JP2016199651A - 押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物および積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記(i)〜(v)の特性を有し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)3〜95重量%と、MFRが50を超え300g/10分以下のポリプロピレン系樹脂(Y)5〜97重量%とからなる押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物など。
特性(i):MFRが0.1〜30.0g/10分
特性(ii):Mw/Mnが3.0〜10.0、かつMz/Mwが2.5〜10.0
特性(iii):溶融張力(MT)(単位:g)が、log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、またはMT≧15
特性(iv):分岐指数g’が0.30以上1.00未満
特性(v):プロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上
【選択図】なし
Description
ポリプロピレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂と比較して、透明性、剛性、表面光沢性、耐熱性に優れる。一方で、ポリプロピレン系樹脂は、分子構造が線状であり、重量平均分子量もポリエチレン系樹脂ほど大きくすることができないため、溶融張力が低い。
比較的高温で成形される押出ラミネート工法においては、溶融張力が高い樹脂は、ネックイン(押出機ダイス幅と押出されたフィルム幅との差)が小さく、成形速度が高速でも、サージング(引取り方向に発生する厚みむら又はエッジ部の伸縮による不安定現象)が生じにくい傾向にあるが、溶融張力が低いポリプロピレン系樹脂は、押出ラミネート成形に用いることが困難であった。
高速成形性を改善する手法として、ポリプロピレンに、低密度ポリエチレンを配合した熱可塑性樹脂組成物に対して、オイル、ポリエチレンワックス等を配合する方法(特許文献3〜5参照。)、メタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレンに、低密度ポリエチレンを配合した熱可塑性樹脂組成物を用いた押出ラミネートフィルムの製造法(特許文献6参照。)が開示されている。これらの方法では、高速成形性は改善されるが、ポリエチレンを用いているために、透明性と耐熱性に劣るといった問題が改善されていない。
また、特許文献8には、有機過酸化物を用いてポリプロピレン樹脂に長鎖分岐を導入する方法が開示されている。この方法は、有機過酸化物の分解物による汚染、臭気、黄変といった問題ばかりでなく、高い溶融張力を得るために変性量を多くすると、多量のゲルが生成され、外観が著しく劣るといった問題があった。
しかしながら、高溶融張力を有するポリプロピレン樹脂そのものを押出ラミネートする場合、引取りに対する延伸性が乏しく、レゾナンス現象が生じやすいために、成形速度が上げられない問題があった。
この問題を解決するために、高溶融張力を有するポリプロピレン樹脂に、MFRが1〜50g/10分のポリプロピレン樹脂を50〜97重量%配合することで、ネックインと高速成形性を改善する技術が開示されている(特許文献11参照。)。この方法では、高溶融張力を有するポリプロピレン樹脂そのものを押出ラミネートする場合と比較して、高速成形性は改善されるが、成形速度の最大速度が140m/minであり、更なる改善が求められていた。
特性(X−i):MFRが0.1〜30.0g/10分である。
特性(X−ii):GPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0〜10.0であり、かつMz/Mwが2.5〜10.0である。
特性(X−iii):溶融張力(MT)(単位:g)が下記の要件を満たす。
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 または MT≧15
特性(X−iv):分岐指数g’が0.30以上1.00未満である。
特性(X−v):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上である。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、ポリプロピレン系樹脂(Y)がメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とする押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
本発明の押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物においては、まず、以下の(X−i)〜(X−v)の各特性を有し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を使用することを特徴とする。
特性(X−i):MFRが0.1〜30.0g/10分である。
特性(X−ii):GPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0〜10.0であり、かつMz/Mwが2.5〜10.0である。
特性(X−iii):溶融張力(MT)(単位:g)が下記の要件を満たす。
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 または MT≧15
特性(X−iv):分岐指数g’が0.30以上1.00未満である。
特性(X−v):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上である。
本発明における長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜30.0g/10分、好ましくは0.3〜20.0g/10分、さらに好ましくは0.5〜10.0g/10分である。この範囲を下回るものは、流動性不足となり、押出成形に対して押出機の負荷が高すぎるなどの問題が生じ、一方、上回るものは、溶融張力不足により、高溶融張力材としての特性が乏しくなり、高温での押出ラミネート成形ができなくなってしまう。
なお、MFRは、ISO 1133:1997に準拠して測定したもので、単位はg/10分である。
また、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、分子量分布が比較的広いことが好ましく、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる分子量分布Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)が3.0〜10.0、好ましくは3.5〜8.0、より好ましくは4.1〜6.0の範囲である。
