JP2016185909A - 美白用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】新たな美白用組成物を提供することを課題とする。【解決手段】L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を含む美白用組成物。【選択図】図4

Description

本発明は、L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を含む美白用組成物に関する。また本発明は、L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物由来のジペプチドを含む美白用組成物に関する。
化粧料などに用いられる美白成分としてL−アスコルビン酸が著名である。L−アスコルビン酸は、チロシナーゼ酵素の働きによりメラニン色素が産生されることによるシミ、ソバカス、色黒を予防する。このような目的で使用される製剤として、L−アスコルビン酸のグルコース配糖体であるL−アスコルビン酸2グルコシドを配合した皮膚化粧料(特許文献1)、L−アスコルビン酸2グルコシドとアミノ酸又はその誘導体を組み合わせて配合する皮膚外用剤(特許文献2)が安全な美白剤として広く利用されている。L−アスコルビン酸2グルコシドは、水溶性が高く、細胞内でL−アスコルビン酸に変換されて、メラニン生成抑制作用、メラニン還元作用、メラニン排泄促進作用により美白効果を発揮する。
また、その他のアスコルビン酸誘導体や、コウジ酸、コウジ酸誘導体、ハイドロキノン誘導体なども美白剤として広く利用されている。
一方、より安全な美白剤をめざして種々の物質や組成物が探索され、それを利用した新たな美白剤が提案されている。特許文献3には、植物由来の美白剤として、青汁の原料であるケールの抽出物をメラニン生成抑制剤として利用する発明が記載されている。
また、特許文献4には、L−アスコルビン酸の効果を増強する成分が探索されており、その一つとしてグレープフルーツの抽出物がメラノサイト細胞におけるビタミンCトランスポーター産生促進作用を有し、その作用によってL−アスコルビン酸の美白効果が増強されることを発見し、これを利用したアスコルビン酸グルコシドとグレープフルーツ抽出物とエキナセアを配合した美白用組成物が記載されている。
また特許文献5には、乳のホエータンパク質加水分解物を有効成分とする美白剤が記載されており、その活性の本体が平均ペプチド鎖長で2〜8のオリゴペプチドにあることが記載されている。特許文献6にはセリンプロテアーゼ阻害作用を有するジペプチド又はトリペプチドがアスコルビン酸と併用すると美白作用を示すことが記載されている。特許文献7には、ゼラチンをエンド型プロテアーゼとエキソ型プロテアーゼを組み合わせて加水分解して得られるペプチド混合物中に存在する特定の配列のジペプチド又はトリペプチドが、エンドセリン−1の発現を抑制し、メラノサイトのメラニン産生を抑制することが記載されている。特許文献8には、コラーゲンの加水分解物、あるいは類似ペプチドとミカン属植物抽出物を有効成分とする美白用の皮膚外用剤が提案されている。
また、近年皮膚の弾力性や、シワの改善を目的としてコラーゲンやコラーゲンの加水分解物を経口摂取することが行われており、「美容ドリンク」や「美肌飲料」などの名称でコラーゲンやコラーゲンの加水分解物を含む飲料が市販されている。そして、コラーゲンやコラーゲンの加水分解物を経口摂取すると特定のペプチドが血液中に出現することが知られている。さらに、そのペプチドが線維芽細胞のI型コラーゲンの産生を促進することが知られている(特許文献9)。特許文献10にはサメの皮を原料とするコラーゲンペプチドの製造方法が記載されている。このような技術を利用し、魚類の皮を原料とした酵素分解物としては、サメの皮やサケの皮を原料としたものが知られている。また、ウシや豚のコラーゲンを原料とした酵素分解物が知られている。これらの酵素分解物は、コラーゲントリペプチドを60%以上もの高濃度で含んでおり、コラーゲンペプチドとして食品や化粧料の原料として広く普及している。しかし、これらの公知のコラーゲンペプチドは、本発明が目的とする美白効果を有しないことが確認されている。
特開平4−182412号公報 特開平4−182413号公報 特許第3914117号公報 特許第5571897号公報 特開2008−255090号公報 特開2006−273808号公報 国際公開第2014/175001号 特開2002−356413号公報 特許第4995155号 特開2003−284586号公報
