以下、図1〜図12を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る自律走行式の無人作業車の構成を概略的に示す側面図であり、図2は平面図である。本発明の制御装置は、種々の無人作業車(以下、単に作業車と呼ぶ場合もある)に適用することができるが、本実施形態では、特に芝刈り作業を行う移動式芝刈り機に適用する。なお、以下では、平面視における作業車の直進方向(長さ方向)および直進方向に垂直な車幅方向を、それぞれ前後方向および左右方向と定義するとともに、作業車の高さ方向を上下方向と定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
図1,2に示すように、無人作業車1は、シャシ11とフレーム12とを有する車体10と、車体10を接地面GRから走行可能に支持する左右一対の前輪13および左右一対の後輪14とを備える。前輪13は、ステー11aを介してシャシ11の前側に回転可能に取り付けられる。後輪14は、前輪13よりも大径であり、シャシ11の後側に直接、回転可能に取り付けられる。作業車1は、ユーザ自身が搬送可能な重量および寸法を有する。一例を挙げると、作業車1の全長(前後方向長さ)は500mm程度、全幅は300mm程度、高さは300mm程度である。
シャシ11とフレーム12とで包囲された作業車1の内部空間15には、作業機16と、作業機駆動用の作業モータ17と、後輪駆動用の走行モータ18と、充電ユニット19と、バッテリ20とが配置される。
作業機16は、回転体と回転体に取り付けられた芝刈り用のブレードとを有し、全体が略円盤形状を呈する。作業機16は、回転体中央の回転軸を上下方向に向けて配置され、高さ調節機構21により接地面GRからのブレードの高さを調整可能に構成される。高さ調節機構21は、例えばユーザにより操作可能なねじを備える。作業モータ17は、作業機16の上方に配置された電動モータにより構成され、その出力軸が回転体の回転軸に連結され、回転体と一体にブレードを回転駆動する。
走行モータ18は、左右の後輪14の左右内側に配置された一対の電動モータ18L,18Rにより構成される。走行モータ18L,18Rの出力軸は、左右の後輪14の回転軸にそれぞれ連結され、走行モータ18L,18Rは、左右の後輪14を互いに独立に回転駆動する。すなわち、作業車1は、前輪13を従動輪、後輪14を駆動輪として構成され、走行モータ18L,18Rは、左右の後輪14を互いに独立に正転(前進方向への回転)または逆転(後進方向への回転)させる。左右の後輪14の回転に速度差を生じさせることで、作業車1は任意の方向に旋回することができる。
例えば、左右の後輪14をそれぞれ正転させた際に、右後輪14の回転速度が左後輪14の回転速度よりも速いと、その速度差に応じた旋回角で作業車1は左方に旋回する。一方、左後輪14の回転速度が右後輪14の回転速度よりも速いと、その速度差に応じた旋回角で作業車1は右方に旋回する。左右の後輪14を互いに同一速度で一方を正転、他方を逆転させると、作業車1はその場で旋回する。
充電ユニット19は、AC/DC変換器を含み、フレーム12の前端部に設けられた端子22に配線を介して接続されるとともに、バッテリ20に配線を介して接続される。端子22は、接点22aを有し、端子22が接点22aを介して充電ステーション3(図7参照)に接続することで、バッテリ20に充電することができる。バッテリ20は、配線を介して作業モータ17と走行モータ18とに接続され、作業モータ17と走行モータ18とは、ドライバを介してバッテリ20から供給される電力により駆動する。
作業車1の前部には、左右方向に離間して一対の磁気センサ51(磁気センサ51L,51R)が配置される。より具体的には、図2に示すように、作業車1の車幅方向中心を通り、かつ、直進方向に向かう中心線CL1に対して左右対称に、互いに所定距離d11隔てて一対の磁気センサ51L,51Rが配置される。さらに、磁気センサ51L,51Rから所定距離d12後方かつ中心線CL1上に磁気センサ51Cが配置される。なお、d12は、例えば磁気センサ51L,51Rから後輪14の回転軸までの距離に相当する。磁気センサ51L,51R,51Cは、互いに同一構成の磁気センサである。なお、以下では、磁気センサ51L,51Rを前側磁気センサ、磁気センサ51Cを後側磁気センサと呼ぶことがある。
