JP2016190214A - 造水方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜を用いて海水やかん水などの脱塩を行うことにより淡水を得る場合、下廃水処理水や工業排水等を浄化して再利用水を得る場合などにおいて、塩素系酸化剤による膜劣化を引き起こさずに、かつ、膜に付着した有機物を効果的に酸化分解し、有機物ファウリングを効率的に抑制するための塩素系酸化剤の添加方法を提供する。
【解決手段】被処理水に間欠的に塩素系酸化剤を添加し、逆浸透膜またはナノろ過膜に流入する有効遊離塩素濃度を5mg/L以上とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、膜を用いて海水やかん水などの脱塩を行うことにより淡水を得たり、下廃水処理水や工業排水等を浄化して再利用水を得たりする造水方法に関するものである。
逆浸透膜やナノろ過膜を用いた造水システムは、海水淡水化、下廃水再利用を始め、多くの産業や水処理分野で応用され、他の分離方法と比較し、分離性能やエネルギー効率等の点で優位性が実証されてきている。一方、該造水システムでは、膜面での微生物増殖、あるいは膜面への生物膜(バイオフィルム)の付着、あるいは膜面への無機スケールの付着、あるいは膜面への有機物の付着、すなわちファウリングにより、膜差圧が急上昇し、膜の透過性、分離性が低下するという問題がある。
ファウリングにより、膜差圧が上昇したり、膜の透過性、分離性が低下したりした場合は、システムを停止させ、膜を、洗浄剤を用いて洗浄する(薬品洗浄)ことが一般的である。洗浄剤としては、クエン酸、水酸化ナトリウム、エチレンジアミン−4−酢酸(EDTA)などのキレート剤、界面活性剤などがあり、これらは単独あるいは組み合わせて使用される。しかし、薬品洗浄の頻度が多くなれば、システムの稼働率が下がり、その分、造水コストが高くなる。また薬品洗浄に要する労力も多くなり、実用上好ましくない。よってシステム運転中にファウリングを抑制可能な手段を設けることが好ましい。
上記で述べたように、ファウリングは膜面での微生物増殖、あるいは膜面への生物膜(バイオフィルム)の付着によるバイオファウリング、膜面への無機スケールの付着によるスケーリング、膜面への有機物の付着による有機物ファウリングに大きく分類される。
このうち、バイオファウリングについては、被処理水にバイオフィルムの増殖を抑制する薬剤(以下、「殺菌剤」という)を添加する技術が有効な手法として数多く提案されている。例えば、被処理水に2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたはこれらの塩およびこれらの混合物を有効成分とする殺菌剤を添加してバイオフィルムの増殖を抑制する方法(特許文献1)や、被処理水に殺菌剤として、酸や銀イオンを添加する方法などが開示されている(特許文献2、3)。
またスケーリングの場合は被処理水にヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)などのスケール防止剤を添加する方法がある。
一方、有機物ファウリングの場合については、特許文献4では、逆浸透膜を用いた造水システムにおいて、被処理水に間欠的に塩素系酸化剤を添加してファウリングを抑制する方法が開示されている。なお、その添加頻度については(式1)で定義される注入率が0.01〜0.95であるとしており、1日1回以上添加するとの旨、示されている。
(式1) I=(T/1440)×N
(Iは注入率[−]、Tは塩素系酸化剤注入時間[分]、Nは1日における注入回数を示す)
また特許文献5、6では、遊離塩素よりも酸化力の低いモノクロラミンなどの結合系塩素を添加してファウリングを抑制する方法が開示されている。
特開平8−229363号公報 特開平12−354744号公報 特開平10−463号公報 特開2000−42544号公報 特開平7−124559号公報 国際公開第2011/125764号
