ところで、図1A及び図1Bに示すように、上歯Dmaxが並ぶ人間の上顎Maxは、頭骨Sと一体になっており、頭骨Sに対して左右前後に動くことはなく、また、頭骨Sに対して傾くこともない。一方、下歯Dmanが並ぶ人間の下顎Manは、顎関節TMJ(左顎関節TMJL、右顎関節TMJR)により可動的に頭骨Sと結合している。顎関節TMJ(TMJL,TMLR)は、頭骨S側に形成された下顎窟MF(左下顎窟MFL、右下顎窟MFR)と、図1A及び図1Bとともに図2に示すように、下顎Manの後端上部に形成された下顎頭MH(左下顎頭MHL,右下顎頭MHR)とから構成され、下顎頭MH(MHL,MHR)が下顎窟MF(MFL,MFR)に遊嵌した状態で、下顎Manが頭骨Sに結合している。
そして、口を開ける際に、図1Bとともに図3に示すように、下顎Manの下顎頭MH(左下顎頭MHL、右下顎頭MHR)が、下顎窟MF(左下顎窟MHL、右下顎窟MHR)内を前方に移動しつつ、下顎頭MH(左下顎頭MHL、右下顎頭MHR)を支点にして、下顎Manが上顎Mmaxから離れるように動く。一方、口を閉じる際には、下顎頭MH(左下顎頭MHL、右下顎頭MHR)を支点にして、下顎Manが上顎Mmaxに近づきつつ、下顎Manの下顎頭MH(左下顎頭MHL、右下顎頭MHR)が下顎窟MF(左下顎窟MHL、右下顎窟MHR)の奥方に移動し、下顎Manの下歯Dmanが上顎Mmaxの上歯Dmaxに噛み合う。
また、下顎Manが左側方に動く際には、下顎Manは、図4に示すように、左下顎窟MFLに嵌っている左下顎頭MHLを支点にして動き、右下顎頭MHRが右下顎窟MFR内を前方に移動しながら下顎Man全体が左方に動く。一方、下顎Manが右側方に動く際には、下顎Manは、右下顎窟MFRに嵌っている右下顎頭MHRを支点にして動き、左下顎頭MHLが左下顎窟MFR内を前方に移動しながら下顎Man全体が右方に動く(図示略)。
ところで、上述したような下顎Manの側方運動時に、上歯Dmaxの犬歯と下歯Dmanの犬歯とが接触しながら下顎Manが誘導されて臼歯部が離開した状態で咬合する。このような咬合様式を犬歯誘導咬合といい、下顎Manの側方運動時に、臼歯部に側方圧がかからず、理想的な咬合様式の一つであるとされている。
前述した従来の咬合器(特許文献1参照)では、下顎模型用支持台にセットされた下顎歯列模型を左右前後の四方向に移動させたり、その傾きを種々変更させることができ、また、上顎模型用支持台にセットされた上顎歯列模型を左右前後の四方向に移動させたり、その傾きを種々変更させたりすることはできるが、固定された上顎歯列模型に対して犬歯誘導咬合を模した下顎歯列模型の動きを再現することが難しい。このため、上顎歯列模型の義歯や補綴物と下顎歯列模型の義歯や補綴物とが犬歯誘導咬合様式にて咬合するように調整すること、あるいは、犬歯誘導咬合様式にて咬合するか否かを判断することが難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、セットされた上顎歯列模型に対して犬歯誘導咬合を模した下顎歯列模型の動きを容易に再現することができる咬合器を提供するものである。
本発明に係る咬合器は、上顎歯列模型及び下顎歯列模型が互いに対向した状態でセットされ、前記上顎歯列模型と前記下顎歯列模型との咬合状態を再現させる咬合器であって、前記上顎歯列模型を装着する上顎装着部と、該上顎装着部に装着された前記上顎歯列模型の下方において当該上顎歯列模型に対向して配置される前記下顎歯列模型を支持する下顎支持構造体と、該下顎支持構造体の上部一側端から横方向に突出し、先端にボール体を備えた第1支軸部と、前記下顎支持構造体の上部他側端から前記第1支軸部と逆方向に突出し、先端にボール体を備えた第2支軸部と、前記第1支軸部のボール体を、前方斜め下方に摺動自在に支持する第1支持ブロックと、前記第2支軸部のボール体を、前方斜め下方に摺動自在に支持する第2支持ブロックと、前記下顎支持構造体の前端部から前方に向けて突出する第3支軸部と、該第3支軸部を、左右斜め下方向に振分ガイドする前ガイドブロックと、前記下顎支持構造体の動きに抗するように当該下顎支持構造体を弾性支持する弾性支持機構とを有する構成となる。
このような構成により、下顎支持構造体は、第1支持ブロックによって支持される、当該下顎支持構造体の上部一側端、例えば、上部右側端から突出する第1支軸部のボール体と、第2支持ブロックによって支持される、当該下顎支持構造体の上部他側端である上部左側端から突出する第2支軸部のボール体とによって支持されるとともに、弾性機構によって弾性支持された状態になっている。そして、上顎歯列模型が上顎装着部に装着され、下顎歯列模型が下顎支持構造体に支持された状態で、下顎支持構造体の前端部が、例えば、左斜め下方に押されると、該下顎支持構造体の前端部から前方に突出する第3支軸部が、前ガイドブロックにより左斜め下方向にガイドされつつ移動する。この下顎支持構造体の前端部の左斜め下方への移動に伴って、第1支軸部のボール体が第1支持ブロック内の摺動面を前方斜め下方に摺動するとともに、第2支軸部のボール体が摺動面を前方斜め下方に摺動することなく第2支持ブロックに支持された状態が維持される。よって、下顎支持構造体が、弾性機構による当該支持構造体の動きに抗する弾性作用を受けつつ、第2支軸部のボール体を支点にして概ね左斜め下方に回動する。
また、下顎支持構造体の前端部が、前述したのとは逆に、例えば、右斜め下方に押されると、前記第3支軸部が、前ガイドブロックにより右斜め下方にガイドされつつ移動する。この下顎支持構造体の前端部の右斜め下方への移動に伴って、第2支軸部のボール体が第2支持ブロック内の摺動面を前方斜め下方に摺動するとともに、第1支軸部のボール体が摺動面を斜め下方に摺動することなく第1支持ブロックに支持された状態が維持される。よって、下顎支持構造体が、弾性支持機構による当該下顎支持構造体の動きに抗する弾性作用をうけつつ、第1支軸部のボール体を支点にして概ね右斜め下方に回動する。