さらに、分子量分布の広さをより顕著に表すパラメータとして、Mz/Mw(ここで、MzはZ平均分子量である)が2.5〜10.0、より好ましくは2.8〜8.0、さらに好ましくは3.0〜6.0の範囲である。
分子量分布の広いものほど押出成形加工性が向上するが、Mw/MnおよびMz/Mwがこの範囲にあるものは、押出成形加工性に、特に優れるものである。
なお、Mn、Mw、Mzの定義は、「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算可能である。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
さらに、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、以下の条件(1)を満たす。
・条件(1)
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 又は MT≧15
この規定は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が充分な溶融張力を有するための指標であり、一般に、MTは、MFRと相関を有していることから、MFRとの関係式によって記述している。
また、以下の条件(1)’を満たすことがより好ましく、条件(1)”を満たすことが更に好ましい。
・・条件(1)’
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.9 又は MT≧15
・・条件(1)”
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+1.1 又は MT≧15
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が分岐を有することの直接的な指標として、分岐指数g’を挙げることができる。g’は、長鎖分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]lin によって与えられ、長鎖分岐構造が存在すると、1よりも小さな値をとる。
定義は、例えば「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に、記載されており、当業者にとって公知の指標である。
本発明で使用する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、光散乱によって求めた絶対分子量Mabsが100万の時に、g’が0.30以上1.00未満であることが好ましく、より好ましくは0.55以上0.98以下、更に好ましくは0.75以上0.96以下、最も好ましくは0.78以上0.95以下である。
なお、g’の下限値が上記の値であると好ましいのは、以下の理由による。
「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering vol.2」(John Wiley & Sons 1985 p.485)によると、櫛型ポリマーのg’値は、以下の式で表されている。
この式によると、櫛型鎖であれば、分岐数が極めて大きくなる、すなわち、pが無限大の極限で、g’=gε=λεとなり、λεの値以下にはならないことになり、一般に下限値が存在することになる。
一方、電子線照射や過酸化物変成の場合において生じると考えられる、従来公知のランダム分岐鎖の式は、同文献の485ページ 式(19)で与えられており、これによると、ランダム分岐鎖では、分岐点が多くなるにつれ、g’およびg値は、特に下限値が存在することなく、単調に減少する。
つまり、本発明において、g’値に下限値があるということは、本発明に用いる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、櫛型鎖に近い構造を有しているということを意味しており、これにより、電子線照射や過酸化物変成によって生成されるランダム分岐鎖との区別が、より明確となる。
また、g’が上記の範囲にある櫛型鎖に近い構造を有する分岐状ポリマーにおいては、290℃以上の高温で混練した際や、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いが小さいため、押出ラミネート成形性の低下(ネックイン増大や低速引取りでのレゾナンス現象発生)が生じにくいため、好ましい。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社製のAlliance GPCV2000を用いる。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社製GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いる。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐構造が導入されると、同じ分子量の線状のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐構造が導入されるに従い、同じ分子量の線状ポリマーの極限粘度([η]lin)に対する分岐状ポリマーの極限粘度([η]br)の比([η]br/[η]lin)は、小さくなっていく。
したがって、分岐指数(g’=[η]br/[η]lin)が1より小さい値になる場合には、長鎖分岐構造を有することを意味する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標)グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であるから、[η]linは、低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。
本発明に用いる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、立体規則性が高いことが好ましい。立体規則性の高さは、13C−NMRによって評価することができ、13C−NMRによって得られるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上の立体規則性を有するものが好ましい。
mm分率は、ポリマー鎖中、頭−尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合であるので、上限は100%である。このmm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクチックに制御されていることを示す値であり、高いほど高度に制御されていることを意味する。mm分率がこの値より小さいと、製品の弾性率が低下し、押出ラミネート積層体の表面耐傷付き性付与効果に劣る傾向にある。
従って、mm分率は、95%以上であり、より好ましくは96%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
・フリップ角:90度
・パルス間隔:10秒
・共鳴周波数:100MHz以上
・積算回数:10,000回以上
