JP6836730B2 - スピネル粒子の製造方法、樹脂組成物の製造方法および成形物の製造方法 - Google Patents

スピネル粒子の製造方法、樹脂組成物の製造方法および成形物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スピネル粒子の製造方法、樹脂組成物の製造方法および成形物の製造方法に関する。
従来、機器の小型軽量化、高性能化が求められ、これに伴い半導体デバイスの高集積化、大容量化が進んでいる。このため、機器の構成部材に生じる発熱量が増大しており、機器の放熱機能の向上が求められている。
機器の放熱機能を向上させる方法としては、例えば、絶縁部材に熱伝導性を付与する方法、より具体的には、絶縁部材となる樹脂に無機フィラーを添加する方法が知られている。この際、使用される無機フィラーとしては、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
近年、機器の小型軽量化、高性能化はますます進んでおり、より高い熱伝導性を有する無機フィラーが求められている。
ところで、スピネルは、一般に、MgAlの化学組成式で表される鉱物であり、宝石類として使用される他、その多孔構造や修飾容易性の観点から、触媒担体、吸着剤、光触媒、光学材料、耐熱絶縁材料等の用途に適用されている。
特許文献1には、MgAlが適度なモース硬度を有し、耐摩耗性に優れ、また、耐水性や耐酸性、耐薬品性を有し、電気絶縁性にも優れることから、欠点のない優れた熱伝導性フィラーとして好適に使用可能である旨が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載のスピネル粉末は、水酸化アルミニウムやベーマイト、アルミナ等のアルミナ系化合物の水懸濁液に、塩化マグネシウム水溶液およびアルカリ水溶液を滴下して、共沈物を調製し焼成するという高温固相反応により合成されているため、結晶性が低く、スピネル結晶本来の熱伝導性を引き出せているものではなかった。
一方、特許文献2には、高温固相反応と異なるフラックス法にてモリブデン酸マグネシウムとアルミニウム化合物を含む混合物を焼成して生成させるスピネル粒子の製造方法が記載されており、高結晶性であり、こうして得られたスピネル粉末は、上記した特許文献1のスピネル粉末よりも高い熱伝導性を有することが記載されている。
また、特に前記モリブデン酸マグネシウムのマグネシウム元素に対するモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/マグネシウム元素)が、0.01〜10であることが好ましく、前記モル比が10以下であると、焼成工程において副反応物であるα化度の高いアルミナの生成を抑制または防止できることから好ましい旨も記載されている。
しかしながら、上記した範囲のモル比であっても、スピネルの結晶の緻密性が不充分、すなわち、熱伝導性が期待されたほど高くないスピネル粒子が得られるといった不都合が生じることがあった。
特開2016−135841公報 WO2016/148236公報
本発明者等は、上記実情に鑑みて、モリブデン化合物およびマグネシウム化合物を含む第1の混合物(A−1)又はモリブデン化合物、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を含む第1の混合物(A−2)を焼成して中間体を調製する工程(1)と、混合物(A−2)を用いた場合は、前記中間体を含む第2の混合物を、混合物(A−1)を用いた場合は、前記中間体とアルミニウム化合物とを含む第2の混合物を、工程(1)で選択した温度より高温で焼成してスピネル粒子を製造する工程(2)とを含む、スピネル粒子の製造方法において、 工程(1)における前記マグネシウム化合物のマグネシウム元素に対する前記モリブデン化合物のモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/マグネシウム元素)を、より詳細に検討を行った。
特許文献1に記載の方法では、前記モリブデン元素/マグネシウム元素のモル比が1未満の場合、全てのマグネシウム元素がモリブデン化合物と反応してモリブデン酸マグネシウムを形成できず、未反応のマグネシウム化合物が残存する。マグネシウム化合物は、モリブデン酸マグネシウムよりも低温でアルミニウム化合物と高温固相反応することから、モリブデン酸マグネシウムとアルミニウム化合物との反応により生成する緻密なスピネル結晶の中に、マグネシウム化合物とアルミニウム化合物との反応により生成した緻密でないスピネル結晶が混在することとなり、熱伝導率が不十分となることがわかった。
一方、前記モリブデン元素/マグネシウム元素のモル比が1以上の場合においては、モリブデン化合物とマグネシウム化合物の反応時間が短いと、未反応のモリブデン化合物が残存し、それがアルミニウム化合物と反応することでモリブデン酸アルミニウムを形成する。モリブデン酸アルミニウムはスピネル形成反応よりも低温で分解し、熱伝導性低下の要因であるα化度の高いアルミナを生成するため、反応過程で生成するのは好ましくない。さらに、モリブデン酸マグネシウムは高温で徐々に溶融する性質である為、反応が遅いほど生成するスピネルは容器への固着や凝集が強くなり、反応容器からの回収が困難となる。
また逆に、前記モリブデン元素/マグネシウム元素のモル比が2より大きくなると、スピネル形成反応温度以下では、モリブデン元素がマグネシウム元素に対して2よりも大きい比率で反応したモリブデン酸マグネシウムを形成しにくいため、未反応のモリブデン化合物が残存する。そのため、前記と同様、反応過程でモリブデン酸アルミニウムが形成されることによってスピネル化反応の反応性が低下し、熱伝導性が不十分となったり作業性において不具合が生じる場合があることがわかった。
更に本発明者らは、上記工程(2)の反応過程におけるモリブデン酸アルミニウムの生成量に着眼し、スピネル粒子の更なる熱伝導性の向上が図れるかどうかも検討を行った。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、上記した様に鋭意研究を行った。その結果、工程(1)における前記モリブデン元素/マグネシウム元素のモル比を一定範囲とすると共に、工程(2)におけるモリブデン酸アルミニウムの生成量を一定範囲内となる様にすることにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記の[1]〜[3]に関する。
[1]
マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデン原子と、を含む、スピネル粒子の製造方法であって、
モリブデン化合物およびマグネシウム化合物を含む第1の混合物(A−1)又はモリブデン化合物、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を含む第1の混合物(A−2)を焼成して中間体を調製する工程(1)と、
混合物(A−2)を用いた場合は、前記中間体を含む第2の混合物を、混合物(A−1)を用いた場合は、前記中間体とアルミニウム化合物とを含む第2の混合物を、工程(1)で選択した温度より高温で焼成してスピネル粒子を製造する工程(2)と、
を含み、
工程(1)における前記マグネシウム化合物のマグネシウム元素に対する前記モリブデン化合物のモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/マグネシウム元素)が、1.0〜2.0であり、
前記中間体が、モリブデン酸マグネシウムを含み、かつ、
工程(2)において生じ得るモリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素が、前記第2の混合物中のアルミニウム元素に対して、30%以下となるようにすることを特徴とする、スピネル粒子の製造方法。
[2]
前記第1の混合物、第2の混合物として、ケイ素化合物をさらに含む第1の混合物及び/又はケイ素化合物をさらに含む第2の混合物を用いる、上記[1]記載のスピネル粒子の製造方法。
[3]
上記[1]又は[2]記載の製造方法によって製造されたスピネル粒子と、樹脂とを混合する、樹脂組成物の製造方法。
[4]
上記[3]の製造方法により製造された樹脂組成物を更に成形する、樹脂成形物の製造方法。
本発明によれば、より熱伝導性の高いスピネル粒子が得られ、かつ、作業性に優れる製造方法が提供される。
実施例14で調製した、中間体およびアルミニウム化合物の混合物を、1000℃まで昇温した焼成物の27Al−NMRスペクトルである。
実施例14で調製した、中間体およびアルミニウム化合物の混合物を、1000℃まで昇温した焼成物のXRDスペクトルである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明は、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデン原子と、を含む、スピネル粒子の製造方法である。
<スピネル粒子>
本発明の一形態によれば、スピネル粒子は、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子を含むスピネルと、前記スピネルの表面および/または内部に配置されるモリブデンと、を含む。
なお、本明細書において、「スピネル粒子」とは、スピネルおよびモリブデンを含む粒子全体を含むものである。また、「スピネル」とは、結晶それ自体を示すものである。この際、後述するようにモリブデンがスピネルの表面に配置される場合には、スピネルの結晶にはモリブデンが構成要素として含まれないため、スピネル粒子とスピネルとは異なることとなる。一方で、モリブデンがスピネルの内部に配置される場合には、モリブデンがスピネル結晶の構成要素として含まれる場合があり、この場合はスピネル粒子とスピネルとは同じものを意味することとなる。なお、モリブデンがスピネルの表面および内部に配置される場合、スピネル粒子は、モリブデンを構成要素として含むスピネルと、当該スピネル表面に配置されるモリブデンを含むことになるため、スピネルとは異なることとなる。
