以下、本発明の発泡積層シートの製造方法及び発泡積層シートについて詳細に説明する。
≪発泡積層シートの製造方法≫
本発明の発泡積層シートの製造方法は、基材上に、少なくとも発泡樹脂層及び表面に凹凸形状を有する硬化性樹脂層がこの順に積層されている発泡積層シートの製造方法であって、
(1)基材上に、発泡剤含有樹脂層を積層する工程1、
(2)表面凹凸加工が施された剥離フィルムの表面凹凸加工面に硬化性樹脂層が形成された転写シートを用いて、前記発泡剤含有樹脂層上に、表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層を転写により積層する工程2、及び
(3)前記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とする工程3、
を順に有することを特徴とする。
上記特徴を有する本発明の発泡積層シートの製造方法は、転写により表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層を形成しているので、表面に、機械的エンボスやケミカルエンボスでは形成できなかった微細な凹凸形状を形成することができる。また、転写により表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層を形成した後で、発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とするので、発泡剤含有樹脂層を発泡させる工程を有していても、高低差が特に小さい凹凸形状の消失が抑制される。このため、表面の艶上がりが抑制されて、低艶感を示す意匠性を有する発泡積層シートを製造することができる。
以下、本発明の発泡積層シートの製造方法、発泡積層シート、及び当該発泡積層シートを作製するための積層シートの層構成について説明するが、以下では、基材から見て発泡剤含有樹脂層又は発泡樹脂層が積層されている方向を「上」又は「おもて面」と称し、基材から見て反対の方向を「下」又は「裏面」と称する。
本発明の製造方法においては、上記工程3において、発泡剤含有樹脂層を発泡させる前の状態のシートを積層シートと称する。上記積層シート及び発泡積層シートの各層の構成を、以下に詳述する。
基材
基材としては限定されず、公知の繊維質シート(裏打紙)などが利用できる。
具体的には、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理したもの);難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙;繊維混抄紙(パルプと合成繊維とを混合して抄紙したもの)などが挙げられる。なお、本発明に使用される繊維質シートには、分類上、不織布に該当しているものも包含される。
基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m2程度が好ましく、50〜120g/m2程度がより好ましい。
発泡剤含有樹脂層
上記積層シートは、基材上に発泡剤含有樹脂層が積層されている。当該発泡剤含有樹脂層が発泡して、発泡樹脂層を形成する。
発泡剤含有樹脂層は、樹脂成分及び発泡剤を含有し、後記の加熱により発泡して発泡樹脂層となるものであれば限定されない。
発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分は、特に制限されないが、ポリエチレン、及びエチレンとαオレフィン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体(以下、「エチレン共重合体」と略記する)からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。また、ポリエチレン及びエチレン共重合体は、融点及びメルトフローレート(MFR)の観点で押出し製膜に適しており、発泡剤含有樹脂層の形成の簡便性の点でも利点がある。
上記ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体であってもよく、またエチレンとαオレフィンの共重合体であってもよい。当該共重合体のコモノマーとして使用されるαオレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜8の直鎖状又は分岐状のαオレフィンが挙げられる。エチレンとαオレフィンの共重合体としては、具体的には、密度0.942g/cm3以上の高密度ポリエチレン(HDPE)及び密度0.93g/cm3以上0.942g/cm3未満の中密度ポリエチレン(MDPE)、密度0.91g/cm3以上0.93g/cm3未満の低密度ポリエチレン(LDPE)、密度が0.85g/cm3以上0.91g/cm3未満の線状低密度ポリエチレン、(LLDPE)等が挙げられる。これらのポリエチレンは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらポリエチレンの中でも、発泡積層シートのカールの発生を抑制することができるという点で、密度が低いポリエチレンを用いることが好ましく、LDPE若しくはLLDPE、又はこれらを混合して用いることが好ましい。