本発明者は、コラーゲンをコラゲナーゼで加水分解したときに出現する多数のトリペプチドやジペプチドを含む加水分解物について研究している。その過程でティラピアの皮由来の分解物がメラニン産生抑制作用を有し、さらにL−アスコルビン酸2グルコシドの美白効果を増強することを発見し、本発明を完成するにいたった。
したがって、本発明は、新たな美白用組成物を提供することを課題とする。
本発明は、次の構成からなる。
(1)L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を含む美白用組成物。
(2)ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物が次の特徴を有するものである(1)の組成物。
(A)HPLCによるゲルろ過平均分子量 :300Da
(B)加水分解物中の乾燥物当たりのジペプチド含有量 :20〜40質量%
(C)加水分解物中の乾燥物当たりのトリペプチド含有量:30〜45質量%
(D)メラノーマ細胞に対してメラニン産生抑制作用を示す。
(3)加水分解物が、酸又はプロテアーゼ、あるいは酸とプロテアーゼの併用による分解物である(1)又は(2)記載の組成物。
(4)プロテアーゼがコラゲナーゼ又はブロメラインによるものである(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物を含む美白用化粧料又は美白用医薬部外品。
(6)L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物由来の1種以上のジペプチドを含む美白用組成物。
(7)L−アスコルビン酸2グルコシドとPro−Gly又はPro−Hypの配列を有するジペプチドのいずれか又は両方を含む美白用組成物。
(8)(6)又は(7)に記載の組成物を含む美白用化粧料又は美白用医薬部外品。
本発明により、新たな美白用組成物が提供される。また本発明の美白用組成物は、従来L−アスコルビン酸2グルコシドが美白効果を発揮しない濃度であっても、美白効果が得られるようになるため、L−アスコルビン酸2グルコシドの使用量を低減することができる。またL−アスコルビン酸2グルコシドの美白効果を増強するため、より有効な美白用化粧料や美白用医薬部外品が提供される。
L−アスコルビン酸2グルコシドのメラニン産生抑制作用を試験した結果を示すグラフである。 ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物のメラニン産生抑制作用を試験した結果を示すグラフである。 L−アスコルビン酸2グルコシドにトリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物を添加した場合のメラニン産生抑制効果を試験した結果を示すグラフである。 L−アスコルビン酸2グルコシドにティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を添加した場合のメラニン産生抑制効果を試験した結果を示すグラフである。 L−アスコルビン酸2グルコシドに合成ジペプチドPro−Glyを添加した場合のメラニン産生抑制効果を試験した結果を示すグラフである。 L−アスコルビン酸2グルコシドに合成ジペプチドPro−Hypを添加した場合のメラニン産生抑制効果を試験した結果を示すグラフである。
本発明は、L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を含む美白用組成物、およびL−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物由来のジペプチドを含む美白用組成物に係るものである。
L−アスコルビン酸2グルコシドは、アスコルビン酸にグルコースが結合した化合物であって、L−アスコルビン酸の2位の炭素にグルコースが結合した化合物である。L−アスコルビン酸2グルコシドは公知の手法により得られるものであり、特許文献1に、美白用途について記載されている。市販されているL−アスコルビン酸2グルコシドとしては、例えば、株式会社林原の「Ascorbic acid2−glucoside」を例示できる。医薬部外品として承認されるためには2質量%以上のアスコルビン酸グルコシドを安定に配合することが求められる。本発明では、2〜3質量%配合することが好ましい。
本発明でいうティラピアとは、ナイルティラピアをいう。
ナイルティラピアは、アフリカ原産の淡水性の食用魚で、シクリッド科(カワスズメ科)のナイルティラピア(Nile tilapia、Oreochromis niloticus)に分類されるものであり、近年日本に導入され、流通名を「イズミダイ」又は「チカダイ」として、食用のために養殖されている。
