JP2016187802A - 気体透過性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】気体透過性に優れながら、耐久性に優れる気体透過性フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂からなる多孔層と、前記多孔層の厚み方向一方面に設けられ、融解熱量が0.1〜20mJ/mgであるポリメチルペンテン系樹脂を主成分とし、フィルムに対する無孔層の厚み比率が0.0001以上、0.3未満の厚みを有する無孔層とを備えることを特徴とする、気体透過性フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、気体透過性フィルム、詳しくは、各種産業用途に用いられる気体透過性フィルムに関する。
従来、気体分離フィルムを用いる気体分離法は、他の気体分離法に比べてエネルギー効率が高く、また装置の構造が簡単であるため、各種気体の分離に用いられることが知られている。そのような気体分離フィルムとして、多孔質支持膜と、その表面に設けられる気体分離性樹脂の薄膜とを備えるものが知られている。このような層構成であれば、多孔質支持膜によって強度を確保しつつ、気体透過性を確保できる。
例えば、ポリオレフィンからなる多孔質支持膜に、フッ素系気体分離性薄膜を設けたフィルムが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
WO2007/125944号パンフレット
しかし、特許文献1に記載されるフィルムでは、多孔質支持膜とフッ素系気体分離性薄膜との密着力が低い。そのため、多孔質支持膜にフッ素系気体分離性薄膜を設けにくく、また、たとえ多孔質支持膜にフッ素系気体分離性薄膜を設けることができた場合でも、それらの間に界面剥離を生じ易く、その結果、耐久性が低下するという不具合がある。
そこで、本発明は、気体透過性に優れながら、耐久性に優れる気体透過性フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、ポリオレフィン樹脂からなる多孔層と、特定のポリメチルペンテン系樹脂を主成分とした特定の厚みを有する無孔層とを備える気体透過性フィルムにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリオレフィン樹脂からなる多孔層と、
前記多孔層の厚み方向一方面に設けられ、融解熱量が0.1〜35mJ/mgであるポリメチルペンテン系樹脂を主成分とし、フィルムにおける無孔層の厚み比率が0.0001以上、0.3未満の厚みを有する無孔層と
を備えることを特徴とする、気体透過性フィルムが提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記無孔層の厚みが5nm〜1μmであることを特徴とする、透過性フィルムが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、酸素透過度が、20×10cm/m・24hr・atm以上であることを特徴とする、気体透過性フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記多孔層が、多孔フィルムであることを特徴とする、気体透過性フィルムが提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする、気体透過性フィルムが提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、ポリメチルペンテンを主成分とし融解熱量が0.1〜35mJ/mgである樹脂組成物を溶解させた溶液を、前記多孔層の厚み方向一方面に塗布し乾燥した後に延伸することによって製造されることを特徴とする、気体透過性フィルムが提供される。
本発明の気体透過性フィルムは、多孔層と、ポリメチルペンテン系樹脂からなり、特定範囲の厚みを有する無孔層とを備えるので、気体透過性に優れる。
さらに、多孔層のポリオレフィン樹脂と、無孔層のポリメチルペンテン系樹脂とは、ともに、ポリオレフィンであるため、多孔層と無孔層との密着性が高く、多孔層の厚み方向一方面に無孔層を確実に設けつつ、多孔層および無孔層の界面剥離を抑制することができる。従って、本発明の気体透過性フィルムは、耐久性に優れる。
図1は、本発明の気体透過性フィルムの一実施形態の断面図を示す。 図2は、図1に示す気体透過性フィルムの拡大断面図を示す。
図1を参照して、本発明の気体透過性フィルムの一実施形態を説明する。
1.気体透過性フィルム
図1に示すように、気体透過性フィルム1は、多孔層2と、多孔層2の表面(厚み方向一方面)に設けられる無孔層3とを備える。以下、多孔層2および無孔層3のそれぞれを順次説明する。
2.多孔層
多孔層2は、気体透過性フィルム1において基材または支持層の役割を有する。多孔層2には、図示しないが、厚み方向に連通する微細な孔が多数形成されている。そのような多数の孔(多孔)は、互いに独立して厚み方向に連続している。多孔層2の、厚み方向にみたときの(平面視)形状は特に限定されない。多孔層2としては、例えば、多孔フィルム、中空糸膜、不織布などが挙げられ、好ましくは、多孔フィルムが挙げられる。
多孔層2は、ポリオレフィン樹脂からなる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンを重合させることにより得られる単独重合体または共重合体が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、これらの単独重合体または共重合体を2種以上含有することができる。ポリオレフィン樹脂としては、好ましくは、プロピレンを必須成分として含有するα−オレフィン成分の重合体(ポリプロピレン系樹脂)、好ましくは、エチレンを必須成分として含有するα−オレフィン成分の重合体(ポリエチレン系樹脂)が挙げられる。ポリオレフィン樹脂として、気体透過性フィルム1の機械的強度および/または耐熱性を維持し、防水性や無孔層3との密着性に優れるという観点から、より好ましくは、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンを単独重合させることにより得られるプロピレン単独重合体(ホモプロピレン)、例えば、プロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどα−オレフィン(プロピレンを除くα−オレフィン)とをランダム共重合またはブロック共重合させることにより得られるランダム共重合体またはブロック共重合体などの共重合体などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、好ましくは、プロピレン単独重合体が挙げられる。