また、上記エチレン共重合体としては、例えば、カルボン酸ビニルエステル、α,β不飽和カルボン酸、α,β不飽和カルボン酸エステルを構成コモノマーとして含むエチレン共重合体が挙げられる。上記カルボン酸ビニルエステルとしては、具体的には、酢酸ビニル等が挙げられる。また、上記α,β不飽和カルボン酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。上記α,β不飽和カルボン酸エステルとしては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等が挙げられる。これらのコモノマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記エチレン共重合体として、具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)等が挙げられる。これらのエチレン共重合体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記エチレン共重合体におけるコモノマーの共重合比率としては、特に制限されないが、該エチレン共重合体の総重量当たり、5〜35重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましい。このような共重合比率を採用することにより、押出し製膜性をより高めることができる。具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体であれば、酢酸ビニルの共重合比率(VA量)としては、該共重合体の総重量当たり、9〜25重量%が好ましく、9〜20重量%がより好ましい。また、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体であれば、メタクリル酸メチルの共重合比率(MMA量)としては、該共重合体の総重量当たり、5〜25重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。
耐汚染性をより一層向上させ、更には優れた耐傷性を備えさせるという観点から、発泡剤含有樹脂層の樹脂成分として、好ましくは、ポリエチレン、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、エチレン−α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体;更に好ましくは、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体;特に好ましくはエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)が挙げられる。
発泡剤含有樹脂層の樹脂成分として、上記エチレン及び/又は上記エチレン共重合体を使用する場合、これらの樹脂成分以外に他の樹脂成分が1種以上含まれていてもよい。上記エチレン及び/又は上記エチレン共重合体と、他の樹脂成分を併用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、上記エチレン及び/又は上記エチレン共重合体と他の樹脂成分の総量当たり、上記エチレン及び/又は上記エチレン共重合体が占める割合として70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
また、上記ポリエチレン又は上記エチレン共重合体のMFRについては、特に制限されないが、押出し製膜性をより高めるという観点から、7〜500g/10分が好ましく、9〜130g/10分がより好ましい。なお、本発明において、MFRは、JIS K7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)記載の試験方法により測定した値である。試験条件は、JIS K6760記載の「190℃、21.18N(2.16kgf)」を採用したものである。
発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物としては、例えば、上記樹脂成分、発泡剤、無機充填剤、顔料、発泡助剤、架橋助剤等を含む樹脂組成物を好適に使用できる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として使用できる。
発泡剤含有樹脂層に使用される発泡剤としては公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系などの有機系熱分解型発泡剤や、マイクロカプセル型発泡剤、重曹などの無機系発泡剤等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定すればよい。具体的には、発泡倍率が7倍以上、好ましくは7〜10倍程度となるように設定すればよく、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100質量部に対して、4〜20質量部程度とすることが好ましい。
発泡剤含有樹脂層には、上記樹脂成分及び発泡剤の他に、必要に応じて、無機充填剤、顔料、発泡助剤、架橋助剤、安定剤、滑剤等の添加剤が含まれていてもよい。
発泡助剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物及び/又は脂肪酸金属塩が挙げられる。これらの発泡助剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの発泡助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3〜10質量部程度、好ましくは1〜5質量部程度が挙げられる。なお、これらの発泡助剤とEMAAとADCA発泡剤とを組み合わせて用いる場合には、発泡工程における焼けや発色団の形成により発泡樹脂層及び基材が黄変する傾向が見られることがある。そのような場合には、特開2009−197219号公報に説明されている通り、EMAAとADCA発泡剤と共に発泡助剤としてカルボン酸ヒドラジド化合物を用いることが好ましい。このとき、カルボン酸ヒドラジド化合物はADCA発泡剤1質量部に対して0.2〜1質量部程度用いることが好ましい。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。これらの無機充填剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0〜100質量部程度、好ましくは20〜70質量部程度が挙げられる。
