本発明の一実施形態に係るX線回折測定方法を図1の工程フローを用いて説明する。また、その説明とともに、図1の工程フローのそれぞれの工程において用いられる機器、およびX線回折測定装置を含むX線回折測定システムについて、図2乃至図7を用いて説明する。このX線回折測定方法は、ビルディング、鉄橋、鉄塔、船舶、航空機といった建造物または大型製作物(以下、対象物OBという)において、複数の箇所に発生している応力を時間間隔を開けて複数回測定し、対象物OBの疲労度に関する評価を行うものである。
作業者は、まず測定前の準備として、対象物の疲労度を評価するために発生している応力を測定すべき箇所であって、鉄材等残留応力を測定することが可能である箇所を決定する。そして、決定した箇所において許容される応力を設定する。これらは、既存の建築技術、製作技術を用いて判断すればよい。このようにして測定前の準備が終了した後、作業者は図1の(A)に示される工程フローに従って、初回のX線回折測定作業を行う。
作業者は、まずステップS1にて、後述するX線回折測定装置を含むX線回折測定システム、電解研磨装置およびサンドブラスト装置を準備し、対象物OBの測定箇所までそれらを運搬する。次に作業者は、ステップS2にて、測定箇所の表面を電解研磨装置で電解研磨し、表面から加工層がなくなる程度の厚さを除去する。電解研磨装置は例えば図2に示される装置であり、市場で流通している装置である。端的に説明すると、電解研磨装置は電解液2を入れたトーチ1と、2つの電極間に定電流を流す定電流装置6からなる。トーチ1の中には負極となる電極3が挿入されており、トーチ1の先端は電解液が浸透するマスク4でシールされており、対象物OBが正極になるよう、電極5が対象物OBに接続される。定電流装置6により電極3と電極5間に対象物OBが正極となるよう通電が行われると、電解液2に接触している対象物OBが電界液2中に溶け出す電解研磨がされる。電解液2は、市販されているものの中から対象物OBの材質に適切なものを選択して使用すればよい。例えば、対象物OBが鉄やステンレスである場合、電界液2は、(株)日本科学エンジニアリング製のマイトスケーラー液SUS−4000Bを使用すればよい。研磨深さは残留応力と対象物OBに発生している応力とが等しくなる研磨深さとすればよく、本願発明者が試験したところ、100〜200μm程度研磨すればよい。研磨深さは、マスク4の面積が一定であれば通電電流と通電時間の積に比例するので、予め通電電流を設定値にしたときの通電時間と研磨深さとの関係を求めておき、所望する研磨深さに相当する通電時間だけ通電するようにすればよい。
作業者は、電解研磨が終了した後、電解研磨した箇所をウエス等で拭き取り、ステップS3にて電解研磨した箇所に対し揺動ありのX線回折測定を行う。この測定に使用するX線回折測定装置を含むX線回折測定システムについて図3乃至図6を用いて説明する。なお、このX線回折測定システムが先行技術文献の特許文献1に示されているX線回折測定システムと異なっている点はX線回折測定装置の筐体50を揺動させる揺動機構60を備えている点のみであるので、特許文献1に示されているX線回折測定システムで既に説明されている箇所は、簡略的に説明するにとどめる。
X線回折測定装置は、筐体50内に、X線出射器10、イメージングプレート15を取り付けるテーブル16、テーブル16を回転及び移動させるテーブル駆動機構20及び回折環を検出するレーザ検出装置30を備えている。そして、X線回折測定システムは、このX線回折測定装置とともに、コンピュータ装置90、高電圧電源95を備える。筐体50内には、上述した装置および機構に接続されて作動制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1において筐体50外に示された2点鎖線で示された各種回路は、筐体50内の2点鎖線内に納められている。
筐体50は、略直方体状に形成されているが、底面壁50aと前面壁50bの角部を紙面の表側から裏側に向けて切り欠くように設けた切欠き部壁50cと繋ぎ壁50dを有する。繋ぎ壁50dは側面壁と垂直であり底面壁50aと例えば30〜45度の所定の角度を有している。筐体50は、上面壁50eが固定版64を介して電動式ゴニオステージである揺動機構60の駆動ステージ61に連結され、揺動機構60により図3及び図4の紙面垂直方向周りに揺動するようになっている。揺動の回転中心は後述するX線出射器10から出射されるX線の光軸上にあり、揺動の回転中心から後述するイメージングプレート15までの距離は、設定された距離になっている。また、揺動機構60の固定ステージ62は側面板63に連結され、側面板63は支持アーム51に接続部(図示せず)で連結されており、この接続部も図3及び図4の紙面垂直周りに回転するようになっている。支持アーム51は、図示されていないアーム式移動装置の先端であり、アーム式移動装置を操作することにより、筐体50を任意の位置と姿勢にすることができる。
モータ制御回路88は、コンピュータ装置90を構成するコントローラ91から揺動の指令が入力すると、モータ65に駆動信号を出力し、モータ65を回転させる。これにより駆動ステージ61は固定ステージ62に対して駆動し、筐体50は揺動する。モータ65内にはエンコーダ65aが組み込まれており、エンコーダ65aはフィードモータ65が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号をモータ制御回路88と後述する回転角度検出回路89に出力する。モータ制御回路88には、予めコントローラ91から入力して設定された回転速度が記憶されており、モータ65に駆動信号を出力する際、エンコーダ65aから入力するパルス列信号の単位時間当たりのパルス数を用いて回転速度を計算し、計算した回転速度が設定されている回転速度になるよう、出力する駆動信号を制御する。これにより、モータ65は設定された速度で回転し、駆動ステージ61及び筐体50は設定された速度で揺動する。また、モータ制御回路88は、モータ65の回転方向を変化させる回転角度Aと回転角度−Aの2つが記憶されており、後述する回転角度検出回路89から入力する回転角度が記憶されている回転角度Aまたは回転角度−Aになると、出力する駆動信号の極性を変えてモータ65の回転方向を反対にさせる。これにより、駆動ステージ61及び筐体50は回転角度Aと回転角度−Aとの間を往復しながら設定された速度で揺動する。
回転角度検出回路89は、エンコーダ65aから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、モータ65の回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンさせて積算カウント値とし、積算カウント値から回転角度を計算してモータ制御回路88に出力する。回転角度が0となる位置は、図3及び図4に示すように駆動ステージ61の側面と固定ステージ62の側面が1つの平面内に含まれるときであり、これは、X線回折測定装置に電源を投入したときコントローラ91からの指令により設定される。電源の投入時において、コントローラ91はモータ制御回路88と回転角度検出回路89に回転角度0の設定を指令する信号を出力し、この指令が入力すると、モータ制御回路88は駆動ステージ61が駆動限界方向まで回転するよう駆動信号を出力し、回転角度検出回路89は、エンコーダ65aから入力するパルス列信号のパルス数をカウントする。そして、回転角度検出回路89は、パルス列信号のパルス数がカウントされなくなると、積算カウント値をリセットして0にし、駆動限界位置を意味する信号をモータ制御回路88に出力する。モータ制御回路88は駆動限界位置を意味する信号が入力すると、モータ65の回転方向を反対にさせ、駆動ステージ61を反対方向に回転させる。回転角度検出回路89には、駆動ステージ61が駆動限界位置から回転角度0の位置まで回転するときの積算カウント値が予め記憶されており、駆動限界位置を意味する信号を出力してからの積算カウント値が、記憶されている積算カウント値になったとき、駆動停止を意味する信号を回転角度検出回路89に出力し、積算カウント値をリセットして0にする。モータ制御回路88は駆動停止を意味する信号が入力すると、駆動信号の出力を停止する。これにより、図3及び図4に示すように駆動ステージ61の側面と固定ステージ62の側面が1つの平面内に含まれるときの回転角度が0になる。そして、上述したように駆動ステージ61及び筐体50は回転角度Aと回転角度−Aとの間を往復しながら揺動するので、図3及び図4に示された状態から右周りと左周りに回転角度Aの状態の間を揺動する。なお、回転角度Aは後述するように回折環が明瞭に撮像される回転角度に設定すればよいが、例えば5°の回転角度である。