図3は、作業車1の制御構成を示すブロック図である。図3において、作業車1に搭載されたECU(電子制御ユニット)は、CPU,ROM,RAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成されるマイクロコンピュータである。
ECU40には、作業車1の各種状態を検出するセンサ群50と、充電ユニット19と、バッテリ20と、操作スイッチ25と、表示部26と、作業モータ17と、左右一対の走行モータ18(18L,18R)とが接続される。センサ群50は、左右一対の前側および後側の磁気センサ51(51L,51R,51C)と、Yawセンサ52と、Gセンサ53と、方位センサ54と、GPSセンサ55と、接触センサ56と、左右一対の車輪速センサ57(57L,57R)と、電圧センサ58とを含む。
各磁気センサ51は、磁界の大きさ(磁界強度)を示す信号を出力する。Yawセンサ52は、作業車1の高さ方向の軸線(Z軸)回りに生じる角速度(ヨーレート)を示す信号を出力する角速度センサであり、Yawセンサ52からの信号により作業車1のZ軸回りの旋回角を検出することができる。Gセンサ53は、作業車1に作用する直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度を示す信号を出力する。方位センサ54は、地磁気に応じた信号を出力する2軸または3軸構造の地磁気センサであり、方位センサ54からの信号により所定方位(例えば北)に対する作業車1の向きを検出することができる。
GPSセンサ55は、GPS衛星からの電波を受信し、作業車1の現在位置(緯度、経度)を検出する。接触センサ56は、作業車1が障害物等に接近または接触するとオン信号を出力する。車輪速センサ57L,57Rは、左右の後輪14の車輪速を示す信号をそれぞれ出力し、車輪速センサ57L,57Rからの信号により、作業車1の走行距離を算出することができる。電圧センサ58は、バッテリ20の残電圧を検出する。
操作スイッチ25は、ユーザにより操作され、作業車1の動作開始等を指令するメインスイッチと、非常停止を指令する非常停止スイッチとを含む。表示部26は、ユーザに提供するための各種情報を表示するディスプレイにより構成される。
以上のように構成された作業車1は、予め定められた作業領域内を自律走行して作業を行う。図4は、作業領域ARの一例を示す図である。作業領域ARは、予め敷設(例えば接地面GRから所定深さに埋設)されたエリアワイヤ2によって画定される。エリアワイヤ2には電流が流され、これにより作業領域ARに磁界が発生する。作業領域ARは、作業車1の走行範囲を規定し、作業予定領域の他、作業を行わない非作業の領域を含んでもよい。エリアワイヤ2の近傍(図ではエリアワイヤ2の内側)には、バッテリ20を充電するための充電ステーション3が配置される。
図5は、エリアワイヤ2からの距離dと磁界強度Hとの関係を示す図である。図5に示すように、磁界強度Hは、エリアワイヤ2からの距離dに応じて変化する。すなわち、磁界強度Hは、エリアワイヤ2上において0となり、作業領域ARの内側でプラス、外側でマイナスの値となる。作業時には、ECU40が磁気センサ51L,51Rからの検出値を読み込み、検出値がマイナスになると、例えばYawセンサ52の検出値に基づき作業車1を作業領域ARの内側に向けて所定角度だけ旋回させる。これにより作業領域ARの内側で作業車1を走行(例えばランダムに直進走行)させながら作業を行うことができる。
本実施形態では、ECU40からの指令により、作業車1を作業モードとトレースモードと帰還モードとで動作させる。作業モードは、作業車1が作業領域AR内を自律走行しながら作業(芝刈り作業)を行うモードである。帰還モードは、バッテリ20への充電が必要になったときに、作業車1を充電ステーション3まで帰還させるモードである。トレースモードは、エリアワイヤ2に沿って作業車1を走行させるモードである。トレースモードは、作業モードの前に実行され、トレースモードにおいて作業領域ARを画定する。
図6は、トレースモード時の作業車1の動作を示す図である。図6に示すように、トレースモードにおいては、左右一対の磁気センサ51R,51Lのうち一方の磁気センサ(例えば51L)をエリアワイヤ2の内側に位置させた状態で、他方の磁気センサ(例えば51R)がエリアワイヤ2上を矢印A方向に移動するように、ECU40の指令によりエリアワイヤ2に沿って作業車1を周回走行させる。すなわち、ECU40が磁気センサ51Rの出力を監視し、磁気センサ51Rによって検出される磁界強度Hが0となるように走行モータ18L,18Rを制御する。
