JP2016202182A - cycA遺伝子を過剰発現した腸内細菌科の細菌を用いたL−イソロイシンの製造方法 - Google Patents

cycA遺伝子を過剰発現した腸内細菌科の細菌を用いたL−イソロイシンの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016202182A
JP2016202182A JP2016085342A JP2016085342A JP2016202182A JP 2016202182 A JP2016202182 A JP 2016202182A JP 2016085342 A JP2016085342 A JP 2016085342A JP 2016085342 A JP2016085342 A JP 2016085342A JP 2016202182 A JP2016202182 A JP 2016202182A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
isoleucine
amino acid
cyca
gene
protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016085342A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6766426B2 (ja
Inventor
クリスチナ ドミトリエヴナ グーク
Dmitrievna Hook Christina
クリスチナ ドミトリエヴナ グーク
ヴァレリ ヴァシリエヴィッチ サムソノフ
Vasilievich Samsonov Valery
ヴァレリ ヴァシリエヴィッチ サムソノフ
ナタリヤ セルゲエヴナ エリョーミナ
Sergeevna Eremina Natalia
ナタリヤ セルゲエヴナ エリョーミナ
ナタリヤ ヴィクトロヴナ ストイノヴァ
Viktorovna Stoynova Natalia
ナタリヤ ヴィクトロヴナ ストイノヴァ
タチヤナ セルゲエヴナ シドロヴァ
Sergeevna Sidorova Tatiyana
タチヤナ セルゲエヴナ シドロヴァ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ajinomoto Co Inc
Original Assignee
Ajinomoto Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ajinomoto Co Inc filed Critical Ajinomoto Co Inc
Publication of JP2016202182A publication Critical patent/JP2016202182A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6766426B2 publication Critical patent/JP6766426B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P13/00Preparation of nitrogen-containing organic compounds
    • C12P13/04Alpha- or beta- amino acids
    • C12P13/06Alanine; Leucine; Isoleucine; Serine; Homoserine
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/195Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from bacteria
    • C07K14/24Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from bacteria from Enterobacteriaceae (F), e.g. Citrobacter, Serratia, Proteus, Providencia, Morganella, Yersinia
    • C07K14/245Escherichia (G)