プロピレン単独重合体は、例えば、アイソタクチック構造、シンジオタクティック構造、あるいは、アタクティック構造を有する。プロピレン単独重合体は、好ましくは、アイソタクチック構造を有する。
プロピレン単独重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、プロピレン単独重合体の立体規則性を示すものであり、例えば、80%以上、好ましくは、83%以下、より好ましくは、85%以上であり、また、例えば、99%以下、好ましくは、98%以下、より好ましくは、97%以下である。プロピレン単独重合体のアイソタクチックペンタッド分率が上記下限以上であれば、多孔層2の機械的強度の低下を防止することができる。一方、プロピレン単独重合体のアイソタクチックペンタッド分率の上限については、現時点において工業的に得られる上限として記載しているが、将来的に、工業レベルで立体規則性がより高いプロピレン単独重合体が開発された場合については、この限りではない。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置するメソ(m)の割合を意味する。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、13C−NMRによって算出される。具体的には、メソ(m)として帰属されるメチル基の、プロピレン単独重合体全体のメチル基に対する割合を、13C−NMRの対応するシグナルから算出する。シグナルの帰属および定量は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に記載の方法に準拠する。
ポリオレフィン樹脂のMw/Mnは、例えば、2.0以上であり、また、例えば、10.0以下、好ましくは、8.0以下、より好ましくは、6.0以下である。Mw/Mnは、ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)の、ポリオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)に対する比であって、Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味する。Mw/Mnが上記下限以上であれば、押出成形性の低下を防止して、工業的な生産性の低下を防止することができる。一方、Mw/Mnが上記上限以下であれば、低分子量成分が過度に多くなることを抑制して、多孔層2の機械的強度の低下を防止することができる。ポリオレフィン樹脂のMw/Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって、測定される。
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、例えば、0.5g/10分以上、好ましくは、1.0g/10分以上であり、また、例えば、15g/10分以下、好ましくは、10g/10分以下である。ポリオレフィン樹脂のMFRが上記下限以上であれば、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、十分な生産性を確保することができる。一方、ポリオレフィン樹脂のMFRが上記上限以下であれば、多孔層2の機械的強度を十分に保持することができる。ポリオレフィン樹脂のMFRは、JIS K7210(1999年)に従い測定され、例えばポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
ポリオレフィン樹脂の密度は、例えば、0.850g/cm以上、好ましくは、0.
870g/cm以上であり、また、例えば、0.970g/cm以下、好ましくは、
0.950g/cm以下である。
ポリオレフィン樹脂は、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合、溶融重合法、塊状重合法、気相重合法、またラジカル開始剤を用いた塊状重合法などによって、得られる。
また、ポリオレフィン樹脂は市販品を用いることができ、具体的には、例えば、ポリプロピレン系樹脂である場合、「ノバテックPP」、「WINTEC」(以上、日本ポリプロ社製)、「ノティオ」、「タフマーXR」(以上、三井化学社製)、「ゼラス」、「サーモラン」(以上、三菱化学社製)、「住友ノーブレン」、「タフセレン」(以上、住友化学社製)、「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(以上、プライムポリマー社製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(以上、サンアロマー社製)、「バーシファイ」、「インスパイア」(以上、ダウケミカル社製)などが用いられる。
なお、ポリオレフィン樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、添加剤を適宜の割合で添加することができる。添加剤としては、例えば、孔の形成を促進するためや、成形加工性を付与するための各種樹脂や、ワックスなど低分子量化合物、耳などのトリミングロスなどから発生するリサイクル樹脂、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウムなどの無機粒子、カーボンブラックなどの顔料、さらには、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤などが挙げられる。添加剤は、α−オレフィン成分の重合時や、次に説明する予備成形体の成形時、および、多孔化の時の少なくともいずれかの時に添加することができる。
