以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
(基本構成の説明)
図1は、この発明の実施の形態1によるハイブリッド車両の全体ブロック図である。図1を参照して、ハイブリッド車両1は、エンジン10と、燃料供給装置15と、モータジェネレータ20,30と、動力分割機構40と、リダクション機構58と、駆動輪62と、パワーコントロールユニット(PCU(Power Control Unit))60と、バッテリ70と、制御装置100とを備える。
ハイブリッド車両1は、エンジン10及びモータジェネレータ30の少なくとも一方を駆動源として走行する。エンジン10、モータジェネレータ20及びモータジェネレータ30は、動力分割機構40に連結される。モータジェネレータ30の回転軸16には、リダクション機構58が接続される。回転軸16は、リダクション機構58を介して駆動輪62と連結されるとともに、動力分割機構40を介してエンジン10のクランクシャフトに連結される。
動力分割機構40は、エンジン10の駆動力をモータジェネレータ20と回転軸16とに分割する。モータジェネレータ20は、動力分割機構40を介してエンジン10のクランクシャフトを回転させることにより、エンジン10を始動するスターターとして機能し得る。動力分割機構40は、たとえば遊星歯車機構によって構成される。この場合において、遊星歯車機構のサンギヤには、モータジェネレータ20の回転軸が連結され、キャリアにはエンジン10のクランクシャフトが連結され、リングギヤにはモータジェネレータ30の回転軸16及びリダクション機構58を経由して駆動輪62が連結される。
モータジェネレータ20,30は、いずれも発電機としても電動機としても作動し得る周知の同期発電電動機である。モータジェネレータ20は、動力分割機構40を経由して伝達されたエンジン10の出力を用いてバッテリ70の充電電力を生成する「発電機構」を構成する。また、モータジェネレータ30がバッテリ70からの電力によって「電動機」として動作することによって車両駆動力を発生するための機構が実現される。モータジェネレータ20,30は、PCU60に接続され、PCU60は、バッテリ70に接続される。
制御装置100は、パワーマネジメント用電子制御ユニット(Electronic Control Unit;以下「PM−ECU」と称する)140と、エンジン用電子制御ユニット(以下「エンジンECUと称する)141と、モータ用電子制御ユニット(以下「モータECU」と称する)142と、バッテリ用電子制御ユニット(以下「バッテリECU」と称する)143とを含む。
PM−ECU140は、エンジンECU141と、モータECU142と、バッテリECU143とに、図示しない通信ポートを介して接続される。PM−ECU140は、エンジンECU141、モータECU142及びバッテリECU143の各々と各種制御信号やデータのやり取りを行なう。
モータECU142は、PCU60に接続され、モータジェネレータ20,30の駆動を制御する。バッテリECU143は、バッテリ70の充放電電流の積算値に基づいて、残容量(以下「SOC(State Of Charge)」と称する)を演算する。
エンジンECU141は、エンジン10及び燃料供給装置15に接続される。エンジンECU141は、エンジン10の運転状態を検出する各種センサから信号を入力し、燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御等の運転制御を行なう。また、エンジンECU141は、燃料供給装置15を制御してエンジン10に燃料を供給する。
以上の構成を有するハイブリッド車両1において、エンジン10及び燃料供給装置15の構成並びに制御についてより詳細に説明する。
図2は、燃料供給に関するエンジン10及び燃料供給装置15の構成を示した図である。本実施の形態1は、本発明が適用される車両を、内燃機関として筒内噴射とポート噴射とを併用するデュアル噴射タイプの内燃機関、たとえば直列4シリンダのガソリンエンジンを採用するハイブリッド車両としている。
図2を参照して、エンジン10は、吸気マニホールド36と、吸気ポート21と、シリンダブロックに設けられた4つのシリンダ11とを含む。吸入空気AIRは、シリンダ11中の図示しないピストンが下降するときに、吸気口管から吸気マニホールド36及び吸気ポート21を通って各シリンダ11に流入する。
燃料供給装置15は、低圧燃料供給機構50と、高圧燃料供給機構80とを含む。低圧燃料供給機構50は、燃料圧送部51と、低圧燃料配管52と、低圧デリバリーパイプ53と、低圧燃圧センサ53aと、ポート噴射弁54とを含む。高圧燃料供給機構80は、高圧ポンプ81と、チェック弁82aと、高圧燃料配管82と、高圧デリバリーパイプ83と、高圧燃圧センサ83aと、筒内噴射弁84とを含む。