・観測域:−20ppmから179ppm
・データポイント数:32768
スペクトルの帰属は、Macromolecules,8巻,687頁(1975年)やPolymer,30巻,1350頁(1989年)を参考に行う。
なお、mm分率決定のより具体的な方法は、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に詳細に記載されており、本発明においても、この方法に従って行うものとする。
本発明に係る長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)の更なる付加的特徴として、歪み速度0.1s−1での伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax(0.1))が6.0以上であることが挙げられる。
歪硬化度(λmax(0.1))は、溶融時強度を表す指標であり、この値が大きいと、溶融張力が向上する効果がある。その結果、例えば押出温度290℃以上の押出ラミネート成形においても、溶融張力が保持されるため、ネックインの低減効果が得られるばかりでなく、溶融膜に均一に応力が伝搬するために、レゾナンス現象と称されるフィルム厚みの不均一現象やエッジ部の伸縮による不安定現象が抑制される。この歪硬化度は、6.0以上であると、十分な押出ラミネート成形性向上効果が発現し、好ましくは8.0以上である。
温度180℃、歪み速度=0.1s−1の場合の伸長粘度を、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度ηE(Pa・秒)を両対数グラフでプロットする。その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。
具体的には、まず、伸長粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、それに当っては、伸長粘度の測定データは離散的であることを考慮し、種々の平均法を利用する。たとえば隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法等が挙げられる。
伸長粘度は、低歪み量の領域では、単純増加関数となり、次第に一定値に漸近し、歪み硬化がなければ充分な時間経過後にトルートン粘度に一致するが、歪み硬化のある場合には、一般的に歪み量(=歪み速度×時間)1程度から、伸長粘度が時間と共に増大を始める。すなわち、上記傾きは、低歪み領域では時間と共に減少傾向があるが、歪み量1程度から逆に増加傾向となり、伸長粘度を時間に対してプロットした際の曲線上に、変曲点が存在する。そこで歪み量が0.1〜2.5程度の範囲で、上記で求めた各々の時刻の傾きが最小値をとる点を求めて、その点で接線を引き、直線を歪み量が4.0となるまで外挿する。歪み量4.0となるまでの伸長粘度ηEの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの上記近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmax(0.1)と定義する。
ポリプロピレン樹脂(X)は、ホモポリプロピレンであるか、または上に述べた種々の特性を満足する限り、少量のエチレンや1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンその他のコモノマーとのプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であってもよい。ポリプロピレン樹脂(X)がホモポリプロピレンである場合には、結晶性が高く、融点が高くなるが、ポリプロピレン樹脂(X)がプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である場合にも、融点が高いことが好ましい。
より具体的には、示差走査熱量測定(DSC)によって得られた融点が145℃以上であることが好ましく、150℃以上がより好ましい。融点が145℃より高いと、製品の耐熱性の観点から好ましいが、ポリプロピレン樹脂(X)の融点の上限は、通常170℃以下である。
なお、融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって求められ、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度とする。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、上記した(X−i)〜(X−v)の特性を満たす限り、特に製造方法を限定するものではないが、前述のように、高い立体規則性、比較的広い分子量分布、分岐指数g’の範囲、高い溶融張力等の条件を満足するための好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。このような方法の例としては、例えば、特開2009−57542号公報に開示される方法が挙げられる。
この手法は、マクロマー生成能力を有する特定の構造の触媒成分と、マクロマー共重合能力を有する特定の構造の触媒成分とを組み合わせた触媒を用いて、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを製造する方法であり、これによれば、バルク重合や気相重合といった工業的に有効な方法で、特に実用的な圧力温度条件下の単段重合で、しかも、分子量調整剤である水素を用いて、目的とする物性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の製造が可能である。
上記の長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とともに配合されるポリプロピレン系樹脂(Y)は、MFRが50g/10分を超え300g/10分以下である。
ポリプロピレン系樹脂(Y)のMFRは、50g/10分を超え300g/10分以下、好ましくは55〜200g/10分である。MFRが50g/10分以下であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の流動性に劣ることとなり、押出ラミネート成形時にレゾナンス現象が生じやすくなるおそれがある。一方、MFRが300g/10分を上回ると、ポリプロピレン樹脂(X)の分散性が劣るため、積層体の外観が劣る傾向にある。
ポリプロピレン系樹脂(Y)のMFRは、プロピレン重合の温度や圧力条件を変えるか、または、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する方法により、容易に調整される。
その際に使用する有機過酸化物は、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ))−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチル−ハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチル−ジパーオキシフタレート、t−ブチルパ−オキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、イソプロピルパーカーボネート等が挙げられる。
