JP2016204364A - エポキシ化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
非特許文献2に記載のように硫酸ナトリウムを添加するなどの方法も知られているが、一般的に無機塩は過酸化水素の分解を促進することが知られており、安全上の懸念がある。
即ち、本発明の要旨は、下記に存する。
[1]下記一般式(1)で表され、かつ、分子量が300以上であるスチレン化合物に、タングステン化合物とオニウム塩の存在下、過酸化水素を反応させ、一般式(1)で表される化合物に含まれる炭素−炭素二重結合を酸化することを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。
数1〜20のアルキル基を表す。)
[2]上記一般式(1)で表される化合物のうち、R1が下記一般式(2)で表される化
合物であることを特徴とする、[1]に記載のエポキシ化合物の製造方法。
[3]前記一般式(1)および(2)のR2がエチル基、Aが塩素原子で置換されている
ベンゼン環、Bがベンゼン環であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のエポキシ化合物の製造方法。
[4]前記オニウム塩が、活性水素を含む官能基またはその塩に変換可能な置換基を有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造方法。
[5]前記活性水素を含む官能基が、水酸基又はカルボキシル基であることを特徴とする[4]に記載のエポキシ化合物の製造方法。
[6]前記オニウム塩が、アンモニウム塩であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造方法。
[7]前記製造方法において、さらに無機リン酸類を共存させることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造方法。
本発明のエポキシ化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表され、かつ、分子量が300以上であるスチレン化合物に、タングステン化合物とオニウム塩の存在下、過酸化水素を反応させ、一般式(1)で表される化合物に含まれる炭素−炭素二重結合を酸化することを特徴とする。
(スチレン化合物)
本発明で用いられるスチレン化合物は、下記一般式(1)で表される。
数1〜20のアルキル基を表す。)
Aの電子吸引性基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、N−アルキルカルバモイル基、N−アリルカルバモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N−アリルスルファモイル基、ホスホリル基等が挙げられ、好ましくは脂溶性が高く、安定なフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子であり、より好ましくは安価に製造することができる塩素原子である。本発明で製造されるエポキシ化合物は、酸や熱によって分解しやすいため、その分解を抑えるために、ベンゼン環を電子吸引性基で置換する。電子吸引性基がハロゲンである場合は、メタ位に置換している場合が、エポキシ基がより安定で好ましい。電子吸引基の数は、1以上であれば特に限定されないが、好ましくは1〜3、更に好ましくは、製造コストが安価であることから1である。エポキシ基の安定性を低下させない範囲であれば、電子吸引性基以外の置換基を同時に有していても良い。電子吸引性基以外の置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基等のヘテロ原子で置換されていても良いアルキル基が挙げられる。
アルキルが好ましく、炭素数1がより好ましい。炭素数1〜20のアルキル基が有してもよい置換基としては、インダンジオン類、ハロアルキル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、N−アルキルアミノスルホニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、が挙げられる。R1としては、特に下記一般式(2)で表される、インダンジオン構造を有する基が、除草剤としての実用性の観点から好ましい。
Bの置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル、エチル、プロピル等の炭素数1〜10のアルキル基;トリフルオロメチル、ジクロロエチル、ブロモメチル等の炭素数1〜10のハロアルキル基;メトキシ、エトキシ等の炭素数1〜10のアルコキシ基;フルオロメトキシ、ジクロロエトキシ等の炭素数1〜10のハロアルコキシ基が挙げられる。除草剤としての性能からは、好ましくは無置換であるか、ハロゲンによって置換されたベンゼン環であり、原料コストの観点からは、好ましくは無置換である。
