JP2016207616A - 電気化学素子用セパレータ、および電気化学素子の製造方法 - Google Patents

電気化学素子用セパレータ、および電気化学素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高温貯蔵特性、充放電サイクル特性および負荷特性に優れ、生産性が良好な電気化学素子を形成するためのセパレータと、前記電気化学素子を製造する方法を提供する。【解決手段】 本発明の電気化学素子用セパレータは、融点が100〜170℃である熱溶融性樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)と、耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを主成分とし、かつ前記フィラーがバインダ樹脂(B)で結着されて形成された耐熱多孔質層(II)とを有しており、少なくとも一方の表面に、加熱しながら加圧することによって電極との接着性が発現する接着性樹脂(C)が存在しており、接着性樹脂(C)は、特定の種類の樹脂の微細な粒子を含有する分散液を用いて存在させたものであり、表面での接着性樹脂(C)目付けが0.1〜1.5g/m2である。本発明の電気化学素子の製造方法は、本発明のセパレータと電極とを一体化する工程を有している。【選択図】 なし

Description

本発明は、高温貯蔵特性、充放電サイクル特性および負荷特性に優れ、生産性が良好な電気化学素子を形成するためのセパレータと、前記電気化学素子を製造する方法に関するものである。
近年、携帯電話、PDA、ノートパソコンなどのモバイル機器(携帯機器)の重要性が高まるとともに、それに搭載される電池の重要性も益々増している。特に環境への配慮から、繰り返し充電できる二次電池の重要性が増大している。このような二次電池は、現在では、前記のモバイル機器のような小型機器の電源用途だけでなく、自動車や、電動自転車、家庭用電力貯蔵システム、業務用電力貯蔵システムなどの大型機器への適用も検討されている。
二次電池を前記のような用途に適用するにあたっては、各種の電池特性の向上が求められるが、例えば、エネルギー密度の向上を図ると、一般に、高温環境下での使用や長期間での使用によって劣化が激しくなり、電池の耐久性の問題が生じる。また、エネルギー密度の上昇によって、電池の発煙・発火といった異常の発生を抑制する安全性の確保が難しくなる。
このため、例えば通常の二次電池のセパレータとして使用されているポリオレフィン製の微多孔膜の表面に、耐熱性に優れた微粒子を含む層を形成した積層体をセパレータとして用いることで、二次電池の安全性の向上を図る技術が開発されている(特許文献1など)。
また、前記の二次電池の劣化要因として、高温環境下での貯蔵や充放電を繰り返す過程で、非水電解液が分解して電池内でガスが発生したり電池内の電極自体が膨張収縮したりし、これらによって正極−負極間の距離にばらつきが生じて充放電反応の均一性が失われることが挙げられる。
一方、こうした問題の発生を抑制する技術の開発も行われている。特許文献2には、融点が100〜170℃である樹脂を主成分とする樹脂多孔質層(I)と、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主成分として含む耐熱多孔質層(II)とを有し、かつ少なくとも片面に、前記樹脂の融点よりも低い温度で加熱することで接着性が発現する接着性樹脂が存在しているセパレータを使用することで、セパレータと電極とを一体化させ、高温貯蔵中や充放電を繰り返した状況下における正極−負極間の距離のばらつきを抑えて、高温貯蔵特性や充放電サイクル特性の低下抑制を可能としたリチウム二次電池などの電気化学素子が提案されている。
国際公開第2007/066768号 特開2011−23186号公報
しかしながら、特許文献2に記載のリチウム二次電池などの電気化学素子においても、負荷特性の面で未だ改善の余地がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温貯蔵特性、充放電サイクル特性および負荷特性に優れ、生産性が良好な電気化学素子を形成するためのセパレータと、前記電気化学素子を製造する方法を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の電気化学素子用セパレータは、融点が100〜170℃である熱溶融性樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)と、耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを主成分とし、かつ前記フィラーがバインダ樹脂(B)で結着されて形成された耐熱多孔質層(II)とを有する電気化学素子用セパレータであって、少なくとも一方の表面に、加熱しながら加圧することによって電気化学素子が有する電極との接着性が発現する接着性樹脂(C)が存在しており、前記接着性樹脂(C)は、(i)ポリフッ化ビニリデン、(ii)フッ化ビニリデンとフッ素を含有する重合性ビニルモノマーとの共重合体、および(iii)アクリル系樹脂と(i)または(ii)とで構成された樹脂組成物よりなる群から選択される少なくとも1種であり、かつ平均粒子径が0.01〜0.5μmの球状の前記接着性樹脂(C)が分散している液を、前記樹脂多孔質層(I)および前記耐熱多孔質層(II)のうちの少なくとも一方の表面に塗布する工程を経て存在させたものであり、前記接着性樹脂(C)が存在する面での、前記接着性樹脂(C)の目付けが、0.1〜1.5g/mであることを特徴とするものである。
また、本発明の電気化学素子の製造方法は、正極、負極、非水電解液およびセパレータを有する電気化学素子の製造方法であって、前記正極と前記負極とを、本発明の電気化学素子用セパレータを介して巻回または積層して電極体を形成する工程(a)と、前記電極体を加熱しながら加圧して、前記セパレータと、前記正極および/または前記負極とを接着して一体化する工程(b)とを有することを特徴とする。
本発明によれば、高温貯蔵特性、充放電サイクル特性および負荷特性に優れ、生産性が良好な電気化学素子を形成するためのセパレータと、前記電気化学素子を製造する方法を提供することができる。
本発明の電気化学素子(リチウム二次電池)の一例を示す外観斜視図である。 図1のI−I線断面図である。
本発明の電気化学素子用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という)は、その少なくとも片面に、加熱しながら加圧することによって接着性が発現する接着性樹脂(C)が存在している。本発明のセパレータは、この接着性樹脂(C)の作用によって電気化学素子を構成する正極および/または負極と接着して一体化することができる。よって、本発明のセパレータを使用し、これを正極および/または負極と一体化させた電極体を用いた電気化学素子では、高温貯蔵途中や充放電を繰り返した状況下においても、正極−負極間の距離にばらつきが生じ難く、充放電特性の低下が抑制される。
また、電極とセパレータとが一体化していることから、電気化学素子の組み立て時などにおいて、巻回電極体での巻きズレや積層電極体での各構成要素の位置ズレを抑制できることから、電気化学素子の生産性を高めることもできる。
しかしながら、接着性樹脂(C)は、電極表面に接着することで、電気化学素子の充放電反応に伴う正極−負極間でのイオンの移動を阻害する。電気化学素子を軽負荷で充放電する際には、接着性樹脂(C)がイオンの移動を阻害することによる電池特性への影響はあまり問題にならないが、より大きな電流値で充放電を行うと、その影響が大きくなって、負荷特性の低下が生じてしまう虞がある。
そこで、本発明では、セパレータに存在させる接着性樹脂(C)について、その形態を制御することで、セパレータ表面に存在する接着性樹脂(C)を、そのドメインサイズが小さく、かつ平均的に点在できるようにした。これにより本発明のセパレータでは、その表面において接着性樹脂(C)によってイオンの移動が阻害されることを極力抑制することを可能とした。
また、接着性樹脂(C)には、特定の種類のものを使用し、電気化学素子の有する非水電解液を多量に吸収してイオン伝導性を発現するようにすることによっても、接着性樹脂(C)によってイオンの移動が阻害されることを抑制し得るようにした。
本発明のセパレータは、これらの作用によって、高温貯蔵特性および充放電サイクル 特性に加えて、負荷特性にも優れた電気化学素子を形成することができる。
また、本発明のセパレータでは、樹脂多孔質層(I)によるシャットダウン機能と、耐熱多孔質層(II)によるセパレータ全体の耐熱性を高める作用とによって、電気化学素子内が異常に昇温した際の安全性を高めることもできる。
