JP2016188341A - ポリカーボネート系樹脂発泡粒子及びポリカーボネート系樹脂発泡成形体 - Google Patents

ポリカーボネート系樹脂発泡粒子及びポリカーボネート系樹脂発泡成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】発泡性、成形性及び外観の良好なポリカーボネート系樹脂発泡成形体を与え得るポリカーボネート系樹脂発泡粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】基材樹脂としてビスフェノールA由来成分を含むポリカーボネート系樹脂を含む発泡粒子であって、前記発泡粒子は、キャリアーガスとしてヘリウムを使用し、キャリアーガス流量を34mL/分とする条件下、反応試薬としての水酸化トリメチルアンモニウムにより前記ポリカーボネート系樹脂に含まれるエステル結合を加水分解させてメチルエーテル化させる反応を利用した反応熱分解GC/MS法により測定することで得られたリテンションタイムを横軸とするGC/MSチャートにおいて、210〜230の分子量に由来するピークを示し、前記210〜230の分子量に由来するピークが、前記ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認されることを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡粒子により上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリカーボネート系樹脂発泡粒子及びポリカーボネート系樹脂発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、発泡性、成形性及び外観の良好なポリカーボネート系樹脂発泡成形体、及びこのポリカーボネート系樹脂発泡成形体を与え得るポリカーボネート系樹脂発泡粒子に関する。
発泡成形体は、軽いことに加え、加工性及び形状保持性がよく、比較的強度も強いため、食品トレーや自動車用部材を始め、建材、土木資材、照明器具等のさまざまな分野で使用されている。特に耐熱性が要求されない場合にはポリスチレン系樹脂製の発泡成形体が用いられ、緩衝特性、回復性、柔軟性等が必要な場合にはポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂製の発泡成形体が用いられる傾向にある。
これらポリスチレン系樹脂及びオレフィン系樹脂よりも一般的に耐熱性が高い樹脂として、ポリカーボネート系樹脂がある。これは、乾燥地帯や熱帯地帯等の過酷な気候の場所でも利用可能な樹脂素材である。このポリカーボネート系樹脂は、耐熱性に優れているだけでなく、耐水性、電気特性、機械的強度、耐老化性及び耐薬品性にも優れている。そのため、ポリカーボネート系樹脂は、これまで建造物の内装材として用いられてきたが、近年その優れた特性を活用した自動車部材、包装材、各種容器等への用途展開も期待されている。
ところで、ポリカーボネート系樹脂の発泡体の製法としては、例えば特許文献1(特開平9−076332号公報)のような押出発泡法がよく知られている。しかしながら、この方法で得られる発泡体は、ボード状であるため、単純な建材を得ることしかできなかった。従って、押出発泡法では、自動車部材のような複雑な形状をした発泡体を得ることは困難であった。
複雑な成形を可能にする方法としては、発泡粒子を金型内で発泡及び融着させる型内発泡成型法が知られている。この方法は、所望の形状に対応する空間を有する金型を用意し、その空間内に発泡粒子を充填し、加熱により発泡粒子を発泡及び融着させることで、複雑な形状を有する発泡成形体を得ることができる。ポリカーボネート系樹脂からなる発泡粒子から型内発泡成型法により発泡成形体を得る方法が、例えば、特許文献2(特開平6−100724号公報)、特許文献3(特開平11−287277号公報)、特許文献4(国際公開WO2011/019057号)に提案されている。
特開平9−076332号公報 特開平6−100724号公報 特開平11−287277号公報 国際公開WO2011/019057号
しかしながら、特許文献2、3及び4では、高発泡化させることが困難であることや成形性が劣ると共に、発泡成形体の外観が悪いという課題があった。
本発明の発明者等は、上記課題を鑑み、使用するポリカーボネート系樹脂について検討した結果、反応熱分解GC/MS法により測定することで得られたGC/MSチャートにおいて、特定の位置に210〜230の分子量に由来するピークを有するポリカーボネート系樹脂を使用すれば、発泡性、成形性及び外観の良好なポリカーボネート系樹脂発泡成形体、及びこのポリカーボネート系樹脂発泡成形体を与え得るポリカーボネート系樹脂発泡粒子を提供可能であることを意外にも見い出し本発明に至った。
