JP2016175125A - 溶接構造部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】疲労強度を容易に向上できるT字形状の溶接構造部材を提供する。【解決手段】溶接構造部材10は、全体としてT字形状を有し、第1鋼部材12および板状部13を備える。第1鋼部材12の板状部13は、第2鋼部材14の平板部20の表面14aに溶接される。表面14aには、板状部13を平板部20に接合するための溶接ビード24が形成される。平板部20の裏面14bには、補助ビード30a,30bが形成される。板状部13と平板部20との接合領域32、溶接ビード24および補助ビード30a,30bを、平板部20の表面14aに対して垂直な方向に投影した場合に、補助ビード30a,30bが溶接ビード24の角部24a,24bに重なっている。【選択図】 図3

Description

本発明は、溶接構造部材に関する。
近年、自動車の燃費向上のために、車体の軽量化が進められている。そして、車体の軽量化を実現するために、高強度鋼板同士を溶接した溶接構造部材が車体材料として用いられている。
車体材料として用いられる溶接構造部材には、優れた疲労強度が求められる。しかしながら、従来、高強度鋼板を用いた場合でも溶接構造部材の疲労強度を十分に向上させることは難しいことが知られている。そこで、たとえば特許文献1に、溶接構造部材の疲労強度を向上させるための技術が提案されている。
特許文献1に記載されている隅肉アーク溶接継手は、金属部材同士を隅肉アーク溶接する際に形成される隅肉ビードとは別に、補剛用ビードを備えている。補剛用ビードは、隅肉ビードを起点として、該隅肉ビードと同一面内に形成される。この補剛用ビードによって、溶接継手の疲労強度を向上させることができる。
国際公開第2013/157557号
車体の足回り部(懸架装置を支持する部分)では、溶接構造部材としてT字状の溶接継手(以下、T字継手ともいう。)が用いられる。足回り部は車体荷重を支持する部分であるので、足回り部に利用されるT字継手では、特に疲労強度を向上させる必要がある。
図10は、車体の足回り部に使用されるT字継手の一例を示す斜視図である。図10に示すT字継手1は、上下方向に延びる鋼部材2と、水平方向に延びる鋼部材3とを備える。鋼部材2は、鋼部材3に溶接されている。鋼部材2は、平面視において略U字形状を有し、鋼部材3は、側面視において略U字形状を有する。言い換えると、鋼部材2および鋼部材3はともに開断面形状を有する。T字継手1では、鋼部材2の下端部と鋼部材3の表面とが溶接ビード4によって接合されている。
特許文献1においても、立鋼板および横鋼板からなるT字継手が開示されている。特許文献1のT字継手では、立鋼板と横鋼板とを接合する隅肉ビードに対して交差するように、補剛用ビードが形成されている。特許文献1には、上記のように補剛用ビードを形成することによって、T字継手の変形が防止され、疲労寿命が向上することが記載されている。
特許文献1の上記の技術をT字継手1において採用する場合、図11に示すように、溶接ビード4に対して交差するように1または複数の補鋼用ビード5が形成される。これにより、T字継手1の変形が防止され、疲労寿命が向上すると考えられる。
しかしながら、本発明者らの種々の検討の結果、図11に示すように補鋼用ビード5を形成しても、T字継手1の疲労寿命が十分に向上しない場合があることが分かった。以下、具体的に説明する。
上述したように、T字継手1の鋼部材2は開断面形状を有しており、平面視において略直角に屈曲する角部6が2箇所に設けられている。T字継手1の疲労寿命について本発明者らが種々の検討を行った結果、角部6と鋼部材3との接合部の近傍において疲労亀裂が発生しやすくなる場合があることが分かった。この要因としては、鋼部材2に荷重が付加された場合に、角部6と鋼部材3との接合部近傍に生じる応力が、他の部分に比べて大きくなることが考えられる。
そこで、本発明者らは、角部6に補鋼用ビードを形成することを考えた。しかしながら、溶接ビード4と交差する補鋼用ビードを角部6に形成しようとすると、既存の溶接ビード4との位置関係から制約が生じる可能性がある。また、角部6に適切な補鋼用ビードを短時間で形成することは容易ではない。そのため、T字継手1の生産効率が低下するおそれがある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、疲労強度を容易に向上できるT字形状の溶接構造部材を提供することを目的としている。
本発明は、下記の溶接構造部材を要旨とする。
(1)金属からなり、厚み方向において互いに反対側に設けられた第1面および第2面を有する第1板状部を含むベース部材と、
金属からなり、前記ベース部材の前記第1面に交差する方向に延び、かつ該第1面に突き当てられた端面を有する第2板状部を含む接合部材と、
前記ベース部材の前記第1面に形成され、かつ前記接合部材の前記端面の少なくとも一部を前記ベース部材の前記第1面に接合する溶接ビード部と、
前記ベース部材の前記第2面に形成された補助ビード部とを備え、
前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、前記接合部材の前記端面は少なくとも1つの第1角部を有し、前記溶接ビード部は前記少なくとも1つの第1角部の外側を覆うように形成された少なくとも1つの第2角部を有し、前記補助ビード部が前記溶接ビード部の前記少なくとも1つの第2角部に重なっている、溶接構造部材。
(2)前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、前記補助ビード部は前記溶接ビード部の前記少なくとも1つの第2角部から、該第2角部の外側に突出している、上記(1)の溶接構造部材。
(3)前記接合部材の第2板状部は、該第2板状部の前記端面が底壁部および一対の側壁部を有するように、前記ベース部材の前記第1面に平行な断面において開断面形状を有し、
前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
前記底壁部の一方の端部と一方の前記側壁部との間に、前記第1角部が設けられ、
前記底壁部の前記一方の端部は直線状に延び、
前記一方の側壁部は、前記底壁部の前記一方の端部の延伸方向に交差する方向に直線状に延び、