接着性樹脂(C)には、(i)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、(ii)フッ化ビニリデンとフッ素を含有する重合性ビニルモノマーとの共重合体、および(iii)アクリル系樹脂と(i)または(ii)とで構成された樹脂組成物よりなる群から選択される少なくとも1種を使用する。
フッ化ビニリデンとフッ素を含有する重合性ビニルモノマーとの共重合体〔前記(ii)の共重合体〕としては、例えば、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF−CTFE)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−TFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−HFP−TFE)などが挙げられる。
また、PVDF〔樹脂(i)〕またはフッ化ビニリデンとフッ素を含有する重合性ビニルモノマーとの共重合体〔樹脂(ii)〕とともに樹脂組成物を構成するアクリル系樹脂としては、例えば、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
なお、前記アクリル樹脂と、(i)または(ii)の樹脂とは、単に混合されて樹脂組成物を構成していてもよいが、接着性や分散性などの点から、前記アクリル樹脂の分子鎖と、(i)または(ii)の樹脂の分子鎖とが、絡み合って樹脂組成物を構成していることが好ましい。
前記例示の接着性樹脂(C)は、水系のエマルジョン(水分散体)で供給され得るものであり、その分散粒子径を小さくすることが可能であるため、セパレータの表面において、個々のドメインサイズを小さくし、かつこれらを平均的に点在させることができる。また、前記の各樹脂は、電気化学素子内において、非水電解液を多量に吸収してイオン伝導性を発現することもできる。更に、前記例示の接着性樹脂(C)は、接着性が発現する温度が60℃以上120℃以下であり、樹脂多孔質層(I)の主成分である熱溶融性樹脂(A)として、接着性樹脂(C)の接着性が発現する温度よりも融点が高いものを選択することで、加熱しながら加圧して電気化学素子が有する電極とセパレータとを接着する際に、樹脂多孔質層(I)の溶融を抑制することができる。
接着性樹脂(C)は、前記の通り、接着性樹脂(C)の微細粒子が溶媒(水)中に分散した分散液をセパレータの表面に塗布する工程を経てセパレータの表面に存在させるが、この分散液中における接着性樹脂(C)の平均粒子径は、0.5μm以下であり、0.4μm以下であることが好ましい。なお、接着性樹脂(C)の分散液の調製が容易であることから、分散液中の接着性樹脂(C)の平均粒子径は、0.01μm以上であり、0.1μm以上であることが好ましい。
前記分散液中の接着性樹脂(C)の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用いて測定した数平均粒子径である。
前記例示の接着性樹脂(C)のうち、PVDFの市販品としては、アルケマ社製の「カイナーフレックス461(商品名)」が挙げられ、PVDF−HFPの市販品としては、アルケマ社製の「カイナーフレックス2501−20(商品名)」が挙げられる。
接着性樹脂(C)による非水電解液の吸収性は、以下の方法により見積もることができる。任意の量の接着性樹脂(C)をメスシリンダーに入れ、そこに、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との体積比3:7の混合液を加え、60℃で3時間経過後の接着性樹脂(C)の体積変化量を調べ、メスシリンダーに最初に投入した接着性樹脂(C)の体積〔接着性樹脂(C)の最初の体積〕から増加した体積分を、接着性樹脂(C)が吸収した混合液の量とする。そして、接着性樹脂(C)が吸収した混合液の量を接着性樹脂の最初の体積で除し、この値を百分率で表して、接着性樹脂(C)の吸液量とする。前記例示の接着性樹脂(C)を用いた場合には、この吸液量が100%以上となる。
この吸液量は、リチウム二次電池などの電気化学素子に通常使用される非水電解液の、接着性樹脂(C)が吸収し得る量にほぼ相当するため、前記例示の接着性樹脂(C)では、電気化学素子内において、体積基準で100%以上の非水電解液を吸収することができる〔すなわち、接着性樹脂(C)の体積を100%としたときの、この接着性樹脂(C)が吸収し得る非水電解液の体積が100%以上である〕。そして、このような量の非水電解液を吸収した接着性樹脂(C)は、イオン伝導性を有するものとなる。
接着性樹脂(C)は、セパレータを正極および負極のいずれか一方のみと一体化させる場合には、セパレータ表面のうち、一体化が予定される電極と接する側の表面にのみ存在させればよいが、セパレータを正極および負極の両者と一体化する場合には、セパレータの両面に存在させる。
セパレータにおける接着性樹脂(C)の存在面において、接着性樹脂(C)の目付けは、電極との接着を良好にする観点から、0.1g/m以上であり、0.2g/m以上であることが好ましく、0.4g/m以上であることがより好ましい。ただし、セパレータにおける接着性樹脂(C)の存在面において、接着性樹脂(C)の目付けが大きすぎると、セパレータ全体の厚みが大きくなりすぎたり、接着性樹脂(C)がセパレータの空孔を塞ぐ可能性が高くなり、電気化学素子内部でのイオンの移動が阻害されたりする虞がある。よって、セパレータにおける接着性樹脂(C)の存在面において、接着性樹脂(C)の目付けは、1.5g/m以下であり、1g/m以下であることが好ましく、0.9g/m以下であることがより好ましい。
なお、本発明のセパレータでは、非水電解液を多量に吸収してイオン伝導性を発現する接着性樹脂(C)を使用し、しかも、その微細粒子が分散した分散液を用いて接着性樹脂(C)を存在させることで接着性樹脂(C)の存在面において、サイズが小さい接着性樹脂(C)のドメインが平均的に点在するため、前記のようにセパレータの存在面における接着性樹脂(C)の目付けを大きくして電極との接着強度を高めても、電気化学素子の負荷特性を高く維持することができる。
本発明のセパレータでは、接着性樹脂(C)に関して前記の構成を採用することで、例えば、電気化学素子を構成する電極とセパレータとの間の180°での剥離試験を実施した際に得られる剥離強度を、加熱プレス前の状態では、0.05N/20mm未満、好ましくは0.03N/20mm以下、より好ましくは0N/20mm(全く接着力のない状態)とすることができ、また、50〜100℃の温度で加熱プレスした後の状態では0.05N/20mm以上、好ましくは0.1N/20mm以上とすることができる。
本明細書でいう電極とセパレータとの間の180°での剥離強度は、以下の方法により測定される値である。セパレータおよび電極を、それぞれ長さ5cm×幅2cmのサイズに切り出し、切り出したセパレータと電極と重ねる。加熱プレスした後の状態の剥離強度を求める場合には、片端から2cm×2cmの領域を加熱プレスして試験片を作製する。この試験片のセパレータと電極とを加熱プレスしていない側の端部を開き、セパレータと負極とを、これらの角度が180°になるように折り曲げる。その後、引張試験機を用い、試験片の180°に開いたセパレータの片端側と電極の片端側とを把持して、引張速度10mm/minで引っ張り、セパレータと電極とを加熱プレスした領域で両者が剥離したときの強度を測定する。また、セパレータと電極との加熱プレス前の状態での剥離強度は、前記のように切り出した各セパレータと電極とを重ね、加熱をせずにプレスする以外は前記と同様に試験片を作製し、前記と同じ方法で剥離試験を行う。
本発明のセパレータは、融点が100〜170℃の熱溶融性樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)と、耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを主成分とし、かつ前記フィラーがバインダ樹脂(B)で結着されて形成された耐熱多孔質層(II)とを有している。樹脂多孔質層(I)は、本発明のセパレータを用いた電気化学素子において、正極と負極との短絡を防止しつつ、イオンを透過するセパレータ本来の機能を有する層であり、耐熱多孔質層(II)は、セパレータに耐熱性を付与する役割を担う層である。
樹脂多孔質層(I)は、融点が100℃以上170℃以下、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100℃以上170℃以下の熱溶融性樹脂(A)を主成分としている。このような熱溶融性樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)を有するセパレータとすることで、これを用いた電気化学素子内が高温となった場合に、熱溶融性樹脂(A)が溶融してセパレータの孔を塞ぐ、いわゆるシャットダウン機能を確保することができる。
