JP2016192962A - ヒトiPS細胞から、ヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞を製造する方法 - Google Patents

ヒトiPS細胞から、ヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞を製造する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、ES細胞や、iPS細胞といった臨床応用可能なヒト多能性幹細胞を利用した、より実用的なヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞の製造方法を提供することにある。【解決手段】ヒト歯原性上皮細胞の製造には、「レチノイン酸、骨形成タンパク質−4及びエナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程A」、及び、「工程Aで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で培養する工程B」を有する方法を用い、ヒト歯原性間葉細胞の製造には、「神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程C」、及び、「工程Cで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で培養する工程D」を有する方法を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒト多能性幹細胞からヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞を製造する方法や、該方法により製造されるヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞に関する。
歯は、最外層にエナメル質、その内側に象牙質という硬組織を有しており、その内側に、象牙質を産生する象牙芽細胞、中心部に歯髄を有する器官である。歯は、う蝕や歯周病等によって失われることも少なくない。失われた歯は、入れ歯やブリッジ、インプラント(人工歯根)によって補うことが多い。入れ歯は、比較的安価で処置も簡便であるが、十分な咀嚼力が得られないという欠点がある。また、ブリッジは、欠損部に隣接する歯を切削するというデメリットがある。一方、インプラントは、比較的高い咀嚼力が得られることが多いものの、あごの骨を削って金属製のネジを埋め込むという処置が必要であり、また、粘膜との結合は強くないためインプラント周囲炎になり易いという欠点がある。そこで、失われた歯に対するより優れた治療法として、歯の再生医療技術への期待が高まっており、様々な研究が試みられている。
例えば非特許文献1には、マウス胎生期の歯胚を上皮細胞群と間葉細胞群に分離後、単一細胞にし、それらの単一細胞群をコラーゲンゲル中に注入して再構築した歯胚を、腎被膜下に移植する事で歯の再生に成功したことが開示されている。また、非特許文献2や、非特許文献3には、前述の非特許文献1の技術を改良し、歯周組織を伴う歯の再生を実現したことが開示されている。非特許文献2や3の結果から、単一の歯の欠損の場合のみならず、複数の歯が欠損した場合においても適用し得る歯牙再生医療の発展が期待された。しかしながら、非特許文献1〜3はいずれも、全て胎生期における歯の発生過程における細胞群を利用したものであり、言わば、発生上、歯を構築するようにプログラムされた細胞を用いて歯の再生を行ったに過ぎない。また、非特許文献1〜3の方法をヒトに臨床適用するには、ヒト胎生期の歯胚を採取しなければならないが、これは倫理上きわめて困難であるという問題があった。そこで、例えば非特許文献4には、胎生期の歯胚に代えて、成体に存在する組織幹細胞を用いて、歯の再生を行おうとする取り組みが報告されている。しかし、この方法でも、上皮細胞又は間葉細胞のいずれかは、前述したような、発生上、歯を構築するようにプログラムされた胎生期の細胞群を依然として使用しており、前述の倫理上の問題は解決されていない。
この倫理上の問題を克服するために、近年、ES細胞(胚性幹細胞;embryonic stem cells)や、iPS細胞(人工多能性幹細胞;induced pluripotent stem cells)といった臨床応用可能な細胞ソースを利用して、歯を再生しようという試みがなされている。例えば非特許文献5には、ラットの歯原性上皮細胞株であるSF2−24をフィーダー細胞として、マウスiPS細胞と共培養することによって、歯原性上皮細胞を作製する方法や、ラットの歯原性上皮細胞株であるSF2をフィーダー細胞として、神経堤由来であるマウス歯髄幹細胞(DPSC)の細胞株(SP)と共培養することによって、歯原性間葉細胞を作製する方法が開示されている。非特許文献5には、マウスiPS細胞が歯原性上皮細胞に分化するには、歯原性上皮細胞株SF2−24から分泌される栄養因子−4(NT−4)や骨形成タンパク質(BMP)が関与するシグナル伝達が重要であることが示唆されている。また、非特許文献5には、マウス歯髄幹細胞が歯原性間葉細胞に分化するには、歯原性上皮細胞株SF2から分泌されるBMP−2及びBMP−4が重要であることが示唆されている。しかし、非特許文献5で用いている多能性幹細胞はマウスの細胞であり、ヒトへの臨床応用の際には、免疫拒絶反応の可能性があるなどの問題があった。また、非特許文献5の方法は、いずれもフィーダー細胞株を必要としているが、作製した歯原性上皮細胞や歯原性間葉細胞をヒトへ移植する際に、フィーダー細胞株が混入する危険性があるという問題もあった。
非特許文献6には、ヒト尿中に含まれる細胞から樹立したヒトiPS細胞を用いて、歯硬組織を作製できたことが開示されている。より詳細には、非特許文献6では、まずヒトiPS細胞を、BMP−4、レチノイン酸及びN2サプリメントを含むDMEM/F12培養液で培養することによって、歯原性上皮細胞ではなく、一般的な上皮細胞を誘導している。一方、胎生期のマウス歯胚から歯原性間葉細胞を採取し、かかる歯原性間葉細胞を前述の一般的な上皮細胞と共培養した後、それらの細胞をマウスの腎被膜に移植して3週間後に、歯髄、象牙質、エナメル質、エナメル器を有する歯硬組織が得られたことが記載されている。しかし、非特許文献6の方法では、胎生期のマウス歯胚の細胞を採取しているため、非特許文献6の方法をヒトに臨床適用するには、ヒト胎生期の歯胚の細胞を採取しなければならず、これは倫理上きわめて困難であるという問題があった。
このように、ES細胞や、iPS細胞といった臨床応用可能なヒト多能性幹細胞を利用した、ヒトの歯の再生技術には課題が多く残されていた。
なお、エナメルマトリックスタンパク質は、アメロゲニンを主成分とするタンパク質の複合体であり、エナメルの前駆体として知られている。エナメルマトリックスタンパク質は、歯周病などにより失われた歯周組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質)のうち、特にセメント質の再生を促し、失われた歯周組織をある程度回復させる作用を有することが知られている。エナメルマトリックスタンパク質の1種であるエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)は、ブタのエナメルマトリックスの酸性抽出物を精製後、凍結乾燥して得られたタンパク抽出物であり、エナメルマトリックスタンパク質と同様にアメロゲニンが主成分である。エナメルマトリックスデリバティブは、歯周病で歯周組織が失われた患者の歯周組織の再生を促進する目的で、かかる患者に実際に適用されている。
Nakao et al., Nature Methods 4: 227-230, 2007 Ikeda et al., Proc Natl Acad Sci USA 106: 13475-13480, 2009 Oshima et al., PLoS One. 2011 6(7) e21531 X. Hu et al., Journal of Dental Research 93: 490-495, 2014 Arakaki et al., THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY 287(13):10590-10601, 2012 Cai et al., Cell Regeneration 2013, 2:6 doi:10.1186/2045-9769-2-6
本発明の課題は、ES細胞や、iPS細胞といった臨床応用可能なヒト多能性幹細胞を利用した、より実用的なヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、これらの製造方法により製造されるヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞を提供することにもある。
背景技術でも述べたように、ES細胞や、iPS細胞といった臨床応用可能なヒト多能性幹細胞を利用した、ヒトの歯の再生技術には課題が多く残されていた。このような状況下で本発明者らは、胎生期の歯胚の細胞の採取や、フィーダー細胞の使用を必要とすることなく、ヒト多能性幹細胞からヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞を製造することができる方法を見いだし、本発明を完成させた。
