場合は、2級アミノ基又は3級アミノ基である。
そのため、前述の炭素原子よりも電気陰性度の大きい原子が窒素原子の場合には、窒素原子以外の原子Aの場合に比べて、好適な前記比率Hは低くなる。よって、炭素原子よりも電気陰性度の大きい原子が窒素原子の場合には、前記比率Hは1%〜20%が好ましい。前記比率Hの値が低すぎると、絶縁性無機フィラーと樹脂との結合を高める効果が弱くなる傾向にある。他方、前記比率Hの値が高すぎる場合は、ゲル化が進行する傾向がある。絶縁性無機フィラーと樹脂成分との結合をより確実にするという観点から、特定非加水分解性基が窒素原子を含む場合の比率Hの値は、2%〜18%がより好ましく、3%〜16%が更に好ましい。
なお、特定非加水分解性基が窒素原子を含む場合の比率Hの算出方法は、窒素原子以外の原子Aのときの上記方法と同様である。
なお、前記特定シランカップリング剤は、特定非加水分解性基以外のその他の非加水分解性基を更に有していてもよく、その他の非加水分解性基としては、メチル基、フェニル基などが挙げられる。
更に、前記特定シランカップリング剤の具体的な構造について説明する。
前記特定シランカップリング剤は、前記特定非加水分解性基とアルコキシ基を有する下記珪素化合物(A)であることが好ましい。また、前記珪素化合物(A)を加水分解した下記加水分解物(B)であってもよい。更に、前記加水分解物(B)が縮合した下記縮合反応物(C)であってもよい。樹脂組成物シートに下記縮合反応物(A)、下記加水分解物(B)、及び下記縮合反応物(C)の少なくとも一種を含有させると、熱伝導率をより向上させることができる。
Si(OR4−n・・・(A)
珪素化合物(A)中、Rは非加水分解性基であって、各々独立に、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子の中の少なくとも一つを含む有機基である。ORは加水分解性のアルコキシ基であって、Rは各々独立に、炭素数が1〜6のアルキル基である。nは1〜3の整数を示し、Rが複数ある場合、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、Rが複数ある場合には、少なくとも一つのRが上記特定非加水分解性基であればよく、更にその他の非加水分解性基を有していてもよい。
Si(OR4−n−m(OH)・・・(B)
加水分解物(B)中、Rは非加水分解性基であって、各々独立に、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一つを含む有機基である。ORは加水分解性のアルコキシ基であって、Rは各々独立に、炭素数が1〜6のアルキル基である。nは1〜3の整数を示し、mは1〜4−nの整数を示す。Rが複数ある場合、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、Rが複数ある場合には、少なくとも一つのRが上記特定非加水分解性基であればよく、更にその他の非加水分解性基を有していてもよい。
Sin−1(OR2n+2−m−u(OH)・・・(C)
縮合反応物(C)中、Rは非加水分解性基であって、各々独立に、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子の中の少なくとも一つを含む有機基である。ORは加水分解性のアルコキシ基であって、Rは各々独立に、炭素数が1〜6のアルキル基である。mは1〜2n+1の整数を示し、nは2以上の整数を示し、uは0〜2n+2−mの整数を示し、Rが複数ある場合、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、Rが複数ある場合には、少なくとも一つのRが上記特定非加水分解性基であればよく、更にその他の非加水分解性基を有していてもよい。
前記珪素化合物(A)、加水分解物(B)、及び縮合反応物(C)におけるRは、前記特定非加水分解性基と同義であり、好適な範囲についても同様である。また、Rが複数ある場合に有してもよいその他の非加水分解性基についても、上記と同様である。
前記珪素化合物(A)、加水分解物(B)、及び縮合反応物(C)におけるORは、前記加水分解性基と同義であり、好適な範囲についても同様である。
前記珪素化合物(A)及び加水分解物(B)において、nは1〜3の整数を示し、1〜2の整数であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。
前記加水分解物(B)において、mは1〜4−nであり、すなわち1〜3の整数を示し、2〜3の整数であることが好ましい。
前記縮合反応物(C)において、nは2以上の整数を示し、2〜30の整数であることが好ましく、3〜20の整数であることがより好ましく、3〜15の整数であることが更に好ましい。nが2の場合には2量体であり、nが3の場合には3量体となる。例えば、縮合反応物(C)において、m=1、n=2の場合、RSiO(ORとなり、より具体的には、
となる。これは、RSi(OR(前記珪素化合物(A)におけるn=1の化合物)とSi(OR(前記珪素化合物(A)におけるn=0の化合物)の縮合反応から得ることができる。
前記縮合反応物(C)において、uは0〜2n+2−mの整数を示し、1以上2n+2−m以下の整数であることが好ましく、2以上2n−m以下の整数であることがより好ましく、3以上2n−m以下の整数であることが更に好ましい。
前記縮合反応物(C)において、mは1〜2n+1の整数を示し、2以上n以下の整数であることがより好ましい。
特定シランカップリング剤としては、市販のものを通常使用できる。
上記珪素化合物(A)の具体的としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又は3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
また、SC−6000KS2に代表される珪素化合物(日立化成コーテットサンド株式会社製)等も具体例として挙げられる。
これらシランカップリング剤は単独又は2種類以上を併用することもできる。
中でも、高い熱伝導率が得られる観点から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又は3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましく用いられる。さらに、より高い熱伝導率を得られる観点から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、又は3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランであることが特に好ましい。
前記加水分解物(B)の具体的としては、前記珪素化合物(A)の加水分解物などが挙げられる。中でも、高い熱伝導率を得る観点から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又は3−メルカプトトリエトキシシランの加水分解物が好ましく用いられる。さらに、より高い熱伝導率を得られる観点から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又は3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物であることが特に好ましい。
前記縮合反応物(C)の具体的としては、上記加水分解物(B)の縮合反応物などが挙げられる。中でも、高い熱伝導率を得る観点から3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又は3−メルカプトトリエトキシシランの加水分解物の縮合反応物が好ましく用いられる。さらに、より高い熱伝導率を得られる観点から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又は3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物の縮合反応物であることが特に好ましい。
加水分解物(B)及びその加水分解物の縮合反応物(C)は、珪素化合物(A)を公知の方法で加水分解することで得られる。酸性触媒の存在下、塩基性触媒の存在下または触媒の非存在下で、かつ溶媒の存在下または非存在下で、前記珪素化合物(A)と水を混合することで、前記珪素化合物(A)を加水分解することができる。
加水分解時の温度は室温から溶媒の沸点までの間で選択でき、加水分解の時間は1時間から1000時間の間で、加水分解・重縮合の進行に応じて任意に選択するとよい。また、加水分解時は攪拌することが好ましい。
前記加水分解において、珪素化合物(A)の配合量は、溶媒に対して1〜300質量%となるように加えるのが好ましい。
珪素化合物(A)の加水分解性基を全て加水分解させる場合、珪素化合物(A)の加水分解性基に対して、HO分子が当量となるように加えることが水の配合量の目安となる。例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(236.3g/mol)を236.3g配合した場合は、水の配合量は54.0gが目安となる。ただし、珪素化合物(A)の加水分解性基を全て加水分解させない場合でも、縮合反応は進行するため、前記目安量の30〜100%が好ましく、40〜100%がさらに好ましく、50〜100%がさらに好ましい。
前記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール;酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等の極性溶媒;または低級アルコールと極性溶媒の混合溶媒、が好ましい。