樹脂多孔質層(I)の主成分となる熱溶融性樹脂(A)は、融点が100℃以上170℃以下で、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後で詳述する電気化学素子の有する非水電解液や、耐熱多孔質層(II)形成用の組成物に使用する媒体に安定な熱可塑性樹脂であれば特に制限はないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンなどが好ましく、これらの熱溶融性樹脂(A)の中から、使用する接着性樹脂(C)の接着性が発現する温度よりも融点が高いものを選択することが好ましい。
樹脂多孔質層(I)には、例えば、従来から知られているリチウム二次電池などの電気化学素子で使用されているポリオレフィン製の微多孔膜、すなわち、無機フィラーなどを混合したポリオレフィンを用いて形成したフィルムやシートに、一軸または二軸延伸を施して微細な空孔を形成したものなどを用いることができる。また、前記の熱溶融性樹脂(A)と、他の樹脂を混合してフィルムやシートとし、その後、前記他の樹脂のみを溶解する溶媒中に、これらフィルムやシートを浸漬して、前記他の樹脂のみを溶解させて空孔を形成したものを、樹脂多孔質層(I)として使用することもできる。更に、熱溶融性樹脂(A)製の不織布を樹脂多孔質層(I)として使用することもできる。また、前記例示の樹脂製の微多孔膜と不織布とを複数積層したり、微多孔膜同士や不織布同士を複数積層したりしたものを樹脂多孔質層(I)として使用することもできる。
樹脂多孔質層(I)には、強度向上などを目的としてフィラーを含有させることもできる。このようなフィラーとしては、例えば、耐熱多孔質層(II)に使用されるフィラー(耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラー)の具体例として後述する各種フィラーが挙げられる。
樹脂多孔質層(I)における「熱溶融性樹脂(A)を主成分とする」とは、熱溶融性樹脂(A)を、樹脂多孔質層(I)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積。以下同じ。)中、70体積%以上含むことを意味している。樹脂多孔質層(I)における熱溶融性樹脂(A)の量は、樹脂多孔質層(I)の構成成分の全体積中、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましく、100体積%であってもよい。
耐熱多孔質層(II)は、耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを主成分として含んでいる。前記フィラーとしては、耐熱温度が150℃以上であり、電気絶縁性を有しており、電気化学素子内において電気化学的に安定で、電気化学素子内の非水電解液に対して安定であれば特に制限はない。本明細書でいう前記フィラーにおける「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において変形などの形状変化が目視で確認されないことを意味している。前記フィラーの耐熱温度は、200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることが更に好ましい。
耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーは、電気絶縁性を有する無機微粒子であることが好ましく、具体的には、酸化鉄、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、TiO、BaTiOなどの無機酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;モンモリロナイトなどの粘土微粒子;などが挙げられる。ここで、前記無機酸化物微粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などの微粒子であってもよい。また、これらの無機微粒子を構成する無機化合物は、必要に応じて、元素置換されていたり、固溶体化されていたりしてもよく、更に前記の無機微粒子は表面処理が施されていてもよい。また、無機微粒子は、金属、SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などで例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の無機酸化物など)で被覆することにより電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。
耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーには、有機微粒子を用いることもできる。有機微粒子の具体例としては、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、架橋ポリメチルメタクリレート(架橋PMMA)、架橋ポリスチレン(架橋PS)、ポリジビニルベンゼン(PDVB)、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの架橋高分子の微粒子;熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子の微粒子;が挙げられる。これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーは、前記例示のものを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、前記例示の各種フィラーの中でも無機酸化物微粒子が好ましく、より具体的には、アルミナ、シリカ、ベーマイトより選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーの粒径は、平均粒子径で、0.001μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることが最も好ましく、また、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが最も好ましい。耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーの平均粒子径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、前記フィラーを溶解しない媒体に分散させて測定した数平均粒子径として規定することができる(後記の実施例における前記フィラーの平均粒子径は、この方法で測定した値である)。
耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーの形状としては、例えば、球状に近い形状であってもよく、板状であってもよいが、短絡防止の点からは、板状の粒子であることが好ましい。板状粒子の代表的なものとしては、板状のAlや板状のベーマイトなどが挙げられる。
前記フィラーが板状粒子である場合の形態としては、アスペクト比が、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、また、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。更に、粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比(長軸方向長さ/短軸方向長さ)の平均値は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1に近い値であることが特に好ましい。
なお、板状の前記フィラーにおける前記の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。更に板状粒子における前記のアスペクト比も、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求めることができる。
セパレータ中での前記フィラーの存在形態は、平板面がセパレータの面に対して略平行であることが好ましく、より具体的には、セパレータの表面近傍における板状の前記フィラーについて、その平板面とセパレータ面との平均角度が30°以下であることが好ましい〔最も好ましくは、当該平均角度が0°、すなわち、セパレータの表面近傍における板状の平板面が、セパレータの面に対して平行である〕。ここでいう「表面近傍」とは、セパレータの表面から全体厚みに対しておよそ10%の範囲を指す。板状の前記フィラーの存在形態が前記のような場合には、樹脂多孔質層(I)の熱収縮をより効果的に防ぐことができ、全体として熱収縮率の特に小さなセパレータを形成することができる。
