JP2016204497A - 陶磁器用絵具、転写シート及び彩色陶磁器の製造方法 - Google Patents

陶磁器用絵具、転写シート及び彩色陶磁器の製造方法 Download PDF

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松山 城仁
Shirohito Matsuyama
城仁 松山
榊原 一作
Kazusaku Sakakibara
一作 榊原
典之 成田
Noriyuki Narita
典之 成田
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Abstract

【課題】焼付けが不要な陶磁器用絵具、該陶磁器用絵具を転写するための転写シート及び該陶磁器用絵具を用いた彩色陶磁器の製造方法を提供する。
【解決手段】陶磁器用絵具は、100質量部の発色材と、150〜400質量部のビヒクルと、15〜50質量部のシランカップリング剤とを含有している。ビヒクルは熱硬化性樹脂を含んでいる。また、陶磁器用絵具を陶磁器に転写する転写シートは、基材と、アンダーコート層と、意匠層23と、支持フィルム24とを有している。アンダーコート層は基材上に塗布され、水溶性を有している。意匠層23はアンダーコート層上に形成され、陶磁器用絵具より構成されている。支持フィルム24はアンダーコート層及び意匠層23を覆っている。支持フィルム24は意匠層23を剥離可能な樹脂から構成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、陶磁器用絵具、これを用いて作製された転写シート及び転写シートを用いた彩色陶磁器の製造方法に関する。
陶磁器を彩色するための絵具は、無機顔料や金属粉末等の発色材と、ガラス粉末と、ビヒクルとを含有している。陶磁器の彩色は、例えば、表面に絵具を塗布して所望の絵柄を形成することにより行われる。絵具を塗布した後、陶磁器を800℃以上の温度で加熱することにより、ビヒクルを熱分解させると共にガラス粉末を溶融させる。これにより絵具を陶磁器に焼付けて定着させることができる。
また、陶磁器に直接塗布する方法の他に、所望の絵柄を印刷した転写シートを用いて彩色する方法が知られている。例えば特許文献1には、支持体層、金色絵付け用転写層及びカバーコートをこの順に有する転写シートが記載されている。支持体層には、通常、紙等が用いられる。転写層は、シルクスクリーン印刷や銅版転写等の技法によって絵具を支持体層上に印刷することにより形成される。絵具には、通常、無機顔料や金属粉末等の発色材と、ガラス粉末と、ビヒクルとが含まれている。また、カバーコートはアクリル樹脂から構成されていることが多い。
転写シートを用いた陶磁器の彩色は、通常、以下のようにして行われる。まず、転写シートを水に浸漬し、転写層及びカバーコートを水中で支持体層から剥離する。次いで、転写層及びカバーコートを陶磁器の被彩色部に貼り付ける。その後、陶磁器を800℃以上の温度で加熱することにより、転写層に含まれるビヒクルやカバーコートを熱分解させると共にガラス粉末を溶融させる。以上により転写層を陶磁器に焼付けて定着させることができる。
特開2003−321285号公報
しかし、陶磁器を800℃以上で加熱して絵具を焼付けると、加熱により陶磁器に「ちぢれ」、即ち、絵具が収縮してひび割れや穴が発生する等の不良が不可避的に発生して歩留まりが悪化する。そのため、歩留まりの悪化によるコストの増大を招いている。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、焼付けが不要な陶磁器用絵具、該陶磁器用絵具を転写するための転写シート及び該陶磁器用絵具を用いた彩色陶磁器の製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、陶磁器の表面に配置される陶磁器用絵具であって、
100質量部の発色材と、
150〜400質量部のビヒクルと、
15〜50質量部のシランカップリング剤とを含有しており、
上記ビヒクルは熱硬化性樹脂を含んでいることを特徴とする陶磁器用絵具にある。