かくして本発明によれば、基材樹脂としてビスフェノールA由来成分を含むポリカーボネート系樹脂を含む発泡粒子であって、
前記発泡粒子は、キャリアーガスとしてヘリウムを使用し、キャリアーガス流量を34mL/分とする条件下、反応試薬としての水酸化トリメチルアンモニウムにより前記ポリカーボネート系樹脂に含まれるエステル結合を加水分解させてメチルエーテル化させる反応を利用した反応熱分解GC/MS法により測定することで得られたリテンションタイムを横軸とするGC/MSチャートにおいて、210〜230の分子量に由来するピークを示し、
前記210〜230の分子量に由来するピークが、前記ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認されることを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡粒子が提供される。
また、本発明によれば、複数の発泡粒子から構成される発泡成形体であって、
前記発泡粒子が、基材樹脂としてビスフェノールA由来成分を含むポリカーボネート系樹脂を含み、
前記発泡成形体は、キャリアーガスとしてヘリウムを使用し、キャリアーガス流量を34mL/分とする条件下、反応試薬としての水酸化トリメチルアンモニウムにより前記ポリカーボネート系樹脂に含まれるエステル結合を加水分解させてメチルエーテル化させる反応を利用した反応熱分解GC/MS法により測定することで得られたリテンションタイムを横軸とするGC/MSチャートにおいて、210〜230の分子量に由来するピークを示し、
前記210〜230の分子量に由来するピークが、前記ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認されることを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡成形体が提供される。
本発明によれば、発泡性、成形性及び外観の良好なポリカーボネート系樹脂発泡成形体、及びこのポリカーボネート系樹脂発泡成形体を与え得るポリカーボネート系樹脂発泡粒子を提供できる。
以下のいずれかの場合、発泡性、成形性及び外観のより良好なポリカーボネート系樹脂発泡成形体、及びこのポリカーボネート系樹脂発泡成形体を与え得るポリカーボネート系樹脂発泡粒子を提供できる。
(1)210〜230の分子量に由来するピークが、ポリカーボネート系樹脂を構成する末端部分に由来する。
(2)ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークと210〜230の分子量に由来するピークとが、1:0.01〜0.07の面積比を有する。
(3)発泡粒子が、0.08g/cm3以下の嵩密度を有する。
(4)発泡成形体が、0.08g/cm3以下の密度を有する。
実施例1の発泡粒子を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果を示すグラフである。 実施例2の発泡粒子を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果を示すグラフである。
(ポリカーボネート系樹脂発泡粒子)
ポリカーボネート系樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう)は、基材樹脂としてビスフェノールA由来成分を含むポリカーボネート系樹脂を含んでいる。
[210〜230の分子量に由来するピーク]
発泡粒子は、GC/MSチャートにおいて、210〜230の分子量に由来するピークを示す。このピークは、ポリカーボネート系樹脂を構成するビスフェノールA由来成分を示す最大ピーク(以下、最大ピークと称する)のリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認される。ここで、GC/MSチャートは、キャリアーガスとしてヘリウムを使用し、キャリアーガス流量を34mL/分とする条件下、反応試薬としての水酸化トリメチルアンモニウムによりポリカーボネート系樹脂に含まれるエステル結合を加水分解させてメチルエーテル化させる反応を利用した反応熱分解GC/MS法により測定することで得られる。
210〜230の分子量に由来するピークが、最大ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認されることで、驚くべきことに発明者等は、成形性及び外観の良好なポリカーボネート系樹脂発泡成形体(以下、単に発泡成形体ともいう)を与え得る発泡粒子を提供できることを見い出している。成形性及び外観の良好な発泡成形体を与え得る理由について、発明者等は次のように推測している。