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】発酵によりL−イソロイシンを製造する方法を提供する。
【解決手段】cycA遺伝子を過剰発現するように改変した腸内細菌科に属する細菌を使用した発酵法によりL−イソロイシンを製造する。該方法によれば、L−イソロイシンの発酵生産中の副生アミノ酸の生産を減少させることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、広くは微生物工業に関し、特に、cycA遺伝子を過剰発現し、L−イソロイシンの副生アミノ酸の生産が減少するように改変された腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌の発酵によりL−イソロイシンを製造する方法に関する。
従来、L−アミノ酸は自然源から得られた微生物株あるいはそれらの変異体を利用した発酵法によって工業的に製造されてきた。典型的には、そのような微生物はL−アミノ酸の生産収率が高まるように改変されている。
L−アミノ酸の生産収率を高めるための多くの技術が報告されており、組換えDNAによる微生物の形質転換(例えば、特許文献1を参照)、プロモ−ター、リーダー配列及び/又はアテニュエーター、あるいはその他の当業者に知られた発現制御領域の改変(例えば、特許文献2および3を参照)などがある。生産収率を高めるその他の技術としては、アミノ酸生合成に関与する酵素の活性を増加させること、及び/又は生成したL−アミノ酸による目的とする酵素のフィードバック阻害を解除すること(例えば、特許文献4〜8を参照)が挙げられる。
L−アミノ酸の生産収率を高める別の方法としては、1種または数種の、目的とするL−アミノ酸の分解に関与する遺伝子、目的とするL−アミノ酸の生合成経路から該L−アミノ酸の前駆体を別の経路に逸らせる遺伝子、炭素、窒素、及びリン酸の流れの再分配に関与する遺伝子、および毒素をコードする遺伝子などの発現を減少させることが挙げられる。
L−イソロイシンはヒト及びその他の動物の必須アミノ酸であり、様々な医薬の材料として使用することができる。例えば、L−イソロイシンは栄養摂取を促進するために栄養補助剤として使用することができる。L−イソロイシンはその炭素骨格に2つの不斉中心を有し、一方が中央(α)炭素原子であり、他方が側鎖中のβ炭素原子である。そのため、イソロイシンのL−異性体、すなわち2S,3S-異性体、を化学合成法により高純度かつ低価格で工業的に合成するのは困難である。
L−イソロイシンは、その種々の前駆体、例えばα−アミノ酪酸(αABA)、α-ヒドロキシ酪酸(αHBA)、スレオニン、アスパラギン酸、あるいはフマル酸から、そのような前駆体、炭素源、窒素源、及びその他の栄養素を含む培地で微生物を培養することにより製造することができる(特許文献9〜11)。
α−アミノ酪酸(αABA)やα−ケト酪酸(αKBA)等のL−イソロイシンの生合成経路の前駆体を代謝することができるブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)AB-07株の菌体の非変性状態での固定化(native immobilization)によってL−イソロイシンを製造する方法が開発されている(非特許文献2)。さらに、生細胞反応(living cell reaction、LCR)プロセスを、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum、以前はブレビバクテリウム・フラバム)MJ-233株の固定化細胞に適用することによりエネルギー源としてのエタノールと前駆体としてのαKBAからL−イソロイシンが製造されている(非特許文献2)。しかしながら、これらの方法は高価な前駆体を使用することを必要とし、従って低価格でのL−イソロイシンの工業的製造に有用であるとは考えられない。
また、L−イソロイシンの製造方法であって、イソロイシンアナログに耐性のエシェリヒア・コリ(Escherichia coli (E. coli))を利用する方法(特許文献12)、スレオニンデアミナーゼをコードするDNA断片を組み込んだエシェリヒア・コリの組換え株を利用する方法(特許文献13)、メチルリシン(特許文献14)あるいはアミノヒドロキシ吉草酸(AHVA)(特許文献15)に耐性のコリネバクテリウム属に属する変異体微生物を利用する方法、及びホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子で形質転換されたコリネバクテリウム・グルタミカムの組換え株を利用する方法(特許文献16)が開示されている。また、L−イソロイシン生産能は、L−スレオニンによる阻害が実質的に解除されたエシェリヒア・コリ由来のアスパルテートキナーゼI/ホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードするthrA遺伝子を含むthrABCオペロン、及びL−イソロイシンによる阻害が実質的に解除され、アテニュエーションに必要な領域が除去された、スレオニンデアミナーゼをコードするilvA遺伝子を含むilvGMEDAオペロンを導入することにより、付与できることも知られている(特許文献5)。
L−アミノ酸等の物質を生産する能力は、微生物細胞内のニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ(「トランスヒドロゲナーゼ」ともいう)の酵素活性を増加させ、以て、微生物の還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADPH)生産能を増加させることにより、向上させられることも報告されている(特許文献17)。この文献においては、トランスヒドロゲナーゼ活性を増加させることによりエシェリヒア・コリのL−イソロイシン生産能を向上させる例も記載されている。別のL−イソロイシンの製造方法では、細胞内のホスホエノールピルベートカルボキシラーゼ及びトランスヒドロゲナーゼ活性が増強されるように改変されたエシェリヒア属細菌の使用を開示している(特許文献18)。
しかしながら、微生物の発酵によるL−イソロイシンの製造の周知の欠点は、L−イソロイシンの量と比較して比較的大量に副生アミノ酸が蓄積することである(非特許文献1〜4)。例えばバリン(Val)、ロイシン(Leu)、アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、ノルバリン(nVal)、O-エチル-ホモセリン(O-EH)、及びα−アミノ酪酸(αABA)等の副生アミノ酸は、L−イソロイシン生産微生物の発酵の際、発酵液中にかなりの量で蓄積する場合がある。L−イソロイシン発酵の際に生産される副生アミノ酸の物理化学的な特性はL−イソロイシンのものに非常に類似しているので、例えばクロマトグラフィー等の通常の分離法を使用して、リーズナブルな価格で十分な程度の純度でL−イソロイシンを単離することは非常に難しい。従って、発酵によりL−イソロイシンを製造する方法においては副生アミノ酸の生産を減少させることが特に重要である。工業的製造の観点から、副生アミノ酸を全く生産しない、あるいはより少ない副生アミノ酸を生産するL−イソロイシン生産微生物の発酵によってL−イソロイシンの製造方法を改良することは、そのような改良方法は低価格で高純度のL−イソロイシンを製造する可能性を有するので、重要な目標である。
副生物の生合成系を欠失または弱化させることにより、目的物質の副生物の生産を減少させる方法が報告されている(例えば、非特許文献5)。しかしこの方法においては、微生物を培養する際に、微生物の成育に必要な量の前述の副生物を培地に加える必要がある。また、目的物質の副生物の細胞取込み系を増強することにより、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−イソロイシン、及び/又はL−バリン(特許文献19)、あるいはL−グルタミン酸(特許文献20)等の副生アミノ酸の生産を減少させる別の方法も開示されている。例えば、細胞のL−ロイシン取込み系(LivK)をエシェリヒア・コリ中で増強して、該細菌を培養して目的物質としてのL−イソロイシンを製造する際のL−ロイシンの副生を減少させている (特許文献19)。
しかしながら、腸内細菌科のL−イソロイシン生産菌の発酵によるL−イソロイシンの及びL−イソロイシンの副生アミノ酸の生産に対するcycA遺伝子の過剰発現の効果を示すデータはこれまで報告されていない。
米国特許第4278765号 米国特許出願公開第2006/0216796号 国際公開第9615246号パンフレット 国際公開第9516042号パンフレット 欧州特許出願公開第0685555 米国特許第4346170号 米国特許第5661012号 米国特許第6040160号 米国特許第3058888号 米国特許第3262861号 米国特許第3231478号 特開平05-130882号公報 特開平02-000458号公報 特開昭61-015696号公報 米国特許第3767529号 特開昭60-012995号公報 国際公開第9511985号パンフレット 欧州特許第1179597号 欧州特許出願公開第1484410号 欧州特許出願公開第2360263号
Terasawa M. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 1991, 35(3): 348-351 Jojima T. et al., Encyclopedia of industrial biotechnology: bioprocess, bioseparation, and cell technology, 2010, pp. 1-6 Komatsubara, S., Amino acids: genetically engineered Serratia marcescens // Recombinant microbes for industrial and agricultural applications, 1994, pp. 474-477 Terasawa, M. et al., Industrial production of biochemicals by native immobilization // Industrial application of immobilized biocatalysts, 1993, pp. 44-52 "Amino acid fermentation", Gakkai Shuppan Center, 1986, p. 4
本明細書は、腸内細菌科の細菌の発酵によってL−イソロイシンを製造する、改良された方法を記載するものである。本発明によれば、腸内細菌科の細菌の発酵によるL−イソロイシンの製造を増加させることができる。具体的には、腸内細菌科の細菌中のcycA遺伝子を過剰に発現させることにより該細菌の発酵によるL−イソロイシンの生産を改善し、改変された該細菌によるL−イソロイシンの製造を増加させることができる。L−イソロイシン生産は、絶対量において、あるいは副生アミノ酸に対する相対量において、増加し得る。さらに、L−イソロイシンが腸内細菌科の細菌の発酵によって生産される際の副生アミノ酸の生産を減少させることができる。具体的には、腸内細菌科の細菌の発酵により
L−イソロイシンを製造する方法は、該細菌においてcycA遺伝子を過剰に発現させ、以て改変された該細菌によるL−ロイシン、L−バリン、L−ノルロイシン、L−ノルバリン、及びα−アミノ酪酸等の副生アミノ酸の生産を減少させることにより、改良することができる。副生アミノ酸の副生は、副生物の絶対量において、あるいはL−イソロイシンに対する相対量において、減少させることができる。従って、一態様においては、副生アミノ酸に対してより多くの量のL−イソロイシンを製造することができる。また、本明細書に記載された方法により製造されたL−イソロイシンは精製工程が単純化されることから、生産されたL−イソロイシンは高い純度を有し、低価格で製造される。
本発明のひとつの態様として、
(i)L−イソロイシン生産能を有する腸内細菌科の細菌を培養培地で培養して培養培地もしくは菌体、またはその両者中にL−イソロイシンを生産させ、
(ii)培養培地もしくは菌体、またはその両者からL−イソロイシンを回収することを含む、L−イソロイシンを製造する方法であって、
前記細菌がcycA遺伝子を過剰に発現するように改変されている方法が提供される。
本発明の別の態様として、前記cycA遺伝子が、下記(A)、(B)、および(C)からなる群から選択されるタンパク質をコードする、前記方法が提供される:
(A)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質、
(B)配列番号2のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む1またはそれ以上の変異を含むアミノ酸配列を含み、配列番号2のアミノ酸配列を有するトランスポーターの活性を有するタンパク質、及び
(C)配列番号2のアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有し、配列番号2のアミノ酸配列を有するトランスポーターの活性を有するタンパク質。
本発明のさらに別の態様として、前記cycA遺伝子が、下記(A)、(B)、および(C)からなる群から選択されるDNAである、前記方法が提供される:
(A)配列番号1の塩基配列を含むDNA、
(B)配列番号2のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む1またはそれ以上の変異を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、該タンパク質が配列番号2のアミノ酸配列を有するトランスポーターの活性を有するものであるDNA、及び
(C)遺伝子コードの縮重による配列番号1の変異体塩基配列であるDNA。
本発明のさらに別の態様として、cycA遺伝子のコピー数を増加させることにより、及び/又はcycA遺伝子の発現制御領域を改変することにより、cycA遺伝子が過剰発現され、該遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、前記方法が提供される。
本発明のさらに別の態様として、前記細菌がエシェリヒア属に属するものである、前記方法が提供される。
本発明のさらに別の態様として、前記細菌がエシェリヒア・コリである、前記方法が提供される。
本発明のさらに別の態様として、前記細菌がパントエア(Pantoea)属に属するものである、前記方法が提供される。
本発明のさらに別の態様として、前記細菌がパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)である、前記方法が提供される。
本発明のさらに別の態様として、非改変細菌と比較して、L−イソロイシンの副生アミノ酸の量が減少する、前記方法が提供される。
本発明のさらに別の態様として、前記副生アミノ酸が、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルバリン、L−ノルロイシン、α−アミノ酪酸、及びその組合せからなる群から選択される、前記方法が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.細菌
腸内細菌科に属し、且つcycA遺伝子を過剰発現するように改変された、任意のL−イソロイシン生産菌を使用することができる。「L−イソロイシン生産菌」の用語は、当該細菌を培養培地で培養したときに、培地及び/又は菌体中にL−イソロイシンを生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有する腸内細菌科の細菌を意味し得る。
また、「L−イソロイシン生産菌」の用語は、エシェリヒア・コリK-12株等の野生株または親株と比較して、より多い量でL−イソロイシンを培地中に生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有する細菌も意味し得る。また、「L−イソロイシン生産菌」の用語は、例えば、0.1g/l以上、0.5g/l以上、あるいは1.0g/l以上の量でL−イソロイシンを培地中に蓄積することができる細菌も意味し得る。
さらに、腸内細菌科に属し、且つcycA遺伝子を過剰発現するように改変された、L−イソロイシン生産能を有する細菌を使用することもできる。細菌は、本来的にL−イソロイシン生産能を有していてもよく、あるいは突然変異法あるいはDNA組換え技術を使用してL−イソロイシン生産能を有するように改変されてもよい。前記細菌は、本来的にL−イソロイシン生産能を有する細菌において、あるいはL−イソロイシン生産能を付与された細菌において、cycA遺伝子を過剰発現させることにより得ることができる。あるいは、前記細菌は、cycA遺伝子を過剰発現するように改変された細菌にL−イソロイシン生産能を付与することにより得ることができる。前記細菌は、cycA遺伝子を過剰発現するように改変されたことによりL−イソロイシン生産能を獲得したものであってもよい。
「L−イソロイシン生産能」の用語は、当該細菌を培養培地で培養したときに、培地及び/又は菌体から回収できる程度に、培地及び/又は菌体中にL−イソロイシンを生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する、腸内細菌科の細菌の能力を意味し得る。
細菌は、L−イソロイシンを単独で、あるいはL−イソロイシンと、L体のアミノ酸(L−アミノ酸ともいう)等のL−イソロイシン以外の1種またはそれ以上のアミノ酸との混合物として、生産されてもよい。さらに、細菌はL−イソロイシンを単独で、あるいはL−イソロイシンと1種またはそれ以上のヒドロキシカルボン酸との混合物として、生産されてもよい。
さらに、腸内細菌科に属する細菌であって、L−イソロイシン生産能を有し、且つcycA遺伝子を過剰発現するように改変され、以て、後述するような野生株や親株等の非改変株と比較して副生アミノ酸の生産が減少した細菌を使用することができる。具体的には、cycA遺伝子を過剰発現するように改変され、且つ、1種もしくは2種、またはそれ以上のL−イソロイシンの副生アミノ酸を非改変株と比較してより低いレベルで生産することができるか、あるいは1種もしくは2種、またはそれ以上のL−イソロイシンの副生アミノ酸の副生が非改変株と比較して低下した、細菌を使用することができる。
本明細書において細菌に関して使用する「L−イソロイシンの副生アミノ酸を生産することができる」との表現は、該細菌を培養培地で培養したときに、培地及び/又は菌体から回収できる程度に、培地もしくは菌体、またはその両方に1種もしくは2種、またはそれ以上のL−イソロイシンの副生アミノ酸を生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する、腸内細菌科の細菌の能力を意味し得る。以下に「L−イソロイシンの副生アミノ酸」の用語を説明する。
「アミノ酸」の用語は、少なくとも1つのアミノ基(NH2)及び少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)を含む有機化合物を意味し得る。L−アミノ酸はアミノ酸の非限定的な例である。
「L−アミノ酸」の用語は、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−シトルリン、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−オルニチン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、及びL−バリンを意味し得る。その他のL−アミノ酸の非限定的な例としては、ノルバリン(nVal)またはL−ノルバリン、ノルロイシン(nLeu)またはL−ノルロイシン、O−エチル−ホモセリン(O-EH)またはO-エチル-L−ホモセリン、及びα−アミノ酪酸(αABA)またはL−α−アミノ酪酸が挙げられる。