前記酸触媒としては、無機酸も有機酸も好都合に使用でき、無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、ほう酸などが好ましく、また有機酸としては、ギ酸、酢酸、修酸、およびp−トルエンスルホン酸などが好ましく用いられる。その触媒量は、珪素化合物(A)に対して、通常1ppm〜5%程度が好ましく採用される。前記範囲の量で添加すれば触媒としての機能は充分である。
前記塩基性触媒としては、例えば、KOH、CsOH、KO、KNH、(CHNOH、(n−CPOHなどを用いることができる。
なお、珪素化合物(A)は保存期間中に空気中の水分と反応して加水分解する場合もあり、その場合は加水分解物(B)として存在する。更に加水分解物(B)が縮合反応して縮合反応物(C)として存在する場合もある。
本発明における特定シランカップリング剤は、珪素化合物(A)、加水分解物(B)及び縮合反応物(C)のいずれかを単独で、又はこれらの2種類以上を併用することもできる。
樹脂シートに含まれるシランカップリング剤の含有率は、下記式を目安に調整される。
シランカップリグ剤の含有率[質量%]=絶縁性無機フィラーの含有率[質量%]×フィラーの比表面積[m/g]/シランカップリング剤の最小被覆面積[m/g]
例えば、最小被覆面積が280のm/gのシランカップリング剤は、比表面積が0.6m/gで好ましい含有量が48質量%〜99質量%のアルミナフィラーを含む樹脂シートに処理するには、0.1〜0.2質量%の含有量が目安量となる。この目安量はフィラー表面をシランカップリング剤が全て覆いつくす場合に、シランカップリング剤による単層の処理層を形成させる量となる。しかし、フィラーの表面に単層のシランカップリング剤と反応するだけの水酸基等の極性基がない場合があるために、この目安量で処理した時はフィラーと反応しない未反応のシランカップリング剤が生じる場合がある。フィラーと結合しないシランカップリング剤は、フィラーと熱伝導性絶縁樹脂との結合や熱伝導性絶縁樹脂の架橋を阻害するため、熱伝導率を低下させうる。
そのため、シランカップリング剤の含有量は、前記目安量以下が望ましく、前記目安量の10質量%〜100質量%であることが好ましく、30質量%〜85質量%であることがより好ましく、50質量%〜75質量%であることが更に好ましい。例えば、最小被覆面積が280m/gのシランカップリグ剤は、比表面積の0.6m/g及び好ましい含有量が48質量%〜99質量%のアルミナフィラーを含む樹脂シートに処理するには、0.01〜0.2質量%の含有量が好ましく、先の理由により、0.03〜0.17質量%の含有量がさらに好ましく、0.05〜0.15質量%がより好ましい。
フィラーの比表面積は算出して得てもよく、フィラーを真球と仮定し、平均粒径からフィラーの表面積[m]と体積[cm]を求める。次いで、フィラーの比重[g/cm]に体積[cm]をかけてフィラーの質量[g]を求め、フィラーの表面積[m]を質量[g]で除して比表面積[m/g]を求めることができる。さらに、異なる平均粒径のフィラーに対して求めた比表面積を、それらフィラーの含有比率で重み付けをした平均をとることで、フィラー全体の比表面積を求めることができる。
シランカップリング剤の最小被覆面積は算出して得てもよく、RSi(ORの酸素原子Oを結んだ面積の13×10−20[m]とアボガドロ定数6.02×1023[mol−1]をかけ、さらにシランカップリング剤の分子量[g/mol]で除すことで最小被覆面積[m/g]が求められる。
樹脂組成物シート中のシランカップリング剤(加水分解物および縮合反応物を含む)の存在は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)により評価することができ、ヘッドスペース−GC/MS、加熱脱着−GC/MS、熱分解−GC/MSを用いることができる。また、樹脂組成物シートを溶媒等により溶解し、液体クロマトグラフや核磁気共鳴法(NMR)によって珪素化合物の縮合物および加水分解物の存在を確かめてもよい。
(エポキシ樹脂)
本発明におけるエポキシ樹脂は、分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能のエポキシ樹脂の少なくとも1種を含有することが好ましい。前記エポキシ樹脂は、少なくとも分子内に2個以上の6員環構造を含み、2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限はない。
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、オルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂、トリスフェノールメタンノボラック型フェノール樹脂等の多価フェノール及び1,4−ブタンジオール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル;アミン、アミド、又は複素環式窒素塩基を有する化合物のN−グリシジル誘導体;及び脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記エポキシ系樹脂のなかでも、樹脂そのものの熱伝導率が向上し、加熱時の溶融粘度が小さくなることから、ビフェニル構造などに代表されるメソゲン骨格を有するエポキシモノマー又はその重合体が好ましい。
本発明におけるメソゲン骨格とは、液晶性を発現する可能性のある官能基を示す。具体的には、ビフェニル、フェニルベンゾエート、アゾベンゼン、スチルベン等やその誘導体が挙げられ、『液晶便覧』(丸善 液晶便覧返信委員会編2000年出版)に記載されている下記一般式(A)が挙げられる。
一般式(A)中、環1、環2及び環3で表される環構造は、各々独立に、

の中から選択され、結合基X1及びX2は、各々独立に、単結合、
又は、これらを二つ以上組み合わせた連結基であり、Y1、Y2及びY3は、各々独立に、−R、−OR(Rは炭素数1〜8の脂肪族炭化水素を表す)、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−NO、又は−CO−CHを表し、n、m及びlは各々独立に0〜4の整数を表す。
メソゲン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニレン型エポキシ樹脂、ビキシレニル型エポキシ樹脂、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン、又は1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−ベンゼンなどが好ましく、融点及び硬化物の熱伝導率の観点から、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセンがより好ましい。かかるエポキシ化合物は、例えば前述の特許文献1に記載の方法により製造することができる。
好ましく用いられるエポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂やビフェニレン型エポキシ樹脂を挙げることができる。
前記ビフェニル型エポキシ樹脂としては、下記一般式(III)で表されるエポキシ樹脂等を用いることが好ましい。
一般式(III)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は、炭素数1〜10の置換もしくは非置換の炭化水素基を表し、nは0〜3の整数を表わす。
炭素数1〜10の置換もしくは非置換の炭化水素基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等を挙げることができる。なかでもR〜Rは、各々独立に水素原子又はメチル基が好ましい。
上記一般式(III)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノール又は4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。このような化合物としてはYX−4000(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、YL−6121H(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、YSLV−80XY(東都化成株式会社製)等が市販品として入手可能である。
また前記ビフェニレン型エポキシ樹脂としては、下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂等を挙げることができる。
一般式(IV)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、nは0〜10の整数を示す。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等を挙げることができる。炭素数1〜10のアルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。炭素数6〜10のアリール基としては例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等を挙げることができる。また炭素数7〜10のアラルキル基としては例えば、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。なかでもR〜Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基が好ましい。
上記一般式(IV)で示されるビフェニレン型エポキシ樹脂としては、例えば、NC−3000(日本化薬株式会社製商品名)が市販品として入手可能である。