より詳細には、本発明者らは、レチノイン酸、骨形成タンパク質−4及びエナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で、ヒトiPS細胞を培養し、次いで、かかる細胞を、エナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で培養することにより、胎生期の歯胚の細胞の採取や、フィーダー細胞の使用を必要とすることなく、ヒト歯原性上皮細胞を製造できる方法を見いだした。エナメルマトリックスタンパク質は、セメント質の形成を促す作用が知られているところ、セメント質は歯原性間葉細胞に由来する組織である。したがって、ヒトiPS細胞から歯原性上皮細胞への誘導に、レチノイン酸及びBMP−4に加えて、エナメルマトリックスタンパク質を用い得ることは、意外であった。
また、本発明者らは、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で、ヒトiPS細胞を培養し、次いで、かかる細胞を、エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で培養することにより、胎生期の歯胚の細胞の採取や、フィーダー細胞の使用を必要とすることなく、ヒト歯原性間葉細胞を製造できる方法を見いだした。
以上の知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)以下の工程A及びBを有することを特徴とする、ヒト歯原性上皮細胞の製造方法;工程A:レチノイン酸、骨形成タンパク質−4及びエナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程;及び
工程B:工程Aで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で培養する工程や、
(2)工程Aの培養液におけるエナメルマトリックスタンパク質の濃度が1〜600μg/mLの範囲内であり、工程Bの培養液におけるエナメルマトリックスタンパク質の濃度が1〜600μg/mLの範囲内であることを特徴とする上記(1)に記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法や、
(3)エナメルマトリックスタンパク質が、エナメルマトリックスデリバティブであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法や、
(4)工程Aの培養期間が2〜5日間の範囲内であり、工程Bの培養期間が4〜10日間の範囲内であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法や、
(5)ヒト多能性幹細胞がヒトiPS細胞であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法や、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法により製造されるヒト歯原性上皮細胞に関する。
また、本発明は、
(7)以下の工程C及びDを有することを特徴とする、ヒト歯原性間葉細胞の製造方法;工程C:神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程;
工程D:工程Cで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で培養する工程や、
(8)神経細胞増殖用成分が、Neurobasal(登録商標)Medium(Life Technologies社製)、Gem21 neuroplex(登録商標)(Gemini Bio-Products社製)及びN-2 Supplement(Life Technologies社製)からなる群から選択される1種又は2種以上であり、分化誘導因子が、線維芽細胞増殖因子−2(bFGF)、上皮成長因子(EGF)及び哺乳動物の血清からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする上記(7)に記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法や、
(9)エナメルマトリックスタンパク質が、エナメルマトリックスデリバティブであることを特徴とする上記(7)又は(8)に記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法や、
(10)工程C及び工程Dにおける細胞の培養が、浮遊培養であることを特徴とする上記(7)〜(9)のいずれかに記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法や、
(11)工程Cの培養期間が3〜5日間の範囲内であり、工程Dの培養期間が5〜11日間の範囲内であることを特徴とする上記(7)〜(10)のいずれかに記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法や、
(12)ヒト多能性幹細胞がヒトiPS細胞であることを特徴とする上記(7)〜(11)のいずれかに記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法や、
(13)上記(7)〜(12)のいずれかに記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法により製造されるヒト歯原性間葉細胞に関する。
本発明によれば、胎生期の歯胚の細胞の採取や、フィーダー細胞の使用を必要とすることなく、臨床応用可能なヒト多能性幹細胞(例えばヒトES細胞やヒトiPS細胞)から、ヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞を効率的に製造することができる。
ヒトiPS細胞から歯原性上皮細胞への分化誘導を開始してから10日目の細胞の顕微鏡による画像である。 図2A及びBは、それぞれエムドゲイン非存在(図2A)下及び存在下(図2B)で、ヒトiPS細胞から歯原性上皮細胞への分化誘導を開始してから10日目の細胞を、免疫組織染色法を用いて解析した結果を示す図である。図2A及び図2Bのいずれにおいても、左上パネル、左下パネル、右上パネル、及び右下パネルは、それぞれアメロゲニン、p63、サイトケラチン18、及びE−カドヘリン染色画像を示す。 ヒトiPS細胞から神経上皮細胞への分化誘導を開始してから4日目の細胞の顕微鏡による画像である。 ヒト神経上皮細胞から歯原性間葉細胞への分化誘導を開始してから6日目の細胞の顕微鏡による画像である。 エムドゲイン非存在下(図5A)及び存在下(図5B)で、ヒトiPS細胞から歯原性間葉細胞への分化誘導を開始してから6日目の細胞におけるDSPPの発現を、免疫組織染色法を用いて解析した結果を示す図である(図5A及びBのそれぞれ右パネル)。また、前述の6日目の細胞を核染色した結果を示す図である(図5A及びBのそれぞれ左パネル)。 ヒトiPS細胞から分化誘導した歯原性間葉細胞を、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、神経細胞、グリア細胞、及び平滑筋細胞へそれぞれ分化誘導し、それぞれアリザリンレッド染色法(図6A)、トルイジンブルー染色法(図6B)、オイルレッドO染色法(図6C)、抗ペリフェリン(Peripherin)抗体及び抗β3チューブリン抗体を用いた免疫組織染色法(図6D)、抗GFAP(Glial Fibrillary Acidic Protein)抗体を用いた免疫組織染色法(図6E)、及び抗平滑筋抗体(SMA)を用いた免疫組織染色法(図6F)を用いて解析した結果を示す図である。 歯原性上皮細胞と可視化歯原性間葉細胞を1週間共培養した可視化歯原性間葉細胞を、免疫組織染色法にて解析した結果を示す図である。図7BはffLucのVenusの蛍光画像であり、図7Cは抗ペリフェリン抗体の蛍光画像であり、図7DはHoechstの蛍光画像であり、図7Aは図7B〜Dの蛍光画像を重ね合わせた蛍光画像である。なお、図7A〜Dのスケールバーは100μmを表す。 歯原性上皮細胞と可視化歯原性間葉細胞を1週間共培養した可視化歯原性間葉細胞を、免疫組織染色法にて解析した結果を示す図である。図8BはffLucのVenusの蛍光画像であり、図8Cは抗E−カドヘリン抗体の蛍光画像であり、図8DはHoechstの蛍光画像であり、図8Aは図8B〜Dの蛍光画像を重ね合わせた蛍光画像である。なお、図8A〜Dのスケールバーは50μmを表す。
<ヒト歯原性上皮細胞の製造方法>
本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法としては、以下の工程A及びBを有する方法である限り特に制限されない。
工程A:レチノイン酸、骨形成タンパク質−4及びエナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程;
工程B:工程Aで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で培養する工程;