前記第1角部は、前記底壁部の前記一方の端部から曲がりつつ前記一方の側壁部に向かって延びて、前記底壁部と前記一方の側壁部とを接続しており、
前記第1角部と前記底壁部との接続点を通る前記底壁部の前記一方の端部の垂線を第1仮想線とし、
前記第1角部と前記一方の側壁部との接続点を通る前記一方の側壁部の垂線を第2仮想線とし、
前記第1仮想線と前記第2仮想線との交点および前記第1角部上を通り、かつ前記第1仮想線と前記第2仮想線とがなす角を二等分する直線を第3仮想線として、
前記溶接ビード部の前記第2角部の外縁のうち、前記第3仮想線よりも前記底壁部側において前記補助ビード部に重なる部分の長さの合計値が、前記第3仮想線よりも前記一方の側壁部側において前記補助ビード部に重なる部分の長さの合計値以上である、上記(1)または(2)の溶接構造部材。
(4)前記接合部材の前記第2板状部は、該第2板状部の前記端面が底壁部および一対の側壁部を有するように、前記ベース部材の前記第1面に平行な断面において開断面形状を有し、
前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
前記接合部材の端面は、前記底壁部の一方の端部と一方の前記側壁部との間および前記底壁部の他方の端部と他方の前記側壁部との間にそれぞれ形成された一対の第1角部を有し、
前記溶接ビード部は、前記一対の第1角部の外側をそれぞれ覆うように形成された一対の第2角部を有し、
前記底壁部は直線状に延び、
前記一対の側壁部はそれぞれ、前記底壁部の延伸方向に交差する方向に直線状に延び、
前記第1角部はそれぞれ、前記底壁部の端部から曲がりつつ前記側壁部に向かって延びて、前記底壁部と前記側壁部とを接続しており、
前記底壁部の前記一方の端部と一方の前記第1角部との接続点を通る前記底壁部の垂線、および前記底壁部の前記他方の端部と他方の前記第1角部との接続点を通る前記底壁部の垂線をそれぞれ第1仮想線とし、
前記一方の第1角部と前記一方の側壁部との接続点を通る前記一方の側壁部の垂線、および前記他方の第1角部と前記他方の側壁部との接続点を通る前記他方の側壁部の垂線をそれぞれ第2仮想線とし、
前記底壁部の前記一方の端部側および前記他方の端部側においてそれぞれ、
前記第1仮想線と前記第2仮想線との交点および前記第1角部上を通り、かつ前記第1仮想線と前記第2仮想線とがなす角を二等分する直線を第3仮想線として、
前記溶接ビード部の前記第2角部の外縁のうち、前記第3仮想線よりも前記底壁部側において前記補助ビード部に重なる部分の長さの合計値が、前記第3仮想線よりも前記側壁部側において前記補助ビード部に重なる部分の長さの合計値以上である、上記(1)または(2)の溶接構造部材。
(5)前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
前記溶接ビード部の前記第2角部の外縁は、前記第3仮想線から前記第1仮想線に亘って前記補助ビード部に重なっている、上記(3)または(4)の溶接構造部材。
(6)前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
前記第1仮想線と前記第3仮想線との間において、前記補助ビード部は、前記溶接ビード部から、前記第1仮想線と前記第2仮想線との前記交点を中心とする径方向に平均1.5mm以上突出している、上記(3)から(5)のいずれかの溶接構造部材。
(7)前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
前記第1仮想線と前記第3仮想線との間において、前記補助ビード部と前記溶接ビード部との前記径方向における重なり量の平均値は、下記式(1)を満たす、上記(6)に記載の溶接構造部材。
≧−0.28x+2.21x ・・・(1)
但し、(1)式において、Dは、前記重なり量の平均値(mm)であり、xは、ベース部材の板厚(mm)である。
(8)前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
前記第1仮想線と前記第2仮想線との前記交点を中心として、少なくとも、前記第1仮想線から前記側壁部側へ65°の領域に亘って、かつ前記第1仮想線から前記底壁部側へ26°の領域に亘って、前記溶接ビード部の外縁が前記補助ビード部に重なっている、上記(3)から(7)のいずれかの溶接構造部材。
本発明によれば、簡単な構成によって、すなわち平板部において溶接ビードの反対側に補助ビードを形成することによって溶接構造部材の疲労強度を向上できる。この場合、これにより、溶接構造部材の疲労強度を容易に向上できる。
本発明の一実施形態に係る溶接構造部材を示す斜視図である。 図1の溶接構造部材を下方から見た斜視図である。 接合領域、溶接ビードおよび補助ビードの投影図である。 接合領域、溶接ビードおよび補助ビードの投影図の他の例である。 板状部の端面の他の例である。 平面視における接合領域の角部、溶接ビードの角部および補助ビードの形状を示した図である。 補助ビードの位置と接合領域の角部近傍の最大主応力の最大値との関係を示すグラフである。 補助ビードの幅と接合領域の角部近傍の最大主応力の最大値の最小値との関係を示すグラフである。 平面視における接合領域の角部、溶接ビードの角部および補助ビードの形状の他の例を示した図である。 従来のT字継手の一例を示す図である。 従来の補助ビードが形成されたT字継手の一例を示す図である。
以下、本発明について詳しく説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る溶接構造部材10を示す斜視図であり、図2は、溶接構造部材10を下方から見た斜視図である。図1および図2において、点線の丸41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b,45a,45bは、後述するシミュレーションにおいて解析モデルに形成した穴の位置を示している。詳細は後述する。
図1および図2を参照して、溶接構造部材10は、第1方向D1に延びる第1鋼部材12と、第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる第2鋼部材14とを備える。溶接構造部材10は、全体としてT字形状を呈するように第1鋼部材12と第2鋼部材14とを溶接した、いわゆるT字継手である。本実施形態では、第1鋼部材12が接合部材に相当し、第2鋼部材14がベース部材に相当する。なお、本実施形態では、接合部材およびベース部材がそれぞれ鋼から構成される場合について説明するが、接合部材およびベース部材が鋼以外の金属から構成されていてもよい。