「アミノ酸」あるいは「L−アミノ酸」の用語は、遊離形態のアミノ酸のみならず、アミノ酸の塩もしくは水和物、またはアミノ酸と別の有機もしくは無機の化合物とによって形成された付加物も包含する。「アミノ酸」の用語は、例えば、アミノ酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、塩酸塩等の塩(例えば、L−リジン塩酸塩(L−リジン・HCl)、L−アルギニン塩酸塩(L−アルギニン・HCl)、等)を意味し得る。アミノ酸の水和物の例としては、L−システイン一水和物(L-Cys・H2O)が挙げられる。
「ヒドロキシカルボン酸」の用語は、少なくとも1つの水酸基(OH)及び少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)を含む有機化合物を意味し得る。α-ヒドロキシカルボン酸はヒドロキシカルボン酸の例である。α-ヒドロキシカルボン酸の非限定的な具体例としては、L−乳酸、クエン酸、及びL−α−ヒドロキシ酪酸(αHBA)が挙げられる。
「L−イソロイシンの副生アミノ酸」の用語は、1種もしくは2種、またはそれ以上のL−イソロイシンの副生アミノ酸を意味し得る。「L−イソロイシンの副生アミノ酸」の用語は、例えば、L−イソロイシンとは異なる有機化合物であって、L−イソロイシン生産能を有する腸内細菌科の細菌の発酵によるL−イソロイシンの生産中に副生物、同時生産物、または側生物として生産されるもの、等の物質を意味し得る。また、「L−イソロイシンの副生アミノ酸」の用語は、L−イソロイシン生産能を有する腸内細菌科の細菌を培養培地で培養したときに、該細菌の発酵によるL−イソロイシンの生産中に、培地及び/又は菌体から回収できる程度に培地もしくは菌体、またはその両方に蓄積するように、該細菌により生成され、且つ排出または分泌される物質を意味し得る。培養培地及び/又は菌体中のL−イソロイシンの副生アミノ酸の量は、L−イソロイシン生産能を有する腸内細菌科に属する細菌の発酵によって生産されるL−イソロイシンの量と比較してより少なくてもよく、同等でもよく、より多くてもよい。しかし、培養培地及び/又は菌体中のL−イソロイシンの副生アミノ酸の量は、L−イソロイシンの量より少ないことが好ましい。
L−イソロイシンの副生アミノ酸の具体例としては、限定するものではないが、L−イソロイシンの生合成経路の中間体やL−イソロイシンの生合成経路から分岐する別の生合
成経路の生産物等、またはそれらの組合せが挙げられる。中間体は、L−イソロイシンの生合成経路の中間体に限られず、その他の1種もしくは2種、またはそれ以上の物質の代謝経路の前駆体、中間体、または基質であってもよく、例えば、目的物質がL−イソロイシンである場合、分枝鎖L−アミノ酸の生合成経路の前駆体、中間体、または基質であってもよい。
「分枝鎖L−アミノ酸」の用語は、L−バリン、L−ロイシン、及びL−イソロイシン等のL−アミノ酸を意味し得、さらにL−ノルバリン及びL−ノルロイシンも意味し得る。ピルビン酸(「α−ケトプロピオン酸」ともいう)はL−イソロイシンの生合成経路の前駆体であることから、L−イソロイシンの副生物は、L−イソロイシンの生合成経路においてピルビン酸から分岐する別の生合成経路の生産物であり得る。L−イソロイシンの副生アミノ酸は、L−イソロイシンの生合成経路においてピルビン酸から分岐する別の生合成経路の生産物の特定の例である。L−イソロイシンの副生アミノ酸には、2−オキソイソ吉草酸(「α−ケトイソ吉草酸」ともいう)を共通の前駆体とするL−バリン及びL−ロイシン、2−オキソ吉草酸(「α−ケト吉草酸」ともいう)を共通の前駆体とするL−ノルバリン及びL−ノルロイシンが含まれ得、これら2−オキソイソ吉草酸及び2−オキソ吉草酸はピルビン酸を共通の前駆体とする。
L−イソロイシンとは異なる物質の代謝経路における中間体の非限定的な例としては、α−アミノ酪酸(αABA)が挙げられ、これはオフタルミン酸の生合成経路の中間体である。
従って、以下に記載するように、腸内細菌科に属し、cycA遺伝子を過剰発現するように改変された細菌の発酵によってL−イソロイシンを製造する方法において、L−イソロイシンの副生アミノ酸は、限定するものではないが、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルバリン、L−ノルロイシン、α−アミノ酪酸(αABA)、またはこれらの組合せであり得る。
腸内細菌科に属する細菌は、エンテロバクター、エルビニア、エシェリヒア、クレブシエラ、モルガネラ、パントエア、フォトルハブドゥス、プロビデンシア、サルモネラ、イェルシニア等の属に属する細菌であり得、且つL−イソロイシン生産能を有し得る。具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=543)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されている細菌を使用することができる。改変することができる腸内細菌科の細菌の例としては、エシェリヒア、エンテロバクターあるいはパントエア属の細菌が挙げられる。
改変することにより本発明のエシェリヒア属細菌を得ることができるエシェリヒア属細菌としては、特に限定されないが、具体的には、Neidhardtらの著書(Bachmann, B.J., Derivations and genotypes of some mutant derivatives of E. coli K-12, pp. 2460-2488. In F.C. Neidhardt et al. (ed.), E. coli and Salmonella: cellular and molecular biology, 2nd ed., ASM Press, Washington, D.C., 1996)に挙げられるものが使用できる。特にエシェリヒア・コリが挙げられる。エシェリヒア・コリの具体例としては、プロトタイプ野生株であるエシェリヒア・コリK-12株由来のエシェリヒア・コリW3110(ATCC 27325)やエシェリヒア・コリMG1655(ATCC 47076)等が挙げられる。これらの株は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)から入手することができる。すなわち各菌株には対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して発注することができる(www.atcc.orgを参照)。各菌株の登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
エンテロバクター属細菌としては、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter
agglomerans)やエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等が挙げられ、パントエア属細菌としてはパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)等が挙げられる。エンテロバクター・アグロメランスのいくつかの株は、近年、16S rRNAの塩基配列解析などによりパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、またはパントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)に再分類されている。腸内細菌科に分類される細菌であれば、エンテロバクター属またはパントエア属のいずれに属するものであっても使用することができる。パントエア・アナナティス株を遺伝子工学的手法を用いて育種する場合には、パントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP-6614)、AJ13356株(FERM BP-6615)、AJ13601株(FERM BP-7207)、及びそれらの派生株を用いることができる。これらの株は、分離された当時はエンテロバクター・アグロメランスと同定され、エンテロバクター・アグロメランスとして寄託されたが、上記のとおり最近16S rRNAの塩基配列解析等によりパントエア・アナナティスに再分類されている。
L−イソロイシン生産菌
L−イソロイシン生産菌の例またはL−イソロイシン生産菌を誘導するための親株の例としては、限定するものではないが、6-ジメチルアミノプリンに耐性を有する変異株(特開平5-304969号)、チアイソロイシンやイソロイシンヒドロキサメート等のイソロイシンアナログに耐性を有する変異株、及び、さらにDL−エチオニン及び/又はアルギニンヒドロキサメートに耐性を有する変異株(特開平5-130882号)が挙げられる。さらに、スレオニンデアミナーゼやアセトヒドロキシ酸シンターゼ等のL−イソロイシン生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子で形質転換された組換え株もL−イソロイシン生産菌またはその親株として使用できる(特開平2-458号、EP 0356739 A1、および米国特許第5,998,178号)。L−イソロイシン生産菌またはその親株の例としては、E. coli K-12株44-3-15 Scr(VKPM B-12149)が挙げられる。
腸内細菌科に属する本発明の細菌は、cycA遺伝子を過剰発現するように改変されている。
E. coliのcycA遺伝子(dagA、ECK4204、JW4166、ytfDと同義)は、D−アラニン/D−セリン/グリシントランスポーターCycA(KEGG, Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes, entry No. b4208; Protein Knowledgebase, UniProtKB/Swiss-Prot, accession No. P0AAE0)をコードする。cycA遺伝子(GenBank, accession No. NC_000913.3、ヌクレオチド番号4429864〜4431276、 Gene ID 948725)は、E. coli K-12株の染色体において同じ鎖上のfklB遺伝子と逆の鎖上のytfE遺伝子と間に位置する。E. coli K-12株のcycA遺伝子の塩基配列(配列番号1)、及びcycA遺伝子によりコードされるE. coli K-12株のCycAタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)は公知である。すなわち、cycA遺伝子は配列番号1に示す塩基配列を有していてもよく、CycAタンパク質は配列番号2に示すアミノ酸配列有していてもよい。なお、「(アミノ酸または塩基)配列を有する」という表現は、当該「(アミノ酸または塩基)配列を含む」場合および当該「(アミノ酸または塩基)配列からなる」場合を包含する。
cycA遺伝子によりコードされるCycAタンパク質は、アミノ酸トランスポーター(AAT)のアミノ酸-ポリアミン-有機カチオン(APC)スーパーファミリーのメンバーである(トランスポーター分類(TC)番号2.A.3.1)。CycAは、プロトン/セリン(またはアラニンもしくはグリシン)共トランスポーターとして機能することが示唆されている。CycAトランスポーターは、グリシン、セリン、及びアラニンの取り込みに関与する(Robbins J.C. and Oxender D.L. Transport systems for alanine, serine, and glycine in Escherichi
a coli K-12, J. Bacteriol., 1973, 116(1):12-18; Lee M. et al., Transport properties of merodiploids covering the dagA locus in Escherichia coli K-12, J. Bacteriol., 1975, 122(3):1001-1005)。シクロセリンに対するCycAの輸送活性も見出されている(Wargel R.J. et al., Mechanism of D-cycloserine action: transport systems for
D-alanine, D-cycloserine, L-alanine, and glycine, J. Bacteriol., 1970, 103(3):778-788)。L−ロイシン及びL−プロリンに対する輸送活性は見出されていない(Lee M.
et al., 1975)。腸内細菌科の種々の細菌のCycAのホモログが知られており、それらの例は後記する。
「cycA遺伝子を過剰発現するように改変された細菌」の用語は、改変された細菌において、例えば、前記または後述するような野生または親株等の非改変株と比較して、CycAタンパク質等のcycA遺伝子産物の総活性が増加するように、あるいはcycA遺伝子の発現レベルがより高くなるように、細菌が改変されていることを意味し得る。上記比較のための対照となる非改変株の例としては、E. coli MG1655株(ATCC 47076)やW3110株(ATCC 27325)等のエシェリヒア属に属する微生物や、またはパントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP-6614)等のパントエア属に属する微生物等の野生株が挙げられる。
「cycA遺伝子が過剰発現される」との表現は、CycAタンパク質等のcycA遺伝子産物の総活性が、非改変株と比較して増加することを意味し得る。CycAタンパク質等のcycA遺伝子産物の総活性は、例えば、後述するように細菌におけるcycA遺伝子の発現レベルを非改変株と比較して増加させることにより、あるいはcycA遺伝子によりコードされるタンパク質の分子あたりの活性(比活性ともいう)を野生型タンパク質と比較して増加させることにより、増加し得る。細菌は、細胞あたりのCycAタンパク質の活性が、非改変株の活性の150%以上、200%以上、あるいは300%以上に増加するように改変されてよい。
「トランスポーターの活性」の用語は、アミノ酸、例えば非キラルのアミノ酸、L−アミノ酸、及び/又はD−アミノ酸、例えばグリシン、D−アラニン、L−アラニン及びD−セリン等の、腸内細菌科に属する細菌において輸送可能なアミノ酸を輸送する活性を意味し得る。また、「トランスポーターの活性」の用語は、配列番号2のアミノ酸配列を有するトランスポーターの活性を持つタンパク質を利用して腸内細菌科に属する細菌において輸送することができるアミノ酸を輸送する活性を意味し得る。
「配列番号2のアミノ酸配列有するトランスポーターの活性」の用語は、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質を利用して腸内細菌科に属する細菌において輸送することができるアミノ酸を輸送する、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質の活性を意味し得る。「配列番号2のアミノ酸配列を有するトランスポーターの活性」の用語は、CycAタンパク質を利用して腸内細菌科に属する細菌において輸送することができるアミノ酸を輸送する、配列番号2のアミノ酸配列を有するCycAタンパク質の活性を意味してもよい。具体的には、「トランスポーターの活性」及び「配列番号2のアミノ酸配列を有するトランスポーターの活性」の用語は、CycAタンパク質を利用して腸内細菌科に属する細菌において輸送することができる1種またはそれ以上のアミノ酸、例えばグリシン、D−アラニン、L−アラニン、もしくはD−セリン等、またはそれらの組合せ、を該細菌において輸送する、配列番号2のアミノ酸配列を有するCycAタンパク質の酵素活性を意味し得る。
トランスポーターの活性は、CycAのトランスポーター活性を評価することにより決定することができる。トランスポーターの活性は、タンパク質の単位重量あたり(例えばmgまたはμgあたり)の比活性として決定することもできる。例えば、[2-14C]グリシン等の放射性標識されたアミノ酸を使用してアミノ酸の取込みを測定することができる(Lee M. et al., 1975; Ghrist A.C. and Stauffer G.V. The Escherichia coli glycine transport system and its role in the regulation of the glycine cleavage enzyme system, M
icrobiol., 1995, 141(Pt 1):133-140)。タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミンを標準として使用するブラッドフォードタンパク質分析によって決定することができる(Bradford M.M., Anal. Biochem., 1976, 72:248-254)。
また、「cycA遺伝子が過剰発現される」との表現は、cycA遺伝子の発現レベルが非改変株におけるそのレベルより高いことを意味し得る。従って、「cycA遺伝子が過剰発現される」との表現は「cycA遺伝子の発現が増強される」との表現と同義であり得る。細菌は、細胞あたりのcycA遺伝子の発現量が、非改変株の活性の150%以上、200%以上、あるいは300%以上に増加するように改変されてよい。
cycA遺伝子の発現を増強するために使用することができる方法としては、限定するものではないが、cycA遺伝子のコピー数を増加させること、例えば、細菌の染色体及び/又は細菌に保持された自律複製するプラスミドにおけるcycA遺伝子のコピー数を増加させること、が挙げられる。cycA遺伝子のコピー数は、例えば、cycA遺伝子を細菌の染色体に導入すること、及び/又は、cycA遺伝子を含む自律複製するプラスミドを細菌に導入することにより、増加させることができる。
そのようなベクターの例としては、限定するものではないが、pMW118/119、pBR322、pUC19等の広宿主域プラスミドが挙げられる。cycA遺伝子は、例えば、相同組換えまたはMuドリブンインテグレーション等によって細菌の染色体DNAに導入することもできる。cycA遺伝子は、1コピーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入されてもよい。例えば、相同組換えを染色体DNA中に複数のコピーを有する配列を使用して行うことにより、染色体DNAに多コピーのcycA遺伝子を導入することができる。染色体DNA中に複数のコピーを有する配列としては、限定するものではないが、レペティティブDNAや転移因子の末端に存在するインバーテッドリピートが挙げられる。さらに、cycA遺伝子をトランスポゾンに組み込んで転移させることにより、染色体DNAに多コピーのcycA遺伝子を導入することができる。Muドリブンインテグレーションを使用することにより、一回の操作により3を超えるコピー数の遺伝子を染色体DNAに導入することができる(Akhverdyan V.Z. et al., Biotechnol. (Russian), 2007, 3:3-20)。
cycA遺伝子の発現を増強するために使用することができる別の方法としては、cycA遺伝子の発現制御領域を改変することが挙げられる。cycA遺伝子の発現制御領域は、例えば、cycA遺伝子の本来の発現制御領域を野生型の及び/又は改変された外来の発現制御領域を導入することにより、改変することができる。発現制御領域を発現制御配列ともいう。発現制御領域の例としては、プロモ−ター、エンハンサー、アテニュエーターと終結シグナル、抗終結シグナル、リボソーム結合部位(RBS)、及びその他の発現制御エレメント(例えば、リプレッサーまたはインデューサーが結合する領域、及び/又は、例えば転写されたmRNA中の転写及び翻訳の制御タンパク質の結合部位)が挙げられる。このような制御領域は、例えばSambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載されている。遺伝子発現を制御する領域の改変は、遺伝子のコピー数を増加させることと組合せてもよい(例えば、Akhverdyan V.Z. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871; Tyo K.E.J. et al., Nature Biotechnol., 2009, 27:760-765を参照)。