上記工程Aとしては、レチノイン酸、骨形成タンパク質−4及びエナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程である限り特に制限されない。かかる培養には、細胞支持基材を用いなくてもよいが、細胞支持基材を用いることが好ましい。かかる細胞支持基材としては、コラーゲンゲル、BD マトリゲル(登録商標)、細胞培養用ゼラチン、寒天、ムコ多糖類(ヒアルロン酸ハイドロゲル等)などを挙げることができる。これらの細胞支持基材は市販されているものを用いることができる。
上記工程Aで用いるヒト多能性幹細胞の種類としては、本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法によりヒト歯原性上皮細胞を製造し得る細胞である限り特に制限されず、例えばヒトES細胞、ヒトiPS細胞などを好適に挙げることができ、作製が容易で汎用性が高い点で、ヒトiPS細胞をより好適に挙げることができる。
上記工程Aや後述の工程Cで用いるヒトES細胞やヒトiPS細胞は、RIKEN Bioresource Center CELL BANK、独立行政法人医薬基盤研究所 JCRB細胞バンクなどから入手することができる。また、ヒトES細胞やヒトiPS細胞は作製してもよい。ヒトES細胞の作製方法は特に制限されず、現在公知の作製方法を用いてもよいし、今後新たに開発される方法を用いてもよいが、例えば、ヒトの受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取り出し、内部細胞塊を線維芽細胞のフィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、ヒトiPS細胞の作製方法も特に制限されず、現在公知の作製方法(再表2009/075119、特表2011−529329、特表2011−529330、特表2012−507258、特表2013−501505、特表2013−519371、特表2013−544069)を用いてもよいし、今後新たに開発される作製方法を用いてもよい。
上記工程Aにおける「レチノイン酸、骨形成タンパク質−4及びエナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液」としては、レチノイン酸、骨形成タンパク質−4及びエナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液である限り特に制限されない。上記の角化細胞増殖用培養液とは、ヒト角化細胞を増殖及び維持できる培養液を意味するが、便宜上、上記工程A及び工程Bを有する方法において、工程Aにおける角化細胞増殖用培養液として使用した場合に、ヒト歯原性上皮細胞を製造し得るいかなる培養液をも含む。上記の角化細胞増殖用培養液として具体的には、Keratinocyte-SFM(keratinocyte serum free medium)(Life Technologies社製)を好ましく挙げるこ
とができる。
上記のレチノイン酸、骨形成タンパク質−4(BMP−4)は、例えばSigma-Aldrich社製のものなどの市販品を用いることができる。前述のBMP−4としては、ヒトのBMP−4を好ましく挙げられる。
上記工程Aや後述の工程Cで用いるエナメルマトリックスタンパク質としては、哺乳動物のエナメルマトリックスタンパク質である限り特に制限されないが、入手の容易性の観点から、非ヒト哺乳動物のエナメルマトリックスタンパク質を好ましく挙げることができ、中でも、ブタのエナメルマトリックスタンパク質をより好ましく挙げることができる。アメロゲニンを始めとするエナメルマトリックスタンパク質は、哺乳動物の間で高度に保存されているため、非ヒト哺乳動物のエナメルマトリックスタンパク質であっても、免疫拒絶反応等の問題は生じない。例えば、ブタのアメロゲニン遺伝子のmRNAと、ヒトのアメロゲニン遺伝子のmRNAは、ヌクレオチドの4%しか異なっておらず、ヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞の製造に好適に用いることができる。本発明で用いるエナメルマトリックスタンパク質は、哺乳動物から採取したものであってもよいし、遺伝子組換え技術等により生物学的に製造したものであってもよいし、化学的に合成したものであってもよい。
エナメルマトリックスタンパク質の約90重量%はアメロゲニンで構成され、残りの10重量%は、エナメリン、タフテリン、タフトタンパク質、アメロブラスチン(アメリン又はシースリンとも呼ばれる)等で構成される。本明細書において「エナメルマトリックスタンパク質」とは、本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法におけるエナメルマトリックスタンパク質として用いた場合にヒト歯原性上皮細胞を製造することができ、及び/又は、後述の本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法におけるエナメルマトリックスタンパク質として用いた場合にヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、少なくとも、アメロゲニンを含む組成物であればよく、好ましくはさらに、エナメリン、タフテリン、タフトタンパク質及びアメロブラスチンからなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種、より好ましくは4種)を含む組成物である。
本明細書におけるエナメルマトリックスタンパク質には、エナメルマトリックスデリバティブも含まれる。エナメルマトリックスデリバティブには、哺乳動物のエナメルマトリックスの酸性抽出物を精製して得られたタンパク抽出物が好ましく含まれ、中でも、ブタのエナメルマトリックスの酸性抽出物を精製して得られたタンパク抽出物がより好ましく含まれ、中でも、エムドゲイン(Emdogain(登録商標))(Biora社製)が特に好ましく
含まれる。
上記工程Aの角化細胞増殖用培養液におけるレチノイン酸の濃度としては、本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法において、ヒト歯原性上皮細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば、40nM〜25μMの範囲内、好ましくは100nM〜10μMの範囲内、より好ましくは400nM〜2.5μMの範囲内を挙げることができる。
上記工程Aの角化細胞増殖用培養液におけるBMP−4の濃度としては、本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法において、ヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば、0.5〜500ng/mLの範囲内、好ましくは1〜200ng/mLの範囲内、より好ましくは2〜100ng/mLの範囲内、さらに好ましくは10〜25ng/mLの範囲内を挙げることができる。
上記工程Aの角化細胞増殖用培養液におけるエナメルマトリックスタンパク質の濃度としては、本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法において、ヒト歯原性上皮細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば、1〜600μg/mLの範囲内、好ましくは6〜240μg/mLの範囲内、より好ましくは12〜120μg/mLの範囲内を挙げることができる。
本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法における工程A及びBや、後述の本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法における工程C及びDにおいて、細胞を培養する際には、多能性幹細胞等を培養する際に通常用いられる培養ディッシュ(Nunc社や、Corning社等)を用いることができ、かかる培養ディッシュとしては、細胞外マトリックスでコーティングされた培養ディッシュを好ましく挙げることができる。細胞外マトリックスとしては、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン又はそれらの組合せなどを挙げることができる。
上記工程Aの培養期間としては、本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法において、ヒト歯原性上皮細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば2〜5日間の範囲内が挙げられ、好ましくは3〜4日間の範囲内が挙げられる。
上記工程Bとしては、工程Aで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で培養する工程である限り特に制限されず、例えば、工程Aにおける培養液を、「エナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液」に交換した後、該培養液で細胞の培養を行う方法を挙げることができる。また、工程Bにおける培養には、細胞支持基材を用いなくてもよいが、細胞支持基材を用いることが好ましい。
工程Bで用いる培養液としては、エナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液である限り特に制限されないが、レチノイン酸及びBMP−4を含有しないことが好ましい。