筒内噴射弁84は、噴孔部84aを各シリンダ11の燃焼室内に露出する筒内噴射用インジェクタである。筒内噴射弁84が開弁動作するとき、高圧デリバリーパイプ83内の加圧された燃料が筒内噴射弁84の噴孔部84aから燃焼室16内に噴射される。
高圧ポンプ81は、低圧燃料配管52と高圧燃料配管82との間に接続される。チェック弁82aによって、高圧燃料配管82から高圧ポンプ81への燃料の逆流は防止される。
高圧ポンプ81は、上流側管90と、下流側管91と、パルセーションダンパ92と、高圧ポンプ本体93と、電磁スピル弁94とを含む。高圧ポンプ81の上流側管90は、低圧燃料配管52から分岐した低圧燃料配管52aに接続され、下流側管91は、高圧燃料配管82に接続される。
パルセーションダンパ92は、上流側管90に設けられるとともに、燃料圧力を受圧する弾性のダイヤフラムと、圧縮コイルばねとを有する。パルセーションダンパ92は、ダイヤフラムの弾性変形により内部容積を変化させ、上流側管90内の燃料の圧力脈動を抑制するように構成されている。
高圧ポンプ本体93では、加圧室931aが、プランジャ932の往復移動によって容積を変化させる。電磁スピル弁94は、開弁時には、プランジャ932の変位に応じた加圧室931a内への燃料の吸入と加圧室931a内の燃料の低圧燃料配管52への送出を許容し、閉弁時には、逆止弁として機能する。
フォロアリフタ934は、カム933aに押圧されることによりプランジャ932を摺動させる。戻りばね935は、ポンプハウジング931とフォロアリフタ934との間に設けられた圧縮コイルばねを含み、フォロアリフタ934をカム933aに付勢する。
カムシャフト933は、エンジン10の排気カムシャフトの一端に設けられ、端部にカム933aを有している。エンジン10の駆動中はカムシャフト933は常に回転しているため、高圧ポンプ本体93はエンジン10の駆動に連動して作動する。
高圧デリバリーパイプ83は、シリンダ11の直列配置方向の一端側で、高圧燃料配管82に接続される。高圧デリバリーパイプ83には、筒内噴射弁84が連結される。高圧デリバリーパイプ83には、内部の燃料圧力を検出する高圧燃圧センサ83aが装着される。
エンジンECU141は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力インターフェース回路、出力インターフェース回路等を含んで構成される。エンジンECU141は、PM−ECU140からエンジン起動/停止指令を受けて、エンジン10及び燃料供給装置15を制御する。
具体的には、エンジンECU141は、アクセル開度や吸入空気量やエンジン回転速度等に基づいて、燃焼毎に必要な燃料噴射量を算出する。そして、エンジンECU141は、算出した燃料噴射量に基づいて、ポート噴射弁54及び筒内噴射弁84への噴射指令信号などを適時に出力する。
エンジンECU141は、エンジン10の始動時に、ポート噴射弁54による燃料噴射を最初に実施させる。そして、ECU140は、高圧燃圧センサ83aにより検出される高圧デリバリーパイプ83内の燃料圧力が予め設定された圧力値を超えたとき、筒内噴射弁84への噴射指令信号の出力を開始する。
また、エンジンECU141は、たとえば筒内噴射弁84からの筒内噴射を基本としながら、エンジン10の始動暖機時や低回転高負荷時等のように筒内噴射では混合気形成が不十分となる特定の運転状態下では、ポート噴射を併用する。或いは、エンジンECU141は、たとえば筒内噴射弁84からの筒内噴射を基本としながら、ポート噴射が有効な高回転高負荷時等にポート噴射弁54からのポート噴射を実行する。
本実施の形態1では、燃料供給装置15は、低圧燃料供給機構50の圧力を可変に制御することができる。以下、低圧燃料供給機構50についてより詳細に説明する。
燃料圧送部51は、燃料タンク511と、フィードポンプ512と、サクションフィルタ513と、燃料フィルタ514と、リリーフ弁515とを含む。
燃料タンク511は、エンジン10で消費される燃料、たとえばガソリンを貯留する。サクションフィルタ513は、異物の吸入を阻止する。燃料フィルタ514は、吐出燃料中の異物を除去する。リリーフ弁515は、フィードポンプ512から吐出される燃料の圧力が上限圧力に達すると開弁し、燃料の圧力が上限圧力に満たない間は閉弁状態を維持する。
低圧燃料配管52は、燃料圧送部51から低圧デリバリーパイプ53までを連結する。なお、低圧燃料配管52は、燃料パイプに限定されるものではなく、燃料通路が貫通形成される1つの部材や、互いの間に燃料通路が形成される複数の部材であってもよい。