なお、本実施形態では、第1方向D1は第2方向D2に対して垂直であるが、第1方向D1が第2方向D2に対して傾斜していてもよい。すなわち、本実施形態では、第1鋼部材12は、第2鋼部材14に対して垂直になるように第2鋼部材14に溶接されているが、第1鋼部材12が、第2鋼部材14に対して傾斜するように第2鋼部材14に溶接されてもよい。なお、以下における溶接構造部材10の説明では、第1方向D1を上下方向とし、第2方向D2を左右方向とする。
第1鋼部材12は、板状の部材から構成され、表面12aおよび裏面12bを有する。本実施形態では、第1鋼部材12全体が開断面形状の板状部13として構成される。本実施形態では、板状部13が第2板状部に相当する。図1を参照して、板状部13は、底壁部16および一対の側壁部18a,18bを含む。側壁部18a,18bは、互いに平行に設けられる。平面視において、底壁部16の左右方向における両端部は、側壁部18aの一端部および側壁部18bの一端部に接続されている。本実施形態では、側壁部18aと底壁部16との接続部は、平面視において略直角に屈曲する角部13aを形成する。同様に、側壁部18bと底壁部16との接続部は、平面視において略直角に屈曲する角部13bを形成する。
図1および図2を参照して、第2鋼部材14は、第1鋼部材12と同様に板状の部材から構成され、表面14aおよび裏面14bを有する。第2鋼部材14は、第1鋼部材12と同様に、開断面形状を有する。具体的には、第2鋼部材14は、平板部20および一対の側壁部22a,22bを含む。なお、以下の説明では、第2鋼部材14の表面14aのうち、平板部20の表面に相当する部分を平板部20の表面14aといい、第2鋼部材14の裏面14bのうち、平板部20の裏面に相当する部分を平板部20の裏面14bという。本実施形態では、平板部20が第1板状部に相当する。
第1鋼部材12および第2鋼部材14はそれぞれ、たとえば、鋼板を曲げ加工することによって得られる。第1鋼部材12および第2鋼部材14の材料として用いられる鋼板の材料は特に限定されず、たとえば、引張強度が270MPa以上の鋼板を用いることができる。特に、溶接構造部材10の強度を十分に確保するためには、たとえば、第1鋼部材12および第2鋼部材14の材料として高強度鋼板(たとえば、引張強度が590MPa以上の鋼板)が用いられる。溶接構造部材10の強度をより向上させるためには、第1鋼部材12および第2鋼部材14として用いられる鋼板の引張強度は、780MPa以上であることが好ましく、980MPa以上であることがより好ましく、1180MPa以上であることがさらに好ましい。また、第1鋼部材12および第2鋼部材14としては、さらに高強度の鋼板(たとえば、引張強度が1500MPa以上の鋼板)を用いることもできる。第1鋼部材12の板状部13の厚みおよび第2鋼部材14の平板部20の厚みはそれぞれ、たとえば、自動車足回り部材の材料としてよく使用される鋼板の厚みと同程度である。具体的には、板状部13および平板部20の厚みはそれぞれ、たとえば、0.8mm〜4.5mmの範囲に設定される。
図1を参照して、板状部13(第1鋼部材12)は、平板部20の表面14aに溶接される。平板部20の表面14aには、板状部13の端面を平板部20に接合するための溶接ビード24が形成される。本実施形態では、板状部13の端面が平板部20の表面14aに突き当てられた状態で、板状部13が溶接ビード24によって平板部20に接合されている。溶接ビード24は、板状部13(第1鋼部材12)の表面12aの下縁に沿うように表面12aと表面14aとの間に形成され、平面視において略U字形状を有する。本実施形態では、溶接ビード24が溶接ビード部に相当する。
本実施形態では、溶接ビード24は、底壁部16と平板部20とを接合する底壁ビード部26、側壁部18aと平板部20とを接合する側壁ビード部28a、および側壁部18bと平板部20とを接合する側壁ビード部28bを含む。溶接ビード24は、たとえば、アーク溶接によって形成される。上述したように、板状部13は、角部13a,13bを有する。したがって、板状部13の表面12aの下縁に沿って設けられる溶接ビード24も同様に、角部24a,24bを有する。具体的には、側壁ビード部28aと底壁ビード部26との接続部が角部24aを形成し、側壁ビード部28bと底壁ビード部26との接続部が角部24bを形成する。本実施形態では、角部24a,24bがそれぞれ第2角部に相当する。
図2を参照して、平板部20の裏面14bには、補助ビード30a,30bが形成される。補助ビード30aは角部24aに対応して設けられ、補助ビード30bは角部24bに対応して設けられる。補助ビード30a,30bは、たとえば、溶接材料を用いて形成される。補助ビード30a,30bは、たとえば、アーク溶接によって形成される。本実施形態では、補助ビード30a,30bが補助ビード部に相当する。
図3は、板状部13(図1参照)と平板部20(図1参照)との接合領域32、溶接ビード24および補助ビード30a,30bを、平板部20の表面14aに対して垂直な方向(本実施形態では、第1方向D1)に投影した図である。なお、図3に示した投影図は、平板部20の表面14aに対向する平行な面に、接合領域32、溶接ビード24および補助ビード30a,30bを投影して得られる図である。図3においては、接合領域32、溶接ビード24および補助ビード30a,30bの位置関係を理解し易くするために、接合領域32および溶接ビード24を投影した部分にはハッチングを付している。また、補助ビード30a,30bを投影した部分にはハッチングを付さずに、その外縁を破線で示している。また、図3においては、接合領域32の中心線32aを一点鎖線で示している。なお、中心線32aは、板状部13(図1参照)の厚み方向における中心を通る線であり、表面12aと裏面12bとの中間位置を通る線である。