本発明の他の態様は、上記の態様の陶磁器用絵具を陶磁器に転写する転写シートであって、
基材と、
該基材上に塗布され水溶性を有するアンダーコート層と、
該アンダーコート層上に形成され上記陶磁器用絵具よりなる意匠層と、
上記アンダーコート層及び上記意匠層を覆う支持フィルムとを有し、
該支持フィルムは、上記意匠層を剥離可能な樹脂から構成されていることを特徴とする転写シートにある。
本発明の更に他の態様は、上記の態様の転写シートを準備し、
予め焼成した陶磁器における被彩色部にシランカップリング剤水溶液を塗布し、
上記転写シートを水に浸漬して上記アンダーコート層を溶解させると共に、上記支持フィルム及びこれに付着した上記意匠層を上記基材から剥離させ、
上記意匠層を上記支持フィルムと共に上記被彩色部に貼り付け、
上記支持フィルムを剥離して上記意匠層を上記被彩色部上に転写することを特徴とする彩色陶磁器の製造方法にある。
上記陶磁器用絵具(以下、「絵具」という。)は、上記特定の範囲の量の上記発色材、上記ビヒクル及び上記シランカップリング剤を含んでいる。上記熱硬化性樹脂及び上記シランカップリング剤は大気と接触することにより化学反応を起こし、上記発色材や陶磁器の表面と強固に結合する。それ故、上記絵具は、陶磁器の表面に配置した後に室温環境下に放置することにより陶磁器上に定着させることができ、800℃以上の温度で加熱して焼付けを行う必要がない。また、定着後の上記絵具は、室温環境下に放置することにより自然に硬化し、一般的な使用環境において要求される耐久性を容易に確保することができる。
上記絵具は、陶磁器の表面に直接塗布して配置する方法、及び、転写により陶磁器の表面に配置する方法のいずれにも適用することができる。
上記絵具を陶磁器の表面に転写する場合には、上記基材上に、上記アンダーコート層、上記意匠層及び上記支持フィルムが順次積層された、上記の態様の転写シートを用いることができる。上記転写シートにおける上記意匠層は、上記の態様の絵具から構成されている。上記絵具に含まれる上記シランカップリング剤は高い反応性を有するため、上記意匠層は、上記転写シートの作製後、比較的早期に硬化すると考えられていた。それ故、従来、上記の構成を有する転写シートは、上記意匠層の転写を行うことができないと考えられてきた。
ところが、本発明者らは、上記意匠層が硬化して転写が不可能となるまでに、意外にも1〜2ヶ月程度の時間を要することを見出した。これは、上記意匠層が上記アンダーコート層と上記支持フィルムとの間に配置されていることにより、大気との直接的な接触が抑制されているためと考えられる。上記転写シートは、上述のように、作製した後上記意匠層が硬化するまでの時間に十分な余裕があるため、陶磁器への上記意匠層の転写を容易に行うことができる。
また、上記支持フィルムは、上記意匠層を剥離可能な樹脂から構成されている。それ故、上記意匠層を上記支持フィルムごと上記被彩色部に貼り付けた後、上記支持フィルムのみを容易に剥離することができる。以上の結果、上記転写シートを用いることにより、上記意匠層を上記被彩色部に転写し、定着させることができる。
また、上記転写シートは、印刷等の方法により、所望の絵柄を有する上記意匠層を予め形成することができるため、陶磁器の表面に直接塗布する場合に比べて、精度の高い絵柄を陶磁器の表面に効率よく形成することができる。それ故、工業的な規模での生産に好適に用いることができる。
上記製造方法は、上記被彩色部に上記シランカップリング剤水溶液を塗布した後に上記転写シートを用いて上記意匠層の転写を行う。これにより、焼付けを行うことなく上記意匠層を強固に定着させることができ、上記意匠層の耐久性をより向上させることができる。
また、上記製造方法は、焼付けが不要となるため、転写工程における上記彩色陶磁器の歩留まりを容易に向上させることができる。その結果、上記彩色陶磁器の総合的な製造コストを容易に低減することができる。
実施例における、転写シートの要部を示す一部断面図。 実施例における、(a)被彩色部にシランカップリング剤水溶液を塗布した陶磁器の底面図、(b)支持フィルム及び意匠層を被彩色部に貼り付けた陶磁器の底面図、(c)支持フィルムを剥離する途中の陶磁器の底面図。