R2の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、メタリル基、プロパルギル基が挙げられる。R2の炭素数としては1〜5が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、炭素数1〜10のハロアルキル基としては、トリクロロエチル基、トリフルオロエチル基等が挙げられる。このうち、R2としては、特にメチル基、エチル基、プロペニル基が好ましい。
本反応に供するスチレン化合物としては、生成したエポキシ化合物は酸性の水相中では加水分解または転位反応により分解しやすいため、有機相への分配が高い、脂溶性の高い化合物が好ましい。脂溶性の目安として、スチレン化合物の分子量は、300以上であり、好ましくは320以上である。分子量の上限に限定はないが、通常1000以下であり、好ましくは500以下である。分子量が高すぎると、反応時に用いる有機溶媒に対する溶解性が低下する傾向があり、浸透性の低下により除草活性が低下する場合がある。
本発明において用いられるタングステン化合物は、タングステンを含有し、上記のエポキシ化反応の触媒としての作用を有するものであれば特に限定はされないが、具体的にはタングステン酸やその塩等(以下、これらを「タングステン酸類」と総称する)等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、オニウム塩は、タングステン化合物と混合することでエポキシ化触媒組成物を形成すると考えられ、触媒組成物を更に過酸化水素と混合することで、活性型のエポキシ化触媒を形成すると考えられる。
前記活性触媒は、エポキシ化反応の際には脂溶性となり、通常、必要に応じて用いられる溶媒に溶解するものが好ましい。そのため、より脂溶性が高いオニウム塩を使用することが好ましい。オニウム塩の脂溶性の目安の一つとしては、オニウム塩の有する炭素数が挙げられ、(炭素数/1分子中のオニウム塩の数)が好ましくは20以上であり、より好ましくは25以上である。さらに好ましくはその構造内に炭素原子を20個以上有するカチオン種のオニウム塩である。
またオニウム塩としては、本発明者らが発明し、WO2013/147092に記載したオニウム塩を使用することもできる。具体的には活性水素を含む官能基またはその塩に変換可能な置換基を1つ以上有するオニウム塩を用いることが好ましい。
具体的には、N−メチル−N,N,N−トリ[2−(ペンチルカルボニルオキシ)エチル]アンモニウム硫酸水素塩、N−メチル−N,N,N−トリ[2−(4−t−ブチルフェニルカルボニルオキシ)エチル]アンモニウムモノメチル硫酸水素塩、2,3−ビス(4−t−ブチル−フェニルオキシ)−N、N、N−トリエチル−1−プロパンアンモニウ
ムクロライド、N−ブチル−N,N−ジ[2−(4−t−ブチルベンゾイルオキシ)エチル−N−メチルアンモニウムモノメチル硫酸塩等が挙げられるが、このうち、調製および分析が簡便である観点から、N−ブチル−N,N−ジ[2−(4−t−ブチルベンゾイルオキシ)エチル−N−メチルアンモニウムモノメチル硫酸塩が好ましい。
本発明において、オニウム塩は単独でも2種以上適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられるオニウム塩のアニオン種は、特に限定はされないが、具体的には硫酸水素イオン、モノメチル硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸二水素イオン、スルホン酸イオン、カルボン酸イオン、水酸化物イオン等の1価のアニオン、リン酸水素イオン、硫酸イオン等の2価のアニオンが挙げられ、調整が容易である点から一価のアニオンが好ましい。このうちアニオン種が反応生成物であるエポキシ化合物のエポキシ基や、基質の炭素−炭素二重結合に付加しない点や、調製が容易である点からモノメチル硫酸イオン、硫酸水素イオン、酢酸イオン、リン酸二水素イオン又は水酸化物イオンが好ましい。なおアニオン種は単独でも2種以上適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明の製造方法においては、前記タングステン化合物とオニウム塩を用いエポキシ化反応を行なう際には、さらに無機リン酸類 を用いることが反応性の向上の点で好ましい
。
本発明におけるリン酸類としては、具体的には例えばリン酸、亜リン酸等の無機リン酸;ポリリン酸、ピロリン酸等のリン酸重合体;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム等の無機リン酸塩;モノメチルリン酸、ジメチルリン酸、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル類;等が挙げられる。このうちリン酸が好ましい。
リン酸類を2種併用する場合は、その少なくとも一方は、反応液の水相のpHが適切な範囲になるように添加することができ、また必要に応じて他の酸や塩基を添加し、pHの調製を行うこともできる。