しかしながら、特許文献4の技術は塩素系酸化剤の添加により、被処理水中の微生物を滅菌し、逆浸透膜のバイオファウリングを抑制することを目的としており、被処理水中の該塩素系酸化剤の濃度は低い(1mg/L以下)。このような条件では膜に付着した有機物を酸化分解し、有機物ファウリングを低減することは難しい。また特許文献5、6の技術も特許文献4と同じくバイオファウリング抑制を目的に結合系塩素を添加しているが、酸化力が低いため、やはり膜に付着した有機物を酸化分解し、有機物ファウリングを低減することは難しい。
そこで本発明は、膜を用いて海水やかん水などの脱塩を行うことにより淡水を得る場合、下廃水処理水や工業排水等を浄化して再利用水を得る場合などにおいて、塩素系酸化剤による膜劣化を引き起こさずに、かつ、膜に付着した有機物を効果的に酸化分解し、有機物ファウリングを効率的に抑制するための塩素系酸化剤の添加方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明における造水方法は、以下の構成のいずれかからなる。
(1)被処理水を逆浸透膜またはナノろ過膜で処理することにより生産水を得る造水方法において、被処理水に間欠的に塩素系酸化剤を添加し、逆浸透膜またはナノろ過膜に流入する有効遊離塩素濃度を5mg/L以上とすることを特徴とする造水方法。
(2)間欠的に前記塩素系酸化剤を添加する頻度が1〜30日に1回であることを特徴とする(1)に記載の造水方法。
(3)間欠的に前記塩素系酸化剤を添加する頻度が1〜7日に1回であることを特徴とする(1)に記載の造水方法。
(4)逆浸透膜またはナノろ過膜に流入する被処理水の電気伝導度が10,000μS/cm以下の場合において、前記塩素系酸化剤添加時の被処理水のpHを8以上に調整することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の造水方法。
(5)被処理水中の全有機炭素濃度が3mg/L以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の造水方法。
(6)逆浸透膜またはナノろ過膜が塩素接触濃度時間として1000mg/L・hr以上の耐塩素性を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の造水方法。
(7)逆浸透膜またはナノろ過膜がセルロース系ポリマーによる膜であることを特徴とする(6)に記載の造水方法。
(8)逆浸透膜またはナノろ過膜が有機ケイ素ポリマーによる膜あるいは有機ケイ素ポリマーを被覆してなる膜であることを特徴とする(6)に記載の造水方法。
(9)逆浸透膜またはナノろ過膜が耐塩素性ポリアミド膜であることを特徴とする(6)に記載の造水方法。
本発明によれば、膜を用いて海水やかん水などの脱塩を行うことにより淡水を得る場合、下廃水処理水や工業排水等を浄化して再利用水を得る場合などにおいて、塩素系酸化剤による膜劣化を引き起こさずに、かつ、膜に付着した有機物を効果的に酸化分解し、有機物ファウリングを効率的に抑制することができる。
本発明の造水方法の一例を示す概略図である。 下水再利用プラントAの処理方法を示す概略図である。
以下、図1を用いて本発明について詳しく説明するが、本発明の内容はこの図の態様に限定されるものではない。
本発明の造水方法は、被処理水1を逆浸透膜またはナノろ過膜3によって処理し、透過水4と濃縮水5に分離する造水システムにおいて実施される。