例えば、磁気センサ51Rによって検出される磁界強度Hがプラスになると、右側の走行モータ18Rを減速かつ左側の走行モータ18Lを増速させ、作業車1を右側に旋回させる。一方、磁気センサ51Rによって検出される磁界強度Hがマイナスになると、右側の走行モータ18Rを増速かつ左側の走行モータ18Lを減速させ、作業車1を左側に旋回させる。これにより、磁気センサ51Rをエリアワイヤ2に近づけ、磁気センサ51Rにより検出される磁界強度Hを0に維持する。
トレースモードは、作業車1の端子22が充電ステーション3の端子33(図7)に接続した状態(ドッキング状態)から開始され、作業車1がエリアワイヤ2に沿って周回走行した後、端子22が再度端子33に接続したときに終了する。トレース走行開始から終了までの作業車1の位置は、GPSセンサ55により検出される。ECU40は、GPSセンサ55からの信号に基づき、充電ステーション3を基準(原点)とした作業領域ARの境界線(図8のL0)の位置座標を特定する。
ところで、例えば図4の点線に示すようにエリアワイヤ2上に充電ステーション3を配置すると、帰還モード時に、磁気センサ51の検出値に基づきエリアワイヤ2に沿って作業車1を走行(トレース走行)させることで、作業車1を充電ステーション3まで帰還させることができる。
しかしながら、トレース走行によって作業車1を帰還させる場合、充電ステーション3をエリアワイヤ2上にエリアワイヤ2に平行な向きで配置する必要があり、充電ステーション3の配置に対する制約が大きい。そこで、充電ステーション3の配置の自由度を高めるため、本実施形態では以下のように充電ステーション3を構成する。
図7は、本発明の実施形態に係る充電ステーション3(図4の実線)の斜視図である。なお、以下では、便宜上、図示のように直交3軸方向を、それぞれ充電ステーション3の前後方向(長さ方向)、左右方向(幅方向)および上下方向(高さ方向)と定義する。図7では、エリアワイヤ2の図示を省略する。充電ステーション3の向きは、その長さ方向(図7の中心線CL3の向き)によって代表する。
図7に示すように、充電ステーション3は、充電時に作業車1が載るベース3aと、ベース3aの前端部から立設し、充電時の作業車1の位置を規制するガイド3bと、ガイド3bの上端部かつ左右方向中央部から後方に向けて突出する略三角形状の突出部3cとを有する。ガイド3bの左右方向中央部の前側には基板30が設けられ、突出部3cの左右両側面には、充電ステーション3の中心を通る長手方向の中心線CL3に対し対称に、左右一対の端子33が設けられる。突出部3cは、作業車1の左右一対の充電端子22の間に挿入される。これにより、端子22,33同士(より正確には端子22,33の接点22a,33a同士)が接続し、バッテリ20が充電される。
本実施形態では、図4の実線に示すように作業領域ARの内側、かつ、エリアワイヤ2と直交する向きに充電ステーション3が配置される。図8は、充電ステーション3の要部構成、とくにワイヤの配置を示す平面図であり、図9は、充電ステーション3の制御構成を示すブロック図である。
図9に示すように、充電ステーション3は、商用電源31にコンセント32を介して接続される基板30と、それぞれが基板30に接続された端子33とステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とを有する。突出ワイヤ35はエリアワイヤ2に直列に接続されるが、ステーションワイヤ34はエリアワイヤ2に接続されない。基板30は、AC/AC変換器301と、AC/AC変換器301の動作を制御するECU(電子制御ユニット)302と、ステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とに交流を通電して信号を発生させる信号発生器303とを有する。
商用電源31からの交流は、AC/AC変換器301で適宜な電圧に降圧される。作業車1が充電ステーション3まで帰還して、作業車1の端子22の接点22aが端子33の接点33aに接続すると、AC/AC変換器301で降圧された電力が作業車1に供給され、バッテリ20が充電される。信号発生器303は、ECU302からの指令により、ステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とを繰り返し交互に通電し、両者から互いに異なるタイミングで信号を発生させる。