ポリオレフィン樹脂は、例えば、ペレットなどの予備成形体として用意される。
また、ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合には、後述するが、無孔フィルムから多孔フィルムを形成するためのβ晶の生成を促進するための処理を施すことができる。具体的には、例えば、ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許第3739481号公報に記載されているように、ポリプロピレン系樹脂にγ線を照射する方法、ポリプロピレン系樹脂にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。好ましくは、ポリプロピレン系樹脂にβ晶核剤を添加する方法が用いられる。
β晶核剤は、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定されない。β晶核剤としては、例えば、アミド化合物、テトラオキサスピロ化合物、キナクリドン類、ナノスケールのサイズを有する酸化鉄、1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物、二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類、フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料、有機二塩基酸である成分Aと、周期律表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物、環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。その他、β晶核剤の具体的な種類については、例えば、特開2003−306585号公報、特開平08−144122号公報、特開平09−194650号公報に記載された化合物も挙げられる。
β晶核剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。
また、β晶核剤が予め添加されたポリプロピレン系樹脂の市販品を用いることもでき、
具体例に、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」なども用いられる。
β晶核剤の割合は、β晶核剤の種類またはポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整され、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、例えば、0.0001質量部以上、好ましくは、0.001質量部以上、より好ましくは、0.01質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下、より好ましくは、1質量部以下である。β晶核剤の割合が上記下限以上であれば、無孔フィルムの製造時においてポリプロピレン系樹脂のβ晶を十分に生成・成長させることができ、所望の気体透過性を得ることができる。一方、β晶核剤の割合が上記上限以下であれば、経済的にも有利になる他、多孔層2表面へのβ晶核剤のブリードなどを抑制することができる。
次いで、ポリオレフィン樹脂から多孔層2を形成する。
ポリオレフィン樹脂から多孔層2を形成するには、上記したポリオレフィン樹脂から、
図2に示すように、微細な孔5を有するように、多孔層2を成形する。
具体的には、多孔層2が多孔フィルムである場合には、例えば、まず、ポリオレフィン樹脂からなる無孔フィルム(「無孔」の定義については、後で詳述される。)を作製し、次いで、無孔フィルムを多孔化する。
無孔フィルムを作製するには、例えば、ポリオレフィン樹脂の予備成形体を押出機を用いて溶融し、次いで、Tダイなどの口金から押出し、キャスティングロールで冷却固化する。キャスティングロールの温度は、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上であり、また、例えば、140℃以下、好ましくは、130℃以下である。
あるいは、ポリオレフィン樹脂のペレットからチューブラー法(インフレーション押出法)によりチューブを成形し、チューブを切り開いてフィルムを得ることもできる。無孔フィルムを作製するには、好ましくは、ポリオレフィン樹脂の予備成形体を押出機を用いて溶融しながら押出し、その後、冷却固化する。
その後、無孔フィルムを多孔化させる。無孔フィルムを多孔化するには、例えば、無孔フィルムに、β晶核剤に基づくβ晶が生成していれば、無孔フィルムを延伸させる。無孔フィルムを延伸させるには、例えば、湿式または乾式による一軸以上の延伸多孔化など、公知の方法が用られる。また、延伸方法としては、例えば、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸などが挙げられ、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸することができる。好ましくは、多孔構造を制御する観点から、二軸延伸が挙げられる。
まず、無孔層塗布前の多孔構造を制御する観点から、無孔フィルムに一軸延伸を行うことが好ましい。一軸延伸では、温度が、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上、また、例えば、120℃以下、好ましくは、110℃以下である縦延伸機を用いて、縦方向に、例えば、2倍以上、好ましくは、3倍以上、また、例えば、10倍以下、好ましくは、5倍以下に、無孔フィルムを延伸させる。
前述の一軸延伸の後、後述する無多孔層の塗布を経て、一軸延伸方向とは垂直な方向(以降、横方向と記述する)に二軸目の延伸が施されることが好ましい。
上記した延伸によって、図2に示すように、無孔フィルムに空孔が形成され、これによって、多孔層2が製造される。
なお、ポリオレフィン樹脂が添加剤として可塑剤を含有する場合には、必要に応じて、
上記した延伸前の無孔フィルムあるいは上記した延伸後の多孔フィルムにおける可塑剤を溶剤によって抽出して、乾燥することもできる。
多孔層2は、単層から形成され、あるいは、複数層を重ねて製造される。多孔層2は、