本発明において接合領域32とは、板状部13の平板部20側の端面と平板部20との接触面(接合界面)のことを意味する。なお、板状部13と平板部20とを溶接する際に、板状部13の一部および平板部20の一部が溶融する場合がある。この場合、板状部13と平板部20とを実際に溶接した状態においては、板状部13の上記端面と平板部20との接合領域(接合界面)を明確に規定することはできない。そこで、本発明では、板状部13と平板部20とを溶接する際に板状部13および平板部20が溶融していないものと仮定して(言い換えると、板状部13および平板部20が溶接前の形状を維持していると仮定して)、接合領域32を規定する。したがって、本発明では、接合領域32および板状部13の上記端面を、平板部20の表面14aに対して垂直な方向に見た場合には、接合領域32の外縁と板状部13の上記端面の外縁とが一致する。溶接ビード24および補助ビード30a,30bについても同様に規定する。すなわち、板状部13および平板部20が溶接前の形状を維持していると仮定して、板状部13と平板部20との間に形成されるビードを、溶接ビード24と規定する。また、補助ビード30a,30bを形成する前の平板部20の形状が維持されていると仮定して、平板部20の裏面14b上に形成されるビードを補助ビード30a,30bと規定する。
なお、上述したように、本実施形態において、接合領域32の外縁と板状部13の上記端面の外縁とが一致する。すなわち、本実施形態では、接合領域32が板状部13の端面に相当する。以下においては、接合領域32のことを、板状部13の端面32ともいう。
図3を参照して、接合領域(板状部13の端面)32は、直線状に延びる底壁領域34、および底壁領域34の延伸方向に交差する方向に直線状に延びる側壁領域36a,36bを含む。本実施形態では、側壁領域36a,36bは、底壁領域34の延伸方向に直交する方向に延びている。底壁領域34は、底壁部16(図1参照)と平板部20(図1参照)との接合領域であり、側壁領域36aは、側壁部18a(図1参照)と平板部20との接合領域であり、側壁領域36bは、側壁部18b(図1参照)と平板部20との接合領域である。本実施形態では、底壁領域34が、第2板状部の端面の底壁部に相当し、側壁領域36a,36bが、第2板状部の端面の一対の側壁部に相当する。
上述したように、板状部13は、角部13a,13b(図1参照)を有する。したがって、接合領域(板状部13の端面)32も同様に角部38a,38bを有する。具体的には、側壁領域36aと底壁領域34との接続部が角部38aを形成し、側壁領域36bと底壁領域34との接続部が角部38bを形成する。角部38aは、底壁領域34の一方の端部から曲がりつつ側壁領域36aに向かって延びて、底壁領域34と側壁領域36aとを接続している。また、角部38bは、底壁領域34の他方の端部から曲がりつつ側壁領域36bに向かって延びて、底壁領域34と側壁領域36bとを接続している。本実施形態では、角部38a,38bがそれぞれ第1角部に相当する。なお、本実施形態では、角部38a,38bは円弧状に湾曲しているが、角部38a,38bが完全な円弧形状を有していなくてもよい。
本実施形態では、接合領域(板状部13の端面)32の外側の全体が溶接ビード24によって覆われている。溶接ビード24の角部24aは、接合領域32の角部38aに対応して形成され、角部24bは、角部38bに対応して形成される。本実施形態では、角部24aは、角部38aの外側を覆い、角部24bは、角部38bの外側を覆っている。なお、接合領域32の外側の全体が溶接ビード24によって覆われていなくてもよい。たとえば、側壁領域36aの外側(表面12a側)の一部が側壁ビード部28aによって覆われていなくてもよく、側壁領域36bの外側(表面12a側)の一部が側壁ビード部28bによって覆われていなくてもよい。
なお、本実施形態において「板状部の端面(接合領域)の角部」とは、たとえば、平面視において板状部13の端面32の中心線32aの曲率半径を、端面32の一端から他端に向かって所定間隔ごとに測定した場合に、該曲率半径が「板状部13の板厚(mm)の1/2+50mm」以下となる部分をいう。上記所定間隔は、たとえば、板状部13の板厚(mm)の1/5の長さに設定される。本発明は、「板状部の端面(接合領域)の角部」が、「板状部13の板厚(mm)の1/2+20mm」以下となる曲率半径を有する角部である場合に好ましく用いられ、「板状部13の板厚(mm)の1/2+10mm」以下となる曲率半径を有する角部である場合により好ましく用いられ、「板状部13の板厚(mm)の1/2+5mm」以下となる曲率半径を有する角部である場合にさらに好ましく用いられる。また、「溶接ビード部の角部」は、たとえば、板状部の端面(接合領域)の角部に接するように形成されている部分としてもよい。
以下、接合領域32、溶接ビード24、および補助ビード30a,30bの位置関係を説明するが、該位置関係は、図3に示した投影図における位置関係のことである。また、以下の説明では、「図3に示した投影図において」と同様の意味として、「平面視において」という場合もある。なお、以下に説明する補助ビード30a,30bの形状は一例である。補助ビード30a,30bの位置・形状については、後述するシミュレーションにおいてより詳細に検討している。
図3を参照して、補助ビード30aは、例えば略扇形状に形成され、溶接ビード24の角部24aおよび接合領域32の角部38aに重なっている。補助ビード30bは、例えば略扇形状に形成され、溶接ビード24の角部24bおよび接合領域32の角部38bに重なっている。
なお、本実施形態では、補助ビード30aは角部24aの全体に重なるように形成され、補助ビード30bは角部24bの全体に重なるように形成されているが、補助ビード30aは、角部24aの少なくとも一部に重なるように形成されていてもよく、補助ビード30bは、角部24bの少なくとも一部に重なるように形成されていてもよい。また、補助ビード30aは角部38aの一部に重なるように形成され、補助ビード30bは角部38bの一部に重なるように形成されているが、補助ビード30aが角部38aの全体に重なるように形成されていてもよく、補助ビード30bが角部38bの全体に重なるように形成されていてもよい。また、補助ビード30aが角部38aに重なっていなくてもよく、補助ビード30bが角部38bに重なっていなくてもよい。
以下、本発明の作用効果を説明する。