当該モリブデンは、スピネルの表面および/または内部に配置される。ここで、「表面に配置される」とは、スピネル表面にモリブデンが付着、被覆、結合、その他これに類する形態で存在することを意味する。他方、「内部に配置される」とは、スピネル結晶に組み込まれることまたはスピネル結晶の欠陥などの空間に存在することを意味する。スピネル結晶に組み込まれることとは、スピネルを構成する原子の少なくとも一部が、モリブデンに置換し、当該モリブデンがスピネル結晶の一部として包含されることを意味する。この際、置換されるスピネルの原子としては、特に制限されず、マグネシウム原子、アルミニウム原子、酸素原子、他の原子のいずれであってもよい。
スピネル粒子の形状としては、多面体状、球状、楕円状、円柱状、多角柱状、針状、棒状、板状、円板状、薄片状、鱗片状等が挙げられる。これらのうち、樹脂に分散しやすいことから多面体状、球状、楕円状、板状であることが好ましく、成形した場合においても、強度等において方向性が出難い、多面体状、球状であることがより好ましい。
スピネル粒子の平均粒径は、0.1〜1000μmであることが好ましく、0.2〜100μmであることがより好ましく、0.3〜80μmであることがさらに好ましく、0.4〜60μmであることが特に好ましい。スピネル粒子の平均粒径が0.1μm以上であると、樹脂と混合して得られる組成物の粘度が過度に大きくならないことから好ましい。一方、スピネル粒子の平均粒径が1000μm以下であると、それと樹脂とを混合して得られた樹脂組成物を成形した場合、得られる成形物の表面が平滑になりうることまたは成形物の機械物性が優れていることから好ましい。
なお、本明細書において、「平均粒径」とは、任意の100個の粒子の粒径を走査型電子顕微鏡(SEM)により得られたイメージから測定、算出された値を意味する。この際、「粒径」とは、粒子の輪郭線上の2点間の距離のうち、最大の長さを意味する。
スピネル粒子の比表面積は、10m/g以下であることが好ましく、8〜0.001m/gであることがより好ましく、5〜0.01m/gであることがさらに好ましい。スピネル粒子の比表面積が10m/g以下であると、粒子表面平滑性が高く、樹脂等に好適に分散できることから好ましい。なお、本明細書において「比表面積」はBET比表面積を意味し、窒素ガス吸着/脱着法で得られた値を採用するものとする(日本工業規格JIS R1626−1996参照。)。
スピネル粒子の熱伝導率は、粒子そのものの熱伝導率を測定することが難しいため、例えば、当該スピネル粒子と樹脂とを均一混合した樹脂組成物やその成形物を作成して熱伝導率を測定し、Bruggemanの式により当該スピネル粒子の熱伝導率を算出するか、アルミナや他の熱伝導性フィラーと前記樹脂組成物の熱伝導率を比較することで、おおよその熱伝導率を把握できる。本発明の製造方法では、スピネル粒子の熱伝導率が、アルミナの熱伝導率である20〜40W/(m・K)以上であると、樹脂組成物やその成形物としての高熱伝導性を達成できることから好ましく、特に40W/(m・K)以上であると、近年の小型化、高性能化が進んだ機器への応用が可能となるためさらに好ましい。
[スピネル]
本発明においてスピネルは、マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子を含み、一般的には、MgAlの化学組成式で表される。その他、他の原子および後述するモリブデンが含まれていてもよい。
(マグネシウム原子)
スピネル中のマグネシウム原子の含有量は、特に制限されないが、スピネルの構造式をMgAlで表す場合、xは0.7〜1.3の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲であることがより好ましい。なお、本明細書において、スピネル中のマグネシウム原子の含有量は蛍光X線元素分析法(XRF)により測定された値を採用するものとする。
(アルミニウム原子)
スピネル中のマグネシウム原子の含有量は、特に制限されないが、スピネルの構造式をMgAlで表す場合、yは1.6〜2.8の範囲であることが好ましく、1.9〜2.1の範囲であることがより好ましい。なお、本明細書において、スピネル中のアルミニウム原子の含有量は蛍光X線元素分析法(XRF)により測定された値を採用するものとする。
(酸素原子)
スピネル中の酸素原子の含有量は、特に制限されないが、スピネルの構造式をMgAlで表す場合、zは(x+y+1.2)〜(x+y+0.8)の範囲であることが好ましく、(x+y+1.1)〜(x+y+0.9)の範囲であることがより好ましい。
(他の原子)
他の原子としては、本発明の効果を阻害しない範囲においてスピネル中に包含されうる。具体例としては、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、マンガン、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ケイ素、ホウ素等が挙げられる。これらの他の原子は単独で含まれていても、2種以上を混合して含まれていてもよい。
スピネル中の他の原子の含有量は、10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下であることがより好ましく、2mol%以下であることが最も好ましい。
(モリブデン)
モリブデンは、後述する製造方法に起因して含有されうる。
当該モリブデンは、スピネルの表面および/または内部に配置される。ここで、「表面に配置される」とは、スピネル表面にモリブデンが付着、被覆、結合、その他これに類する形態で存在することを意味する。他方、「内部に配置される」とは、スピネル結晶に組み込まれることまたはスピネル結晶の欠陥などの空間に存在することを意味する。スピネル結晶に組み込まれることとは、スピネルを構成する原子の少なくとも一部が、モリブデンに置換し、当該モリブデンがスピネル結晶の一部として包含されることを意味する。この際、置換されるスピネルの原子としては、特に制限されず、マグネシウム原子、アルミニウム原子、酸素原子、他の原子のいずれであってもよい。
なお、前記モリブデンには、後述するモリブデン含有化合物中のモリブデンを含む。
スピネル粒子中のモリブデンの含有量は、特に制限されないが、スピネルに対して、20mol%以下であることが好ましい。また、10mol%以下が更に好ましく、5mol%以下であればスピネル結晶体が高い緻密性を示すため、特に好ましい。なお、本明細書において、スピネル中のモリブデンの含有量は蛍光X線分析装置により測定された値を採用するものとする。
<スピネル粒子の製造方法>
さらに本発明は、モリブデン化合物およびマグネシウム化合物を含む第1の混合物を焼成して中間体を調製する工程(1)を含む。この工程(1)の焼成温度は、後述する工程(2)で選択する温度より低温で行われる。
[中間体の調製工程]
(第1の混合物)
第1の混合物は、モリブデン化合物およびマグネシウム化合物を必須成分として含む。
本発明の製造方法における第1の混合物としては、大別すると、スピネルの原料の元素源としてモリブデン化合物およびマグネシウム化合物のみを含む第1の混合物(A−1)、又はモリブデン化合物、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を含む第1の混合物(A−2)を用いることが出来る。後述するが、工程(1)で用いるこれら第1の混合物として、混合物(A−1)を選択するか、混合物(A−2)を選択するかにより、後述する工程(2)におけるモリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素を、前記第2の混合物中のアルミニウム元素に対して、30%以下となるようにするための具体的な条件が異なったものとなる。
モリブデン化合物
モリブデン化合物としては、特に制限されないが、金属モリブデン、酸化モリブデン、硫化モリブデンモリブデン、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸アンモニウム、HPMo1240、HSiMo1240等のモリブデン化合物が挙げられる。この際、前記モリブデン化合物は、異性体を含む。例えば、酸化モリブデンは、二酸化モリブデン(IV)(MoO)であっても、三酸化モリブデン(VI)(MoO)であってもよい。これらのうち、三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウムであることが好ましく、三酸化モリブデンであることがより好ましい。
なお、上述のモリブデン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
マグネシウム化合物
マグネシウム化合物としては、特に制限されないが、金属マグネシウム;酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、水素化マグネシウム、二ホウ化マグネシウム、窒化マグネシウム、硫化マグネシウム等のマグネシウム誘導体;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム等、過マンガン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム等のマグネシウムオキソ酸塩;酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、グルタミン酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ナフテン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、モノペルオキシフタル酸マグネシウム等のマグネシウム有機塩;結晶性が低いスピネル、アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、マグネシウムアルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウム−マグネシウム含有化合物;およびこれらの水和物等が挙げられる。 本発明において、アルミニウム−マグネシウム含有化合物およびこれらの水和物は、便宜上、マグネシウム化合物に分類する。