全体として、ポリオレフィン樹脂からなっていればよく、例えば、異なる種類の、ポリオレフィン樹脂の多孔層2が複数重ねられていてもよい。
なお、異なる種類の多孔層2が複数重ねられている場合には、例えば、以下の方法によって多孔層2が製造される。すなわち、例えば、(1)複数の無孔フィルムのそれぞれを多孔化したのち、多孔化された複数の多孔フィルムのそれぞれをラミネートしたり接着剤などで接着する方法、例えば、(2)複数の無孔フィルムのそれぞれを重ねて積層無孔フィルムを作製し、次いで、積層無孔フィルムを多孔化する方法、例えば、(3)複数の無孔フィルムのうちいずれか1層を多孔化した後、多孔フィルムと残りの無孔フィルムとを重ねる方法、例えば、(4)多孔層3を作製した後、無機・有機粒子などのコーティング塗布や、金属粒子の蒸着などを行うことにより積層多孔フィルムとする方法などが用いられる。好ましくは、工程の簡略さ、生産性の観点から、(2)の方法が用いられ、より好ましくは、複数の無孔フィルムの層間密着性を確保するために、共押出で積層無孔フィルムを作製した後、多孔化する方法が挙げられる。
また、多孔層2には表面処理を施すことができる。例えば、寸法安定性の改良を目的として、延伸の後に熱処理や弛緩処理を施す。さらに、多孔層2の表面にコロナ放電やプラズマ処理など、多孔層2を劣化させない程度の表面処理を施し、これによって、多孔層2と無孔層3との強固な層間密着性を確保することができる。しかし、無孔層3が塗布乾燥法(後述)により形成される場合には、多孔層2と無孔層3との強固な層間密着性が確保されているので、上記した表面処理を施さなくてもよい。
多孔層2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、
10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、100μm以下、
より好ましくは、50μm以下である。多孔層2の厚みが上記上限以下であれば、後述の無多孔層塗布後の延伸によって良好な気体透過性を確保することができる。多孔層2の厚みが上記下限以上であれば、無孔層3を確実に支持して、気体透過性フィルム1の機械強度を向上させることができる。
多孔層2における孔の平均孔径は、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.05μm以上、より好ましくは、0.1μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、1μm以下である。孔の平均孔径が上記上限以下であれば、無孔層3を確実に支持して、気体透過性フィルム1の機械強度を向上させることができる。孔の平均孔径が上記下限以上であれば、良好な気体透過性を確保することが
できる。孔の平均孔径は、例えばASTM F316−86に準拠して測定される。
多孔層2の透気度は、例えば、100秒/100mL以上、好ましくは、1000秒/100mL以上、より好ましくは、10000秒/100mL以上であり、また、例えば、50000秒/100mL以下である。多孔層2の透気度が上記下限以上であれば、気体透過性フィルム1の基材として無多孔層の支持に加え、後述の無多孔層塗布後の延伸によって十分な酸素透過性を付与することが可能である。多孔層2の透気度は、ガーレー値として、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
3.無孔層
無孔層3は、気体透過性フィルム1に良好な耐水性、気体透過性、気体分離性などを付与する耐水層の役割を有する。無孔層3は、図1に示すように、多孔層2の表面(上面)全面に設けられている。無孔層3は、中実な緻密層として形成されている。また、無孔層3における「無孔」は、意図的に開口されていない状態を意味し、すなわち、無孔層3および気体透過性フィルム1を製造する過程において意図せぬ要因によって無孔層3に微細な孔(連通の有無を問わない)が生じた状態も、「無孔」であるとする。なお、無孔層3は、後述する塗布乾燥法により形成される場合には、図2に示すように、無孔層3の裏面から多孔層2の内部に向かって滲入する滲入部分4を有していてもよい。
無孔層3は、ポリメチルペンテン系樹脂を主成分とする。
ここで主成分とは、通常50重量%を超え、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であることをいう。
ポリメチルペンテン系樹脂は、メチルペンテンを主成分として(例えば、50wt%以上)含有するモノマー成分を重合させることにより得られる重合体である。
メチルペンテンとしては、例えば、1−ペンテン、具体的には、4−メチル−1−ペンテン(あるいは4−メチルペンテン−1)が挙げられる。
ポリメチルペンテン系樹脂としては、例えば、メチルペンテンを重合させることにより得られる単独重合体(ホモポリマー)、例えば、メチルペンテンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのその他のα−オレフィン(具体的には、メチルペンテンを除く、炭素数2以上のα−オレフィン)とを共重合させることにより得られる共重合体などが挙げられる。その他のα−オレフィンは、単独使用または2種以上併用することができる。
ポリメチルペンテン系樹脂として、好ましくは、共重合体が挙げられ、より好ましくは、メチルペンテンと、直鎖状の炭素数2以上のα−オレフィンとをランダム共重合またはブロック共重合させることにより得られるランダム共重合体またはブロック共重合体が挙げられる。
共重合体におけるメチルペンテンの重量割合(つまり、共重合体を構成するためのモノマー成分におけるメチルペンテンの重量割合)は、例えば、50wt%以上、好ましくは、60wt%以上、より好ましくは、70wt%以上であり、また、例えば、99wt%以下、好ましくは、90wt%以下、より好ましくは、80wt%以下である。メチルペンテンの重量割合が上記下限以上であれば、気体透過性フィルム1に優れた気体透過性を付与することができる。一方、共重合体におけるその他のα−オレフィンの重量割合は、例えば、1wt%以上、好ましくは、10wt%以上、より好ましくは、20wt%以上であり、また、例えば、50wt%以下、好ましくは、40wt%以下、より好ましくは、30wt%以下である。