本発明の美白用組成物、美白用化粧料又は美白用医薬部外品に用いるティラピアの皮のコラーゲン加水分解物は、このティラピアの魚皮を原料として調製されるものである。
魚類の皮を原料とした酵素分解物は、サメの皮やサケの皮を原料としたものが知られている。また、ウシや豚のコラーゲンを原料とした酵素分解物が知られている。しかし、これらの酵素分解物は上記したように、メラニン産生抑制作用を有しない。
本発明におけるティラピア皮の加水分解物は、ティラピアの加工過程で廃棄されていた魚皮をそのまま、あるいは冷凍保存されていた魚皮を、酸又はコラゲナーゼやブロメラインによる酵素分解、あるいは両方を組み合わせて加水分解したものである。ゲルろ過HPLC法によって測定した場合、平均分子量が300Daを示す。ティラピア皮は、主成分としてコラーゲンを高濃度に含んでいる。したがってティラピアの皮のコラーゲン加水分解物には、コラーゲン由来のジペプチド、トリペプチド、トリペプチド以上のオリゴペプチドを高濃度に含んでいる。ティラピア皮の加水分解は、公知の酵素分解法、あるいは酸加水分解法と酵素分解法により行うことが好ましい。ティラピアの皮原料の溶解、分解は、通常はたんぱく質分解酵素を用いて行う。
たんぱく質分解酵素は、植物由来のものや、微生物由来のものが利用できる。酵素はエンド型、エキソ型いずれのタイプでも利用できる。たんぱく質分解酵素は、適宜選択すればよく、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。たんぱく質分解酵素を2種以上用いる場合、各たんぱく質分解酵素を混合して用いても、別々に用いても、もしくは時間差を設けて混合して用いてもよい。
酵素処理は、使用する酵素の至適pH、至適温度条件下で行うが、処理時間は使用する原料の水分含量や、原料片の大きさ、原料の容量と処理液の比率などから適切な条件を設定すればよい。酵素処理時間は、一般に、冷凍又は生皮原料の場合、数時間かそれ以上、乾燥原料では十数時間以上である。
前記たんぱく質分解酵素の活性は、一般的には、原料の皮中のたんぱく質1gに対して400ユニット以上であることが好ましく、特に、2000ユニット以上であることが好ましい。
酵素分解や酸による加水分解の終了の目安は、加水分解によって生成するトリペプチドとジペプチドの含有量を指標として判断する。本発明においては、原料とする全たんぱく質あたりジペプチドが20質量%以上、トリペプチドが30質量%以上となったとき、加水分解を終了させることが好ましい。なお、ジペプチド及びトリペプチドの生成量は、HPLCを用いたゲルろ過クロマトグラフィーにジペプチドとトリペプチドに相当するピークのピーク面積よって確認することができる。
本発明に係る酵素分解によって得られたティラピアの皮のコラーゲン加水分解物の溶液は、加熱により酵素を失活させることが好ましい。失活工程を行ったとき、混在する熱凝固性のたんぱく質により微小な懸濁物質や沈殿物質を生ずることがある。この現象を改善するため、失活工程でpHを酸性側とし、失活工程の後、前記皮の組織の分解により得られた加水分解物は、さらに精製処理を行うことが好ましい。この場合、失活工程のpHは3.8またはこれ以下が好ましい。加水分解溶液は、クエン酸やクエン酸ソーダ等を用いて中性〜弱酸性のpHに調整することが好ましい。精製処理には、例えば、珪藻土ろ過等を用いて不純物を除去することが好ましい。珪藻土などのろ過助剤を使用して、ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物に含有されるコラーゲンペプチドなどを含むペプチド溶液と残渣とを分離する。また、塩濃度を低下させる場合には、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂またはそれらの両方を用いて、脱イオン処理をおこなう。精製処理で得られるティラピアの皮のコラーゲン加水分解物は、溶液状態で良好な透明性を有する。得られた溶液は適切な乾燥方法、例えば食品素材などに広く用いられるスプレードライヤーを用いて容易に粉末化して製品とすることが出来る。
得られるティラピアの皮のコラーゲン加水分解物は、必要により活性炭などの吸着剤を使用して臭いを低減させることができる。
かくして得られることのできるティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を乾燥させた乾燥物は、次の成分を含有していることで特定される。
窒素分 :13.5〜18質量%
HPLCによるゲルろ過平均分子量:300Da
ジペプチド含有量 :20〜40質量%
トリペプチド含有量 :30〜45質量%
また、水に溶けやすく、熱によってゲル化しない。