低圧デリバリーパイプ53は、シリンダ11の直列配置方向の一端側で、低圧燃料配管52に接続される。低圧デリバリーパイプ53には、ポート噴射弁54が連結される。低圧デリバリーパイプ53には、内部の燃料圧力を検出する低圧燃圧センサ53aが装着される。
ポート噴射弁54は、噴孔部54aを各シリンダ11に対応する吸気ポート21内に露出するポート噴射用インジェクタである。ポート噴射弁54が開弁動作するとき、低圧デリバリーパイプ53内の加圧された燃料が、ポート噴射弁54の噴孔部54aから吸気ポート21内に噴射される。
フィードポンプ512は、エンジンECU141から受ける指令信号に基づいて駆動及び停止する。フィードポンプ512は、燃料タンク511内から燃料を汲み上げ、たとえば1MPa(メガパスカル)未満の一定可変範囲内の圧力に加圧して吐出することが可能である。さらに、フィードポンプ512は、エンジンECU141の制御により、単位時間当りの吐出量や吐出圧を変化させることが可能である。
このようにフィードポンプ512を制御することは、以下の点で好ましい。まず、低圧デリバリーパイプ53は、エンジンが高温となると内部の燃料が気化するのを防ぐために、気化しない程度に圧力をかけておく必要がある。一方、圧力を高くしすぎると、ポンプの負荷が大きくエネルギロスが大きい。燃料の気化を防止するための圧力は温度によって変化するので、必要な圧力を低圧デリバリーパイプ53にかけることでエネルギロスを少なくすることができる。また、フィードポンプ512を適切に制御することによって、エンジンが消費した量に相当する分の燃料を送出するようにすれば、無駄に加圧するエネルギを節約することができる。したがって、一旦余分に加圧してからプレッシャレギュレータで圧力を一定にする構成よりも燃費を向上させる点で有利である。
フィードポンプ512による可変燃圧制御においては、ポート噴射を行なう燃料を貯留する低圧デリバリーパイプ53に設けられた低圧燃圧センサ53aの検出値の信頼性を確保する必要がある。この実施の形態1に従うハイブリッド車両1では、エンジンECU141によりフィードポンプ512を制御することによって、リリーフ弁515が作動する圧力(上限圧)まで燃圧を上昇させ、そのときの低圧燃圧センサ53aの検出値が上記上限圧を示すか否かを確認する燃圧センサ合理性チェック(燃圧センサの異常診断)を実行する。
[実施の形態1]
エンジン10の負荷変動が生じると、燃料噴射弁(ポート噴射弁54)からの燃料噴射量と、フィードポンプ512による低圧デリバリーパイプ53への燃料供給量とにアンバランスが生じ、過渡的に燃圧が変動する。上記の燃圧センサ合理性チェックにおいて、リリーフ弁515が作動する圧力(上限圧)まで燃圧を上昇させている場合には、燃圧が高いために特に燃圧変動が大きくなり、その結果、燃圧センサ合理性チェックの精度が低下し得る。
そこで、この実施の形態1では、燃圧センサ合理性チェックの実行中、エンジンECU141は、エンジン10の出力が一定となるようにエンジン10を制御する。そして、エンジン10の出力を一定に制御することにより生じる走行駆動力の過不足については、モータジェネレータ30によって調整される。これにより、燃圧センサ合理性チェックの実行中に、走行に要求される走行駆動力をモータジェネレータ30により確保しつつ、エンジン10の出力を安定化して燃圧変動を抑制することができる。したがって、燃圧センサ合理性チェックの精度を向上させることができる。
(燃圧センサ合理性チェックの基本処理の説明)
図3は、低圧燃圧センサ53aの合理性チェックの処理手順を説明するフローチャートである。図3を参照して、エンジンECU141は、燃圧センサ合理性チェックの実行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS10)。一例として、イグニッションキー(スタートスイッチ等でもよい。)がドライバーに操作されて車両システムが起動した後の最初のエンジン10の始動時に、燃圧センサ合理性チェックの実行条件が成立するものとする。
燃圧センサ合理性チェックの実行条件が成立していない場合は(ステップS10においてNO)、エンジンECU141は、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧を通常時(燃圧センサ合理性チェックの非実行時)の所定の燃圧P1に設定する(ステップS50)。なお、この通常時の燃圧P1は、そのときのエンジン運転条件に基づいて設定され得る。
ステップS10において、燃圧センサ合理性チェックの実行条件が成立しているものと判定されると(ステップS10においてYES)、PM−ECU140は、バッテリ70のSOCが所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS20)。この処理は、燃圧センサ合理性チェックの実行中にエンジン10の出力を一定に制御することにより生じる走行駆動力の過不足をモータジェネレータ30で調整するために、モータジェネレータ30と電力を授受するバッテリ70のSOCが著しく低下又は上昇していないことを確認するものである。