図8に示すように、ステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とは、互いに交差しないように高さ方向の位置をずらしてベース3aの内部または下方に配置される。なお、ステーションワイヤ34と突出ワイヤ35はそれぞれ基板30に接続されるが、図8では基板30の図示を省略する。
ステーションワイヤ34は全体が円形状を呈し、エリアワイヤ2から所定量d30だけ離れて作業領域ARの内側に配置される。ステーションワイヤ34の円の中心点P0は、一対の端子33を結ぶ線分の垂直二等分線上、すなわち、充電ステーション3の中心線CL3上に位置する。ステーションワイヤ34は、充電ステーション3の位置を表す磁界を発生するものであり、磁界の大きさを考慮して円の直径が決定される。一例を挙げると、円の直径は磁気センサ51の大きさにほぼ等しい。
突出ワイヤ35は、その両端部35a,35bがエリアワイヤ2の端部2a,2bに直列に接続されるとともに、ステーションワイヤ34に向けて略コ字状に突出して形成される。すなわち、突出ワイヤ35は、エリアワイヤ2の端部2a,2bから作業領域ARの内側に向けてそれぞれ略垂直に延在するワイヤ部351,352と、ワイヤ部351,352同士を接続するワイヤ部353とを有し、中心線CL3に対し左右対称に形成される。厳密にいうと、端部35a,35b間の距離はワイヤ部353の長さよりも短く、突出ワイヤ35は台形形状を呈する。
ワイヤ部351,352間の距離d31およびステーションワイヤ34の中心点P0とワイヤ部353との距離d32は、作業車1に設けられた磁気センサ51L,51R,51Cの配置に応じて決定される。図10は、各ワイヤ34,35と磁気センサ51L,51R,51Cの位置関係の一例を示す図である。図10では、磁気センサ51Cがステーションワイヤ34の中心点P0上に位置し、かつ、作業車1の中心線CL1と充電ステーション3の中心線CL3とが一致している。このとき、充電ステーション3の左右一対の端子33と作業車1の左右一対の端子22とは、所定量だけ離れて互いに対向する。図10に示す作業車1の姿勢を目標姿勢と呼ぶ。目標姿勢にある作業車1は、矢印A方向に端子33に向けて直進走行(前進走行)すれば、端子22を端子33に接続、すなわち作業車1を充電ステーション3にドッキングすることができる。
図10に示すように、ワイヤ部351,352間の距離d31は、作業車1の左右の磁気センサ51L,51R間の距離d11よりも長く、かつ、ステーションワイヤ34の中心点P0とワイヤ部353との距離d32は、前後の磁気センサ51L,51C間の距離d12よりも短い。したがって、作業車1が目標姿勢にあるとき、前側の磁気センサ51L,51Rは突出ワイヤ35の内側の領域AR1に位置する。
以上のように構成された充電ステーション3に対し、作業車1のECU40は、目標姿勢を介して作業車1を充電ステーション3まで誘導するように構成される。図3に示すように、ECU40は機能的構成として、作業モータ17を制御する作業制御部40Aと、走行モータ18を制御する走行制御部40Bとを有する。走行制御部40Bは、トレースモード、作業モードおよび帰還モードで、それぞれ異なる態様で走行モータ18を制御する。
とくに帰還モード時には、走行制御部40Bは磁気センサ51L,51R,51Cの検出値に基づき走行モータ18を制御する。帰還モード時の構成として、走行制御部40Bは、後側磁気センサ51Cがステーションワイヤ34の中心点(目標位置)P0に位置するように作業車1を誘導する第1誘導部41と、中心点P0に位置する磁気センサ51Cを中心に、作業車1の中心線CL1と充電ステーション3の中心線CL3とが一致する目標姿勢に作業車1を旋回させる第2誘導部42と、目標姿勢にある作業車1を前進走行させて端子22,33同士を接続する第3誘導部43とを有する。
図11は、ECU40、とくに走行制御部40Bでの処理(帰還処理)の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、作業モードで作業車1が走行しているときに、電圧センサ58の検出値が所定値以下となり、バッテリ20への充電が必要と判定されると開始される。