被処理水1の原水としては、例えば海水、かん水、河川水、湖沼水、地下水、下水、下水二次処理水等が挙げられる。原水に濁質などの固形成分が含まれている場合は、直接逆浸透膜またはナノろ過膜3でろ過すると、膜表面に付着する固形成分が多くなり、差圧が急上昇し、運転不可能となるため、その場合は、あらかじめ原水を前処理する。最も良く用いられる前処理方法は原水に凝集剤を添加し、固形成分をフロック化させ、砂やアンスラサイト等でろ過する凝集砂ろ過法である。但し、この方法では原水変動の影響を受けやすく処理水質が不安定であるため、精密ろ過膜や限外ろ過膜で処理する膜前処理も採用することができる。また、原水が下水等の有機性廃水の場合は、廃水中に含まれる有機物を低減するため、活性汚泥処理を行った後、活性汚泥を分離するために固液分離を行う前処理を実施することもできる。固液分離の方法は、従来から用いられている沈殿池を用いた沈殿分離でも良く、処理水質の向上などを目的として、精密ろ過膜や限外ろ過膜などの分離膜を用いて固液分離する方法も採用することができる。
被処理水1は、高圧ポンプ2によって、ろ過に必要な圧力で逆浸透膜またはナノろ過膜3に供給され、透過水4と濃縮水5に分離される。供給配管の途中では、逆浸透膜またはナノろ過膜3における有機物ファウリングの進行を抑えるための塩素系酸化剤6が添加される。塩素系酸化剤6を添加する装置については、塩素系酸化剤の添加条件を制御するために、添加量や添加時間、添加頻度などがコントロールできるバルブやポンプを有する制御機構を備えていることが好ましい。
また逆浸透膜またはナノろ過膜3の上流には、薬品洗浄のために、洗浄剤7を導入する管路が設けられる。洗浄剤7を導入する地点は特に限定されるものではないが、洗浄剤7の種類によっては、高圧ポンプ2を腐食させるおそれがあるため、その下流が好ましい。また通常は、洗浄剤7は濃縮水5の配管の途中から導出され、循環される。
本発明ではかかる造水システムにおいて、被処理水1に間欠的に塩素系酸化剤6を添加し、該塩素系酸化剤6を逆浸透膜またはナノろ過膜3に流入させる運転において、逆浸透膜またはナノろ過膜3に流入する有効遊離塩素濃度を5mg/L以上とすることを特徴とする。これは特許文献4で示される従来の低濃度、高頻度の添加方法と比較し、総塩素接触濃度時間が同一であっても、高濃度、低頻度の添加方法の方が、有機物ファウリングによる膜の透水量低下を抑制できることが発明者らの検討により判明したことに基づくものである。その理由としては有効遊離塩素濃度が高い方が、酸化力が強く、膜に付着した有機物の除去力が強いためと考えられる。なお、有効遊離塩素濃度の上限については、塩素系酸化剤による膜劣化の懸念から30mg/L程度が好ましい。塩素系酸化剤の添加頻度については、被処理水1の水質、逆浸透膜またはナノろ過膜3の運転条件等に依存するが、少なすぎると有機物ファウリングの低減効果が小さくなる場合があり、逆に多すぎると塩素系酸化剤による膜劣化が起きてしまう場合があるため、1〜30日に1回が好ましく、更には1〜7日に1回が好ましい。また透過水4の流量の経時変化を見ながら、あるタイミング(例えば流量が5%下がったとき)に塩素系酸化剤を添加してもよい。1回の添加時間についても、少なすぎると有機物ファウリングの低減効果が小さくなる場合があり、逆に多すぎると塩素系酸化剤による膜劣化が起きてしまう場合があるため、5〜60分程度が好ましい。なお、塩素系酸化剤6を添加している期間に得られる透過水4は生産水の水質基準等に応じて、生産水として利用しても構わないし、放流しても構わない。有効遊離塩素濃度は例えばジエチル−p−フェニレンジアミン法(DPD法)で測定する。この方法は、試料にジエチル−p−フェニレンジアミンを加え、塩素との反応で生じる桃〜桃赤色を標準色と比較して測定する方法である。なお、逆浸透膜またはナノろ過膜3に流入する有効遊離塩素濃度を測定する際には、塩素系酸化剤6の添加点の下流にあるミキサー8で混合された後、そして高圧ポンプ2になるべく近い上流側で水を採取するのが一般的である。これは塩素系酸化剤6がきちんと混合されていること、できるだけ逆浸透膜またはナノろ過膜3に近いこと、及び、安全上の観点によるものである。