cycA遺伝子の発現を増強するのに適したプロモ−ターの例としては、本来のcycAプロモ−ターより強い強力なプロモ−ターが挙げられる。例えば、lacプロモーター、trpプロモ−ター、trcプロモ−ター、tacプロモ−ター、ラムダファージのPRあるいはPLプロモ−ターはいずれも強力なプロモ−ターとして知られている。腸内細菌科に属する細菌中で高いレベルの遺伝子発現を与える強力なプロモ−ターを使用することができる。あるいは、プ
ロモ−ターの効果は、例えば、cycA遺伝子のプロモーター領域に変異を導入してより強いプロモ−ター機能を得ることにより増強することができ、以て、該プロモ−ターの下流に位置するcycA遺伝子の転写レベルを増加させることができる。さらに、シャイン・ダルガルノ(SD)配列、及び/又はSD配列と開始コドンの間のスペーサー、及び/又はリボソーム結合部位中の開始コドンの直ぐ上流または下流の配列における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの翻訳効率に大きく影響することが知られている。例えば、開始コドンに先行する3つのヌクレオチドの性質に依存して、20倍の範囲の発現レベルが見出されている(Gold L. et al., Annu. Rev. Microbiol., 1981, 35:365-403; Hui A. et al., EMBO J., 1984, 3:623-629)。
遺伝子のコピー数、遺伝子の存在あるいは不在は、例えば、染色体DNAを制限処理した後、遺伝子配列に基づいたプローブを使用するサザンブロッテイング、または蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)等を行うことにより、測定することができる。遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティングや定量的RT-PCR等の様々な周知の方法を使用して遺伝子から転写されたmRNAの量を測定することにより決定することができる。遺伝子によってコードされるタンパク質の量は、SDS-PAGEと、その後の免疫ブロッティング(ウェスタンブロッティング)やタンパク質試料の質量分析等の公知の方法により測定することができる。
プラスミドDNAの調製、DNAの切断、DNAの結合、DNAの形質転換、プライマーとしてのオリゴヌクレオチドの選択、変異の導入等の、DNAの組換え分子の操作及び分子クローニングのための方法は、当業者に周知の通常の方法であってよい。そのような方法は、例えば、Sambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、あるいはGreen M.R. and Sambrook J.R., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)、Bernard R. Glick, Jack J. Pasternak and
Cheryl L. Patten, “Molecular Biotechnology: principles and applications of recombinant DNA”, 4th ed., Washington, DC, ASM Press (2009)に記載されている。
腸内細菌科の属、種、あるいは株間でDNA配列にいくらかの相違があり得る。従って、cycA遺伝子は、配列番号1で示される遺伝子に限定されず、配列番号1の変異体塩基配列あるいは配列番号1に相同な遺伝子であって、CycAタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
「変異体タンパク質」の用語は、配列番号2のアミノ酸配列と比較して、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加のいずれであるにせよ、1つまたはそれ以上の変異を配列中に有するタンパク質であって、CycAタンパク質のものに類似する活性または機能(例えば上記したようなトランスポーターの活性)を維持しているか、その三次元構造が野生型CycAタンパク質に対して有意には変更されていないタンパク質を意味し得る。変異体タンパク質中の変異の数は、タンパク質の三次元構造中の位置あるいはアミノ酸残基の種類による。変異体タンパク質中の変更の数は、厳密に限定されるものではないが、配列番号2において1〜50、別の例では1〜30、別の例では1〜15、別の例では1〜10、あるいは別の例では1〜5であってよい。これは、アミノ酸には互いに高い相同性を有し、それらアミノ酸間の変異によっても、タンパク質の活性あるいは機能が影響されないか、タンパク質の三次元構造が野生型タンパク質と比較して有意に変化しないものがあるからである。従って、cycA遺伝子によってコードされる変異体タンパク質は、CycAタンパク質の活性あるいは機能が維持されるか、CycAタンパク質の三次元構造が野生型CycAタンパク質と比較して有意に変更されない限り、配列番号2のアミノ酸配列全体に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、あるいは99%以上の、コンピュータプログラムBLASTを使用する際のパラメーター「同一性」として定義される、
相同性を有するものであってよい。
1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加の例としては、保存的変異が挙げられる。保存的変異の代表的なものは保存的置換である。保存的置換は、限定するものではないが、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Ala、Leu、Ile、Val間で、置換部位が親水性アミノ酸である場合にはGlu、Asp、Gln、Asn、Ser、His、Thr間で、置換部位が極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、置換部位が塩基性アミノ酸である場合にはLys、Arg、His間で、置換部位が酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、置換部位がヒドロキシル基を有するアミノ酸である場合には、Ser、Thr間で、互いに置換する置換である。保存的置換の例としては、AlaからSerまたはThrへの置換、ArgからGln、HisまたはLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、HisまたはAspへの置換、AspからAsn、GluまたはGlnへの置換、CysからSerまたはAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、AspまたはArgへの置換、GluからAsn、Gln、LysまたはAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、ArgまたはTyrへの置換、IleからLeu、Met、ValまたはPheへの置換、LeuからIle、Met、ValまたはPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、HisまたはArgへの置換、MetからIle、Leu、ValまたはPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、IleまたはLeuへの置換、SerからThrまたはAlaへの置換、ThrからSerまたはAlaへの置換、TrpからPheまたはTyrへの置換、TyrからHis、PheまたはTrpへの置換、及びValからMet、IleまたはLeuへの置換が挙げられる。
1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加の例としては、非保存的変異も挙げられるが、ただし、その変異は、アミノ酸配列の異なる位置の1つまたはそれ以上の第2の変異により、CycAタンパク質のものに類似する活性または機能(例えば上記したようなトランスポーターの活性)が維持されるか、あるいは野生型CycAタンパク質と比較してCycAタンパク質の三次元構造が有意に変更されないように、補償されるものである。
タンパク質またはDNAの相同性の程度を評価するためには、いくつかの計算方法、例えばBLAST検索、FASTA検索、及びClustalW法を使用することができる。BLAST(Basic Local
Alignment Search Tool, www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)検索は、プログラムblastp、blastn、blastx、megablast、tblastn、及びtblastxにより使用される発見的探索アルゴリズムであり、これらのプログラムは、Karlin S.及びAltschul S.F.の統計学的方法 (“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features
by using general scoring schemes” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1990, 87:2264-2268; “Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993, 90:5873-5877)を使用して、有意性を発見物に帰着させるものである。コンピュータプログラムBLASTは3つのパラメーター、すなわち、スコア、同一性、及び類似性、を計算する。FASTA検索法は、Pearson W.R.により記載されている(“Rapid and sensitive sequence comparison with FASTP and FASTA”, Methods Enzymol., 1990, 183:63-98)。ClustalW法は、Thompson J.D. et al.によって記載されている(“CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice”, Nucleic Acids Res., 1994, 22:4673-4680)。
CycAタンパク質としては、各種CycAタンパク質ホモログも利用できる。CycAタンパク質ホモログとしては、腸内細菌科の細菌等の各種生物のCycAタンパク質ホモログが挙げられる。例えば、腸内細菌科の種々の細菌からのCycAタンパク質ホモログが知られており、それらは上記のようなトランスポーターの活性を有する。腸内細菌科のそのようなCycAタンパク質ホモログの例を、相同性の値(「同一性」、すなわちアミノ酸の同一性、として)
、分類学データならびにNCBIデータベース(National Center for Biotechnology Information, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/)におけるアミノ酸配列の受託(Accession)番号及び配列記録(Sequence record)番号とともに以下に記載する(表1)。CycAタンパク質としては、さらに、CycAタンパク質の変異体タンパク質も利用できる。CycAタンパク質ホモログの変異体タンパク質については、上述した配列番号2に示すCycAタンパク質の変異体タンパク質の記載、例えば変異や配列同一性に関するもの、を準用できる。
「CycA」または「CycAタンパク質」という用語は、配列番号2に示すCycAタンパク質や表1に示すCycAタンパク質ホモログ等の野生型CycAタンパク質に限られず、そのような野生型CycAタンパク質とその変異体タンパク質を総称してよい。
cycA遺伝子は、CycAタンパク質をコードするいかなる遺伝子であってもよい。例えば、cycA遺伝子は変異体塩基配列であってもよい。「変異体塩基配列」の用語は、上記のような変異体タンパク質をコードする塩基配列、あるいは標準遺伝子暗号表(例えばLewin B., “Genes VIII”, 2004, Pearson Education, Inc., Upper Saddle River, NJ 07458を参照)による任意の同義のアミノ酸コドンを使用して野生型CycAタンパク質をコードする
塩基配列を意味し得る。従って、cycA遺伝子は、遺伝暗号の縮重による変異体塩基配列、例えば遺伝子コードの縮重による配列番号1の変異体塩基配列、であってもよい。
また、「変異体塩基配列」の用語は、限定するものではないが、活性なあるいは機能的なタンパク質をコードするものである限り、配列番号1に示す配列に相補的な塩基配列と、または該塩基配列から調製し得るプローブと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列も意味し得る。「ストリンジェントな条件」としては、特異的なハイブリッド、例えばコンピュータプログラムBLASTを使用する場合のパラメーター「同一性」として定義される相同性が70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、あるいは99%以上のハイブリッド、が形成され、非特異的なハイブリッド、例えば上記より相同性が低いハイブリッド、が形成されない条件が挙げられる。ストリンジェントな条件としては、例えば、1×SSC(標準クエン酸ナトリウムまたは標準塩化ナトリウム)、0.1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、別の例においては0.1×SSC、0.1% SDSの塩濃度で60℃または65℃において1回以上、別の例において2または3回洗浄する条件が挙げられる。洗浄時間は、ブロッティングに使用されたメンブレンの種類に依存し、一般的には製造者により推奨されるものとすべきである。例えば、Amersham HybondTM-N+正荷電ナイロンメンブレン(GE Healthcare)のストリンジェントな条件下での推奨洗浄時間は15分である。洗浄工程は2または3回行うことができる。プローブとしては、配列番号1に示す配列に相補的な配列の一部を使用してもよい。そのようなプローブは、配列番号1に示す配列に基づいて調製されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用し、該塩基配列を含むDNA断片を鋳型として使用するPCRによって調製することができる。プローブの長さは、50 bpを超えることが推奨されるが、ハイブリゼーション条件により適切に選択することができ、通常100 bp 〜1 kbpである。例えば、約300 bpの長さを有するDNA断片をプローブとして使用する場合、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件としては、50℃、60℃、あるいは65℃における2×SSC、0.1%SDSの条件が挙げられる。
エシェリヒア・コリのCycAタンパク質をコードする遺伝子は既に解明されている(上記参照)ので、cycA遺伝子(例えば、野生型CycAタンパク質やその変異体タンパク質をコードする遺伝子)は、cycA遺伝子の塩基配列に基づいて調製されたプライマーを利用するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応、White T.J. et al., The polymerase chain reaction, Trends Genet., 1989, 5:185-189参照)により野生型のcycA遺伝子を保持する微生物(例えば腸内細菌科に属する細菌)から得ることができる。また、cycA遺伝子は、野生型cycA遺伝子を含むDNAをin vitroで例えばヒドロキシルアミンで処理することによる部位特異的突然変異法、もしくは野生型のcycA遺伝子を保持する微生物(例えば腸内細菌科に属する細菌)を紫外線(UV)照射もしくはN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)及び亜硝酸のような突然変異誘発に通常使用される変異剤で処理する方法により得ることができる。また、cycA遺伝子は、完全長の遺伝子構造物として化学合成することができる。このようにして、エシェリヒア・コリのCycAタンパク質や腸内細菌科の他の微生物のCycAタンパク質ホモログ等の野生型CycAタンパク質をコードする遺伝子またはその変異体タンパク質をコードする遺伝子を得ることができる。
「cycA遺伝子」という用語は、配列番号1に示すcycA遺伝子や表1に示すCycAタンパク質ホモログをコードする遺伝子等の野生型cycA遺伝子に限られず、そのような野生型cycA遺伝子とその変異体塩基配列を総称してよい。
「野生型タンパク質」の用語は、腸内細菌科の野生型または親株、例えば野生型エシェリヒア・コリMG1655株によって自然に生産される天然タンパク質を意味し得る。野生型タンパク質は、野生型細菌のゲノムに天然に存在し得る「野生型遺伝子」によってコードされ得る。
なお、上記の遺伝子やタンパク質の保存的バリアントに関する記載は、L−イソロイシン生合成系酵素等の任意のタンパク質、およびそれらをコードする遺伝子にも準用できる。
細菌は、本発明の範囲から逸脱することなく、上記のような性質に加えて、様々な栄養要求性、薬物耐性、薬物感受性、薬物依存性等の特定の性質を有することができる。
2.方法
本発明の方法は、L−イソロイシンを製造する方法を包含する。該L−イソロイシンを製造する方法は、前記細菌を培養培地で培養してL−イソロイシンを培養培地もしくは菌体、またはその両者中に生成させ、排出もしくは分泌させ、且つ/又は蓄積させる工程と、培養培地及び/又は菌体からL−イソロイシンを回収する工程を含み得る。L−イソロイシンは、遊離の形態もしくはその塩、またはそれらの混合物として生産されてよい。すなわち、「L−イソロイシン」という用語は、遊離の形態のL−イソロイシンもしくはその塩、またはそれらの混合物を意味してよい。例えば、L−イソロイシンのナトリウム、カリウム、アンモニウム等の塩、あるいはL−イソロイシンの両性イオン等の内部塩を、前記方法により製造することができる。これは、アミノ酸が発酵条件下で、互いに、あるいは無機または有機の酸またはアルカリ性物質等の中和剤と、典型的な酸塩基中和反応により反応して塩を生成することができることから可能であり、これは当業者に明らかなアミノ酸の化学的特徴である。
さらに、本発明のL−イソロイシンの製造方法は、L−イソロイシンの副生アミノ酸の生産を減少させる方法を含む。L−イソロイシンの副生アミノ酸の生産を減少させる方法は、前記細菌を培養培地で培養してL−イソロイシンを培養培地もしくは菌体またはその両者中に生成させ、排出もしくは分泌させ、且つ/又は蓄積させる工程と、培養培地及び/又は菌体からL−イソロイシンを回収し、必要ならば精製する工程を含み得る。
細菌の培養、及び培地等からのL−イソロイシンの回収及び精製は、微生物を使用してL−イソロイシン製造する従来の発酵法と同様の方法で行うことができる。L−イソロイシンの製造のための培養培地は、炭素源、窒素源、硫黄源、リン源、無機イオン、並びにその他の有機及び無機成分を必要に応じて含む典型的な培地等の、合成培地あるいは天然培地でよい。炭素源としては、グルコース、シュクロース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボース、澱粉加水分解物などの糖類、エタノール、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなどのアルコール、グルコン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸、および脂肪酸などを使用することができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、およびアンモニア水などを使用することができる。さらに、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、およびコーンスティープリカーなども使用することができる。培地は、これらの窒素源の1種またはそれ以上を含むことができる。硫黄源としては、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガンなどが挙げられる。培地は、炭素源、窒素源、及び硫黄源に加えて、リン源を含んでもよい。リン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、ピロ燐酸などのリン酸ポリマーなどを使用することができる。ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチンアミド、ビタミンB12などのビタミンや、その他の必要物質、例えばアデニン、RNAなどの核酸、アミノ酸、ペプトン、カザミノ酸、酵母エキスなどの有機栄養素などを、適当量(痕跡量であってもよい)存在させることができる。これら以外に、必要であれば、少量のリン酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオンなどを加えてもよい。