上記工程Bの角化細胞増殖用培養液におけるエナメルマトリックスタンパク質の濃度としては、本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法において、ヒト歯原性上皮細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば、1〜600μg/mLの範囲内、好ましくは6〜240μg/mLの範囲内、より好ましくは12〜120μg/mLの範囲内を挙げることができる。
上記工程Bの培養期間としては、本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法において、ヒト歯原性上皮細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば4〜10日間の範囲内が挙げられ、好ましくは6〜8日間の範囲内が挙げられる。
本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法により得られた細胞が、ヒト歯原性上皮細胞であるかどうかは、例えば、その細胞において歯原性上皮特異的マーカーが発現しているかどうかを調べることにより、確認することができる。上記の歯原性上皮特異的マーカーとしては、アメロゲニン(アメロジェニンとも言う)や、アメロブラスチンを挙げることができる。細胞においてこれらのマーカーが発現しているかどうかは、市販されている抗アメロゲニン抗体や抗アメロブラスチン抗体を用いた免疫染色法等により、容易に調べることができる。
本発明において「ヒト歯原性上皮細胞」とは、歯原性上皮特異的マーカーであるアメロゲニン及びアメロブラスチンから選択される1種又は2種、好ましくは2種を発現する細胞を意味する。本発明における「ヒト歯原性上皮細胞」には、前述の1種又は2種の歯原性上皮特異的マーカーに加えて、好ましくは、一般的な上皮特異的マーカーであるサイトケラチン18、p63タンパク質及びE−カドヘリンからなる群から選択される1種又は2種以上、好ましくは3種を発現する細胞が含まれている。
<ヒト歯原性間葉細胞の製造方法>
本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法としては、以下の工程C及びDを有する方法である限り特に制限されない。
工程C:神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程;
工程D:工程Cで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で培養する工程;
上記工程Cとしては、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程である限り特に制限されないが、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法によりヒト歯原性間葉細胞をより効率的に製造する観点から、該ヒト多能性幹細胞を、前述の細胞増殖用培養液中で浮遊培養することが好ましい。
上記工程Cで用いるヒト多能性幹細胞の種類としては、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法によりヒト歯原性間葉細胞を製造し得る細胞である限り特に制限されず、例えばヒトES細胞、ヒトiPS細胞などを好適に挙げることができ、作製が容易で汎用性が高い点で、ヒトiPS細胞をより好適に挙げることができる。
上記工程Cで用いるヒト多能性幹細胞としては、足場材料から剥離処理されたヒト多能性幹細胞を好ましく挙げることができる。かかる剥離処理の方法としては、コラゲナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される1種又は2種以上によりヒト多能性幹細胞を処理する方法を挙げることができる。細胞剥離用のコラゲナーゼやプロテアーゼは、市販品を用いることができる。
上記工程Cにおける「神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液」としては、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液であって、ヒト多能性幹細胞をその培養液で培養することにより、神経堤細胞を誘導し得る培養液である限り特に制限されない。
上記工程Cや後述の工程Dにおける神経細胞増殖用成分としては、ヒト神経細胞の増殖に必要な成分である限り特に制限されないが、例えば、Neurobasal(登録商標)Medium(Life Technologies社製)、Gem21 neuroplex(登録商標)(Gemini Bio-Products社製)及びN-2 Supplement(Life Technologies社製)からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種)を挙げることができる。
上記工程Cの細胞増殖用培養液における神経細胞増殖用成分の濃度としては、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法において、ヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば、Neurobasal(登録商標)Mediumを20〜70vol%の範囲内、好ましくは40〜60vol%の範囲内、Gem21 NeuroPlex(登録商標)を0.4〜2vol%の範囲内、好ましくは0.7〜1.4vol%の範囲内、N-2 Supplementを0.2〜0.7vol%の範囲内、好ましくは0.4〜0.6vol%の範囲内とすることができる。
上記工程Cや後述の工程Dにおける分化誘導因子としては、ヒトの多能性幹細胞の分化を誘導する因子(好ましくはタンパク質)である限り特に制限されず、例えば、線維芽細胞増殖因子−2(bFGF)、上皮成長因子(EGF)及び哺乳動物の血清からなる群から選択される1種又は2種以上を好ましく挙げることができ、上記bFGFとしてはヒトbFGFが好ましく、EGFとしてはヒトEGFが好ましい。また、上記工程Cに用いる好ましい分化誘導因子としては、bFGF(好ましくはヒトbFGF)及びEGF(好ましくはヒトEGF)からなる群から選択される1種又は2種が挙げられる。また、上記工程Dにおける分化誘導因子は、bFGF及び/又はEGFに加えて、哺乳動物の血清を含んでいることが好ましく、かかる血清としては、入手が容易である等の点で牛胎仔血清(FBS)が好ましく挙げられる。
上記工程Cの細胞増殖用培養液における分化誘導因子の濃度としては、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法において、ヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば、bFGFを、5〜20μg/mLの範囲内、好ましくは7〜13μg/mLの範囲内、EGFを5〜20μg/mLの範囲内、好ましくは7〜13μg/mLの範囲内、哺乳動物の血清(好ましくはFBS)を2〜8%wt/volの範囲内、好ましくは3〜6%wt/volの範囲内とすることができる。
上記工程Cや後述の工程Dにおける細胞増殖用培養液としては、ヒトの細胞を増殖し得る培養液である限り特に制限されず、例えば、1又は2種類以上の糖(類)と、1又は2種類以上の無機塩(類)、1又は2種類以上のアミノ酸(類)、及び1又は2種類以上のビタミン(類)、及び1又は2種類以上のその他成分を含むことが好ましい。
上記糖類としては、具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類や、スクロース、マルトース、ラクトース等の二糖類を挙げることができるが、中でもグルコースが特に好ましく、これら糖類は、1又は2以上組み合わせて添加することもできる。
上記無機塩類としては、具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸銅五水和物、硝酸鉄(III)九水和物、硫酸鉄(II)七水和物、塩化マグネシウム六水和物、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、亜セレン酸ナトリウム五水和物、硫酸亜鉛七水和物から選ばれる1種又は2種以上の無機塩(類)を挙げることができるが、ヒト多能性幹細胞からのヒト歯原性間葉細胞の製造に有利に作用する成分であればいずれの無機塩類又はその組合せも用いることができる。