反応液の水相のpHは、エポキシ化合物の安定性や水への溶解度により異なるが、通常1.5〜5であり、好ましくは2〜4である。水相のpHが過度に酸性の場合、エポキシ基の開環反応や転移反応が進行しやすくなり、塩基性の場合は反応速度が低下する、過酸化水素が分解する等の問題が生じる傾向がある。
本発明で用いる過酸化水素は、通常は過酸化水素水を用いる。
過酸化水素水を用いる場合、その濃度は特に限定されないが、通常1重量%以上、好ましくは20質量%以上、通常60質量%以下であり、より好ましくは、入手のしやすさや生産性、運搬コスト等を考慮すると、30質量%以上、45質量%以下である。
過酸化水素の使用量は、前記スチレン化合物の反応性等に応じて適宜調整することができ、特に限定はされないが、前記スチレン化合物中の炭素−炭素二重結合のモル数に対し、通常0.5倍モル以上、好ましくは1倍モル以上、通常10倍モル以下、好ましくは3倍モル以下を用いる。前記範囲内の使用量であれば、生産性よく、効率のよいエポキシ化ができるためである。
本発明では、必要に応じ有機溶媒を用いることができ、スチレン化合物が固体である場合は、操作性や反応性が向上する点で用いることが好ましい。本発明のエポキシ化反応において有機溶媒を使用した際、スチレン化合物は、有機溶媒中に溶解していても、懸濁状態でもよいが、通常、反応温度条件下で有機溶媒に溶解していることが好ましい。
なお前記の二相系反応を円滑に行なうため、有機溶媒以外に更に適宜水を反応液に追加して使用してもよい。
本発明におけるスチレン化合物は、本発明のエポキシ化反応に用いる際に、必要に応じ、前処理を行なってから用いてもよい。前処理を行なうことで、スチレン化合物の製造時、輸送時に混入する金属、カーボン、有機物、無機塩等の異物を排除することができる。これらの異物は過酸化水素の分解を促進することが知られている。
前処理の方法としては、前記スチレン化合物に直接酸性水溶液やキレート化剤水溶液を作用させて処理することもできれば、前記スチレン化合物を有機溶媒等に溶解させた後に酸性水溶液やキレート化剤水溶液を混合して、処理することもできる。
酸性水溶液のpHは、特に限定はされず、用いるスチレン化合物の安定性により異なるが、通常1以上、好ましくは3以上、通常5以下、好ましくは4以下である。pHの調整の目的で、各種の塩を加えてもよく、例えば硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム等を添加してもよい。具体的には、酢酸と硫酸ナトリウムの混合水溶液が好ましい。例えば4%の酢酸と1%硫酸ナトリウムを含むpH=4の水溶液がより好ましい。上記の洗浄処理を行なうことで金属が水に可溶化し、水相と共に除去される。
酸性水溶液やキレート化剤水溶液で洗浄する条件は特に限定はされないが、洗浄時間は通常30分間以上、通常2時間以下であり、洗浄温度は通常10℃以上、通常30℃以下である。これらの処理を行なうことで金属が水に可溶化し、水相と共に排出される。
本発明におけるスチレン化合物は、必要に応じ、濾過を行なってから反応に供してもよい。濾過を行なうことで、スチレン化合物の製造時、輸送時、仕込み時に混入する金属、カーボン、有機物、無機塩等の異物を排除することができる。
具体的には前記スチレン化合物を、反応に用いる溶媒で溶解した後、濾過を行う。濾過に用いるフィルターとしては、溶媒に対して溶解を起こさないものであればよく、たとえはポリプロピレン、テフロン(登録商標)、SUSが挙げられる。また、フィルターの形式に特異制限はなく、例えばカートリッジタイプのフィルターを用いて加圧濾過する方法等が挙げられる。
本発明においてエポキシ化合物の製造は、キレート化剤の共存下で行なってもよい。
キレート化剤を共存させることにより、後述する金属不純物との間でキレート化合物を形成すると考えられ、過酸化水素の分解を生じることなく、安全にエポキシ化反応を行なうことができる。
前記キレート化剤としては、特に限定はされないが、具体的には、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩、トリエチレントリアミン六酢酸及びその塩、イミノ酢酸及びその塩等のアミノカルボン酸類;クエン酸、グリコール酸及びこれらの塩等のオキシカルボン酸類;ヒドロキシエタンジホスホンなどの有機リン酸類;ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩;エチレンジアミン、サイクレン等のアミン化合物、ビピリジン、フェナントロリン、ポルフィリン等の含窒素ヘテロ環、クラウンエーテル等のエーテル化合物等が挙げられる。これらのうち、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有するアミノカルボン酸類がキレート効果が大きい点から好ましく、特にエチレンジアミン四酢酸及びその塩が安価で入手容易であることから好ましく、さらには、pH調製の容易さから、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩が好ましい。また、キレート化剤の配位可能な置換基数は多い方がより強固に金属に配位するため好ましく、通常2以上、好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。