本発明における分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能エポキシ樹脂としては、熱伝導率、電気絶縁性及び後述するBステージシートの可とう性の観点から、前記一般式(III)又は一般式(IV)で表される化合物の少なくとも1種を含むことが好ましく、一般式(III)で表される化合物の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
本発明の樹脂組成物シートの全固形分における前記分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能エポキシ樹脂の含有率としては、特に制限はないが、熱伝導率、電気絶縁性及びBステージシートの可とう性の観点から、1質量%〜15質量%が好ましく、2質量%〜12質量%であることがより好ましく、3質量%〜10質量%であることが更に好ましい。
また、エポキシ系樹脂は、エポキシモノマーであっても、エポキシモノマーを硬化剤などにより重合させ部分的に反応させたプレポリマの状態であってもよい。メソゲン骨格を持つ樹脂は一般に結晶化しやすく、溶媒への溶解度も低いものが多いため、一部重合させることで結晶化を抑制することができるため、成形性が向上する場合がある。
本発明の樹脂組成物シートは、前記分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能エポキシ樹脂に加えて、その他のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。その他のエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能エポキシ樹脂以外であれば、従来公知のエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる。
具体的には例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものが挙げられる。
また、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を含有するフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物シートは、Bステージシートにおける可とう性の観点から、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の樹脂組成物シートが、その他のエポキシ樹脂を含む場合、その含有率には特に制限はないが、例えば、前記分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能エポキシ樹脂に対して1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、3〜15質量%であることが更に好ましい。かかる含有率であることで熱伝導率、電気絶縁性及びBステージシートの可とう性がより効果的に向上する。
(フェノール樹脂)
本発明の樹脂組成物シートは、フェノール樹脂の少なくとも1種を含有する。前記フェノール樹脂として、下記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物の少なくとも1種を含むフェノール樹脂(以下、「ノボラック樹脂」ということがある)を含むことが好ましい。前記フェノール樹脂は、例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する。
特定の構造を有するフェノール樹脂を含むことで、熱伝導率が効果的に向上し、更に硬化前の状態における可使時間を十分に長くすることができる。
上記一般式(I)においてRは、各々独立にアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rで表されるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、可能であれば置換基を更に有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、及び水酸基等を挙げることができる。
mは0〜2の整数を表し、mが2の場合、2つのRは同一であっても異なってもよい。本発明において、mは0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nは1〜10の整数を表し、1〜8であることが好ましく、1〜7であることがより好ましい。
一般式(I)においてR及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、フェニル基又はアラルキル基を表す。R及びRで表されるアルキル基、フェニル基、アリール基及びアラルキル基は、可能であれば置換基を更に有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、及び水酸基等を挙げることができる。
本発明におけるR及びRとしては、保存安定性と熱伝導率の観点から、水素原子、アルキル基、又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
更に耐熱性の観点から、R及びRの少なくとも一方はアリール基であることもまた好ましい。
本発明におけるフェノール樹脂は、上記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物を、1種単独で含んでもよく、また2種以上を含んでもよい。
上記一般式(I)で表されるフェノール樹脂は、フェノール性化合物としてレゾルシノールに由来する部分構造を含むが、レゾルシノール以外のフェノール性化合物に由来する部分構造の少なくとも1種を更に含んでいてもよい。レゾルシノール以外のフェノール性化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン等を挙げることができる。前記フェノール樹脂は、これらに由来する部分構造を1種単独で、又は2種以上の組み合わせで含んでいてもよい。
ここでフェノール性化合物に由来する部分構造とは、フェノール性化合物のベンゼン環部分から水素原子を1個又は2個取り除いて構成される1価又は2価の基を意味する。尚、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
本発明においてレゾルシノール以外のフェノール性化合物に由来する部分構造としては、熱伝導率、接着性、保存安定性の観点から、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、及び、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンから選ばれる少なくとも1種に由来する部分構造であることが好ましく、カテコール及びヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種に由来する部分構造であることがより好ましい。
また前記フェノール樹脂におけるレゾルシノールに由来する部分構造の含有比率については特に制限はないが、熱伝導率と保存安定性の観点から、フェノール樹脂の全質量に対するレゾルシノールに由来する部分構造の含有比率が30質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
本発明におけるフェノール樹脂として、具体的には、以下に示す一般式(Ia)〜一般式(If)のいずれかで表される部分構造を有する化合物を含むフェノール樹脂であることが好ましい。
本発明におけるフェノール樹脂は、上記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物は、下記一般式(II)で表される化合物の少なくとも1種であることも好ましい。
一般式(II)中、R11は水素原子又は下記一般式(IIp)で表されるフェノール性化合物に由来する1価の基を表し、R12はフェノール性化合物に由来する1価の基を表す。また、R、R、R、m及びnは、一般式(I)におけるR、R、R、m及びnとそれぞれ同義である。
一般式(IIp)中、pは1〜3の整数を表わす。また、R、R、R、およびmは、一般式(I)におけるR、R、R、およびmとそれぞれ同義である。
11及びR12で表されるフェノール性化合物に由来する1価の基は、フェノール性化合物のベンゼン環部分から水素原子を1個取り除いて構成される1価の基であり、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
11及びR12におけるフェノール性化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されない。具体的には例えば、フェノール、クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等を挙げることができる。中でも熱伝導率と保存安定性の観点から、クレゾール、カテコール、レゾルシノールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物シートにおいて、上記一般式(I)で表される構造単位を有する化合物を含むフェノール樹脂は、フェノール樹脂を構成するフェノール性化合物であるモノマーを含んでいてもよい。フェノール樹脂を構成するフェノール性化合物であるモノマーの含有比率(以下、「モノマー含有比率」ということがある)としては特に制限はないが、5〜80質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましい。
モノマー含有比率が5質量%以上であることで、フェノール樹脂の粘度上昇を抑制し、無機充填剤の密着性がより向上する。また80質量%以下であることで、硬化の際における架橋反応により、より高密度な高次構造が形成され、優れた熱伝導率と耐熱性が達成できる。
