JP2016204520A - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
すなわち本発明は以下の通りである。
(A)ポリマー構造の一部に下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含有するポリカーボネート樹脂
[3]前記ポリカーボネート樹脂(A)が、ジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位に対して、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を30〜95mol%含むことを特徴とする前記[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]前記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が1,4−シクロヘキサンジメタノールであることを特徴とする前記[2]又は[3]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]JIS K7136に基づき、測定される厚み1.0mmのプレートの全光線透過率が85%以上、かつ全ヘーズ値が5.0%以下であること特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする成形品。
[7]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする窓材。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、構造の一部に下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含有するポリカーボネート樹脂(A)を主成分とする。ここで主成分とは、通常50質量%を超え、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であることをいう。
ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とすることにより、本組成物が透明性、耐熱性、低吸水性、表面硬度、低複屈折性及び耐衝撃性のバランスに優れる。
これらのジヒドロキシ化合物は、フェノール性水酸基を有しないため、通常界面法で重合させることは困難であり、本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)は、通常炭酸ジエステルを用いたエステル交換反応により製造される。
脂肪族ジヒドロキシ化合物として、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等が挙げられる。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、通常、5員環構造又は6員環構造を含む化合物が挙げられる。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環構造又は6員環構造であることにより、得られるポリカーボネート樹脂(A)の耐熱性が高くなる傾向がある。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。炭素数が70以下の脂環式ジヒドロキシ化合物であれば、合成・精製しやすく、また安価で入手しやすいため好ましい。
HOCH2−R9−CH2OH (I)
HO−R10−OH (II)
(但し、式(I),式(II)中、R9及びR10は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数4〜炭素数20のシクロアルキル構造を含む二価の基を表す。)
また前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は一般に不活性雰囲気下でも熱分解しやすいため、ガラス転移温度を係る範囲にすることにより溶融樹脂温度を過度に高く設定する必要をなくすことができれば、著しい熱分解を引き起こすおそれも小さいため好ましい。
なお、前記ガラス転移温度は、JIS−K7121(2012年)に準拠して、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、DSC220)を用いて、10℃/分の昇温速度で加熱して測定する補外ガラス転移開始温度を指す。
このため、重合反応の終末段階で前記芳香族系ジヒドロキシ化合物を少量添加すれば、重合末端を前記芳香族系ジヒドロキシ化合物で塞ぐことで、加熱したりフェノール脱揮したりしても重合反応が急激にならずにすむ効果が期待できる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述した前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述のように前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応させて得られる。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常エステル交換反応触媒の存在下でエステル交換反応により重縮合を行う。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、前記一般式(5)で表される炭酸ジエステルとを触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させることによって得ることができる。
この時、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合してもよいし、混合せずに重合槽へ同時に投入されてもよいが、均一に混合することが好ましい。
また、前記モル比率が1.200以下であれば、エステル交換反応の速度の低下などの可能性が小さく、所望する高分子量のポリカーボネート樹脂が得られるため好ましい。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂(A)の色相または耐光性を悪化させるおそれがある。
変動幅が0.07以下であれば、均一な重合が進行するために得られる分子量の幅が広くなり過ぎず、均一で成形性の良好なポリカーボネート樹脂が得られ、その結果として均一な成形体が得られるため好ましい。
ベント圧が上記範囲であれば、残存するモノマーや発生するガスを十分に脱揮することが可能であり、ストランド状に押し出す際に、ストランドが切れたり、押出機においてポリカーボネート樹脂の重合反応や分解が進行したりするおそれが小さいため好ましい。
押出機へ投入される樹脂量、押出機の回転数、バレル温度、ベント圧力を可能な限り一定にすることにより、均一な樹脂を得られるようになる。
また、ベントやベント以降の配管を40℃以上に保温することにより、留出するモノマーがベントやベント以降配管で固化せずに、均一なベント圧力を保持することができる。
水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが好ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、還元粘度で表すことができ、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度は、通常0.30dL/g以上が好ましく、0.35dL/g以上がより好ましく、また、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
ここで、ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度の範囲幅とは、連続的に製造されるポリカーボネート樹脂(A)について、例えば4〜24時間にわたって、連続的に又は1〜8時間に1回の頻度で、還元粘度を測定することにより、還元粘度の経時変化を調べた場合、その最大値と最小値との差に該当するものである。
還元粘度の範囲幅の小さいポリカーボネート樹脂(A)を製造する方法としては、圧力や温度を制御して最終重合槽の攪拌を一定にし、攪拌電流値や攪拌トルクを一定にしたり、重合槽以降のギアポンプの電流値を一定にしたりすることが望ましい。
芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の範囲幅の小さいポリカーボネート樹脂(A)を製造する方法としては仕込みのジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比を一定にすることや、重合槽の還流温度を一定にし、重合槽の温度や圧力を一定にし、減圧系での運転では真空トラップを複数基完備する等の工夫を行うことが挙げられる。