なお、SOCが所定範囲内にあるか否かの確認とともに、又はそれに代えて、バッテリ70から出力可能な電力を示す許容出力電力Wout及びバッテリ70に入力可能な電力を示す許容入力電力Winが所定範囲内にあるか否かを判定してもよい。
ステップS20においてSOCは所定範囲内であると判定されると(ステップS20においてYES)、エンジンECU141は、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧を燃圧センサ合理性チェック用の燃圧PH(PH>P1)に設定する(ステップS30)。この燃圧PHは、リリーフ弁515が作動する上限圧である。そして、目標燃圧に燃圧センサ合理性チェック用の燃圧PHが設定されると、エンジンECU141は、燃圧センサ合理性チェックを実行する(ステップS40)。
具体的には、エンジンECU141は、低圧燃圧センサ53aの検出値を取得し、その検出値が所定範囲内(たとえば目標燃圧PHの±a%)である状態が所定時間継続した場合に、低圧燃圧センサ53aが正常であると判定する。一方、低圧燃圧センサ53aの検出値が上記所定範囲内である状態が所定時間継続しない場合には、エンジンECU141は、低圧燃圧センサ53aが異常であると判定する。
なお、ステップS20においてSOCが所定範囲内にないと判定されると(ステップS20においてNO)、エンジンECU141は、ステップS50へ処理を移行し、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧には通常時用の燃圧P1が設定される。
(エンジン10の出力安定化処理の説明)
図4は、燃圧センサ合理性チェック中に実行されるエンジン10の出力安定化処理の手順を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理は、所定時間毎又は所定条件の成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。
図4を参照して、PM−ECU140は、車速及びアクセル開度等に基づいて、エンジン10に対して要求される要求エンジンパワーPeを算出する(ステップS110)。なお、車速及びアクセル開度は、それぞれ図示しない車速センサ及びアクセル開度センサによって検出される。
次いで、PM−ECU140は、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧がP1からPHに上昇中であるか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、このステップS120では、燃圧センサ合理性チェック中であるか否かが判定される。目標燃圧が上昇中であるか否か(すなわち燃圧センサ合理性チェック中であるか否か)は、エンジンECU141からの通知に基づいて判定することができる。
目標燃圧が上昇中である(すなわち燃圧センサ合理性チェック中である)と判定されると(ステップS120においてYES)、PM−ECU140は、バッテリ70のSOCが所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS130)。図3のステップS20と同様に、この処理も、燃圧センサ合理性チェックの実行中にエンジン10の出力を一定に制御することにより生じる走行駆動力の過不足をモータジェネレータ30で調整するために、バッテリ70のSOCが著しく低下又は上昇していないことを確認するものである。
なお、このステップS130についても、SOCが所定範囲内であるか否かの確認とともに、又はそれに代えて、バッテリ70の許容出力電力Wout及び許容入力電力Winが所定範囲内にあるか否かを判定してもよい。
そして、ステップS130においてSOCが所定範囲内にあると判定されると(ステップS130においてYES)、PM−ECU140は、エンジンパワー指令値Pe*を前回演算値とする(ステップS140)。すなわち、エンジンパワー指令値Pe*は、前回値に維持され、これが継続することによってエンジンパワー指令値Pe*は一定となる。なお、エンジンパワー指令値Pe*は、エンジンECU141へ出力され、エンジンECU141によって、エンジン10の出力がエンジンパワー指令値Pe*(一定)となるようにエンジン10が制御される。