顔料については、無機顔料及び有機顔料の別を問わず使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料として、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。これらの顔料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば10〜50質量部程度、好ましくは15〜30質量部程度が挙げられる。
発泡剤含有樹脂層の厚さは、目的とする発泡樹脂層の厚さと発泡倍率等を勘案して適宜設定されるが、例えば40〜100μm程度が挙げられる。
発泡剤含有樹脂層は、樹脂成分、発泡剤、必要に応じて他の添加剤を含む樹脂組成物を基材上に塗工することにより形成される。基材上に上記樹脂組成物を塗工する方法については、特に制限されないが、Tダイ押出し機による押出し製膜法(押出しラミネート)、カレンダー製膜法等の公知の製膜法により形成できるが、Tダイ押出し機による押出し製膜法が好ましい。なお、押出し製膜時のシリンダー温度及びダイス温度は樹脂の種類に応じて適宜設定すればよいが、一般に100〜140℃程度である。
非発泡樹脂層A
発泡剤含有樹脂層の上面には、絵柄模様層を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする目的で非発泡樹脂層Aが形成されていてもよい。
非発泡樹脂層Aは、極性樹脂を含有する。上記極性樹脂としては、極性を示すポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、極性を示すポリオレフィン系樹脂が好ましい。
極性を示すポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等の少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、耐傷性に優れ、且つ、上記発泡剤含有樹脂層との密着性に優れ、鱗片状剥離の抑制により優れる点で、エチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体が好ましい。
非発泡樹脂層A中の極性樹脂の含有量は、非発泡樹脂層Aを100質量%として、70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。極性樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、非発泡樹脂層Aが優れた耐傷性を示すことができる。
非発泡樹脂層Aの厚さは限定的ではないが、2〜50μm程度が好ましく、5〜20μm程度がより好ましい。
非発泡樹脂層B
発泡剤含有樹脂層の裏面(基材が積層される面)には、基材との接着力を向上させる目的で非発泡樹脂層B(接着樹脂層)を有していてもよい。
接着樹脂層の樹脂成分としては、特に限定はないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。EVAは公知又は市販のものを使用することができる。特に、酢酸ビニル成分(VA成分)が10〜46質量%であるものが好ましく、15〜41質量%であるものがより好ましい。
接着樹脂層の厚さは限定的ではないが、3〜50μm程度が好ましく、5〜20μm程度がより好ましい。
本発明では、非発泡樹脂層Bを設ける場合には、後記製造上の観点からも、非発泡樹脂層B、発泡剤含有樹脂層及び非泡樹脂層Aが順に形成された態様が好ましい。
絵柄模様層
上記発泡剤含有樹脂層、又は非発泡樹脂層Aの上に、必要に応じて絵柄模様層を形成してもよい。
絵柄模様層は、積層シート及び発泡積層シートに意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様等が挙げられ、目的に応じて選択できる。
絵柄模様層は、例えば、絵柄模様を印刷することで形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用してもよい。
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
結着材樹脂は、基材シートの種類に応じて設定できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
プライマー層
発泡剤含有樹脂層(発泡樹脂層)、非発泡樹脂層A、絵柄模様層、又は後述するフィルム層の上には、必要に応じてプライマー層を形成してもよい。プライマー層を形成することで、各層間の密着性を向上させることができる。
プライマー層に含有される樹脂としては、例えば、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等を使用することができるが、特にアクリル、塩素化ポリプロピレン等が望ましい。
アクリルとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなるアクリル樹脂が挙げられる。
ポリウレタンとはポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする組成物である。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が用いられる。