本発明において用いられるキレート化剤の使用量は、後述する金属不純物の含有量により適宜調整することができ、特に制限されるものではないが、通常、金属不純物の含有量に対して等モル以上である。また上限も制限はされないが、通常、キレート化剤が析出しない範囲の量である。
前記触媒組成物の原料であるタングステン化合物、オニウム塩、リン酸類より触媒組成物を調製する方法及触媒組成物を添加方法は、反応に用いるスチレン化合物やその反応性に応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではないが、反応系内で前記タングステン化合物と前記オニウム塩を混合する方法、又は予め反応系外で前記タングステン化合物と前記オニウム塩を混合してから反応に用いる方法のいずれの方法でもよい。また、前記リン酸類の添加方法も反応系内で混合する方法、予め反応系外で混合する方法のいずれの方法でもよい。
また、過酸化水素との混合し、上記触媒を活性化する方法も、予め触媒成分を過酸化水素で活性化し、これをスチレン化合物に加える方法、上記触媒とスチレン化合物を混合し、これに過酸化水素を添加する方法のいずれでも良い。
本発明の製造方法における反応温度は、反応が阻害されない限り、特に限定されないが、通常10℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは60℃以上であり、通常90℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下である。前記温度範囲では、反応速度の低下が少なく、より安全に反応を進行させることができる。
本発明の製造方法において、前記スチレン化合物に過酸化水素を反応させる際、反応系内に含まれる過酸化水素の量は特に限定はされないが、反応系内の過酸化水素の量が多すぎると、金属不純物の混入で過酸化水素が分解した場合、または急激な反応による温度上昇により過酸化水素が分解した場合に、酸素ガスの急激な発生や温度上昇、これに伴う発泡が起こる場合がある。反応系内の過酸化水素濃度が高い場合には、金属不純物混入の分解が加速される傾向がある。よって、反応系内の過酸化水素の含有量としては、前記スチレン化合物のモル数に対し、通常0.5倍モル以下であり、0.3倍モル以下が好ましい。
上記反応により、前記スチレン化合物の炭素−炭素二重結合がエポキシ基に変換されたものが得られる。反応終了時スチレン化合物の炭素−炭素二重結合の転化率が高い方が、下記の精製、オニウム塩の分解・除去後に得られる化合物の純度が高くなるため好ましい。具体的には、95モル%以上が好ましく、更に好ましくは97モル%以上、更に好ましくは99%モル%以上である。
上記の方法で得られたエポキシ化合物は、必要に応じて更に精製してもよい。本発明の製造方法において使用したタングステン化合物、オニウム塩、リン酸類は、通常、精製により除去する。具体的な精製方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜使用することができる。エポキシ化合物が固体の場合は晶析、懸洗、分液、吸着、昇華等が挙げられ、エポキシ化合物が液体の場合は分液、洗浄、吸着、蒸留が挙げられる。中でも操作法の点からは、エポキシ化合物の性状に関わらず分液法、吸着法が好ましい。エポキシ化合物が固体の場合は晶析法が有効である。また、オニウム塩として、本発明者らが発明し、PCT/JP2013/059461号に開示、および特願2013−207331に記載したオニウム塩を使用した場合は、後述の方法にて除去する。
2プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
吸着による精製は、吸着剤として、活性炭、活性白土、モレキュラーシーブス、アルミナ、ゼオライト、イオン交換樹脂等を使用する。
本発明者らが発明した、上記記載の活性水素を含む官能基またはその塩に変換可能な置換基を1つ以上有するオニウム塩を使用した場合は、オニウム塩を、エポキシ化反応後に、活性水素を含む官能基またはその塩を有するオニウム塩化合物に変換し、エポキシ化合物と分離する。活性水素を含む官能基またはその塩を有するオニウム塩は水溶性であるため、洗浄等により簡便に除去することができる。これに伴い、オニウム塩と複合体を形成している触媒金属成分も除去される。
活性水素を含む官能基またはその塩に変換する方法としては、エポキシ化合物を損なわない方法であれば特に限定はされないが、通常は以下の方法が用いられる。
本発明の製造方法により得られるエポキシ化合物は、上記のスチレン化合物の炭素−炭