次いで、PM−ECU140は、エンジンパワー指令値Pe*と、ステップS110において算出された要求エンジンパワーPeとの差分を算出し、その算出された差分値をモータECU142へ出力する。そして、モータECU142は、PM−ECU140から受けるその差分値をモータジェネレータ30に対する要求パワーに加算する(ステップS150)。これにより、エンジン10の出力を一定にすることによる走行駆動力の過不足がモータジェネレータ30により調整される。
一方、ステップS120において目標燃圧が上昇中ではない(すなわち燃圧センサ合理性チェック中でない)と判定されると(ステップS120においてNO)、又は、ステップS130においてSOCが所定範囲内でないと判定されると(ステップS130においてNO)、PM−ECU140は、エンジンパワー指令値Pe*を、ステップS110において算出された要求エンジンパワーPeとする(ステップS160)。
なお、ステップS120において目標燃圧が上昇中である(燃圧センサ合理性チェック中)と判定され(ステップS120においてYES)、かつ、ステップS130においてSOCが所定範囲内でないと判定された場合(ステップS130においてNO)も、ステップS160へ処理が移行される。したがって、この場合は、エンジン10の出力を一定にする制御は実行されないが、燃圧センサ合理性チェックは継続して実行される。燃圧センサ合理性チェック中にエンジン10の負荷変動が生じないこともあり、SOCが所定範囲内にないという条件だけで燃圧センサ合理性チェックを非実施とはしないこととしたものである。
以上のように、この実施の形態1においては、燃圧センサ合理性チェックの実行時に、エンジン10の出力が一定となるようにエンジン10が制御されるとともに、そのようなエンジン10の制御に伴なう走行駆動力の過不足をモータジェネレータ30で調整するようにモータジェネレータ30を制御される。したがって、この実施の形態1によれば、燃圧センサ合理性チェックの実行時に、要求される走行駆動力を満足しつつ、エンジン10の出力を安定化して燃圧変動を抑えることができる。その結果、燃圧センサ合理性チェックの精度を向上させることができる。
[実施の形態2]
(低圧デリバリーパイプ53の燃圧脈動の説明)
再び図2を参照して、エンジン10の回転速度がある領域に入ると、低圧デリバリーパイプ53の燃圧に脈動が発生する。図5は、低圧デリバリーパイプ53の燃圧の時間的変化の一例を示した図である。なお、図5には、エンジン回転速度の時間的変化が併せて示されている。
図5を参照して、時刻t1において、エンジン10が始動するものとする。このエンジン10の始動後に、低圧燃圧センサ53aの合理性チェックが実行されるものとする。したがって、燃圧は、通常時用のP1に対してセンサ合理性チェック用のPHまで上昇している。
エンジン回転速度がNe1(rpm)近傍となる時刻ta〜tbにおいて、低圧燃圧センサ53aの検出値が安定せず、著しい変動(脈動)が生じている。以下、燃圧が脈動する原因について説明する。
図6は、燃料タンク511から高圧デリバリーパイプ83及び低圧デリバリーパイプ53に至る経路を示した模式図である。図6を参照して、燃料タンク511内のフィードポンプ512からは、低圧燃料配管52が低圧デリバリーパイプ53に向かって延びており、低圧燃料配管52aが高圧デリバリーパイプ83に向かって延びている。低圧燃料配管52aの高圧デリバリーパイプ83側の端には、高圧ポンプ81が設けられている。
フィードポンプ512は、エンジンECU141に制御される電気モータによって駆動され、燃圧を変更可能な電気式ポンプである。一方、高圧ポンプ81は、エンジン10の回転に応じて駆動される機械式ポンプである。
高圧ポンプ81は、低圧燃料配管52aの燃料を吸い込み、加圧して高圧デリバリーパイプ83に送出する。このような高圧ポンプ81の作動に起因して、低圧燃料配管52aの高圧ポンプ81の吸引側接続端には、カムの回転に起因する燃圧の脈動が生じる。この脈動の起振源は、高圧ポンプ81のプランジャ932の燃料吸い込みである。
ここで、低圧燃料配管系は、低圧燃料配管52,52aの合計配管長L等の寸法及び配管の材質(金属、樹脂など)によって定まる、固有の共鳴周波数を有している。そのため、燃圧の脈動周波数がこの低圧燃料配管系の共鳴周波数に一致すると、低圧燃料配管系に共鳴現象が発生する。
低圧燃料配管系に共鳴現象が発生することにより、燃圧に重畳される脈動成分が増大する。燃圧に顕著な脈動が生じると、低圧デリバリーパイプ53などの低圧燃料配管系を構成する部品に対して応力が作用するため、部品の耐久性を低下させる要因となり得る。
図5に示したように、低圧燃料配管系に共鳴現象が生じるときの脈動の周波数は、ある限られた範囲のエンジン回転速度に相当する。これは、脈動の周波数はカム933aの回転速度に伴なって変化するところ、カム933aの回転速度はエンジン10の回転速度に比例しているためである。この結果、エンジン10の回転速度の倍数が低圧燃料配管系の共鳴周波数に一致したときに、燃圧に顕著な脈動が現われる。