上記陶磁器用絵具において、上記発色材としては、従来公知の無機顔料や金属粉末を使用することができる。無機顔料や金属粉末は、単独で用いても良く、所望の色調を得るために複数種を併用しても良い。
上記ビヒクルの含有量は100質量部の発色材に対して150〜400質量部とする。ビヒクルの含有量を上記特定の範囲とすることにより、陶磁器の表面に直接塗布する場合、及び、転写シートの作製過程において、印刷等の方法により上記意匠層を形成する場合のいずれの場合にも好適な粘度を得ることができる。ビヒクルの含有量が150質量部未満の場合には、絵具の粘度が過度に高くなり、陶磁器表面への塗布や基材上への印刷等が困難となるおそれがある。一方、ビヒクルの含有量が400質量部を超える場合には、絵具の粘度が過度に低くなり、所望の絵柄を形成することが困難となるおそれがある。
上記ビヒクルには、例えば、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が含まれている。熱硬化性樹脂は、陶磁器への転写後、時間の経過と共に硬化して絵具を定着させる作用を有する。上記絵具を上記転写シートの意匠層に適用する場合には、後述するように、支持フィルムから容易に剥離することができる樹脂を熱硬化性樹脂として用いることが好ましい。
また、ビヒクルは、塗布性や印刷性等を調整するために、従来公知の添加剤を含んでいても良い。例えば、ビヒクルは、粘度調整のために、更にトルエンやブチルセロソルブ等の溶剤を含んでいても良い。
上記シランカップリング剤の含有量は100質量部の発色材に対して15〜50質量部とする。シランカップリング剤の含有量を上記特定の範囲とすることにより、上述した陶磁器表面への配置及び定着を容易に行うことができる。
シランカップリング剤の含有量が15質量部未満の場合には、絵具の硬化が不十分となる、あるいは絵具が陶磁器と十分に接着しなくなる等の問題が生じるおそれがある。その結果、絵具の耐久性が低下し、比較的早期に剥落や摩耗により絵具が消失するおそれがある。一方、シランカップリング剤の含有量が50質量部を超える場合には、過剰のシランカップリング剤に起因して、陶磁器の表面に配置した後に意図しない模様が生じるおそれがある。それ故、絵具の耐久性及び外観の観点から、シランカップリング剤の含有量は10〜50質量部とする。
シランカップリング剤は、ビヒクルに含まれる熱硬化性樹脂との反応性が高い官能基を有することが好ましい。例えば、ビヒクルに含まれる熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合には、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤を好適に用いることができる。
上記絵具は、更に低融点ガラス粉末を含有していてもよい。この場合には、上記絵具を陶磁器に配置した後、加熱して低融点ガラス粉末を溶融させることにより、上記絵具をより強固に定着させることができる。その結果、上記絵具の耐久性をより向上させることができる。
低融点ガラス粉末としては、例えば、500〜600℃の屈伏点を有するものを好適に用いることができる。上記特定の範囲の屈伏点を有する低融点ガラスは、例えば、下記の表1に示す組成を有している。
Figure 2016204497
上記絵具は、上記の原料を混練してペースト状にすることにより作製できる。上記絵具は、混練後の粘度が10〜100Pa・sであることが好ましい。この場合には、上記絵具を陶磁器の表面に塗布する場合、及び、上記絵具を印刷して上記意匠層を形成する場合のいずれの場合にも、所望の絵柄を有する意匠層を容易に得ることができる。
絵具の粘度が10Pa・s未満の場合には、絵具の流動性が高くなるため、陶磁器の表面に所望の絵柄を形成することが困難となるおそれがある。一方、絵具の粘度が100Pa・sを超える場合には、上記絵具の粘度が過度に高いため、陶磁器への塗布や意匠層の印刷を行うことが難しい。