素二重結合がエポキシ基に変換されたものが得られる。本発明の製造方法により、上記一般式(2)より得られたエポキシ化合物は、エポキシ化合物が分解した下記一般式(3)で表される化合物の含有量が少ない。これらの含有量は特に限定されるものではないが、通常5%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.1%以下である。
同様に、本発明の製造方法により得られたエポキシ化合物の、オニウム塩由来の窒素含有量は通常500ppm以下、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10ppm以下に、更に好ましくは1ppm以下である。
本発明の方法で得られたエポキシ化合物は、不純物が少ないため、不純物に由来する毒性の懸念が低減する。
<1H−NMR分析条件>
装置 :BRUKER社製 AVANCE400, 400MHz
溶媒 :0.03体積%テトラメチルシラン含有重クロロホルム
実施例中のデータは、1H−NMR(400MHz、CDCl3)におけるδ値を表す。
LC装置:島津製作所製 SPD−10Avp
温度 :35℃
カラム :Mightysil RP−18GP aqua 150mm−4.6mm(5μm)(関東化学社製)
検出器 :UV 254nm
流量 :0.5ml/分
溶離液(条件1):アセトニトリル/0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液30/70→50分間で100/0(体積%)
溶離液(条件2):アセトニトリル/0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液60/40→20分間で100/0(体積%)→0.1分間で60/40、9分間保持
また実施例における「収率」は、得られた化合物の重量に、純度として「LC面積%」を乗じたものを収量とみなして算出した。
有機合成協会誌(2001)、59(9)、845−854記載に準ずる方法で、下記構造式(4)で表される2−[2−(3−クロロフェニル)−2−プロペン−1−イル]−2−エチル−1H−インデン−1,3(2H)−ジオン(分子量324.8、以下「スチレン化合物A」と略す)を合成した。スチレン化合物Aの純度は96.6%であった(LC面積%、上記分析条件2)
合成例1で得られたスチレン化合物A2.0g(6.2mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物(和光純薬社製)203mg(0.62mol)、8.5%(重量/体積)りん酸水溶液0.63ml(0.55mmol),メチルトリオクチルアンモニウム硫酸水素塩(東京化成社製、以降オニウム塩Aと略す)143mg(0.31mmol),トルエン2.0ml、水3.4mlの混合液に、窒素気流下、この混合液を65℃に加温し、42質量%過酸化水素0.10ml(1.4mmol)を反応開始時、および反応開始30分後、1時間後、2時間後、3時間後、8時間後に加えた後、64〜66℃にて計7時間反応した。反応中、有機相を上記LC分析条件2にて1時間ごとに分析を行った。9時間目の有機相の組成比はLC面積%(分析条件1)で、2−[[2−(3−クロロフェニル)−2−オキシラニル]メチル]-2-エチル−1H−インデンー1,3(2H)−ジオン(下記構造式(5)、別名:インダノファン)96.4%、スチレン化合物A2.2%であった。
(オニウム塩Bの合成)
p−トルエンスルホン酸一水和物47.2g(0.25mol)、トルエン60mlをデーンスターク管付き200mlのナスフラスコに仕込み、ジャケット温度120℃で加熱し、水を共沸留去した。これに4−t−ブチル安息香酸44.2g(0.25mol)、N−ブチルジエタノールアミン20.0g(0.12mol)を加え、ジャケット温度135℃で10時間、生成する水を留去しながら反応した。更に、p−キシレン30mlを添加し、窒素を反応液面近くに毎分300mlでフィードしながら、ジャケット温度140℃で7時間、生成する水を留去しながら反応した。反応液の組成比はLC面積%(分析条件2)でN−ブチル−N,N−ジ[2−(4−t−ブチルベンゾイルオキシ)エチル]アミン81.7%、N−ブチル−N−エタノール−N−[2−(4−t−ブチルベンゾイルオキシ)エチル]アミン9.8%、4−t−ブチル安息香酸6.0%の混合物であった。
得られた粗N−ブチル−N,N−ジ[2−(4−t−ブチルベンゾイルオキシ)エチル]アミンを、カラムクロマトグラフィー(関東化学社製 シリカ60N 300g、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製した。