加水分解物中に存在するジペプチドを分析した場合に、Gly−Pro、Pro−Gly、Pro−Hyp、Hyp−Glyの配列を有するものが多く検出される。またトリペプチドとしては、Gly−Pro−Hyp、Gly−Pro−Ser、Gly−Pro−Alaなどのいわゆるコラーゲントリペプチドの構造を有するものが検出される。各ペプチドのうちジペプチドは、加水分解物の乾燥物中に次の量が含有されている。
Gly−Pro:10〜12質量%
Pro−Gly:0.4〜0.6質量%
Pro−Hyp:5〜7質量%
Hyp−Gly:2.5〜3.5質量%
本発明の美白用組成物においては、ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物をL−アスコルビン酸2グルコシドの1〜50倍量、特に好ましくは10〜20倍量を含有させることで、L−アスコルビン酸2グルコシドの美白作用を増強する。
本発明の第2の発明であるL−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物由来の1種以上のジペプチドを含む美白用組成物に用いるジペプチドは、前記のティラピアの皮のコラーゲン加水分解物をさらに、ゲルろ過クロマトグラフィー等によってジペプチドに相当する分子量250〜300Daの分子量の画分を分取して得ることができる。また下記の試験例で示すように、L−アスコルビン酸2グルコシドの美白作用を促進するジペプチドであるPro−Gly又はPro−Hypの配列を有する合成ペプチドを使用しても良い。
本発明の美白用組成物においては、ジペプチドあるいはPro−Gly又はPro−Hypの配列を有する合成ペプチドをL−アスコルビン酸2グルコシドの1〜50倍量、特に好ましくは10〜20倍量を含有させることで、L−アスコルビン酸2グルコシドの美白作用を増強する。
本発明に係る美白用組成物そのまま、美白用化粧料、美白用医薬部外品とすることができる。また、種々の剤型として投与することができる。例えば、経口投与剤としては錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等が挙げられ、非経口投与剤としては、注射剤のほか、坐剤、噴霧剤、経皮吸収剤、外用剤、化粧用剤等の形態を挙げることができる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水、油脂等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、滑剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。
本発明に係る美白用組成物、美白用化粧料、美白用医薬部外品において、L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物及びL−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物由来のジペプチドを含む美白用組成物やこれを配合した製剤の投与量は、患者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により、適宜選択・決定されるが、例えば、1日あたりL−アスコルビン酸2グルコシドとして0.1〜10mg/kg体重となるように投与するとき、この場合にティラピアの皮のコラーゲン加水分解物又はジペプチドとしては、1mg〜200mg/kg体重を投与することとなる。また、この組成物又は製剤は、1日1〜数回に分けて投与することができる。
以下に、試験例、処方例を示して本発明を具体的に説明する。
<メラニン産生抑制試験>
本発明の美白用組成物のメラニン産生抑制効果を確認するため以下の試験を行った。
試験1:L−アスコルビン酸2グルコシドのメラニン産生抑制有効濃度確認試験
1)L−アスコルビン酸2グルコシド溶液の調製(陽性対照の試験溶液)
メラニン産生抑制作用が明らかなL−アスコルビン酸2グルコシドをDulbecco’s Phosphate−Buffered Salines (D−PBS) (Life Technologies) に溶解し、培養時に所定の濃度になるようにあらかじめ希釈した溶液を調製した。
2)評価に用いる細胞
細胞株;マウスメラノーマB16−F10細胞株(理研サイネス)
3)細胞培養
前記のマウスメラノーマB16−F10細胞株は、37 ℃、5%二酸化炭素、95%空気の雰囲気下にて培養を行った。培地は不活性化したウシ胎児血清(FBS) (Hyclone Laboratories)10%、Penicillin−Streptomycin(Sigma Aldrich)1%を添加したDMEM high glucose, liquid (DMEM) (Life Technologies)を用いた。通常培養には100mmディッシュに細胞を播種し80〜90%コンフルエント時に0.05%Trypsin−EDTA (Sigma Aldrich)にて剥離し継代を行った。