これらのうち、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムであることが好ましく、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウムであることがより好ましい。
なお、上述のマグネシウム化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。マグネシウム化合物は市販品を使用しても、自ら調製してもよい。
マグネシウム化合物を自ら調製する場合、例えば、アルミニウム−マグネシウム含有化合物である結晶性の低いスピネルは、共沈法により調製することができる。より詳細には、マグネシウム塩およびアルミニウム塩を含む溶液から得ることができる。なお、これによって得られるマグネシウム−アルミニウム含有化合物であるスピネルは難溶性であり、焼成していないため、結晶性が低く、反応性が高く、後述する焼成工程において高い反応性を示し、結晶子径が大きくなる傾向がある。
モリブデン元素/マグネシウム元素のモル比
本発明の製造方法において、中間体を調製する工程(1)では、モリブデン化合物およびマグネシウム化合物のみを含む第1の混合物(A−1)、又はモリブデン化合物、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を含む第1の混合物(A−2)から選択される、モリブデン化合物およびマグネシウム化合物を必須成分として含む第一の混合物が焼成される。混合物(A−1)にせよ、混合物(A−2)にせよ、第1の混合物は、工程(1)での焼成を行うことで、中間体であるモリブデン酸マグネシウムを必須成分として含有したものとなる。
本発明の製造方法において、前記マグネシウム化合物のマグネシウム元素に対する前記モリブデン化合物のモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/マグネシウム元素)は、1.0〜2.0である。
前記モリブデン元素/マグネシウム元素のモル比が1未満の場合、得られる中間体はモリブデン酸マグネシウムと未反応のマグネシウム化合物の混合物となる。モリブデン酸マグネシウムとマグネシウム化合物とは、アルミニウム化合物との反応性が異なり、マグネシウム化合物の方がより低温でアルミニウム化合物と反応する。したがって、得られるスピネルは、モリブデン酸マグネシウムとアルミニウム化合物との反応により生成する、熱伝導性の高い緻密なスピネル結晶と、酸化マグネシウムとアルミニウム化合物との反応により生成する、熱伝導性の低い緻密でないスピネル結晶と、が混在することとなり、スピネル粒子の製造において好ましくない。
一方、後述する第1の混合物の好適な焼成温度範囲において、モリブデン酸マグネシウムは、モリブデン元素がマグネシウム元素に対してのモル比で2よりも大きい比率で反応した構造を形成しにくいため、前記モリブデン元素/マグネシウム元素のモル比が2以上になると、マグネシウム化合物と反応しないモリブデン化合物が残存することになる。前記マグネシウム化合物と未反応のモリブデン化合物は、第1の混合物中にアルミニウム化合物が存在する場合すなわち混合物(A−2)の場合には、第1の混合物の焼成工程中にモリブデン酸アルミニウムを形成し、第1の混合物中にアルミニウム化合物が存在しない場合すなわち混合物(A−1)の場合には、第2の混合物の焼成時にアルミニウム化合物と反応してモリブデン酸アルミニウムを形成する。
モリブデン酸アルミニウムは、スピネル化開始温度よりも低い温度で分解して、モリブデン酸マグネシウムとの反応性が低い、α化度の高いアルミナを生成するため、このモリブデン酸アルミニウムは、極力、工程(1)及び工程(2)のいずれにおいても、生成しない様な製造条件を選択することが好ましい。
α化度の高いアルミナの生成によって、スピネル化反応の反応性が低下すると、マグネシウム元素とアルミニウム元素のスピネル内部での置換が生じるなどして結晶の緻密性が低下し、最終的に得られるスピネルの熱伝導性が低下する場合がある。さらに、モリブデン酸マグネシウムは高温で徐々に溶融する性質である為、反応が遅いほど生成するスピネルは容器への固着や凝集が強くなり、反応容器からの回収が困難となる場合がある。したがって、前記モリブデン元素/マグネシウム元素のモル比が2よりも大きい場合、スピネル粒子の熱伝導性や製造における作業性の面で好ましくない。
また、第1の混合物は、その他の化合物を含有させても良い。その他の化合物としては、亜鉛化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、鉄化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ナトリウム化合物、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、イットリウム化合物、ケイ素化合物、ホウ素化合物等が挙げられる。
第1の混合物の調製方法
第1の混合物は、マグネシウム元素およびモリブデン元素の反応性が高くなるように混合されていることが好ましい。
具体的な混合状態としては、物理混合、含浸、および共沈が挙げられる。
前記物理混合は、2種の原料、すなわち、マグネシウム元素を含む化合物(マグネシウム化合物)およびモリブデン元素を含む化合物(モリブデン化合物)を単純に混合するものであり、乾式もしくは湿式条件で一般的な混合機を用いて混合される。物理混合は、原料の粒度が微細であるほど、反応性が高くなるため、どちらか一方もしくは両方の原料を破砕してから用いてもよいし、破砕メディアを併用しながら混合しても良い。
また、前記含侵は、2種の原料を含浸させるものである。その結果、マグネシウム元素を含む化合物がモリブデン元素を含む化合物に担持される、またはモリブデン元素を含む化合物がマグネシウム元素を含む化合物に担持されることとなる。
さらに、前記共沈は、2種の原料を共沈させるものである。その結果、マグネシウム元素を含む化合物およびモリブデン元素を含む化合物が1つの化合物(モリブデン酸マグネシウム)を構成することとなる。
これらのうち、反応性が高い観点から、含浸(担持形態)および共沈(マグネシウム元素を含む化合物とモリブデン元素を含む化合物が1つの化合物中に存する形態)であることが好ましく、共沈(マグネシウム元素を含む化合物とモリブデン元素を含む化合物が1つの化合物中に存する形態)であることがより好ましい。原子が近接した環境下で焼成することにより、結晶成長が起こりやすくなりうる。この際、第1の混合物がアルミニウム化合物を含む場合すなわち混合物(A−2)である場合には、モリブデン酸アルミニウムの生成を防ぐため、アルミニウム化合物は含浸および共沈工程時には添加せずに、後から物理混合によって混合するのが好ましい。一方、工業的な製造の観点からは、工程が単純である物理混合が好ましく、乾式混合がさらに好ましい。
第1の混合物の焼成
マグネシウム化合物およびモリブデン化合物を必須成分として含む第1の混合物を焼成することで、モリブデン酸マグネシウムを含む中間体を得ることができる。
第1の混合物がアルミニウム化合物を含まない場合すなわち混合物(A−1)を用いる場合は、モリブデン酸アルミニウムが生成しないため、特に焼成温度の上限はないが、工業的な実施のし易さから400〜2000℃であることが好ましく、600〜1000℃以下であることがさらに好ましい。1000℃以下では焼成物が硬くならないため、後のアルミニウム化合物との混合が容易となるので好ましい。
一方、第1の混合物がアルミニウム化合物を含む場合すなわち混合物(A−2)を用いる場合、焼成温度は、400〜1000℃であることが好ましく、この温度範囲では、モリブデン化合物は、アルミニウム化合物よりも優先してマグネシウム化合物と反応し、モリブデン酸アルミニウムの生成を抑制することができる。さらに好ましくは、600〜800℃であり、この温度範囲であれば未反応のモリブデン量とモリブデン酸アルミニウムの生成量をさらに減らすことが可能である。
また、焼成温度は前記の温度範囲内であれば、一定温度で所定の時間保持しても良いし、徐々に昇温したり降温したりしても良い。
400〜1000℃で焼成する時間は、昇温時間、降温時間および保持時間を含めて、4〜100時間であることが好ましく、実施の容易さから4〜20時間であることがさらに好ましい。4時間以上では、モリブデン化合物とマグネシウム化合物の反応が良好である為、好ましい。
工程(1)における焼成後は、いったん冷却してモリブデン酸マグネシウムを単離してもよいし、アルミニウム化合物を既に含んでいる場合には、そのまま後述する工程(2)を行ってもよい。
中間体
第1の混合物を焼成して得られる中間体は、モリブデン酸マグネシウムを必須成分として含むものであり、第1の混合物が混合物(A−1)である場合は、実質的にモリブデン酸マグネシウムを主成分として含有するものとなり、第1の混合物が混合物(A−2)である場合は、実質的にモリブデン酸マグネシウムとモリブデン酸アルミニウムとを主成分として含有するものとなる。
モリブデン酸マグネシウム
モリブデン酸マグネシウムは、後述する焼成工程において、モリブデンの蒸気の発生源となるとともに、アルミニウム化合物のアルミニウム原子と結晶を形成するマグネシウム原子を提供する機能を有する。