絵具の粘度は、例えば、発色材、ビヒクル及びシランカップリング剤、並びに低融点ガラス粉末等の必要に応じて用いられる他の原料の配合比や、ビヒクルの粘度等により調整することができる。
上記転写シートは、基材上に、上記アンダーコート層、上記意匠層及び上記支持フィルムを順次積層した構造を有している。上記基材としては、例えば紙等を用いることができる。上記アンダーコート層は、水溶性を有する材料より構成されており、予め上記基材上に塗布されている。具体的には、上記アンダーコート層としては、デキストリン、デンプン及びポリビニルアルコール等を用いることができる。
上記意匠層は、上記アンダーコート層上に上記絵具を印刷して形成される。意匠層の印刷には、通常、スクリーン印刷や銅版転写等の技法が用いられる。意匠層は、1回の印刷により形成しても良く、複数回の印刷により形成しても良い。また、意匠層は、1種類の絵具を用いて形成しても良く、複数種の絵具を用いて形成しても良い。
上記支持フィルムは、上記意匠層を形成した後、意匠層及びその周辺のアンダーコート層を覆うように形成される。支持フィルムの形成には、通常、スクリーン印刷等の技法が用いられる。
支持フィルムには、上記意匠層を剥離可能な樹脂が用いられる。具体的には、支持フィルムを構成する樹脂と、上記ビヒクルに含まれる熱硬化性樹脂との相溶性が低いほど好ましい。例えば、ビヒクルに含まれる熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合には、支持フィルムとしてアクリル樹脂を好適に用いることができる。
上記彩色陶磁器の製造方法においては、まず、上記の構成を有する転写シートと、上記意匠層を定着させる陶磁器とを準備する。陶磁器としては、例えば一般陶磁器、ボーンチャイナ及びニューボン等を用いることができる。
一般陶磁器は、例えば以下の方法により作製することができる。まず、粘土、珪石、長石を主体とした原料を混練した後、ろくろ、鋳込みあるいはプレス成形などの方法により所望の形状の成形体を作製する。このとき、必要に応じて原料にアルミナを加えてもよい。得られた成形体を800℃近辺で加熱して素焼きし、次いで成形体に釉薬をかける。釉薬を乾燥させた後、シャトル窯やトンネル窯により成形体を約1330〜1380℃で還元焼成し、成形体の表面に0.1〜0.2mm前後の滑らかなガラス層を形成する。以上により一般陶磁器を作製することができる。なお、原料にアルミナを配合した一般陶磁器は、アルミナ強化磁器と呼ばれることがある。
ボーンチャイナは、例えば以下の方法により作製することができる。30質量%以上のリン酸カルシウムを含有し、残部が粘土、珪石、長石等からなる原料を混練した後、上記と同様に成形体を作製する。得られた成形体を空気雰囲気下において1250℃付近で加熱し、酸化焼成する。これにより得られたビスクにスプレー等を用いて釉薬をかけ、次いで、空気雰囲気下において1150℃付近で加熱して酸化焼成を行うことにより、ビスクの表面に0.1〜0.2mm前後の滑らかなガラス層を形成する。以上によりボーンチャイナを作製することができる。
ニューボンは、例えば以下の方法により作製することができる。粘土、珪石、長石を主体とした原料を混練した後、上記と同様に成形体を作製する。その後、素焼きを行わずに成形体に釉薬をかけ、空気雰囲気下において1250℃付近で酸化焼成することにより、成形体の表面に0.1〜0.2mm前後の滑らかなガラス層を形成する。以上によりニューボンを作製することができる。
上述のように陶磁器を準備した後、陶磁器の被彩色部にシランカップリング剤水溶液を塗布する。この水溶液に含まれるシランカップリング剤としては、上記絵具に含まれるものと同様に、熱硬化性樹脂との反応性の高いシランカップリング剤を用いることが好ましい。
また、上記水溶液は、5〜15質量%の濃度を有することが好ましい。この場合には、上記意匠層をより強固に定着させ、剥落や摩耗等に対する耐久性をより向上させることができる。上記水溶液におけるシランカップリング剤の濃度が5質量%未満の場合には、上記意匠層の耐久性が不十分となるおそれがある。一方、上記水溶液の濃度が15質量%を超える場合には、支持フィルムの剥離後に、過剰のシランカップリング剤に起因して意図しない模様が生じるおそれがある。従って、耐久性及び外観の観点から、上記水溶液の濃度を5〜15質量%とすることが好ましい。