X線出射器10は、筐体50内の上部にて図示左右方向に延設されて筐体50に固定されており、高電圧電源95からの高電圧の供給を受け、X線を図1の下方に向けて出射する。筐体50の底面壁50aは出射X線の光軸に対して略垂直であり、繋ぎ壁50dを対象物OBの表面と平行にすると、出射X線の光軸は対象物OBの表面の法線に対して繋ぎ壁50dと底面壁50aとが成す角度(例えば30〜45度)になる。X線制御回路71は、コントローラ91から指令が入力すると、X線出射器10から一定強度のX線が出射されるように、X線出射器10に高電圧電源95から供給される駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器10は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路71は、この冷却装置に供給される駆動信号も制御する。
テーブル駆動機構20は、筐体50に固定され、X線出射器10の下方にて移動ステージ21を備えている。移動ステージ21は、テーブル駆動機構20における対向する1対の板状のガイド25,25により挟まれていて、テーブル駆動機構20に固定されたフィードモータ22及びスクリューロッド23により、出射X線の光軸が含まれ底面壁50aの法線に平行な平面内であって、出射X線の光軸に垂直な方向に移動する。フィードモータ22内には、エンコーダ22aが組み込まれており、エンコーダ22aはフィードモータ22が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ91からの指令により作動する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路73は、移動ステージ21をフィードモータ22側へ移動させるようフィードモータ22に駆動信号を出力し、位置検出回路72は、ステージ21が移動限界位置に達して、エンコーダ22aからパルス列信号が入力されなくなると、駆動信号停止を意味する信号をフィードモータ制御回路73に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路73は、これにより駆動信号の出力を停止する。この移動限界位置が移動ステージ21の原点位置となり、位置検出回路72は、以後、移動ステージ21が移動するごとにエンコーダ22aからのパルス列信号をカウントし、移動方向によりカウント値を加算または減算して移動限界位置からの移動距離xを位置信号として出力する。フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ21の移動先位置を入力すると、位置検出回路72から入力する位置信号が入力した移動先位置に等しくなるまで、フィードモータ22を正転又は逆転駆動する。 また、フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ21の移動速度を入力すると、エンコーダ22aから入力したパルス列信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ21の移動速度を計算し、計算した移動速度が入力した移動速度になるようにフィードモータ22を駆動する。
一対のガイド25,25の上端は、板状の上壁26によって連結されており、上壁26には貫通孔26aが設けられていて、貫通孔26aの中心位置はX線出射器10の出射口11の中心位置に対向しており、出射X線は、出射口11及び貫通孔26aを介してテーブル駆動機構20内に入射する。後述するイメージングプレート15が回折環撮像位置にある状態(図3乃至図5の状態)において、移動ステージ21の貫通孔26aと対向する位置には、図5に拡大して示すように、貫通孔21aが形成されている。移動ステージ21には、出射口11及び貫通孔26a,21aの中心軸線位置を回転中心とするスピンドルモータ27が組み付けられており、スピンドルモータ27の出力軸27aは円筒状で断面円形の貫通孔27a1を有する。スピンドルモータ27の出力軸27aの反対側には、貫通孔27bが設けられ、貫通孔27bの内周面上には、貫通孔27bの一部の内径を小さくするための円筒状の通路部材28が固定されている。
また、スピンドルモータ27内にはエンコーダ27cが組み込まれ、エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75へ出力する。さらに、エンコーダ27cは、スピンドルモータ27が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、コントローラ91及び回転角度検出回路75に出力する。
スピンドルモータ制御回路74は、コントローラ91から回転速度を入力すると、エンコーダ27cから入力するパルス列信号の単位時間当たりのパルス数から計算される回転速度が、入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ27に出力する。回転角度検出回路75は、エンコーダ27cから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値から回転角度θpを計算してコントローラ91に出力する。また、回転角度検出回路75は、エンコーダ27cからインデックス信号を入力すると、カウント値を「0」に設定する。これが回転角度0°の位置である。なお、イメージングプレート15の回転角度0°の位置とは、後述するレーザ検出装置30からのレーザ照射によりイメージングプレート15に形成された回折環を読み取る際、インデックス信号を入力した時点でレーザ光が照射されている位置である。この位置は各半径位置においてあるためラインである。
テーブル16は、円形状であり、スピンドルモータ27の出力軸27aの先端部に固定されている。テーブル16は、下面中央部から下方へ突出した突出部17を有し、突出部17の外周面には、ねじ山が形成されている。テーブル16の下面にはイメージングプレート15が取付けられる。イメージングプレート15の中心部には貫通孔15aが設けられていて、この貫通孔15aに突出部17を通し、突出部17の外周面上にナット状の固定具18をねじ込むことにより、イメージングプレート15が、固定具18とテーブル16の間に挟まれて固定される。固定具18は、円筒状の部材で、内周面に、突出部17のねじ山に対応するねじ山が形成されている。
テーブル16、突出部17及び固定具18にも貫通孔16a,17a,18aがそれぞれ設けられており、貫通孔18aの内径は通路部材28の内径と同じである。すなわち、出射X線は、貫通孔26a,21a,通路部材28,貫通孔27b,27a1,16a,17a,18aを介して出射され、通路部材28の内径及び貫通孔18aの内径は小さいので、貫通孔18aから出射されるX線は貫通孔27a1の軸線に平行な平行光となり、筐体50の円形孔50c1から出射される。