そして、燃圧の脈動が発生すると、燃圧センサ合理性チェックの安定性が損なわれる。また、燃圧脈動の振幅は、燃圧が高いとき程大きくなるので、燃圧センサ合理性チェックにより燃圧を上昇させているときに脈動が発生すると、燃圧センサ合理性チェックの安定性はさらに低下する。そこで、この実施の形態2に従うハイブリッド車両では、燃圧センサ合理性チェック中において、エンジン10の回転速度が、低圧燃料配管系に共鳴現象が発生し得る範囲(Ne±b%)にあるときは、この範囲を外すようにエンジン10が制御される。
(エンジン10の出力安定化処理の説明)
図7は、実施の形態2において、燃圧センサ合理性チェック中に実行されるエンジン10の出力安定化処理の手順を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理も、所定時間毎又は所定条件の成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。
図7を参照して、このフローチャートは、図4に示したフローチャートにおいて、ステップS142,S144をさらに含む。すなわち、ステップS140においてエンジンパワー指令値Pe*が前回演算値に設定されると、PM−ECU140は、エンジン10の目標回転速度が、低圧燃料配管系に共鳴現象が発生し得る範囲(Ne±b%)にあるか否かを判定する(ステップS142)。
エンジン10の目標回転速度が上記の共鳴範囲にあるものと判定されると(ステップS142においてYES)、PM−ECU140は、エンジン10の目標回転速度が上記共鳴範囲から外れるようにエンジン10の目標回転速度を再度設定する(ステップS144)。一例として、PM−ECU140は、エンジンパワー指令値Pe*を一定としつつエンジン回転速度が上記共鳴範囲よりも大きくなる動作点(等パワーラインに沿った動作点)にエンジン10の動作点を変更する。
そして、エンジン10の新たな動作点が設定されると、PM−ECU140は、ステップS150へ処理を移行し、モータジェネレータ30の要求パワーが算出される。なお、ステップS142において、エンジン10の目標回転速度が共鳴範囲にはないと判定されたときは(ステップS142においてNO)、ステップS144の処理は実行されず、ステップS150へ処理が移行される。
以上のように、この実施の形態2においては、燃圧センサ合理性チェック中において、エンジン10の回転速度が、低圧燃料配管系に共鳴現象が発生し得る範囲にあるときは、この範囲を外すようにエンジン10が制御される。したがって、この実施の形態2によれば、燃圧脈動の発生を抑えることができ、その結果、燃圧センサ合理性チェックの精度を向上させることができる。
[実施の形態3]
上記の実施の形態1,2では、燃圧センサ合理性チェックの実行中に、エンジン10の出力を一定に制御することによりエンジン10の出力を安定化し、燃圧センサ合理性チェックの精度向上を図るものとした。この実施の形態3では、燃圧センサ合理性チェックの実行中は、エンジン10の燃料噴射を実施しないこととし(エンジン燃料カット処理の実行)、これにより燃圧センサ合理性チェックの精度向上が図られる。なお、エンジン10の出力は0であるので、走行モードは、モータジェネレータ30によって走行するEV(Electric Vehicle)走行となる。
図8は、実施の形態3における、低圧燃圧センサ53aの合理性チェックの処理手順を説明するフローチャートである。図8を参照して、エンジンECU141は、燃圧センサ合理性チェックの実行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS210)。
燃圧センサ合理性チェックの実行条件が成立していない場合は(ステップS210においてNO)、エンジンECU141は、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧を通常時用の所定の燃圧P1に設定する(ステップS270)。
ステップS210において、燃圧センサ合理性チェックの実行条件が成立しているものと判定されると(ステップS210においてYES)、PM−ECU140は、アクセル開度が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS220)。さらに、PM−ECU140は、バッテリ70のSOCが所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS230)。このステップS220,S230の処理は、燃圧センサ合理性チェックの実行中にエンジン10の燃料をカットしてモータジェネレータ30によりEV走行を行なうために、バッテリ70のSOCが著しく低下又は上昇していないかを確認するものである。