培養は、好気的条件下で16〜72時間、あるいは32〜68時間行うことができる。培養中の
培養温度は、30〜45℃、あるいは30〜37℃の範囲内に制御することができる。pHは5〜8、あるいは6〜7.5の間に調節することができる。pHは、無機もしくは有機の酸またはアルカリ性物質、およびアンモニアガスを使用することにより調節することができる。
培養後、培養培地からL−イソロイシンを回収することができる。また、培養後、細胞を例えば超音波などで破砕し、例えば遠心分離や膜ろ過によって細胞及び細胞破砕懸濁物(細胞デブリともいう)などの固体を除去して上清を取得し、上清からL−イソロイシンを回収することができる。培養培地や上清等からのL−イソロイシンの回収は、濃縮、イオン交換クロマトグラフィー、及び晶析などの慣用の技術の任意の組合せにより実施することができる。
尚、回収されるL−イソロイシンは、L−イソロイシン以外に、例えば、菌体、培地成分、水分、及び微生物の代謝副産物等を含んでいてもよい。L−アミノ酸は、所望の程度に精製されていてもよい。回収されるL−イソロイシンの純度は、例えば50%(w/w)以上、好ましくは85%(w/w)以上、特に好ましくは95%(w/w)以上であってよい(U.S. Patent No. 5,431,933, Japanese Patent No. 1214636, U.S. Patent Nos. 4,956,471, 4,777,051, 4,946,654, 5,840,358, 6,238,714, U.S. Patent Published Application No. 2005/0025878)。
以下、下記の非限定的な実施例により本発明をより具体的に説明する。
実施例1:cycA遺伝子を過剰発現するように改変されたエシェリヒア・コリのL−イソロイシン生産株の構築
1.1 cycAの制御領域を改変したE. coli MG1655株の構築
「λRed/ ETメディエーテッドインテグレーション」と呼ばれる、Datsenko K.A.及びWanner B.L.によって開発された方法 (Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645)を使用して、E. coliにおいてcycA遺伝子を過剰発現させた。この方法にしたがって、cycA遺伝子に隣接する領域と、鋳型染色体中のクロラムフェニコール耐性(CmR)を付与するcat遺伝子及びPLプロモ−ターに隣接する領域の両領域に相同なPCRプライマーP1(配列番号3)及びP2(配列番号4)を構築した。ラムダファージの初期PLプロモーター領域(Giladi H. et al., Identification of an UP element within the IHF binding site at the PL1-PL2 tandem promoter of bacteriophage lambda, J. Mol. Biol., 1996, 260(4):484-491)を含む、クロラムフェニコール耐性E. coli株BW25113 cat-PL-yddGをPCRの鋳型として使用した。E. coli BW25113 cat-PL-yddG株は、EP1449918 A1に詳細に記載されているようにして構築することができる。E. coli BW25113株は、Coli Genetic Stock Center (Yale University, New Haven, USA)からCGSC7636として入手できる。
PCR条件は、95℃で3分の変性、95℃で1分、58℃で1分、及び72℃で1分のプロファイルを35サイクル、最後に72℃で5分の伸長とした。得られたDNA断片1(1,964 bp、配列番号5)をアガロースゲル中で精製し、温度感受性複製開始点を有するプラスミドpKD46を含むE. coli MG1655株(ATCC 47076)のエレクトロポレーションに使用した。E. coli MG1655は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)から入手可能である。プラスミドpKD46(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645)は、ラムダファージの2,154nt(31088-33241)のDNA断片(GenBank, accession No. J02459)を含み、以て、アラビノース誘導性ParaBプロモ−ターの制御下にあるλRed相同組換えシステムの遺伝子(γ、β、exo遺伝子)を含む。プラスミドpKD46は、E. coli MG1655株の染色
体へDNA断片を組込むために必要である。
エレクトロコンピテント細胞は以下のようにして調製した。E. coli MG1655細胞を、アンピシリン(100mg/L)を含むLB培地(Sambrook, J. and Russell, D.W. “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001))において30℃で一晩増殖させ、培養物をアンピシリン(100mg/L)及びL−アラビノース(1 mM)を含む5 mL のSOB培地(Sambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2nded., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))で100倍に希釈した。希釈した培養物を、通気(250rpm)しながら30℃でOD600が約0.6になるまで増殖させた後、100倍に濃縮し、氷冷した脱イオン水で3回洗浄することによりエレクトロコンピテント化した。エレクトロポレーションは、70μLの細胞及び約100ngのDNA断片1を使用して行った。その後、細胞を1 mL のSOC培地(Sambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2nd ed.,
Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))において37℃で2.5時間培養し、LB培地(Sambrook, J. and Russell, D.W. “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 3rd
ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001))、寒天(1.5%)、及びクロラムフェニコール(20mg/L)を含むプレート上に置き、37℃で増殖させてCmR組換体を選択した。pKD46プラスミドを脱落させるため、クロラムフェニコール(20 mg/L)を含むL−寒天培地上で42℃で1回継代し、得られたコロニーのアンピシリン感受性を試験した。このようにしてE. coli MG1655 cat-PL-cycA株を得た。
1.2. cycA遺伝子の制御領域の改変の確認
CmR遺伝子(cat)で標識された異種起源のcycA遺伝子のプロモーター領域を含む細胞を、遺伝子座特異的プライマーP3(配列番号6)及びP4(配列番号7)を使用するPCRにより確認した。PCR条件は、95℃で3分の変性、95℃で30秒、60℃で30秒、及び72℃で2分のプロファイルを20サイクル、最後に72℃で5分の伸長とした。親株であるE. coli MG1655の染色体DNAを鋳型とする反応で得たDNA断片2は457bpの鎖長を有していた(配列番号8)。E. coli MG 1655 cat-PL-cycA株の染色体DNAを鋳型とする反応で得たDNA断片3は、2,174bpの鎖長を有していた(配列番号9)。
1.3. E. coliのL−イソロイシン生産株の構築
PLプロモ−ターの制御下のcycA遺伝子を、L−イソロイシン生産株E. coli K-12 44-3-15 Scr(米国特許第6,960,455B2号及び7,179,623B2号、ロシア特許第2212447 C2号)に導入した。E. coli K-12 44-3-15 Scr株(E. coli 44-3-15 Scrともいう)は、ブダペスト条約の規定に従い、VKPM B-12149の受託番号で2014年12月17日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms (VKPM, FGUP GosNII Genetika, Russian Federation, 117545 Moscow, 1st Dorozhny Proezd, 1)に寄託されている。E. coli 44-3-15 Scrは、アセトヒドロキシ酸シンターゼII活性を回復させる変異をilvG遺伝子(ilvG5)に有し、スレオニンデアミナーゼのイソロイシンによるフィードバック阻害を解除する変異をilvA遺伝子(ilvA7434)に有し(Gavrilova et al., Biotechnologiya(in Russian), 1988, 4:600-608)、クロラムフェニコール耐性(CmR)である。E. coli 44-3-15 Scrへの導入前に、発現カセットcat-PL-cycA中のPLプロモ−ターの上流のCmRマーカーは、λRedインテグレーション(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645)を使用して、カナマイシン耐性(KmR)マーカーに置換した。この方法にしたがって、鋳型プラスミド中のcat遺伝子及びカナマイシン耐性を付与するkan遺伝子に隣接する両領域に相同なPCRプライマーP5(配列番号10)及びP6(配列番号11)を構築した。プラスミドpMW118(λattL-KmR-λattR)(EP2100957 A1)をPCRにおいて鋳型として使用した。
PCR条件は、95℃で3分の変性、94℃で30秒、57℃で30秒、及び72℃で1分30秒のプロフ
ァイルを35サイクル、最後に72℃で5分の伸長とした。得られたDNA断片4(1,541 bp、配列番号12)をアガロースゲル中で精製し、プラスミドpKD46(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645)を含むE. coli MG1655
cat-PL-cycA株(実施例1.1)のエレクトロポレーションに使用した。kan-PL-cycAカセットを保持するE. coli MG1655株の細胞を、LB培地、寒天(1.5%)、及びカナマイシン(40mg/L)を含むプレート上で選択した。このようにして、カナマイシン耐性でクロラムフェニコール感受性のE. coli MG1655 kan-PL-cycA株を得た。
PL-cycA構造の上流におけるCmRマーカーの置換はPCRによって確認した。この目的のために、プライマーP3(配列番号6)及びP4(配列番号7)を使用した。PCRの条件は、95℃で3分の変性、95℃で30秒、60℃で30秒、及び72℃で2分のプロファイルを20サイクル、最後に72℃で5分の伸長とした。親株E. coli MG1655 cat-PL-cycAの染色体DNAを鋳型とする反応で得たDNA断片3は、2,174 bpの鎖長を有していた(配列番号9)。E. coli MG1655 kan-PL-cycA株の染色体DNAを鋳型とする反応で得たDNA断片5は、2,087 bpの鎖長を有していた(配列番号13)。
次いで、発現カセットkan-PL-cycAを、P1形質導入(Miller J.H. “Experiments in molecular genetics”, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (1972))によりL−イソロイシン生産株E. coli 44-3-15 Scrに導入した。kan-PL-cycAカセットを保持するE. coli 44-3-15 Scrの細胞を、LB培地、アガー(1.5%)、及びカナマイシン(40mg/L)を含むプレート上で選択した。上記のようにして、L−イソロイシン生産株E. coli
44-3-15 Scr kan-PL-cycAを得た。cycA遺伝子のプロモーター領域の置換は上記のようにPCRにより確認した。
実施例2:E. coli 44-3-15 Scr kan-PL-cycA株を使用したL−バリンの副生
改変株であるE. coli 44-3-15 Scr kan-PL-cycA株及び対照のE. coli 44-3-15 Scr株をそれぞれ32℃で18時間、LB培地(Sambrook, J. and Russell, D.W. “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載の通り、溶原性ブロスあるいはLuria-Bertani培地ともいう)において培養した。その後、得られた培養物0.2 mLを20×200mm試験管中の発酵培地2 mLに接種し、250rpmの回転式振盪機上で32℃で66時間、グルコースが消費されてOD550が約29になるまで培養した。
発酵培地の組成(g/l)は以下のとおりであった。
グルコース 60.0
(NH4)2SO4 15.0
KH2PO4 1.5
MgSO4・7H2O 1.0
チアミン-HCl 0.1
L−スレオニン 4.0
CaCO3 25.0
LB培地 10%(v/v)
発酵培地は、116℃で30分間殺菌した。ただしグルコースは110℃で30分間、CaCO3は116℃で30分間別に殺菌した。pHはKOH溶液により7.0に調整した。
培養後、蓄積したL−イソロイシン及びL−バリンを薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用して測定した。TLCプレート(10×20cm)は、非蛍光性指示薬(Sorbpolymer、Krasnodar、Russian Federation)を含むSorbfilシリカゲルの0.11mmの層で被覆した。試料をCamag Linomat 5サンプルアプリケーターでプレート上にアプライした。Sorbfilプレート
は、プロパン-2-オール:酢酸エチル:25%アンモニア水:水(16:16:5:10、v/v)からなる移動相で展開した。ニンヒドリン溶液(2%、w/v;アセトン中)を可視化試薬として使用した。展開後、プレートを乾燥し、Camag TLCスキャナ3を用いて、winCATSソフトウェア(バージョン1.4.2)により520nmで検出する吸光度モードで走査した。
4つの独立した試験管発酵の結果を表2に示す。L−バリンの量は、対照としてのL−イソロイシンの値を100%とし、それに対する相対値として求めた。表2から判るとおり、親株であるE. coli 44-3-15 Scrと比較して、改変株であるE. coli 44-3-15 Scr kan-PL-cycAは、より多い量のL−イソロイシンを蓄積することができた。さらに表2は、改変株であるE. coli 44-3-15 Scr kan-PL-cycA株は、親株であるE. coli 44-3-15 Scrと比較して、L−バリンの蓄積をより少なくすることができたことも示している。
実施例3:E. coli 44-3-15 Scr kan-PL-cycA株を使用したα−アミノ酪酸及びノルバリンの副生
改変株であるE. coli 44-3-15 Scr kan-PL-cycA株及び対照のE. coli 44-3-15 Scr株をそれぞれLB培地中32℃で18時間培養した。その後、得られた培養物0.2 mLを20×200mm試験管中の発酵培地2 mLに接種し、250rpmの回転式振盪機上で32℃で66時間、グルコースが消費されてOD550が約29になるまで培養した。cycAの過剰発現のα−アミノ酪酸及びノルバリンの副生に対する効果を示すため、発酵培地にはクロルスルフロン(CAS No. 64902-72-3)を補添し、以て、アセトラクテートシンターゼ(AHAS)を阻害することにより分枝鎖L−アミノ酸の生合成を減少させた(Gedi V. and Yoon M.-Y., Bacterial acetohydroxyacid synthase and its inhibitors - a summary of their structure, biological activity and current status, FEBS J., 2012, 279(6):946-963)。
発酵培地の組成(g/l)は以下のとおりであった。
グルコース 60.0
(NH4)2SO4 15.0
KH2PO4 1.5
MgSO4・7H2O 1.0
チアミン-HCl 0.1
クロロスルフロン 20μM
CaCO3 25.0
LB培地 10%(v/v)
発酵培地は、116℃で30分間殺菌した。ただしグルコースは110℃で30分間、CaCO3は116℃で30分間別に殺菌した。pHはKOH溶液により7.0に調整した。
培養後、蓄積したL−イソロイシン、α−アミノ酪酸、及びノルバリンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して測定した(補足実施例)。
3つの独立した試験管発酵の結果を表3に示す。α−アミノ酪酸(αABA)及びノルバリン(nVal)の量は、対照としてのL−イソロイシンの値を100%とし、それに対する相対値として決定した。表3から判るとおり、親株であるE. coli 44-3-15 Scrと比較して、改変株であるE. coli 44-3-15 Scr kan-PL-cycA株は、αABA及びnValの蓄積をより少ない量とすることができた。
補足実施例:L−イソロイシン、α−アミノ酪酸、及びノルバリンのクロマトグラフィー分析
Waters AccQ-Tag法を分析に使用した。AccQ-Tag法は、アミノ酸決定用のプレカラム誘導法である。蛍光検出器を備え、「ChemStation B.02.01 SR2」クロマトグラフィー・ソフトウェア(Agilent Technologies)を搭載したコンピューターに接続したHPLCシステム、Agilent 1100グラジエントシステム(Agilent Technologies)を使用した。検出器のセッティングは、励起波長250nm、蛍光波長395nmとした。いずれの場合においても、5μLサンプル注入ループを使用した。AccQ-Fluor Reagent Kit(Waters、WAT052880)を使用したAccQ-Fluor誘導化反応で得られたアミノ酸誘導体を、ガードカラムを備えたWaters AccQ-Tag Amino Acid Analysis Column(3.9 x 150 mm)を使用して分離した。カラムは37℃で平衡化し、移動相は0.8 mL/分の流速で通液した。移動相は、A:水性バッファーWaters AccQ-Tag Eluent A (Waters、WAT052890)、B: HPLC級アセトニトリル、及びC: Milli-Q水、の溶離液を含むものとした。グラジエントは表4に示す通りとした。曲線の番号6は直線部分に対応し、番号11はステップ関数に対応する。
本発明の方法は、より多い量のL−イソロイシンを高い純度で製造するのに有用である。
本発明をその好ましい態様を参照して詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更や等価物の採用が可能であることは当業者に明らかであろう。本明細書中に引用した文献はすべて参照により本明細書に組み込まれる。