イメージングプレート15は、移動ステージ21、スピンドルモータ27及びテーブル16と共に、回折環撮像位置へ移動し、また、後述する撮像した回折環を読み取る回折環読取り領域、及び回折環を消去する回折環消去領域へ移動する。この移動において、イメージングプレート15の中心軸は、出射X線の光軸とイメージングプレート15における回転角度0°の位置(ライン)とが成す平面内に保たれた状態で、出射X線の光軸に垂直な方向に移動する。
レーザ検出装置30は、回折環を撮像したイメージングプレート15にレーザ光を照射し、イメージングプレート15が発光した光の強度を検出する。レーザ検出装置30は、回折環撮像位置にあるイメージングプレート15からフィードモータ22側に充分離れており、対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置30によって遮られないようになっている。レーザ検出装置30は、レーザ光源31、コリメートレンズ32、反射鏡33、ダイクロイックミラー34、及び対物レンズ36等を備えた光ヘッドであり、光ディスクの記録再生に用いられるものと同様な構成である。 レーザ駆動回路77は、コントローラ91から指令が入力すると、フォトディテクタ42から入力する信号の強度が所定の強度になるようレーザ光源31に駆動信号を出力し。レーザ光源31からは一定強度のレーザ光が出射される。フォトディテクタ42は後述するダイクロイックミラー34で微量が反射し、集光レンズ41を介して受光したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力するが、ダイクロイックミラー34での反射の割合は一定であるので、出射したレーザ光の強度に相当する強度の信号を出力すると見なせる。コリメートレンズ32はレーザ光を平行光にし、反射鏡33はレーザ光を、ダイクロイックミラー34に向けて反射し、ダイクロイックミラー34は、入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。対物レンズ36は、レーザ光をイメージングプレート15の表面に集光させる。対物レンズ36には、フォーカスアクチュエータ37が組み付けられており。後述するフォーカスサーボにより、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
集光されたレーザ光が、イメージングプレート15の回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じ、回折環撮像時における回折X線の強度に応じた光が発生する。この輝尽発光により発生した光はレーザ光の波長よりも波長が短く、レーザ光の反射光と共に対物レンズ36を通過するが、ダイクロイックミラー34にて大部分が反射し、レーザ光の反射光は大部分が透過する。ダイクロイックミラー34で反射した光は、集光レンズ38、シリンドリカルレンズ39を介してフォトディテクタ40に入射する。フォトディテクタ40は、4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子からなり、4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅回路78に出力する。なお、シリンドリカルレンズ39は非点収差を生じさせるためにある。
増幅回路78は、入力した4つの受光信号(a,b,c,d)を増幅してフォーカスエラー信号生成回路79及びSUM信号生成回路80へ出力する。フォーカスエラー信号生成回路79は、非点収差法におけるフォーカスエラー信号を生成してフォーカスサーボ回路81へ出力する。フォーカスサーボ回路81は、コントローラ91により指令が入力すると作動開始し、入力したフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路82に出力する。ドライブ回路82は、入力したフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ37を駆動して、対物レンズ36をレーザ光の光軸方向に変位させ、これにより、レーザ光の焦点は常にイメージングプレート15の表面に合致する。
SUM信号生成回路80は、入力した4つの受光信号を合算してSUM信号を生成し、A/D変換回路83に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート15にて反射し、ダイクロイックミラー34で反射した微量のレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート15にて反射するレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、撮像された回折環における回折X線の強度に相当する。A/D変換回路83は、コントローラ91から指令が入力すると、入力するSUM信号の瞬時値をデジタルデータに変換してコントローラ91に出力する。
また、対物レンズ36に隣接して、LED光源43が設けられている。LED光源43は、LED駆動回路84によって制御されて、可視光を発して、イメージングプレート15に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路84は、コントローラ91から指令を入力すると、LED光源43に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
また、X線回折測定装置は、LED光源44を有する。LED光源44は、図4乃至図6に示すように、X線出射器10とテーブル駆動機構20の上壁26との間に配置されたプレート45の一端部下面に固定されている。プレート45は、その他端部上面にて、筐体50内に固定されたモータ46の出力軸46aに固着されており、モータ46の回転により、上壁26に平行な面内を回転する。上壁26にはストッパ部材47a,47bが設けられており、ストッパ部材47aは、プレート45を図6のD1方向に回転させたとき、LED光源44がX線出射器10の出射口11及びテーブル駆動機構20の上壁26の貫通孔26aに対向する位置(A位置)で静止するように、プレート45の回転を規制する。一方、ストッパ部材47bは、プレート45を図6のD2方向に回転させたとき、プレート45がX線出射器10の出射口11とテーブル駆動機構20の上壁26の貫通孔26aとの間を遮断しない位置(B位置)で静止するように、プレート45の回転を規制する。言い換えれば、A位置は、プレート45が図4及び図5に示す状態にある位置であり、LED光源44から出射されるLED光がスピンドルモータ27の貫通孔27a1に設けた通路部材28の通路に入射する位置である。B位置は、X線出射器10から出射されるX線がプレート45によって遮られない位置である。LED光源44は、コントローラ91によって作動制御されるLED駆動回路85からの駆動信号によりLED光を出射する。LED光は拡散する可視光であり、プレート45がA位置にあるとき、その一部は、出射X線と同様の経路で貫通孔18aから出射し、出射X線と同様、貫通孔27a1の軸線に平行な平行光になる。したがって、LED光源44、通路部材28、貫通孔18aなどが、可視光である平行光を対象物OBに出射する本発明の可視光出射器を構成する。