まず、ステップS1で、走行モータ18に制御信号を出力し、充電ステーション3に向けて作業車1を走行させる。充電ステーション3の位置(緯度、経度)は、予め作業車1をトレースモードで走行させ、端子22,33同士を接続したときのGPSセンサ55の検出値を記憶することで、把握することができる。一方、作業車1の現在位置はGPSセンサ55により検出することができ、向きは方位センサ54あるいはYawセンサ52により検出することができる。したがって、ステップS1では、GPSセンサ55と方位センサ54あるいはYawセンサ52の検出値に基づき作業車1を充電ステーション3に接近させる。
次いで、ステップS2で、磁気センサ51が充電ステーション3を検出したか否かを判定する。帰還モード時には、充電ステーション3のECU302からの指令により、第1パターンでエリアワイヤ2に電流が流され、エリアワイヤ2および突出ワイヤ35の周囲には第1パターンの磁界が生じる。一方、ステーションワイヤ34には第1パターンとは異なる第2パターンで電流が流され、ステーションワイヤ34の周囲には第1パターンとは異なる第2パターンの磁界が生じる。したがって、ステップS2では、磁気センサ51が、ステーションワイヤ34の周囲の第2パターンの磁界を検出したか否か、換言すれば、作業車1がステーションワイヤ34に接近したか否かを判定する。図12(a)に示すように、磁気センサ51がステーションワイヤ34を中心とした磁界検出エリアAR2内に進入すると、ステップS2で肯定される。ステップS2で肯定されるとステップS3に進み、否定されるとステップS1に戻る。
ステップS3では、前側磁気センサ51L,51Rにより検出される第2パターンの磁界の検出値(磁界強度)Hが互いに等しいか否か、すなわち、一対の磁気センサ51L,51Rからステーションワイヤ34までの距離が互いに等しいか否かを判定する。作業車1の中心線CL1がステーションワイヤ34の中心点P0上に存在すれば、一対の磁気センサ51L,51Rの検出値が互いに等しい。この場合には、ステップS3が肯定されてステップS4に進み、走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を直進走行させる。
一方、一対の磁気センサ51L,51Rの検出値Hが互いに異なる場合、ステップS3で否定されてステップS5に進み、これら磁気センサ51L,51Rの検出値Hが互いに等しくなるように走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を旋回させる。例えば図12(a)に示す状態では、左側の磁気センサ51Lの方がステーションワイヤ34に近いため、左側の磁気センサ51Lの検出値Hの方が右側の磁気センサ51Rの検出値Hよりも大きい。この場合、ステップS5で左右の磁気センサ51L,51Rの検出値Hが一致するように作業車1を左側(矢印A方向)に旋回させた後、ステップS3に戻る。これにより図12(b)に示すように作業車1がステーションワイヤ34に接近する。
次いで、ステップS6で、後側磁気センサ51Cによる第2パターンの磁界の検出値に基づき、磁気センサ51Cがステーションワイヤ34の内側に進入したか否か、より厳密にいうと磁気センサ51Cが中心点P0に位置するか否かを判定する。これは、作業車1が目標位置に到達したか否かの判定である。ステップS6で肯定されるとステップS7に進み、否定されるとステップS3に戻る。ステップS7では、走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を停止させる。
次いで、ステップS8で、前側磁気センサ51L,51Rにより検出されるエリアワイヤ2(突出ワイヤ35)を流れる第1パターンの磁界の検出値Hに基づき、磁気センサ51Cの位置を中心にして、作業車1の中心線CL1が充電ステーション3の中心線CL3に一致するように作業車1を旋回させる。例えば図12(c)に示すように磁気センサ51L,51Rがいずれも作業領域ARに位置する場合、より大きな検出値Hを示す磁気センサ(この例では磁気センサ51L)の方向(矢印A方向)に作業車1を旋回させる。一方、作業車1を旋回させる途中で、磁気センサ51L,51Rの一方(例えば51L)が作業領域ARの外側に出た場合、すなわち突出ワイヤ35の内側の領域AR1に存在する場合、その外側の磁気センサ51Lの方向に作業車1を旋回させる。
次いで、ステップS9で、磁気センサ51L,51Rの検出値に基づき、両方の前側磁気センサ51L,51Rが作業領域ARの外側に位置するか否かを判定する。ステップS9で肯定されるとステップS10に進み、否定されるとステップS8に戻る。ステップS10では、走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を停止させる。これにより図12(d)に示すように作業車1の中心線CL1が充電ステーション3の中心線CL3に一致するとともに、作業車1の端子22が充電ステーション3の端子33に対向し、作業車1が目標姿勢となる。