Claims (10)

  1. (i)L−イソロイシン生産能を有する腸内細菌科の細菌を培養培地で培養して培養培地もしくは菌体、またはその両者中にL−イソロイシンを生産させ、
    (ii)培養培地もしくは菌体、またはその両者からL−イソロイシンを回収することを含む、L−イソロイシンを製造する方法であって、
    前記細菌がcycA遺伝子を過剰に発現するように改変されている、方法。
  2. 前記cycA遺伝子が、下記(A)、(B)、および(C)からなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項1に記載の方法:
    (A)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (B)配列番号2のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む1またはそれ以上の変異を含むアミノ酸配列を含み、配列番号2のアミノ酸配列を有するトランスポーターの活性を有するタンパク質、及び
    (C)配列番号2のアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有し、配列番号2のアミノ酸配列を有するトランスポーターの活性を有するタンパク質。
  3. 前記cycA遺伝子が、下記(A)、(B)、および(C)からなる群から選択されるDNAである、請求項1または2に記載の方法:
    (A)配列番号1の塩基配列を含むDNA、
    (B)配列番号2のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む1またはそれ以上の変異を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAであって、該タンパク質が配列番号2のアミノ酸配列を有するトランスポーターの活性を有するものであるDNA、及び
    (C)遺伝子コードの縮重による配列番号1の変異体塩基配列であるDNA。
  4. cycA遺伝子のコピー数を増加させることにより、及び/又はcycA遺伝子の発現制御領域を改変することにより、cycA遺伝子が過剰発現され、該遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記細菌がエシェリヒア属に属するものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記細菌がエシェリヒア・コリである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記細菌がパントエア属に属するものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記細菌がパントエア・アナナティスである、請求項7に記載の方法。
  9. 非改変細菌と比較して、L−イソロイシンの副生アミノ酸の量が減少する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記副生アミノ酸が、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルバリン、L−ノルロイシン、α−アミノ酪酸、及びその組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
JP2016085342A 2015-04-22 2016-04-21 cycA遺伝子を過剰発現した腸内細菌科の細菌を用いたL−イソロイシンの製造方法 Active JP6766426B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
RU2015114955 2015-04-22
RU2015114955A RU2015114955A (ru) 2015-04-22 2015-04-22 Способ получения L-изолейцина с использованием бактерии семейства Enterobacteriaceae, в которой сверхэкспрессирован ген cycA