モータ46はエンコーダ46bを備えており、エンコーダ46bはモータ46が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を回転制御回路86に出力する。回転制御回路86は、コントローラ91から回転方向と回転開始の指令が入力されると、モータ46に駆動信号を出力し、モータ46を指示方向に回転させる。そして、エンコーダ46bからパルス列信号の入力が停止すると、駆動信号の出力を停止する。これにより、プレート45を、上述したA位置及びB位置までそれぞれ回転させることができる。
筐体50の切欠き部壁50cには結像レンズ48が設けられ、筐体50内部には撮像器49が設けられている。撮像器49は、CCD受光器又はCMOS受光器で構成され、各撮像素子ごとの受光強度に相当する強度の信号をセンサ信号取出回路87に出力する。結像レンズ48及び撮像器49は、イメージングプレート15に対して設定された位置にある対象物OBにおけるLED光の照射点を中心とした領域の画像を撮像するデジタルカメラとして機能する。イメージングプレート15に対して設定された位置とは、対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点からイメージングプレート15までの垂直距離Lが、予め決められた所定距離となる位置であり、また、対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点が、揺動機構60により筐体50が揺動する際の回転中心となる位置である。この場合の結像レンズ48及び撮像器49による被写界深度は、前記照射点を中心とした前後の範囲で設定されている。センサ信号取出回路87は、撮像器49の各撮像素子ごとの信号強度データを、各撮像素子の位置(すなわち画素位置)が分かるデータと共にコントローラ91に出力する。
また、結像レンズ48の光軸は、X線出射器10から出射されるX線の光軸とイメージングプレート15の回転基準位置のラインを含む平面に含まれるとともに、この光軸と対象物OBに照射されるX線及びLED光の光軸が交わる点は、イメージングプレート15に対して設定された位置にある対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点であるように調整されている。さらに、X線及びLED光の対象物OBに対する入射角度が設定値であるとき、結像レンズ48の光軸と対象物OBのX線及びLED光の照射点における法線方向とが成す角度は前記入射角度に等しい角度であるようにされている。したがって、対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点がイメージングプレート15に対して設定された位置にあり、LED光が対象物OBに設定された入射角度で照射された場合には、撮影画像におけるLED光の照射点と対象物OBで反射したLED光の受光点は同じ位置に生じる。対象物OBに照射されるLED光は平行光であるので、照射点において、LED光は散乱光と、略平行光のまま反射する反射光を発生させるが、散乱光のうち結像レンズ48に入射した光は撮像器49の位置で結像して照射点の画像となり、結像レンズ48に入射した反射光は結像レンズ48により集光されて撮像器49で受光され、受光点の画像となる。そして、LED光の照射点がイメージングプレート15に対して設定された位置にあり、LED光が対象物OBに設定された入射角度で照射されたとき、結像レンズ48に入射する散乱光の光軸と反射光の光軸は、いずれも結像レンズ48の光軸と一致するため、照射点の画像と受光点の画像は同じ位置になる。
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された各種プログラムを実行してX線回折測定装置の作動を制御する。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作業指示などの入力のために利用される。表示装置93は、表示画面上に撮像器49によって撮像された照射点及び受光点を含む画像に加えて、対象物OBの測定箇所に対するX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を適正に設定するためのマークも表示される。さらに、表示装置93は、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果なども視覚的に知らせる。高電圧電源95は、X線出射器10にX線出射のための高電圧及び電流を供給する。
次に、上記のように構成したX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを用いて、電解研磨した箇所に対しX線回折測定を行う具体的方法について説明する。X線回折測定は位置姿勢調整工程、回折環撮像工程、回折環読取り工程,回折環消去工程及び残留応力計算工程を実行することで行われる。なお、回折環撮像工程においてX線回折測定装置の筐体50を揺動させること以外は、X線回折測定は、先行技術文献の特許文献1に示されているX線回折測定システムを用いたX線回折測定と同じであるので、特許文献1で説明されている箇所は、簡略的に説明するにとどめる。
まず、位置姿勢調整工程について説明する。最初に作業者は、X線回折測定装置の筐体50に接続されたアーム式移動装置を操作し、筐体50の位置と姿勢を調整して、おおよそで対象物OBにおけるX線の照射点(測定箇所)、照射方向(残留圧縮応力の測定方向)及びX線の入射角度が意図した位置と方向と角度になり、X線の照射点からイメージングプレート15までの距離が設定値になるようにする。次に作業者は、入力装置92から位置姿勢の調整を行うことを入力する。この入力により、コントローラ91は、各回路に指令を出力し、イメージングプレート15を回折環撮像位置(図3乃至図5の状態)に移動させ、モータ46を駆動させてプレート45をA位置まで回転させ、LED光源44を点灯させる。これにより平行光であるLED光が筐体50の円形孔50c1から外部へ出射され、対象物OBに照射される。さらに、コントローラ91は、撮像器49による撮像信号をセンサ信号取出回路87からコントローラ91に出力させ、この撮像信号から作成したLED光の照射位置近傍の画像を表示装置93に表示させる。このとき、表示される画像には、撮像信号によって表示される画像とは独立して、結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する位置に相当する撮影画像上の位置に、十字マークが表示される。
この場合、十字マークのクロス点は表示装置93の画面の中心に位置し、十字マークのX軸方向は画面の横方向に対応し、十字マークのY軸方向は画面の縦方向に対応する。そして、十字マークのクロス点は、LED光の照射点からイメージングプレート15までの距離Lが設定値であるときに、照射点が撮像される位置であると同時に、距離Lが設定値であり、LED光が対象物OBに設定された入射角度で入射されるとき、受光点が撮像される位置である。また、十字マークのY軸方向がLED光及びX線の照射方向であり、対象物OBに投影させた方向が残留応力の測定方向である。
作業者は、表示装置93に表示される画像を見ながら、アーム式移動装置を操作してX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を調整し、画面上における照射点が電解研磨した箇所の中心付近になるとともに十字マークのクロス点と合致し、受光点が十字マークのクロス点と合致するようにする。これにより出射X線は電解研磨した箇所の中心付近に照射され、X線の照射点からイメージングプレート15までの距離Lは設定値になり、対象物OBに対するX線の入射角度は設定値になる。また、揺動機構60による揺動の回転中心はX線の照射点と合致する。