即ち、上記210〜230の分子量に由来するピークはポリカーボネート系樹脂の特有の構造を示している。このピークに対応する特有の構造を有するポリカーボネート系樹脂が、実施例において、成形性及び外観の良好な発泡成形体を与えていることを発明者等は確認している。このピークは、ポリカーボネート系樹脂の末端構造に起因している。末端構造がポリカーボネート系樹脂を構成する高分子鎖を絡み合わさせて、複数の高分子鎖からなる隙間を備えたポリカーボネート系樹脂となる。この隙間は、発泡時に成形性及び外観の良好な発泡成形体を与える発泡粒子となるように、発泡剤の保持性を向上させ及び高分子鎖を延伸させること、及び発泡剤の逸散性に寄与する。
なお、発明者等は、上記210〜230の分子量に由来するピークがポリカーボネート系樹脂を構成する末端部分と推察し、特に2−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール又は4−t−ブチル−2−フェニルフェノールに由来すると推測している。
得られるGC/MSチャートに由来するMSスペクトルにおいて、ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークと210〜230の分子量に由来するピークとが、1:0.01〜0.07の面積比を有することが好ましい。これらのピーク面積比は、末端数と主鎖骨格の繰り返し単位の数に起因するものであり、ポリマーの動きやすさや硬さ等に影響する値である。210〜230の分子量に由来するピークのピーク面積比が0.01未満の場合、ポリマー鎖が長いことにより発泡時にポリマーの動きが緩慢となることから、良好に発泡できないことがある。また、210〜230の分子量に由来するピークのピーク面積比が0.07より大きい場合、ポリマー鎖が短いことにより発泡剤の膨張に気泡が耐えられなくなり、発泡しても気泡がすぐに収縮してしまうということから、発泡が良好にできないことがある。210〜230の分子量に由来するピークの面積比の下限は、0.015であることがより好ましく、0.02であることが更に好ましく、0.03であることが特に好ましい。210〜230の分子量に由来するピークの面積比の上限は、0.06であることがより好ましい。
[ポリカーボネート系樹脂]
ポリカーボネート系樹脂は、炭酸とグリコール又は2価のフェノールとのポリエステル構造を有することが好ましい。耐熱性をより一層高める観点からは、ポリカーボネート系樹脂は、芳香族骨格を有することが好ましい。ポリカーボネート系樹脂の具体例としては、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン等のビスフェノールから誘導されるポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)から誘導される成分を基本骨格とし、2−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール又は4−t−ブチル−2−フェニルフェノールから誘導される成分を末端部分とする樹脂が好ましい。
ポリカーボネート樹脂としては、直鎖状ポリカーボネート樹脂及び分岐状ポリカーボネート樹脂等が挙げられ、これら両者がブレンドされていてもよい。
ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、アクリル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ABS系樹脂、ポリスチレン系樹脂、及びポリフェニレンオキサイド系樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート系樹脂には、ポリカーボネート樹脂を50重量%以上含むことが好ましい。
また、ポリカーボネート系樹脂は1〜20g/10分のMFRを有していることが好ましい。この範囲の樹脂は発泡に適しており、より高発泡化させやすい。より好ましいMFRの範囲は、2〜15g/10分である。
[発泡粒子の形状]
発泡粒子の形状は特に限定されない。例えば、球状、円柱状等が挙げられる。この内、できるだけ球状に近いことが好ましい。即ち、発泡粒子の短径と長径との比ができるだけ1に近いことが好ましい。
発泡粒子は、種々の嵩密度をとり得る。嵩密度は、0.4g/cm3以下であることが好ましい。より好ましくは0.12〜0.010g/cm3であり、更に好ましくは0.08〜0.012g/cm3である。
発泡粒子は、1〜20mmの平均粒子径を有していることが好ましい。
[発泡粒子の製造方法]
発泡粒子は、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得、発泡性粒子を発泡させることにより得ることができる。
(1)発泡性粒子の製造
発泡性粒子は、ポリカーボネート系樹脂製の樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。