また、本発明のセパレータを用いた電気化学素子において、高出力の特性を必要とする場合には、前記フィラーには、一次粒子が凝集した二次粒子構造のフィラーを用いることが好ましい。このようなフィラーを用いることで、耐熱多孔質層(II)の空隙を大きくすることが可能となり、高い出力特性の電気化学素子を形成することができる。
耐熱多孔質層(II)は耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを主成分として含むが、ここでいう「耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを主成分として含む」とは、前記フィラーを、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積。以下同じ。)中、70体積%以上含むことを意味している。耐熱多孔質層(II)における前記フィラーの量は、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。耐熱多孔質層(II)中の前記フィラーを前記のように高含有量とすることで、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制して、高い耐熱性を付与することができる。
また、耐熱多孔質層(II)には、前記フィラー同士を結着したり耐熱多孔質層(II)と樹脂多孔質層(I)とを結着したりするためにバインダ樹脂(B)を含有させる。よって、耐熱多孔質層(II)における前記フィラー量の好適上限値は、例えば、耐熱多孔質層(II)の構成成分の全体積中、99体積%である。なお、耐熱多孔質層(II)における前記フィラーの量を70体積%未満とすると、例えば、耐熱多孔質層中(II)のバインダ樹脂(B)の量を多くする必要が生じるが、その場合には耐熱多孔質層(II)の空孔がバインダ樹脂(B)によって埋められてしまい、例えばセパレータとしての機能を喪失する虞がある。
耐熱多孔質層(II)に用いるバインダ樹脂(B)としては、前記フィラー同士や耐熱多孔質層(II)と樹脂多孔質層(I)とを良好に接着でき、電気化学的に安定で、かつ電気化学素子用の非水電解液に対して安定であれば特に制限はない。具体的には、フッ素樹脂(PVDFなど)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのバインダ樹脂(B)は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。
前記例示のバインダ樹脂(B)の中でも、150℃以上の耐熱性を有する耐熱樹脂が好ましく、特に、フッ素系ゴム、SBRなどの柔軟性の高い材料がより好ましい。これらの具体例としては、ダイキン工業社製の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム、商品名)」、JSR社製の「TRD−2001(SBR、商品名)」、日本ゼオン社製の「EM−400B(SBR、商品名)」などが挙げられる。また、アクリル酸ブチルを主成分とし、これを架橋した構造を有する低ガラス転移温度の架橋アクリル樹脂(自己架橋型アクリル樹脂)も好ましい。
なお、これらバインダ樹脂(B)を使用する場合には、後記する耐熱多孔質層(II)形成用の組成物(スラリーなど)の媒体に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。
耐熱多孔質層(II)の空孔率は、電気化学素子の有する非水電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。一方、強度の確保と内部短絡の防止の観点から、耐熱多孔質層(II)の空孔率は、乾燥した状態で、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。なお、空孔率:P(%)は、耐熱多孔質層(II)の厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(1)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P =100−(Σa/ρ)×(m/t) (1)
ここで、前記(1)式中、a:質量%で表した成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:耐熱多孔質層(II)の単位面積あたりの質量(g/cm)、t:耐熱多孔質層(II)の厚み(cm)である。
本発明のセパレータは、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)とを、それぞれ1層ずつ有していてもよく、複数有していてもよい。具体的には、樹脂多孔質層(I)の片面にのみ耐熱多孔質層(II)を配置してセパレータとする他、例えば、樹脂多孔質層(I)の両面に耐熱多孔質層(II)を配置してセパレータとしてもよい。ただし、セパレータの有する層数が多くなりすぎると、セパレータの厚みを増やして電気化学素子の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので好ましくなく、セパレータ中の層数は5層以下であることが好ましい。
本発明のセパレータは、例えば、樹脂多孔質層(I)に、耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーおよびバインダ樹脂(B)などを含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物(スラリーなど)を塗布した後、所定の温度で乾燥し、その後接着性樹脂(C)を含む分散液を塗布し乾燥して、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)とを有するセパレータの表面に接着性樹脂(C)を存在させる方法により製造することができる。
耐熱多孔質層(II)形成用組成物は、前記フィラーおよびバインダ樹脂(B)などを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。なお、バインダ樹脂(B)については溶媒に溶解させることもできる。耐熱多孔質層(II)形成用組成物に用いられる溶媒は、前記フィラーなどを均一に分散でき、また、バインダ樹脂(B)を均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般に有機溶媒が好適に用いられる。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、バインダ樹脂(B)が水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
耐熱多孔質層(II)形成用組成物は、前記フィラーおよびバインダ樹脂(B)を含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
なお、前記フィラーとして板状粒子を用い、かかる板状粒子の配向性を高めてその機能をより有効に作用させるためには、板状粒子を含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物を樹脂多孔質層(I)に塗布した後、前記組成物にシェアや磁場をかけるといった方法を用いればよい。例えば、板状の前記フィラーを含有する耐熱多孔質層(II)形成用組成物を樹脂多孔質層(I)に塗布した後、一定のギャップを通すことで、前記組成物にシェアをかけることができる。
前記のようにして形成した樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)との積層物に、接着性樹脂(C)の分散液を塗布して、接着性樹脂(C)を存在させることで本発明のセパレータを製造することができる。なお、この場合、前記の通り、耐熱多孔質層(II)は樹脂多孔質層(I)の片面または両面に形成することができ、また、接着性樹脂(C)は、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)との積層物の片面または両面に存在させることができる。
また、前記フィラーなどの構成物の持つ作用をより有効に発揮させるために、前記構成物を偏在させて、セパレータの膜面と平行または略平行に、前記構成物が層状に集まった形態としてもよい。
本発明のセパレータの製造方法は、前記の方法に限定される訳ではなく、他の方法によって製造してもよい。例えば、前記の耐熱多孔質層(II)形成用組成物を、ライナーのような基材表面に塗布し、乾燥して耐熱多孔質層(II)を形成した後、基材から剥離し、この耐熱多孔質層(II)を樹脂多孔質層(I)となる微多孔膜などと重ねて熱プレスなどにより一体化して積層物とし、その後、この積層物の片面または両面に前記と同様にして接着性樹脂(C)を存在させる方法でセパレータを製造することもできる。