上述したように、第2支軸部のボール体を支点にした概ね左斜め下方に、及び、第1支軸部のボール体を支点にした概ね右斜め下方に回動する下顎支持構造体に支持される下顎歯列模型の動きは、上顎装着部に装着された上顎歯列模型に対して、左側方に動きながら徐々に開く動き、及び右側方に動きながら徐々に開く動きとなる。ここで、第1支軸部のボール体及びそれを支持する第1支持ブロックは、例えば、図1A乃至図4に示す下顎Manにおける右下顎頭MHR及び右下顎窟MFRを模したものと、第2支軸部のボール体及びそれを支持する第2支持ブロックは、下顎Manにおける左下顎頭MHL及び左下顎窟MFLを模したものとみることができる。
本発明に係る咬合器において、前記下顎支持構造体は、前記下顎歯列模型を装着する下顎装着部と、該下顎装着部を吊り下げ支持する吊り下げ支持体とを有し、前記第1支軸部は、前記吊り下げ支持体の上部一側端から突出し、前記第2支軸部は、前記吊り下げ支持体の上部他側端から突出し、前記第3支軸部は、前記下顎装着部の前端部から突出する構成とすることができる。
このような構成により、下顎歯列模型が装着される下顎装着部と当該下顎装着部を吊り下げ支持する吊り下げ支持体とが、一体となって、第1支持ブロックに摺動自在に支持される第1支軸部のボール体と、第2支持ブロックに摺動自在に支持される第2支軸部のボール体とによって支持される。そして、前記下顎装着部の前端部が、例えば、左斜め下方に押されると、下顎装着部の前端部から前方に突出する第3支軸部が、前ガイドブロックにより左斜め下方向にガイドされつつ移動する。この下顎装着部の前端部の左斜め下方への移動に伴って、下顎装着部及び吊り下げ支持体が、一体となって、弾性支持機構による当該下顎装着部及び吊り下げ支持体の動きに抗した弾性作用を受けつつ、第2支軸部のボール体を支点にして概ね左斜め下方に回動する。また、前記下顎装着部の先端部が、例えば、右斜め下方に押されると、前記第3支軸部が、前ガイドブロックにより右斜め下方にガイドされつつ移動する。この下顎装着部の前端部の右斜め下方への移動に伴って、下顎装着部及び吊り下げ支持体が、一体となって、弾性支持機構による当該下顎装着部及び吊り下げ支持体の動きに抗した弾性作用を受けつつ、第1支軸部のボール体を支点にして概ね右斜め下方に回動する。前記第2支軸部のボール体を支点にした概ね左斜め下方に、及び、第1支軸部のボール体を支点にした概ね右斜め下方に吊り下げ支持体とともに回動する下顎装着部に装着される下顎歯列模型の動きは、上顎装着部に装着された上顎歯列模型に対して、左側方に動きながら徐々に開く動き、及び右側方に動きながら徐々に開く動きとなる。
本発明に係る咬合器において、前記弾性支持機構は、前記吊り下げ支持体の上部をその動きに抗するように弾性支持する上部弾性支持機構と、前記吊り下げ支持体の下部をその動きに抗するように弾性支持する下部弾性支持機構とを有する構成とすることができる。
このような構成により、下顎歯列模型が装着される下顎装着部を吊り下げ支持する吊り下げ支持体が、上部弾性支持機構と下部弾性支持機構とによって、当該吊り下げ支持体の動きに抗するように弾性支持される。
本発明に係る咬合器において、前記上部弾性支持機構は、前記第1支軸部と前記第2支軸部との間において、前記吊り下げ支持体から後方に延びる複数のスプリングを有する構成とすることができる。
このような構成により、下顎歯列模型が装着される下顎装着部と吊り下げ支持体とが、全体として、吊り下げ支持体の上部の第1支軸部と第2支軸部との間に作用する複数のスプリング力によって弾性支持される。
本発明に係る咬合器において、前記下部弾性支持機構は、前記吊り下げ支持体の下部から前方に延びる複数のスプリングを有する構成とすることができる。
このような構成により、下顎歯列模型が装着される下顎装着部と吊り下げ支持体とが、全体として、吊り下げ支持体の下部に作用する複数のスプリングによる力によって弾性支持される。
本発明に係る咬合器において、前記第1支軸部と前記第2支軸部との間隔を調整する支軸間調整機構と、前記第1支持ブロックと前記第2支持ブロックとの間の距離を調整するブロック間調整機構とを有する構成とすることができる。
このような構成により、下顎支持構造体にて支持される下顎歯列模型の大きさに応じて、第1支軸部と第2支軸部との間の間隔を調整することができ、そして、それら第1支軸部のボール体と第2支軸部のボール体とを適正に支持することができるように第1支持ブロックと第2支持ブロックとの間の距離を調整することができる。
本発明に係る咬合器において、前記第1支持ブロックの斜め下方の向きを調整する第1下方向き調整機構と、前記第2支持ブロックの斜め下方の向きを調整する第2下方向き調整機構とを有する構成とすることができる。
下顎歯列模型に対応した左下顎窟及び右下顎窟をより忠実に模するように、第1支持ブロック及び第2支持ブロックそれぞれの斜め下方の向きを調整することができる。
本発明に係る咬合器において、前記前ガイドブロックでの前記第3支軸部の左右斜め方向のそれぞれの振分角度を調整する振分角度調整機構を有する構成とすることができる。
このような構成により、前ガイドブロックによる第3支軸部の左右斜め方向のそれぞれの振分角度を調整することができるので、下顎支持構造体の下方に向けた回動に対する、左方向及び右方向への回動の割合を調整することができる。
本発明に係る咬合器によれば、第2支軸部のボール体を支点にした概ね左斜め下方に、及び、第1支軸部のボール体を支点にした概ね右斜め下方に回動する下顎支持構造体に支持される下顎歯列模型の動きは、上顎装着部に装着された上顎歯列模型に対して、左側方に動きながら徐々に開く動き、及び右側方に動きながら徐々に開く動きとなる。従って、上顎装着部に装着された上顎歯列模型に対して、左方、及び、右方に動きつつ、犬歯に誘導されて徐々に開いて臼歯部に側方圧がかからない犬歯誘導を模した下顎歯列模型の動きを容易に再現することができる。