これらは、1種に限らず2種以上を組み合せて使用することができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが特に好ましい。
チーグラー・ナッタ系触媒は、たとえば「ポリプロピレンハンドブック」エドワード・P・ムーアJr.編著、保田哲男・佐久間暢翻訳監修、工業調査会(1998)の2.3.1節(20〜57ページ)に概説されているような触媒系のことであり、例えば、三塩化チタンとハロゲン化有機アルミニウムからなる三塩化チタニウム系触媒や、塩化マグネシウム、ハロゲン化チタン、電子供与性化合物を含有する固体触媒成分と有機アルミニウムと有機珪素化合物からなるマグネシウム担持系触媒や、固体触媒成分を有機アルミニウム及び有機珪素化合物を接触させて形成した有機珪素処理固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物成分を組み合わせた触媒のことを指す。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が特に好ましい。
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO2、Al2O3、シリカアルミナ、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
1.ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)の割合
本発明の押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物における上記ポリプロピレン樹脂(X)と上記ポリプロピレン系樹脂(Y)の割合は、(X)と(Y)の合計100重量%基準で、ポリプロピレン樹脂(X)3〜95重量%、ポリプロピレン系樹脂(Y)5〜97重量%である。好ましくはポリプロピレン樹脂(X)10〜60重量%、ポリプロピレン系樹脂(Y)40〜90重量%、より好ましくはポリプロピレン樹脂(X)15〜50重量%、ポリプロピレン系樹脂(Y)50〜85重量%である。
上記の範囲とすることで、例えば290℃以上の高温押出成形でのネックインが小さく、且つ延展性が高いので、高速での押出ラミネート加工性に優れ、そして、透明性に優れる成形体を得ることができる樹脂組成物が得られる。
本発明の押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて、上記ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)以外の、下記各種成分を添加して用いることができる。
本発明の押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、プロピレン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤を、適宜加えることができる。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製、商品名「IRGANOX 1010」)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(BASFジャパン社製、商品名「IRGANOX 1076」)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルで代表される滑剤、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどの帯電防止剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤などを添加してもよい。
紫外線吸収剤は、紫外線領域に吸収帯を持つ化合物であり、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、無機微粒子系、などが知られている。この中で最も汎用的に用いられているのは、トリアゾール系である。
以下、紫外線吸収剤として、代表的な化合物を例示する。
トリアゾール系の化合物では、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ200、TinuvinP)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ340、Tinuvin399)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ320、Tinuvin320)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ350、Tinuvin328)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ300、Tinuvin326)を例示することができる。
ベンゾフェノン系の化合物では、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ110)、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ130)を例示することができる。
サリシレート系の化合物では、4−t−ブチルフェニルサリシレート(商品名:シーソーブ202)を例示することができる。
シアノアクリレート系の化合物では、エチル(3,3−ジフェニル)シアノアクリレート(商品名:シーソーブ501)を例示することができる。
ニッケルキレート系の化合物では、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(商品名:アンチゲンNBC)を例示することができる。
無機微粒子系の化合物では、TiO2、ZnO2、CeO2を例示することができる。
セバケート型の化合物では、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:アデカスタブLA−77、サノールLS−770)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:サノールLS−765)を例示することができる。
ブタンテトラカルボキシレート型の化合物では、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−57)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−52)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−62)を例示することができる。
コハク酸ポリエステル型の化合物では、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合重合体を例示することができる。