このようにして製造されるセパレータの厚みは、電気化学素子用セパレータに使用するため、正極と負極とをより確実に隔離する観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。他方、セパレータが厚すぎると、電気化学素子としたときのエネルギー密度が低下してしまうことがあるため、その厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
また、セパレータを構成する樹脂多孔質層(I)の厚みをX(μm)、耐熱多孔質層(II)の厚みをY(μm)としたとき、XとYとの比率X/Yは、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、4以下であることが最も好ましく、また、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。本発明のセパレータでは、樹脂多孔質層(I)の厚み比率を大きくし耐熱多孔質層(II)を薄くしても、セパレータ全体の熱収縮を抑制することが可能であり、電気化学素子内でのセパレータの熱収縮による短絡の発生を高度に抑制することができる。なお、セパレータにおいて、樹脂多孔質層(I)が複数存在する場合には、厚みXはその総厚みであり、耐熱多孔質層(II)が複数存在する場合には、厚みYはその総厚みである。
具体的な値で表現すると、樹脂多孔質層(I)の厚み〔樹脂多孔質層(I)が複数存在する場合には、その総厚み。〕は、5μm以上であることが好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。そして、耐熱多孔質層(II)の厚み〔耐熱多孔質層(II)が複数存在する場合には、その総厚み。〕は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることが更に好ましく、また、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることが更に好ましい。樹脂多孔質層(I)が薄すぎると、シャットダウン特性が弱くなる虞があり、厚すぎると、電気化学素子のエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることに加えて、熱収縮しようとする力が大きくなり、セパレータ全体の熱収縮を抑える効果が小さくなる虞がある。また、耐熱多孔質層(II)が薄すぎると、セパレータ全体の熱収縮を抑制する効果が小さくなる虞があり、厚すぎると、セパレータ全体の厚みの増大を引き起こしてしまう。
セパレータ全体の空孔率としては、非水電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にする観点から、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。なお、セパレータの空孔率:P(%)は、前記(1)式において、mをセパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tをセパレータの厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて求めることができる。
また、前記(1)式において、mを樹脂多孔質層(I)の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを樹脂多孔質層(I)の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて樹脂多孔質層(I)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる樹脂多孔質層(I)の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
また、本発明のセパレータは、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が、10〜500secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。さらに、セパレータの強度としては、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する場合がある。前記の構成を採用することにより、前記の透気度や突き刺し強度を有するセパレータとすることができる。
本発明のセパレータを適用できる電気化学素子は、非水電解液を用いるものであれば特に限定されるものではなく、リチウム二次電池の他、リチウム一次電池やスーパーキャパシタなど、例えば高温での安全性が要求される用途であれば好ましく適用できる。すなわち、本発明のセパレータを適用可能な電気化学素子は、セパレータ以外の構成および構造については特に制限はなく、従来から知られている非水電解液を有する各種電気化学素子(リチウム二次電池、リチウム一次電池、スーパーキャパシタなど)が備えている各種構成・構造を採用することができる。
以下、一例として、リチウム二次電池への適用について詳述する。リチウム二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
リチウム二次電池に係る正極には、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている正極を使用することができる。例えば、正極活物質としては、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている活物質、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば特に制限はない。例えば、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMnやその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などを用いることが可能である。
前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoOやLiNi1−xCox−yAl(0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiMn5/12Ni5/12Co1/6、LiNi3/5Mn1/5Co1/5など)などを例示することができる。
また、正極の導電助剤としては、例えば、カーボンブラックなどの炭素材料が挙げられ、正極のバインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂が挙げられる。そして、正極には、前記の正極活物質、導電助剤およびバインダを含む正極合剤により構成される正極合剤層が、集電体の片面または両面に形成されたものを使用することができる。
正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
負極としては、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な炭素材料、リチウム合金、リチウムと合金可能な金属、リチウム金属から選ばれる少なくとも1種を活物質として用いた負極であれば特に制限はない。活物質としては、より具体的には、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金、LiTi12、LiTiといったLi含有酸化物も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどのバインダなどを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたもの、または、前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、もしくは集電体表面に積層したものなどを、負極として使用することができる。
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、下限は5μmであることが望ましい。また、負極側のリード部は、正極側のリード部と同様にして形成すればよい。
なお、前記のような正極合剤層を有する正極や、負極合剤層を有する負極は、例えば、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒に分散させてなる正極合剤層形成用組成物(スラリーなど)や、負極合剤をNMPなどの溶媒に分散させてなる負極合剤層形成用組成物(スラリーなど)を集電体表面に塗布し、乾燥することにより作製される。