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
本発明の実施の一形態に係る咬合器は、図5乃至図10に示すように構成される。図5は当該咬合器を示す斜視図であり、図6は当該咬合器を示す分解斜視図であり、図7は当該咬合器を示す正面図であり、図8は当該咬合器を示す側面図であり、図9は当該咬合器を示す平面図であり、図10は当該咬合器の図7におけるIV(b)-IV(b)線での断面を示す断面図である。なお、咬合器100にセットされる上顎歯列模型DM1及び下顎歯列模型DM2の前後方向及び左右方向を、当該咬合器100の前後方向及び左右方向として定め、その前後方向及び左右方向に直交する方向、即ち、咬合器100にセットされる上顎歯列模型DM1及び下顎歯列模型DM2の上下方向を当該咬合器100の上下方向として定めるものとする。
図5乃至図10に示す咬合器100は、図11及び図12に示すような構造の下顎支持構造体110を含んでいる。下顎支持構造体110は、下顎支持台60(下顎装着部)及び吊り下げ支持フレーム体40(吊り下げ支持体)からなっている。下顎支持台60は、支持プレート61と、支持プレート61の上面に前後動可能に置かれた下顎載置プレート62と、支持プレート61の先端から前方に突出し、先端がボール状に形成された前支軸部63(第3支軸部)とを有している。支持プレート61に前後方向に延びる長孔(図示されず)が形成されるとともに下顎載置プレート62に孔(図示略)が形成されており、その長孔及び孔を下顎固定ネジ64(図8参照)が貫通している。下顎固定ネジ64の先端部分にはネジ部が形成されており、このネジ部と、下顎載置プレート62に置かれる下顎マウントプレート65のネジ孔とが螺合し、下顎マウントプレート65、下顎載置プレート62及び支持プレート61を下顎固定ネジ64が締め付けることにより、下顎マウントプレート65が下顎載置プレート62上に固定される。即ち、下顎マウントプレート65上に形成された下顎歯列模型DM2が下顎載置プレート62上に装着され、下顎支持台60に支持された状態になる(図5、図6、図8参照)。また、下顎固定ネジ64の締め付けを緩めると、下顎マウントプレート65が置かれる下顎載置プレート62を支持プレート61の長孔に沿って前後動させることができる。即ち、下顎マウントプレート65に形成された下顎歯列模型DM2を前後動させることができる。
吊り下げ支持フレーム体40は、下辺フレーム部41、上辺フレーム部42、右辺フレーム部43a及び左辺フレーム部43bにより四辺形状に形成され、上辺フレーム部42は下辺フレーム部41より短く、下辺フレーム部41及びそれより短い上辺フレーム部42それぞれの対応する端部をつなぐ右辺フレーム43a及び左辺フレーム43bはそれぞれ段付きの形状となっている。下顎支持台60の支持プレート61が吊り下げ支持フレーム体40の下辺フレーム部41から前方に向けて突出するように当該下辺フレーム部41にネジ止め固定されている(図6参照)。
また、図13に示すように、吊り下げフレーム体40における上辺フレーム部42の左側端部には、左端面で開口するように所定深さの取付け穴44bが形成されるとともに、その取付け穴44bに直交するように、前後方向に貫通する通孔45bが形成されている。なお、上辺フレーム部42の右側端部にも、同様に、取付け穴44aと通孔45aとが形成されている(図14参照)。図13とともに図14に示すように、上辺フレーム部42の右側端部及び左側端部において、一端面にフランジの形成されたスリーブ体47a、47bが通孔45a、45bに嵌まり込んでいる。筒状のスリーブ体47a、47bには、それに直交するように通孔が形成されており、前記フランジが上辺フレーム部42の表面に当接するまでスリーブ体47a、47bを当該上辺フレーム部42の通孔45a、45bに嵌め込むことにより、取付け穴44a、44bとスリーブ体47a、47bの前記通孔とが連通した状態になる。
軸体461と軸体461の先端に形成されたボール体462とによって右支軸部46a(第1支軸部)及び左支軸部46b(第2支軸部)のそれぞれが構成されている(図13、図14参照)。スリーブ体47a、47bが上辺フレーム部42の通孔45a、45bに適正に嵌め込まれた状態で、右支軸部46a及び左支軸部46bの軸体461が、連通する取付け穴44a、44b及びスリーブ体47a、47bの前記通孔に挿入される。これにより、スリーブ体47a、47bが取付け穴44a、44bから抜けない状態になる。そして、スリーブ体47a、47bの内面にはネジ部が形成されており、スリーブ体47a、47bの前記フランジが形成された端部と逆側の端部からネジ48a、48bを当該ネジ部に螺合させて締め込むことにより、スリーブ体47a、47bを貫通する右支軸部46a、左支軸部46bの軸体461がスリーブ体47a、47b内、即ち、取付け穴44a、44b内で固定される。これにより、図12に示すように、下顎支持構造体110は、吊り下げフレーム体40の上辺フレーム部42の右側端部から右支軸部46aのボール体462が突出し、上辺フレーム部42の左側端部から左支軸部46bのボール体462が突出した構造となる。
ネジ48a、48bを緩めた状態で、右支軸部46a及び左支軸部46bそれぞれの軸体461の取付け穴44a、44b内での位置を調整することにより、右支軸部46aのボール体462と左支軸部46のボール体462との間隔を調整することができる(支軸間調整機構)。