本発明者らの研究の結果、補助ビード30a,30bを有していない点を除いて溶接構造部材10と同様の構成を有する従来のT字継手においては、板状部13を平板部20の表面14aに対して垂直な方向に引っ張った場合、溶接ビード24の角部24a,24bの近傍において最大主応力の値が大きくなることが分かった。より具体的には、溶接ビード24の角部24a,24bの表面14a側の止端部付近において、最大主応力の値が大きくなり易いことが分かった。さらに、該止端部付近において亀裂が発生し易いことも分かった。
そこで、本発明に係る溶接構造部材10では、溶接ビード24の角部24a,24bの表面14a側の止端部付近の最大主応力の値を低減するために、補助ビード30a,30bを設けている。より具体的には、平面視において、溶接ビード24の角部24a,24bに重なるように、補助ビード30a,30bを設けている。これにより、溶接構造部材10において、溶接ビード24の角部24a,24b近傍の部分の剛性を高めることができ、角部24a,24b近傍(特に、角部24a,24bの表面14a側の止端部付近)に生じる最大主応力の値を低減できる。その結果、溶接構造部材10の疲労強度を向上させることができる。
また、本発明に係る溶接構造部材10では、補助ビード30a,30bを第2鋼部材14の平板部20の裏面14bに形成すればよい。このため、たとえば、板状部13の表面12aおよび平板部20の表面14aにおいて溶接ビード24の角部24a,24bに交差するように補助ビードを形成する場合に比べて、製造上の制約を受けることなく補助ビード30a,30bを形成できる。これにより、適切な補助ビード30b,30bを短時間で容易に形成できるので、溶接構造部材10の生産効率の低下を防止できる。
さらに、裏面14bに補助ビード30a,30bが形成されるので、たとえば、溶接構造部材10を車体材料として用いた場合に、補助ビード30a,30bが外観に表れない。これにより、補助ビード30a,30bによって車体の美感が損なわれることを防止できる。
なお、上述の実施形態では、側壁部18aと側壁部18bとが互いに平行に設けられる場合について説明したが、側壁部18aと側壁部18bとが互いに平行に設けられなくてもよい。たとえば、板状部13が、開放端側の間隔が広くなるような開断面形状を有している場合には、接合領域32、溶接ビード24および補助ビード30a,30bの投影図は、図4に示すようになる。この場合でも、上述の実施形態と同様の作用効果が得られる。なお、図示は省略するが、板状部13が、開放端側の間隔が狭くなるような開断面形状を有していてもよい。
なお、上述の実施形態では、板状部13の端面32が、直線状に延びる底壁領域34を有する場合について説明したが、底壁領域34の一部が直線状に延びていなくてもよい。例えば、底壁領域34の一方の端部および/または他方の端部が直線状に延びていれば、底壁領域34の途中の部分が湾曲していてもよい。
上述の実施形態では、一対の補助ビード30a,30bを形成する場合について説明したが、補助ビード30a,30bのうちのいずれか一方を形成しなくてもよい。
上述の実施形態では、板状部13は、第1方向D1および第2方向D2に対して直交する方向に開口する開断面形状を有しているが、板状部13が、第2方向D2に開口する開断面形状を有していてもよい。
上述の実施形態では、第1鋼部材12全体が板状部13として構成される場合について説明したが、第1鋼部材が板状部と他の形状を有する部分(たとえば、柱状部)とを備えていてもよい。
上述の実施形態では、板状部13の端面(接合領域)32が3つの壁部(底壁領域34および側壁領域36a,36b)と2つの角部(角部38a,38b)を有する場合について説明したが、板状部の端面が、4つ以上の壁部および3つ以上の角部を有していてもよい。具体的には、例えば、図5に示すように、板状部の端面(接合領域)33が、それぞれ直線状に延びる壁部33a,33b,33c,33d,33eと、角部33f,33g,33h,33iとを有していてもよい。板状部の端面32が図5に示す形状を有する場合、例えば、壁部33b,33c,33dを底壁部と規定し、壁部33a,33eを側壁部と規定して本発明を適用することができる。この場合、壁部33b,33dがそれぞれ、底壁部の端部に相当する。
なお、壁部33cを底壁部と規定し、壁部33b,33dを側壁部と規定して本発明を適用してもよい。さらに、壁部33bを底壁部と規定し、壁部33a,33cを側壁部と規定して本発明を適用してもよく、壁部33dを底壁部と規定し、壁部33c,33eを側壁部と規定して本発明を適用してもよい。
上述の実施形態では、板状部13が開断面形状を有する場合について説明したが、本発明は、種々の形状の板状部を有する溶接構造部材に適用できる。したがって、たとえば、第1鋼部材が、上述の板状部13の代わりに、平面視L字形状の板状部を有していてもよい。この場合も、上述の溶接構造部材10と同様に、たとえば、接合領域の角部および溶接ビードの角部に重なるように補助ビードを形成する。
上述の実施形態では、側壁部22a,22bを有する第2鋼部材14について説明したが、本発明は、平板部を有する種々の第2鋼部材を備えた溶接構造部材に適用できる。したがって、第2鋼部材が側壁部22a,22bを有していなくてもよい。
以下、コンピュータを用いたシミュレーション結果とともに、本発明の効果をより詳細に説明する。
(シミュレーション1)
このシミュレーションでは、図1〜3で説明した溶接構造部材10と同様の構成を有する解析モデル(以下、第1モデルともいう。)を作成した。そして、第1モデルにおいて、補助ビード30a,30bの位置および寸法を変化させて、溶接ビード24の角部24a,24bの表面14a側の止端部付近(以下、角部24a,24b付近と略記する。)に生じる最大主応力を求めた。また、比較のために、補助ビード30a,30bを有していない解析モデル(以下、第2モデルともいう。)を作成し、溶接ビード24の角部24a,24b付近に生じる最大主応力を求めた。なお、下記の説明では、角部24a,24b付近に生じる最大主応力のうち、角部24b付近に生じる最大主応力のシミュレーション結果について説明するが、角部24a付近にも同様の最大主応力が発生した。
解析モデルでは、角部38a,38b、角部24a,24bおよび補助ビード30a,30bをそれぞれ円弧状に湾曲させた。以下、解析モデルの形状について具体的に説明する。
図6は、平面視における角部38b、角部24bおよび補助ビード30bの形状を示した図である。なお、以下においては、角部38b、角部24bおよび補助ビード30bの平面視における形状について説明するが、角部38a、角部24aおよび補助ビード30aも同様の形状を有する。