尚、フェノール樹脂を構成するフェノール性化合物のモノマーとしては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノンを挙げることができ、少なくともレゾルシノールをモノマーとして含むことが好ましい。
また本発明の樹脂組成物シートにおける前記フェノール樹脂の含有比率としては、特に制限はないが、熱伝導率、電気絶縁性、Bステージシートの可とう性及び可使時間の観点から、1質量%〜15質量%であることが好ましく、2質量%〜10質量%であることがより好ましい。
また本発明の樹脂組成物シートにおける前記分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能エポキシ樹脂と前記フェノール樹脂の含有比(エポキシ樹脂/フェノール樹脂)としては例えば、当量比基準で、0.6〜1.5とすることができ、熱伝導率、Bステージシートの可とう性及び可使時間の観点から、0.8〜1.2であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物シートは、前記フェノール樹脂に加え、必要に応じて、フェノール樹脂以外のその他の硬化剤を含んでいてもよい。その他の硬化剤としては従来公知の硬化剤を特に制限なく用いることができる。具体的には例えば、アミン系硬化剤、メルカプタン系硬化剤などの重付加型硬化剤や、イミダゾールなどの潜在性硬化剤などを用いることができる。
(絶縁性無機フィラー)
本発明の樹脂組成物シートに含まれる絶縁性無機フィラーは、絶縁性の無機フィラーであれば特に制限されない。好ましくは、1W/mK以上の熱伝導率を有するものであり、具体的には、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、フッ化アルミニウム、又はフッ化カルシウムから選択される。これらのうち、一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
更に好ましくは、10W/mK以上の熱伝導率を有する無機セラミックであり、具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、フッ化アルミニウムから選択される。そのなかでも、1016Ωcm以上の体積抵抗率を有する、酸化アルミニウム(アルミナ)がより好ましい。
これらは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。
特定シランカップリング剤との水素結合、共有結合の観点から、絶縁性無機フィラーの表面には水酸基等の極性基が存在することが好ましい。中でも、シランカップリング剤のシラノール基と共有結合できるという観点から、水酸基であることが好ましい。この場合、本発明におけるシランカップリング剤の非加水分解性基はエポキシ基、2級又は3級アミノ基を含む有機基であることが好ましい。
絶縁性無機フィラーの粒子径は特に制限されない。
絶縁性無機フィラーが高密度に充填されて高い熱伝導性を示し、電気絶縁性を高める観点からは、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が7μm〜25μmである第1の絶縁性無機フィラー群、前記粒子径D50が1μm以上7μm未満である第2の絶縁性無機フィラー群、及び、前記粒子径D50が1μm未満である第3の絶縁性無機フィラー群の少なくとも3種の絶縁性無機フィラーを含むことが好適である。
第1から第3の絶縁性無機フィラー群を含有する樹脂組成物シートから、絶縁性無機フィラーを抽出したとき、得られる絶縁性無機フィラーの粒子径分布は、第1から第3の絶縁性無機フィラー群にそれぞれ対応する少なくとも3つのピークを有する。また、それぞれのピークのピーク面積は、それぞれの絶縁性無機フィラーの含有率に応じたものとなっている。
本発明において絶縁性無機フィラーの粒子径D50は、レーザー回折法を用いて測定され、重量累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合に、重量累積が50%となる粒子径に対応する。
レーザー回折法を用いた粒度分布測定は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、LS230)を用いて行なうことができる。測定用のフィラー溶液の調製は、有機溶剤のスラリーの場合は同じ有機溶剤で装置の感度上適切な光量となるよう希釈し、粉体の場合は粉末を0.1質量%のメタりん酸ナトリウム水溶液に投入し、超音波分散させ、装置の感度上適切な光量となる濃度で測定する。
前記第1の絶縁性無機フィラー群は、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が7μm以上25μm以下であることが好ましく、熱伝導率と電気絶縁性の観点から、10μm以上22μm以下であることがより好ましく、シートの平坦性を保つ観点から、15μm以上20μm以下であることが更に好ましい。
また樹脂組成物シートに含まれる絶縁性無機フィラーの総質量中における第1の絶縁性無機フィラー群の含有率は、60質量%以上80質量%以下であることが好ましく、熱伝導率と電気絶縁性の観点から、60質量%以上78質量%以下であることがより好ましく、62質量%以上75質量%以下であることが更に好ましい。
また前記第2の絶縁性無機フィラー群は、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が1μm以上7μm未満であることが好ましく、熱伝導率と電気絶縁性の観点から、2μm以上6μm以下であることがより好ましく、シート中の空隙を低減する観点から、3μm以上5μm以下であることが更に好ましい。
樹脂組成物シートに含まれる絶縁性無機フィラーの総質量中における第2の絶縁性無機フィラー群の含有率は、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、熱伝導率と電気絶縁性の観点から、8質量%以上27質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上25質量%以下であることが更に好ましい。
前記第3の絶縁性無機フィラー群は、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が1μm未満であることが好ましく、熱伝導率と電気絶縁性の観点から、0.1μm以上0.8μm以下であることがより好ましく、シート中の空隙を低減させる観点から、0.2μm以上0.6μm以下であることが更に好ましい。
また樹脂組成物シートに含まれる絶縁性無機フィラーの総質量中における第3の絶縁性無機フィラー群の含有率は、1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、熱伝導率と電気絶縁性の観点から、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上15質量%以下であることが更に好ましい。
また本発明において前記第3の絶縁性無機フィラー群に対する前記第2の絶縁性無機フィラー群の含有比率(第2の絶縁性無機フィラー群/第3の絶縁性無機フィラー群)は、1.0以上1.7以下であることが好ましく、熱伝導率と電気絶縁性の観点から、1.05以上1.65以下であることがより好ましく、シート中の空隙を低減させる観点から、1.1以上1.6以下であることが更に好ましい。
前記第2の絶縁性無機フィラー群に対する前記第1の絶縁性無機フィラー群の含有比率(第1の絶縁性無機フィラー群/第2の絶縁性無機フィラー群)は、熱伝導率と電気絶縁性の観点から、2.0以上7.0以下であることが好ましく、シート中の空隙を低減させる観点から、2.5以上6.0以下であることがより好ましい。
本発明における絶縁性無機フィラーは、熱伝導率、電気絶縁性、及びシート可とう性の観点から、粒子径D50が10μm以上22μm以下の第1の絶縁性無機フィラー群を60質量%以上78質量%以下含み、且つ粒子径D50が2μm以上6μm以下の第2の絶縁性無機フィラー群を8質量%以上27質量%以下含み、且つ粒子径D50が0.1μm以上0.8μm以下の第3の絶縁性無機フィラー群を5質量%以上20質量%以下含み、前記第3の絶縁性無機フィラー群に対する前記第2の絶縁性無機フィラー群の含有比率が1.05以上1.65以下であることが好ましい。
更に、粒子径D50が15μm以上20μm以下の第1の絶縁性無機フィラー群を62質量%以上75質量%以下含み、且つ粒子径D50が3μm以上5μm以下の第2の絶縁性無機フィラー群を10質量%以上25質量%以下含み、且つ粒子径D50が0.2μm以上0.6μm以下の第3の絶縁性無機フィラー群を10質量%以上15質量%以下含み、前記第3の絶縁性無機フィラー群に対する前記第2の絶縁性無機フィラー群の含有比率が1.1以上1.6以下であることがより好ましい。
なお、前記第1の絶縁性無機フィラー群および第2の絶縁性無機フィラー群がアルミナフィラーである場合は、α−アルミナの単結晶粒子からなるアルミナフィラーであることが更に好ましい。
一方、前記第3の絶縁性無機フィラー群が、アルミナフィラーである場合は、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、又はθ−アルミナであることが好ましく、熱伝導率が高く、融点が高く、機械的強度が高く、且つ電気絶縁性に優れる点から、α−アルミナであることがより好ましく、α−アルミナの単結晶粒子からなるアルミナフィラーであることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物シートに含まれる絶縁性無機フィラーの含有率には特に制限はないが、樹脂組成物シートを構成する全固形分中、40vol%以上82vol%以下とすることができ、熱伝導率、電気絶縁性、及びシート可とう性の観点から、50vol%以上80vol%以下がより好ましく、55vol%以上77vol以下であることが更に好ましい。絶縁性無機フィラーの総体積が40vol%以上の場合には優れた熱伝導率を示し、82vol%以下の場合にはシート状物の形成性に優れる。