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016202182A true JP2016202182A (ja) 2016-12-08
JP6766426B2 JP6766426B2 (ja) 2020-10-14

Family

ID=56081221

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016085342A Active JP6766426B2 (ja) 2015-04-22 2016-04-21 cycA遺伝子を過剰発現した腸内細菌科の細菌を用いたL−イソロイシンの製造方法

Country Status (5)

Country Link
US (1) US9896704B2 (ja)
EP (1) EP3085705B1 (ja)
JP (1) JP6766426B2 (ja)
BR (1) BR102016008872B1 (ja)
RU (1) RU2015114955A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022005022A1 (ko) * 2020-06-29 2022-01-06 씨제이제일제당 (주) L-이소류신 생산능이 강화된 미생물 및 이를 이용한 l-이소류신 생산방법
JP2022529831A (ja) * 2019-04-22 2022-06-24 シージェイ チェイルジェダン コーポレーション L-ヒスチジン生産能が強化された微生物及びそれを用いたヒスチジン生産方法
WO2023121055A1 (ko) * 2021-12-21 2023-06-29 씨제이제일제당 (주) L-이소루신 생산 미생물 및 이를 이용한 l-이소루신 생산 방법

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2015114955A (ru) * 2015-04-22 2016-11-10 Аджиномото Ко., Инк. Способ получения L-изолейцина с использованием бактерии семейства Enterobacteriaceae, в которой сверхэкспрессирован ген cycA
JP7447810B2 (ja) 2018-05-23 2024-03-12 味の素株式会社 腸内細菌科を用いたトリペプチドγ-GLU-VAL-GLYの製造方法
KR102175112B1 (ko) * 2019-04-22 2020-11-06 씨제이제일제당 주식회사 L-쓰레오닌 생산능이 강화된 미생물 및 이를 이용한 쓰레오닌 생산방법
CN113046398A (zh) * 2021-05-18 2021-06-29 通辽梅花生物科技有限公司 一种稳定高效生产l-异亮氨酸的发酵方法及发酵稳定剂
WO2024094483A1 (en) * 2022-11-03 2024-05-10 Evonik Operations Gmbh Improved biotechnological process to produce guanidinoacetic acid (gaa) by targeted introduction or by increasing the activity of a transmembrane transport protein belonging to the amino acid-polyamine-organocation superfamily