また被処理水1の電気伝導度が10,000μS/cm以下の場合において、塩素系酸化剤6を添加している期間には、逆浸透膜またはナノろ過膜3に流入する被処理水1のpHを8以上に調整することが好ましい。これはpHを8以上に調整することで有機物ファウリングによる膜の透水量低下を更に抑制できることが発明者らの検討により判明したことに基づくものである。塩素系酸化剤はpHによって、Cl(溶存塩素)、HOCl(非解離型次亜塩素酸)、OCl(解離型次亜塩素酸)とその存在形態を変化させ、それらの存在比率はpHに依存する。pH8以上ではこのうち、OClの比率が非常に高くなる。OClは膜に付着している有機物に吸着し、その負電荷により、膜と有機物の吸着相互作用を低減させ、有機物を膜から剥離させる効果を持つ。そのために、酸化力と剥離力を両方有するOClの比率が高くなるpH8以上において、有機物ファウリング抑制効果が高くなると考えられる。よって塩素系酸化剤の添加地点の下流側にpH調整薬品8を添加し、そのpHを制御するための手段があることが好ましい。pHの上限としては、10程度が好ましい。これはpHが10でOClの比率がほぼ100%となること、pHが10を超えるとスケール生成が起こりやすくなることによる。なお、被処理水1の電気伝導度が10,000μS/cmを超える場合は、pHを8以上に調整すると、スケールが生じやすくなるため、この方法は好ましくはない。なお、電気伝導度は電気伝導度計で測定するのが一般的であり、具体的には2つの電極を試料に浸し、交流電圧をかけて流れる電流の大小を測定することによって求める。また、pHはガラス電極法で測定するのが一般的である。この方法は、試料中にガラス電極と比較電極を入れ、両電極間に生じる電位差を測定することに基づくもので、pH計を用いてpHを求める方法である。
また被処理水1中の全有機炭素濃度が3mg/L以上と高い濃度の方が、本発明が効果的である。なぜなら、被処理水1中の有機物濃度が高ければ、有機物ファウリングが起こりやすく、本発明による有機物ファウリング抑制効果、ひいては、造水コスト低減の効果が大きくなる。全有機炭素濃度は例えば燃焼酸化−赤外線式分析法で測定することができる。この方法は、赤外線ガス分析計を用いて測定した全炭素量から別に求めた無機性炭素量を差し引いて、有機性炭素の量を算出するものである。まず、少量の試料を酸素(又は二酸化炭素を除去した空気)とともに高温(900〜950℃)の全炭素測定用酸化触媒充填管に送り込み、有機物質中の炭素および無機物(主として炭酸塩類)中の炭素を二酸化炭素とした後、その濃度を非分散型赤外線ガス分析計で測定して全炭素量を求める。次に、試料を有機物質が分解されない温度(約150℃)に保った無機性炭素測定用酸性触媒充填管に送り込み、生成した二酸化炭素を測定し、無機性炭素量を求め、全炭素の量から無機性炭素の量を差し引いて有機性炭素の量を算出する。
逆浸透膜またはナノろ過膜3は、被処理水1を飲料水、工業用水、都市用水などに利用できるように、塩濃度を下げることができるものであり、かつ、塩素接触濃度時間として1000mg/L・hr以上の耐塩素性を有することが好ましい。これは上記添加方法に従って運転を行った場合に塩素系酸化剤による膜劣化を引き起こさないようにするためである。このような条件を満たす逆浸透膜またはナノろ過膜として、例えばセルロース系ポリマーによる膜、有機ケイ素ポリマーによる膜あるいは有機ケイ素ポリマーを被覆してなる膜、耐塩素性ポリアミド膜が挙げられる。セルロース系ポリマーによる膜としては、例えば耐塩素性を有する酢酸セルロースポリマーにて形成された膜がある。有機ケイ素ポリマーによる膜としては、例えば特開2012−254449号公報に開示されているような、−Si−X−Si−結合を有する無機有機ハイブリッド膜(上記Xは、一つ以上の水素が置換されていてもよい飽和又は不飽和アルキル鎖を表す)などがある。有機ケイ素ポリマーを被覆してなる膜とは、ポリアミド膜などに耐塩素性を有する有機ケイ素ポリマーをコーティングしたものであり、前記ポリマーとして例えば、化合物(A)の有する加水分解性基の縮合、および化合物(A)と少なくとも1種以上の化合物(B)との重合により形成される重合物を含有するポリマーが挙げられる。