本組成物は難燃剤として構造中にフッ素を有するフッ素含有スルホン酸金属塩化合物を含有することが重要である。フッ素含有スルホン酸金属塩化合物はポリカーボネート樹脂(A)と相溶なため、透明な成形体を得ることが出来る。また燃焼時に活性な水酸基や水素ラジカルをトラップし、また生成するハロゲン化水素が不燃性であり、希釈効果と酸素遮断効果から優れた難燃性を示す。
なお前記例示化合物は、本発明に使用し得る金属塩化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの金属塩化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本組成物はさらに、難燃剤として構造中に非ハロゲンリン酸エステル系化合物(C)を含有する。
本発明に用いられる非ハロゲンリン酸エステル系化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート等のリン酸エステル系化合物、1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、テトラフェニル(m−フェニレン)ビスホスフェート、ビス(ジトリル)イソプロピリデン−ジ−p−フェニレンホスフェート等の縮合リン酸エステル系化合物、4,4’−ビス(ジフェニルホスホリルアミドフェニル)メタン等のリン酸エステルアミド系化合物、ホスホニトリル酸フェニルエステル等のホスファゼン系化合物を挙げることができる。これらの中でも特に、難燃効果、耐加水分解性の点から縮合リン酸エステル系化合物、あるいは、ホスファゼン系化合物を用いることが好ましい。
なお前記例示化合物は、本発明に使用しえるリン酸エステル系化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらのリン酸エステル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、難燃助剤を含有することができる。中でも、フッ素系樹脂からなり、燃焼時にフィブリル化することで樹脂の溶融張力を向上させるドリップ防止剤や、ハロゲン系の難燃剤と併用することで相乗効果を示すアンチモン化合物などが好適に用いられる。
本発明のもう一つの要旨は、本組成物を用いてなるプレート(以下、「本プレート」と称する)にある。本プレートの製造方法は、特に限定されるものではない。例えばポリカーボネート樹脂、難燃剤、難燃助剤及び、必要に応じてその他の樹脂・添加剤を単軸、あるいは二軸押出機等で溶融混練し、射出成型、もしくはコンパウンド成形したものを熱プレスすることにより、作製することが出来る。
プレートの厚みは、特に限定するものではないが、例えば加工性、実用性を考慮した場合、0.5mm以上、3.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上、3.0mm以下であることがより好ましい。本プレートの厚みが1.0mm以上であれば、好適なプレートの剛性が発現し、加工性、耐カール性に優れる。
(1)難燃性
本組成物は難燃性に優れるものであり、火災などにより燃焼した場合において瞬時に自消するものである。また燃焼時に溶融した樹脂が滴下(ドリッピング)した際に、この滴下物の燃焼が瞬時に自消することが重要である。
本組成物は透明性に優れるものであり、意匠性、内容物の視認性等の観点から、JIS K7136−1(1997年)に基づき測定される、単層の本プレートの厚み1.0mmでの全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。また、JIS K7136(2000年)に基づき測定される、単層の本プレートの厚み1.0mmでの全ヘーズ値が5.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがさらに好ましく、1.0%以下であることが特に好ましい。なお、全ヘーズ値の下限は特に限定されず、可能な限り小さい方が好ましい。全ヘーズ値及び全光線透過率が係る範囲であれば、本組成物が特に透明性に優れるものとなる。
フィルム、シート、または、プレートとして成形された本発明の成形体は、透明性、難燃性に優れる。そのため、本発明の特に制限されるものではないが、例えば、住宅建材、航空機や自動車の窓材、遮音壁、電子部材、家電製品部材、OA機器部材等に使用できる。
(1)難燃性(燃焼試験)
燃焼試験は長さ100mm×幅13mm、厚さ1.0mmの試料の試験片を、下部から高さ30cm、長さ方向に垂直に設置し、その試験片下部よりガスバーナーで10秒間接炎した後の(i)燃焼時間、(ii)接炎による滴下物の燃焼時間を測定した。炎を取り去った後の燃焼が5秒以下で消火し、さらには燃焼による滴下物の燃焼時間が3秒以下であるものを合格とした。
(2)透明性(全光線透過率、全ヘーズ)
全ヘーズ値は、JIS K7136(2000年)に基づき、厚み1.0mmのサンプ
ルの測定を行った。
[ポリカーボネート樹脂(IS)]
IS−1:ポリカーボネート樹脂(三菱化学株式会社製):イソソルビドに由来する構造単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=50/50mol%
[ハロゲン系難燃剤(OF)]
OF−1:トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(三菱マテリアル株式会社製)
OF−2:ノナフルオロメタンスルホン酸カリウム(三菱マテリアル株式会社製)
[非ハロゲンリン酸エステル系化合物(FP)]
FP−1:芳香族リン酸エステル(丸菱油化工業株式会社製、ノンネン73)
IS−1、OF−1およびFP−1を混合質量比94.9:0.1:5の割合で秤量し、これらを株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルで試験温度230℃、回転数80rpm、の条件下で5分間混練後、230℃となるように設定した電熱プレス機を用いて、1.0mm厚のプレートを得た。得られたプレートの各測定、評価を行った。結果を表1に示す。
IS−1、OF−1およびFP−1を混合質量比93:2:5の割合で混練した以外は実施例1と同様の方法でプレートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
IS−1、OF−2およびFP−1を混合質量比94.9:0.1:5の割合で混練した以外は実施例1と同様の方法でプレートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
IS−1、OF−2およびFP−1を混合質量比93:2:5の割合で混練した以外は実施例1と同様の方法でプレートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
IS−1を単独で用い、実施例1と同様の方法でプレートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
IS−1およびOF−1を混合質量比99.5:0.5の割合で混練した以外は実施例1と同様の方法でプレートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
IS−1およびFP−1を混合質量比95:5の割合で混練した以外は実施例1と同様の方法でプレートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
IS−1およびFP−1を混合質量比90:10の割合で混練した以外は実施例1と同様の方法でプレートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (7)
- 前記ポリカーボネート樹脂(A)が、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外のその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート樹脂(A)が、ジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位に対して、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を30〜95mol%含むことを特徴とする請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が1,4−シクロヘキサンジメタノールであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- JIS K7136に基づき、測定される厚み1.0mmのプレートの全光線透過率が85%以上、かつ全ヘーズ値が5.0%以下であること特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする成形品。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする窓材。
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