合成例1で得られたスチレン化合物A5.0g(15.4mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物(和光純薬社製)203mg(0.62mol)、85重量%りん酸88.7mg(0.77mmol),前記オニウム塩B 187mg(0.31mmol),トルエン7.5ml、水0.31mlの混合液に、窒素気流下65℃に加温し、35質量%過酸化水素0.34ml(3.8mmol)を反応開始時、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、7時間、10時間後、11時間後、14時間後に加え、64〜66℃にて計21時間反応した。反応中、有機相を上記LC分析条件2にて1時間ごとに分析を行った。21時間目の有機相の組成比はLC面積%でインダノファン97.0%、スチレン化合物A0.9%であり、転化率は99.1%であった。
合物Aを0.28%含んでいた。(LC分析条件1)
特開平11−228552号公報の実施例1には、スチレン化合物Aを60%過酸化水素より調製した過酢酸溶液を用いてエポキシ化することによりインダノファンを製造する方法が記載されている。その結果は、収率は84%であったと記載されている。
α−メチルスチレン(分子量118.2)1.82g(15.4mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物(和光純薬社製)203mg(0.62mol)、85重量%りん酸88.7mg(0.77mmol),前記オニウム塩B 187mg(0.31mmol),トルエン7.5ml、水0.31mlの混合液を、窒素気流下65℃に加温し、35質量%過酸化水素0.34ml(3.8mmol)を、反応開始時、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、7時間に加え、64〜66℃にて計8時間反応した。反応中、有機相を上記LC分析条件2にて1時間ごとに分析を行った。8時間目の有機相の組成比はLC面積で主生成物が54%の他、複数の生成物の生成が確認され、転化率は98.2%であった。反応終了後、水相を排出し、有機相を5質量%チオ硫酸ナトリウム水溶液1.8mlで洗浄し還元処理を行った。さらに水1.8mlで洗浄し、得られた有機相中のNMRを測定したところ、主成分は2−フェニル−1,2−プロパンジオールのNMRと一致し、α−メチルスチレンオキサイドのピークは認められなかった。
0.66(3H、t、J=8.0Hz、−CH3),1.75−1.85(2H,m,−CH2−CH3),3.03(2H,s,−CH2−),7.66−7.71(1H,m,C=CH2),6.58(1H,t,J=2.0Hz,Ph),6.81(1H,dd,J=2.0,8.0Hz,Ph),7.06(1H,t,J=8.0Hz,Ph),7.09(1H,ddd,J=0.8,0.8,7.8Hz,Ph)、7.67−7.74(4H,m,Indandion).
0.63(3H,t,J=7.6Hz,−CH3),1.75−1.85(2H,m,−C2H2−CH3),2.47(1H,d,J=5.2Hz,−CH2−),2.58(1H,d,14.4Hz,−O−CH2−),2.76(1H,d,J=14.4Hz,−O−CH2−),2.83(1H,d,J=5.2Hz,−CH2−),6.81(1H,dd,J=0.5,1.8Hz,Ph),6.96−7.01(1H,m,Ph),7.07−7.15(2H,m,Ph),7.72−7.84(3H,m,Indandion),7.90−7.94(1H,m,Indandion).
0.09(3H,t,J=7.3Hz,Me),1.30−1.33(2H,m,−CH2−),1.32(18H,s,t−Bu),1.70−1.85(2H,m,−CH2−),3.45(3H,s,N−Me),3.50−3.60(2H,m、N−CH2−C3H7)3.66(3H,s,MeSO2),4.08−4.15(4H,m,−O−CH2−),4.82−4.89(4H,m,N−CH2),7.41(4H,d,J=8.6Hz,Ar),7.89(4H,d,J=8.6Hz,Ar)
Claims (7)
- 前記一般式(1)および(2)のR2がエチル基、Aが塩素原子で置換されているベン
ゼン環、Bがベンゼン環であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエポキシ化合物の製造方法。 - 前記オニウム塩が、活性水素を含む官能基またはその塩に変換可能な置換基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
- 前記活性水素を含む官能基が、水酸基又はカルボキシル基であることを特徴とする請求項4に記載のエポキシ化合物の製造方法。
- 前記オニウム塩が、アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
- 前記製造方法において、さらに無機リン酸類を共存させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
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