電極は、前記の正極と前記の負極とを、本発明のセパレータを介して積層した積層体(積層電極体)や、更にこれを巻回した巻回体(巻回電極体)といった電極体の形態で用いることができる。
非水電解液としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLiイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こしにくいものであれば特に制限はない。例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF 、LiSbF などの無機リチウム塩、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(ROSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩などを用いることができる。
非水電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンなどの環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの非水電解液に安全性や充放電サイクル特性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
このリチウム塩の電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
なお、前記のリチウム二次電池の一例を図面に基づいて説明する。なお、図面で示すリチウム二次電池は、本発明の一例に過ぎず、本発明の電気化学素子は、これらの図面に図示するものに限定される訳ではない。図1は、リチウム二次電池の一例を示す外観斜視図であり、図2は、図1のI−I線の断面図である。
図1および図2に示すリチウム二次電池1は、巻回電極体9を角形の外装缶2内に収容した電池の例である。すなわち、リチウム二次電池1は、角形の外装缶2と蓋板3とを備えており、前記の通り、外装缶2は正極端子を兼ねている。蓋板3はアルミニウム合金などの金属で形成され、外装缶2の開口部を封口している。また、蓋板3には、PPなどの合成樹脂で形成された絶縁パッキング4を介して、ステンレス鋼などの金属で形成された端子5が設けられている。
図2に示すように、リチウム二次電池1においては、正極6と、負極7と、セパレータ8とを有し、セパレータ8と正極6および負極7の少なくとも一方とが接着性樹脂(C)により一体化した扁平状の巻回電極体9として、外装缶2内に非水電解液と共に収納されている。ただし、図2では、煩雑化を避けるため、正極6や負極7に係る集電体や、非水電解液などは図示していない。また、セパレータ8の各層や接着性樹脂(C)を区別して示しておらず、更に、巻回電極体9の内周側の部分は断面にしていない。
また、外装缶2の底部にはポリテトラフルオロエチレンシートなどの合成樹脂シートで形成された絶縁体10が配置され、巻回電極体9からは正極6および負極7のそれぞれの一端に接続された正極リード体11と負極リード体12が引き出されている。正極リード体11、負極リード体12は、ニッケルなどの金属から形成されている。端子5にはPPなどの合成樹脂で形成された絶縁体13を介して、ステンレス鋼などの金属で形成されたリード板14が取り付けられている。
蓋板3は外装缶2の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、外装缶2の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。
なお、図2では、正極リード体11を蓋板3に直接溶接することによって、外装缶2と蓋板3とが正極端子として機能し、負極リード体12をリード板14に溶接し、リード板14を介して負極リード体12と端子5とを導通させることによって、端子5が負極端子として機能するようになっているが、外装缶2の材質などによっては、その正負が逆となる場合もある。
本発明のセパレータを用いた電気化学素子は、正極と負極とを、本発明のセパレータを介して巻回または積層して電極体を形成する工程(a)と、この電極体を加熱しながら加圧して(すなわち、加熱プレスして)、セパレータと正極および/または負極とを接着して一体化する工程(b)とを有する本発明法によって製造することができる。
前記工程(b)において、電極体を加熱プレスする際の加熱温度は、セパレータに係る樹脂多孔質層(I)を構成する熱溶融性樹脂(A)の融点未満の温度であればよいが、前述したように50℃以上100℃以下であることが好ましい。また、加熱プレス時の圧力は、特に制限はないが0.1Pa以上であることが好ましい。更に、加熱プレスの時間は、特に制限はないが30s以上が好ましい。
前記工程(b)を経てセパレータと正極および/または負極とが一体化された電極体は、常法に従い、外装体(電池ケース)に挿入した後、非水電解液を注入し、封止して電気化学素子とすることができる。
なお、電極体を加熱しながら加圧する際には、電極体に直接加熱プレスを施したり、例えば電極体をアルミニウムラミネートフィルムなどの金属ラミネートフィルムで構成された外装体に挿入し、非水電解液を注入して外装体を封止した後に、外装体ごと加熱プレスを施したりすることができる。この場合の、好ましい加熱温度やプレス圧力、プレス時間は、前記の場合と同様である。
本発明のセパレータを有する電気化学素子は、接着性樹脂(C)によってセパレータと正極および/または負極とが一体化していることから、高温貯蔵特性および充放電サイクル特性に優れており、また、負荷特性や生産性も良好である。よって、本発明のセパレータを有する電気化学素子は、こうした特性を生かして、携帯電話、ノート型パソコンなどのモバイル情報機器の駆動電源用途をはじめとして、従来から知られているリチウム二次電池などの電気化学素子が用いられている各種用途と同じ用途に幅広く適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極の作製>
リチウム含有複合酸化物であるLiCo0.995Mg0.005(正極活物質):94質量部に、導電助剤としてカーボンブラック:3質量部を加えて混合し、この混合物にPVDF:3質量部をNMPに溶解させた溶液を加えて混合して正極合剤含有スラリーとし、70メッシュの網を通過させて粒径が大きなものを取り除いた。この正極合剤含有スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗付して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して総厚さを136μmにした後、切断し、アルミニウム製のリード体を溶接して、帯状の正極を作製した。
<負極の作製>
負極活物質には、以下の方法により合成された高結晶の人造黒鉛を用いた。コークス粉末:100質量部、タールピッチ:40質量部、炭化ケイ素:14質量部、およびコールタール:20質量部を、空気中において200℃で混合した後に粉砕し、窒素雰囲気中において1000℃で熱処理し、更に窒素雰囲気中において3000℃で熱処理して黒鉛化させて人造黒鉛とした。得られた人造黒鉛は、BET比表面積が4.0m/gで、X線回折法によって測定されるd002が0.336nm、c軸方向の結晶子の大きさLcが48nm、全細孔容積が1×10−3/kgであった。
この人造黒鉛を用い、結着剤としてSBRを用い、増粘剤としてCMCを用い、これらを質量比98:1:1の割合で混合し、更に水を加えて混合して負極合剤含有ペーストとした。この負極合剤含有ペーストを、厚みが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して総厚さを138μmにした後、切断し、ニッケル製のリード体を溶接して、帯状の負極を作製した。
<非水電解液の調製>
EC、MECおよびDECの体積比10:10:30の混合溶媒にLiPFを1.0mol/lの濃度で溶解させたものに、ビニレンカーボネートを、非水電解液の全質量に対して2.5質量%となるように添加して、非水電解液を調製した。
<セパレータの作製>