ポリメチルペンテン系樹脂の融解熱量は、35mJ/mg以下、好ましくは25mJ/mg以下、より好ましくは、20mJ/mg以下であり、特に好ましくは、15mJ/mg以下であり、また、例えば、0.1mJ/mg以上、好ましくは、1.0mJ/mg以上、より好ましくは、2.0mJ/mg以上である。メチルペンテンの重量割合が上記下限以上であれば、気体透過性フィルム1に優れた気体透過性を付与することができる。
ここで融解熱量は、パーキンエルマージャパン社製Diamond DSCを用いて、ポリメチルペンテン系樹脂10mgをJIS−K7121に準じて、加熱速度を10℃/分で−40℃から250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、−40℃で1分間保持した後、再度加熱速度10℃/分で250℃まで昇温した時のDSC曲線から求めることができる。
ポリメチルペンテン系樹脂の重量平均分子量は、例えば、0.5×10以上、好ましくは、1×10以上であり、また、例えば、10×10以下、好ましくは、8×10以下である。ポリメチルペンテン系樹脂の重量平均分子量が上記上限以下であれば、多孔層2の表面に無孔層3を生産性よく形成することができ、上記下限以上であれば、無孔層3の強度を維持することができる。ポリメチルペンテン系樹脂の重量平均分子量は、GPC法によって、測定される。
ポリメチルペンテン系樹脂は、市販品を用いることができ、具体的には、TPXシリーズ(三井化学社製)が用いられる。
なお、ポリメチルペンテン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記した添加剤を適宜の割合で添加することができる。添加剤は、ポリメチルペンテン系樹脂の製造時、あるいは、後述するポリメチルペンテン系樹脂の溶解時に添加することができる。
無孔層3を多孔層2の表面に設けるには、例えば、予め作製した多孔層2の表面に無孔層3を直接形成する方法や、多孔層2と無孔層3とを個別に作製し、無孔層3を多孔層2の表面に貼り合わせる方法、多孔層2と無孔層3とを共押出により積層した状態で成形する方法などが用いられる。中でも、無孔層3を後述する所望の厚みで精度よく形成する観点、また、多孔層2のポリオレフィン樹脂の種類によっては、ポリメチルペンテン系樹脂との間で成形可能温度に大きな差があり、多孔層2と無孔層3とを共押出により同時に成形することが難しい観点、さらには、生産性を向上する観点から、好ましくは、予め作製した多孔層2の表面に無孔層3を直接形成する方法が挙げられる。
多孔層2の表面に無孔層3を直接形成するには、例えば、ポリメチルペンテン系樹脂を溶媒に溶解させて溶液(塗液)を調製し、調製した塗液を無孔層3の表面に塗布し、乾燥して溶媒を除去する(塗布乾燥法)。
溶媒は、ポリメチルペンテン系樹脂に対する良溶媒を少なくとも1種以上含有する。すなわち、溶媒は、1種または2種以上の良溶媒のみからなっていてもよく、さらに、ポリメチルペンテン系樹脂に対する貧溶媒を1種以上含有することもできる。良溶媒および貧溶媒からなる混合溶媒は、ポリメチルペンテン系樹脂に対する溶解性を確保しつつ、ポリメチルペンテン系樹脂および混合溶媒からなる液状組成物の取扱い性を向上させることができる。なお、良溶媒は、ポリメチルペンテン系樹脂に対する溶解性が高い溶媒を意味し、貧溶媒は、ポリメチルペンテン系樹脂に対する溶解性が低い溶媒を意味し、それらは、ポリメチルペンテン系樹脂の種類に応じて適宜選択される。
良溶媒としては、例えば、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素系溶媒が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、例えば、脂環式炭化水素系溶媒が挙げられる。脂環式炭化水素系溶媒としては、例えば、メチルシクロブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサンなどの、アルキル基を有していてもよいC3‐6シクロアルカン、例えば、シクロペンテン、メチルシクロペンテンなどの、アルキル基を有していてもよいC4‐5シクロアルケンなどが挙げられる。好ましくは、アルキル基を有していてもよいC3‐6シクロアルカンが挙げられる。良溶媒は、単独でまたは2種以上併用することができる。
貧溶媒としては、例えば、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキサイド、フラン、
2−メチルフラン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロフルフリルアルコール、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピランなどの1個のエーテル結合を有する3〜7員環状エーテル、好ましくは、1個のエーテル結合を有する5〜6員環状エーテル、より好ましくは、THFやテトラヒドロピランが挙げられる。貧溶媒は、単独でまたは2種以上併用することができる。
溶媒の沸点は、例えば、50℃以上、好ましくは、55℃以上、より好ましくは、60℃以上、さらに好ましくは、65℃以上であり、また、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、130℃以下、さらに好ましくは、120℃以下である。溶媒の沸点が上記下限以上であれば、揮発性が過度に高くなることを防止し、塗液の取扱い性が低下することを防止でき、一方、溶媒の沸点が上記上限以下であれば、溶媒を容易に乾燥することができる。
ポリメチルペンテン系樹脂を溶媒に溶解させて塗液を作製する場合、塗液におけるポリメチルペンテン系樹脂の濃度(すなわち、ポリメチルペンテン系樹脂および溶媒に対するポリメチルペンテン系樹脂の割合)は、例えば、0.01質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。塗液におけるポリメチルペンテン系樹脂の濃度が上記下限以上であれば、多孔層2の表面に塗液を塗布して乾燥することにより、無孔層3を確実に形成することができる。一方、塗液におけるポリメチルペンテン系樹脂の濃度が上記上限以下であれば、気体透過性や酸素/窒素分離性を阻害することなく無孔層3を形成して、無孔層3の厚みを所望の範囲に設定することができる。