次に作業者は、入力装置92から位置姿勢の調整終了を入力する。これにより、コントローラ91は、各回路に指令を出力し、LED光源44を消灯させ、撮像信号の出力を停止させ、モータ46を駆動させてプレート45をB位置まで回転させる。これにより、X線出射器10からのX線がテーブル駆動機構20の上壁26の貫通孔26aに入射され得る状態となる。
次の回折環撮像工程において、作業者は入力装置92から測定箇所を識別する情報、および対象物OBの材質(例えば、鉄)を入力し、揺動での残留応力の測定開始を入力する。これにより、コントローラ91は、スピンドルモータ制御回路74を制御して、イメージングプレート15を低速回転させ、エンコーダ27cからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート15の回転を停止させる。これにより、回折環の読取り時において回転角度0°となる状態で、イメージングプレート15に回折環が撮像されるようになる。次に、コントローラ91は、モータ制御回路88と回転角度制御回路89を制御して揺動機構60に筐体50の揺動を開始させ、X線制御回路71を制御してX線出射器10にX線の出射を開始させる。これにより、筐体50は図3及び図4の状態を回転角度0にして、対象物OBの測定箇所を回転中心に、回転角度Aと回転角度−Aの間を揺動し、対象物OBの測定箇所で発生した回折X線により、イメージングプレート15に回折環が撮像されていく。そして、所定時間の経過後に、モータ制御回路88と回転角度制御回路89を制御して揺動機構60に筐体50の揺動を停止させ、X線制御回路71を制御してX線出射器10にX線の出射を停止させる。電解研磨後の対象物OBの表面は粒径が大きく、回折X線は強い強度では発生しないが、X線の照射時間を長くし、X線の照射中にX線の入射角度を連続して変化させることで、イメージングプレート15には明瞭な回折環が撮像される。なお、X線の入射角度の変化の範囲である回転角度±Aは、本願発明者が実験したところ、±5°程度にするとよい。
次にコントローラ91は、自動または作業者の入力により回折環読取り工程を実行する。コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御して、イメージングプレート15を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させる。読取り開始位置とは、レーザ光の照射位置が回折環基準半径Roの円に対して若干だけ内側になるような位置である。回折環基準半径Roとは、対象物OBの残留応力が「0」であるときに、イメージングプレート15上に形成される回折環の半径であり、対象物OBにおけるX線の回折角度2Θx(Θxはブラッグ角)及びX線照射点からイメージングプレート15までの距離LからRo=L・tan(2Θx)の計算式で計算される。そして、X線の回折角度2Θxは対象物OBの材質で決まり、距離Lは設定値に調整されているので、対象物OBの材質ごとに予め回折角2Θxを記憶しておけば、対象物OBの材質を入力することで回折環基準半径Roは計算できる。
次に、コントローラ91は、スピンドルモータ制御回路74を制御して、スピンドルモータ27を所定の回転速度で回転させ、レーザ駆動回路77を制御してレーザ検出装置30からレーザ光をイメージングプレート15に照射させ、フォーカスサーボ回路81を制御してフォーカスサーボを開始させる。さらに、回転角度検出回路75を制御して、スピンドルモータ27(イメージングプレート15)の回転角度θpの出力を開始させ、A/D変換回路83を制御して、SUM信号の瞬時値Iのデータ出力を開始させ、フィードモータ制御回路73を制御してフィードモータ22を回転させ、イメージングプレート15を読取り開始位置から図3及び図4の右下方向へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置は、相対的にイメージングプレート15上を螺旋状に回転し始める。その後、コントローラ91は、イメージングプレート15が所定の小さな角度だけ回転するごとに、A/D変換回路83が出力するSUM信号の瞬時値Iのデータと、回転角度検出回路75が出力する回転角度θpのデータと位置検出回路72が出力する移動距離xのデータとを入力し、それぞれのデータを対応させて記憶する。なお、移動距離xはレーザ光照射位置の径方向距離r(半径値r)を計算したうえで記憶する。これにより、螺旋状に回転するレーザ光の照射位置に関して、SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータが所定回転角度ごとに順次記憶されていく。
SUM信号の瞬時値I、回転角度θp及び半径値rを表すデータの所定回転角度ごとの記憶動作と並行して、コントローラ91は、回転角度θpごとに半径値rに対するSUM信号の瞬時値Iの曲線を作成し、曲線のピークに対応した半径値rαとSUM信号強度値Iαを記憶する。これは回折環の回転角度αごとに半径方向における回折X線の強度分布を求め、回折X線の強度がピークとなる箇所の半径値rαと回折X線の強度に相当する強度Iαを求める処理である。そして、すべての回転角度θp(回転角度α)において半径値rαと強度Iαを取得し、検出するSUM信号の瞬時値Iが強度Iαに対して充分小さくなった時点で、データの記憶を終了する。これにより、回折環における回折X線の強度に相当する強度の分布が瞬時値I、回転角度θp及び半径値rのデータ群で、および回折環の形状が回転角度αごとの半径値rαで検出されたことになる。その後、コントローラ91は、各回路に指令を出力し、フォーカスサーボを停止させ、レーザ光の照射を停止させ、A/D変換回路83と回転角度検出回路75の作動を停止させ、フィードモータ22の作動を停止させる。なおイメージングプレート15の回転は、継続されている。
次にコントローラ91は、自動または作業者の入力により回折環消去工程を実行する。コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御してイメージングプレート15を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート15の消去開始位置とは、LED光源43から出力されるLED光の中心が回折環基準半径Roの円に対して前記読取り開始位置の場合よりもさらに内側になる位置である。次に、コントローラ91は、LED駆動回路84を制御してLED光源43によるLED光をイメージングプレート15に対して照射させ、フィードモータ制御回路73を制御して、イメージングプレート15が前記消去開始位置から消去終了位置まで図3及び図4の右下方向に一定速度で移動するよう、フィードモータ22を回転させる。消去終了位置とは、LED光の中心が回折環基準半径Roよりも前記消去開始位置と同じ程度の距離だけ外側となる位置である。これにより、LED光がイメージングプレート15上に螺旋状に照射され、撮像された回折環が消去される。
イメージングプレート15が消去終了位置になると、コントローラ91は、フィードモータ制御回路73を制御してイメージングプレート15の移動を停止させ、LED駆動回路84を制御してLED光の照射を停止させ、位置検出回路72の作動を停止させ、スピンドルモータ制御回路74を制御してスピンドルモータ27(イメージングプレート15)の回転を停止させる。