上記水溶液の塗布とは別に、上述の構成を有する転写シートを水に浸漬する。転写シートの浸漬は、上述した陶磁器への上記水溶液の塗布の前に行っても良く、後に行っても良い。転写シートを水に浸漬することにより、アンダーコート層を溶解させると共に、支持フィルム及びこれに付着した意匠層を基材から剥離させることができる。
その後、意匠層を支持フィルムと共に被彩色部に貼り付け、支持フィルムを剥離する。上記シランカップリング剤水溶液は、上記ビヒクルに含まれる熱硬化性樹脂との反応性が高いシランカップリング剤を含んでいるため、貼り付けられた意匠層を強固に接着させることができる。また、上述したように、支持フィルムは、上記ビヒクルに含まれる熱硬化性樹脂との相溶性が低い樹脂より構成されているため、被彩色部から単純に引き剥がすことにより意匠層を容易に分離することができる。以上の結果、意匠層を被彩色部に転写しつつ、支持フィルムのみを剥離して除去することができる。
上記意匠層は、例えば彩色陶磁器の高台内に転写することができる。陶磁器の高台内には、通常、製造元等を示す図形や文字等から構成された裏印が設けられる。裏印は、同一の装飾を有する陶磁器であっても、用途や販売先等に応じて変更されることがある。それ故、従来の方法では、裏印の種類ごとに、不良を見込んだ数量の陶磁器に装飾及び裏印の焼付けを行う必要があり、製造コストが増大する要因の一つとなっていた。
これに対し、上記製造方法によれば、予め装飾を焼付けた陶磁器に裏印を定着させることができるため、装飾を焼付ける陶磁器の数量を従来よりも低減することができる。また、装飾を施さず裏印のみを有する陶磁器を製造する場合には、装飾の焼付け工程そのものを省略することができる。これらの結果、焼付け時の不良の発生を従来よりも低減することができる。
また、焼付けを行う陶磁器の数量の低減、あるいは焼付け工程の省略により、焼付けに用いる加熱炉の燃料費を低減する、加熱炉の使用効率を向上させる等のメリットを容易に得ることができる。これらの結果、彩色陶磁器の総合的な製造コストを従来に比べて容易に低減することができる。
(実施例1)
上記彩色陶磁器の製造方法の実施例を、図を用いて具体的に説明する。本例においては、図2(c)に示すように、高台内11に裏印を定着させた彩色陶磁器1の製造方法の例を示す。まず、100質量部の発色材と、300質量部のビヒクルと、30質量部のシランカップリング剤とを良く混合して陶磁器用絵具を作製した。本例においては、エポキシ樹脂を含むビヒクルを使用した。なお、発色材等の混合には、機械式らいかい機や3本ロールミル等を用いることができる。
次いで、図1に示すように、基材21、アンダーコート層22、意匠層23及び支持フィルム24がこの順に積層された転写シート2を作製した。本例において、基材21には紙を用い、アンダーコート層22にはコーンスターチを用いた。
アンダーコート層22が予め片面に塗布された基材21を準備した後、スクリーン印刷によりアンダーコート層22上に上記絵具を印刷し、意匠層23を形成した。意匠層23を印刷した後、絵具が流動しなくなるまで風乾した。なお、意匠層23の印刷には、250メッシュ程度のステンレススクリーン版やポリエステルスクリーン版を用いることができる。
次いで、スクリーン印刷により意匠層23及びその周辺のアンダーコート層22を覆うようにアクリル樹脂を印刷し、風乾させて支持フィルム24を形成した。以上により、図1に示す転写シート2を作製した。なお、支持フィルム24の印刷には、60メッシュ程度のポリエステルスクリーン版を用いることができる。
転写シート2の作製とは別に、予め焼成した陶磁器100を準備し、図2(a)に示すように、その高台内11の中央部にシランカップリング剤水溶液3を塗布した。本例において、水溶液3中のシランカップリング剤の濃度は5質量%とした。また、水溶液3を塗布した高台内11は、意匠層23が転写される被彩色部Aとなる。