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2−4トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4−4ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。
プライマー層の厚さは限定的ではないが、0.1〜10μm程度が好ましく、0.1〜5μm程度がより好ましい。
フィルム層
発泡剤含有樹脂層(発泡樹脂層)、非発泡樹脂層A又は絵柄模様層の上には、必要に応じてフィルム層を形成してもよい。フィルム層を形成することにより、当該フィルム層の表面が平滑であるので、転写により硬化性樹脂層を積層する際に転写が容易であり、且つ、硬化性樹脂層の密着性を高めることができる。また、フィルム層を形成することにより、発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とし、発泡積層シートを形成した際に、当該発泡積層シートの表面の平滑性を向上させることができる。
フィルム層を形成する位置は限定的ではないが、絵柄模様層を形成する場合には、絵柄模様層の上面に形成することが好ましい。フィルム層を設けることにより、発泡剤含有樹脂層(発泡樹脂層)及び絵柄模様層を保護することができ、積層シートの表面物性を更に向上させることができる。また各層間の密着性を向上させることができる。また、硬化性樹脂層によっても絵柄模様層を保護することが可能であるため、フィルム層は、絵柄模様層よりも下に形成されていてもよい。
フィルム層が透明性樹脂層である場合、フィルム層に使用できる樹脂としては、透明であれば着色されていてもよい。透明性樹脂層を絵柄模様層のおもて面に形成する場合は、絵柄模様層が視認できる範囲内で半透明であってもよい。
フィルム層は、ポリエチレン及び/又はエチレン共重合体を含有する層であることが好ましい。ポリエチレン及び/又はエチレン共重合体としてはエチレンと炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、アイオノマー等が挙げられるが、本発明では、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体を使用することが好ましい。
フィルム層の厚みは特に限定されないが、一般的には3〜30μm程度が好ましく、5〜20μm程度がより好ましい。
硬化性樹脂層
発泡剤含有樹脂層(発泡樹脂層)、非発泡樹脂層A、絵柄模様層、フィルム層、又はプライマー層の表面には、艶調整、絵柄模様層や発泡樹脂層の保護等を意図して硬化性樹脂層が形成される。
硬化性樹脂層としては、硬化性樹脂を樹脂成分として含有していれば特に限定されない。硬化性樹脂層の形成方法としては、グラビア印刷などの公知の方法が採用できる。
硬化性樹脂としては通常熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂が用いられるが、発泡積層シートの表面強度(耐スクラッチ性など)、耐汚染性、絵柄模様層の保護性能を向上させる場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。
硬化性樹脂層に用いられる電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線硬化型樹脂として慣用される重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。以下に代表例を記載する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、他の(メタ)と記載された部分についても同様である。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、中でもラジカル重合性不飽和基を持つアクリレート系オリゴマーが好ましく、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系、ポリカーボネート(メタ)アクリレート系、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート系等が挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトンポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
電離放射線硬化型樹脂組成物として紫外線硬化型樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等が挙げられる。また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化型樹脂組成物として電子線硬化型樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化型樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性を得ることができる。
硬化性樹脂層には、所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、抗菌剤、防カビ剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えば、抗菌剤としては無機化合物に銀イオンを担持させた銀系無機抗菌剤が挙げられ、防カビ剤としてはピリジン系化合物や有機ヨウ素系化合物等が挙げられ、マット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
硬化性樹脂層の厚みは限定的ではないが、1〜20μm程度が好ましい。
エンボス