4)L−アスコルビン酸2グルコシドによるメラニン産生抑制効果の測定
96wellプレートに、マウスメラノーマB16−F10細胞株を8×10cells/wellになるように細胞密度を調整したDMEM100μLを播種した。6時間前培養の後、最終濃度が、0、0.125、0.25、0.5、1mg/mLになるように希釈した3)に記載したL−アスコルビン酸2グルコシドの希釈液を添加して、さらに2日間培養行った。
培養終了後に、各wellから上清を取り除き、細胞をD−PBSで洗浄の後、1% sodium dodecyl sulfate(和光純薬工業株式会社製)を含むPBS 150μL添加し、超音波破砕機により細胞を破砕した。次いで、バイオドットを用いて細胞破砕液を全量ニトロセルロース膜でろ過し、メラニンを膜に吸着させた。吸着ブロットされたメラニン量を、画像処理ソフト「imageJ(Rasband, W.S., ImageJ, U. S. National Institutes of Health, Bethesda, Maryland, USA参照)」を用いて計測した。この数値を、次に述べる細胞生存率で除して各wellにおけるメラニン産生量として算出した。
5)細胞生存率の測定
3)と同様にしてマウスメラノーマB16−F10細胞株を培養する。
すなわち、96wellプレートに、マウスメラノーマB16−F10細胞株を8×10cells/wellになるように調整したDMEM100μLを播種し、6時間前培養の後に、同様に希釈済みL−アスコルビン酸2グルコシド溶液を添加して2日間培養を行った。培養が終了後、上清を取り除きD−PBSで洗浄の後、再度D−PBSに5mg/mLに溶解した3−[4,5−dimethylthiazol−2−yl] −2,5−diphenyltetrazolium bromide(以下MTT) (和光純薬工業株式会社製)を20分の1量添加したDMEM100μLを添加し、2時間インキュベートした。次いで、MTT混合培地を除去した後、2−プロパノール (和光純薬工業株式会社製) 100μLを各wellに添加しマイクロプレートシェーカーにて30分撹拌してホルマザンを溶解し、570nmと630nmの吸光度を測定した。細胞生存率はcontrolの吸光度(A570−A630)を100%とし、サンプル添加時の吸光度 (A570−A630)から百分率を算出した。
6)統計処理
L−アスコルビン酸2グルコシド濃度が0のときのメラニン産生量を100%として、各濃度におけるメラニン産生量を百分率で求めた。得られたデータは、L−アスコルビン酸濃度が0のときの値(control)に対する分散性をF検定にて確認後、等分散性と仮定できる場合Student’sのt検定、仮定できない場合にはWelchのt検定を行った。
7)結果
96wellの平均のメラニン産生量(L−アスコルビン酸2グルコシド無添加時のメラニン産生量を100とする百分率)を図1に示す。
L−アスコルビン酸2グルコシドは、本試験のメラノーマ細胞株を用いて試験を行うと、0.25mg/mL以上の濃度において、濃度依存性でメラニン産生を抑制することが確認された。また0.125mg/mLでメラニン産生のわずかな増加が確認されたことから、L−アスコルビン酸2グルコシドのメラノーマ細胞に対する無作用濃度は0.1mg/mL以下であると予想された。
試験2:ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物のメラニン産生抑制試験
1)試験試料
・ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物
ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物として、酵素分解物法によって調製した下記の表1に記載の成分を有する加水分解物を使用した。また比較対照として市販のトリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物CTP−F(一丸ファルコス株式会社製)を用いた。
2)評価に用いる細胞
細胞株;マウスメラノーマB16−F10細胞株(理研サイネス)
3)細胞培養