樹脂粒子は、公知の方法により得ることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂を、必要に応じて他の添加剤と共に、押出機中で溶融混練して押出すことでストランドを得、得られたストランドを、空気中でカット、水中でカット、加熱しつつカットすることで、造粒する方法が挙げられる。樹脂粒子には、市販の樹脂粒子を使用してもよい。樹脂粒子には、必要に応じて、樹脂以外に他の添加剤が含まれていてもよい。他の添加剤としては、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、充填剤、着色剤、耐候剤、老化防止剤、滑剤、防曇剤、香料等が挙げられる。
次に、樹脂粒子に含浸される発泡剤としては、既知の揮発性発泡剤や無機発泡剤を使用できる。揮発性発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素や、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族アルコール等が挙げられる。無機発泡剤としては、炭酸ガス、窒素ガス、エアー(空気)等が挙げられる。これら発泡剤は2種以上併用してもよい。これら発泡剤の内、無機発泡剤が好ましく、炭酸ガスがより好ましい。
発泡剤の含有量(含浸量)は、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して、3〜15重量部であることが好ましい。発泡剤の含有量が3重量部未満であると、発泡力が低くなり、良好に発泡させ難いことがある。含有量が15重量部を超えると、可塑化効果が大きくなり、発泡時に収縮が起こりやすく、生産性が悪くなると共に、安定して所望の発泡倍数を得難くなることがある。より好ましい発泡剤の含有量は、4〜12重量部である。
含浸方法としては、樹脂粒子を水系に分散させ撹拌させながら発泡剤を圧入することで含浸させる湿式含浸法や、密閉可能な容器に樹脂粒子を投入し、発泡剤を圧入して含浸させる実質的に水を使用しない乾式含浸法(気相含浸法)等が挙げられる。特に水を使用せずに含浸できる乾式含浸法が好ましい。樹脂粒子に発泡剤を含浸させる際の含浸圧、含浸時間及び含浸温度は特に限定されない。
含浸を効率的に行い、より一層良好な発泡粒子及び発泡成形体を得る観点からは、含浸圧は1〜4.5MPaであることが好ましい。
含浸時間は、0.5〜200時間以下であることが好ましい。0.5時間未満の場合、発泡剤の樹脂粒子への含浸量が低下するため、十分な発泡力が得られ難いことがある。200時間より長い場合、生産性が低下することがある。より好ましい含浸時間は、1〜100時間である。
含浸温度は、0〜60℃であることが好ましい。0℃未満の場合、所望の時間内に十分な含浸量を確保できないため十分な発泡力(1次発泡力)が得られ難いことがある。60℃より高い場合、生産性が悪くなることがある。より好ましい含浸温度は、5〜50℃である。
(2)発泡粒子の製造
発泡性粒子を発泡させて発泡粒子を得る方法としては、発泡性粒子をスチーム(水蒸気)等により加熱して発泡させる方法が好適に使用される。
発泡時の発泡機には密閉耐圧の発泡容器を使用することが好ましい。また、スチームの圧力は0.2〜0.5MPaであることが好ましく、0.25〜0.45MPaであることがより好ましい。発泡時間は所望の発泡倍数を得るのに必要な時間であればよい。好ましい発泡時間は、5〜180秒である。180秒を超えると発泡粒子の収縮が始まることがあり、そのような発泡粒子からは良好な物性の発泡成形体が得られないことがある。
(発泡成形体)
発泡成形体は、複数の発泡粒子から構成され、発泡粒子が、基材樹脂としてポリカーボネート系樹脂を含んでいる。
[210〜230の分子量に由来するピーク]
発泡成形体は、リテンションタイムを横軸とするGC/MSチャートにおいて、210〜230の分子量に由来するピークを示す。このピークは最大ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認される。確認法は、上記発泡粒子の確認法と同じである。
上記発泡粒子と同様の理由から、得られるGC/MSチャートに由来するMSスペクトルにおいて、ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークと210〜230の分子量に由来するピークとが、1:0.01〜0.07の面積比を有することが好ましい。210〜230の分子量に由来するピークの面積比の下限は、0.015であることがより好ましく、0.02であることが更に好ましく、0.03であることが特に好ましい。210〜230の分子量に由来するピークの面積比の上限は、0.06であることがより好ましい。
また、発泡成形体は、通常、上記発泡粒子から製造できる。
[発泡成形体の形状]