積層シート又は発泡積層シートのおもて面には、微細な凹凸形状による意匠性を損なわない程度であれば、エンボス模様を付してもよい。この場合、最表面層(基材と反対側)の上からエンボス加工すれば良い。エンボス加工は、エンボス版の押圧等、公知の手段により実施することができる。例えば、最表面層が硬化性樹脂層である場合は、そのおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、幾何学模様、万線条溝、輪郭模様等がある。
(発泡積層シート)
発泡積層シートは、上記積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる。発泡時の加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。また、発泡樹脂層の発泡倍率は、6倍以上であることが好ましく、7〜10倍程度であることがより好ましい。発泡倍率を上述の範囲とすることで、使用される樹脂量が低減されて低コスト化を図ることができ、また、発泡積層シートの不燃性を高めることができる。
(工程1)
本発明の製造方法の工程1は、基材上に、発泡剤含有樹脂層を積層する工程である。基材上に発泡剤含有樹脂層を積層する方法としては特に限定されず、上述のように、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂成分、発泡剤、必要に応じて他の添加剤を含む樹脂組成物を基材上に塗工することにより形成する方法が挙げられる。
基材上に上記樹脂組成物を塗工する方法については特に制限されないが、上述のように、Tダイ押出し機による押出し製膜法(押出しラミネート)、カレンダー製膜法等の公知の製膜法等が挙げられる。また、押出し製膜時のシリンダー温度及びダイス温度についても上述の通りである。
発泡剤含有樹脂層の片面に非発泡樹脂層Aを形成する場合や、発泡剤含有樹脂層の両面に非発泡樹脂層A及びBを形成する場合には、Tダイ押出し機による同時押出し製膜が好適である。例えば、両面に非発泡樹脂層形成する場合には、3つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより3層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合であって、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する場合には、押出し機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これが発泡剤含有樹脂層表面の異物となり易い。そのため、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、上記のように3層同時押出し製膜することが好ましい。即ち、発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し製膜することにより、上記目やにの発生を抑制することができる。
発泡剤含有樹脂層を製膜後は、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋して発泡樹脂層の表面強度、発泡特性等を調整することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましく、175〜200kV程度がより好ましい。照射量は、10〜100kGy程度が好ましく、10〜50kGy程度がより好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
発泡剤含有樹脂層上には、必要に応じて、上述の絵柄模様層、フィルム層及びプライマー層を任意の順序で形成してもよい。これらの各層は、印刷、塗布などのコーティング、押出し製膜等を組み合わせることにより積層でき、印刷、塗布等のコーティングは常法に従って行うことができる。
以上説明した工程1により、基材上に、発泡剤含有樹脂層が積層される。
(工程2)
工程2は、表面凹凸加工が施された剥離フィルムの表面凹凸加工面に硬化性樹脂層が形成された転写シートを用いて、上記発泡剤含有樹脂層上に、表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層を転写により積層する工程である。
剥離フィルムの材質としては、表面凹凸加工を施すことができ、硬化性樹脂層の転写に用いることができれば特に限定されず、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)等の樹脂が挙げられる。中でも、表面凹凸加工が容易な点で、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)が特に好ましい。また、剥離フィルムとしては二軸延伸ポリエステル樹脂により形成されたフィルムを用いることが好ましい。
剥離フィルムの厚みは、20〜100μmが好ましく、30〜50μmがより好ましい。剥離フィルムの厚みを上述の範囲とすることで、表面凹凸加工が容易であり、離型性に優れた剥離フィルムとなる。
剥離フィルムに表面凹凸加工を施す方法としては、剥離フィルムの表面に微細な凹凸形状を形成することができれば特に限定されないが、例えば、ヘアライン加工等の研削加工;ブラスト加工等の塑性加工;機械研磨、化学研磨等の研磨加工;レジスト層を用いたエッチング加工;モールド加工が挙げられる。また、バインダー樹脂を用いて微粒子を剥離フィルムの表面に付着させ、表面凹凸形状を形成する方法も挙げられる。これらの中でも、剥離フィルムの表面に容易に微細な表面凹凸形状を形成することができる点で、研削加工、塑性加工が好ましく、より具体的には、ブラスト加工、ヘアライン加工が好ましい。これらの表面凹凸加工は、1種単独で行ってもよいし、2種以上を混合して行ってもよい。