前記の試験1と同様にマウスメラノーマB16−F10細胞株は、37℃、5%二酸化炭素、95%空気の雰囲気下にて培養を行った。培地は不活性化したウシ胎児血清(FBS) (Hyclone Laboratories)10%、Penicillin−Streptomycin(Sigma Aldrich)1%を添加したDMEM high glucose, liquid (DMEM) (Life Technologies)を用いた。通常培養には100mmディッシュに細胞を播種し80〜90%コンフルエント時に0.05%Trypsin−EDTA (Sigma Aldrich)にて剥離し継代を行った。
4)メラニン産生抑制効果の測定
96wellプレートに、マウスメラノーマB16−F10細胞株を8×10cells/wellになるように細胞密度を調整したDMEM100μLを播種した。6時間前培養の後、最終濃度が、0、1.25、2.5、5mg/mLになるように希釈したティラピアの皮のコラーゲン加水分解物、トリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物を添加して、さらに2日間培養を行った。
培養終了後に、各wellから上清を取り除き、細胞をD−PBSで洗浄の後、1% sodium dodecyl sulfate(和光純薬工業株式会社製)を含むPBS 150μL添加し、超音波破砕機により細胞を破砕した。次いで、バイオドットを用いて細胞破砕液を全量ニトロセルロース膜でろ過し、メラニンを膜に吸着させた。吸着ブロットされたメラニン量を、画像処理ソフト「imageJ(Rasband, W.S., ImageJ, U. S. NationalInstitutes of Health, Bethesda, Maryland, USA参照)」を用いて計測した。この数値を、次に述べる細胞生存率で除して各wellにおけるメラニン産生量として算出した。
5)細胞生存率の測定
3)と同様にしてマウスメラノーマB16−F10細胞株を培養する。
すなわち、96wellプレートに、マウスメラノーマB16−F10細胞株を8×10cells/wellになるように調整したDMEM100μLを播種し、6時間前培養の後に、同様に希釈済みティラピアの皮のコラーゲン加水分解物、トリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物溶液を添加して2日間培養を行った。培養終了後、上清を取り除きD−PBSで洗浄の後、再度D−PBSに5mg/mLに溶解した3−[4,5−dimethylthiazol−2−yl] −2,5−diphenyltetrazolium bromide(以下MTT) (和光純薬工業株式会社製)を20分の1量添加したDMEM100μLを添加し2時間インキュベートした。次いで、MTT混合培地を除去した後、2−プロパノール (和光純薬工業株式会社製) 100μLを各wellに添加しマイクロプレートシェーカーにて30分撹拌してホルマザンを溶解し、570nmと630nmの吸光度を測定した。細胞生存率はcontrolの吸光度(A570−A630)を100%とし、サンプル添加時の吸光度 (A570−A630)から百分率を算出した。
6)統計処理
ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物又はトリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物濃度が0のときのメラニン産生量を100%として、各濃度におけるメラニン産生量を百分率で求めた。得られたデータは、L−アスコルビン酸濃度が0のときの値(control)に対する分散性をF検定にて確認後、等分散性と仮定できる場合Student’sのt検定、仮定できない場合にはWelchのt検定を行った。
7)結果
トリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物(CTP−F)はメラニン産生に変化がなく、抑制作用は認められなかった。一方、ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物はメラニン産生抑制が観察された。ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物の96wellの平均のメラニン産生量(L−アスコルビン酸2グルコシド無添加時のメラニン産生量を100とする百分率)を図2に示す。
ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物の5mg/mLが、L−アスコルビン酸2グルコシド0.5mg/mLとほぼ同等のメラニン産生抑制能を有することが確認された。また、図2からこの作用はL−アスコルビン酸2グルコシドと同様に濃度依存性があることが明らかとなった。この作用はティラピアの皮のコラーゲン加水分解物に特有の作用であるものと考えられる。また効果の発現の境界値は1.25mg/mLであることがわかった。