図6に示すように、解析モデルでは、角部38bは円弧状に湾曲する内縁ie1および外縁oe1を有し、角部24bは円弧状に湾曲する内縁ie2および外縁oe2を有し、補助ビード30bは円弧状に湾曲する内縁ie3および外縁oe3を有する。内縁ie1,ie2,ie3および外縁oe1,oe2,oe3は、仮想的な点40を共通の中心とする円弧である。角部24bの内縁ie2および外縁oe2、ならびに補助ビード30bの内縁ie3および外縁oe3はそれぞれ、平面視における溶接止端の位置を示す。なお、図6においては、内縁ie3と外縁oe3との中央を通る線、すなわち補助ビード30bの中心線CLを二点鎖線で示している。
本シミュレーションでは、角部38bの外縁oe1の半径Raを5mmに、角部24bの外縁oe2の半径Rbを9.3mmに固定して、補助ビード30bの幅W1および補助ビード30bの中心線CLの半径Rcを変化させた。説明は省略するが、角部38aの外縁の半径、角部24aの外縁の半径、および補助ビード30aの中心線の半径も同様に設定した。
なお、第1モデルおよび第2モデルともに、図1および図2において点線の丸41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b,45a,45bで示す位置に穴を形成した(以下、点線で示したこれらの丸をそれぞれ穴という。)。シミュレーションでは、穴42a,42b,43a,43b,44a,44b,45a,45bにそれぞれ固定治具(剛体)を配置して、第2鋼部材14を固定した。そして、穴41a,41bに円柱状の部材(剛体)を通し、その部材を介して板状部13(第1鋼部材12)を平板部20の表面14aに対して垂直な方向に2.0kNの力で引っ張った。
以下に、第1モデルおよび第2モデルの詳細な構成を示す。
(解析モデルの構成)
・第1鋼部材
厚み:2.6mm
高さ(第1方向D1の長さ):80mm
左右方向(第2方向D2)の長さ:70mm
前後方向(第1方向D1および第2方向D2に直交する方向)の長さ:80mm
穴41aの位置:側壁部18aの中央
穴41bの位置:側壁部18bの中央
ヤング率:210000MPa
ポアソン比:0.3
・第2鋼部材
厚み:2.6mm
高さ(第1方向D1の長さ):50mm
左右方向(第2方向D2)の長さ:300mm
前後方向(第1方向D1および第2方向D2に直交する方向)の長さ:150mm
穴42a,42bの中心間距離:230mm
穴43a,43bの中心間距離:230mm
穴44a,44bの中心間距離:230mm
穴45a,45bの中心間距離:230mm
穴42a,43aの中心間距離:100mm
穴42b,43bの中心間距離:100mm
表面14aから穴44a,44b,45a,45bの中心までの上下方向の距離:25mm
ヤング率:210000MPa
ポアソン比:0.3
・溶接ビード
幅W2(図6参照):4.3mm
高さ(第1方向D1の長さ):5mm
ヤング率:210000MPa
ポアソン比:0.3
・補助ビード
幅W1(図6参照):4mm、6mm、8mm、10mm、12mm、14mm、16mm
高さ(第1方向D1の長さ):2mm
ヤング率:210000MPa
ポアソン比:0.3
シミュレーション結果を図7および図8に示す。図7は、補助ビード30bの位置と溶接ビード24の角部24b付近に生じる最大主応力の最大値との関係を示すグラフである。図7の横軸は、補助ビード30bの中心線CLの半径Rcと角部24bの外縁部oe2の半径Rbとの差を示す。半径Rcと半径Rbとの差が正の値の場合には、補助ビード30bの中心線CLが角部24bの外縁部oe2よりも外側に位置していることを意味する。図7においては、第2モデル(補助ビードを有していない解析モデル)における最大主応力の最大値(423MPa)を破線で示している。図8は、図7に示した最大主応力の最大値のうち、補助ビード30bの幅W1ごとに、最小となる値を示したグラフである。具体的には、図7を参照して、たとえば、補助ビード30bの幅W1が4mmの場合、最大主応力の最大値は(Rc−Rb)の値に応じて350MPaから421MPaの間で変化した。すなわち、シミュレーションでは、補助ビード30bの幅W1が4mmの場合、最大主応力の最大値の最小値は350MPaであり、最大主応力の最大値の最大値は421MPaであった。したがって、図8には、補助ビード30bの幅W1が4mmの場合の最大主応力の最大値の最小値として、350MPaを示している。同様に、幅W1が6mm、8mm、10mm、12mm、14mmおよび16mmの場合について、最大主応力の最大値の最小値を求め、図8に示している。
なお、第1鋼部材12および第2鋼部材14の材料の降伏を考慮して解析を行った場合と、降伏を考慮せずに解析を行った場合とで、第1モデルに生じる応力と第2モデルに生じる応力との大小関係は変わらない。したがって、第1モデルに生じる最大主応力と第2モデルに生じる最大主応力との大小関係を相対的に評価する場合には、材料の降伏の有無を考慮しなくてもよい。そこで、本シミュレーションでは、解析を簡単にするため、第1鋼部材12および第2鋼部材14の材料の降伏を考慮せずに、弾性解析を行った。また、上記のように最大主応力の大小関係を相対的に評価する場合には材料の降伏を考慮しなくてもよいので、本シミュレーションによって、任意の引張強度の第1鋼部材12および第2鋼部材14を備えた溶接構造部材の評価を行うことができる。すなわち、本シミュレーションによって、たとえば、引張強度が270MPaの材料を用いた溶接構造部材の評価を行うこともできるし、引張強度が1500MPaの材料を用いた溶接構造部材の評価を行うこともできる。
図7から、補助ビードを有する本発明に係る溶接構造部材では、補助ビードを有しない従来の溶接構造部材に比べて、最大主応力の最大値が低下することが分かる。この結果から、本発明に係る溶接構造部材では、従来の溶接構造部材に比べて、疲労強度が向上すると考えられる。また、図8から、補助ビードの幅を8mm以上にすることによって、最大主応力の最大値の最小値を十分に低減できることが分かる。
(シミュレーション2)