次いで、ステップS11で、走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を前進走行させる。次いで、ステップS12で、例えば電圧センサ58の検出値に基づき端子22が端子33に接続したか否か、すなわちドッキングが完了したか否かを判定する。ステップS12で肯定されるとステップS13に進み、否定されるとステップS11に戻る。ステップS13では、走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を停止させる。以上で、走行制御部40Bでの帰還処理を終了する。
以上の処理のうち、ステップS1〜ステップS7の処理は第1誘導部で実行され、ステップS8〜ステップS10の処理は第2誘導部で実行され、ステップS11〜ステップS13の処理は第3誘導部で実行される。
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)エリアワイヤ2によって画定される作業領域ARを自律走行する無人作業車1にはバッテリ20(二次電池の一例)が設けられる。このバッテリ20を充電する充電ステーション3は、一対の充電端子33と、作業領域ARの内側に配置された環状、より具体的には円形状のステーションワイヤ34と、エリアワイヤ2に直列に接続されるとともにステーションワイヤ34に向けて突出し、一対の充電端子33の中間点とステーションワイヤ34の中心とを結ぶ中心線CL3に対し対称形状を呈する突出ワイヤ35とを備える(図8)。
このように充電ステーション3を構成することで、充電ステーション3をエリアワイヤ2上ではなく、エリアワイヤ2の内側の任意の位置に配置することができ、充電ステーション3の配置の自由度が向上する。この場合、充電ステーション3は、円形状のステーションワイヤ34を有するので、作業車1に設けられた磁気センサ51L,51R,51Cによりステーションワイヤ34の周囲の磁界を検出し、その検出値に基づいて走行モータ18を制御することで、磁気センサ51Cの位置をステーションワイヤ34の中心点P0に一致させることができる。また、作業車1に設けられた磁気センサ51L,51Rにより左右対称形状の突出ワイヤ35の磁界を検出し、その検出値に基づいて走行モータ18を制御することで、作業車1の中心線CL1の位置を充電ステーション3の中心線CL3の位置に一致させることができる。これにより作業車1の端子22を充電ステーション3の端子33に接続するドッキング動作を行うことができる。また、トレース走行により充電ステーションまで帰還する場合には、同一の走行経路を通過するため、轍が生じやすいが、本実施形態によればトレース走行が不要であるため、轍の発生も抑制できる。トレース走行をして帰還する場合に比べ、充電ステーション3までの帰還の道のりが短く、効率的な帰還動作を実現可能である。
(2)ステーションワイヤ34は円形であるので(図8)、ステーションワイヤ34からは週方向均等に磁界が生じる。このため、作業車1をどの方向からでもステーションワイヤ34に近づけ、磁気センサ51Cをステーションワイヤ34の中心点P0に容易かつ精度よく位置させることができる。すなわち、作業車1を精度よく目標位置に導くことができる。なお、この場合の円形は、厳密な意味での円形でなく実質的な円形(略円形)も含む。
(3)充電ステーション3は、ステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とから互いに異なる態様の磁界(第1パターンの磁界、第2パターンの磁界)が生じるようにステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とに流れる電流を制御するECU302および信号発生器303(電流制御部の一例)をさらに備える(図9)。これにより磁気センサ51は突出ワイヤ35(エリアワイヤ2)からの磁界とステーションワイヤ34からの磁界とを区別して検出することができ、ステーションワイヤ34からの磁界を用いた作業車1の位置制御を精度よく実行可能である。