試験3:ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物によるL−アスコルビン酸2グルコシドのメラニン産生抑制効果の増強作用確認試験
試験1、試験2の結果に基づいて、L−アスコルビン酸2グルコシドの最小無作用量にティラピアの皮のコラーゲン加水分解物の最小無作用量を併用した場合のメラニン産生に及ぼす効果の確認試験を行った。
1)試験方法
試験1、試験2と同様にメラノーマB16−F10細胞株を培養し、これにL−アスコルビン酸2グルコシドを0、0.1mg/mLになるように添加し、さらにティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を1.25mg/mLになるように添加して培養し、メラニン産生量を測定した。培養条件、測定条件、データの解析条件は試験1、2と同様に実施した。また比較対照としてトリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物トリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物を同様の添加量、培養条件、測定条件、データの解析条件で行った。
2)結果
トリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物(CTP−F)を添加した96wellの平均のメラニン産生量について、無添加の96well平均のメラニン産生量(L−アスコルビン酸2グルコシド無添加時のメラニン産生量を100とする百分率)を図3に示す。トリペプチドを高含有するサメの皮由来のコラーゲン加水分解物(CTP−F)は、図3に示すとおり、L−アスコルビン酸2グルコシドの有無に係らず、B16−F10細胞株のメラニン産生には影響を及ぼさなかった。
ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を添加した96wellの平均のメラニン産生量について、無添加の96well平均のメラニン産生量(L−アスコルビン酸2グルコシド無添加時のメラニン産生量を100とする百分率)を図4に示す。ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物は、メラニン産生抑制作用が観察され、その効果は、L−アスコルビン酸2グルコシドの単独添加の場合の0.5〜1mg/mLに相当した。すなわちティラピアの皮のコラーゲン加水分解物は、L−アスコルビン酸2グルコシドのメラニン産生抑制作用を5〜10倍程度高めた。
以上の試験例1、2、3の結果から、L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を含む美白用組成物は、L−アスコルビン酸2グルコシドの美白作用が増強され、その結果L−アスコルビン酸の配合量を減少することができる。
試験4:ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物に含まれるジペプチドによるL−アスコルビン酸2グルコシドのメラニン産生抑制効果の促進作用確認試験
1)試験方法
試験3と同様の条件で、ティラピアの皮に含まれているコラーゲン加水分解物のジペプチドのうち、合成ペプチドPro−Gly及びPro−Hypの作用を確認した。すなわちメラノーマB16−F10株を培養し、これにL−アスコルビン酸2グルコシドを0.1mg/mLになるように添加し、さらにPro−Gly又はPro−Hypを5mg/mLになるように添加した後培養し、メラニン産生量を測定した。培養条件、測定条件、データの解析条件は試験1、2と同様に実施した。
2)結果
合成ペプチドPro−Glyを添加した96wellの平均のメラニン産生量について、無添加の96well平均のメラニン産生量(L−アスコルビン酸2グルコシド無添加時のメラニン産生量を100とする百分率)を図5に示す。Pro−Glyは、メラニン産生抑制作用が観察され、その効果は、L−アスコルビン酸2グルコシドの単独添加の場合の0.5〜1mg/mLに相当した。すなわちジペプチドPro−Gly5mg/mLは、L−アスコルビン酸2グルコシドのメラニン産生抑制作用を5〜10倍程度高めた。
同じく、合成ペプチドPro−Hypを添加した96wellの平均のメラニン産生量について、無添加の96well平均のメラニン産生量(L−アスコルビン酸2グルコシド無添加時のメラニン産生量を100とする百分率)を図6に示す。Pro−Hypは、メラニン産生抑制が観察され、その効果は、L−アスコルビン酸2グルコシドの単独添加の場合の0.5〜1mg/mLに相当した。すなわちジペプチドPro−Hyp5mg/mLは、L−アスコルビン酸2グルコシドのメラニン産生抑制作用を5〜10倍程度高めた。