また、図5乃至図10に示す咬合器100において、ベース板10の前部両隅に右支柱11a及び左支柱11bが立設されるとともに、後部両隅にL字形状の右架台プレート12a及び左架台プレート12bが設けられている。そして、図13に咬合器100の左側後方部分の構造が詳細に示されるように、左架台プレート12bの先端面に左支持プレート21bがネジ止め固定されている。左支持プレート21bには横方向(左右方向)に延びる溝部211が形成されている。また、左支持プレート21bは単なる矩形状ではなく、部分的にでっぱった形状となっており、そのでっぱった部分の端縁に、後述する上顎装着部50を回動自在に保持する保持プレート25を取り付けるための左取付けプレート台22bが固定されている。左支持プレート21bの溝部211が形成された部分に左スライドプレート23bが重ねられており、左スライドプレート23bに形成された線状突起部231が左支持プレート21bの溝部211に嵌り込んでいる。左スライドプレート23bには横方向に延びる長孔232が形成されており、左スライドプレート23bは、長孔232を通したネジにより左支持プレート21bに締め付け固定されている。そして、長孔232を通したビスの締め付けを緩めた状態で、左スライドプレート23bは、線状突起部231が溝部211内を摺動しながら、左支持プレート21b上を左右方向に、長孔231の長さ範囲内で、移動可能である。
左スライドプレート23bの右縁部分に左ブロック取付けプレート24bがネジ止め固定されている。左ブロック取付けプレート24bには、左支持ブロック30b(第2支持ブロック)を回動自在に支持する支軸ピン(図示されず)が設けられており、その支軸ピンを中心とした所定の弧形状となる弧状長孔241が形成されている。左支持ブロック30bは、ブロック本体31bとカバープレート32bとから構成されている。ブロック本体31bに形成された軸受け穴に左ブロック取付けプレート24bの前記支軸ピンが嵌まり込むように、ブロック本体31bが左ブロック取付けプレート24bに前方斜め下方に傾斜した状態で装着されている。そして、弧状長孔241を通したネジによりブロック本体31b(左支持ブロック30b)が左ブロック取付けプレート24bに締め付け固定される。弧状長孔241を通したビスの締め付けを緩めた状態で、ブロック本体31b(左支持ブロック30b)を軸受け穴に嵌まり込んだ前記支軸ピンを中心として回動させることにより、左支持ブロック30bの斜め下方の向きを調整することができる(第2下方向き調整機構)。
咬合器100の右側後方部分の構造も前述した左側後方部分(図13参照)と同様に、ベース板10に設けられた右架台プレート12aに、右支持プレート21b、右取付けプレート台22a、右スライドプレート23a、及び右ブロック取付けプレート24aが、順次、組み付け固定されている(図6参照)。そして、右ブロック取付けプレート24aに、左支持ブロック30bと同様にブロック本体31a及びカバープレート32aで構成される右支持ブロック30a(第1支持ブロック)が、前方斜め下方に傾斜した状態で装着されている。また、左支持ブロック30bの場合と同様に、右支持ブロック30aを右ブロック取付けプレート24aに締め付け固定するネジを緩めて、ブロック本体31a(右支持ブロック30a)を軸受け穴に嵌まり込んだ前記支軸ピンを中心として回動させることにより、右支持ブロック30aの斜め下方の向きを調整することができる(第1下方向き調整機構)。
また、右支持ブロック30aが取り付けられた右ブロック取付けプレート24aが固定される右スライドプレート23aを固定するネジを緩めて右スライドプレート23aを右支持プレート21a上で左右方向にスライドさせるとともに、左支持ブロック30bが取り付けられた左ブロック取付けプレート24bが固定される左スライドプレート23bを固定するネジを緩めて左スライドプレート23bを左支持プレート21b上で左右方向にスライドさせることにより、右支持ブロック30aと左支持ブロック30bとの間の距離を調整することができる(ブロック間調整機構)。
右支持ブロック30a(第1支持ブロック)と左支持ブロック30b(第2支持ブロック)とは、左右対称の関係にある。右支持ブロック30aのブロック本体31a及び左支持ブロック30bのブロック本体31bのそれぞれは、特に右支持ブロック30aのブロック本体31aの構造を示す図14に示されるように、ブロック本体31a(31b)に凹状の摺動面311が形成されている。そして、吊り下げ支持フレーム体40の上辺フレーム部42の右側端から突出する右支軸部46aのボール体462が、右支持ブロック46aのブロック本体31aに形成された凹状の摺動面311に所要の遊びをもって納められている。そして、図11に示すように、カバープレート32aがボール体462を覆うようにブロック本体31aにネジ止め固定されて、ブロック本体31a内でのボール体462の浮き上がりを防止している。また、吊り下げ支持フレーム体40の上辺フレーム42の左側端から突出する左支軸部46bのボール体462も、右支軸部46aのボール体462と同様に、左支持ブロック30b(ブロック本体31b、カバープレート32b)に納められている(図11参照)。このようにして、吊り下げ支持フレーム体40の上部(上辺フレーム部42)右側端から突出する右支軸部46aのボール体462が右支持ブック30aによって前方斜め下方に摺動自在に支持され、吊り下げ支持フレーム体40の上部(上辺フレーム部42)左側端から突出する左支軸部46bのボール体462が左支持ブロック30bによって前方斜め下方に摺動自在に支持されている。