上記アミノ酸類としては、具体的には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等から選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸(類)、好ましくはL−体のアミノ酸とそれらの誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物を挙げることができる。例えば、上記アルギニンとしては、L−塩酸アルギニン、L−アルギニン一塩酸塩等のアルギニンの派生物を挙げることができ、上記アスパラギン酸としては、L−アスパラギン酸ナトリウム塩一水和物、L−アスパラギン酸一水和物、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム等のアスパラギン酸の派生物を挙げることができ、上記システインとしては、L−システイン二塩酸塩、L-システイン塩酸塩一水和物等のシステインの派生物や、L−リジン塩酸塩等のリジンの派生物を挙げることができ、上記グルタミン酸としては、L−グルタミン酸一ナトリウム塩等のグルタミンの派生物を挙げることができ、上記アスパラギンとしては、L−アスパラギン一水和物等のアスパラギンの派生物を挙げることができ、上記チロシンとしては、L−チロシン二ナトリウム二水和物等のチロシンの派生物を挙げることができ、上記ヒスチジンとしては、ヒスチジン塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩一水和物等のヒスチジンの派生物を挙げることができ、上記リジンとしては、L−リジン塩酸塩等のリジンの派生物を挙げることができる。
上記ビタミン類としては、具体的には、ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、パラアミノ安息香酸(PABA)、アスコルビン酸から選択される1種又は2種以上のビタミン(類)と、これらの成分各々の誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物を挙げることができる。例えば、上記コリンとしては、塩化コリン等のコリンの派生物を挙げることができ、ナイアシンとしては、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール等のナイアシンの派生物を挙げることができ、パントテン酸としては、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノール等のパントテン酸の派生物を挙げることができ、ピリドキシンとしては、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール塩酸塩、リン酸ピリドキサール、ピリドキサミン等のピリドキシンの派生物を挙げることができ、チアミンとしては、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジセチル硫酸エステル塩、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、ベンフォチアミン等のチアミンの派生物等を挙げることができ、アスコルビン酸としては、アスコルビン酸2−リン酸エステル(Ascorbic acid 2-phosphate)、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸硫酸ナトリウム、リン酸アスコルビルアミノプロピル、アスコルビン酸リン酸ナトリウム等のアスコルビン酸の派生物を挙げることができる。
上記その他成分としては、HEPES等の緩衝剤、ヌクレオチド等の核酸、ピルビン酸、及びその誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物、フェノールレッドなどを挙げることができ、上記ヌクレオチドとしては、ATP、UTP、GTP、CTP、好ましくはこれら4種の等モル混合物を好ましく挙げることができ、ピルビン酸の派生物としてはピルビン酸ナトリウムを好ましく挙げることができる。
上記の細胞増殖用培養液の具体例としては、DMEM/F12培養液、DMEM培養液、RPMI1640培養液等が挙げられ、上記工程Cで用いる細胞増殖用培養液としてはDMEM/F12培養液が好ましく挙げられ、上記工程Dで用いる細胞増殖用培養液としてはDMEM培養液やDMEM/F12培養液が好ましく挙げられる。
上記工程Cや後述の工程Dにおける細胞増殖用培養液は、増殖因子を含有していなくてもよいが、含有していることが好ましい。かかる増殖因子としては、ヒトの多能性幹細胞の増殖を促進するする因子(好ましくはタンパク質)である限り特に制限されず、例えば、インスリン、L−アラニル−L−グルタミン(例えばGlutaMAX(登録商標)(Life Technologies社製))を挙げることができる。
上記工程Cや後述の工程Dにおける細胞増殖用培養液は、細胞培養中の細菌汚染を防止する観点から、さらに抗生物質を含んでいることが好ましい。かかる抗生物質としては、ペニシリンやストレプトマイシンが好ましく挙げられ、より好ましくはペニシリンとストレプトマイシンを併用することをより好ましく挙げることができる。
上記工程Cにおける「神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液」の好ましい態様としては、神経細胞増殖用成分として、Neurobasal(登録商標)Medium(Life Technologies社製)、Gem21 neuroplex(登録商標)(Gemini Bio-Products社製)及びN-2 Supplement(Life Technologies社製)からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種)を含有し、分化誘導因子として、bFGF(好ましくはヒトbFGF)及びEGF(好ましくはヒトEGF)からなる群から選択される1種又は2種(好ましくは2種)を含有する細胞増殖用培養液を挙げることができ、さらに増殖因子としてインスリン及びL−アラニル−L−グルタミン(例えばGlutaMAX(登録商標))からなる群から選択される1種又は2種(好ましくは2種)を含有する細胞増殖用培養液をより好ましく挙げることができ、さらに抗生物質を含有する細胞増殖用培養液をさらに好ましく挙げることができる。
上記工程Cの培養期間としては、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法において、ヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば3〜5日間の範囲内が挙げられる。
上記工程Dとしては、工程Cで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で培養する工程である限り特に制限されないが、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法によりヒト歯原性間葉細胞をより効率的に製造する観点から、工程Cで得られた該細胞を、前述の細胞増殖用培養液中で接着培養することが好ましい。かかる接着培養には、セルカルチャーインサートを用いた培養も含まれる。
上記工程Dにおける「エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液」としては、エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液であって、工程Cで得られた細胞をその培養液で培養することにより、歯原性間葉細胞を製造し得る培養液である限り特に制限されない。
上記工程Dの細胞増殖用培養液におけるエナメルマトリックスタンパク質の濃度としては、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法において、ヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば、1〜600μg/mLの範囲内、好ましくは6〜240μg/mLの範囲内、より好ましくは12〜120μg/mLの範囲内を挙げることができる。
上記工程Dの細胞増殖用培養液における神経細胞増殖用成分の濃度としては、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法において、ヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば、Neurobasal(登録商標)Mediumを10〜35vol%の範囲内、好ましくは20〜30vol%の範囲内、Gem21 NeuroPlex(登録商標)を0.2〜1vol%の範囲内、好ましくは0.35〜0.7vol%の範囲内、N-2 Supplementを0.1〜0.35vol%の範囲内、好ましくは0.2〜0.3vol%の範囲内とすることができる。
上記工程Dの細胞増殖用培養液における分化誘導因子の濃度としては、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法において、ヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば、bFGFを、2.5〜10μg/mLの範囲内、好ましくは3.5〜6.5μg/mLの範囲内、EGFを2.5〜10μg/mLの範囲内、好ましくは3.5〜6.5μg/mLの範囲内、哺乳動物の血清(好ましくはFBS)を1〜4%wt/volの範囲内、好ましくは1.5〜3%wt/volの範囲内とすることができる。