試験4の結果、ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物中のジペプチドは、L−アスコルビン酸2グルコシドの美白作用を増強することが判明した。
以下にティラピアの皮のコラーゲン加水分解物(表1に記載のもの)を配合した外用クリーム、経口用錠剤、外用乳液の処方例を示す。この処方例は、目的によりティラピアの皮のコラーゲン加水分解物の配合量を適宜増減してもよい。
[処方例1]外用クリーム
下記の処方(単位は質量%)により、外用クリームを製造した。
(1) ベヘニルアルコール 6
(2) ステアリン酸 2
(3) 水添ラノリン 4
(4) スクワラン 9
(5) オクチルドデカノール 10
(6) POE(25)セチルアルコールエーテル 3
(7) モノステアリン酸グリセリン 2
(8) ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物 1
(9) L−アスコルビン酸2グルコシド 0.5
(10)防腐剤 適量
(11)1,3ブチレングリコール 6
(12)PEG1500 4
(13)精製水 残余
〔製法〕上記成分(1)〜(7)を80℃に加熱溶解し油相とする。成分(8)〜(13)を70℃に加熱溶解し水相とする。油相に水相を徐々に加え乳化し、撹拌しながら40℃まで冷却し、さらに30℃まで撹拌冷却して外用クリームを得た。
[処方例2]経口用錠剤
下記の処方(単位は質量%)に基づいて常法どおり、経口用錠剤を製造した。
(1) ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物 2
(2) L−アスコルビン酸2グルコシド 0.2
(3) 乳糖 82.8
(4) コーンスターチ 14
(5) グアーガム 1
[処方例3]外用乳液
下記の処方(単位は質量%)により、外用乳液を製造した。
(1) ジプロピレングリコール 9
(2) ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物 1
(3) L−アスコルビン酸2グルコシド 2
(4) (ヒドロキシエチルアクリル酸/アクリルジメチルタウリンNa)コポリマー
0.2
(5) スクワラン 1
(6) ポリソルベート60 0.3
(7) ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)1
(8) グリセリン 5
(9) ジメチコン 5
(10)精製水 残余
(11)カルボマー 0.2
(12)ベタイン 2
(13)エタノール 3
(14)水酸化カリウム 0.065
〔製法〕上記成分(5)〜(7)、(9)を80℃に加熱溶解し油相とする。成分(1)〜(4)、(8)、(10)〜(12)を70℃に加熱溶解し水相とする。油相に水相を徐々に加え乳化し、(14)を(10)の一部に撹拌溶解したものを加え、撹拌しながら30℃まで冷却する。さらに成分(13)を加え、外用乳液を得た。

Claims (8)

  1. L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物を含む美白用組成物。
  2. ティラピアの皮のコラーゲン加水分解物が次の特徴を有するものである請求項1の組成物。
    (A)HPLCによるゲルろ過平均分子量 :300Da
    (B)加水分解物中の乾燥物当たりのジペプチド含有量 :20〜40質量%
    (C)加水分解物中の乾燥物当たりのトリペプチド含有量:30〜45質量%
    (D)メラノーマ細胞に対してメラニン産生抑制作用を示す。
  3. 加水分解物が、酸又はプロテアーゼ、あるいは酸とプロテアーゼの併用による分解物である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. プロテアーゼがコラゲナーゼ又はブロメラインによるものである請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を含む美白用化粧料又は美白用医薬部外品。
  6. L−アスコルビン酸2グルコシドとティラピアの皮のコラーゲン加水分解物由来の1種以上のジペプチドを含む美白用組成物。
  7. L−アスコルビン酸2グルコシドとPro−Gly又はPro−Hypの配列を有するジペプチドのいずれか又は両方を含む美白用組成物。
  8. 請求項6又は7に記載の組成物を含む美白用化粧料又は美白用医薬部外品。
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