尚、樹脂組成物シート中の全固形分とは、樹脂組成物シートを構成する成分から揮発性の成分を除去した残分を意味する。
前記第1から第3の絶縁性無機フィラー群としては、市販のものから適宜選択することができる。また、例えば遷移アルミナ又は熱処理することにより遷移アルミナとなるアルミナフィラーを、塩化水素を含有する雰囲気ガス中で焼成すること(例えば、特開平6−191833号公報、特開平6−191836号公報等参照)により製造したものであってもよい。
本発明の樹脂組成物シートは、前記第1から第3の絶縁性無機フィラー群に加えて、アルミナを主成分とし、その数平均繊維径が1μm〜50μmである無機繊維を含んでいてもよい。本発明において「アルミナを主成分とする無機繊維」とは、アルミナを41vol%以上含む無機繊維を意味する。なかでも、アルミナを58vol%以上含む無機繊維であることが好ましく、アルミナを74vol%以上含む無機繊維であることがより好ましい。かかる無機繊維の数平均繊維径は、1μm〜50μmであるが、好ましくは1μm〜30μmであり、より好ましくは1μm〜20μmである。また、かかる無機繊維の繊維長は、通常0.1mm〜100mmである。
かかる無機繊維としては、通常、市販されているものが使用され、具体的には、アルテックス(住友化学株式会社製)、デンカアルセン(電気化学工業株式会社製)、マフテックバルクファイバー(三菱化学産資株式会社製)等が挙げられる。
かかる無機繊維を用いる場合のその使用量は、前記第1から第3の絶縁性無機フィラー群の質量に対して、通常4vol%〜58vol%、好ましくは4vol%〜41vol%であり、絶縁性無機フィラーと無機繊維の合計質量が、樹脂組成物シートの固形分中、通常30〜95質量%となる量が用いられる。
本発明の樹脂組成物シートは前記絶縁性無機フィラーに加えて、必要に応じて絶縁性無機フィラー以外の無機充填材を更に含んでいてもよい。導電性の充填材として、金、銀、ニッケル、銅等を挙げることができる。これらの無機充填材は、1種単独で用いても、又は2種以上を併用してもよい。
(その他成分)
本発明の樹脂組成物シートは上記必須成分に加えて、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては例えば、溶剤、分散剤、沈降防止剤等を挙げることができる。
前記溶剤としては樹脂組成物シートの硬化反応を阻害しないものであれば特に制限なく、通常用いられる有機溶剤を適宜選択して用いることができる。
本発明の樹脂組成物シートには、分散剤を添加することができ、分散剤としては絶縁性無機フィラーの分散に効果のある市販の分散剤を通常使用できる。例えば、味の素ファインテック株式会社製アジスパーシリーズ、楠本化成株式会社製HIPLAADシリーズ、株式会社花王製ホモゲノールシリーズ等が挙げられる。これら分散剤は二種類以上を併用することができる。
(樹脂組成物)
本発明では、樹脂組成物を用いて樹脂組成物シートを形成してもよい。樹脂組成物は、前記分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能のエポキシ樹脂と、前記フェノール樹脂と、前記絶縁性無機フィラーと、非加水分解性基及び加水分解性基又は該加水分解性基が加水分解した水酸基を有するシランカップリング剤とを含む。そして、前記シランカップリング剤における前記非加水分解性基は、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子の中の少なくとも一つを含む有機基である。
(樹脂組成物シート(Bステージ)の作製方法)
本発明の樹脂組成物シートは、半硬化状態(Bステージ)のシート状物である。この半硬化状態(Bステージ)の樹脂組成物シートが、配線板材料や配線板中に用いられ本硬化されると、熱伝導性絶縁層となる。
樹脂組成物シートは、前記樹脂組成物を支持基材(塗工基材)上に付与してシート状の塗工物を形成し、これを半硬化状態(Bステージ)となるまで加熱することで作製される。
前記樹脂組成物の付与方法は特に制限されないが、大面積で形成する場合には塗布が好ましい。塗布は、公知の方法により実施することができる。塗布方法として、具体的には、コンマコート、ダイコート、リップコート、グラビアコート等の方法が挙げられる。所定の厚みに樹脂層を形成するための塗布方法としては、ギャップ間に被塗工物を通過させるコンマコート法、ノズルから流量を調整した樹脂ワニスを塗布するダイコート法等を適用することができる。その他、リップコートやグラビアコート等が挙げられる。
塗布する際に粘度調整のために前記樹脂組成物に溶剤を加えてもよい。樹脂組成物が含む溶剤としては、特に限定されるものではなく、メチルエチルケトンやアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、ジメチルアセトアミド、イソプロパノール、メタノール、エタノール等を用いることができる。
塗工基材は特に限定されないが、メタルベース配線板材料を作製するときには除去されるため、安価なプラスチック基材が好ましい。プラスチック基材に用いられる樹脂としては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂などの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。プラスチック基材の厚みは、0.01mm〜5mmが取扱い性の観点から好ましい。樹脂組成物シートの剥離性を向上させるためにプラスチック基材の表面に離型層が形成されていてもよい。
得られた前記塗工物は、半硬化のための加熱に先立ち、乾燥させてもよい。乾燥温度および乾燥時間は、塗工物に含まれる有機溶剤の種類に応じて適宜調整することが好ましい。乾燥温度や乾燥時間を調整することで、有機溶媒の蒸発速度と、絶縁性無機フィラーの塗工基材側への沈降速度との調整により、得られる樹脂組成物シート表面を平滑化することも可能である。
具体的には、乾燥温度は30℃〜90℃とすることが好ましく、40℃〜100℃とすることがより好ましく、50℃〜110℃とすることが更に好ましい。また、乾燥時間は0.2〜60分間とすることが好ましく、0.5〜40分間とすることがより好ましく、1〜30分間とすることが更に好ましい。
得られた塗工物を半硬化状態(Bステージ)となるまで加熱する。ここで「半硬化状態(Bステージ)」とは、最低溶融粘度として、常温においては10〜10Pa・sであるのに対して、80℃〜200℃の範囲で10〜10Pa・sまで粘度が低下する状態にあることをいう。なお、本硬化後のCステージのシート(熱伝導性絶縁層)では、加温によって溶融することは無い。
上記最低溶融粘度とは、末端変性イミドオリゴマーの溶融粘度は温度上昇による粘度低下と硬化反応による粘度の上昇により最小値をとり、この最小値を意味する。樹脂組成物シートの最低溶融粘度の測定方法は後述する。
半硬化のための加熱温度及び加熱時間は、前記塗工物に含まれる有機溶剤の種類や量に応じて適宜調整することが好ましい。具体的には、半硬化のための加熱温度は70℃〜160℃とすることが好ましく、80℃〜150℃とすることがより好ましく、90℃〜140℃とすることが更に好ましい。また、半硬化のための加熱時間は0.2〜60分間とすることが好ましく、0.5〜40分間とすることがより好ましく、1〜30分間とすることが更に好ましい。
樹脂組成物シート(Bステージシート)中の有機溶媒の含有量は、基材上に付与する前の樹脂組成物中の含有量の40%以下に減少していることが、本硬化後(Cステージシート)の熱伝導性絶縁層での空隙や気泡の発生を抑える観点から好ましい。
なお、得られた樹脂組成物シートは、単層であってもよく、また2枚の樹脂組成物シートを互いに貼り合わせたもの、あるいは3枚以上の樹脂組成物シートを積層したものであってもよい。2枚以上の樹脂組成物シートの貼り合せは、ラミネータやプレス機などの公知の方法を用いて実施してもよく、その際に加熱することで半硬化状態(Bステージ)にしてもよい。
このように2枚以上の樹脂組成物シートを貼り合せることで、樹脂組成物シートどうしは馴染みが良好であるために樹脂組成物シート同士を接合でき、単一の樹脂組成物シートを形成することができる。よって、例えば、樹脂組成物シートの片面の表面粗さが粗い場合、あるいは、凹凸が形成されている場合、その面を互いに貼り合せることで、平坦化させることができる。
樹脂組成物シートの貼り合せは、好ましくは、70℃〜160℃、より好ましくは80℃〜150℃、更に好ましくは、90℃〜140℃で加熱して行うことが好ましい。
また、貼り合わせの圧力は、好ましくは0.05MPa〜1MPa、より好ましくは0.1MPa〜0.6MPa、更に好ましくは0.2MPa〜0.4MPaである。
更に、得られた樹脂組成物シートは、表面の平滑化処理により、表面粗さを低下させてもよい。平滑化の方法としては、例えば、ラミネータやプレス機などの公知の方法などが挙げられる。平滑化により、加圧によって樹脂組成物シートをわずかに流動させ、シート表面凹凸を消失させてもよい。平滑化の際に樹脂組成物シートに接触させる部材は平滑であることが望ましい。その部材の平滑性が樹脂組成物シートの平滑性に影響するためである。例えば、樹脂組成物シートに表面の平滑なプラスチックシートを接触させてもよく、同時に樹脂組成物シートがラミネータやプレス機に貼り付くことを防止してもよい。また、加圧の際に樹脂組成物シートを加熱し、樹脂組成物の流動性を向上させてもよい。この平滑化の工程において、加熱することで半硬化状態(Bステージ)にしてもよい。
樹脂組成物シートの表面の平滑化を真空ラミネータにより行う場合、真空度は、0.01kPa〜20kPaが好ましく、0.03kPa〜10kPaがより好ましく、0.1kPa〜5kPaが更に好ましい。