上記工程Dにおける「エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液」の好ましい態様としては、神経細胞増殖用成分として、Neurobasal(登録商標)Medium(Life Technologies社製)、Gem21 neuroplex(登録商標)(Gemini Bio-Products社製)及びN-2 Supplement(Life Technologies社製)からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種)を含有し、分化誘導因子として、bFGF(好ましくはヒトbFGF)、EGF(好ましくはヒトEGF)及び哺乳動物の血清(好ましくはFBS)からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種)を含有し、エナメルマトリックスタンパク質を含有する細胞増殖用培養液を挙げることができ、さらに増殖因子としてインスリン及びL−アラニル−L−グルタミン(例えばGlutaMAX(登録商標))からなる群から選択される1種又は2種(好ましくは2種)を含有する細胞増殖用培養液をより好ましく挙げることができ、さらに抗生物質を含有する細胞増殖用培養液をさらに好ましく挙げることができる。
上記工程Dの培養の好ましい態様として、工程Cで得られた細胞を、ウェル上に配置したセルカルチャーインサート上で培養する方法を挙げることができる。セルカルチャーインサートは通常、筒状の形状をしており、その底面は、透過性のメンブレンで構成されている。そのメンブレンがウェル内の培養液に接するようにセルカルチャーインサートをウェル上に配置することにより、ウェル内の培養液と、セルカルチャーインサート内の培養液がメンブレンを通して緩やかに混合される。セルカルチャーインサート内に始めに添加する培養液としては、上記工程Cにおける「神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液」を好ましく挙げることができる。また、ウェル内に始めに添加する培養液としては、エナメルマトリックスタンパク質を含有する細胞増殖用培養液を好ましく挙げることができ、さらに、哺乳動物の血清(好ましくはFBS)及び/又は抗生物質(好ましくはペニシリンやストレプトマイシン)を含有する細胞増殖用培養液をより好ましく挙げることができる。ウェル内に始めに添加する培養液におけるエナメルマトリックスタンパク質(好ましくはエムドゲイン)の濃度としては、例えば、1〜600μg/mLの範囲内、好ましくは6〜240μg/mLの範囲内、より好ましくは12〜120μg/mLの範囲内を挙げることができる。ウェル内に始めに添加する培養液における細胞増殖用培養液としては、DMEM培養液を好ましく挙げることができる。
セルカルチャーインサート内に始めに添加する培養液と、ウェル内に始めに添加する培養液との使用比率としては、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法において、ヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、使用する前者の培養液と後者の培養液の体積比が、0.6:1.0〜1.0〜0.6の範囲内、好ましくは0.8:1.0〜1.0:0.8の範囲内、より好ましくは0.9:1.0〜1.0〜0.9の範囲内、特に好ましくは1.0:1.0であることが好適に挙げられる。
上記工程Dの培養期間としては、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法において、ヒト歯原性間葉細胞を製造することができる限り特に制限されないが、例えば4〜10日間の範囲内が挙げられ、好ましくは5〜8日間の範囲内が挙げられる。
本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法により得られた細胞が、ヒト歯原性間葉細胞であるかどうかは、例えば、その細胞において歯原性間葉特異的マーカーが発現しているかどうかを調べることにより、確認することができる。上記の歯原性間葉特異的マーカーとしては、象牙質シアロリンタンパク質(DSPP)を挙げることができる。細胞においてDSPPが発現しているかどうかは、市販されている抗DSPP抗体を用いた免疫染色法等により、容易に調べることができる。
本発明において「ヒト歯原性間葉細胞」とは、歯原性間葉特異的マーカーであるDSPPを発現する細胞を意味する。本発明における「ヒト歯原性上皮細胞」には、DSPPを発現することに加えて、多分化能を有する細胞が好ましく含まれる。かかる多分化能を有する細胞が分化することのできる細胞としては、間葉系の系統である骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞;及び、神経堤の系統である神経細胞、グリア細胞、平滑筋細胞;からなる群から選択される2種又は3種以上、好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上、さらに好ましくは6種の細胞を挙げることができる。なお、前述の6種の細胞への誘導方法は、公知の手法を用いることができる。
本発明のヒト歯原性上皮細胞の製造方法で製造したヒト歯原性上皮細胞や、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法で製造したヒト歯原性間葉細胞は、様々な用途に用いることができる。例えば、上記ヒト歯原性上皮細胞は、歯原性上皮細胞由来であるエナメル質の形成が不十分となる疾患(例えば、エナメル質形成不全症や、外胚葉異形成症候群)の治療に用いることができ、上記ヒト歯原性間葉細胞は、歯原性間葉細胞由来である象牙質、歯髄又はセメント質の形成が不十分となる疾患(例えば、象牙質形成不全症)の治療に用いることができる。これらの治療方法としては、ヒト歯原性上皮細胞又はヒト歯原性間葉細胞を疾患患者の疾患部位に移植する方法などを挙げることができる。また、前述のエナメル質、象牙質、歯髄又はセメント質の形成が不十分となる疾患の患者の細胞から樹立したiPS細胞から製造したヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞を解析することにより、それらの疾患のメカニズムを解明したり、それらの疾患の予防・治療薬の開発に繋がることが期待される。
さらに、前述した疾患とは別の疾患として、歯原性腫瘍も挙げられる。歯原性腫瘍は、成長過程である細胞群が後天的に過剰増殖や過剰制御を受けることにより生じるとされる。歯原性腫瘍のうち、歯原性上皮細胞に由来するものとしてはエナメル上皮腫が挙げられ、歯原性間葉細胞に由来するものとしてはセメント質腫が挙げられる。歯原性腫瘍のほとんどは良性であるが、中には悪性となるものもある。歯原性腫瘍の患者の細胞から樹立したiPS細胞から製造したヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞を解析することにより、歯原性腫瘍のメカニズムや、上皮間葉転換や、歯原性腫瘍の転移システムを解明したり、歯原性腫瘍の予防・治療薬の開発に繋がることが期待される。
また、本発明におけるヒト歯原性上皮細胞と、ヒト歯原性間葉細胞を共培養することにより、人工歯胚などの製造が実現することが期待される。かかる人工歯胚は、歯周組織を伴う歯の再生医療への応用が期待される。かかる共培養の方法としては、ヒト歯原性上皮細胞と、ヒト歯原性間葉細胞が共存する状態で、両細胞を培養する方法である限り特に制限されない。
かかる共培養の培養液としては、両細胞が増殖し得る限り特に制限されないが、DMEM培養液、DMEM/F12培養液、RPMI1640培養液等の細胞増殖用培養液が挙げられ、好ましくは、哺乳動物の血清(好ましくはFBS)、アスコルビン酸及びL−グルタミンからなる群から選択される1種又は2種以上の成分をさらに含有する培養液が挙げられ、これら3種の成分をさらに含有する培養液が挙げられる。かかる共培養の培養液中の哺乳動物の血清(好ましくはFBS)の濃度としては、5〜30%、好ましくは6〜20%、より好ましくは7〜15%、さらに好ましくは7〜13%、より好ましくは9〜11%が挙げられる。また、共培養の培養液中のアスコルビン酸の濃度としては、20〜500μg/mL、好ましくは30〜300μg/mL、より好ましくは50〜200μg/mL、さらに好ましくは65〜150μg/mL、より好ましくは80〜120μg/mL、さらに好ましくは90〜110μg/mLが挙げられる。また、共培養の培養液中のL−グルタミンの濃度としては、200μM〜20mM、好ましくは400μM〜10mM、より好ましくは600μM〜6mM、さらに好ましくは800μM〜5mM、より好ましくは1〜4mM、さらに好ましくは1.5〜2.5mM、より好ましくは1.8〜2.2mMが挙げられる。
共培養の期間としては、共培養の目的等に応じて適宜選択することができるが、例えば4日〜3週間、5日〜2週間などが挙げられる。
<本発明の他の態様>
本発明には、上記の工程A及びB、並びに、上記の工程C及びDをすべて含む、ヒト歯原性上皮細胞及びヒト歯原性間葉細胞の製造方法も包含される。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、ヒトiPS細胞(201B6)(京都大学山中教授より分与)の培養は、mTeSR1培養液(Stemcell Technologies社製)中で、マトリゲル(BD Biosciences社製)でコートした6ウェルプレート(Falcon社製)に接着させ、37℃、5%CO条件下で行った。また、上記ヒトiPS細胞の継代は、細胞分散液(コラゲナーゼIV、Sigma-Aldrich社製)を用いて4〜5日毎に行った。