ポリメチルペンテン系樹脂を溶媒に溶解させるには、ポリメチルペンテン系樹脂および溶媒を配合し、それらを、例えば、20分間以上、好ましくは、1時間以上、また、例えば、5時間以下、好ましくは、3時間以下、攪拌する。
塗液を多孔層2の表面に塗布するには、必要とする多孔層2の厚みや塗布面積に対応できる方法が用いられれば特に限定されない。塗液を多孔層2の表面に塗布するには、例えば、グラビアコーター法(小径グラビアコーター法を含む)、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、バーコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などが挙げられる。
その後、塗液を乾燥させて、溶媒を除去する。乾燥時間は、例えば、1分以上、好ましくは、10分以上であり、また、例えば、50分以下、好ましくは、30分以下である。
塗布乾燥法によれば、無孔層3に滲入部分4が形成される。滲入部分4によって、無孔層3の多孔層2に対するアンカー効果(後述)を発現することができる。
多孔層2及び無孔層3の薄肉化に加え、多孔層2の透気度向上の為に前述した一軸延伸方向に対して垂直な方向に二軸目の延伸を施すことが好まれる。延伸方法としては例えば上述した延伸方法が適用可能である。
延伸温度としては例えば、130℃以上、好ましくは、140℃以上、また、例えば、
170℃以下、好ましくは、160℃以下である横延伸機を用いて、横方向に、例えば、
1.5倍以上、好ましくは、2倍以上、また、例えば、5倍以下、好ましくは、3倍以下に、多孔層2と無孔層3の積層フィルムを延伸させる。
無孔層3の厚みは、5nm以上、好ましくは、50nm以上であり、また、4μm未満、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。無孔層3の厚みは、後述する実施例に記載の方法で測定される。
無孔層3の厚みが上記下限未満であれば、無孔層3を均一な層として製造することが困難となる。一方、無孔層3の厚みが上記下限以上であれば、無孔層3を均一な層として製造することができる。
また、無孔層3の厚みが上記上限以上であれば(あるいは上記上限を超えれば)、気体透過性フィルム1に良好な気体透過性を付与することができない。一方、無孔層3の厚みが上記上限未満であれば(あるいは上記上限以下であれば)、気体透過性フィルム1に良好な気体透過性を付与することができる。
無孔層3の厚みは、後述する実施例に記載の方法で測定される。
また、フィルム1に対する多孔層2の厚み比(=無孔層3の厚み/期待透過性フィルム1の厚み)は、例えば、0.3未満、好ましくは、0.15以下、より好ましくは、0.05以下、さらに好ましくは、0.01以下であり、また、例えば、0.0001以上である。
4.気体透過性フィルムの物性
気体透過性フィルム1の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、100μm以下である。気体透過性フィルム1の厚みは、後述する実施例に記載の方法で測定される。
気体透過性フィルム1における多孔層2と無孔層3との界面剥離強度は、例えば、2N
/18mm以上、好ましくは、3N/18mm以上、より好ましくは、4N/18mm以上、さらに好ましくは、5N/18mm以上であり、また、例えば、100N/18mm以下である。無孔層3と多孔層2との界面剥離強度が上記下限以上であれば、無孔層3と多孔層2との優れた密着性を確保して、無孔層3および多孔層2の界面剥離を抑制することができる。界面剥離強度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
気体透過性フィルム1の耐水圧は、例えば、1kgf/cm2以上、好ましくは、5k
gf/cm2以上であり、また、例えば、100kgf/cm2以下である。気体透過性
フィルム1の耐水圧が上記下限以上であれば、気体透過性フィルム1の優れた耐水性を確保することができる。気体透過性フィルム1の耐水圧を上記下限以上に設定するには、後述するが、多孔層2の透気度および厚みと、無孔層3の厚みとを適宜調整する。気体透過性フィルム1の耐水圧は後述する実施例に記載の方法で測定される。
気体透過性フィルム1の酸素透過度は、例えば、20×10cm/m・24hr・atm以上、好ましくは、50×10cm/m・24hr・atm以上、より好ましくは、100×10cm/m・24hr・atm以上、さらに好ましくは、210×10cm/m・24hr・atm以上であり、また、例えば、1000×10cm/m・24hr・atm以下、より好ましくは、500×10cm/m・24hr・atm以下である。酸素透過度は、気体透過性フィルム1の気体透過性の指標であって、単位時間、単位面積および単位分圧差における気体透過量を示す。酸素透過度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。気体透過性フィルム1の酸素透過度が上記下限以上であれば、気体透過性フィルム1は、優れた気体透過性を確保することができる。気体透過性フィルム1の酸素透過度を上記下限以上に設定するには、後述するが、多孔層2の透気度および厚みと、無孔層3の厚みとを適宜調整する。
気体透過性フィルム1の透気度は、例えば、90000秒/100mL以上、好ましくは、95000秒/100mL以上、より好ましくは、100000秒/100mL以上である。透気度は、気体透過性フィルム1の透水性を示す。透気度は、ガーレー値として、後述する実施例に記載の方法で測定される。透気度が上記下限以上であれば、気体透過性フィルム1が水などの液体を透過させることがないため、気体透過性フィルム1を耐水性(耐液性)に優れるフィルムとすることができる。透気度を上記下限以上に設定するには、後述するが、無孔層3の厚みを適宜調整する。