発泡成形体は、種々の密度をとり得る。密度は、0.4g/cm3以下であることが好ましい。より好ましくは、0.12〜0.010g/cm3であり、更に好ましくは0.08〜0.012g/cm3である。
発泡成形体は、特に限定されず、用途に応じて種々の形状をとり得る。例えば、発泡成形体は、建材(土木関係、住宅関係等)、自動車構造部材、風車等の構造部材、梱包材、複合部材としてのFRPの芯材等の用途に応じて種々の形状をとり得る。
[発泡成形体の製造方法]
発泡成形体は、例えば、上記発泡粒子に内圧を付与し、次いで発泡粒子を成形工程に付すことで得ることができる。
発泡成形体を作製する前に、発泡粒子内に発泡剤を含浸させ発泡力(2次発泡力)を付与することが好ましい。ここで使用する発泡剤には、発泡粒子製造時の発泡剤を使用できる。その中でも、無機発泡剤を使用することが好ましい。特に、窒素ガス、エアー及び炭酸ガスから1つを使用すること又は2つ以上を併用することが好ましい。
内圧を付与するための圧力は、発泡粒子がつぶれてしまわない程度の圧力でかつ発泡力を付与できる範囲であることが望ましい。そのような圧力は、0.1〜4MPaであることが好ましく、0.3〜3MPaであることがより好ましい。
内圧付与した発泡粒子を、発泡成形機の成形金型内に形成された成形空間に供給した後、加熱媒体を導入することで、所望の発泡成形体に型内成形できる。発泡成形機としては、ポリスチレン系樹脂製の発泡粒子から発泡成形体を製造する際に用いられるEPS成形機やポリプロピレン系樹脂製の発泡粒子から発泡成形体を製造する際に用いられる高圧仕様の成形機等を用いることができる。加熱媒体は、短時間に高エネルギーを与えうる加熱媒体が望まれるから、そのような加熱媒体としては水蒸気が好適である。
水蒸気の圧力は、0.2〜0.5MPaであることが好ましい。また、加熱時間は、10〜90秒であることが好ましく、20〜80秒であることがより好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず実施例における各種物性の測定法を下記する。
[反応熱分解GC/MS法による測定]
発泡粒子又は発泡成形体から試料0.05〜0.3mgを採取し、熱分解温度445℃のパイロホイル中で秤量する。試料に水酸化テトラメチルアンモニウム5水和物(TMAH、反応試薬)を20重量%含むメタノール溶液5μLを滴下した後、乾燥させてから試料をパイロホイルで包みこむことで熱分解用試料を作製する。
熱分解用試料を、測定装置としてのキューリーポイントパイロライザーJHP−5型(日本分析工業社製)及びガスクロマトグラフ質量分析計JMS−AX505H(日本電子社製:GC(HP−5890II)による下記測定条件にて熱分解測定に付すことでGC/MSチャート(トータルイオンクロマトグラム=TIC)を得る。GC/MSチャートの横軸はリテンションタイム(単位:分)、縦軸は強度(アバンダンス)を示す。
カラム:ZB−5(0.25μm×0.25mmφ×30m:phenomenex社製)
測定条件:パイロホイル(445℃で5秒間加熱)、オーブン温度(280℃)、ニードル温度(250℃)、カラム温度(50℃(3分)→10℃/分→280℃→40℃/分→320℃(3分))
測定時間(30min)、キャリアーガス(He)、He流量(34mL/分)、注入口温度(300℃)、SEP温度(280℃)、RSV温度(80℃)、IONIZAION CUR(100μA)
CD VOLTAGE(−10kV)
得られたGC/MSチャートから、最大強度ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認される電子衝撃イオン化(EI)法によるフラグメントイオン分子量で一番強度の大きい分子量が210〜230であるピークを確認する。
フラグメントイオン分子量の確認はマススペクトルにて行い、最大強度ピークのリテンションタイムを基準として5分以内の範囲に確認できるピークに関して、マススペクトルを出現させてフラグメントイオン分子量を確認する。また、最大強度ピークはビスフェノールAメチル化成分であることをフラグメントイオンより確認する。
また、得られたマススペクトルを備え付けられているライブラリを用いてサーチ検索をかけることで構造を同定することが可能となる。例えば、NIST(質量スペクトルデータベース)等のライブラリが挙げられる。
得られたGC/MSチャートから、最大強度ピーク及び分子量210〜230に由来するピークそれぞれのピーク面積(TICピーク面積)を求める。得られたピーク面積から下記式を用いてピーク面積比を算出する。
ピーク面積比=(分子量210〜230に由来するピーク面積)/(ビスフェノールAメチル化由来成分のピーク面積)
[MFRの測定]