モリブデン酸マグネシウムは、マグネシウム原子、モリブデン原子、および酸素原子を含み、一般的には、MgMoで表される。本発明の製造方法によって生成するモリブデン酸マグネシウムの構造は主に、MgMoO、MgMo11、MgMoと、これらのマグネシウム化合物、またはモリブデン化合物との固溶体である。
モリブデン酸アルミニウム
モリブデン酸アルミニウムは、アルミニウム原子、モリブデン原子、および酸素原子を含み、一般的には、Al(MoOで表される。ここで、xとyは共に1以上の整数または少数である。モリブデン酸アルミニウムは分解により、α化度の高いアルミナを形成し得る。
本発明の製造方法は、さらに、前記中間体およびアルミニウム化合物を含む第2の混合物を焼成してスピネル粒子を製造する工程(2)を含む。工程(1)において混合物(A−2)を用いた場合は、前記中間体を含む第2の混合物が、工程(1)において混合物(A−1)を用いた場合は、前記中間体とアルミニウム化合物とを含む第2の混合物が、この工程(2)においてそれぞれ用いられる。この工程(2)は、工程(1)で選択した温度より高温で第2の混合物の焼成を行うことでスピネル粒子を得る工程である。
スピネル焼成工程
金属成分を複数有するスピネルでは、焼成過程において、欠陥構造等が生じ易いため、結晶構造を精密に制御することが困難である。しかしながら、モリブデン酸マグネシウムおよびアルミニウム化合物を焼成することにより、酸化モリブデンがフラックス剤として機能しつつ、マグネシウム、アルミニウムと酸素からなるスピネル結晶構造を精密に制御することができる。
また、スピネル粒子の平均粒径は、主にフラックス剤であるモリブデンの添加量、具体的には、上述のマグネシウム元素に対するモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/マグネシウム元素)により制御することができる。この理由は、モリブデン化合物がフラックスとして機能し、原料であるマグネシウム化合物および/またはアルミニウム化合物を溶解させることで、MgAl24の結晶化が進行するためである。
第2の混合物
第2の混合物は、前記中間体およびアルミニウム化合物を含む。ここで、スピネル化反応に必要な量のアルミニウム化合物が、第1の混合物に既に含まれている場合は、後述のその他の化合物を添加する場合を除いて、第2の混合物は前記中間体と同一のものである。
上記工程(1)において、混合物(A−2)を用いた場合は、この第2の混合物として、前記中間体を含む第2の混合物を、上記工程(1)において、混合物(A−1)を用いた場合は、この第2の混合物として、前記中間体とアルミニウム化合物とを含む第2の混合物、がそれぞれ用いられる。
アルミニウム化合物
アルミニウム化合物としては、特に制限されないが、金属アルミニウム、酸化アルミニウム(α−アルミナやγ−アルミナ、θ−アルミナ、δ−アルミナ等の遷移アルミナ)、ベーマイト、水酸化アルミニウム、硫化アルミニウム、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム等のアルミニウム誘導体;硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、硝酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、アルミン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等のアルミニウムオキソ酸塩;酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム等のアルミニウム有機塩;アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド等のアルコキシアルミニウム;およびこれらの水和物等が挙げられる。これらのうち、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびこれらの水和物を用いることが好ましく、γ−アルミナ、θ−アルミナ、δ−アルミナ等の遷移アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウムを用いることがより好ましい。
なお、上述のアルミニウム化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記アルミニウム化合物のアルミニウム元素に対するモリブデン酸マグネシウムのマグネシウム元素のモル比(アルミニウム元素/マグネシウム元素)は、2.8〜1.6の範囲であることが好ましく、2.2〜1.8の範囲であることがより好ましい。前記モル比が2.2〜1.8の範囲であると、スピネル結晶中でアルミニウム元素とマグネシウム元素の置換が少なく、緻密性の高い高熱伝導性のスピネル粒子合成できることから好ましい。
第2の混合物は、モリブデン酸マグネシウムおよびアルミニウム化合物以外に、その他の化合物を含有していても良い。その他の化合物としては、亜鉛化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、鉄化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ナトリウム化合物、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、イットリウム化合物、ケイ素化合物、ホウ素化合物等が挙げられる。
これらの化合物は、第1の混合物を焼成した中間体に含まれていても良く、アルミニウム化合物の主成分もしくは不純物として含まれていても良く、さらに、第2の混合物の調製段階で添加されても良い。
前記その他の化合物の中でも、特にケイ素化合物は、スピネル化反応を行う温度領域において、モリブデン酸マグネシウム中のモリブデン元素とマグネシウム元素との結合を弱める働きがあるため、マグネシウム元素とアルミニウム元素の反応性を高めることが可能である。
したがって、本発明のスピネル粒子の製造方法において、第1の混合物として、ケイ素化合物をさらに含む第1の混合物を用いるか、第2の混合物として、ケイ素化合物をさらに含む第2の混合物を用いることで、工程(2)における焼成によるスピネル化反応の反応性のさらなる向上が可能となり、得られるスピネル粒子の更なる熱伝導率の向上が可能である。また、反応性の向上によって、モリブデン酸マグネシウムが溶融する前に、スピネル化反応を完結できるため、生成するスピネルは容器への固着が減少し、容易に反応容器から回収できる。
ケイ素化合物
第1の混合物や第2の混合物に含有させることができるケイ素化合物は、特に制限されないが、シリカ(二酸化ケイ素)、ケイ酸、ケイ酸塩、炭化ケイ素、チッ化ケイ素、ハロゲン化ケイ素、有機シラン化合物、有機シロキサン化合物、シラザン化合物、シリコーン樹脂等が挙げられる。
なお、上述のケイ素化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1の混合物や第2の混合物のケイ素化合物の含有量は特に制限されるものではないが、スピネル化反応の反応性向上効果が大きく、かつ、スピネル結晶中で、マグネシウム元素もしくはアルミニウム元素とのケイ素元素の置換が起こり難く、結晶の緻密性、スピネル粒子の熱伝導性の低下が起こり難い点で、ケイ素元素がマグネシウム元素のモル比に対して0.076〜20モル%であり、0.15〜1.5モル%であるとさらに好ましい。
第2の混合物の調製方法
第2の混合物は、マグネシウム元素およびアルミニウム元素の反応性が高くなるように混合されていることが好ましい。
第1の混合物にアルミニウム化合物が含まれている場合すなわち混合物(A−2)を用いた場合には、工程(1)の焼成により生じた焼成物は、中間体中で、マグネシウム元素を含む化合物(モリブデン酸マグネシウム)とアルミニウム元素を含む化合物(アルミニウム化合物もしくはモリブデン酸アルミニウム)とはすでに良い混合状態にあるため、上記したケイ素化合物の様な他の化合物を添加する場合を除いて、改めて混合する必要はない。
一方、第1の混合物にアルミニウム化合物が含まれていない場合すなわち混合物(A−1)を用いた場合には、工程(1)の焼成により生じた焼成物は、それをそのまま第2の混合物として用いて、工程(2)の焼成を行っても中間体のモリブデン酸マグネシウムだけからはスピネルが生じないから、第2の混合物には、更にアルミニウム化合物を混合する必要がある。
前記中間体に含まれるモリブデン酸マグネシウムは水溶性であるため、水を用いた混合方法では、モリブデン元素とマグネシウム元素の反応率が変化する恐れがあり、好ましくない。したがって、中間体とアルミニウム化合物の混合方法には、乾式条件の物理混合が好ましい。この際、混合は一般的な混合機であれば特に制限はなく、より反応性を高めるため、どちらか一方もしくは両方の原料を破砕してから用いてもよいし、破砕メディアを併用しながら混合しても良い。
第2の混合物の焼成
中間体とアルミニウム化合物とを含む第2の混合物を、工程(1)で選択した温度より高温で焼成することで、スピネル粒子を得ることができる。
焼成温度は、所望のスピネル粒子を得ることができれば特に制限されないが、短時間で結晶性の高いスピネル粒子を得ることができ、かつ、スピネルの粒径制御が容易となることから、1000〜2000℃であることが好ましく、1200〜1600℃であることがより好ましく、1300〜1500℃であることが最も好ましい。
焼成時間は、特に制限されないが、結晶性の高いスピネル粒子を得ることができ、かつ、生産性が高くエネルギー消費も抑制できることから0.1〜1000時間であることが好ましく、3〜100時間であることがより好ましい。
焼成雰囲気は、空気雰囲気であっても、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であっても、酸素雰囲気であっても、アンモニアガス雰囲気であっても、二酸化炭素雰囲気であってもよい。この際、製造コストの観点からは空気雰囲気であることが好ましい。また、スピネル粒子の表面改質等を同時に行う場合には、アンモニアガス雰囲気であることが好ましい。