気体透過性フィルム1の酸素/窒素分離係数は、例えば、3以上、好ましくは、3.4以上であり、また、例えば、10以下である。気体透過性フィルム1における酸素/窒素分離係数は、酸素透過度の、窒素透過度に対する割合(すなわち、酸素透過度/窒素透過度)であって、酸素/窒素分離係数が高ければ、酸素を、窒素に比べて、効率よく透過させることができる。気体透過性フィルム1の酸素/窒素分離係数は後述する実施例に記載の方法で測定される。気体透過性フィルム1の酸素/窒素分離係数を上記下限以上に設定するには、無孔層3に用いるポリメチルペンテン系樹脂の種類を上記記載の範囲で選択し、さらに後述するように多孔層2の透気度および厚みと、無孔層3の厚みとを調整する。
そして、多孔層2の透気度を、例えば、10秒/100mL以上、さらには、10000秒/100mL以下とし、多孔層2の厚みを、例えば、10μm以上、1000μm以下とし、無孔層3の厚みを、例えば、30nm以上、6μm未満とすることによって、気体透過性フィルム1の耐水圧、透気度、酸素透過度および酸素/窒素分離係数のそれぞれを上記した特定範囲に設定することができる。
そして、この気体透過性フィルム1は、多孔層2と、ポリメチルペンテン系樹脂からなり、特定範囲の厚みを有する無孔層3とを備えるので、気体透過性に優れる。
さらに、多孔層2のポリオレフィン樹脂と、無孔層3のポリメチルペンテン系樹脂とは、ともに、ポリオレフィンであるため、多孔層2と無孔層3との密着性が高く、多孔層2の表面に無孔層3を確実に設けつつ、多孔層2および無孔層3の界面剥離を抑制することができる。従って、この気体透過性フィルム1は、耐久性に優れる。
とりわけ、図2に示すように、無孔層3が滲入部分4を有している場合には、滲入部分4が無孔層3の内部に滲入しているので、滲入部分4の多孔層2に対するアンカー効果によって、多孔層2と無孔層3との密着性をより一層向上させることができる。
このような気体透過性フィルム1は、優れた気体透過性および耐久性が要求される分野に用いられる。具体的には、気体透過性フィルム1は、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、細胞培養のための足場材料、培養容器底部材料(医療用途)、農業・衣類・衛生材料・電子部材包装用材料などに使用する防水透湿性フィルム、防音用や保温用の建築材料として用いられる。
<変形例>
なお、上記した実施形態では、気体透過性フィルム1は、単数の多孔層2と、単数の無孔層3とを備えている。しかし、上記の実施形態に限定されず、本発明の効果が阻害されない実施形態であればよい。例えば、図示しないが、気体透過性フィルム1は、単数の多孔層2と、複数(例えば、2つ)の無孔層3とを備えることができる。具体的には、気体透過性フィルム1は、多孔層2と、その表面および裏面のそれぞれに設けられる無孔層3とを備えることができる。あるいは、気体透過性フィルム1は、複数(例えば、2つ)の多孔層2と、それらに厚み方向で挟まれる単数の無孔層3とを備えることもできる。さらには、気体透過性フィルム1は、複数の多孔層2および複数の無孔層3を厚み方向に交互に設けて(積層して)、多層フィルムとして構成することもできる。なお、気体透過性フィルム1が無孔層3を複数備える場合には、複数の無孔層3の総厚みが、上記した特定範囲内にある。
以下に、製造例、実施例および比較例を示し、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、以下に示す実施例の数値は、上記した実施形態において記載され、対応する数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
[多孔層の製造]
<製造例1>
ポリプロピレン系樹脂(プロピレン単独重合体、日本ポリプロ社製「ノバテックPP
FY6HA」、密度:0.90g/cm3、MFR:2.4g/10分)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(テトラオキサスピロ化合物)とのそれぞれを準備した。このポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合でブレンドし、東芝機械社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合した後、水槽でストランドを冷却固化し、ペレタイザーでストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂のペレットを作製した。
続いて、作製したペレットを、同方向二軸押出機の口金より押出し、124℃のキャスティングロールで冷却固化させて無孔フィルムを作製した。この無孔フィルムを、縦延伸機を用いて100℃で縦方向に4.6倍延伸した。これによって多孔層を得た。
なお、多孔層の透気度(ガーレー値)は、14000秒/100mLであった。
[気体透過性フィルムの製造]
<実施例1>
シクロヘキサン(ナカライテスク社製)95質量部にポリメチルペンテン系樹脂(4−メチルペンテン−1/1−ヘキセン=77.9wt%/22.1wt%、融点225.3℃、融解熱量8.5mJ/mg)5質量部を加え、スターラーで3時間程度撹拌することにより、均一な溶液を塗液として得た。
製造例1で得られた多孔層の表面に、乾燥後の厚みが0.4μm程度になるようにバーコーターを用いて、塗液を塗布し、その後室温で30分間乾燥を行った。続いて、横延伸機を用いて150℃で横方向に2.1倍延伸した後、多孔フィルムを153℃で熱固定した。これにより、多孔層および無孔層を備える気体透過性フィルムを得た。得られた気体透過性フィルムの物性を下記の通りに評価し、それらの結果を表1に示す。
<実施例2>
無孔層に用いるポリマーとして、ポリメチルペンテン系樹脂(4−メチルペンテン−1/オクタデセン=91wt%/9wt%、融点223.9℃、融解熱量23.3mJ/mg)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして気体透過性フィルムを得た。得られた気体透過性フィルムの物性を下記の通りに評価し、それらの結果を表1に示す。
<比較例1>
無孔層に用いるポリマーとして、ポリメチルペンテン系樹脂(4−メチルペンテン−1/=100wt%、融点232.1℃、融解熱量39.0mJ/mg)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして気体透過性フィルムを得た。得られた気体透過性フィルムの物性を下記の通りに評価し、それらの結果を表1に示す。