このシミュレーション2では、補助ビード30bの体積を55mmに設定した点、ならびに第2鋼部材14の板厚を1.6mm、2.0mm、2.6mmおよび3.5mmに設定した点を除いて、上述のシミュレーション1と同様の条件で、溶接ビード24の角部24a,24b付近に生じる最大主応力を求めた。なお、下記の説明では、角部24a,24b付近に生じる最大主応力のうち、角部24b付近に生じる最大主応力のシミュレーション結果について説明するが、角部24a付近にも同様の最大主応力が発生した。
図9は、シミュレーション2における、角部38b、角部24bおよび補助ビード30bの形状を示した図である。なお、以下においては、角部38b、角部24bおよび補助ビード30bの平面視における形状について説明するが、角部38a、角部24aおよび補助ビード30aも同様の形状を有する。
なお、図9には、第1仮想線L1、第2仮想線L2および第3仮想線L3が示されている。第1仮想線L1は、角部38bと底壁領域34との接続点P1を通る底壁部34の垂線である。第2仮想線L2は、角部38bと側壁領域36bとの接続点P2を通る側壁領域36bの垂線である。第3仮想線L3は、第1仮想線L1と第2仮想線L2との交点P3および角部38b上を通り、かつ第1仮想線L1と第2仮想線L2とがなす角を二等分する直線である。なお、図9の例では、端面32の内縁上における、角部38bと底壁領域34との境界および角部38bと側壁領域36bとの境界がそれぞれ、接続点P1,P2として規定されている。しかしながら、端面32の外縁上における、角部38bと底壁領域34との境界および角部38bと側壁領域36bとの境界をそれぞれ接続点として規定してもよい。なお、図9の例では、交点P3は、円弧状に湾曲する角部38bの外縁および内縁の曲率中心である。
また、図9には、交点P3を中心とした場合の、補助ビード30bの外縁の半径および内縁の半径がそれぞれ、半径Roおよび半径Riとして示されている。さらに、図9には、第4仮想線L4および第5仮想線L5が示されている。第4仮想線L4は、溶接ビード24の外縁のうち、補助ビード30bに重なっている部分の側壁領域36b(側壁ビード部28b)側の端点P4と交点P3とを通る直線である。また、第5仮想線L5は、溶接ビード24の外縁のうち、補助ビード30bに重なっている部分の底壁領域34(底壁ビード部26)側の端点P5と交点P3とを通る直線である。また、図9には、第1仮想線L1と第4仮想線L4とのなす角θおよび第1仮想線L1と第5仮想線L5とのなす角θが示されている。
下記の表1に、シミュレーション2における条件、およびシミュレーションによって求められた最大主応力の最大値を示す。なお、表1には、比較のために、補助ビードを設けなかった解析モデルにおいて生じた最大主応力の最大値を示している。表1において板厚とは、第2鋼部材14の平板部20の板厚を表す。表1において突出量とは、交点P3を中心とする径方向における、溶接ビード24の外縁oe2に対する補助ビード30bの突出量である。表1において重なり量とは、交点P3を中心とする径方向における、溶接ビード24と補助ビード30bとの重なり量である。なお、表1に示す突出量および重なり量はそれぞれ、第1仮想線L1と第3仮想線L3との間における突出量の平均値である。表1において高さとは、補助ビード30bの第1方向D1(図1参照)における最大高さである。
Figure 2016175125
図9および表1を参照して、このシミュレーション2の結果から、以下のことが分かった。まず、溶接ビード24の角部24bの外縁のうち、第3仮想線L3よりも底壁領域34側において補助ビード30bに重なる部分の長さの合計値を、第3仮想線L3よりも側壁領域36b側において補助ビード30bに重なる部分の長さの合計値以上とすることによって、最大主応力の最大値を十分に低減できることが分かった。また、第1仮想線L1から第3仮想線L3に亘って、溶接ビード24の角部24bの外縁が補助ビード30bに重なっていることが好ましいことも分かった。
上記のような結果が得られた要因は、以下のように考えることができる。すなわち、開断面形状を有する第1鋼部材12では、第3仮想線L3よりも底壁部16側の領域の剛性が、第3仮想線L3よりも側壁部18a,18b側(開口側)の領域の剛性よりも大きい。したがって、溶接ビード24のうち、第3仮想線L3よりも底壁部16側(底壁領域34側)の部分は相対的に剛性が小さくなり、この部分に応力が集中しやすくなる。これに対して、本シミュレーションでは、第3仮想線L3よりも底壁部16側の溶接ビード24に対応する部分に、補助ビード30bが設けられている。これにより、溶接ビード24のうち、第3仮想線L3よりも底壁部16側の部分の剛性を高めることができ、この部分に応力が集中することを抑制できたと考えられる。その結果、上記のように、最大主応力の最大値を十分に低減できたと考えられる。
また、第1仮想線L1と前記第3仮想線L3との間において、補助ビード30bが溶接ビード24から、交点P3を中心とする径方向に平均で1.5mm以上突出していることが好ましいことが分かった。
また、交点P3を中心として、少なくとも、第1仮想線L1から側壁領域36b側へ65°の領域に亘って、かつ前記第1仮想線L1から底壁領域34側へ26°の領域に亘って、溶接ビード24の外縁が補助ビード30bに重なっていることが好ましいことが分かった。
また、表1に示した板厚と重なり量との関係から、重なり量が下記式(1)を満たすことによって、最大主応力の最大値を十分に低減できることがわかる。
≧−0.28x+2.21x ・・・(1)
但し、(1)式において、Dは、重なり量の平均値(mm)であり、xは、第2鋼部材14(平板部20)の板厚(mm)である。
本発明によれば、簡単な構成によって、すなわち平板部において溶接ビードの反対側に補助ビードを形成することによって溶接構造部材の疲労強度を向上できる。したがって、本発明に係る溶接構造部材は、たとえば、車体材料として好適に用いることができる。
10 溶接構造部材
12 第1鋼部材
13 板状部
14 第2鋼部材
14a 表面
14b 裏面
16 底壁部
18a,18b 側壁部
20 平板部
24 溶接ビード
24a,24b,38a,38b 角部
30a,30b 補助ビード
32 接合領域

Claims (8)

  1. 金属からなり、厚み方向において互いに反対側に設けられた第1面および第2面を有する第1板状部を含むベース部材と、