ここで化合物(A)はケイ素原子と、前記ケイ素原子に直接結合したエチレン性不飽和基を有する反応性基と、前記ケイ素原子に直接結合した加水分解性基と、を有するケイ素化合物、化合物(B)は1個以上の親水性基および1個以上のエチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物である。耐塩素性ポリアミド膜は各種改良により、酸化されにくいアミド構造にしたものであり、例えば特開2005−103517号公報に開示されているような、多官能アミン成分と多官能酸成分とを縮合反応させて得られるポリアミド系樹脂を含有している層が2層以上の多層構造をとっている膜、特開昭63−137704号公報に開示されているような、酸成分とジアミン成分とを共重合成分とする芳香族コポリアミド膜であって、該ジアミン成分が下記(I)で表される第1ジアミン成分と下記(II)で表される第2ジアミン成分からなり、かつそのモル比が95/5〜50/50の割合である膜、国際公開第2010/096563号公報に開示されているような、少なくとも1個以上のフルオロアルコール基を有するポリアミド膜などがある。
Figure 2016190214
およびRはそれぞれ独立して水素原子、または炭素原子数1〜12の炭化水素基、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、または活性水素を持たない1価の有機性基、n、nはそれぞれ独立して0または1〜3の自然数である。
Figure 2016190214
R5およびR6はそれぞれ独立して水素原子、または炭素原子数1〜12の炭化水素基、Mは水素原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または第4級アンモニウム塩基、Arは炭素原子数6〜15でありかつ(n+2)価の芳香族炭化水素基、nは1または2である。
なお塩素系酸化剤は、海水を電解塩素発生装置で電気分解して得られる塩素(被処理水1が海水の場合)、次亜塩素酸ナトリウム溶液、次亜塩素酸カルシウム溶液などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例の態様のみに限定されるものではない。
(比較例1)
下水再利用プラントAで、図2に示すような処理方法で生産水を造水した。まず下水処理水9(全有機炭素濃度:約10mg/L)を取水し、下水処理水貯槽10に貯めた。次に下水処理水9を供給ポンプ11で分離膜12(ポリフッ化ビニリデン製中空糸限外ろ過膜(膜面積:72m))に供給し、ろ過を行うことにより、下水処理水9の前処理を行った。ろ過流束は2m/dで、30分に1回、逆圧洗浄と空気洗浄を行った。前処理された下水処理水はいったん逆浸透膜供給水貯槽13に貯めた後、送水ポンプ14で高圧ポンプ15に送り、高圧ポンプ15で加圧することにより逆浸透膜16でろ過し、透過水17と濃縮水18を得た。逆浸透膜16は膜材質が酢酸セルロース、脱塩率が99.75%、膜面積が37.3mの逆浸透膜であった。運転は膜ろ過流束18L/m/hr、回収率75%で行った。なお、脱塩率は(1−透過水16の電気伝導度/((供給水21の電気伝導度+濃縮水18の電気伝導度)/2))×100で算出される。運転に際しては有機物ファウリングの抑制を目的に送水ポンプ14と高圧ポンプ15の間で次亜塩素酸ナトリウム19を、4.8時間に1回、逆浸透膜16に流入する有効遊離塩素濃度が1mg/Lになるように添加した。1回あたりの添加時間は30分とした。この条件で1ヶ月間運転を行ったところ、有機物ファウリングにより、透過水17の流量が運転初期と比較して40%低下し、運転続行困難となった。
(実施例1)