次に、転写シート2を水に浸漬した。図には示さないが、転写シート2を水に浸漬すると、アンダーコート層22が水に溶解し、これに伴って支持フィルム24が基材21から自然に剥離する。このとき、意匠層23は、支持フィルム24に付着しているため、支持フィルム24に伴って基材21から剥離する。
基材21を除去した後、意匠層23が付着した支持フィルム24を水から引き上げ、図2(b)に示すように陶磁器100の被彩色部A(高台内11)に貼り付けた。次いで、小さい円を描くようにして支持フィルム24及び意匠層23を動かすことにより、意匠層23と水溶液3とをなじませた。その後、スキージ等を用いて余剰の水溶液3及び気泡等を支持フィルム24の外側に押し出した。
支持フィルム24及び意匠層23を貼り付けた状態の陶磁器100を室温環境下で1時間程度静置し、意匠層23を被彩色部A上に十分に接着させた。その後、図2(c)に示すように支持フィルム24のみを剥離し、被彩色部Aへの意匠層23の転写を完了した。支持フィルム24を剥離した後、意匠層23を壊さないようにして余剰の水溶液3を拭き取った。以上により、彩色陶磁器1を得た。
彩色陶磁器1における意匠層23は、室温環境下に放置することにより、時間の経過と共に硬化して耐久性を向上させることができる。
例えば、上記の方法により得られた彩色陶磁器1は、室温環境下に2日間放置することにより、従来の焼付けによる装飾と同程度の耐久性を示した。具体的には、700gの荷重をかけながら意匠層23上に砂消しゴム(Multigraphics社製、「MULTILITH ERASER No.40-2547」)を往復させた場合、少なくとも砂消しゴムが30回往復するまでは、意匠層23が摩耗して消失することはなかった。また、業務用の食器洗浄機を用いて彩色陶磁器1の洗浄を繰り返し行った場合、4000回以上の洗浄を行っても意匠層23が消失することはなかった。これらの評価結果は、従来の方法で焼付けされたブライト金装飾と同等である。
また、上記の彩色陶磁器1を200℃の温度で20分間程度加熱して意匠層23の硬化を促進させることにより、より耐久性を向上させることができる。
(比較例1)
絵具に配合するシランカップリング剤の量を10質量部に変更した以外は、上記の実施例と同様の方法により彩色陶磁器を作製した。得られた彩色陶磁器を室温環境下で2日間放置した後、業務用の食器洗浄機を用いて繰り返し洗浄したところ、約400回で意匠層が剥がれ始めた。この結果から、シランカップリング剤の含有量が上記特定の範囲未満である絵具は、意匠層の耐久性が不十分であり、一般的な用途に要求される水準に到達していないと判断した。
(比較例2)
陶磁器の高台内にシランカップリング剤水溶液を塗布しなかった以外は、上記の実施例と同様の方法により彩色陶磁器を作製した。得られた彩色陶磁器を室温環境下で3日間放置した後、業務用の食器洗浄機を用いて繰り返し洗浄したところ、約800回で意匠層が剥がれ始めた。この結果から、被彩色部(高台内)にシランカップリング剤水溶液を塗布しない場合、比較例1よりも耐久性は若干向上するものの、意匠層の耐久性が不十分であり、一般的な用途に要求される水準に到達していないと判断した。
(比較例3)
エポキシ樹脂を含むビヒクルに代えてアクリル樹脂を含むビヒクルを用いた以外は、上記の実施例と同様の方法により転写シートを作製した。得られた転写シートを用いて意匠層の転写を行おうとしたところ、支持フィルムと意匠層とが強固に接着されてしまい、被彩色部から支持フィルムのみを剥離することができなかった。この結果から、支持フィルムの樹脂とビヒクルの樹脂との相溶性が高い転写シートは、上記製造方法に適さないことが理解できる。
(比較例4)
本例は、意匠層を焼き付ける従来の製造方法の例である。本例においては、発色材100質量部とアクリル樹脂を含むビヒクル100質量部とを混練して従来用いられている絵具を作製した。この絵具を用いて転写シートを作製し、意匠層及び支持フィルムを陶磁器の高台内に貼り付けた。その後、陶磁器を800℃で15分間加熱して意匠層の焼付けを行った。
従来の方法では、焼付けを行った陶磁器のうち数%程度の陶磁器に「ちぢれ」等の不良が発生し、上記の製造方法に比べて歩留まりが悪化した。なお、焼付けされた意匠層の耐久性は、実施例における意匠層と同程度であった。