なお、ここでも、SOCが所定範囲内にあるか否かの確認とともに、又はそれに代えて、バッテリ70の許容出力電力Wout及び許容入力電力Winが所定範囲内にあるか否かを判定してもよい。
そして、ステップS230においてSOCが所定範囲内であると判定されると(ステップS230においてYES)、エンジンECU141は、エンジン10の燃料噴射を実施しないエンジン燃料カット処理を実行する(ステップS240)。
次いで、エンジンECU141は、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧を燃圧センサ合理性チェック用の燃圧PH(PH>P1)に設定する(ステップS250)。この燃圧PHは、リリーフ弁515が作動する上限圧である。そして、目標燃圧に燃圧センサ合理性チェック用の燃圧PHが設定されると、エンジンECU141は、燃圧センサ合理性チェックを実行する(ステップS260)。
なお、特に図示しないが、PM−ECU140は、車速及びアクセル開度等に基づいて走行駆動力を算出し、その算出値をモータECU142へ出力する。そして、モータECU142は、その算出された走行駆動力をモータジェネレータ30が発生するようにモータジェネレータ30を制御する。
なお、ステップS220においてアクセル開度が所定値よりも大きいと判定された場合(ステップS220においてNO)、又はステップS230においてバッテリ70のSOCが所定範囲内でないと判定された場合(ステップS230においてNO)は、ステップS270へ処理が移行され、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧に通常時用のP1が設定される。
以上のように、この実施の形態3においては、燃圧センサ合理性チェックの実行時に、エンジン10への燃料供給がカットされる(エンジン燃料カット処理)。これにより、燃圧センサ合理性チェックの実行時に、エンジン10の負荷変動により燃圧変動が発生することはない。したがって、この実施の形態3によっても、燃圧センサ合理性チェックの精度を向上させることができる。
[実施の形態4]
上記の実施の形態3では、エンジン10の燃料カットが可能な場合(EV走行可能な場合)に、エンジン燃料カット処理が実行され、燃圧センサ合理性チェックが実行される。この実施の形態4では、エンジン10の燃料カットが可能か否か(EV走行可能か否か)に拘わらず、燃圧センサ合理性チェックの実行条件が成立すれば、燃圧センサ合理性チェックが実行される。そして、燃圧センサ合理性チェックの実行中に、エンジン10の燃料カットが可能な場合(EV走行可能な場合)に、エンジン燃料カット処理が実行される。言い換えると、燃圧センサ合理性チェックの実行中に、エンジン10の燃料カットが不可能な場合(EV走行が不可能な場合)は、エンジン10は通常運転されるけれども、燃圧センサ合理性チェックは継続される。燃圧センサ合理性チェックの実行中にエンジン10の負荷変動が生じないこともあり、エンジン燃料カット(EV走行)ができないという条件だけで燃圧センサ合理性チェックを非実施とすることにはしないものである。
図9は、実施の形態4において、燃圧センサ合理性チェック中に実行されるエンジン10の制御を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理も、所定時間毎又は所定条件の成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。
図9を参照して、PM−ECU140は、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧がP1からPHに上昇中であるか否かを判定する(ステップS310)。すなわち、このステップS310では、燃圧センサ合理性チェック中であるか否かが判定される。
目標燃圧が上昇中である(すなわち燃圧センサ合理性チェック中である)と判定されると(ステップS310においてYES)、PM−ECU140は、アクセル開度が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS320)。さらに、PM−ECU140は、バッテリ70のSOCが所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS330)。
なお、ここでも、SOCが所定範囲内にあるか否かの確認とともに、又はそれに代えて、バッテリ70の許容出力電力Wout及び許容入力電力Winが所定範囲内にあるか否かを判定してもよい。
そして、ステップS230においてSOCが所定範囲内であると判定されると(ステップS330においてYES)、エンジンECU141は、エンジン10の燃料噴射を実施しないエンジン燃料カット処理を実行する(ステップS340)。