(4)無人作業車の充電ステーション誘導装置は、走行モータ18(走行手段の一例)とバッテリ20(二次電池の一例)とを有し、エリアワイヤ2によって画定される作業領域ARを自律走行する無人作業車1と、バッテリ20を充電する充電ステーション3とを備え、作業領域ARの内側に位置する作業車1を充電ステーション3に誘導する。充電ステーション3は、一対の充電端子33と、作業領域ARの内側に配置された円形のステーションワイヤ34と、エリアワイヤ2に直列に接続されるとともにステーションワイヤ34に向けて突出し、一対の充電端子33の中間点とステーションワイヤ34の中心点P0とを結ぶ中心線(第1軸線)CL3に対し対称形状を呈する突出ワイヤ35とを備える(図8)。作業車1は、一対の充電端子33に接続可能な一対の相手側の充電端子22と、一対の相手側充電端子22の中間点を通って作業車1の直進方向に延在する中心線(第2軸線)CL1上に設けられ、ステーションワイヤ34を流れる電流によって生じる磁界を検出する磁気センサ51L,51R,51C(第1磁気検出器の一例)と、中心線CL1に対して対称に設けられ、ステーションワイヤ34および突出ワイヤ35を流れる電流によって生じる磁界を検出する一対の磁気センサ51L,51R(第2磁気検出器の一例)と、磁気センサ51Cおよび一対の磁気センサ51L,51Rの検出値に基づき、中心線CL1が中心線CL3に一致するように走行モータ18を制御する走行制御部40B(走行制御手段の一例)とを備える(図2,3)。
このように充電ステーション3が、中心線CL3上に配置されたステーションワイヤ34と中心線CL3に対して対称に配置された突出ワイヤ35とを有し、これらワイヤ34,35に対応して作業車1が、中心線CL1上に配置された磁気センサ51Cと中心線CL1に対して対称に配置された一対の磁気センサ51L,51Rとを有し、磁気センサ51L,51R,51Cの検出値に基づき作業車1の走行動作を制御することで(図11)、帰還モード時に、トレース走行によらなくても、作業車1の中心線CL1を充電ステーション3の中心線CL3に一致させることができる。したがって、充電ステーション3をエリアワイヤ2上以外の任意の位置および任意の向きに配置することができ、充電ステーション3の配置の自由度が向上する。
(5)走行制御部40Bは、磁気センサ51Cがステーションワイヤ34の中心部(中心点P0)に位置するように作業車1を誘導する第1誘導部41と、ステーションワイヤ34の中心部に位置する磁気センサ51Cを中心に、中心線CL1が中心線CL3に一致するように作業車1を旋回させる第2誘導部42と、中心線CL1が中心線CL3に一致した作業車1を充電端子33に向けて直進走行させる第3誘導部43とを有する(図3)。これにより作業車1を充電ステーション3の近傍まで導いた後に、作業車1の向きを充電ステーション3の向きに一致させ、その後、目標姿勢にある作業車1を端子33に向けて直進走行させるので、作業車1を容易かつ確実に充電ステーション3に誘導することができ、端子22,33同士の確実な接続が可能である。
(6)一対の磁気センサ51L,51R間の距離d11は、突出ワイヤ35の中心線CL3に直交する方向における幅(ワイヤ部間の距離d31)よりも短い(図10)。したがって、作業車1の中心線CL1が充電ステーション3の中心線CL3に一致した状態において、一対の磁気センサ51L,51Rが突出ワイヤ35の内側、すなわち作業領域ARの外側の領域AR1に位置し、磁気センサ51L,51Rの検出値を用いて作業車1を精度よく目標姿勢に移動することができる。
(7)突出ワイヤ35は略コ字状を呈し、ステーションワイヤ34は突出ワイヤ35の外側(領域AR1の外側)に配置される(図8)。このため、突出ワイヤ35とステーションワイヤ34とからそれぞれ互いに離れた位置で磁界が発生し、作業車1を位置制御した後、作業車1を容易に姿勢制御することができる。
−変形例−
上記実施形態は、例えば以下のような変形が可能である。上記実施形態では、ステーションワイヤ34を作業領域ARの内側に配置したが、外側に配置することもできる。この場合、突出ワイヤ35は、ステーションワイヤ34に向け作業領域ARの外側に突出して配置すればよい。充電ステーション3がステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とを有することで、充電ステーション3をエリアワイヤ2の内側または外側の任意の位置に配置できるが、充電ステーション3をエリアワイヤ2上に配置してもよい。この場合にも、充電ステーション3を任意の向きに配置できるため、充電ステーション3の配置の自由度が高まる。