焼成時の圧力についても特に制限されず、常圧下であっても、加圧下であっても、減圧下であってもよいが、製造コストの観点から常圧下で行う事が好ましい。
加熱手段としては、特に制限されないが、焼成炉を用いることが好ましい。この際使用されうる焼成炉としては、トンネル炉、ローラーハース炉、ロータリーキルン、マッフル炉等が挙げられる。
工程(1)においても、工程(2)においても、それぞれの焼成を、好適な焼成温度領域内の低温から高温に向けて、連続的に昇温させながら必要な時間をかけて焼成を行うこともできるし、或いは、好適な焼成温度領域内の一定温度に保持したままで必要な時間をかけて焼成を行うこともできる。これら連続昇温での必要な時間での焼成と、一定温度保持での必要な時間での焼成を組み合わせて行うこともできる。
本発明の製造方法では、工程(2)において生じ得るモリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素が、前記第2の混合物中のアルミニウム元素に対して、30%以下となるようにする。
なお、本明細書において、前記第2の混合物の焼成過程で生成する、モリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素の、第2の混合物中のアルミニウム元素に対する割合は、得られるスピネルが3gとなる様に前記第2の混合物をアルミナ製るつぼに仕込み、電気炉中で1000℃まで600℃/時間で昇温したのち、室温まで自然放冷することによって得た焼成物を、固体 27Al−NMR測定により分析し、モリブデン酸アルミニウムに帰属されるピークの面積を、モリブデン酸アルミニウムピークの面積とアルミナに帰属されるピークの面積との和、で割った値を採用することとする。
第2の混合物の焼成過程で生成する、モリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素の量が、第2の混合物中のアルミニウム元素に対して、30%以下となるように焼成を制御できれば、さらに高温に昇温した際に、モリブデン酸マグネシウムとの反応性が低いα化度の高いアルミナが、モリブデン酸アルミニウム以外のアルミニウム化合物から生成するα化度の低いアルミナに対して、30%以下となる結果、スピネル化反応の進行が著しく加速され、スピネル結晶の緻密性もより高まり、より高熱伝導性のスピネル粒子が得られる。
第1の混合物がアルミニウム化合物を含まない場合すなわち混合物(A−1)を用いた場合において、モリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素の量を、第2の混合物中のアルミニウム元素に対して、30%以下となるように焼成を制御する方法としては、第1の混合物を焼成するに当たり、マグネシウム化合物と反応していないモリブデン化合物量を減少させ、仕込んだモリブデン化合物全量か又は全量のうち大部分がモリブデン酸マグネシウムとなる様にする方法が挙げられる。
また、第1の混合物がアルミニウム化合物を含む場合すなわち混合物(A−2)を用いた場合において、モリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素の量を、第2の混合物中のアルミニウム元素に対して、30%以下となるように焼成を制御する方法としては、第1の混合物を焼成するに当たり、モリブデン酸アルミニウムが形成しやすい温度領域にてのみで焼成を行うのではなく、モリブデン酸アルミニウムが形成しにくい温度領域で焼成する工程を経ることで、モリブデン化合物とマグネシウム化合物との反応の方をより促進し、モリブデン酸マグネシウムの生成量をより高める方法が挙げられる。
モリブデン酸アルミニウムが形成しにくい温度領域は、350〜1050℃の範囲であり、この温度領域範囲で焼成温度を0.5〜15時間保持して、一定時間焼成を行った後に、昇温して工程(1)を完結させることができる。尚、この混合物(A−2)を用いた場合に採用し得る、温度領域範囲で焼成温度を保持して、一定時間焼成を行った後に、昇温して工程(1)を完結させる手法は、上記混合物(A−1)を用いた場合にも採用し得る。
冷却工程
冷却工程は、焼成工程において結晶成長したスピネル粒子を冷却し、結晶化して粒子状とする工程である。
冷却速度についても特に制限されないが、1〜1000℃/時間であることが好ましく、5〜500℃/時間であることがより好ましく、50〜100℃/時間であることがさらに好ましい。冷却速度が1℃/時間以上であると、製造時間が短縮されうることから好ましい。一方、冷却速度が1000℃/時間以下であると、焼成容器がヒートショックで割れることが少なく、長く使用できることから好ましい。
冷却方法は特に制限されず、自然放冷であっても、冷却装置を使用してもよい。
本発明の製造方法は、工程(1)と工程(2)とを、ひとつの焼成装置内で行っても良いし、複数の焼成装置を組み合わせで行っても良い。第1の混合物(A−1)を用いて工程(1)と工程(2)とをひとつ又は複数の焼成装置で行う本発明の製造方法は、第1の混合物(A−2)を用いて工程(1)と工程(2)とをひとつの焼成装置で行う本発明の製造方法に比べれば、工程(1)において採用可能な製造条件の自由度がより大きく、工程(2)の焼成に用いる中間体をより好適なものに作り込むことが可能で、得られるスピネル粒子はより優れた熱伝導性を有したものとすることが出来るという長所を有する一方で、焼成装置がひとつでも複数でも、中間体の放冷、取り出し、再加熱に時間を要することから、生産性はあまり良くないという欠点がある。品質と生産性のどちらを優先させるか考慮の上で、上記二つの製造方法のいずれかを選択するようにすれば良い。
樹脂組成物
本発明の一形態によれば、上記製造方法で得られたスピネル粒子と、樹脂とを混合することで樹脂組成物を製造することができる。この際、前記樹脂組成物は、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、硬化触媒、粘度調節剤、可塑剤等をさらに含んでいてもよい。
スピネル粒子
樹脂組成物を製造する際のスピネル粒子としては、上述したものが用いられうることからここでは説明を省略する。
なお、前記スピネル粒子としては、本発明の製造方法で得られたスピネル粒子以外にも、それを表面処理したものを同様に用いることができる。
また、スピネル粒子は、一定の平均粒径のものを単独で用いても、異なる平均粒径のものを2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、スピネル粒子と他のフィラーとを組み合わせて使用してもよい。
スピネル粒子の含有量は、スピネル粒子と樹脂の不揮発分の合計質量に対して、特に制限されるものではないが、スピネル粒子の高熱伝導性を効率的に発揮でき、かつ、成形性に優れた樹脂組成物を得ることができることから、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
樹脂
樹脂としては、特に制限されず、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、成形材料等に使用される公知慣用の樹脂が用いられうる。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。
前記熱硬化性樹脂としては、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂であり、一般的には、成形材料等に使用される公知慣用の樹脂が用いられうる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂肪鎖変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリアルキレングルコール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂;(メタ)アクリル樹脂やビニルエステル樹脂等のビニル樹脂:不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上述の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この際、熱可塑性樹脂を2種以上使用してもよいし、熱硬化性樹脂を2種以上使用してもよいし、熱可塑性樹脂を1種以上および熱硬化性樹脂を1種以上使用してもよい。
硬化剤
硬化剤としては、特に制限されず、公知のものが使用されうる。具体的には、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。
前記アミン系化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
前記アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核およびアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
上述硬化剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤
硬化促進剤は、組成物を硬化する際に硬化を促進させる機能を有する。前記硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
上述の硬化促進剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化触媒
硬化触媒は、前記硬化剤の代わりに、エポキシ基を有する化合物の硬化反応を進行させる機能を有する。硬化触媒としては、特に制限されず、公知慣用の熱重合開始剤や活性エネルギー線重合開始剤が用いられうる。
なお、硬化触媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘度調節剤