以上の実施例及び比較例から知られるように、上記製造方法によれば、焼付けを行うことなく意匠層23を強固に定着させることができ、焼付けされた意匠層23と同等の耐久性を容易に得ることができる。また、上記製造方法は、焼付けが不要となるため、転写工程における彩色陶磁器1の歩留まりを容易に向上させることができる。その結果、彩色陶磁器1の総合的な製造コストを容易に低減することができる。
また、上記実施例及び比較例には、転写により上記絵具を彩色陶磁器1の表面に配置する方法の例を示したが、陶磁器100の表面に上記絵具を直接塗布して配置する場合にも、上記と同様の方法を採用することができる。即ち、予め陶磁器100の被彩色部Aにシランカップリング剤水溶液3を塗布した後、水溶液3の上に絵具を塗布することにより所望の絵柄を有する彩色陶磁器1を得ることができる。その後、過剰の水溶液3を拭き取り、彩色陶磁器1を室温環境下で放置することにより、絵具を定着させることができる。
1 彩色陶磁器
100 陶磁器
2 転写シート
21 基材
22 アンダーコート層
23 意匠層
24 支持フィルム
3 シランカップリング剤水溶液

Claims (10)

  1. 陶磁器の表面に配置される陶磁器用絵具であって、
    100質量部の発色材と、
    150〜400質量部のビヒクルと、
    15〜50質量部のシランカップリング剤とを含有しており、
    上記ビヒクルは熱硬化性樹脂を含んでいることを特徴とする陶磁器用絵具。
  2. 上記陶磁器用絵具は、更に低融点ガラス粉末を含有していることを特徴とする請求項1に記載の陶磁器用絵具。
  3. 上記陶磁器用絵具は、10〜100Pa・sの粘度を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の陶磁器用絵具。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の陶磁器用絵具を陶磁器に転写する転写シートであって、
    基材と、
    該基材上に塗布され水溶性を有するアンダーコート層と、
    該アンダーコート層上に形成され上記陶磁器用絵具よりなる意匠層と、
    上記アンダーコート層及び上記意匠層を覆う支持フィルムとを有し、
    該支持フィルムは、上記意匠層を剥離可能な樹脂から構成されていることを特徴とする転写シート。
  5. 上記絵具の上記ビヒクルはエポキシ樹脂を含んでおり、上記支持フィルムを構成する樹脂はアクリル樹脂からなることを特徴とする請求項4に記載の転写シート。
  6. 請求項4または5に記載の転写シートを準備し、
    予め焼成した陶磁器における被彩色部にシランカップリング剤水溶液を塗布し、
    上記転写シートを水に浸漬して上記アンダーコート層を溶解させると共に、上記支持フィルム及びこれに付着した上記意匠層を上記基材から剥離させ、
    上記意匠層を上記支持フィルムと共に上記被彩色部に貼り付け、
    上記支持フィルムを剥離して上記意匠層を上記被彩色部上に転写することを特徴とする彩色陶磁器の製造方法。
  7. 上記シランカップリング剤水溶液は、5〜15質量%の濃度を有することを特徴とする請求項6に記載の彩色陶磁器の製造方法。
  8. 上記意匠層を上記被彩色部上に転写した後、上記彩色陶磁器を加熱して上記意匠層を硬化させることを特徴とする請求項6または7に記載の彩色陶磁器の製造方法。
  9. 上記陶磁器用絵具は更に低融点ガラス粉末を含んでおり、上記加熱により上記低融点ガラス粉末を溶融させることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の彩色陶磁器の製造方法。
  10. 上記意匠層を上記彩色陶磁器の高台内に転写することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の彩色陶磁器の製造方法。
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