JP2016172288A - マルチワイヤ放電加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】加工屑によってガイドローラが損傷することを抑えることができるマルチワイヤ放電加工装置を提供する。
【解決手段】インゴットに近接して放電する放電領域を通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hに対向して配設されたブラシ80は、ワイヤRに付着した加工屑及びガイドローラ30hの溝31に付着した加工屑を除去する。これにより、加工屑がワイヤRとガイドローラ30hの溝31との間で擦れることを抑制でき、ガイドローラ30hの溝31が削れることを抑制できる。
【選択図】図2
【解決手段】インゴットに近接して放電する放電領域を通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hに対向して配設されたブラシ80は、ワイヤRに付着した加工屑及びガイドローラ30hの溝31に付着した加工屑を除去する。これにより、加工屑がワイヤRとガイドローラ30hの溝31との間で擦れることを抑制でき、ガイドローラ30hの溝31が削れることを抑制できる。
【選択図】図2
Description
本発明は、マルチワイヤ放電加工装置に関する。
放電加工では、微細なインゴットの加工屑が発生するが、加工屑がワイヤとインゴットの隙間に滞留すると加工屑を介して短絡が発生する。短絡により電流が局所的に流れてワイヤが熱により断線したり、溝幅が広くなり形成するウェーハの枚数を減らしてしまうという問題が発生する。そこで、加工槽中で放電を実施したり、ノズルで加工溝に加工液を噴射したりすることで、ワイヤによりインゴットを放電加工する放電領域から加工屑の排出を促進している。
ところで、放電領域以外においても、加工屑が起因となる問題がある。例えば、加工屑が付着したワイヤがガイドローラへ移動すると、加工屑がワイヤとガイドローラとの間に介在し、加工屑によりガイドローラの溝が削れて広くなりワイヤを振動しやすくさせたり、ガイドローラが溝に沿って分断してしまったりするという問題がある。
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、加工屑によってガイドローラが損傷することを抑えることができるマルチワイヤ放電加工装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るマルチワイヤ放電加工装置は、間隔を置いて隣接するガイドローラと、該ガイドローラに軸方向に間隔をあけて複数回巻きかけられたワイヤと、インゴットが並列する該ワイヤに切り込むように該インゴットと該ワイヤとを相対移動させる駆動手段と、該ワイヤとインゴットに高周波パルス電力を供給する高周波パルス電源ユニットと、各構成要素を制御する制御手段と、を備えるマルチワイヤ放電加工装置であって、該ガイドローラ間を走行する該ワイヤが、インゴットに近接して放電する放電領域を通過した後に到達する下流側ガイドローラにはブラシが配設され、該ブラシは、該ワイヤが案内される該下流側ガイドローラの溝に、該ワイヤを介して接触し、放電加工で発生するインゴットの加工屑を該ワイヤ又は該溝の少なくともいずれか一方から除去することを特徴とする。
また、上記マルチワイヤ放電加工装置において、該ブラシは、該下流側ガイドローラに向かって付勢されていることが好ましい。
本発明のマルチワイヤ放電加工装置によれば、下流側ガイドローラに配設されたブラシは、ワイヤ及びガイドローラの溝に付着した加工屑を除去するので、ガイドローラの損傷を抑えるという効果を奏する。
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
実施形態1に係るマルチワイヤ放電加工装置の構成例について説明する。図1は、実施形態1に係るマルチワイヤ放電加工装置の構成例を示す概略図である。図2は、実施形態1に係るブラシの構成例及び配設例を示す上面図である。図1に示すように、マルチワイヤ放電加工装置1Aは、ワイヤRによりインゴットIの放電加工を実施するものであり、繰り出しボビン20、巻き取りボビン21及びガイドローラ部30を備えている。
実施形態1に係るマルチワイヤ放電加工装置の構成例について説明する。図1は、実施形態1に係るマルチワイヤ放電加工装置の構成例を示す概略図である。図2は、実施形態1に係るブラシの構成例及び配設例を示す上面図である。図1に示すように、マルチワイヤ放電加工装置1Aは、ワイヤRによりインゴットIの放電加工を実施するものであり、繰り出しボビン20、巻き取りボビン21及びガイドローラ部30を備えている。
繰り出しボビン20には、黄銅などの金属線であるワイヤRが一定量巻き回されている。繰り出しボビン20は、ガイドローラ部30に向けてワイヤRを繰り出す。ガイドローラ部30は、繰り出しボビン20の近傍に配設され、繰り出しボビン20から繰り出されたワイヤRを案内する。ガイドローラ部30は、複数のガイドローラ30a〜30jから構成されている。ガイドローラ30a〜30jは、円柱状に形成され、ワイヤRが走行する方向に間隔をおいて配設されている。
ガイドローラ30a,30bは、繰り出しボビン20の近傍に配設され、繰り出しボビン20により繰り出されたワイヤRを巻き掛けてワイヤRをガイドローラ30c〜30iに向けて送り出す。