上記ブラスト加工としては、具体的には、圧縮空気を用いて研磨材を剥離フィルムの表面に吹き付けるサンド・ブラスト加工、回転するインペラーによる遠心力で研磨材を剥離フィルムの表面に吹き付けるショット・ブラスト加工などが挙げられる。ブラスト加工に用いられる研磨材としては特に限定されず、砂、金属、金属酸化物、ガラス、樹脂、ダイヤモンドなどが使用できる。
上記ヘアライン加工としては、具体的には、サンドペーパー、金属ブラシ、スチールウール、研磨材を不織布の表面に固着させた研磨布などを、剥離フィルムの表面に擦り付ける方法が挙げられる。剥離フィルムの表面に連続的にヘアライン加工を行う好ましい方法としては、研磨布をロールに巻き付けてなる研磨ロールを、剥離フィルムの走行方向と逆方向に回転させながら剥離フィルムの表面に擦り付ける方法や、研磨ロールを剥離フィルムの走行方向と同一方向に、剥離フィルムの走行速度より速い速度で回転させながら剥離フィルムの表面に擦り付ける方法が挙げられる。研磨布に用いる研磨材としては、上記ブラスト加工と同様のものが例示される。
剥離フィルムの表面凹凸加工面の最大高さRzは、1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。Rzが小さ過ぎると硬化性樹脂層の凹凸形状が小さ過ぎて意匠を視認できないおそれがあり、大き過ぎると、低艶感が十分でないおそれがあり、見る角度によって意匠が変化するような優れた意匠を示す発泡積層シートを製造できないおそれがある。
なお、本明細書において、最大高さRzは、JIS B0601(2001)に準拠して測定される値である。
剥離フィルムの表面凹凸加工面の表面凹凸形状の算術平均粗さRaは、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。Raが大き過ぎると、硬化性樹脂層の低艶感が十分でないおそれがあり、見る角度によって意匠が変化するような優れた意匠を示す発泡積層シートを製造できないおそれがある。また、上記剥離フィルムの表面のRaは、0.05μm以上が好ましく、0.10μm以上がより好ましい。Raが小さ過ぎると、発泡積層シートの意匠を視認できないおそれがある。
なお、本明細書において、算術平均粗さRaは、JIS B0601(2001)に準拠して測定される値である。
転写シートを形成する剥離フィルムは、硬化性樹脂層の転写性を良好とするため、表面凹凸加工面に離型層が形成されていてもよい。離型層を形成する樹脂成分としては特に限定されず、例えばアクリルメラミン樹脂が挙げられる。また、離型層は、シリカ等の無機材料や反応性シリコーンを含有していてもよい。離型層が反応性シリコーンを含有することで、離型性に優れた転写シートとすることができる。
剥離フィルムが離型層を備える場合、予め表面凹凸加工を施したフィルム上に離型層を積層しても良いが、表面凹凸加工を施す前のフィルム上に離型層を積層し、離型層の上から表面凹凸加工を施すことが、所望の微細な凹凸形状を形成する点から好ましい。
離型層の厚みは特に限定されないが、0.1〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。
剥離フィルムの表面凹凸加工面に硬化性樹脂層を形成する方法としては特に限定されず、剥離フィルムの表面凹凸加工面に、硬化性樹脂層を形成するための樹脂組成物を、グラビア印刷等の公知の方法により塗布し、加熱硬化や電離放射線の照射により硬化させる方法が挙げられる。
上述の方法により、転写シートが調製される。当該転写シートを用いて、発泡剤含有樹脂層上に、表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層を転写により積層する方法としては特に限定されないが、例えば、発泡剤含有樹脂層と、転写シートの硬化性樹脂層側とを接触させ熱ラミネートを行った後、剥離フィルムを剥離する方法が挙げられる。
熱ラミネートの方法としては、加熱ゴムロールを用いたロールラミネーターにより熱ラミネートを行う方法が挙げられる。上記熱ラミネートの転写温度としては、150〜250℃が好ましく、180〜220℃がより好ましい。転写温度が低過ぎると、硬化性樹脂層の密着性が十分でないおそれがある。また、転写温度が高過ぎると、発泡剤含有樹脂層が発泡してしまうおそれがあり、且つ、剥離フィルムの剥離性が低下するおそれがある。
上記熱ラミネートの転写圧力としては、5〜20kgf/cm2が好ましく、10〜15kgf/cm2がより好ましい。転写圧力が低過ぎると、硬化性樹脂層の密着性が十分でないおそれがあり、転写圧力が高過ぎると、微細な凹凸意匠が消失するおそれがある。
上記熱ラミネートの転写速度としては、2〜50m/minが好ましく、10〜30m/minがより好ましい。転写速度が遅過ぎると、作業性に劣るおそれがあり、転写速度が速過ぎると、硬化性樹脂層の密着性が十分でないおそれがある。
工程2においては、上述の方法により発泡剤含有樹脂層と、転写シートの硬化性樹脂層側とを接触させ熱ラミネートを行った後、剥離フィルムを従来公知の方法により剥離すればよい。
上述の方法により発泡剤含有樹脂層上に硬化性樹脂層を形成すれば、硬化性樹脂層が表面凹凸形状を有することとなる。硬化性樹脂層の表面凹凸形状としては特に限定されないが、ブラスト加工、ヘアライン加工、梨地加工等の表面凹凸加工により形成された表面凹凸形状が挙げられる。これらの表面凹凸形状は、硬化性樹脂層の表面に、1種のみが施されていてもよいし、2種以上が混合して施されていてもよい。