次にコントローラ91は、自動または作業者の入力により残留応力計算工程を行う。なお、残留応力計算工程は、回折環消去工程と並行して行ってもよい。残留応力計算工程は、回折環読取り工程において得られた回折環の形状(回転角度αごとの半径値rα)を用いて、コントローラ91が行うプログラムによる演算処理である。この演算処理における計算方法は、特開2005−241308号公報の〔0026〕〜〔0044〕に詳細に説明されているので本願では省略する。コントローラ91は残留応力の計算が終了すると、表示装置に93に残留応力の計算結果、残留応力が許容内か否かの判定結果、及び許容される応力と残留応力の差等を表示し、測定箇所を識別する情報に対応させて残留応力値をメモリに記憶する。なお、これ以外に、回折環の強度分布画像(瞬時値Iを明度にして瞬時値I、回転角度θp及び半径値rのデータ群から得られる画像)及び入射角度ψ、距離L、揺動の回転角度A等の測定条件を表示するようにしてもよい。記憶された残留応力は表面粒径微小化処理の前の残留応力であるため、以後、残留応力BEFとする。
X線回折測定は1回でもよいが、対象物OBの面に投影したX線の照射方向を90度変化させて、再度上述した手順でX線回折測定を行えば2方向の残留圧縮応力と残留せん断応力を得ることができ、これは対象物OBの平面応力を測定できたことになるので、その方が望ましい。この場合はコーシーの定理を用いた理論上の式を用いて、2方向の残留圧縮応力と残留せん断応力から平面内における各方向の残留応力を計算し、最大値を残留応力BEFとすればよい。また、後述する2回目以降のX線回折測定作業においても、同様に平面応力を測定して残留応力BEFを求めればよい。このようにすれば、X線回折測定におけるX線の照射方向を気にしなくてよく、平面応力で残留応力の変化を得ることができる。なお、X線回折測定をそれぞれの測定箇所ごとに1回とする場合は、残留応力の測定方向を統一する必要があるので、対象物OBの面に投影したX線の照射方向を表面を研磨した箇所の近傍に表示しておき、後述する2回目以降のX線回折測定作業においては、表示された方向からX線を照射するようにする。
作業者は、X線回折測定が終了した後、X線回折測定装置を測定箇所から取り除き、ステップS4にて電解研磨した箇所に対し表面粒径微小化処理を行う。これは、具体的には粒径が小さい球体を高速でぶつける処理であり、サンドブラスト処理またはショットピーニング処理である。電解研磨した後の対象物OBの表面は粒径が大きいが、この処理により粒径を小さくすることができ、以後短時間のX線照射で明瞭な回折環像を得ることができる。この処理に用いる装置は、粒径が小さい球体を高速でぶつける処理ができ、運搬が可能な装置であれば、どのようなものでもよいが、図7に示すような手持型のサンドブラスターを用いると運搬が簡単で便利である。この装置も市場で流通しているものである。端的に説明すると、エアーガン100はチューブから圧縮エアーが供給されており、引き金を引くことで内部の閉状態にある弁が開状態になり、圧縮エアーが先端から噴出する。圧縮エアーは小型のコンプレッサー101により作成され、ガン100に供給される。なお、コンプレッサー101の替わりに圧縮エアーが封入されたボンベ等を用いてもよい。ガンの内部の圧縮エアーの通路の途中には、投射材容器102にチューブでつながっている通路が連結しており、高速のエアーの流れによって吸引力が発生するため、投射材容器102から投射材が吸引されて、ガン100の先端から圧縮エアーと共に投射材が噴出する。これにより、対象物OBの表面は投射材の成分である粒径が小さい球体が高速でぶつかる。投射材は、市販されているものの中から対象物OBの材質に適切なものを選択して使用すればよい。例えば、対象物OBが鉄やステンレスである場合、投射材は(株)パオック製のガラスビーズG#100を使用すればよい。処理の時間は対象物OBの表面の粒径が小さくなり、後述する揺動なしのX線回折測定において、回折環が明瞭に撮像されればよく、本願発明者が実験したところ、数秒でよい。
作業者は、表面粒径微小化処理が終了した後、処理を行った箇所をウエス等で拭き取り、ステップS5にて処理を行った箇所に対し揺動なしのX線回折測定を行う。この測定に使用するX線回折測定システムは、上述したX線回折測定システムと同じであるが、測定の際、入力装置92から揺動なしの残留応力測定開始を入力する。これにより、コントローラ91は揺動機構60を駆動させずに、すなわち筐体50を揺動させずに回折環撮像を行う。なお、このX線回折測定においては、X線の照射方向によらず測定される残留応力は同一の値になるので、X線回折測定は1回でよい。X線の照射方向によらず残留応力が同一の値になるのは、粒径が小さい球体を高速でぶつけることで対象物OB表面の粒径は小さくなるとともに、圧縮応力があらゆる方向から加わるためである。これ以外の測定方法は上述したX線回折測定の説明と同じである。このX線回折測定により得られる残留応力を残留応力AFTとする。なお、ステップS5は揺動なしのX線回折測定であるので、上述したX線回折測定システムに替えて、先行技術文献の特許文献1に示されている揺動機構のないX線回折測定システムを用いてもよい。
揺動なしのX線回折測定が終了すると、コントローラ91は先に記憶した残留応力BEFを今回のX線回折測定で得られる残留応力AFTから減算し、残留応力差Devとして記憶する。ステップS4の表面粒径微小化処理により、対象物OBの表面の粒径は小さくなり、ステップS5におけるX線回折測定においてはX線照射点から発生する回折X線の強度は強くなるが、上述したように粒径が小さい球体を高速でぶつけることで対象物OBには圧縮応力が加わる。このため、残留応力AFTは圧縮応力が加わった分、残留応力BEFから変化する。しかし、加わった圧縮応力分を残留応力差Devとして記憶しておけば、残留応力AFTを得るのみで残留応力BEFを求めることができる。この点は後述する2回目以降のX線回折測定作業で詳細に説明する。
作業者は、ステップS5にて揺動なしのX線回折測定を行った後、ステップ6にて測定箇所に空気と接触させないためのカバーを行う。具体的には粘着力があり容易にはがせるシールを貼付するか、容易に除去できるコーティング剤を塗布する。この目的は、2回目以降のX線回折測定作業は長期間に渡るため、測定箇所に錆が発生するのを防止するためと、ダストが付着するのを防止するためである。また、2回目以降のX線回折測定作業において測定箇所を容易に識別することができるようにするためでもある。
作業者は、ステップ6にて測定箇所にカバーを行った後、ステップS7にて次の測定箇所が存在するか判断する。通常、対象物OBの疲労度を評価するためには、発生している応力を測定すべき箇所は複数設定されているはずであるので、ステップS7にて有りと判断してステップS1に戻り、X線回折測定システム、電解研磨装置およびサンドブラスト装置を次の測定箇所まで運搬する。そして、新たな測定箇所に対して上述したステップS1〜ステップS6の作業を行い、残留応力BEF、残留応力AFTおよび残留応力差Devをコントローラ91に記憶させ、ステップS7にて次の測定箇所が存在するか判断する。このようにして作業者は、測定箇所ごとにステップS1〜ステップS6の作業を行い、残留応力BEF、残留応力AFTおよび残留応力差Devを測定箇所の情報に対応させてコントローラ91に記憶させていく。そして、すべての測定箇所においてステップS1〜ステップS6の作業が終了すると、ステップS7にて無しと判断して、初回のX線回折測定作業を終了する。初回のX線回折測定作業では、それぞれの測定箇所ごとに残留応力BEF、残留応力AFTおよび残留応力差Devが得られるが、対象物OBの疲労度を評価するのに必要な値は、それぞれの測定箇所ごとに発生している応力である残留応力BEFである。それ以外は、2回目以降のX線回折測定作業において必要な値である。