粘度調節剤は、組成物の粘度を調整する機能を有する。粘度調節剤としては、特に制限されず、有機ポリマー、ポリマー粒子、無機粒子等が用いられうる。
なお、粘度調節剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
可塑剤
可塑剤は、熱可塑性合成樹脂の加工性、柔軟性、耐候性を向上させる機能を有する。可塑剤としては、特に制限されず、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリシロキサン等が用いられうる。
なお、上述の可塑剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
用途
本発明の一実施形態によれば、本形態に係る樹脂組成物は、例えば、熱伝導性材料に好適に使用することができる。
さらに別の実施形態によれば、上記製造方法によって得られるスピネル粒子は、フラックス法で合成した自形を持つ多面体状粒子であり、無定形の粒子を粉砕して得たものではないことから、平滑性に優れ、樹脂中への分散性に優れる。このため、樹脂組成物として、非常に高い熱伝導性を有しうる。
その他、スピネル粒子は、宝石類、触媒担体、吸着剤、光触媒、光学材料、耐熱絶縁材料、基板、センサー等の用途にも使用することができる。
成形物
本発明の一形態によれば、上記にて製造された樹脂組成物を、必要に応じて所望の形状となる様に、更に成形することで樹脂成形物を製造することができる。具体的には、上記本発明の製造方法で得られたスピネル粒子と、樹脂とを混合して樹脂組成物を製造し、それを更に成形することで、樹脂成形物を製造することができる。樹脂として熱硬化性樹脂を用いて製造した樹脂組成物は、成形の前後又は成形と同時に硬化を行うことにより樹脂成形物を製造することができる。
樹脂成形物に含有されるスピネル粒子は熱伝導性に優れることから、当該樹脂成形物は、好ましくは絶縁放熱部材として使用される。これにより、機器の放熱機能を向上させることができ、機器の小型軽量化、高性能化に寄与することができる。
また、本発明の別の一実施形態によれば、前記樹脂成形物は、低誘電部材等にも使用することができる。スピネル粒子が低誘電率であることにより、高周波回路において通信機能の高機能化に寄与することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1](二段法)
アルミナるつぼに酸化マグネシウム(協和化学製工業用酸化マグネシウム細粒状)7.7g(マグネシウム元素:0.19mol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)27.4g(モリブデン元素:0.19mol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度600℃/時間で700℃まで昇温した。次いで、700℃で3時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、モリブデン酸マグネシウムを含む中間体を得た。得られた中間体16.8gとベーマイト(大明化学製C20)11.0g(アルミニウム元素:0.18mol)との混合物を調製した。該混合物をアルミナるつぼに仕込み、昇温速度200℃/時間で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、焼成物を得た。得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、全量取り出すことが可能であった。
るつぼから取り出した焼成物は、砕いて粉末状とし、水で洗浄して残存するモリブデン酸マグネシウムを除去することで、スピネル粒子を製造した。
[実施例2](同上)
三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)34.2g(モリブデン元素:0.24mol)を用いる以外は実施例1と同様の方法で中間体を調整し、さらに得られた中間体20.1gを用いる以外は実施例1と同様の方法で、スピネル粒子を製造した。得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、全量取り出すことが可能であった。
[実施例3](同上)
三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)46.5g(モリブデン元素:0.32mol)を用いる以外は実施例1と同様の方法で中間体を調整し、さらに得られた中間体26.1gを用いる以外は実施例1と同様の方法で、スピネル粒子を製造した。得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、全量取り出すことが可能であった。
[実施例4](同上)
三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)54.7g(モリブデン元素:0.38mol)を用いる以外は実施例1と同様の方法で中間体を調整し、さらに得られた中間体30.0gを用いる以外は実施例1と同様の方法で、スピネル粒子を製造した。
得られた焼成物はるつぼへの固着が多く、取り出しの際、スピネル粒子が一部るつぼに残存した。
[実施例5](同上)
アルミナるつぼに酸化マグネシウム(協和化学製工業用酸化マグネシウム細粒状)7.7g(マグネシウム元素:0.19mol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)41.0g(モリブデン元素:0.28mol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度600℃/時間で400℃まで昇温した。次いで、400℃で3時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、モリブデン酸マグネシウムを含む中間体を得た。得られた中間体23.4gとベーマイト(大明化学製C20)11.0g(アルミニウム元素:0.18mol)との混合物を調製した。該混合物をアルミナるつぼに仕込み、昇温速度200℃/時間で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、焼成物を得た。得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、全量取り出すことが可能であった。
るつぼから取り出した焼成物は、砕いて粉末状とし、水で洗浄して残存するモリブデン酸マグネシウムを除去することで、スピネル粒子を製造した。
[実施例6](同上)
中間体の焼成を600℃で行った以外は、実施例5と同様の方法で、スピネル粒子を製造した。
得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、全量取り出すことが可能であった。
[実施例7](同上)
中間体の焼成を1000℃で行った以外は、実施例5と同様の方法で、スピネル粒子を製造した。得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、ほぼ全量取り出すことが可能であった。
実施例1〜7の原料配合量を下記表1に示す。
Figure 0006836730
[実施例8](同上)
アルミナるつぼに酸化マグネシウム(神島化学製高純度酸化マグネシウムHP−30A)7.7g(マグネシウム元素:0.19mol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)41.0g(モリブデン元素:0.28mol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度600℃/時間で700℃まで昇温した。次いで、700℃で3時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、モリブデン酸マグネシウムを含む中間体を得た。得られた中間体23.4gと水酸化アルミニウム(日本軽金属製細粒水酸化アルミニウムBF013)14.3g(アルミニウム元素:0.18mol)との混合物を調製した。該混合物をアルミナるつぼに仕込み、昇温速度200℃/時間で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、焼成物を得た。得られた焼成物はるつぼへの固着が多く、取り出しの際、スピネル粒子の一部がるつぼに残存した。
るつぼから取り出した焼成物は、砕いて粉末状とし、水で洗浄して残存するモリブデン酸マグネシウムを除去することで、スピネル粒子を製造した。
[実施例9](ケイ素化合物の併用系1)
酸化マグネシウム(神島化学製高純度酸化マグネシウムHP−30A)7.7g(マグネシウム元素:0.19mol)、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)41.0g(モリブデン元素:0.28mol)、および二酸化ケイ素(和光純薬工業株式会社製)0.012g(ケイ素元素:0.2mmol)を用いて中間体を調製した以外は、実施例8と同様の方法で、スピネル粒子を製造した。得られた焼成物は、るつぼへの固着が多く、取り出しの際、スピネル粒子の一部がるつぼに残存した。
[実施例10](同上)
二酸化ケイ素(和光純薬工業株式会社製)0.025g(ケイ素元素:0.4mmol)を用いて中間体を調製した以外は、実施例9と同様の方法で、スピネル粒子を製造した。得られた焼成物は、るつぼへの固着が少なく、全量のスピネル粒子を取り出すことが可能であった。
(同上)
[実施例11]
二酸化ケイ素(和光純薬工業株式会社製)0.075g(ケイ素元素:1.2mmol)を用いて中間体を調製した以外は、実施例9と同様の方法で、スピネル粒子を製造した。得られた焼成物は、るつぼへの固着が少なく、全量のスピネル粒子を取り出すことが可能であった。