上記硬化性樹脂層の表面凹凸形状の最大高さRzは、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。Rzが大き過ぎると、低艶感が十分でないおそれがあり、見る角度によって意匠が変化するような優れた意匠性を示す発泡積層シートを製造できないおそれがある。また、上記硬化性樹脂層のRzは、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。Rzが小さ過ぎると、発泡積層シートの意匠を視認できないおそれがある。
上記硬化性樹脂層の表面凹凸形状の算術平均粗さRaは、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。Raが大き過ぎると、低艶感が十分でないおそれがあり、見る角度によって意匠が変化するような優れた意匠性を示す発泡積層シートを製造できないおそれがある。また、上記硬化性樹脂層のRaは、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。Raが小さ過ぎると、発泡積層シートの意匠を視認できないおそれがある。
発泡積層シートの層構成を、フィルム層を有する層構成とする場合には、工程2において、フィルム層を介して発泡剤含有樹脂層上に、表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層を転写により積層するとよい。工程2において、フィルム層を形成することにより、当該フィルム層の表面が平滑であるので、転写により硬化性樹脂層を積層する際に転写が容易であり、且つ、硬化性樹脂層の密着性を高めることができる。また、フィルム層を形成することにより、工程3において発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とし、発泡積層シートを形成した際に、当該発泡積層シートの表面の平滑性を向上させることができる。
なお、上述のように発泡剤含有樹脂層(発泡樹脂層)の上に非発泡樹脂層A又は絵柄模様層を形成する場合、これらの層の上にフィルム層を形成した上で、当該フィルム層を介して表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層を転写により積層するとよい。
発泡積層シートの層構成を、プライマー層を有する層構成とする場合には、工程2において、プライマー層を介して発泡剤含有樹脂層上に、表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層を転写により積層するとよい。工程2において、プライマー層を形成することにより、硬化性樹脂層の密着性を高めることができる。
なお、上述のように発泡剤含有樹脂層(発泡樹脂層)の上に非発泡樹脂層A、絵柄模様層又はフィルム層を形成する場合、これらの層の上にプライマー層を形成した上で、当該プライマー層を介して表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層を転写により積層するとよい。
また、上記プライマー層を形成する場合、転写シートの剥離フィルム側とは反対側の面にプライマー層を形成し、上記工程2において発泡剤含有樹脂層、非発泡樹脂層A、絵柄模様層、又はフィルム層と、転写シートに形成されたプライマー層とを接触させて熱ラミネートを行ってもよい。
また、上記絵柄模様層を形成する場合、転写シートの剥離フィルム側とは反対側の面に形成し、上記工程2において発泡剤含有樹脂層、非発泡樹脂層A、又はフィルム層と、転写シートに形成された絵柄模様層とを接触させて熱ラミネートを行ってもよい。
以上説明した工程2により、発泡剤含有樹脂層上に、表面凹凸形状を有する硬化性樹脂層が転写により積層される。
(工程3)
工程3は、上記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とする工程である。
発泡時の加熱条件は、上述のように、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されず、加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
また、発泡樹脂層の発泡倍率は、上述のように6倍以上であることが好ましく、7〜10倍程度であることがより好ましい。発泡樹脂層の厚みは、300〜600μmが好ましく、400〜500μmがより好ましい。
また、エンボス模様を付す場合には、エンボス版の押圧等、公知の手段により実施する。
以上説明した工程3により、発泡剤含有樹脂層が発泡して発泡樹脂層となり、発泡積層シートが製造される。このようにして製造された発泡積層シートも、本発明の一つである。
本発明の発泡積層シートの総厚みは、好ましくは400〜700μm程度であり、より好ましくは500〜600μm程度である。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
(実施例1)
3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に厚み10μm/50μm/10μmになるように繊維質シートの上に押出し製膜し、非発泡樹脂層Bの表面温度を120℃として繊維質シートに積層した。これにより、繊維質シート/非発泡樹脂層B/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Aを下からこの順で積層した。繊維質シートとしては、壁紙用紙「WK−665、興人製」(厚み100μm)を用いた。
押出し条件は、非発泡樹脂層Aを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は130℃とし、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物を収容したシリンダー温度は120℃とし、非発泡樹脂層Bを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は120℃とした。また、ダイス温度はいずれも120℃とした。