1.歯原性上皮細胞(Odontogenic Epithelial Cell;OEC)の調製
1−1 方法
1−1−1 ヒトiPS細胞からヒト歯原性上皮細胞への分化誘導処理 ヒトiPS細胞が接着した6ウェルプレートからmTeSR1培養液を除き、PBSで細胞を洗浄した後、1μM レチノイン酸(Sigma-Aldrich社製)、25ng/mL BMP−4(R&D Systems社製)、及び、30μg/mL エムドゲイン(Biora社製のエナメルマトリックスデリバティブ)を含有させたKeratinocyte-SFM培養液[keratinocyte serum free medium、Life Technologies社製])を加え、3〜4日間、細胞を培養した(本発明の工程Aに相当)。次いで、培養液を除いた後、レチノイン酸及びBMP−4を含有させず、30μg/mL エムドゲイン(Biora社製のエナメルマトリックスデリバティブ)を含有させたKeratinocyte-SFM培養液を加え、さらに6〜7日間、細胞を培養した(本発明の工程Bに相当)。
以上のようにして、ヒトiPS細胞からヒト歯原性上皮細胞への分化誘導処理を合計10日間行った。なお、コントロール実験として、エムドゲイン非存在下でヒト歯原性上皮細胞へ分化誘導処理を試みた実験も行った。このコントロール実験は、このヒト歯原性上皮細胞への分化誘導処理において、エムドゲインを用いなかったこと以外は、前述の方法と同じ方法で行った。
1−1−2 歯原性上皮特異的マーカー等の発現解析
上記「1−1 ヒトiPS細胞からヒト歯原性上皮細胞への分化誘導処理」の項目に記載の方法にしたがって製造したヒト歯原性上皮細胞を、4%パラホルムアルデヒド存在下で20分間固定処理し、5.0% スキムミルク、0.4%(v/v) Trition X-100及び10μg/mL BlockingOne(ナカライテスク社製)を含有させたPBS中で1時間ブロッキング処理した後、2種類の歯原性上皮特異的マーカー(アメロゲニン、アメロブラスチン)に対する抗体(1次抗体)及び3種類の上皮特異的マーカー(p63、サイトケラチン18、及びE−カドヘリン)に対する抗体(1次抗体)の存在下、4℃で一晩1次抗体処理を行い、PBSで洗浄した後、かかる1次抗体に対する抗体(2次抗体)の存在下、室温で1時間2次抗体処理を行い、PBSで洗浄した後、細胞核を、1μg/mL Hoechst 33342(Sigma-Aldrich社製)で染色した。共焦点蛍光画像は、Zeiss LSM 710 laser scanning microscope(Carl Zeiss社製)又はKEYENCE BZ-9000(株式会社キーエンス製)を用いて取得した。なお、歯原性上皮特異的マーカー及び上皮特異的マーカーの検出に用いた1次抗体及び2次抗体を以下の表1に示す。
1−2 結果
上記「1−1−1 ヒトiPS細胞からヒト歯原性上皮細胞への分化誘導処理」の項目に記載の方法にしたがって製造したヒト歯原性上皮細胞を、ヒトiPS細胞からヒト歯原性上皮細胞への分化誘導を開始してから10日目に顕微鏡により観察したところ、上皮細胞の特徴の一つである敷石状に整列した形態が観察された(図1参照)。また、かかる細胞における1種類の歯原性上皮特異的マーカー(アメロゲニン)及び3種類の上皮特異的マーカー(p63、サイトケラチン18、及びE−カドヘリン)の発現を、免疫組織染色法を用いて解析したところ、エムドゲイン(エナメルマトリックスデリバティブ)非存在下でヒト歯原性上皮細胞へ分化誘導を試みた場合には、上皮特異的マーカーの発現は多少検出されたものの、歯原性上皮特異的マーカー(アメロゲニン)の発現は検出されなかったのに対して(図2A参照)、エムドゲイン(エナメルマトリックスデリバティブ)存在下でヒト歯原性上皮細胞へ分化誘導した場合には、上皮特異的マーカー及び歯原性上皮特異的マーカー(アメロゲニン)の発現が検出された(図2B参照)。この結果は、本発明のヒト歯原性上皮細胞の調製方法を用いると、ヒトiPS細胞からヒト歯原性上皮細胞を分化誘導できることを示すとともに、かかる分化誘導には、エナメルマトリックスデリバティブ等のエナメルマトリックスタンパク質が必要であることを示している。なお、同様の免疫組織染色法を、アメロゲニン以外のもう一つの歯原性上皮特異的マーカーであるアメロブラスチンについても行った。エムドゲイン(エナメルマトリックスデリバティブ)存在下でヒト歯原性上皮細胞へ分化誘導した場合には、アメロブラスチンの発現が検出された。歯原性上皮特異的マーカーであるアメロゲニンとアメロブラスチンの両方の発現が検出されたことから、得られた細胞がヒト歯原性上皮細胞であることが確認された。
2.ヒト歯原性間葉細胞(Odontogenic Mesenchymal Cell;OMC)の調製
2−1 方法
2−1−1 ヒトiPS細胞からヒト歯原性間葉細胞への分化誘導処理
ヒトiPS細胞が接着した6ウェルプレートからmTeSR1培養液を除き、PBSで細胞を洗浄した。次いで、2mg/mL コラゲナーゼIV(Sigma-Aldrich社製)を含有させたKnockOut DMEM培養液(Life Technologies社製)で、1時間30分、37℃、5%CO条件下にて、剥離処理した後、ヒトiPS細胞の細胞塊(スフェア)を回収した。この細胞塊を、マトリゲル未コートの6ウェルプレートに播種し、「神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液」(250mL DMEM/F12 with Glutamax[Life Technologies社製]、2.5mL 100X Glutamax[Life Technologies社製]、250mL Neurobasal培養液[Life Technologies社製]、5mL Gem21 NeuroPlex[Gemini. Bio. Products社製]、2.5mL N2サプリメント[Life Technologies社製]、10μg/mL ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子[hbFGF;R&D Systems社製]、10μg/mL ヒト上皮成長因子[hEGF;R&D Systems社製]、2.5mL ペニシリン/ストレプトマイシン、を含有させた培養液)中で4日間培養した(本発明の工程Cに相当)。かかる工程Cにより、ヒトiPS細胞を、ヒト神経堤細胞の前駆段階であるヒト神経上皮細胞へ分化誘導した(図3参照)。かかるヒト神経上皮細胞の細胞塊を回収し、「エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液」中でさらに6日間培養した(本発明の工程Dに相当)。かかる培養は、ウェルプレートに加えて、セルカルチャーインサート(コーニングインタナショナル社製又は日本ミリポア社製)を用いて行った。セルカルチャーインサートの底面は、透過性のメンブレンで構成されており、ウェルプレートのウェル内の培養液と、セルカルチャーインサート内の培養液は、そのメンブレンを通して互いに緩やかに混合される。かかる工程Dに相当する培養において、セルカルチャーインサート内には、前述の細胞塊と、前述の工程Cに相当する培養に用いた培養液とを入れ、ウェルプレート内には、エムドゲインを含有する培養液(20%FBS、1%ストレプトマイシン[すべて、Life Technologies社製]、及び30μg/mL エムドゲイン[Biora社製のエナメルマトリックスデリバティブ]を含有する500mL DMEM培養液[Life Technologies社製])を入れた。セルカルチャーインサート内の前述の培養液と、ウェルプレート内の前述の培養液は、体積比で1:1の量をそれぞれ用いた。このような工程Dにより、工程Cで得られた細胞を、ヒト歯原性間葉細胞へ分化誘導した(図4参照)。
以上のようにして、ヒトiPS細胞から、ヒト歯原性間葉細胞への分化誘導処理を合計10日間行った。なお、コントロール実験、としてエムドゲイン非存在下でヒト歯原性間葉細胞へ分化誘導処理を試みた実験も行った。このコントロール実験は、このヒト歯原性間葉細胞への分化誘導処理において、エムドゲインを用いなかったこと以外は、前述の方法と同じ方法で行った。
2−1−2 歯原性間葉特異的マーカーの発現解析
上記「1−1−2 歯原性上皮特異的マーカーの発現解析」の項目に記載の方法にしたがって、歯原性間葉特異的マーカー(象牙質シアロリンタンパク質;DSPP)に対する1次抗体として、抗DSPP抗体[Bioss 社製、bs-8557R、1/200 or Santa Cruz Biotechnology社製、sc-73632、1/200倍希釈]を用い、また、かかる1次抗体に対する2次抗体として、Alexa Fluor 488抗ラビット抗体[Invitrogen社製、A-21206、1/500倍希釈]又はAlexa Fluor 555抗マウス抗体[Invitrogen社製、A-21127 or 31570、1/500倍希釈]を用いた免疫組織染色を行った。また、抗ペリフェリン(Peripherin)抗体、抗β3チューブリン抗体、抗GFAP(Glial Fibrillary Acidic Protein)抗体及び抗平滑筋抗体(SMA)等を用いた免疫組織染色も行った。
2−2 結果