トリアジン型の化合物では、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名:Chimasorb199)、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb944)、ポリ(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb3346)を例示することができる。
本発明の押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、プロピレン系樹脂に添加できるエラストマー、ポリエチレン系樹脂などの改質剤を、適宜、加えることができる。
上記のうち、エラストマーとしては、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの二元ランダム共重合体樹脂、プロピレンとエチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの三元ランダム共重合体樹脂を挙げることができる。
なお、密度は、JIS K7112に準拠し、23℃で測定した値である。
かかるエチレン/α−オレフィン共重合体としては、エチレン系エラストマー、エチレン−プロピレン系ゴム等を例示できる。特に、透明性低下の少ないメタロセン系触媒を用いて製造された、メタロセン系ポリエチレンと称されるエチレン/α−オレフィン共重合体が好適である。
本発明の押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物は、基材の表面に、溶融押出ラミネート加工(押出ラミネート)され、ラミネート積層体を製造するために使用される。
押出しラミネート加工は、予め製造した基材の表面上に、Tダイより押出した溶融樹脂膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。通常、基材の片側表面にラミネート加工するが、必要に応じて、両側にラミネートすることもできる。
また、熱可塑性樹脂フィルム又はシートは、一軸もしくは二軸延伸が施されていてもよく、特に二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好ましい。また、これを紙と積層したものも好ましい。
基材の厚さは、通常、5〜100μm程度である。
また、これら基材には、予めアンカーコート加工、金属蒸着加工、コロナ放電処理加工、印刷加工等の各種フィルム加工処理を施されていてもよい。
押出ラミネート成形速度は、生産性に直接関わるため、140m/min以上で成形され、好ましくは150m/min以上で成形される。
また、押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融膜表面に、極性基を導入することを目的に、オゾン処理を施すことができる。オゾン処理量は、溶融膜の表面積に対して0.01〜1g/m2で行われることが好ましい。
形成されたポリプロピレン系樹脂組成物層の厚みは、通常1〜250μm、好ましくは3〜200μm、特に好ましくは5〜150μmである。
押出ラミネート加工により得られた積層体には、さらに、金属蒸着加工、コロナ放電処理加工、印刷加工等の各種フィルム加工処理を施すことができる。
押出ラミネート加工により得られた積層体は、各種食品や飲料、医薬・医療品、化粧品、衣料、文具及びその他産業資材や工業資材等の包装用途に、好適に用いることができる。
なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
(1)メルトフローレート(MFR):
ISO 1133:1997 Conditions Mに準拠して測定した。単位はg/10分である。
(2)分子量分布(Mw/MnおよびMz/Mn):
前述した方法に従って、GPC測定により求めた。
(3)溶融張力(MT):
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・シリンダー押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。単位はグラム(g)である。
(4)分岐指数(g’):
前述した方法に従って、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCによって求めた。
(5)mm分率:
前述した方法に従って、日本電子社製、GSX−400、FT−NMRを用い、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に記載の方法で測定した。単位は%である。
日本電子(株)製GSX−400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)を用い、特開2013−199642号公報の段落[0120]〜[0125]に記載の方法に従って、13C−NMRスペクトルを解析することにより求める値である。単位はwt%である。
(7)歪硬化度(λmax):
伸長粘度の測定を、以下の条件で行った。
・装置:Rheometorics社製Ares
・冶具:ティーエーインスツルメント社製Extentional Viscosity Fixture
・測定温度:180℃
・歪み速度:0.1/sec
・試験片の作成:プレス成形して18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシートを作成する。
λmaxの算出方法の詳細は、前述した通りである。
(8)融点:
示差操作熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。単位は℃である。
(1)延展性:
ポリプロピレン系樹脂組成物を、口径90mmφの押出機に装着したTダイスから押出される樹脂の温度が290℃になるように設定した押出ラミネート装置を用い、エアギャップ100mm、冷却ロール表面温度25℃、ダイス幅560mm、ダイリップ開度0.7mmで、引き取り加工速度が80m/minの場合に被覆厚みが20μmになるように、押出量を調整して押出し、幅505mm、坪量50g/m2のクラフト紙上に、引き取り速度を80m/minから上昇させながら押出ラミネート加工を行い、安定して被覆加工ができる最高加工速度(単位:m/min)を延展性とした。
延展性が150m/min以上となるものは、押出ラミネーション成形性が優れる。また、加工速度が200m/min以上においても、安定して被覆加工が可能な場合は、目視による被覆加工の安定性の判定が困難なため、>200m/minと表記した。
(2)ネックイン:
上記した押出ラミネート装置を用い、加工速度が80m/minで、坪量50g/m2のクラフト紙上に、押出ラミネート被覆厚みが20μmの積層体を作成し、ダイス幅と得られた積層体中の樹脂組成物層の幅の差(単位:mm)をネックインとした。ネックインが小さいほど、有効製品幅が広くなり、押出ラミネート加工性が優れる。
(1)物性評価用フィルムの作成:
上述した押出ラミネート装置を用い、加工速度が40m/minで、厚み12μmの二軸延伸PETフィルム上に、押出ラミネート被覆厚みが40μmの積層体を作成した。
得られた積層体から、二軸延伸PETフィルムを剥離することで、物性評価用フィルムを得た。
(2)HAZE(ヘイズ):
上記(1)により得られた物性評価用フィルムのHAZEを、JIS K7105に準拠して測定した。ヘイズの値(単位:%)が小さいほど透明性がよい。
(1)長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)
下記の製造例1、2で製造した重合体(X−1)、重合体(X−2)を用いた。
<触媒合成例1>
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)400gを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーに蒸留水4,000g加えた後にろ過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ状固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4L加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上で得られた化学処理スメクタイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム50mmol(濃度143mg/mLのヘプタン溶液)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(210μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(90μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
先ほどの化学処理スメクタイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム0.84mmol(濃度143mg/mLのヘプタン溶液)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後、更にトリイソブチルアルミニウム0.36mmol(濃度143mg/mLのヘプタン溶液)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを、1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム12mmol(濃度143mg/mLのヘプタン溶液)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒52.8gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.64であった。
以下、このものを「予備重合触媒1」という。
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン40kgを導入した。これに水素4.4リットル(標準状態の体積として)、トリイソブチルアルミニウム0.12mol(濃度50g/Lのヘプタン溶液)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで、予備重合触媒1を2.4g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥し、16.5kgの重合体パウダー(以下、「PP−1」という)を得た。
触媒活性は、6880(g−PP/g−cat)であった。MFRは1.0g/10分であった。
重合体パウダー(PP−1)100重量部に対し、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部、ホスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部を配合し、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサー、商品名)を用い室温下で3分間混合した後、二軸押出機にて溶融混練して、ポリプロピレン樹脂(X)のペレット(X−1)を得た。
なお、二軸押出機には、テクノベル社製KZW−25を用い、スクリュー回転数は400RPM、混練温度は、ホッパー下から80、160、210、230(以降、ダイス出口まで同温度)℃設定とした。
このペレット(X−1)について、MFR、13C−NMR、GPC、分岐指数g’、溶融張力MT、伸長粘度の評価を行った。評価結果を表1に示した。
添加する水素を9.2リットル、使用する予備重合触媒1を2.1g(予備重合ポリマーを除いた重量で)で行う以外は、製造例1と同様に実施した。18.8kgの重合体パウダー(以下、「PP−2」という。)を得た。
触媒活性は、9000(g−PP/g−cat)であった。MFRは7.5g/10分であった。
PP−2を、製造例1と同様に、溶融混練して、ポリプロピレン樹脂(X)のペレット(X−2)を得た。評価結果を表1に示した。
ポリプロピレン系樹脂(Y)として、以下のポリプロピレン(Y−1)〜(Y−6)を用いた。
(Y−1):日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)SA06GA」、チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体、MFR=60g/10分、Tm=163℃
(Y−2):日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WSX02」、メタロセン触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体、エチレン含有量=3.2wt%、MFR=25g/10分、Tm=125℃
(Y−3):日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)SA04M」、チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体、MFR=40g/10分、Tm=161℃
ポリプロピレン系樹脂(Y−2)100重量部に対し、有機過酸化物(2,5‐ジメチル‐2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン)0.05重量部を加えて、ヘンシェルミキサーで混合した後、スクリュー口径25mmのテクノベル社製「KZW−25」二軸押出機を用い、スクリュー回転数300rpm、混練温度は、ホッパー下からC1/C2/C3〜C7/ヘッド/ダイス=150℃/180℃/230℃/230℃/180℃にて、溶融押出して、Tm=125℃、MFR=60g/10分のペレットを得た。
(Y−5):