Family Cites Families (41)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3058888A (en) 1959-10-30 1962-10-16 Tanabe Seiyaku Co Process for producing alpha-isoleucine
GB959229A (en) 1960-11-18 1964-05-27 Kyowa Hakko Kogyo Company Ltd Method for producing l-isoleucine by fermentation process
US3231478A (en) 1962-10-29 1966-01-25 Ajinomoto Kk Method of preparing l-isoleucine by fermentation
JPS4820316B1 (ja) 1970-02-16 1973-06-20
SU875663A1 (ru) 1978-06-30 1982-09-15 Всесоюзный научно-исследовательский институт генетики и селекции промышленных микроорганизмов Штаммы е.coLI ВНИИГенетика VL 334 @ N6 и ВНИИГенетика VL 334 @ N7-продуценты L-треонина и способ их получени
JPS5618596A (en) 1979-07-23 1981-02-21 Ajinomoto Co Inc Production of l-lysine through fermentation process
US4601983A (en) 1983-06-15 1986-07-22 Ajinomoto Co., Inc. Coryneform bacteria carrying recombinant plasmids and their use in the fermentative production of L-threonine and L-isoleucine
DE3565475D1 (en) 1984-04-07 1988-11-17 Bayer Ag Process and apparatus for the production of granules
JPS6115696A (ja) 1984-06-29 1986-01-23 Ajinomoto Co Inc 発酵法によるl−イソロイシンの製造法
EP0167132B1 (en) 1984-06-29 1992-01-02 Ajinomoto Co., Inc. Process for producing l-isoleucine by fermentation
FR2603581B1 (fr) 1986-04-28 1993-08-13 Ajinomoto Kk Procede pour isoler et purifier des aminoacides par chromatographie
US4777051A (en) 1986-06-20 1988-10-11 Ajinomoto Co., Inc. Process for the production of a composition for animal feed
JP2536570B2 (ja) 1987-10-12 1996-09-18 味の素株式会社 発酵法によるl―イソロイシンの製造法
JP2537260B2 (ja) 1988-02-23 1996-09-25 東陶機器株式会社 和風便器の施工方法
JP2748418B2 (ja) 1988-08-03 1998-05-06 味の素株式会社 組換えdna、該組換えdnaを有する微生物
DE4130868C2 (de) 1991-09-17 1994-10-13 Degussa Tierfuttermittelsupplement auf der Basis einer Aminosäure und Verfahren zu dessen Herstellung
JP3036930B2 (ja) 1991-11-11 2000-04-24 協和醗酵工業株式会社 発酵法によるl−イソロイシンの製造法
JP3151073B2 (ja) 1992-02-25 2001-04-03 協和醗酵工業株式会社 発酵法によるアミノ酸の製造法
EP0643135B1 (en) 1992-11-10 2001-08-01 Ajinomoto Co., Inc. Dna encoding aspartokinase iii mutants and their use for the production of l-threonine by fermentation
HU221120B1 (en) 1993-10-28 2002-08-28 Ajinomoto Kk Process for producing different substances with use of microorganism
JPH07155184A (ja) 1993-12-08 1995-06-20 Ajinomoto Co Inc 発酵法によるl−リジンの製造法
US5998178A (en) 1994-05-30 1999-12-07 Ajinomoto Co., Ltd. L-isoleucine-producing bacterium and method for preparing L-isoleucine through fermentation
DE4440118C1 (de) 1994-11-11 1995-11-09 Forschungszentrum Juelich Gmbh Die Genexpression in coryneformen Bakterien regulierende DNA
DE19621930C1 (de) 1996-05-31 1997-12-11 Degussa Verfahren zur Herstellung eines Tierfuttermittel-Zusatzes auf Fermentationsbrühe-Basis
US6238714B1 (en) 1999-05-05 2001-05-29 Degussa-Huls Ag Feedstuff additive which contains D-pantothenic acid and/or its salts and a process for the preparation thereof
RU2212447C2 (ru) 2000-04-26 2003-09-20 Закрытое акционерное общество "Научно-исследовательский институт Аджиномото-Генетика" Штамм escherichia coli - продуцент аминокислоты (варианты) и способ получения аминокислот (варианты)
JP4265093B2 (ja) 2000-08-11 2009-05-20 味の素株式会社 スレオニン及びイソロイシンの製造法
CA2468179C (en) 2001-11-23 2013-05-21 Ajinomoto Co., Inc. Method for producing l-amino acids using bacteria belonging to the genus escherichia
EP1484410B1 (en) 2003-06-05 2011-11-02 Ajinomoto Co., Inc. Fermentation methods using modified bacteria with increased byproduct uptake.
DE10331366A1 (de) 2003-07-11 2005-01-27 Degussa Ag Verfahren zur Granulation eines Tierfuttermittel-Zusatzes
JP4380305B2 (ja) 2003-11-21 2009-12-09 味の素株式会社 発酵法によるl−アミノ酸の製造法
RU2355763C2 (ru) 2006-09-13 2009-05-20 Закрытое акционерное общество "Научно-исследовательский институт Аджиномото-Генетика" (ЗАО АГРИ) Мутантная ацетолактатсинтаза и способ продукции разветвленных l-аминокислот
JP2010041920A (ja) 2006-12-19 2010-02-25 Ajinomoto Co Inc L−アミノ酸の製造法
RU2395579C2 (ru) 2007-12-21 2010-07-27 Закрытое акционерное общество "Научно-исследовательский институт Аджиномото-Генетика" (ЗАО АГРИ) СПОСОБ ПОЛУЧЕНИЯ L-АМИНОКИСЛОТЫ С ИСПОЛЬЗОВАНИЕМ БАКТЕРИИ, ПРИНАДЛЕЖАЩЕЙ К РОДУ Escherichia
JP2012029565A (ja) 2008-11-27 2012-02-16 Ajinomoto Co Inc L−アミノ酸の製造法
RU2009136544A (ru) 2009-10-05 2011-04-10 Закрытое акционерное общество "Научно-исследовательский институт "Аджиномото-Генетика" (ЗАО АГРИ) (RU) Способ получения l-цистеина с использованием бактерии семейства enterobacteriaceae
RU2460793C2 (ru) 2010-01-15 2012-09-10 Закрытое акционерное общество "Научно-исследовательский институт "Аджиномото-Генетика" (ЗАО АГРИ) Способ получения l-аминокислот с использованием бактерий семейства enterobacteriaceae
RU2496867C2 (ru) 2011-04-25 2013-10-27 Закрытое акционерное общество "Научно-исследовательский институт Аджиномото-Генетика" (ЗАО "АГРИ") Способ получения l-аминокислоты семейства глутамата с использованием коринеформной бактерии
RU2012112651A (ru) 2012-04-02 2013-10-10 Закрытое акционерное общество "Научно-исследовательский институт Аджиномото-Генетика" (ЗАО "АГРИ") САМОИНДУЦИРУЕМАЯ ЭКСПРЕССИОННАЯ СИСТЕМА И ЕЕ ПРИМЕНЕНИЕ ДЛЯ ПОЛУЧЕНИЯ ПОЛЕЗНЫХ МЕТАБОЛИТОВ С ПОМОЩЬЮ БАКТЕРИИ СЕМЕЙСТВА Enterobacteriaceae
RU2013118637A (ru) 2013-04-23 2014-10-27 Закрытое акционерное общество "Научно-исследовательский институт Аджиномото-Генетика" (ЗАО "АГРИ") СПОСОБ ПОЛУЧЕНИЯ L-АМИНОКИСЛОТ С ИСПОЛЬЗОВАНИЕМ БАКТЕРИИ СЕМЕЙСТВА ENTEROBACTERIACEAE, В КОТОРОЙ РАЗРЕГУЛИРОВАН ГЕН yjjK
RU2015114955A (ru) * 2015-04-22 2016-11-10 Аджиномото Ко., Инк. Способ получения L-изолейцина с использованием бактерии семейства Enterobacteriaceae, в которой сверхэкспрессирован ген cycA

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2022529831A (ja) * 2019-04-22 2022-06-24 シージェイ チェイルジェダン コーポレーション L-ヒスチジン生産能が強化された微生物及びそれを用いたヒスチジン生産方法
JP7394868B2 (ja) 2019-04-22 2023-12-08 シージェイ チェイルジェダン コーポレーション L-ヒスチジン生産能が強化された微生物及びそれを用いたヒスチジン生産方法
WO2022005022A1 (ko) * 2020-06-29 2022-01-06 씨제이제일제당 (주) L-이소류신 생산능이 강화된 미생물 및 이를 이용한 l-이소류신 생산방법
WO2023121055A1 (ko) * 2021-12-21 2023-06-29 씨제이제일제당 (주) L-이소루신 생산 미생물 및 이를 이용한 l-이소루신 생산 방법

Also Published As

Publication number Publication date
RU2015114955A (ru) 2016-11-10
US9896704B2 (en) 2018-02-20
JP6766426B2 (ja) 2020-10-14
BR102016008872A8 (pt) 2020-04-22
BR102016008872A2 (pt) 2019-06-04
EP3085705A1 (en) 2016-10-26
EP3085705B1 (en) 2018-06-13
BR102016008872B1 (pt) 2023-12-12
US20160312254A1 (en) 2016-10-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6766426B2 (ja) cycA遺伝子を過剰発現した腸内細菌科の細菌を用いたL−イソロイシンの製造方法
JP4604537B2 (ja) L−システイン生産菌及びl−システインの製造法
WO2005078113A1 (en) Method for producing l-threonine using bacteria belonging to the genus escherichia
JP6327152B2 (ja) 自己誘導性発現系、及び腸内細菌科の細菌を使用する有用な代謝産物を製造するためのその使用
WO2017213142A1 (ja) ヒポタウリンまたはタウリンの製造法
EP2508594B1 (en) L-cysteine-producing bacterium, and process for production of l-cysteine
JP5803927B2 (ja) 含硫アミノ酸生産菌及び含硫アミノ酸の製造法
WO2014027702A1 (en) Method for producing l-arginine using bacterium of the family enterobacteriaceae having n-acetylornithine deacetylase with downregulated activity
US11390896B2 (en) Method for producing L-methionine using a bacterium of the genus Pantoea
JP7447810B2 (ja) 腸内細菌科を用いたトリペプチドγ-GLU-VAL-GLYの製造方法
JP2021506331A (ja) 発酵によるグリシンの製造方法
JP2007513601A (ja) エシェリヒア属に属するl−スレオニン生産菌及びl−スレオニンの製造法
JP7444164B2 (ja) 細菌を用いたl-メチオニンの製造方法
EP4034668B1 (en) Method for producing 2-methyl-butyric acid by bacterial fermentation
US11999983B2 (en) Method for producing basic L-amino acids or salts thereof by fermentation of an Enterobacteriaceae bacterium
JP2017143756A (ja) L−システインの製造法
EP2700716A1 (en) Process for producing l-cysteine

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20160421

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190422

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200310

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200423

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200818

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200831

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6766426

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250