作業者は、初回のX線回折測定作業を行った後、予め設定した長期間が経過するごとに、図1の(B)に示される工程フローに従って、2回目以降のX線回折測定作業を行う。まず、ステップS11にてX線回折測定システムを測定箇所まで運搬する。2回目以降のX線回折測定作業において必要な機器はX線回折測定システムのみであり、そのX線回折測定システムは先行技術文献の特許文献1に示されている揺動機構のないX線回折測定システムである。なお、上述したX線回折測定システムを揺動機構を使用せずに用いてもよい。次にステップS12にて測定箇所にされているカバーを除外し、必要であればカバーの粘着物質があるときは、有機溶剤等で除去する。そしてステップ13にてX線回折測定を行う。測定方法は先行技術文献の特許文献1に示されており、また、上述したX線回折測定方法において、筐体50を揺動させない点のみが異なる測定方法である。なお、初回のX線回折測定作業における揺動ありのX線回折測定を1回にした場合は、X線の照射方向を、測定箇所近傍に表示されているX線の照射方向に合わせるよう留意する。また、初回のX線回折測定作業における該X線回折測定をX線の照射方向が互いに90°である2回にした場合は、同様にして2回測定を行い、コーシーの定理による理論上の式を用いて計算した各方向の残留応力の中の最大値を測定した残留応力とする。
X線回折測定の結果得られる残留応力は、初回のX線回折測定作業における表面粒径微小化処理により圧縮応力が加えられた残留応力であり、残留応力AFTである。コントローラ91は得られた残留応力AFTから記憶されている残留応力差Devを減算し、圧縮応力を加える前の残留応力残留BEFを得る。このようにして得られた残留応力BEFは測定箇所に発生している応力であるので、コントローラ91は予め設定され記憶されている許容される応力と残留応力BEFを比較し、残留応力BEFと共に許容内か否かの判定結果を表示装置93に表示する。さらに、許容される応力と残留応力BEFの差、初回のX線回折測定作業からの残留応力BEFの変化値等を表示する。初回および2回目以降のX線回折測定作業により得られる残留応力BEF、残留応力AFTおよび残留応力差Devの関係を示したものが図8である、図8において測定により実際に得られるものは黒色の点であり、残留応力差Devを減算する計算により得られるものは、白色の点である。図7からもわかるように、2回目以降のX線回折測定作業では実際に測定するのは残留応力AFTであり、残留応力BEFは計算により得られる。また、コントローラ91は2回目以降のX線回折測定作業が複数回(例えば4回以上)行われた後は、残留応力BEFの経時変化曲線を延長させた推定線を計算し、推定線が許容される応力に到達するまでの日数を耐用年数として計算し表示する。作業者は表示装置93に表示された数値を見て、対応の要否を判断する。
作業者は、ステップ13におけるX線回折測定が終了すると、ステップ14にて再度測定箇所に空気と接触させないためのカバーを行い、ステップ15にて、次の測定箇所が存在するか判断し、有るときはステップS11に戻り、X線回折測定システムを次の測定箇所まで運搬する。そして、新たな測定箇所に対して上述したステップS11〜ステップS14の作業を行い、残留応力BEFおよび対象物OBの疲労度に関する数値と判定を表示および記憶させ、ステップS15にて次の測定箇所が存在するか判断する。このようにして作業者は、測定箇所ごとにステップS11〜ステップS14の作業を行い、残留応力BEFおよび対象物OBの疲労度に関する数値と判定を表示および記憶させていく。そして、すべての測定箇所においてステップS11〜ステップS14の作業が終了すると、ステップS15にて無しと判断して、2回目以降のX線回折測定作業を終了する。図1の(B)に示される工程フローからもわかるように、2回目以降のX線回折測定作業においてX線回折測定システムを用いたX線回折測定以外に行う作業は、X線回折測定システムの運搬、測定箇所のカバー除去及び測定箇所へのカバーのみであり、通常のX線回折測定作業と同程度の労力で実施することができる。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においてはX線回折測定方法を、対象物OBに向けてX線を出射するX線出射器10と、X線出射器10から対象物OBに向けてX線を照射して、対象物OBにて発生したX線の回折光を、X線出射器10から出射されるX線の光軸に対して垂直に交差するイメージングプレート15にて受光し、イメージングプレート15にX線の回折光の像である回折環を形成するとともに回折環の形状を検出するテーブル駆動機構20およびレーザ検出装置30等とを備えたX線回折測定装置を用いて、対象物OBの同一箇所を時間間隔を開けて複数回測定するX線回折測定方法であって、対象物OBの測定箇所の表面を、電解研磨により除去するステップS2と、ステップS2により表面が除去された箇所に対して、X線出射器10から出射されるX線の入射角度を変化させながらX線回折測定装置により測定を行い、取得された回折環の形状から初期の残留応力BEFを計算するステップS3と、ステップS2により表面が除去された箇所に対して、サンドブラスト処理により表面の粒径を小さくするステップS4と、ステップS4により表面の粒径が小さくされた箇所に対して、X線回折測定装置により測定を行い、取得された回折環の形状から表面処理後の残留応力AFTを計算し、ステップS2により得られた初期の残留応力BEFと表面処理後の残留応力AFTとの差Devを計算するステップ5とを行う初回のX線回折測定作業と、初回のX線回折測定作業において測定が行われた箇所に対して、X線回折測定装置により測定を行い、取得された回折環の形状から仮の残留応力AFTを計算し、仮の残留応力AFTからステップ5にて得られた残留応力差Devを減算して正規の残留応力BEFとすることを、時間間隔を開けて複数回行う2回目以降のX線回折測定作業よりなるX線回折測定方法としている。
これによれば、初回のX線回折測定作業のステップS4において、対象物OBの表面の粒径を小さくする処理を行っているので、それ以降のX線回折測定では、X線の入射角度を変化させながら時間をかけて撮像を行わなくても、明瞭な回折環像を得ることができる。すなわち、2回目以降のX線回折測定作業では短時間で精度のよい残留応力を得ることができる。また、ステップS4により対象物OBの表面の粒径を小さくする処理を行うと圧縮応力が加わるため、2回目以降のX線回折測定作業で得られる仮の残留応力AFTは、測定した箇所に発生している応力とは一致しなくなるが、初回のX線回折測定作業のステップS5において測定した初期の残留応力BEFと表面処理後の残留応力AFTとの残留応力差Devを、得られる仮の残留応力AFTから減算して、加わった圧縮応力分を除いているので、その結果得られる正規の残留応力BEFは測定した箇所に発生している応力と一致する。すなわち、初回のX線回折測定作業では測定に時間がかかるが、2回目以降のX線回折測定作業では測定に時間がかからず、装置が複雑化せず、精度のよい残留応力を得ることができる。
また、上記実施形態においては、対象物OBは建造物または大型製作物であり、初回のX線回折測定作業のステップS2および2回目以降のX線回折測定作業により得られた残留応力BEFから、残留応力BEFの経時変化を計算し、計算した残留応力BEFの経時変化と予め設定されている許容値とから耐用年数を計算している。これによれば、測定した箇所に発生している応力の経時変化から現時点以降の変化を推定し、該応力が許容値を超える時間を求めることができるので、耐用年数をより正確に決定することができる。