メルトフローレイト(MFR)は、東洋精機製作所社製「セミオートメルトインデクサー2A」を用いて測定し、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法に記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法に準拠して測定される。具体的には、測定条件は、試料3〜8g、予熱270秒、ロードホールド30秒、試験温度300℃、試験荷重11.77N、ピストン移動距離(インターバル)25mmとする。試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトフローレイト(g/10分)の値とする。なお、測定試料は、真空乾燥機にて120℃で、100kPaの減圧下、5時間の条件で乾燥をしたものを測定で用いる。
[平均粒子径の測定]
平均粒子径とはD50で表現される値である。
具体的には、ロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き26.5mm、22.4mm、19.0mm、16.0mm、13.2mm、11.20mm、9.50mm、8.80mm、6.70mm、5.66mm、4.76mm、4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm及び0.180mmのJIS標準篩(JIS Z8801:2006)で試料約25gを10分間分級し、篩網上の試料重量を測定する。得られた結果から累積重量分布曲線を作成し、累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とする。
[発泡粒子の嵩密度の測定]
発泡粒子約1000cm3を、メスシリンダー内に1000cm3の目盛りまで充填する。なお、メスシリンダーを水平方向から目視し、発泡粒子が1つでも1000cm3の目盛りに達していれば、その時点で発泡粒子のメスシリンダー内への充填を終了する。次に、メスシリンダー内に充填した発泡粒子の重量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をWgとする。そして、下記式により発泡粒子の嵩密度は求められる。
嵩密度(g/cm3)=W/1000
嵩倍数は嵩密度の逆数にポリカーボネート系樹脂の密度(g/cm3)を積算した値である。
ポリカーボネート系樹脂の密度はISO1183:2004に規定した方法で測定できる。
[発泡成形体の密度の測定]
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。
倍数は密度の逆数にポリカーボネート系樹脂の密度(g/cm3)を積算した値である。
[発泡性の評価]
1次発泡粒子の嵩倍数が15倍以上に到達できる場合、○とする。
[成形性の評価]
得られた発泡成形体について、300×400×30(高さ)mmの発泡成形体において、300×400mmの面を水平に向けた状態で長辺の端から20mmの部分を持った際に、成形体が折れずに形を保持した場合、○とする。
<実施例1>
(含浸工程)
ポリカーボネート系樹脂としてレキサン153(SABIC社製、密度1.2g/cm3、MFR4g/10分、平均粒子径3mm)100重量部(1000g)を密閉可能な10Lの圧力容器に投入し、炭酸ガスを用いて圧力容器内をゲージ圧4MPaまで昇圧させ、室温(約20℃)の環境下で24時間保持して発泡性粒子を得た。
(発泡工程)
含浸終了後、圧力容器内の炭酸ガスをゆっくりと除圧し内部の発泡性粒子を取出した。直ちに結合防止剤としての0.3重量部(3g)の炭酸カルシウムと発泡性粒子100重量部(1000g)とを混合した。その後、撹拌機付きの高圧発泡機に発泡性粒子を投入し、撹拌しながら0.34MPaの水蒸気を用いて発泡させることで、嵩倍数18倍(嵩密度0.067g/cm3)の発泡粒子(1次発泡粒子)を得た。得られた発泡粒子を反応熱分解GC/MSを用いて測定して得たGC/MSチャートを図1(a)に示す。図1(a)中、Aは210〜230の分子量に由来するピークであり、BはビスフェノールA由来成分を示す最大ピークである。GC/MSチャートに由来するMSスペクトルを図1(b)〜(e)に示す。図1(b)は210〜230の分子量に由来するピークに対応し、図1(d)はビスフェノールA由来成分を示す最大ピークに対応する。図1(c)は図1(b)をライブラリを用いて検索をかけた結果を表し、図1(e)は図1(d)をライブラリを用いて検索をかけた結果を表している。
(第2の含浸工程:内圧付与工程)
得られた発泡粒子の表面を0.01N−塩酸を用いて洗浄し乾燥させた後、10Lの圧力容器に投入し、密閉した。窒素ガスを用いて密閉した圧力容器内をゲージ圧1MPaまで昇圧させ24時間放置して内圧付与を実施した。
(成形工程)