バインダ樹脂(B)であるSBRの水分散体(固形分比率40質量%)300gと、水4000gとを容器に入れ、均一に分散するまで室温で攪拌した。この分散液に、耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーであるベーマイト粉末(板状、平均粒径1μm、アスペクト比10)4000gを4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。PP層/PE層/PP層の順番で積層された微多孔膜(厚み:16μm、空孔率:40%、平均孔径:0.02μm、表層である両PP層の厚み:いずれも5μm、PE層の厚み:6μm、PE層を構成するPEの融点:135℃、PP層を構成するPPの融点:166℃)の両面上に、前記のスラリーをマイクログラビアコーターによって、乾燥後の厚みが片面あたり3.5μmになるようにそれぞれ塗布し、乾燥して耐熱多孔質層(II)を形成することで、厚みが23μmの積層物〔樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)との積層物〕を得た。この積層物の耐熱多孔質層(II)における前記フィラーの体積含有率は92体積%であり、耐熱多孔質層(II)の空孔率は48%であった。
次に、接着性樹脂(C)であるPVDF−HFPの球状粒子を含有する水分散体〔アルケマ社製「カイナーフレックス2501−20(商品名)」、PVDF−HFPの濃度:27質量%、PVDF−HFPの平均粒子径:0.2μm〕を、樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)との積層物の両面の耐熱多孔質層(II)上にそれぞれ塗布し、乾燥して接着性樹脂(C)を存在させることで、厚みが25μmのセパレータを得た。なお、このセパレータに係る接着性樹脂(C)の目付けは、両面とも0.6g/mであった。
<リチウム二次電池の組み立て>
前記のようにして得たセパレータを前記正極と前記負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、80℃で1分間、0.5Paの圧力で加熱プレスを施した。この巻回電極体を、厚み6mm、高さ50mm、幅34mmのアルミニウム製外装缶に入れ、外装缶の上部開口端に蓋板を被せてレーザー溶接してから、蓋板に設けた電解液注入口から前記非水電解液を注入した後に、露点−30℃のドライルーム内で、以下の条件で充電した。まず、充電量が電池の設計電気容量の25%(197.5mAh)となるように、0.25CmA(197.5mA)の定電流で1時間充電し、外装缶内で発生するガスを電解液注入口から自然放出させた。その後、電解液注入口を封止して、外装缶と蓋板とから形成された電池ケースを密閉状態として、図1に示す外観で、図2に示す構造のリチウム二次電池を得た。このリチウム二次電池について、0.3CmA(237mA)で4.1Vになるまで充電してから、60℃で12時間貯蔵した。そして、この電池を0.3CmA(237mA)で4.2Vになるまで充電してから、更に4.2Vの定電圧で2.5時間充電した後、1CmA(790mA)で3Vまで放電して、評価用リチウム二次電池とした。
なお、図1および図2では示していないが、本実施例1のリチウム二次電池は、外装缶2の上部に、内圧が上昇した場合に圧力を逃がすための開裂ベントを備えている。また、図1および図2では示していないが、前記の通り、本実施例1のリチウム二次電池は、蓋板3に電解液注入口を有しており、この電解液注入口が封止材によって封止されている。更に、本実施例のリチウム二次電池では、4.2Vまで充電した場合(正極の電位がLi基準で4.3V)の設計電気容量が、前記の通り、790mAhである(後述する各実施例および比較例も、同様である)。
実施例2
接着性樹脂(C)として、PVDF−HFPの球状粒子を含有する水分散体に代えて、PVDFの球状粒子を含有する水分散体〔アルケマ社製「カイナーフレックス461(商品名)」、PVDFの濃度:27質量%、PVDFの平均粒子径:0.2μm〕を使用し、耐熱多孔質層(II)の厚みを片面あたり3.8μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
実施例3
耐熱多孔質層(II)を樹脂多孔質層(I)の片面にのみ形成した以外は、実施例1と同様にして樹脂多孔質層(I)と耐熱多孔質層(II)との積層物(厚み:19.5μm)を作製し、実施例1と同様にしてこの積層物の耐熱多孔質層(II)の表面にのみ接着性樹脂(C)(PVDF−HFP)を、目付け:0.6g/mで存在させて、厚みが20.5μmのセパレータを得た。そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。なお、このリチウム二次電池が有する電極体においては、セパレータの樹脂多孔質層(I)が負極と面するようにし、セパレータと正極とを接着性樹脂(C)によって一体化した。
実施例4
耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを、ベーマイトからアルミナ(球状、平均粒子径:0.4μm)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
実施例5
耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを、ベーマイトからシリカ(鱗片状、平均粒子径:0.7μm)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
実施例6
セパレータの両面における接着性樹脂(C)の目付けを、それぞれ1.0g/mとした以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
実施例7
セパレータの両面における接着性樹脂(C)の目付けを、それぞれ0.2g/mとした以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
比較例1
実施例1でセパレータの作製に使用したものと同じPP層/PE層/PP層の3層構造の微多孔膜を、耐熱多孔質層(II)を形成せず、また、接着性樹脂(C)を存在させることなくセパレータとして使用し、巻回電極体の加熱プレスを実施しなかった以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
比較例2
PVDF−HFPの球状粒子を含有する水分散体に代えて、耐熱多孔質層(II)のバインダ樹脂(B)として用いたものと同じSBRの水分散体を使用した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
比較例3
セパレータの両面における接着性樹脂(C)の目付けを、それぞれ0.05g/mとした以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
実施例および比較例の各リチウム二次電池に使用したセパレータ、並びに実施例および比較例の各リチウム二次電池について、下記の各評価を行った。
<180°剥離試験>
各セパレータおよびリチウム二次電池に使用したものと同じ前記の電極(正極または負極)を、それぞれ長さ5cm×幅2cmのサイズに切り出し、各セパレータを電極と重ねて、片端から2cm×2cmの領域を80℃で1分間、0.5Paの圧力で加熱プレスして、試験片を作製した。これらの試験片のセパレータと電極とを加熱プレスしていない側の端部を開き、セパレータと電極とを、両者の角度が180°になるように折り曲げた。その後、引張試験機を用い、試験片の180°に開いたセパレータの片端側と電極の片端側とを把持して、引張速度10mm/minで引っ張り、セパレータと電極とを加熱プレスした領域で両者が剥離したときの強度を測定した。また、セパレータと電極との加熱プレス前の剥離強度は、前記のように切り出した各セパレータと電極とを重ね、加熱をせずにプレスした以外は、前記と同様にして測定した。
なお、両面に接着性樹脂(C)を存在させた実施例1、2、4〜7に係るセパレータと、比較例2、3に係るセパレータについては、正極との間の剥離強度および負極との間の剥離強度の双方を測定し、正極側と接する面側にのみ接着性樹脂(C)を存在させた実施例3に係るセパレータについては、正極との間の剥離強度のみ測定した。また、巻回電極体の加熱プレスを実施しなかった比較例1に係るセパレータについては、剥離強度の測定は実施しなかった。
<熱収縮試験>
実施例および比較例に係る各セパレータのMD方向およびTD方向を、それぞれ5cm、10cmとした短冊状の試験片を切り取った。なお、MD方向とはセパレータの樹脂多孔質層(I)に使用した微多孔膜の製造時の機械方向であり、TD方向とは、MD方向に垂直な方向である。前記の試験片において、MD方向およびTD方向の中心で交差するように、MD方向およびTD方向のそれぞれに平行に3cmずつの直線を油性マジックでマークした。なお、これらの直線の中心は、これらの直線の交差点とした。
前記の各試験片を恒温槽に吊るし、槽内温度を5℃/分の割合で150℃まで上昇させ、その後150℃で1時間保ち、その後に試験片を恒温槽から取り出してMD方向のマークの長さを測定して下記式によって熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%) = 100×(3−x)/3