<参考例1>
製造例1で得られた多孔層を横延伸機によって150℃で横方向に2.1倍延伸した後、153℃で熱固定して得られた多孔フィルムを多孔層として用いた。シクロヘキサン(ナカライテスク社製)95質量部にポリメチルペンテン系樹脂(4−メチルペンテン−1/1−ヘキセン=77.9wt%/22.1wt%、融点225.3℃、融解熱量8.5mJ/mg)5質量部を加え、スターラーで3時間程度撹拌することにより、均一な溶液を塗液として得た。得られた多孔層の表面に、乾燥後の厚みが0.4μm程度になるようにバーコーターを用いて、塗液を塗布し、その後室温で30分間乾燥を行った。得られた気体透過性フィルムの物性を下記の通りに評価し、それらの結果を表1に示す。
<評価方法>
(1)気体透過性フィルムの総厚み
得られた気体透過性フィルムの総厚みを、1/1000mmのダイアルゲージで、気体透過性フィルムの面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出した。
(2)無孔層および多孔層の厚み
得られた無孔層の厚みを、作製した気体透過性フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察した画像から、不特定に10箇所測定し、その平均値として算出とした。
得られた気体透過性フィルムの厚みから無孔層の厚みを差し引くことにより、多孔層の厚みを算出した。
(3)界面剥離強度
得られた気体透過性フィルムの無孔層の表面にセロハンテープを貼り、幅18mm×長さ40mmの短冊状に切り出し、引っ張り試験機を使用して、温度23℃の空気雰囲気下、引張速度200mm/分で、180度剥離試験を3回実施したときの剥離力の平均値を界面剥離強度(N/18mm)とした。
(4)耐水圧
得られた気体透過性フィルムの耐水圧を、JIS L1092 B法(高水圧法)(2009年)に準拠して測定した。
(5)酸素透過度および窒素透過度
得られた気体透過性フィルムの酸素透過度および窒素透過度を、JIS K7126−2(等圧法)(2006年)に準拠して測定した。
(6)透気度(ガーレー値)
得られた透気度を、王研式透気度計を用いてJIS P8117(2009年)に準拠して測定した。なお、透気度が99999秒/100mLであるという結果は、王研式透気度計の測定上限に達しており、実際の透気度はそれ以上であることを示す。
(7)酸素/窒素分離係数
得られた気体透過性フィルムの酸素/窒素分離係数を、上記(5)より求めた酸素透過度と窒素透過度の比(=酸素透過度/窒素透過度)として算出した。
Figure 2016187802
表1から分かるように、実施例1の気体透過性フィルムは、酸素透過度が高いとともに、界面剥離強度が高く、気体透過性および耐久性に優れる。また、無多孔層厚みが0.2μm、気体透過性フィルムにおける無多孔層の比率は約0.7%であり、無多孔層の厚みを充分に薄くすることができている。
実施例2では、酸素透過度及び、剥離強度を有する実施例1の無孔層と同程度の厚みのフィルムが得られている。ただし、酸素透過度及び、剥離強度は実施例1よりも劣っている。これは、無多孔層に用いた樹脂の融解熱量が実施例1よりも大きいことから、結晶化しやすい特徴を有しており、結晶構造の形成による酸素透過性能の低下によるものと考えられる。また、無多孔層塗布後の延伸によって無多孔層が基材の多孔層の延伸に追従し難く、結果として無多孔層と多孔層の界面での剥離を生じさせやすくなり、剥離強度の低下を招いたと考えられる。
他方、比較例1の気体透過性フィルムは、透気度が2000秒/100mLであり、無多孔層に空孔が開いてしまい、目的のフィルムが得られなかった。これは、比較例2で用いた無多孔層の樹脂が比較例1よりも結晶性が高く、無多孔層塗布後の延伸において、基材に延伸に追従できず、無多孔層の一部が裂け、空孔を形成したためと考えられる。そのため、そのため、酸素透過度、剥離強度、耐水圧、透気度および酸素/窒素分離係数については評価を実施しなかった。
参考例1の気体透過性フィルムでは、界面剥離強度は実施例1と同等程度である。
しかし、無多孔層厚みが0.4μmであり、気体透過性フィルムにおける無多孔層の比率は約2.0%であり、実施例1と比較して3倍程度大きい。
気体透過性フィルムは、例えば、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、細胞培養のための足場材料、培養容器底部材料(医療用途)、農業・衣類・衛生材料・電子部材包装用材料などに使用する防水透湿性フィルム、防音用や保温用の建築材料として用いられる。
1 気体透過性フィルム
2 多孔層
3 無孔層
4 滲入部分
5 微細孔

Claims (6)

  1. ポリオレフィン樹脂からなる多孔層と、
    前記多孔層の厚み方向一方面に設けられ、融解熱量が0.1〜35mJ/mgであるポリメチルペンテン系樹脂を主成分とし、フィルムに対する無孔層の厚み比率が0.0001以上、0.3未満の厚みを有する無孔層と
    を備えることを特徴とする、気体透過性フィルム。
  2. 前記無孔層の厚みが5nm〜1μmであることを特徴とする、請求項1に記載の気体透過性フィルム。
  3. 酸素透過度が、20×10cm/m・24hr・atm以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の気体透過性フィルム。
  4. 前記多孔層が、多孔フィルムであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の気体透過性フィルム。
  5. 前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の気体透過性フィルム。
  6. ポリメチルペンテンを主成分とし融解熱量が0.1〜35mJ/mgである樹脂組成物を溶解させた溶液を、前記多孔層の厚み方向一方面に塗布し乾燥した後に延伸することによって製造されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の気体透過性フィルム。
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