真空ラミネータの加熱温度は、70℃〜170℃が好ましく、80℃〜160℃がより好ましく、90℃〜150℃が更に好ましい。
真空ラミネータの圧力は、好ましくは0.1MPa〜3MPa、より好ましくは0.3MPa〜2MPa、更に好ましくは0.6MPa〜1.5MPaである。
(樹脂組成物シート(Bステージ)の物性)
樹脂組成物シートの最低溶融粘度は、BステージからCステージとする加圧加熱工程での樹脂組成物の流動性に影響する。そのため、加圧加熱工程で加えられる温度範囲20℃〜200℃における最低溶融粘度を調整することが、取り扱い性や、端部からの樹脂組成物シートの流出を押さえる観点から望ましい。
樹脂組成物シートの最低溶融粘度は、ずり粘弾性の温度依存性を測定した際に、温度上昇による粘度低下と硬化反応による粘度増加によって現れる最小値である。
ずり粘弾性を測定する条件の例として、昇温速度5℃/min(プレスの昇温速度)、周波数1〜10Hzが挙げられ、シートをはさむ測定冶具は円形の平板が挙げられる。サンプルは、必要に応じて樹脂組成物シートを積層したものを用いてもよい。
樹脂組成物シートの20℃〜200℃における最低溶融粘度(ずり粘度)は、10〜1000Pa・sであることが好ましく、20〜800Pa・sであることがより好ましく、30〜600Pa・sであることが更に好ましい。最低溶融粘度が低すぎると熱伝導性絶縁層の厚みばらつきが発生し、最低溶融粘度が高すぎると熱伝導性絶縁層が銅箔や金属基板等の被着体に十分に密着しなくなり、接着力の低下や絶縁破壊電圧の低下が発生する。よって、20℃〜200℃における最低溶融粘度が上記範囲内にあると、加熱時に優れた流動性を示し、凹凸構造を有する被着体に対しても追従するため、本硬化後に高い接着力を示す。
本発明の樹脂組成物シート(Bステージシート)の厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平均厚みは20μm〜500μmが好ましく、25μm〜400μmがより好ましく、熱伝導率、電気絶縁性及びシート可とう性の観点から、30μm〜300μmであることが好ましい。20μm以上の場合は電気絶縁性に優れ、500μm以下の場合は熱抵抗の増大が抑えられる。
<金属箔付樹脂組成物シート(Bステージシート)>
金属箔付樹脂組成物シートは、前記樹脂組成物シートに金属箔を貼付したものである。より具体的には、樹脂組成物シートに金属箔をラミネータやプレス機等を用いて公知の方法で貼り合せ、金属箔付樹脂組成物シートを作製することができる。また、金属箔付樹脂組成物シートは、金属箔を基材として樹脂組成物を付与して塗工物を形成し、半硬化状態(Bステージ)まで加熱することで作製することができる。
金属箔としては、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、クロム、又はそれらを含む合金のいずれかの材質からなる金属箔を用いることができる。また、金属箔の層構造は1層に限らず、2〜3層の複合箔を用いることもできる。低コストと電気伝導率の高さを望む場合、銅箔を用いることが望ましい。
配線層を形成するための金属箔の厚みは3μm〜110μmであることが好ましく、5μm〜90μmであることがより好ましく、9μm〜70μmであることが更に好ましい。3μm以上の場合には取扱いに優れ、わずかな力で折れるのを防ぐことができる。また、110μm以下の場合には、高価な金属箔の使用量が抑えられる。
金属箔の取扱性を向上させるために、キャリアフィルムを貼り付けた状態で金属箔を取り扱ってもよい。そのようなキャリアフィルムとして、微粘着性の粘着フィルム、自己吸着性の粘着フィルム、UV硬化性の粘着フィルムを用いることができる。金属基板と金属箔の樹脂組成物シートによる接着工程、あるいは金属箔付樹脂組成物シートを得るための塗工工程において、金属箔にキャリアフィルムが貼り付いた状態であることで金属箔の折れ等を抑制することができる。
その他の製造方法や製造条件、樹脂組成物シートの厚みの好ましい範囲や、樹脂組成物の粘度の好ましい範囲などは、前記樹脂組成物シートに関するものと同様である。
<熱伝導性絶縁層(Cステージ)>
熱伝導性絶縁層は、後述のメタルベース配線板やメタルベース配線板材料において、金属基板と配線層又は金属箔との間を絶縁させる接着層である。前記樹脂組成物シート(Bステージ)を本硬化(Cステージ化)して熱伝導性絶縁層(Cステージ)とする。
具体的には、金属基板と金属箔の間に前述の樹脂組成物シートを挟み、プレス機等で加圧加熱することにより、金属基板と金属箔とを接着させる。半硬化状態(Bステージ)である前記樹脂組成物シートは、加圧加熱工程で再溶融し、金属基板及び金属箔に樹脂組成物シートが密着し、その後、樹脂組成物シートを本硬化(Cステージ化)して熱伝導性絶縁層(Cステージ)となり、金属基板と金属箔とが接着される。本硬化した後の熱伝導性絶縁層は、加熱によって溶融することはない。
本発明の熱伝導性絶縁層は、熱伝導性の絶縁性無機フィラーと熱伝導性の樹脂のコンポジットである。熱伝導性の絶縁性無機フィラーとしては、熱伝導率が高く絶縁性である無機セラミックを用いることが好ましい。また、熱伝導性の樹脂を用いると、より少ないフィラー含有量で熱伝導率を高めることができる。本発明では、熱伝導性の樹脂として、分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能のエポキシ樹脂を用いる。
本発明に係るエポキシ樹脂における2個以上の6員環構造は、メソゲン基となるため異方性構造を有している。熱伝導性樹脂層が内部に異方性構造を有すると、高い熱伝導率を示す。一般に、絶縁体の熱伝導は主としてフォノンによるものであり、材料中の欠陥でのフォノンの静的散乱や、分子振動や格子振動の非調和性によるフォノン同士の衝突による動的散乱によって、熱伝導率は低下する。
しかし、高分子の主鎖方向は主鎖と直角方向(分子鎖間方向)よりも熱伝導率が大きい。これは、高分子の主鎖方向は、強い共役結合で結び付けられているため、主鎖方向の振動(フォノン)の調和性が高く、また、フォノンの静的散乱を引き起こす欠陥等も分子鎖間方向よりもはるかに小さいためである。そのため、高分子の主鎖を配向させることで異方的に熱伝導率を高めることができる。高分子の主鎖の配向は、延伸、電場印加、ラビングなど公知の方法により実施される。高分子の主鎖をフィルム面の垂直方向(厚み方向)に配向させると、厚み方向での熱伝導率を高めることができる。
他方、高分子の主鎖をフィルム面の水平方向に配向させると、フィルム面内の熱伝導率を増加させることが可能となる。一方で、一般には、高分子の分子鎖間方向である垂直方向の熱伝導率は、配向させない高分子の場合よりも低下する。そのため、一般には、高分子の主鎖をフィルム面の水平方向に配向させた樹脂組成物シートでは、厚み方向での熱伝導率が小さくなる。
しかし、物質の秩序性が増大すれば、振動の調和性が増加し、欠陥も減少するために、分子鎖間方向(厚み方向)の熱伝導率も増大させることができる。ここで、物質の秩序性が最高のものは完全結晶であるが、高分子絶縁体の完全結晶は、実際上、絶縁性接着材料として適用することが不可能である。それに対して、液晶状態は結晶についで高い秩序性を有し、実現も可能である。本発明に係る分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能エポキシ樹脂は、メソゲン基を有するものであるため、主鎖方向のみならず、分子鎖間方向においても欠陥が少なく、かつ、振動の非調和性も小さい。従って、特定の配向方向に囚われることなく、大きな熱伝導性を示す。
<メタルベース配線板材料>
図1に、本発明のメタルベース配線板材料の一例の断面構造を示す。
メタルベース配線板材料は、金属箔30と、金属基板20とを有し、金属箔30と金属基板20との間に、前記樹脂組成物シートの硬化物である熱伝導性絶縁層10を備える。熱伝導性絶縁層10の配置により金属基板20と金属箔30は絶縁される。
金属基板20は、熱伝導率が高く、熱容量が大きい金属材料からなり、銅、アルミニウム、鉄、リードフレームに使われる合金などが例示できる。金属基板20が厚いほどメタルベース配線板の強度が高まるが、電子部品を搭載したメタルベース配線板が金属製シャーシ等にネジや接着性材料等によって一体化される場合は、強度が向上するために金属基板20は特に厚い必要はない。金属基板20は軽量化や加工性を優先する場合はアルミニウム、強度を優先する場合は鉄、というように目的を応じて材質を選定してもよい。
メタルベース配線板を大きなサイズで作製した後、電子部品実装後に使用するサイズにカットすることが生産性を高めるために好ましい。そのため、金属基板20はカットするための加工性が高いことが望ましい。
アルミニウムの金属基板20としては、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金を材質として選定でき、その化学組成と熱処理条件により多種類のものが入手可能であるが、高く切削しやすい等の加工性が高く、かつ強度に優れた種類を選定することが好ましい。
メタルベース配線板材料は、前記樹脂組成物シートを金属基板20と金属箔30とで挟み、プレス機等で加圧加熱する方法等により作製される。または、金属箔付樹脂組成物シートと金属基板20を加圧加熱する方法等により作製される。前記樹脂組成物シートを硬化する加熱・加圧処理の条件は、樹脂組成物シートの構成に応じて適宜選択される。例えば、加熱温度が80〜250℃で、圧力が0.5〜8.0MPaであることが好ましく、加熱温度が130〜230℃で、圧力が1.5〜5.0MPaであることがより好ましい。
なお、本発明の金属基板は金属箔も含む。金属基板としての金属箔には、銅、アルミ、鉄、ニッケル、クロム、またはそれらのいずれを少なくとも含む合金のいずれかの材質からなる金属箔を用いることができる。また、金属箔の層構造は1層に限らず、2〜3層の複合箔を用いることもできる。