更に、図5乃至図10に示す咬合器100において、図12に示すように、下顎支持構造体110の下顎支持台60の支持プレート61の前端部から突出する前支軸部63が係合するように前ガイドブロック80が配置されている。具体的には、ベース板10の前部における右支柱11aと左支柱11bとの間に一対の取付けブロック16a、16bが固定されており、その取付けブロック16a、16bに前ガイドブロック80がネジ止めにより固定されている。前ガイドブロック80は、図15に示すように、第1中央ブロック81a、第2中央ブロック81b、右ブロック82a、左ブロック82b及び押さえブロック84が前面プレート17にネジ止め固定されて一体化されることにより構成される。第1中央ブロック81a、第2中央ブロック81b、右ブロック82a及び左ブロック82bは、それぞれ扇状のブロック体であって、全体として扇状に配列されている。そして、第1中央ブロック81aと右ブロック82aとの間に右スライドスペース83aが形成され、第2中央ブロック81bと左ブロック82bとの間に左スライドスペース83bが形成されている。
下顎支持台60の支持プレート61の前端部から突出する前支軸部63は、下顎支持構造体110(下顎支持60、吊り下げ支持フレーム体40)に力が作用していない状態にあるとき、図16A及び図16Bに示すように、前ガイドブロック80の扇の中心位置、即ち、扇状の第1中央ブロック81a及び第2中央ブロックの先端部に対応した位置(以下、適宜、中立位置という)にある。このとき、押さえブロック84により前支軸部63の浮き上がりが防止される。前支軸部63は、上記中立位置(図16A、図16B参照)から、図17に示すように、第1中央ブロック81aと右ブロック82aとの間の右スライドスペース83a内をガイドされつつ右斜め下方に移動することが可能である。また、前支軸部63は、上記中立位置から、図18に示すように、第2中央ブロック81bと左ブロック82bとの間の左スライドスペース83b内をガイドされつつ左斜め下方に移動することが可能である。従って、下顎支持台60の支持プレート61の前端部から突出する前支軸部63は、図19に示すように、前ガイドブロック80により、左右斜め下方に振分ガイドされる。
また、図20に示すように、第1中央ブロック81aと右ブロック82aとを前面プレート17に締め付け固定するネジを緩めた状態で、扇の先端部を中心にして回動させることにより、右スライドスペース83aの傾き角度、即ち、前支軸部63の右斜め下方への振分角度を、所定の角度範囲Aで調整することができる。また、同様に、第2中央ブロック81bと左ブロック82bとを全面プレート17に締め付け固定するネジを緩めた状態で、扇の先端部を中心にして回動させることにより、左スライドスペース83bの傾き角度、即ち、前支軸部63の左斜め下方への振分角度を、所定の角度範囲Aで調整することができる(振分角度調整機構)。
更に、図5乃至図10に示す咬合器100は、上顎装着部50(公知の咬合器における上弓に相当))を有している。上顎装着部50は、支持プレート51及び支持プレート51の上面に前後動可能に置かれたスライドプレート53を有している。支持プレート51に前後方向に延びる長孔(図示されず)が形成されるとともにスライドプレート53に孔(図示されず)が形成されており、その長孔及び孔を上顎固定ネジ54が貫通している。上顎固定ネジ54の先端部分にはネジ部が形成されており、このネジ部と、支持プレート51の裏側に配置される上顎マウントプレート56(図8参照)のネジ孔とが螺合し、上顎マウントプレート56、支持プレート51及びスライドプレート52を上顎固定ネジ54が締め付けることにより、上顎マウントプレート56が支持プレート51の裏面側に固定される。即ち、上顎マウントプレート56に形成された上顎歯列模型DM1が支持プレート51に装着された状態になる(図5、図6、図7、図8参照)。また、上顎固定ネジ54の締め付けを緩めると、上顎マウントプレート56がスライドプレート52とともに支持プレート51の長孔に沿って前後動させることができる。即ち、上顎歯列マウントプレート56に形成された上顎歯列模型DM1を前後動させることができる。
また、図5乃至図10に示す咬合器100において、前述したように、右架台プレート12aに右支持プレート21aを介して固定された右取付けプレート台22aと、左架台プレート12bに左支持プレート21bを介して固定された左取付けプレート台22bとにビス止め固定された保持プレート25には、前方に向いて開口する凹状部251が形成されている。保持プレート25の凹状部251を挟んで左右の対向する所定位置に一対の受け凹部252a、252bが形成されている。上顎装着部50の支持プレート51の後方部の所定位置に左右に突出する支持ピン52a、52bが設けられており、支持プレート51の後方部分が保持プレート25の凹状部251に入り込んだ状態で、支持ピン52a、52bが受け凹部252a、252bに嵌め込まれている。そして、保持プレート25には受け凹部252a、252bを覆うように押えプレート26a、26bが固定されている。これら押えプレート26a、26bにより支持プレート51の支持ピン52a、52bの浮き上がりが防止される。このように、支持ピン52a、52bが保持プレート25の受け凹部252a、252bに嵌め込まれていることにより、それら支持ピン52a、52bを軸にして、支持プレート51(上顎装着部50)が回動することが可能となる。
右支柱11aの先端と左支柱11bの先端との間に横バー13が渡してあり、横バー13は、止めネジ14aによって右支柱11aの先端に固定されるとともに、止めネジ14bによって左支柱11bの先端に固定されている。前述したように、支持ピン52a、52bによって回動自在に保持プレート25に保持された支持プレート51の先端部は、横バー13に達しており、支持プレート51の先端部が止めネジ55によって横バー13に固定される。止めネジ55を外すことにより、支持プレート51を支持ピン52a、52bを軸にして回動させて起立させることが可能である。支持プレート51(上顎装着部50)の先端部が横バー13に固定された状態で、支持プレート51は、ベース板10と平行な水平状態にある。