上記実施形態では、ステーションワイヤ34を円形(略円形)に構成したが、円形以外であってもよい。上記実施形態では、突出ワイヤ35をエリアワイヤ2に直列に接続したが、エリアワイヤ2と突出ワイヤ35とを別々に基板30に接続するようにしてもよい。エリアワイヤ2から分岐して突出ワイヤ35を設けてもよい。上記実施形態では、突出ワイヤ35を略コ字状に構成したが、ステーションワイヤ34に向けて突出し、一対の充電端子33の中間点とステーションワイヤ34の中心点P0とを結ぶ軸線CL3に対し対称形状を呈するのであれば、突出ワイヤ35の形状はいかなるものでもよい。例えばワイヤ部351,352が円弧状ないし曲線状に構成されてもよく、ワイヤ部353が円弧状ないし曲線状に構成されてもよい。
上記実施形態では、ECU302からの指令により信号発生器303を制御して、ステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とから互いに異なる態様の磁界が生じるようにステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とに流れる電流を制御したが、電流制御部の構成はこれに限らない。バッテリ20(二次電池)を充電する充電ステーション3は、ステーションワイヤ34と突出ワイヤ35とを有すればよく、充電ステーション3の構成は図7〜9に示したものに限らない。ステーションワイヤ34と突出ワイヤ35を、ベース3aと一体に設けてもよく、ベース3aと別に設けてもよい。
上記実施形態では、一対の相手側充電端子22の中間点を通って作業車1の直進方向に延在する中心線CL1(第2軸線)上に磁気センサ51Cを設け、ステーションワイヤ34を流れる電流によって生じる磁界を検出するようにしたが、ステーションワイヤ34の中心点P0に導かれる第1磁気検出器の構成はこれに限らない。例えば、磁気センサ51Cを車幅方向に複数(例えば3個)設け、中心線CL1上に位置する磁気センサ51Cをステーションワイヤ34の中心点P0に導くようにしてもよい。上記実施形態では、中心線CL1に対し対称に一対の磁気センサ51L,51Rを設け、ステーションワイヤ34および突出ワイヤ35を流れる電流によって生じる磁界を検出するようにしたが、一対の第2磁気検出器の構成はこれに限らない。
上記実施形態では、磁気センサ51L,51R,51Cの検出値Hに基づき、第1誘導部41と第2誘導部42と第3誘導部43とを有する走行制御部40Bにより、中心線CL1が中心線CL3に一致するように走行モータ18を制御したが、走行制御手段の構成はこれに限らない。作業車1の基準姿勢におけるステーションワイヤ34および突出ワイヤ35と磁気センサ51L,51R,51Cとの位置関係(図10)は一例であり、他の位置関係とすることもできる。例えば基準姿勢においてワイヤ部351,352上に磁気センサ51L,51Rが配置されるようにしてもよい。
上記実施形態では、左右一対の走行モータ18L,18Rにより作業車1を走行かつ旋回させるようにしたが、走行手段の構成はこれに限らない。例えば、前輪13あるいは後輪14を操舵可能なアクチュエータを作業車1に搭載し、アクチュエータの駆動により作業車を旋回させるようにしてもよい。したがって、作業車1の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、GPSセンサ55により作業車1の現在位置を検出するようにしたが、車輪速センサ57の検出値により作業車1の走行距離を検出するとともに、Yawセンサ52の検出値により作業車1の向きを検出することで、作業車1の現在位置を検出するようにしてもよい。この場合、GPSセンサ55を省略することができる。したがって、位置検出手段の構成は上述したものに限らない。
上記実施形態は、芝刈り作業車に適用したが、本発明は、これに限らず種々の自律走行可能な無人作業車に適用可能である。したがって、作業機16の構成は上述したものに限らない。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態および変形例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。すなわち、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能である。