<メタルベース配線板>
図2に、本発明のメタルベース配線板の一例の断面構造を示す。
メタルベース配線板は、金属基板20と配線層40とを有し、金属基板20と配線層40との間に、前記樹脂組成物シートの硬化物である熱伝導性絶縁層10を備える。熱伝導性絶縁層10の配置により金属基板20と配線層40は絶縁される。
配線層40は、メタルベース配線板材料の金属箔30を配線加工することで得られる。金属箔30の配線加工の方法としては、エッチングが工業的に好ましい。
メタルベース配線板は電子部品を搭載するためのパッド部を除き、ソルダレジストが表面に形成されていることが望ましい。メタルベース配線板材料は回路加工及びソルダレジスト形成の後に、LED光源部材のような電子部品搭載部材のサイズにカットされることが好ましい。例えば、メタルベース配線板のパッド部にはんだ等の電気接続材料を塗布し、電子部品を配置した後に、はんだリフロー工程を通すことで、電子部品が実装される。
<LED光源部材>
上述の通り、前記樹脂組成物シート、前記金属箔付樹脂組成物シート、前記メタルベース配線板材料、又は前記メタルベース配線板は、電子部材に好適に用いることができる。電子部材の一例として、図3に、電子部品としてLEDパッケージを用いたときのLED光源部材の断面構造を示す。図3に示すLED光源部材では、金属基板20と配線層40との間に熱伝導性絶縁層10を備え、配線層40に電子部品50が搭載される。このLED光源機器を用いて、LEDバックライトユニット等が作製でき、あるいはLED電灯やLED電球等を作製することができる。
LEDパッケージで発生した熱は、はんだ等の電気接続材料、金属箔30から構成されるパッド部、熱伝導性絶縁層10、金属基板20の順に伝導し、放熱させる。本発明の樹脂組成物シートの硬化物である熱伝導性絶縁層10を用いることで、パッド部から金属基板への放熱性が向上し、LEDパッケージの温度上昇を抑制することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
[実施例1]
<フェノール樹脂の合成>
攪拌機、冷却器、温度計を備えた3Lのセパラブルフラスコにレゾルシノール594g、カテコール66g、37%ホルマリン316.2g、シュウ酸15g、水100gを入れ、オイルバスで加温しながら100℃に昇温させ、この還流温度で4時間反応を続けた。その後、水を留去しながらフラスコ内の温度を170℃に昇温させ、170℃を保持しながら8時間反応を続けた。
その後減圧下、20分間濃縮を行い系内の水等を除去して、フェノール樹脂を取り出した。得られたフェノール樹脂の数平均分子量は530、重量平均分子量は930であった。樹脂の水酸基当量は65であった。上記合成により一般式(I)で表される構造単位を有するフェノール樹脂(合成品)が得られた。
<ワニス状樹脂組成物>
ポリプロピレン製の1L蓋付き容器中に、粒子径D50が18μmである絶縁性無機フィラー(住友化学株式会社製、スミコランダムAA18)を66.72g(74.0%(対絶縁性無機フィラー総質量))と、粒子径D50が3μmである絶縁性無機フィラー(住友化学株式会社製、スミコランダムAA3)を12.62g(14.0%(対絶縁性無機フィラー総質量))と、粒子径D50が0.4μmである絶縁性無機フィラー(住友化学株式会社製、スミコランダムAA04)を10.82g(12.0%(対絶縁性無機フィラー総質量))と、を秤量し、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)を0.096g、溶剤として2−ブタノン(和光純薬株式会社製)を17.34g、シクロヘキサノン(和光純薬株式会社製)を3.32g、上記合成したフェノール樹脂(一般式(I)で表される構造単位を有するノボラック樹脂)を4.91g加えて攪拌した。更にビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂(住友化学株式会社製、TM38)を7.597g、硬化触媒(北興化学工業株式会社製、TPP)を0.101g加えた。更に、直径5mmのジルコニア製ボールを500g投入し、ボールミル架台上で100rpmで48時間攪拌した後、アルミナ製ボールを濾別し、ワニス状の樹脂組成物1を得た。
<絶縁性無機フィラー粒子径>
ワニス状の樹脂組成物1の0.5gを50gのメタノールに分散し、適量をレーザー回折散乱粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、LS230)に投入し、樹脂組成物中の絶縁性無機フィラーの粒子径D50を測定した。測定結果を表1に示す。
<樹脂組成物シート>
上記で得られた樹脂組成物1を、バーコーターを用いて、PETフィルム(帝人デュポンフィルム社製、A53)上に塗布し、100℃で20分間乾燥を行なった。乾燥後の膜厚は50μmであった。乾燥後の樹脂組成物シートを向かい合わせに2枚載置し、ロールラミネーターを用い、110℃、0.3MPa、送り速度0.3m/minにて積層し、平均厚さ100μmの樹脂組成物シート(Bステージシート)を得た。得られた樹脂組成物シートは可とう性に優れていた。
<絶縁性無機フィラーの含有率>
また、樹脂組成物シート中における全絶縁性無機フィラーが占める割合を以下のように評価した。まず、樹脂組成物シートの重量を測定し、その樹脂組成物シートを400℃2時間次いで700℃3時間焼成し、樹脂分を蒸発させ、残存した絶縁性無機フィラーの質量を測定することで、絶縁性無機フィラーの樹脂組成物シート中の重量比を評価した。次いで、その絶縁性無機フィラーを水中に沈めて、水位の変化から絶縁性無機フィラーの体積を測定した。これより、絶縁性無機フィラーの比重を評価した。次いで、同様の方法で樹脂組成物シートの比重を評価した。次いで、樹脂組成物シート中の絶縁性無機フィラーの重量比を絶縁性無機フィラーの比重で除し、更に樹脂組成物シートの比重を積算した値を絶縁性無機フィラーの体積比率として評価した。評価結果を表1に示す。
<メタルベース配線板材料>
PETを剥離した500mm×600mmの樹脂組成物シートを550mm×650mmの銅箔(日本電解社製、35μm厚)の粗化面側と、500mm×600mmのアルミ基板(A5052、1mmt)の間に挟んで、真空加圧プレスを用い、3kPaの真空下で2MPa加圧にて、140℃で2時間、190℃で2時間加圧加熱し、メタルベース配線板材料を得た。
<熱伝導性絶縁層の厚さのばらつき>
熱伝導性絶縁層の厚さばらつきを、銅箔面の凹凸の有無により評価し、表1に評価結果を示した。なお、評価サンプルのメタルベース配線板材料を500mm×600mmと大きくすると、熱伝導性絶縁層のばらつきは、銅箔面の凹凸として現れる。
<電気絶縁性>
得られたメタルベース配線板材料の片面の銅箔を20mmφの丸型パターンを残し、過硫酸アンモニウム水溶液によりエッチングした。耐電圧測定装置(Tokyo TOA Electronics Ltd. Japan製、Puncture Tester PT-1011)により、50個以上の丸型パターンの絶縁破壊電圧を測定した。最も低かった絶縁破壊電圧を表1に示した。
<熱伝導率>
PETフィルムを剥離した平均厚さ100μmの樹脂組成物シート(Bステージシート)を4枚重ね、総厚み0.4mmのシートを得た。この樹脂組成物シートを2枚の銅箔(日本電解社製、35μm厚)に挟んで、真空加圧プレスを用い、3kPaの真空下で2MPa加圧にて、140℃で2時間、190℃で2時間加圧加熱した。その後、得られた試料の銅箔をエッチングし、本硬化後の熱伝導性絶縁層を得た。銅箔のエッチングには過流酸アンモニウム水溶液を用いた。得られた熱伝導性絶縁層の熱伝導率を次のようにして求めた。
熱伝導性絶縁層の熱拡散係数をレーザーフラッシュ法にて評価した。キセノンフラッシュアナライザー(NETZSCH社製NanoflashLFA447)を用いて、熱伝導性絶縁層の表面にキセノンフラッシュを照射し、熱伝導性絶縁層の裏面の温度の時間依存性を測定した。温度の時間依存性を解析することで熱伝導性絶縁層の熱拡散係数(α)を評価した。
次いで、比熱を示差走査熱量計(DSC、Perkin Elmer社製、Ryris 1)にて測定し、密度を電子比重計(アルファーミラージュ社製、SD−200L)にて測定した。そして、熱伝導率[W/mK]を次式から求めた。得られた熱伝導率を表2に示した。
熱伝導率[W/mK] = 熱拡散率(熱拡散係数(α))[mm/s]×比熱[J/kg・K]×密度[g/cm
[実施例2]
実施例1において、シランカップリング剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM573)を0.096g用いたこと以外は実施例1と同様にして、ワニス状の樹脂組成物を調製した。
次いで、実施例1と同様にして、絶縁性無機フィラー粒子径の評価、樹脂組成物シートの作製、樹脂組成物シート中の無機フィラーの体積比率の評価、メタルベース配線板材料の作製、熱伝導性絶縁層の厚さのばらつきの評価、電気絶縁性の評価を行った。評価結果を表1に示した。更に、実施例1と同様にして、熱伝導率を評価した。評価結果を表2に示した。
[実施例3]
実施例1において、シランカップリング剤として3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM803)を0.096g、用いたこと以外は実施例1と同様にして、ワニス状の樹脂組成物を調製した。
次いで、実施例1と同様にして、絶縁性無機フィラー粒子径の評価、樹脂組成物シートの作製、樹脂組成物シート中の無機フィラーの体積比率の評価、メタルベース配線板材料の作製、熱伝導性絶縁層の厚さのばらつきの評価、電気絶縁性の評価を行った。評価結果を表1に示した。更に、実施例1と同様にして、熱伝導率を評価した。評価結果を表2に示した。
[比較例1]
実施例1において、シランカップリング剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ワニス状の樹脂組成物を調製した。