次に逆浸透膜を交換した後、運転を再開したが、今度は次亜塩素酸ナトリウム19を、24時間に1回、逆浸透膜16に流入する有効遊離塩素濃度が5mg/Lになるように添加した。1回あたりの添加時間は30分とした。なお、総塩素接触濃度時間は比較例1の条件と同一である。この条件で1ヶ月間運転を行ったところ、透過水17の流量の低下率は4%と、比較例1の状況から大幅な改善が見られた。その後、次亜塩素酸ナトリウム19の添加条件を更に変更し、48時間に1回、逆浸透膜16に流入する有効遊離塩素濃度が10mg/Lになるように添加した。1回あたりの添加時間は同じく30分である。この条件で1ヶ月間運転を行ったところ、透過水17の流量の低下は見られず、更なる改善が見られた。このまま約1年間、運転を継続したが、透過水の流量低下はほとんど起こらなかった。また脱塩率も運転初期と変わらず、塩素による膜劣化も見られなかった。
(実施例2)
その後も同じ条件で運転を行っていたが、ある時点から、下水処理場の生物処理性能が悪化し、下水処理水9の全有機炭素濃度が約30mg/Lに上昇した。これに伴い、1ヶ月間の運転での透過水17の流量が20%低下した。そこで、次亜塩素酸ナトリウム19の添加地点の下流側で苛性ソーダ20を添加し、塩素添加時のpHを8になるように制御して(通常のpHは約7)、逆浸透膜16に流入させるようにした。これ以外は全て同じ条件で1ヶ月間の運転を行ったところ、透過水17の流量の低下率は3%と、大幅な改善が見られた。その後、苛性ソーダ20の添加条件を変更し、塩素添加時のpHを9になるように制御して、逆浸透膜16に流入させるようにした。この条件で1ヶ月間の運転を行ったところ、透過水17の流量の低下は見られず、更に改善が見られた。また脱塩率も運転初期と変わらず、塩素による膜劣化も見られなかった。
本発明は、膜を用いて海水やかん水などの脱塩を行うことにより淡水を得たり、下廃水処理水や工業排水等を浄化して再利用水を得たりする際に、好適に用いることができる。
1 被処理水
2 高圧ポンプ
3 逆浸透膜またはナノろ過膜
4 透過水
5 濃縮水
6 塩素系酸化剤
7 洗浄剤
8 ミキサー
9 下水処理水
10 下水処理水貯槽
11 供給ポンプ
12 分離膜
13 半透膜供給水貯槽
14 送水ポンプ
15 高圧ポンプ
16 逆浸透膜
17 透過水
18 濃縮水
19 次亜塩素酸ナトリウム
20 苛性ソーダ
21 供給水
22 ミキサー

Claims (9)

  1. 被処理水を逆浸透膜またはナノろ過膜で処理することにより生産水を得る造水方法において、被処理水に間欠的に塩素系酸化剤を添加し、逆浸透膜またはナノろ過膜に流入する有効遊離塩素濃度を5mg/L以上とすることを特徴とする造水方法。
  2. 間欠的に前記塩素系酸化剤を添加する頻度が1〜30日に1回であることを特徴とする請求項1に記載の造水方法。
  3. 間欠的に前記塩素系酸化剤を添加する頻度が1〜7日に1回であることを特徴とする請求項1に記載の造水方法。
  4. 逆浸透膜またはナノろ過膜に流入する被処理水の電気伝導度が10,000μS/cm以下の場合において、前記塩素系酸化剤添加時の被処理水のpHを8以上に調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の造水方法。
  5. 被処理水中の全有機炭素濃度が3mg/L以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の造水方法。
  6. 逆浸透膜またはナノろ過膜が塩素接触濃度時間として1000mg/L・hr以上の耐塩素性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の造水方法。
  7. 逆浸透膜またはナノろ過膜がセルロース系ポリマーによる膜であることを特徴とする請求項6に記載の造水方法。
  8. 逆浸透膜またはナノろ過膜が有機ケイ素ポリマーによる膜あるいは有機ケイ素ポリマーを被覆してなる膜であることを特徴とする請求項6に記載の造水方法。
  9. 逆浸透膜またはナノろ過膜が耐塩素性ポリアミド膜であることを特徴とする請求項6に記載の造水方法。
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