    金属からなり、前記ベース部材の前記第1面に交差する方向に延び、かつ該第1面に突き当てられた端面を有する第2板状部を含む接合部材と、
    前記ベース部材の前記第1面に形成され、かつ前記接合部材の前記端面の少なくとも一部を前記ベース部材の前記第1面に接合する溶接ビード部と、
    前記ベース部材の前記第2面に形成された補助ビード部とを備え、
    前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、前記接合部材の前記端面は少なくとも1つの第1角部を有し、前記溶接ビード部は前記少なくとも1つの第1角部の外側を覆うように形成された少なくとも1つの第2角部を有し、前記補助ビード部が前記溶接ビード部の前記少なくとも1つの第2角部に重なっている、溶接構造部材。
  2. 前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、前記補助ビード部は前記溶接ビード部の前記少なくとも1つの第2角部から、該第2角部の外側に突出している、請求項1に記載の溶接構造部材。
  3. 前記接合部材の前記第2板状部は、該第2板状部の前記端面が底壁部および一対の側壁部を有するように、前記ベース部材の前記第1面に平行な断面において開断面形状を有し、
    前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
    前記底壁部の一方の端部と一方の前記側壁部との間に、前記第1角部が設けられ、
    前記底壁部の前記一方の端部は直線状に延び、
    前記一方の側壁部は、前記底壁部の前記一方の端部の延伸方向に交差する方向に直線状に延び、
    前記第1角部は、前記底壁部の前記一方の端部から曲がりつつ前記一方の側壁部に向かって延びて、前記底壁部と前記一方の側壁部とを接続しており、
    前記第1角部と前記底壁部との接続点を通る前記底壁部の前記一方の端部の垂線を第1仮想線とし、
    前記第1角部と前記一方の側壁部との接続点を通る前記一方の側壁部の垂線を第2仮想線とし、
    前記第1仮想線と前記第2仮想線との交点および前記第1角部上を通り、かつ前記第1仮想線と前記第2仮想線とがなす角を二等分する直線を第3仮想線として、
    前記溶接ビード部の前記第2角部の外縁のうち、前記第3仮想線よりも前記底壁部側において前記補助ビード部に重なる部分の長さの合計値が、前記第3仮想線よりも前記一方の側壁部側において前記補助ビード部に重なる部分の長さの合計値以上である、請求項1または2に記載の溶接構造部材。
  4. 前記接合部材の前記第2板状部は、該第2板状部の前記端面が底壁部および一対の側壁部を有するように、前記ベース部材の前記第1面に平行な断面において開断面形状を有し、
    前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
    前記接合部材の端面は、前記底壁部の一方の端部と一方の前記側壁部との間および前記底壁部の他方の端部と他方の前記側壁部との間にそれぞれ形成された一対の第1角部を有し、
    前記溶接ビード部は、前記一対の第1角部の外側をそれぞれ覆うように形成された一対の第2角部を有し、
    前記底壁部は直線状に延び、
    前記一対の側壁部はそれぞれ、前記底壁部の延伸方向に交差する方向に直線状に延び、
    前記第1角部はそれぞれ、前記底壁部の端部から曲がりつつ前記側壁部に向かって延びて、前記底壁部と前記側壁部とを接続しており、
    前記底壁部の前記一方の端部と一方の前記第1角部との接続点を通る前記底壁部の垂線、および前記底壁部の前記他方の端部と他方の前記第1角部との接続点を通る前記底壁部の垂線をそれぞれ第1仮想線とし、
    前記一方の第1角部と前記一方の側壁部との接続点を通る前記一方の側壁部の垂線、および前記他方の第1角部と前記他方の側壁部との接続点を通る前記他方の側壁部の垂線をそれぞれ第2仮想線とし、
    前記底壁部の前記一方の端部側および前記他方の端部側においてそれぞれ、
    前記第1仮想線と前記第2仮想線との交点および前記第1角部上を通り、かつ前記第1仮想線と前記第2仮想線とがなす角を二等分する直線を第3仮想線として、
    前記溶接ビード部の前記第2角部の外縁のうち、前記第3仮想線よりも前記底壁部側において前記補助ビード部に重なる部分の長さの合計値が、前記第3仮想線よりも前記側壁部側において前記補助ビード部に重なる部分の長さの合計値以上である、請求項1または2に記載の溶接構造部材。
  5. 前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
    前記溶接ビード部の前記第2角部の外縁は、前記第3仮想線から前記第1仮想線に亘って前記補助ビード部に重なっている、請求項3または4に記載の溶接構造部材。
  6. 前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
    前記第1仮想線と前記第3仮想線との間において、前記補助ビード部は、前記溶接ビード部から、前記第1仮想線と前記第2仮想線との前記交点を中心とする径方向に平均1.5mm以上突出している、請求項3から5のいずれかに記載の溶接構造部材。
  7. 前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
    前記第1仮想線と前記第3仮想線との間において、前記補助ビード部と前記溶接ビード部との前記径方向における重なり量の平均値は、下記式(1)を満たす、請求項6に記載の溶接構造部材。
    ≧−0.28x+2.21x ・・・(1)
    但し、(1)式において、Dは、前記重なり量の平均値(mm)であり、xは、ベース部材の板厚(mm)である。
  8. 前記接合部材の前記端面、前記溶接ビード部および前記補助ビード部を前記ベース部材の前記第1面に対して垂直な方向に投影した場合に、
    前記第1仮想線と前記第2仮想線との前記交点を中心として、少なくとも、前記第1仮想線から前記側壁部側へ65°の領域に亘って、かつ前記第1仮想線から前記底壁部側へ26°の領域に亘って、前記溶接ビード部の外縁が前記補助ビード部に重なっている、請求項3から7のいずれかに記載の溶接構造部材。
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