〔なお、前記式中、xは150℃に設定した恒温槽内で1時間放置した後のセパレータのMD方向の寸法(cm)である。〕
<負荷特性評価>
実施例および比較例の各リチウム二次電池について、0.2Cの電流値で4.20Vになるまで定電流充電を行い、次いで4.20Vでの定電流充電を行う定電圧−定電流充電を実施した。なお、充電終了までの総充電時間は15時間とした。次に、充電後の各電池について、0.2Cの電流値で電池電圧が3Vになるまで放電を行って、放電容量を求めた(これらの容量を「0.2C放電容量」という。)。
次に、各電池について、前記と同じ条件で定電流−定電圧充電を行った後、2Cの電流値で電池電圧が3Vになるまで放電を行って、放電容量を求めた(これらの容量を「2C放電容量」という。)
そして、各電池について、2C放電容量を0.2C放電容量で除し、これを百分率で表して、容量維持率を求めた。なお、前記の充電および放電は、全て温度が20℃に制御された試験室内で行った。
<高温貯蔵特性>
実施例および比較例の各リチウム二次電池(他の評価を実施していない電池)を、20℃において395mA(0.5C)で4.2Vになるまで充電し、更に4.2Vの定電圧で2.5時間充電して満充電とし、この時の電池の厚みを測定した。その後、20℃において1Cで3Vまで放電して貯蔵前の放電容量を測定した。
次に、各電池を前記と同様にして充電した後、恒温槽中において80℃で5日間貯蔵した。貯蔵後の各電池を20℃まで自然冷却して厚みを測定し、貯蔵前の電池の厚みとの比較から、高温貯蔵後の電池の膨れを求めた。その後、各電池を貯蔵前と同じ条件で放電して高温貯蔵後の放電容量を測定した。そして、高温貯蔵後の放電容量を貯蔵前の放電容量で除し、この値を百分率で表して、高温貯蔵後の容量維持率を算出した。
<充放電サイクル特性>
実施例および比較例の各リチウム二次電池(他の評価を実施していない電池)について、45℃において、0.5Cで4.2Vになるまで充電し、更に4.2Vの定電圧で2.5時間充電して満充電とし、その後、1Cで3Vまで放電する充放電サイクルを300回繰り返し、1サイクル目の放電容量と300サイクル目の放電容量を測定した。続いて、300サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除し、この値を百分率で表して容量維持率を算出した。
<150℃加熱試験>
実施例および比較例の各リチウム二次電池(他の評価を実施していない電池)について、0.2C放電容量測定時と同じ条件で定電流−定電圧充電を行った。充電後の各電池を恒温槽に入れ、槽内温度を5℃/分の速度で上昇させ、150℃に到達後、この温度で3時間保った。150℃で3時間保持する間の各電池の表面温度を、電池表面に接続した熱電対により測定し、その最高温度を求めた。前記の最高温度は、各実施例、比較例とも3回測定し、その平均値を求めた。
実施例および比較例のリチウム二次電池に使用したセパレータの構成を表1に示し、前記の各評価結果を表2および表3に示す。なお、表1に示す接着性樹脂(C)の吸液量は、ECとDECとの体積比3:7の混合液を用いて前記の方法によって測定した値である。また、表1に示す接着性樹脂(C)の目付けは、セパレータの片面あたりの目付けであり、耐熱多孔質層(II)の厚みも、セパレータの片面あたりの厚みである。更に、表1に示す接着性樹脂(C)の平均粒子径は、接着性樹脂(C)をセパレータ表面に存在させるために使用した水分散体中の平均粒子径である。
表1から明らかなように、実施例1〜7のリチウム二次電池に使用したセパレータは、電極との180°での剥離強度が、室温、すなわち加熱プレス前では最大でも0.02N/20mmと小さく、殆ど接着性を示さないが、80℃での加熱プレス後では、いずれも0.1N/20mm以上であり、セパレータと電極とが強固に一体化されている。
また、表1および表2に示す通り、実施例1〜7のリチウム二次電池は、適正な平均粒子径のPVDF−HFP粒子またはPVDF粒子を含有する水分散体を用いて、接着性樹脂(C)を表面に存在させたセパレータを用い、前記接着性樹脂(C)によってセパレータと電極とを一体化していることから、セパレータ表面で広がって大きなドメインを形成してしまい、かつ非水電解液をあまり吸収できないSBRを使用したセパレータを用いた比較例2の電池に比べて、負荷特性評価時の容量維持率が高く、優れた負荷特性を有していた。実施例1〜7の電池では、セパレータ表面での接着性樹脂(C)の存在状態を良好に制御できた結果、セパレータと電極との間での非水電解液の流通がよく電極が非水電解液に良好に接触しており、充放電反応の進行に伴う電極近傍での非水電解液不足も抑制されていると考えられ、これらの作用によって、良好な負荷特性を確保できたと推測される。なお、接着性樹脂(C)の目付けが特に好適なセパレータを使用した実施例1〜5、7の電池は、この目付けの値がやや大きい実施例6の電池に比べて、特に優れた負荷特性を有していた。
更に、表3に示す通り、実施例1〜7のリチウム二次電池は、高温貯蔵後の膨れ量が小さく、容量維持率も良好で高温貯蔵特性が優れており、また、充放電サイクル特性評価時の容量維持率が高く優れた充放電サイクル特性も有していた。これに対し、接着性樹脂(C)を配していないセパレータを使用した比較例1の電池、および接着性樹脂(C)の目付けが小さすぎるセパレータを使用した比較例3の電池では、高温貯蔵特性および充放電サイクル特性が劣っていた。これは、実施例1〜7の電池においては、接着性樹脂(C)の作用によって電極とセパレータとが良好に一体化されていることで、充電状態での電池の保存および充放電サイクル過程におけるガス発生、電極の膨張収縮などで生じ得る電極間距離の増大による電池内部抵抗の増加、並びに電流集中によるLiデンドライト生成が、いずれも良好に抑制できたためであると考えられる。
また、表3に示す通り、耐熱多孔質層(II)を有するセパレータを使用した実施例1〜7のリチウム二次電池は、これを有しないセパレータを使用した比較例1の電池に比べて、150℃加熱試験時の電池の最高温度が抑えられており、安全性にも優れていた。
更に、実施例1〜7のリチウム二次電池では、巻回電極体作製時の巻きズレなどの問題も発生せず、高い生産性を有していた。
1 電気化学素子(リチウム二次電池)
2 外装缶
3 蓋板
4 絶縁パッキング
5 端子
6 正極
7 負極
8 セパレータ
9 巻回電極体
10 絶縁体
11 正極リード体
12 負極リード体
13 絶縁体
14 リード板

Claims (4)

  1. 融点が100〜170℃である熱溶融性樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)と、耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを主成分とし、かつ前記フィラーがバインダ樹脂(B)で結着されて形成された耐熱多孔質層(II)とを有する電気化学素子用セパレータであって、
    少なくとも一方の表面に、加熱しながら加圧することによって電気化学素子が有する電極との接着性が発現する接着性樹脂(C)が存在しており、
    前記接着性樹脂(C)は、(i)ポリフッ化ビニリデン、(ii)フッ化ビニリデンとフッ素を含有する重合性ビニルモノマーとの共重合体、および(iii)アクリル系樹脂と(i)または(ii)とで構成された樹脂組成物よりなる群から選択される少なくとも1種であり、かつ平均粒子径が0.01〜0.5μmの球状の前記接着性樹脂(C)が分散している液を、前記樹脂多孔質層(I)および前記耐熱多孔質層(II)のうちの少なくとも一方の表面に塗布する工程を経て存在させたものであり、
    前記接着性樹脂(C)が存在する面での、前記接着性樹脂(C)の目付けが、0.1〜1.5g/mであることを特徴とする電気化学素子用セパレータ。
  2. 前記フィラーとして、アルミナ、シリカおよびベーマイトよりなる群から選択される少なくとも1種の微粒子を含有している請求項1に記載の電気化学素子用セパレータ。
  3. 正極、負極、非水電解液およびセパレータを有する電気化学素子の製造方法であって、
    前記正極と前記負極とを、請求項1または2に記載の電気化学素子用セパレータを介して巻回または積層して電極体を形成する工程(a)と、
    前記電極体を加熱しながら加圧して、前記セパレータと、前記正極および/または前記負極とを接着して一体化する工程(b)とを有することを特徴とする電気化学素子の製造方法。
  4. 前記工程(b)において、前記電極体を加熱しながら加圧する際の加熱温度が、50〜100℃である請求項3に記載の電気化学素子の製造方法。
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