一方、ステップS310において目標燃圧が上昇中ではない(すなわち燃圧センサ合理性チェック中でない)と判定された場合(ステップS310においてNO)、ステップS320においてアクセル開度が所定値よりも大きいと判定された場合(ステップS320においてNO)、又はステップS330においてバッテリ70のSOCが所定範囲内でないと判定された場合(ステップS330においてNO)は、エンジン10の燃料カットは実施されず、エンジン10は通常運転される(ステップS350)。
以上のように、この実施の形態4においては、燃圧センサ合理性チェックの実行中に、エンジン10の燃料カットが可能な場合(EV走行可能な場合)に、エンジン燃料カット処理が実行される。これにより、燃圧センサ合理性チェック中の燃圧変動を抑えることができ、燃圧センサ合理性チェックの精度を向上させることができる。
[実施の形態5]
上記の実施の形態4では、燃圧センサ合理性チェックの実行中にエンジン10の燃料をカットすることにより、燃圧変動が抑えられる。しかしながら、エンジン10の燃料カット中であっても、走行中の駆動軸の回転によりエンジン10が連れ回されて、エンジン10の回転速度が、低圧燃料配管系に共鳴現象が発生し得る範囲に入ると、燃圧脈動が発生し得る。そこで、この実施の形態5では、上記の実施の形態4において、燃圧センサ合理性チェック中に、エンジン10の回転速度が、低圧燃料配管系に共鳴現象が発生し得る範囲(Ne±b%)にあるときは、この範囲を外すようにエンジン10が制御される。
図10は、実施の形態5において、燃圧センサ合理性チェック中に実行されるエンジン10の制御を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理も、所定時間毎又は所定条件の成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。
図10を参照して、このフローチャートは、図9に示したフローチャートにおいて、ステップS342,S344をさらに含む。すなわち、ステップS340においてエンジン燃料カット処理が実行されると、PM−ECU140は、エンジン10の目標回転速度が、低圧燃料配管系に共鳴現象が発生し得る範囲(Ne±b%)にあるか否かを判定する(ステップS342)。
エンジン10の目標回転速度が上記の共鳴範囲にあるものと判定されると(ステップS342においてYES)、PM−ECU140は、エンジン10の目標回転速度が上記共鳴範囲から外れるようにエンジン10の目標回転速度を再度設定する(ステップS344)。一例として、PM−ECU140は、エンジンパワー指令値Pe*を一定としつつエンジン回転速度が上記共鳴範囲よりも大きくなる動作点(等パワーラインに沿った動作点)にエンジン10の動作点を変更する。
なお、ステップS342において、エンジン10の目標回転速度が上記の共鳴範囲にはないと判定されたときは(ステップS342においてNO)、ステップS344の処理は実行されず、ステップS360へ処理が移行される。
以上のように、この実施の形態5によれば、燃圧脈動の発生を抑えることができ、その結果、燃圧センサ合理性チェックの精度を向上させることができる。
なお、上記の各実施の形態においては、制御装置100は、PM−ECU140、エンジンECU141、モータECU142、及びバッテリECU143を含んで構成されるものとしたが、このようにECUを分散させずに制御装置100を1つのECUで構成してもよい。
また、図1で示したハイブリッド車両1は、シリーズ・パラレル型のハイブリッド車両であり、エンジン10及びモータジェネレータ30の少なくとも一方を駆動源として走行可能に構成されるものであったが、他の方式のハイブリッド車両であっても、上記の各実施の形態において説明した制御を実行可能である限り本発明を適用可能である。
また、図2では、筒内噴射弁とポート噴射弁とを有するエンジンを例示したが、本発明は、筒内噴射弁が無くポート噴射弁のみを有するエンジンに適用することも可能である。
なお、上記において、エンジン10は、この発明における「内燃機関」の一実施例に対応し、バッテリ70は、この発明における「蓄電装置」の一実施例に対応する。また、モータジェネレータ30は、この発明における「電動機」の一実施例に対応し、低圧デリバリーパイプ53は、この発明における「貯留部」の一実施例に対応する。さらに、フィードポンプ512は、この発明における「ポンプ」の一実施例に対応し、低圧燃圧センサ53aは、この発明における「燃圧センサ」の一実施例に対応する。
今回開示された各実施の形態は、適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。