また、スピネル粒子同士の凝集が弱く、解砕が容易であった。
[実施例12](ケイ素化合物の併用系2)
アルミナるつぼに酸化マグネシウム(神島化学製高純度酸化マグネシウムHP−30A)7.7g(マグネシウム元素:0.19mol)、および三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)41.0g(モリブデン元素:0.28mol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度600℃/時間で700℃まで昇温した。次いで、700℃で3時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、モリブデン酸マグネシウムを含む中間体を得た。得られた中間体23.4g、水酸化アルミニウム(日本軽金属製細粒水酸化アルミニウムBF013)14.3g(アルミニウム元素:0.18mol)、および二酸化ケイ素(和光純薬工業株式会社製)0.036g(ケイ素元素:0.6mmol)との混合物を調製した。該混合物をアルミナるつぼに仕込み、昇温速度200℃/時間で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、焼成物を得た。得られた焼成物は、るつぼへの固着が少なく、全量のスピネル粒子を取り出すことが可能であった。
また、スピネル粒子同士の凝集が弱く、解砕が容易であった。
るつぼから取り出した焼成物は、砕いて粉末状とし、水で洗浄して残存するモリブデン酸マグネシウムを除去することで、スピネル粒子を製造した。
実施例8〜12の原料配合量を下記表2に示す。
Figure 0006836730
[実施例13](擬似二段法)
アルミナるつぼに酸化マグネシウム(協和化学製工業用酸化マグネシウム細粒状)7.7g(マグネシウム元素:0.19mol)、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)41.0g(モリブデン元素:0.28mmol)、およびベーマイト(大明化学製C20)22.8g(アルミニウム元素:0.38mmol)を仕込み、昇温速度200℃/時間で600℃まで昇温した。次いで、600℃で1時間加熱し、さらに昇温速度200℃/時間で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、焼成物を得た。得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、取り出しが容易であった。
るつぼから取り出した焼成物は、砕いて粉末状とし、水で洗浄して残存するモリブデン酸マグネシウムを除去することで、スピネル粒子を製造した。
[実施例14](同上)
保持温度を600℃から800℃に変更した以外は、実施例14と同様の方法でスピネル粒子を製造した。得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、取り出しが容易であった。
[実施例15](同上)
保持温度を600℃から1000℃に変更した以外は、実施例14と同様の方法でスピネル粒子を製造した。得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、取り出しが容易であった。
[実施例16](同上)
アルミナるつぼに酸化マグネシウム(協和化学製工業用酸化マグネシウム細粒状)7.7g(マグネシウム元素:0.19mol)、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)41.0g(モリブデン元素:0.28mmol)、およびベーマイト(大明化学製C20)22.8g(アルミニウム元素:0.38mmol)を仕込み、昇温速度200℃/時間で600℃まで昇温した。次いで、昇温速度80℃/時間で1000℃まで昇温し、さらに昇温速度200℃/時間で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、焼成物を得た。得られた焼成物はるつぼへの固着が少なく、取り出しが容易であった。
るつぼから取り出した焼成物は、砕いて粉末状とし、水で洗浄して残存するモリブデン酸マグネシウムを除去することで、スピネル粒子を製造した。
実施例13〜16の原料配合量を下記表3に示す。
Figure 0006836730
[比較例1](一段法)
アルミナるつぼに酸化マグネシウム(協和化学製工業用酸化マグネシウム細粒状)7.7g(マグネシウム元素:0.19mol)、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)41.0g(モリブデン元素:0.28mmol)、およびベーマイト(大明化学製C20)22.8g(アルミニウム元素:0.38mmol)を仕込み、空気雰囲気下、昇温速度200℃/時間で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、焼成物を得た。得られた焼成物はるつぼへの固着が多く、取り出しが容易ではなかった。
るつぼから取り出した焼成物は、砕いて粉末状とし、水で洗浄して残存するモリブデン酸マグネシウムを除去することで、スピネル粒子を製造した。
[比較例2](同上)
アルミナるつぼに酸化マグネシウム(神島化学製高純度酸化マグネシウムHP−30A)7.7g(マグネシウム元素:0.19mol)、三酸化モリブデン(和光純薬工業株式会社製)41.0g(モリブデン元素:0.28mol)、および水酸化アルミニウム(日本軽金属製細粒水酸化アルミニウムBF013))29.6g(アルミニウム元素:0.38mmol)を仕込み、昇温速度200℃/時間で1500℃まで昇温した。次いで、1500℃で12時間加熱し、自然放冷により常温まで冷却することで、焼成物を得た。得られた焼成物は未反応のモリブデン酸マグネシウムが残存しているため黄色で、るつぼへの固着が多く、取り出しが容易ではなかった。
焼成物は、るつぼごと水で洗浄して残存するモリブデン酸マグネシウムを除去したのち、砕いて粉末状とし、スピネル粒子を製造した。
比較例1〜2の原料配合量を下記表4に示す。
Figure 0006836730
[評価]
第2の混合物である、モリブデン酸マグネシウムおよびアルミニウム化合物を含む混合物について、以下の評価を行った。
<第2の混合物中のケイ素含有量の測定>
第2の混合物である、前記モリブデン酸マグネシウムおよびアルミニウム化合物を含む混合物について、蛍光X線測定(XRF)によりケイ素含有量を測定した。
具体的には、蛍光X線分析装置であるZSX100e(株式会社リガク製)を用いて測定を行った。この際、測定方法はFP(ファンクションポイント)法を用いた。また、測定条件として、EZスキャンを用い、測定範囲はB〜Uであり、測定径は10mmであり、試料重量は50mgである。なお、粉末のまま測定を行い、この際、飛散防止のためポリプロピレン(PP)フィルムを使用した。
<反応過程のモリブデン酸アルミニウム生成量の測定>
前記第2の混合物を、スピネルの収量が3gとなる量をアルミナるつぼに仕込み、600℃/時間で1000℃まで昇温したのち、保持することなく、室温まで自然放冷することによって焼成物を得た。得られた焼成物を27Al固体NMR測定により分析した。
具体的には、焼成物をφ4mm固体NMR ZrO2試料管(JEOL RESONANCE製)に採取し、分光計JNM−ECA600(JEOL RESONANCE製)、固体NMRプローブSH60T4(JEOL RESONANCE製)を用いて測定を行った。スピン−格子緩和時間T1は飽和回復法により求めた。90度パルス幅は、各成分のパルス幅の平均値を用い、観測中心を各成分のケミカルシフトの中心とした。ケミカルシフトのリファレンスは、飽和塩化アルミニウム水溶液のピークを−0.1ppmとした。
flip角 30度
MAS回転数:15kHz
繰り返し時間:15〜30s(T1の3倍以上の値とした。)
積算回数:8回
得られたスペクトルにおいて、モリブデン酸アルミニウムに帰属されるピークの面積を、モリブデン酸アルミニウムのピーク面積とアルミナに帰属されるピーク面積との和、で割ることで、第2の混合物中のアルミニウム元素に対する、反応過程で生成したモリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素の割合を算出した。
また、前記1000℃での焼成物を、X線回折法(XRD)により結晶構造を解析し、モリブデン酸アルミニウムが分解することにより生成するα−アルミナのピークの有無を確認した。
具体的には、広角X線回折装置であるRint−TT II(株式会社リガク製)を用いて解析を行った。この際、測定方法は2θ/θ法を用いた。また、測定条件として、スキャンスピードは2.0度/分であり、スキャン範囲は5〜70度であり、ステップは0.02度である。
その結果、全ての実施例および比較例で調整された第2の混合物について、1000℃までの焼成物中にα−アルミナのピークは観測されなかった。
したがって、いずれの実施例および比較例においても、該焼成条件において、モリブデン酸アルミニウムの分解は起こっていないことが確認された。
次いで、製造したスピネル粒子について、以下の評価を行った。
<平均粒径の測定>
製造したスピネル粒子について、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により平均粒径を測定した。
具体的には、表面観察装置であるVE−9800(株式会社キーエンス製)を用いて、平均粒径を測定した。
<モリブデン含有量の測定>
製造したスピネル粒子について、蛍光X線測定(XRF)によりモリブデン含有量を測定した。
具体的には、蛍光X線分析装置であるZSX100e(株式会社リガク製)を用いて測定を行った。この際、測定方法はFP(ファンクションポイント)法を用いた。また、測定条件として、EZスキャンを用い、測定範囲はB〜Uであり、測定径は10mmであり、試料重量は50mgである。なお、粉末のまま測定を行い、この際、飛散防止のためポリプロピレン(PP)フィルムを使用した。