次いで、実施例1と同様にして、絶縁性無機フィラー粒子径の評価、樹脂組成物シートの作製、樹脂組成物シート中の無機フィラーの体積比率の評価、メタルベース配線板材料の作製、熱伝導性絶縁層の厚さのばらつきの評価、電気絶縁性の評価を行った。評価結果を表1に示した。更に、実施例1と同様にして、熱伝導率を評価した。評価結果を表2に示した。
[比較例2]
実施例1において、シランカップリング剤としてN−プロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM3033)を0.096g、用いたこと以外は実施例1と同様にして、ワニス状の樹脂組成物を調製した。
次いで、実施例1と同様にして、絶縁性無機フィラー粒子径の評価、樹脂組成物シートの作製、樹脂組成物シート中の無機フィラーの体積比率の評価、メタルベース配線板材料の作製、熱伝導性絶縁層の厚さのばらつきの評価、電気絶縁性の評価を行った。評価結果を表1に示した。更に、実施例1と同様にして、熱伝導率を評価した。評価結果を表2に示した。
[比較例3]
実施例1において、シランカップリング剤として3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM903)を0.096g、用いたこと以外は実施例1と同様にして、ワニス状の樹脂組成物を調製した。
次いで、実施例1と同様にして、絶縁性無機フィラー粒子径の評価、樹脂組成物シートの作製、樹脂組成物シート中の無機フィラーの体積比率の評価、メタルベース配線板材料の作製、熱伝導性絶縁層の厚さのばらつきの評価、電気絶縁性の評価を行った。評価結果を表1に示した。更に、実施例1と同様にして、熱伝導率を評価した。評価結果を表2に示した。
[実施例4]
<ワニス状樹脂組成物>
ポリプロピレン製の1L蓋付き容器中に、粒子径D50が18μmである絶縁性無機フィラー(住友化学株式会社製、スミコランダムAA18)を56.80g(63%(対絶縁性無機フィラー総質量))と、粒子径D50が3μmである絶縁性無機フィラー(住友化学株式会社製、スミコランダムAA3)を20.29g(22.5%(対絶縁性無機フィラー総質量))と、粒子径D50が0.4μmである絶縁性無機フィラー(住友化学株式会社製、スミコランダムAA04)を13.07g(14.5%(対絶縁性無機フィラー総質量))と、を秤量し、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)を0.099g、溶剤として2−ブタノン(和光純薬株式会社製)を11.18g、分散剤(楠本化成株式会社製、ED−113)を0.180g、実施例1と同様にして得られたフェノール樹脂(合成品、一般式(I)で表される構造単位を有するノボラック樹脂)を5.96g加えて攪拌した。更にビフェニル骨格を有する2官能エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、YL6121H)を5.914g、ナフタレン系エポキシ樹脂(DIC株式会社製、HP4032D)を0.657g、イミダゾール化合物(四国化成工業株式会社製、2PHZ)を0.012g加えた。更に、直径5mmのジルコニア製ボールを500g投入し、ボールミル架台上で100rpmで48時間攪拌した後、ジルコニア製ボールを濾別し、ワニス状の樹脂組成物1を得た。
次いで、実施例1と同様にして、絶縁性無機フィラー粒子径の評価、樹脂組成物シートの作製、樹脂組成物シート中の無機フィラーの体積比率の評価を行い、評価結果を表3に示した。
<メタルベース配線板材料>
PETを剥離した500mm×600mmの樹脂組成物シートを550mm×650mmの銅箔(日本電解社製、35μm厚)の粗化面側と、500mm×600mmの銅箔(日本電解社製、35μm厚)の粗化面側との間に挟んで、真空加圧プレスを用い、3kPaの真空下で2MPa加圧にて、140℃で2時間、190℃で2時間加圧加熱し、メタルベース配線板材料を得た。
次いで、実施例1と同様に、熱伝導性絶縁層の厚さのばらつきの評価、電気絶縁性の評価、熱伝導率の評価を行った。評価結果を表3および表4に示した。
[比較例4]
実施例4において、シランカップリング剤を添加しなかったこと以外は実施例4と同様にして、ワニス状の樹脂組成物を調製した。
次いで、実施例4と同様にして、絶縁性無機フィラー粒子径の評価、樹脂組成物シートの作製、樹脂組成物シート中の無機フィラーの体積比率の評価、メタルベース配線板材料の作製、熱伝導性絶縁層の厚さのばらつきの評価、電気絶縁性の評価を行った。評価結果を表3に示した。更に、実施例4と同様にして、熱伝導率を評価した。評価結果を表4に示した。

上記表におけるアルミナの含有比率(質量%)は、総アルミナに対する質量比率を表す。

表中の括弧内には、信越化学工業社製シランカップリング剤の商品名を示す。

上記表におけるアルミナの含有比率(質量%)は、総アルミナに対する質量比率を表す。
上記表に示されるように、実施例1〜3の樹脂組成物シートの硬化物は、比較例1〜3に比べて、電気絶縁性及び熱伝導率に優れていることが分かる。また、実施例4の樹脂組成物シートの硬化物は、比較例4に比べて、電気絶縁性及び熱伝導率に優れていることが分かる。
10 熱伝導性絶縁層
20 金属基板
30 金属箔
40 配線層
50 電子部品

Claims (13)

  1. 分子内に2個以上の6員環構造を有する多官能のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、絶縁性無機フィラーと、非加水分解性基及び加水分解性基又は該加水分解性基が加水分解した水酸基を有するシランカップリング剤とを含み、前記非加水分解性基が、エポキシ基、2級又は3級アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一つを含む有機基である樹脂組成物シート。
  2. 前記非加水分解性基が、炭素原子よりも電気陰性度の大きい窒素原子以外の原子Aを含み、前記非加水分解性基の式量に対する前記原子Aの原子量の比率が1%〜60%である請求項1に記載の樹脂組成物シート。
  3. 前記非加水分解性基が窒素原子を含み、前記非加水分解性基の式量に対する窒素原子の原子量の比率が1%〜20%である請求項1に記載の樹脂組成物シート。
  4. 前記絶縁性無機フィラーが、固形分中、40vol%以上82vol%以下で含有される請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。
  5. 前記絶縁性無機フィラーは、重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径D50が7μm以上25μm以下である第1の絶縁性無機フィラー群、前記粒子径D50が1μm以上7μm未満である第2の絶縁性無機フィラー群、及び、前記粒子径D50が1μm未満である第3の絶縁性無機フィラー群を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。
  6. 前記第1の絶縁性無機フィラー群、第2の絶縁性無機フィラー群及び第3の絶縁性無機フィラー群の総質量中、前記第1の絶縁性無機フィラー群の含有率が60質量%以上80質量%以下であり、前記第2の絶縁性無機フィラー群の含有率が5質量%以上30質量%以下であり、且つ前記第3の絶縁性無機フィラー群の含有率が1質量%以上25質量%以下であり、前記第3の絶縁性無機フィラー群に対する前記第2の絶縁性無機フィラー群の含有比率(第2の絶縁性無機フィラー群/第3の絶縁性無機フィラー群)が、質量基準で1.0以上1.7以下である請求項5に記載の樹脂組成物シート。
  7. 前記絶縁性無機フィラーが、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、及びフッ化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種のフィラーである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。
  8. 前記フェノール樹脂が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。

    〔一般式(I)中、Rは、各々独立にアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、mは0〜2の整数を、nは1〜10の整数を表わす。〕
  9. 平均厚みが、20μm以上500μm以下である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物シートと、金属箔と、を有する金属箔付樹脂組成物シート。
  11. 金属箔と、
    金属基板と、
    前記金属箔と前記金属基板との間に、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物シートの硬化物である熱伝導性絶縁層と、
    を有するメタルベース配線板材料。
  12. 配線層と、
    金属基板と、
    前記配線層と前記金属基板との間に、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物シートの硬化物である熱伝導性絶縁層と、
    を有するメタルベース配線板。
  13. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物シート、請求項10に記載の金属箔付樹脂組成物シート、請求項11に記載のメタルベース配線板材料、又は請求項12のメタルベース配線板、のいずれか1つを用いて形成された電子部材。
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