更に、図5乃至図10に示す咬合器100において、吊り下げ支持フレーム体40の下辺フレーム41に、当該下辺フレーム部41に固定される支持プレート61の幅より僅かに広い間隔をもって左右に配置される2つの引掛けピン49a、49bが設けられており、ベース板10の所定部位に、前記引掛けピン49a、49bの間隔と略同じ間隔をもって左右に配置される2つの引掛けピン15a、15bが設けられている。下辺フレーム部41(吊り下げ支持フレーム体40の下部)の一方の引掛けピン49aと、ベース板10に設けられた一方の引掛けピン15aとに右下部スプリング71aが引掛けられている。また、下辺フレーム部41(吊り下げ支持フレーム体40の下部)の他方の引掛けピン49bと、ベース板10に設けられた他方の引掛けピン15bとに左下部スプリング71bが引掛けられている。吊り下げ支持フレーム体40の下辺フレーム部41は、右下部スプリング71aと左下部スプリング71bの2つのスプリングによって、その動きに抗するように弾性支持される(弾性支持機構:下部弾性支持機構)。
吊り下げ支持フレーム体40の上辺フレーム部42の後面に、所定の間隔をもって左右に配置される2つの引掛けピン28a、28bが設けられており、保持プレート25の後端面に、所定の間隔をもって左右に配置されるL字状の2つの引掛けピン27a、27bが設けられている。上辺フレーム部42(吊り下げ支持フレーム体40の上部)の一方の引掛けピン28aと、保持プレート25に設けられた一方の引掛けピン27aとに右上部スプリング72aが引掛けられている。また、上辺フレーム部42(吊り下げ支持フレーム体40の上部)の他方の引掛けピン28bと、保持プレート25に設けられた他方の引掛けピン27bとに左上部スプリング72bが引掛けられている。吊り下げ支持フレーム体40の上辺フレーム部42は、右上部スプリング72aと左上部スプリング72bの2つのスプリングによって、その動きに抗するように弾性支持される(弾性支持機構:上部弾性支持機構)。
下顎支持構造体110、即ち、下顎支持台60及びそれを吊り下げ支持する吊り下げ支持フレーム40は、全体として、上述した右下部スプリング71a、左下部スプリング71b、右上部スプリング72a及び左上部スプリング72bの4つのスプリング(弾性支持機構)によって、当該下顎支持構造体110の動きに抗するように弾性支持されている。
上述した構造の咬合器100では、図12に示すように、下顎支持構造体110の吊り下げ支持フレーム体40の上辺フレーム部42の右側端及び左側端から突出する右支軸部46a及び左支軸部46bのボール体462が、人の下顎Manにおける右下顎頭MHR及び左下顎頭MHLに対応している。そして、右支軸部46a及び左支軸部46bのボール体462を支持する右支持ブロック30a及び左支持ブロック30b(ブロック本体31a)の摺動面311(図13、図14参照)が、人の下顎Manにおける右下顎窟MFR及び左下顎窟MFL(図1A〜図4参照)に対応している、とみることができる。
上述した構造の咬合器100の使用例について説明する。
まず、歯科治療患者の上顎歯列模型DM1が作製される。上顎歯列模型DM1は、公知の手法に従って作製することができる。また、本願発明者が既に提案している上顎歯列模型調節器(特開2013−52169号公報参照)を用いて上顎歯列模型DM1を作製することもできる。この場合、まず、歯科治療患者の顎部分を含む頭部のX線規格写真撮影(セファロX線写真撮影)を行う。そして、このX線規格写真撮影にて得られた、例えば、図21に示すようなX線規格写真画像(セファロX線写真画像)において、歯科治療患者Hの眼窩下点(眼窩下孔)と外耳道上線を結んでできる平面であって、歯科治療患者Hが直立した際に地表とほぼ平行になるとされるフランクフルト平面PLFFと、歯科治療患者Hの上顎と下顎との咬合平面PLOCCとのなす角度αが測定される。
特開2013−52169号公報に開示される上顎歯列模型調節器において、凹状に彎曲した基準板の傾き角度が、上述したように測定された角度αとなるように、前記基準板の傾きが調整される。基準板が傾いた(角度α)状態で、当該基準板上に上顎の各歯を配列して上顎歯列模型DM1が作製される(特開2013−52169号公報参照)。咬合器100において、上顎装着部50(支持プレート51:上弓に相当)がフランクフルト平面PLOCCに見立てられて、上顎装着部50に対する上顎歯列模型DM1の歯列先端が接触する面(咬合平面に相当)のなす角度が前記角度αになるように、当該上顎歯列模型DM1が上顎装着部50に装着される。具体的には、例えば、前記角度αに傾き角度が調整された前記上顎歯列模型調節器の基準板上に上顎歯列模型DM1(上顎マウントプレート56を伴う)が形成された場合、下顎支持台60の支持プレート61上に、下顎載置プレート62に代えて、前記上顎歯列模型調節器をセットし、その上顎歯列模型調節器上の上顎歯列模型DM1の形成された上顎マウントプレート56が支持プレート51及びスライドプレート53に止めネジ54により固定される。これにより、上顎装着部50に対する上顎歯列模型DM1の歯列先端が接触する面(咬合面に相当)のなす角度が前記角度αとなった状態で、上顎歯列模型DM1が上顎装着部50に装着されることになる。
更に、図21に示すX線規格写真画像において、下顎頭から前方に上顎(または下顎)の、例えば、犬歯の位置までの距離Lが測定される。そして、咬合器100の上顎装着部50に装着された上顎歯列模型DM1の犬歯部分と、右支軸部46a、左支軸部46b(軸体461、ボール体462)との間の前後方向の距離が、前記Lとなるように、止めネジ54を緩めて、上顎歯列模型DM1が上顎マウントプレート56を介して装着されたスライドプレート53の前後方向の位置が調整される。なお、上顎装着部50の支持プレート51の前方部分には目盛が刻まれており(図9参照)、その目盛を目安にしてスライドプレート53の前後位置を調整することができる。