また、上記実施形態においては、X線回折測定装置は、X線出射器10とテーブル駆動機構20およびレーザ検出装置30等とを内部に備える筐体50を備え、ステップS2に用いるX線回折測定装置はさらに、筐体50をX線出射器10から出射されるX線の光軸上の点を回転中心として、傾きを連続して変化させる揺動機構60と、X線出射器10からX線が出射されていない状態で、X線出射器10から出射されるX線と光軸を同一にした平行光であるLEDを対象物OBに出射するLED光源44等と、LED光の照射点を含む領域の対象物OBの画像を結像する結像レンズ48、及び結像レンズ48によって結像された画像を撮像する撮像器49を有し、撮像された画像を表す撮像信号を出力するカメラ機能と、カメラ機能から出力される撮像信号を入力して、撮像器49によって撮像された画像を画面上に表示する表示装置93であって、対象物OBにおけるLED光の照射点が揺動機構60の回転中心であるとき、撮像器49によって撮像される照射点の画像上の位置を照射点基準位置として、撮像信号により表示される画像とは独立して画面上に表示する表示装置93とを備えるものであることにある。
これによれば、ステップS2に用いるX線回折測定装置は、揺動機構60を設けるため装置を複雑にする必要があるが、LED光源44からLED光を出射し、表示装置93に表示される撮像画像におけるLED光の照射点が照射点基準位置に合致するよう筐体50の位置を調整するのみで、X線照射点すなわち測定点を回転中心にして筐体50を揺動させることができる。すなわち、初期残留応力測定ステップでは測定に時間がかかるが、その時間を短くすることができる。
また、上記実施形態においては、2回目以降のX線回折測定作業におけるX線回折測定が行われない期間は、ステップS2により表面の粒径が小さくされた箇所に対して、空気と接触させない処理を施している。これによれば、測定箇所の表面に錆やダスト付着が発生せず、2回目以降のX線回折測定作業は、所定の間隔ごとに長期間行うことができる。なお、空気と接触させない処理は、具体的にはラベル貼付、コーティング材塗布などである。
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態では、それぞれのX線回折測定において、回折環の撮像と形状検出、及び残留応力の計算と対象物OBの疲労度に関する評価を1つのX線回折測定システムにおいて行うようにしたが、X線回折測定に時間がかかってもよい場合は、これらを別々の装置で行うようにしてもよい。例えば、X線回折測定システムは回折環の撮像と形状検出までを行い、得られた回折環の形状データを作業者が記録媒体に記録し、残留応力計算プログラムと疲労度評価プログラムがインストールされた別のコンピュータ装置に記録媒体をセットして残留応力の計算と疲労度の評価を行う、というようにしてもよい。また、作業者が記録媒体に回折環の形状データを記録する替わりに、X線回折測定システムのコンピュータ装置90からネット回線等を使用して別のコンピュータ装置に転送するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、それぞれのX線回折測定において使用するX線回折測定装置を、イメージングプレート15に回折環を撮像し、レーザ検出装置30からのレーザ照射と光の強度検出により、回折環の形状を検出する装置としたが、回折環を撮像して形状を検出することができるならば、どのような方式の装置でもよい。例えば、イメージングプレート15の代わりにイメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDを備え、X線出射器10からのX線照射の際、X線CCDの各画素が出力する電気信号により回折環における回折X線の強度分布を検出する装置でもよい。また、イメージングプレート15と同じ広さの平面を有するX線CCDの代わりに、微小サイズのX線CCDを位置を検出しながら走査し、X線CCDの各画素が出力する電気信号とX線CCDの走査位置から、回折環における回折X線の強度分布を検出する装置でもよい。また、X線CCDに替えてシンチレータから出た蛍光を、光電子増倍管(PMT)で検出するシンチレーションカウンタを用いる装置でもよい。
また、上記実施形態では、それぞれのX線回折測定において使用するX線回折測定装置を、アーム式移動装置に接続され、LED光が対象物OBに照射された撮像画面を見ながら、アーム式移動装置を操作することで、対象物OBに対する筐体50の位置と姿勢を調整することができる装置にした。しかし、筐体50の位置と姿勢が、出射X線が対象物OBの測定点に設定された照射方向から照射され、その際のX線照射点からイメージングプレート15までの距離とX線の入射角度を設定値にすることができれば、筐体50の位置と姿勢の調整手段はどのようなものであってもよい。例えば、2回目以降のX線回折測定作業において使用するX線回折測定装置は、本願発明者の特許出願である、特開2013−113737号公報や特開2014−66545号公報に示されているように、対象物OBにX線回折測定装置の筐体の1つの面を接触させることで筐体の位置と姿勢が最適になる装置であってもよい。
また、上記実施形態では、初回のX線回折測定作業において使用するX線回折測定装置を、揺動機構60により筐体50を揺動させ、対象物OBに対するX線の入射角を連続的に変化させながらイメージングプレート15に回折環を撮像する装置にしたが、筐体50を揺動させる代わりに、筐体50を対象物OBの表面と平行な方向に、X線の照射点が表面を除去した範囲内なるよう移動させる装置にしてもよい。この場合は、揺動機構60の代わりに筐体50を繋ぎ壁50dと平行な方向に移動する移動機構を設け、アーム式移動装置との接続部を該移動機構の固定ステージに連結している箇所に設ければよい。移動機構は電動モータにより、固定ステージに対して移動ステージが移動する構造で、移動ステージが筐体50に連結されている構造である。
また、上記実施形態および上記変形例では、初回のX線回折測定作業において使用するX線回折測定装置を、揺動機構60または移動機構により筐体50を揺動または移動させるようにしたが、X線回折測定に時間がかかってもよければ、揺動機構60や移動機構のないX線回折測定装置を使用してもよい。この場合は、X線を短時間照射した後、X線照射点位置、X線照射方向およびX線照射点からイメージングプレート15までの距離が一定になるよう注意しながら、支持アーム51との接続部により筐体50を微量回転させ、再度X線を短時間照射することを繰り返せばよい。あるいは、X線を短時間照射した後、X線入射角度、X線照射方向およびX線照射点からイメージングプレート15までの距離が一定になるよう注意しながら、アーム式移動装置を操作して筐体50を微量移動させ、再度X線を短時間照射することを繰り返せばよい。
また、上記実施形態では、対象物OBの表面を除去するための方法として電解研磨を行い、対象物OBの表面の粒径を小さくする方法として、粒径が小さい球体を高速でぶつける処理であるサンドブラスト処理を行うようにしたが、対象物に応力を加えることなく表面を除去し、対象物の表面の粒径を小さくすることができれば、これ以外の方法を用いてもよい。
また、上記実施形態では、対象物OBを建造物または大型の製作物としたが、対象物OBはX線回折測定が可能であり、同一の測定箇所を時間間隔を開けて複数回測定し、発生している残留応力の変化を得る用途があるものであれば、どのようなものでも適用することができる。例えば、小型自動車、小型炉などのようなものでも適用できる。
また、上記実施形態では、初回のX線回折測定作業において、残留応力BEFを残留応力AFTから減算して残留応力差Devとし、2回目以降のX線回折測定作業において、残留応力AFTから残留応力差Devを減算して残留応力BEFとしたが、残留応力差Devの計算における減算の仕方を反対にすると、2回目以降のX線回折測定作業における残留応力の計算は減算が加算になる。すなわち、残留応力BEFから残留応力AFTを減算して残留応力差Devとした場合、2回目以降のX線回折測定作業において、残留応力AFTに残留応力差Devを加算して残留応力BEFとする。この計算は、残留応力AFTからステップS4において対象物OBに加わった圧縮応力分を除去できればよい。