上記「2−1−1 ヒトiPS細胞からヒト歯原性間葉細胞への分化誘導処理」の項目に記載の方法にしたがって、ヒトiPS細胞から神経上皮細胞への分化誘導を行った(本発明の工程Cに相当)。かかる神経上皮細胞への分化誘導を開始してから4日目の細胞を顕微鏡で観察した結果を図3に示す。図3から、神経上皮細胞がスフィア(塊)を形成していることが分かる。次に、上記「2−1−1 ヒトiPS細胞からヒト歯原性間葉細胞への分化誘導処理」の項目に記載の方法にしたがって、前述の神経上皮細胞のスフィアからヒト歯原性間葉細胞への分化誘導を行った(本発明の工程Dに相当)。かかるヒト歯原性間葉細胞への分化誘導を開始してから6日目の細胞を顕微鏡で観察した結果を図4に示す。また、かかる6日目の細胞におけるDSPPの発現を、免疫組織染色法を用いて解析した結果を図5に示す。図5の結果から、エナメルマトリックスデリバティブ非存在下でヒト歯原性間葉細胞へ分化誘導を試みた場合には、歯原性間葉特異的マーカー(DSPP)の発現は検出されなかったのに対して(図5Aの右パネル参照)、エナメルマトリックスデリバティブ存在下でヒト歯原性間葉細胞へ分化誘導した場合には、歯原性間葉特異的マーカー(DSPP)の発現が検出された(図5Bの右パネル参照)。この結果は、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法を用いると、ヒトiPS細胞からヒト歯原性間葉細胞を分化誘導できることを示すとともに、かかる分化誘導には、エナメルマトリックスデリバティブ等のエナメルマトリックスタンパク質が必要であることを示している。また、本発明のヒト歯原性間葉細胞の製造方法により製造されたヒト歯原性間葉細胞は、間葉系リネージ(lineage)である骨細胞(図6A参照)、軟骨細胞(図6B参照)、脂肪細胞(図6C参照)、神経細胞(図6D参照)、グリア細胞(図6E参照)、及び平滑筋細胞(図6F参照)へ分化誘導が可能であることも確認された。かかる結果は、マウス歯原性間葉細胞は多分化能を有することが示された文献(Yamazaki, et al., Stem Cells 25; 78-87, 2007)の結果を支持するものである。
3.歯原性上皮細胞と歯原性間葉細胞の共培養
3−1 方法
ホタル由来発光タンパク質ルシフェラーゼとオワンクラゲ由来蛍光タンパク質(Venus)を融合させた蛍光発光融合タンパク質であるフォルティシモ・ルシフェラーゼ(ffLuc)(Biochem Biophys Res Commun. 419(2):188-193, 2012)を導入し得るレンチウイルスを用意した。ffLucは、高い発光活性を有しており、それを発現する細胞を高感度に検出することができる。
上記実施例2で調製した歯原性間葉細胞に、上記レンチウイルスを用いて、ffLucを導入し、かかる歯原性間葉細胞を可視化した(以下、「可視化歯原性間葉細胞」と表示する。)。上記実施例1で調製した歯原性上皮細胞と、前述の可視化歯原性間葉細胞とを混和し、培養ディッシュに播種して2次元共培養を行った。かかる共培養は、5%COを含む、湿気のある環境下で37℃にて1週間行い、培養液は、非特許文献1の培地を一部改良して、10% FBS(ウシ胎児血清)、100μg/mL アスコルビン酸、2mM L−グルタミンを添加したDMEM(Dulbecco’s modified eagle medium)を用いた。
3−2 結果
共培養開始から1週間経過後の可視化歯原性間葉細胞について、上記1−1−2や上記2−1−2と同様の免疫染色法にて解析した。可視化歯原性間葉細胞を抗ペリフェリン(Peripherin)抗体やHoechst 33342で染色した結果を図7に示し、抗E−カドヘリン抗体やHoechst 33342で染色した結果を図8に示す。
図7Aは、図7B(ffLucのVenus)の蛍光画像、図7C(抗ペリフェリン抗体)の蛍光画像、及び、図7D(Hoechst)の蛍光画像を重ね合わせた蛍光画像である。図7(特に図7C)から分かるように、1週間共培養した可視化歯原性間葉細胞は、末梢神経マーカーであるペリフェリン(Peripherin)を発現していた。歯原性間葉細胞の末梢神経への分化誘導には、上皮−間葉相互作用が必要であるとされていることを併せ考慮すると、前述の共培養によって、歯原性上皮細胞と可視化歯原性間葉細胞の間に、上皮−間葉相互作用が生じていることが示された。かかる上皮−間葉相互作用は、歯胚の発生に必要であるとされている。
図8Aは、図8B(ffLucのVenus)の蛍光画像、図8C(抗E−カドヘリン抗体)の蛍光画像、及び、図8D(Hoechst)の蛍光画像を重ね合わせた蛍光画像である。図8(特に図8C)から分かるように、1週間共培養した可視化歯原性間葉細胞のうち、一部の可視化歯原性間葉細胞は、上皮特異的マーカーであるE−カドヘリンを発現していた。このことは、一部の可視化歯原性間葉細胞において、間葉−上皮転換が生じていることが示された。
図7及び図8の結果から、本発明の製造方法により製造されたヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞は、共培養することによって、人工歯胚となる可能性が高い細胞であることが示された。すなわち、本発明におけるヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞は、歯周組織を伴う歯の再生医療への応用可能性の高い、実用上優れたヒト歯原性上皮細胞及びヒト歯原性間葉細胞であることが示された。
本発明によれば、胎生期の歯胚の細胞の採取や、フィーダー細胞の使用を必要とすることなく、臨床応用可能なヒト多能性幹細胞(例えばヒトES細胞やヒトiPS細胞)から、ヒト歯原性上皮細胞やヒト歯原性間葉細胞を効率的に製造することができる。

Claims (13)

  1. 以下の工程A及びBを有することを特徴とする、ヒト歯原性上皮細胞の製造方法;
    工程A:レチノイン酸、骨形成タンパク質−4及びエナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程;及び
    工程B:工程Aで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質を含有する角化細胞増殖用培養液で培養する工程。
  2. 工程Aの培養液におけるエナメルマトリックスタンパク質の濃度が1〜600μg/mLの範囲内であり、工程Bの培養液におけるエナメルマトリックスタンパク質の濃度が1〜600μg/mLの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法。
  3. エナメルマトリックスタンパク質が、エナメルマトリックスデリバティブであることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法。
  4. 工程Aの培養期間が2〜5日間の範囲内であり、工程Bの培養期間が4〜10日間の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法。
  5. ヒト多能性幹細胞がヒトiPS細胞であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法により製造されるヒト歯原性上皮細胞。
  7. 以下の工程C及びDを有することを特徴とする、ヒト歯原性間葉細胞の製造方法;
    工程C:神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で、ヒト多能性幹細胞を培養する工程;
    工程D:工程Cで得られた細胞を、エナメルマトリックスタンパク質、神経細胞増殖用成分及び分化誘導因子を含有する細胞増殖用培養液で培養する工程。
  8. 神経細胞増殖用成分が、Neurobasal(登録商標)Medium(Life Technologies社製)、Gem21 neuroplex(登録商標)(Gemini Bio-Products社製)及びN-2 Supplement(Life Technologies社製)からなる群から選択される1種又は2種以上であり、分化誘導因子が、線維芽細胞増殖因子−2(bFGF)、上皮成長因子(EGF)及び哺乳動物の血清からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項7に記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法。
  9. エナメルマトリックスタンパク質が、エナメルマトリックスデリバティブであることを特徴とする請求項7又は8に記載のヒト歯原性上皮細胞の製造方法。
  10. 工程C及び工程Dにおける細胞の培養が、浮遊培養であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法。
  11. 工程Cの培養期間が3〜5日間の範囲内であり、工程Dの培養期間が5〜11日間の範囲内であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法。
  12. ヒト多能性幹細胞がヒトiPS細胞であることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法。
  13. 請求項7〜12のいずれかに記載のヒト歯原性間葉細胞の製造方法により製造されるヒト歯原性間葉細胞。
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