前述したようにして上顎歯列模型DM1が上顎装着部50に装着された後に、上顎歯列模型DM1に咬合するように作製された下顎歯列模型DM2が下顎支持構造体110の下顎支持台60に装着される。具体的には、下顎歯列模型DM2が上顎装着部50に装着された上顎歯列模型DM1に咬合するように、当該下顎歯列模型DM2が下顎マウントプレート65を介して装着された下顎載置プレート62の前後方向位置が調整され、適正な位置にて下顎固定ネジ64を締め付けることにより、下顎歯列模型DM2が下顎支持台60に固定される。
上述したようにして、図5、図7及び図8に示すように、上顎歯列模型DM1及び下顎歯列模型DM2が咬合器100にセットされる。そして、次にようにして、上顎歯列模型DM1と下顎歯列模型DM2との咬合状態を確認することができる。
下顎支持台60の前端部が、例えば、右斜め下方に押されると、下顎支持台60(支持プレート61)の前端部から前方に突出する前支軸部63が、図22A及び図22B(図17も参照)に示すように、前ガイドブロック80の第1中央ブロック81aと右ブロック82aとの間の右スライドスペース83aに沿ってガイドされて右斜め下方に移動する。この下顎支持台60の前端部の右斜め下方への移動に伴って、図23に示すように、左支軸部46bのボール体462が左支持ブロック30b内の摺動面311を前方斜め下方に摺動するとともに、右支軸部46aのボール体462が摺動面311を前方斜め下方に摺動することなく右支持ブロック30aに支持された状態が維持される。よって、吊り下げ支持フレーム体40及びそれに吊り下げ支持される下顎支持台60が、一体となって、右下スプリング71a、左下スプリング71b、右上スプリング72a及び左上スプリング72bの4つのスプリングによる当該吊り下げ支持フレーム体40及び下顎支持台60の動きに抗する弾性作用を受けつつ、右支軸部46aのボール体462を支点にして概ね右斜め下方に回動する。下顎歯列模型DM2が装着された下顎支持台60及び吊り下げ支持フレーム体40(下顎支持構造体110)がこのようにして動くことにより、下顎歯列模型DM2の動きは、上顎装着部50に装着された上顎歯列模型DM1に対して、右方向に移動しながら徐々に開く動きとなる(図22A参照)。ここで、上述したように下顎支持台60が、右支軸部46bのボール体462を支点にして概ね右斜め下方回動しているので、下顎支持台60に装着された下顎歯列模型DM2は、上顎歯列模型DM1に対して、前記支点からより遠いより左側部分がより速く開いていく傾向にある。
一方、下顎支持台60の前端部が、例えば、左斜め下方に押されると、下顎支持台60の前支軸部63が、図24A及び図24B(図18も参照)に示すように、前ガイドブロック80の第2中央ブロック81bと左ブロック82bとの間の左スライドスペース83bに沿ってガイドされて左斜め下方に移動する。この下顎支持台60の前端部の左斜め下方への移動に伴って、図25に示すように、右支軸部46aのボール体462が右支持ブロック30a内の摺動面311を前方斜め下方に摺動するとともに、左支軸部46bのボール体462が摺動面311を前方斜め下方に摺動することなく左支持ブロック30bに支持された状態が維持される。よって、吊り下げ支持フレーム体40及びそれに吊り下げ支持される下顎支持台60が、一体となって、右下スプリング71a、左下スプリング71b、右上スプリング72a及び左上スプリング72bの4つのスプリングによる当該吊り下げ支持フレーム体40及び下顎支持台60の動きに抗する弾性作用を受けつつ、左支軸部46bのボール体462を支点にして概ね左斜め下方に回動する。下顎歯列模型DM2が装着された下顎支持台60及び吊り下げ支持フレーム体40(下顎支持構造体110)がこのようにして動くことにより、下顎歯列模型DM2の動きは、上顎装着部50に装着された上顎歯列模型DM1に対して、左方向に移動しながら徐々に開く動きとなる(図24A参照)。ここで、上述したように下顎支持台60が、左支軸部46bのボール体462を支点にして概ね左斜め下方回動しているので、下顎支持台60に装着された下顎歯列模型DM2は、上顎歯列模型DM1に対して、前記支点からより遠いより右側部分がより速く開いていく傾向にある。
更に、詳細に説明する。
下顎支持台60及び吊り下げ支持フレーム体40(下顎支持構造体110)に力が作用せずに、前支軸部63が、図26Aに示すように、前ガイドブロック80の中立位置にある場合、右支軸部46aのボール体462が、図26B、図26C、図26Dに示すように、右支持ブロック30aの摺動面311の初期位置Soに維持され、同様に、左支軸部46bのボール体462が、初期位置に維持される。この場合、図26Aに示すように、下顎支持台60に装着された下顎歯列模型DM2は、上顎装着部50(図示略)に装着された上顎歯列模型DM1に対して閉じた状態を維持している。
この状態から、例えば、左犬歯による犬歯誘導の動きを再現しようとする場合、下顎支持台60の前端部分が左斜め下方に押される。すると、前支軸部63が、前ガイドブロック80の中立位置(図26A参照)から、図27A(図18も参照)に示すように、第2中央ブロック81bと左ブロック82bとの間の左スライドスペース83bに沿ってガイドされて左斜め下方に移動する。前支軸部63が前ガイドブロック80によって左斜め下方に振り分けられて移動する過程で、右支軸部46aのボール体462が、図27Bとともに図27Cに示すように、右支持ブロック30a(ブロック本体31a)内の摺動面311を斜め下方に摺動して初期位置Soから更に下方の位置S1に移動する。このとき、左支軸部46bのボール体462は、図27Bとともに図27Dに示すように、摺動面311を前方斜め下方に摺動することなく左支持ブロック30bに支持された状態が維持される。これにより、吊り下げ支持フレーム体40及びそれに吊り下げ支持される下顎支持台60が、一体となって、左支軸部46bのボール体462を支点にして概ね左斜め下方に僅かに回動する。このとき、下顎支持台40に装着された下顎歯列模型DM2は、図27Aに示すように、上顎歯列模型DM1に対して、左方向に僅かに移動しながら僅かに開く。