各層は、それぞれ以下の成分を用いて形成した。
非発泡樹脂層Aは、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)「N1560、三井・デュポンポリケミカル社製」(MFR=60g/10分、MAA量:15質量%)により形成した。
発泡剤含有樹脂層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)「エバフレックスV406、三井・デュポンポリケミカル社製」(MFR=20g/10分、酢酸ビニル含量20質量%)100質量部、炭酸カルシウム(無機フィラー)「ホワイトンH、東洋ファインケミカル社製」40質量部、二酸化チタン(無機フィラー)「CR−63、石原産業社製」30質量部、発泡剤「ユニフォームウルトラAZ3050I、大塚化学社製」5質量部、発泡助剤「MFX−50E、大協化成工業社製」3質量部、発泡助剤「OF−101、ADEKA社製」5質量部により形成した。
非発泡樹脂層Bは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)「エバフレックスEV150、三井・デュポンポリケミカル社製」(酢酸ビニル含量33質量%)により形成した。
次に、非発泡樹脂層A上に、アクリル系水性インキ「ハイドリックWPインキ、大日精化工業社製」を2g/m2の塗布量で塗布し、絵柄模様層を形成した。
次に、絵柄模様層上に、マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて、フィルム層として、低密度ポリエチレン「ノバテックLC600A、日本ポリエチレン社製」(MFR:7g/10min)」(10μm)を押出してフィルム層を形成し、電子線(照射条件:200kV、5Mrad)を照射して積層体を調製した。
上述の積層体とは別途、剥離フィルムとして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム「エステフィルム E5001、東洋紡績社製」(50μm)を用意した。このPETフィルムを送りながら研磨ロールと接触させ、PETフィルムの送りスピードよりも研磨ロールの表面の周速の方が早くなるように研磨ロールを回転させて、PETフィルム表面に流れ方向にヘアライン加工を行い、表面凹凸加工が施された剥離フィルムを調製した。剥離フィルムの表面の最大高さRzは、5μmであった。
次に、表面凹凸加工が施された剥離フィルムの表面凹凸加工面に、ウレタンアクリレートオリゴマー、耐候剤(UVA及びHALS)、ウレタンビーズ及びワックスを含有する電離放射線硬化型樹脂組成物(昭和インク工業社製)を10g/m2の塗布量で塗布し、電子線(照射条件:165kV、5Mrad)を照射して、硬化性樹脂層を形成し、転写シートを調製した。
次に、積層体のフィルム層側と、転写シートの硬化性樹脂層側とを接触させ、加熱ゴムロールを用いたロールラミネーターにより、転写温度200℃、転写圧力10kgf、速度2m/minの条件で熱ラミネートを行った後、剥離フィルムを剥離して、積層シートを得た。
最後に、220℃で40秒加熱して、積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層として、発泡積層シートを得た。発泡積層シートの総厚みは520μmであり、発泡積層シート(硬化性樹脂層)の表面凹凸形状の十点平均粗さRzは、4μmであった。
(実施例2)
熱ラミネートの転写圧力を5kgfに変更した以外は実施例1と同様にして、発泡積層シートを製造した。
(比較例1)
発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とした後に、転写を行った以外は実施例1と同様にして、発泡積層シートを製造した。
(比較例2)
発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とした後に転写を行い、且つ、熱ラミネートの転写圧力を5kgfに変更した以外は実施例1と同様にして、発泡積層シートを製造した。
(比較例3)
発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とした後に転写を行い、且つ、熱ラミネートの転写圧力を2kgfに変更した以外は実施例1と同様にして、発泡積層シートを製造した。
実施例及び比較例で製造された発泡積層シートを用いて、以下の試験により特性を評価した。
(ヘアライン意匠の評価試験)
実施例及び比較例で作製した発泡積層シートの表面を目視で観察し、ヘアライン意匠の意匠感を下記評価基準に従って評価した。
○:概ね剥離フィルムのヘアライン感が再現されており、かつ全体的に低艶な意匠が得られている
△:軽微な艶上がりを生じ、一部の浅い凹凸形状が消失しているが、ヘアライン感は残っている
×:大幅な艶上がりを生じ、ヘアラインの意匠感が消失している
(硬化性樹脂層の密着性試験)
実施例及び比較例で作製した発泡積層シートの硬化性樹脂層と、フィルム層との密着性を下記方法により評価した。具体的には、実施例及び比較例で作製した発泡積層シートの表面にカッターナイフで切り込みを入れ、硬化性樹脂層を剥がすためのきっかけ部を作製した。当該きっかけ部から手で硬化性樹脂層を剥がし、下記評価基準に従って評価した。
○:全面にわたって均一に密着しており、硬化性樹脂層が材破する
△:部分的に密着性が低い箇所が存在し、硬化性樹脂層が部分的に材破しない箇所が存在する
×:全面にわたって密着性が低く、硬化性樹脂層が層間剥離する
結果を表1に示す。