ポリプロピレン系樹脂(Y−1)100重量部に対し、有機過酸化物(2,5‐ジメチル‐2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン)0.08重量部を加えて、ヘンシェルミキサーで混合した後、スクリュー口径25mmのテクノベル社製「KZW−25」二軸押出機を用い、スクリュー回転数300rpm、混練温度は、ホッパー下からC1/C2/C3〜C7/ヘッド/ダイス=150℃/180℃/230℃/230℃/180℃にて、溶融押出して、Tm=163℃、MFR=120g/10分のペレットを得た。
(Y−6):
ポリプロピレン系樹脂(Y−1)100重量部に対し、有機過酸化物(2,5‐ジメチル‐2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン)0.16重量部を加えて、ヘンシェルミキサーで混合した後、スクリュー口径25mmのテクノベル社製「KZW−25」二軸押出機を用い、スクリュー回転数300rpm、混練温度は、ホッパー下からC1/C2/C3〜C7/ヘッド/ダイス=150℃/180℃/230℃/230℃/180℃にて、溶融押出して、Tm=163℃、MFR=180g/10分のペレットを得た。
1.配合
ポリプロピレン樹脂(X)として(X−1)、ポリプロピレン系樹脂(Y)として(Y−1)を、各々20重量%、80重量%となるように計量し、ヘンシェルミキサーに投入し、3分間攪拌混合した。
2.造粒
スクリュー口径25mmのテクノベル社製「KZW−25」二軸押出機を用い、スクリュー回転数300rpm、混練温度は、ホッパー下からC1/C2/C3〜C7/ヘッド/ダイス=150℃/180℃/230℃/230℃/180℃にて、溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径3mm、長さ2mmに切断することで、ポリプロピレン樹脂組成物原料ペレットを得た。
3.フィルムの製造
得られたポリプロピレン樹脂組成物原料ペレットを、口径90mmφの押出機に装着された幅560mmのTダイスから、樹脂温度290℃で押出し、押出ラミネーションの成形性と積層体の物性を評価した。
押出ラミネーションの成形性は、ポリプロピレン系樹脂組成物原料が本発明の特定物性を全て満足しているため、延展性が160m/minと150m/minを上回る良好な結果であり、ネックインも77mmと良好であった。また、積層体のHAZEは、3.2%と低く、透明性に優れるものであった。
ポリプロピレン樹脂(X)を(X−2)とし、ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)との配合量を各々10重量%、90重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で、評価を行った。評価結果を表2に示す。
押出ラミネーションの成形性は、ポリプロピレン系樹脂組成物原料が本発明の特定物性を全て満足しているため、延展性が180m/minと150m/minを上回る良好な結果であった。ネックインは、ポリプロピレン樹脂(X)の配合量が10重量%であるため、127mmと若干製品幅が小さい結果であったが、実用上問題ないものであった。また、積層体のHAZEは、2.8%と低く、透明性に優れるものであった。
表2に示すような重量比率でポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)のペレットを混合し、実施例2と同様の方法で、評価を行った。評価結果を表2に示す。
いずれの評価結果も満足される結果であった。
(X−1)を用いずに、(Y−1)100重量%とした以外は、実施例1と同様に、評価を行った。評価結果を表2に示す。
ポリプロピレン樹脂(X)が混合されていないため、サージングが激しく、成膜ができなかった。
(Y−1)を用いずに、(X−2)100重量%とした以外は、実施例2と同様に、評価を行った。評価結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(Y)が混合されていないため、樹脂組成物全体の流動性が劣り、延展性が60m/minと、150m/minを下回り、押出ラミネーション成形性に劣る結果であった。
ポリプロピレン系樹脂(Y)を(Y−4)、(Y−5)、(Y−6)に、それぞれ変更した以外は、実施例4と同様に、評価を行った。評価結果を表3に示す。
いずれの評価結果も満足される結果であった。
ポリプロピレン系樹脂(Y)を(Y−2)とし、ポリプロピレン樹脂(X)を(X−1)、(X−2)に、それぞれ変更した以外は、実施例4と同様に、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ポリプロピレン系樹脂(Y−2)のMFRが25g/10分と低いため、いずれの樹脂組成物も、流動性が劣り、延展性が150m/minを下回り、押出ラミネーション成形性に劣る結果であった。
ポリプロピレン系樹脂(Y)を(Y−3)とした以外は、実施例4と同様に、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ポリプロピレン系樹脂(Y−3)のMFRが40g/10分と低いため、比較例5の樹脂組成物も、流動性が劣り、延展性が150m/minを下回り、押出ラミネーション成形性に劣る結果であった。
Claims (4)
- 下記(X−i)〜(X−v)の特性を有し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)3〜95重量%と、MFRが50g/10分を超え300g/10分以下のポリプロピレン系樹脂(Y)5〜97重量%とからなることを特徴とする押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物。
特性(X−i):MFRが0.1〜30.0g/10分である。
特性(X−ii):GPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0〜10.0であり、かつMz/Mwが2.5〜10.0である。
特性(X−iii):溶融張力(MT)(単位:g)が下記の要件を満たす。
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 または MT≧15
特性(X−iv):分岐指数g’が0.30以上1.00未満である。
特性(X−v):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上である。 - ポリプロピレン系樹脂(Y)は、コモノマーとしてエチレンを0〜6.0wt%含有することを特徴とする請求項1に記載の押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物。
- ポリプロピレン系樹脂(Y)がメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物。
- 基材上に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の押出ラミネート用ポリプロピレン系樹脂組成物を、溶融押出ラミネート加工により積層してなる積層体。
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