<樹脂組成物の熱伝導性の評価>
製造したスピネル粒子を、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂と、スピネル粒子が50vol%となる様に配合し、樹脂溶融混練装置ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)により混練温度320℃で溶融混練処理し、PPS樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、300℃に加熱したプレスによって7cm×11cm×0.1cmの成型板を作成し、前記成型板から1cm×1cmの試験片を切り出し、熱伝導率測定用の試験片を作製した。熱伝導率(λ)を、比重(ρ)、熱拡散率(α)、比熱容量(C)を用いて、λ=αρCの式に基づき、算出した。比重、熱拡散率および比熱容量は、それぞれ、以下に示す方法により求めた。
(1)比重
電子天秤CP224Sおよび比重測定キットYDK01CP(ザルトリウス社製)を用いて、比重を測定した。
(2)熱拡散率
熱拡散率測定装置LFA467HT HyperFlash(NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱拡散率を測定した。
(3)比熱容量
示差走査熱量計EXSTAR7200(日立ハイテクサイエンス社製)により、25℃における比熱容量を算出した。
測定条件
測定温度:−20〜100℃
測定雰囲気:窒素
昇温速度:10℃/min
得られた熱伝導率を下記の基準に従って、評価した。
◎:1.6W/m/K以上
○:1.5W/m/K以上、1.6W/m/K未満
△:1.4W/m/K以上、1.5W/m/K未満
×:1.4W/m/K未満
<反応容器への固着の評価>
反応容器への固着については、下記の基準に従って、評価した。
◎:反応容器への固着が非常に少なく、取出しが容易
○:反応容器への固着が少なく、取出しが容易
△:反応容器への固着がある
×:反応容器への固着がひどく、取出しが困難
実施例1〜16および比較例1〜2の評価結果を下記表5〜7に示す。
Figure 0006836730
表5からも明らかなように、本発明の製造方法で製造された実施例1〜7のスピネル粒子は、後記する比較例1〜2の従来の製造方法で製造されたスピネル粒子に比べて、少なくとも熱伝導率により優れていることがわかる。
Figure 0006836730
表6からも明らかなように、実施例8〜12の通り、第1の混合物又は第2の混合物にケイ素化合物を含有させた場合、ケイ素含有率一定範囲内で増すほど、少なくとも反応容器への固着が改善され、作業性が向上したことが確認できる。
Figure 0006836730
略同一の平均粒径のスピネル粒子同士での対比では、以下の様なこと明らかである。
工程(1)及び(2)を含み、工程(2)において生じ得るモリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素が、前記第2の混合物中のアルミニウム元素に対して、30%以下となるように制御されて製造された実施例13、14及び16のスピネル粒子は、工程(2)のみしか含まず、工程(2)において生じ得るモリブデン酸アルミニウムに含まれるアルミニウム元素が、前記第2の混合物中のアルミニウム元素に対して、結果的に30%を越えてしまった比較例1〜2のスピネル粒子に比べて、反応容器への固着が極めて少なく、かつ、スピネル粒子を含む樹脂組成物で評価した熱伝導性も良好であることがわかる。
工程(1)と工程(2)を異なる反応容器で行う二段法による実施例6と、工程(1)と工程(2)を同一反応容器で行う擬似二段法の実施例14との対比からわかる通り、二段法の方が、より緻密性に優れたスピネル粒子が得られ、スピネル粒子を含む樹脂組成物で評価した熱伝導性もより良好なものとなることがわかる。
工程(1)と工程(2)を異なる反応容器で行う二段法において、ケイ素化合物をさらに含む第1の混合物を用いる実施例9〜11と、ケイ素化合物を含まない第1の混合物を用いる実施例8の対比からわかる通り、ケイ素化合物の添加量を増量するほど、反応容器への固着が減り、スピネル粒子の取り出しがより容易になることがわかる。
工程(1)と工程(2)を異なる反応容器で行う二段法において、ケイ素化合物をさらに含む第1の混合物を用いる実施例10〜11と、ケイ素化合物を含む第2の混合物を用いる実施例12の対比からわかる通り、ケイ素化合物は第1の混合物に含有させても第2の混合物に含有させても、反応容器への固着、スピネル粒子の取り出し及びスピネル粒子を含む樹脂組成物で評価した熱伝導性は、略同等であることがわかる。
本発明の製造方法で得られるスピネル粒子は、従来の製造方法で得られるスピネル粒子に比べて、結晶の緻密性により優れているので、各種の使用用途分野において、それ自体或いはそれと樹脂とを混合して得た熱可塑性ないしは熱硬化性の樹脂組成物や成形物は、より高い物理・化学特性を発揮しうる。また本発明の製造方法は、従来の製造方法に比べて反応容器へのスピネル粒子の固着もより少なく、取り出しが容易で作業性に優れ、その結果としてスピネル粒子の生産性に優れている。この様なスピネル粒子は、結晶の高い緻密性に基づき、例えば熱伝導性がより良好となるため、それを樹脂組成物の成形物は、優れた放熱部材として用いることができる。

Claims (9)

  1. マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデン原子と、を含む、スピネル粒子の製造方法であって、
    モリブデン化合物およびマグネシウム化合物を、前記マグネシウム化合物のマグネシウム元素に対する前記モリブデン化合物のモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/マグネシウム元素)が、1.0〜2.0で含む第1の混合物(A−1)を400〜1000℃で4〜100時間焼成してモリブデン酸マグネシウムを含む中間体を調製する工程(1)と、
    前記工程(1)で得られた中間体とアルミニウム化合物とを混合しこれらを含む第2の混合物を、前記工程(1)で選択した温度よりも高温で且つ1000〜2000℃で、3〜100時間焼成する工程(2)と、
    を含み、
    前記工程(2)で用いる第2の混合物が、
    これをアルミナ製るつぼに仕込み、電気炉中で1000℃まで600℃/時間で昇温したのち、室温まで自然放冷することによって得た焼成物を、固体27Al−NMR測定により分析し、モリブデン酸アルミニウムに帰属されるピークの面積を、モリブデン酸アルミニウムピークの面積とアルミナに帰属されるピークの面積との和、で割った値が30%以下である第2の混合物を用いることを特徴とする、スピネル粒子の製造方法。
  2. 前記第の混合物(A−1)及び/又は前記第2の混合物が、更にケイ素化合物を含有するものである請求項1記載のスピネル粒子の製造方法。
  3. 前記ケイ素化合物の含有量が、前記第の混合物(A−1)、前記第2の混合物中において、ケイ素元素がマグネシウム元素のモル比に対して0.076〜20モル%の範囲である請求項2記載のスピネル粒子の製造方法。
  4. 前記第2の混合物における、アルミニウム化合物の含有量が、前記工程(1)で得られた中間体中のモリブデン酸マグネシウムのマグネシウム元素と前記アルミニウム化合物中のアルミニウム元素とのモル比(アルミニウム元素/マグネシウム元素)が、2.8〜1.6の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のスピネル粒子の製造方法。
  5. マグネシウム原子、アルミニウム原子、および酸素原子と、モリブデン原子と、を含む、スピネル粒子の製造方法であって、
    モリブデン化合物、マグネシウム化合物およびアルミニウム化合物を含み、前記マグネシウム化合物のマグネシウム元素に対する前記モリブデン化合物のモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/マグネシウム元素)が、1.0〜2.0で含む第1の混合物(A−2)を400〜1000℃で4〜100時間焼成してモリブデン酸マグネシウムを含む中間体を調製する工程(1)と、
    前記中間体を含む第2の混合物を前記工程(1)で選択した温度よりも高温で且つ1000〜2000℃、3〜100時間焼成する工程(2)と、を含み、
    前記工程(2)で用いる第2の混合物が、
    これをアルミナ製るつぼに仕込み、電気炉中で1000℃まで600℃/時間で昇温したのち、室温まで自然放冷することによって得た焼成物を、固体27Al−NMR測定により分析し、モリブデン酸アルミニウムに帰属されるピークの面積を、モリブデン酸アルミニウムピークの面積とアルミナに帰属されるピークの面積との和、で割った値が30%以下である第2の混合物を用いることを特徴とする、スピネル粒子の製造方法。
  6. 前記第の混合物(A−2)及び/又は前記第2の混合物が、更にケイ素化合物を含有するものである請求項5記載のスピネル粒子の製造方法。
  7. 前記ケイ素化合物の含有量が、前記第の混合物(A−2)、前記第2の混合物中において、ケイ素元素がマグネシウム元素のモル比に対して0.076〜20モル%の範囲である請求項6記載のスピネル粒子の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって製造されたスピネル粒子と、樹脂とを混合する、樹脂組成物の製造方法。
  9. 請求項8の製造方法により製造された樹脂組成物を更に成形する、樹脂成形物の製造方法。
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