内圧付与を実施した圧力容器内の窒素ガスをゆっくり除圧し、発泡粒子を取出し、直ちに高圧成形機を用いて発泡成形を実施した。縦400mm×横300mm×厚さ30mmの内寸の成形用金型内に発泡粒子を充填し、0.30〜0.35MPaの水蒸気を50秒導入して加熱し、冷却することで倍数18倍(密度0.067g/cm3)の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を30℃の乾燥室で8時間程度乾燥させた。発泡成形体を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果は、図1(a)〜(e)とほぼ同じであった。
<実施例2>
ポリカーボネート系樹脂をレキサン131(SABIC社製、密度1.2g/cm3、MFR3.5g/10分)に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体(倍数16倍:嵩密度0.075g/cm3)を得た。
なお、発泡粒子(1次発泡粒子、嵩倍数16倍:嵩密度0.075g/cm3)を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果を図2(a)〜(e)に示す。発泡成形体を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果は、図2(a)〜(e)とほぼ同じであった。
Figure 2016188341
上記表1から、ビスフェノールA最大ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認される210〜230の分子量に由来するピークを示す発泡成形体は、成形性及び発泡性(外観)が良好であることが分かる。

Claims (8)

  1. 基材樹脂としてビスフェノールA由来成分を含むポリカーボネート系樹脂を含む発泡粒子であって、
    前記発泡粒子は、キャリアーガスとしてヘリウムを使用し、キャリアーガス流量を34mL/分とする条件下、反応試薬としての水酸化トリメチルアンモニウムにより前記ポリカーボネート系樹脂に含まれるエステル結合を加水分解させてメチルエーテル化させる反応を利用した反応熱分解GC/MS法により測定することで得られたリテンションタイムを横軸とするGC/MSチャートにおいて、210〜230の分子量に由来するピークを示し、
    前記210〜230の分子量に由来するピークが、前記ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認されることを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡粒子。
  2. 前記210〜230の分子量に由来するピークが、ポリカーボネート系樹脂を構成する末端部分に由来する請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂発泡粒子。
  3. 前記ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークと前記210〜230の分子量に由来するピークとが、1:0.01〜0.07の面積比を有する請求項1又は2に記載のポリカーボネート系樹脂発泡粒子。
  4. 前記発泡粒子が、0.08g/cm3以下の嵩密度を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリカーボネート系樹脂発泡粒子。
  5. 複数の発泡粒子から構成される発泡成形体であって、
    前記発泡粒子が、基材樹脂としてビスフェノールA由来成分を含むポリカーボネート系樹脂を含み、
    前記発泡成形体は、キャリアーガスとしてヘリウムを使用し、キャリアーガス流量を34mL/分とする条件下、反応試薬としての水酸化トリメチルアンモニウムにより前記ポリカーボネート系樹脂に含まれるエステル結合を加水分解させてメチルエーテル化させる反応を利用した反応熱分解GC/MS法により測定することで得られたリテンションタイムを横軸とするGC/MSチャートにおいて、210〜230の分子量に由来するピークを示し、
    前記210〜230の分子量に由来するピークが、前記ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認されることを特徴とするポリカーボネート系樹脂発泡成形体。
  6. 前記210〜230の分子量に由来するピークが、ポリカーボネート系樹脂を構成する末端部分に由来する請求項5に記載のポリカーボネート系樹脂発泡成形体。
  7. 前記ビスフェノールA由来成分を示す最大ピークと前記210〜230の分子量に由来するピークとが、1:0.01〜0.07の面積比を有する請求項5又は6に記載のポリカーボネート系樹脂発泡成形体。
  8. 前記発泡成形体が、0.08g/cm3以下の密度を有する請求項5〜7のいずれか1つに記載のポリカーボネート系樹脂発泡成形体。
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