更に、下顎支持台60の前端部が左斜め下方に押され続けると、前ガイドブロック80の左スライドスペース83bに沿ってガイドされる前支軸部63が、図28Aに示すように、更に左斜め下方に移動する。この下顎支持台60の更なる左斜め下方への移動に伴って、右支軸部46aのボール体462が、図28Bとともに図28Cに示すように、右支持ブロック30a(ブロック本体31a)内の摺動面311を斜め下方に摺動して前記位置S1から更に下方の位置S2に移動する。このとき、左支軸部46bのボール体462は、図28Bとともに図28Dに示すように、依然、摺動面311を前方斜め下方に摺動することなく左支持ブロック30bに支持された状態が維持される。これにより、吊り下げ支持フレーム体40及びそれに吊り下げ支持される下顎支持台60が、一体となって、左支軸部46bのボール体462を支点にして更に概ね左斜め下方に回動する。このとき、下顎支持台40に装着された下顎歯列模型DM2は、図28Aに示すように、上顎歯列模型DM1に対して、更に左方向に移動しながら、より右側の部分がより速く開く傾向をもって更に開いていく。
上顎歯列模型DM1と下顎歯列模型DM2とが適正に作製されている場合、上述したようにして下顎歯列模型DM2が、左方向に移動しながら、上顎歯列模型DM1に対して、より右側の部分がより早く開く傾向をもって徐々に開いていく過程で、下顎歯列模型DM2の左犬歯部分が上顎歯列模型DM1の左犬歯部分に接触して、それぞれの臼歯部分の間に隙間ができる状態を経ることになる。上顎歯列模型DM1に対するこのような下顎歯列模型DM2の動きは、図29に示すように、下顎Manを左方向に動かす際に、上顎Maxの左犬歯CLmaxと下顎Manの左犬歯CLmanとが接触(E部分参照)することにより下顎Manが誘導されて上顎Maxに対して開いていく、即ち、犬歯誘導に相当する。この場合、犬歯誘導により、下顎Manは、上顎Maxに対して左斜め下方DDDLに動くことになる。
一方、上顎歯列模型DM1と下顎歯列模型DM2とが適正に作製されていない場合、下顎支持台60の先端部が左斜め下方に押されて、下顎歯列模型DM2が上顎歯列模型DM1に対して左方向に移動しながら開く際に、例えば、上顎歯列模型DM1の左犬歯部分と下顎歯列模型DM2の左犬歯部分とが引っ掛かって、下顎歯列模型DM2がスムーズに動かない、あるいは、下顎歯列模型DM2の左犬歯部分が上顎歯列模型DM1の左犬歯部分に接触して、それぞれの臼歯部分の間に隙間ができる状態を経ることなく下顎歯列模型DM2が開いてしまう、等の現象が発生する。
なお、上述した咬合器100の使用例では、左犬歯による犬歯誘導の動きを再現しようとする場合について説明したが、右犬歯による犬歯誘導の動きを再現させる場合は、下顎歯列模型DM2が装着された下顎支持台60の前端部が右斜め下方に押される。この場合、左犬歯による犬歯誘導の動きを再現しようとする場合と同様に、上顎歯列模型DM1と下顎歯列模型DM2とが適正に作製されていれば、下顎歯列模型DM2が、右方向に移動しながら、上顎歯列模型DM1に対して、より左側の部分がより早く開く傾向をもって徐々に開いていく過程で、下顎歯列模型DM2の右犬歯部分が上顎歯列模型DM1の右犬歯部分に接触して、それぞれの臼歯部分の間に隙間ができる状態を経ることになる。この下顎歯列模型MD2の動きが犬歯誘導に相当する。
上述したような咬合器100によれば、左支軸部46bのボール体462を支点とした概ね斜め下方に、及び右支軸部46aのボール体462を支点とした概ね右斜め下方に回動する下顎支持台60に支持される下顎歯列模型MD3の動きは、上顎装着部50に装着された上顎歯列模型MD1に対して、左方向に動きながら徐々に開く動き、及び右方向に動きながら徐々に開く動きとなる。従って、上顎装着部50に装着された上顎歯列模型MD1に対して、左方、及び、右方に動きつつ、犬歯に誘導されて徐々に開いて臼歯部に側方圧が掛からない犬歯誘導を模した下顎歯列模型MD2の動きを再現することができる。よって、この咬合器100を用いて上顎歯列模型MD1及び下顎歯列模型MD2の咬合状態を確認し、その確認の結果に基づいて、上顎歯列模型MD1及び下顎歯列模型MD2の調整等を行うことにより、理想的な咬合状態の1つのである犬歯誘導による噛み合わせが可能になる上顎及び下顎の義歯を容易に作製することができる。
なお、上述したように、上述した咬合器100では、下顎支持構造体110の吊り下げ支持フレーム体40の上辺フレーム部42の右側端及び左側端から突出する右支軸部46a及び左支軸部46bのボール体462が、人の下顎Manにおける右下顎頭MHR及び左下顎頭MHLに対応し(図12参照)、右支軸部46a及び左支軸部46bのボール体462を支持する右支持ブロック30a及び左支持ブロック30b(ブロック本体31a)の摺動面311(図13、図14参照)が、人の下顎Manにおける右下顎窟MFR及び左下顎窟MFL(図1A〜図4参照)に対応するものとしている。従って、実際の歯科治療患者の顎の大きさや構造(図1A〜図4参照)に応じて、右支軸部46aのボール体462と左支軸部46bのボール体462との間隔(スリーブ47a、47b、ネジ48a、48bを含む構造参照)、右支持ブロック30aと左支持ブロック30bとの間の距離(右スライドプレート23a、左スライドプレート23bを含む構造参照)、右支持ブロック30b及び左支持ブロック30bの斜め下方の向き(右ブロック取り付けプレート24a、左ブロック取付けプレート24bを含む構造参照)、及び前ガイドブロック80による前支軸部63の振分角度(図17、図20に示す構造参照)のそれぞれを調整することができる。