ガイドローラ30c〜30iは、並列ワイヤ部310を構成し、ワイヤRを環状に支持するように配設されている。例えば、並列ワイヤ部310のガイドローラ30c,30d,30e,30g,30h,30iは、環状のワイヤRを内側から支持し、ガイドローラ30fは、環状に構成された並列ワイヤ部310のワイヤRに対して外側から支持するように配設されている。並列ワイヤ部310は、ガイドローラ30a,30bにより送り出されたワイヤRを軸方向(Y軸方向)に一定の間隔をおいて複数回巻き掛ける。並列ワイヤ部310のワイヤRは、例えば、軸方向に0.5mm〜数mm程度の間隔をあけてガイドローラ30c〜30iに10周巻き掛けられている。
ここで、Y軸方向は、ガイドローラ30a〜30jの軸方向である。X軸方向は、Y軸方向と直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向、本実施形態1では、鉛直方向である。
並列ワイヤ部310において、ガイドローラ30cは、ガイドローラ30bにより送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ30dに送り出す。ガイドローラ30dは、ガイドローラ30cにより送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ30eに送り出す。ガイドローラ30eは、ガイドローラ30dにより送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ30fに送り出す。ガイドローラ30fは、ガイドローラ30eにより送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ30gに送り出す。ガイドローラ30gは、ガイドローラ30fにより送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ30hに送り出す。ガイドローラ30hは、ガイドローラ30gにより送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ30iに送り出す。ガイドローラ30iは、ガイドローラ30hにより送り出されたワイヤRを巻き掛けてガイドローラ30cに送り出す。これで、並列ワイヤ部310を構成するガイドローラ30c〜30iに1周巻き掛けられたことになる。ワイヤRは、軸方向に0.5mm〜数mm程度の間隔をあけつつ並列ワイヤ部310のガイドローラ30c〜30iに残り9周巻き掛けられる。並列ワイヤ部310は、10周巻き掛けられた最後のワイヤRをガイドローラ30jに送り出す。
ガイドローラ30jは、巻き取りボビン21の近傍に配設され、並列ワイヤ部310から送り出されたワイヤRを巻き掛けて巻き取りボビン21に送り出す。巻き取りボビン21は、ガイドローラ30jから送り出された使用済みのワイヤRを巻き取って回収する。
なお、繰り出しボビン20、巻き取りボビン21及びガイドローラ30a〜30jは、図示しないモータによって回転駆動される。全てのガイドローラ30a〜30jをモータ駆動とする必要はなく、例えば、並列ワイヤ部310を構成しないガイドローラ30a,30b,30jを従動ローラとしてもよい。ガイドローラ30a〜30jに巻き掛けられたワイヤRが走行する速度は、0.5m/sec〜1m/sec程度である。
並列ワイヤ部310のワイヤRは、一対のガイドローラ30g,30hによりZ軸方向に沿って一定のテンションを有して張設されている。ガイドローラ30g,30hにより張設されたワイヤRは、インゴットIをスライスする切断ワイヤ部320を構成する。切断ワイヤ部320のワイヤRは、Z軸方向に沿って上向きへ走行する。
インゴットIは、円柱形状であり、切断ワイヤ部320のワイヤRの間隔で円板状にスライスされる。インゴットIは、導電性がある材料であり、SiC、単結晶ダイヤ、シリコン、GaN(窒化ガリウム)等から形成される。
切断ワイヤ部320の近傍には、インゴットIを支持する支持機構40が設けられている。支持機構40は、基台部41と、支持柱42と、駆動手段43とを備えている。基台部41は、インゴットIを固定するものである。基台部41は、基台41aと、基台41aに固定された板状のサブストレート41bとを備えている。サブストレート41bの前面41cには、インゴットIの側面Iaが導電性接着剤Bにより接着されて固定される。インゴットIは、その端面Ieが切断ワイヤ部320のワイヤRが走行するZ軸方向と略平行になるように基台部41のサブストレート41bに固定される。
支持柱42は、棒状に形成されており、Z軸方向に立設されている。支持柱42は、一端に基台部41が固定され、他端に駆動手段43が固定されている。駆動手段43は、インゴットIとワイヤRとをX軸方向に相対移動させるものである。例えば、駆動手段43は、X軸方向に沿って延在される図示しないボールねじと、パルスモータ等で構成される駆動源とを有する。駆動手段43は、ボールねじのナットに固定された支持柱42をX軸方向に沿って移動させ、支持柱42に固定された基台部41のインゴットIを切断ワイヤ部320のワイヤRに切り込ませる。
マルチワイヤ放電加工は、誘電体である水や油などの加工液Fの中で実施される。切断ワイヤ部320は、加工液Fが貯留された加工槽50の中に浸漬されている。加工槽50の中で、加工液Fに浸漬された切断ワイヤ部320のワイヤRがインゴットIを加工する。
加工槽50の前面51には、基台部41を取り付けるための円形の開口穴52が設けられている。加工槽50の開口穴52に基台部41が差し込まれ、図示しないゴムパッキン等のシール部材により開口穴52と基台部41との隙間が密閉されている。開口穴52と基台部41との隙間は、シール部材により密閉されているので、加工液Fが加工槽50の開口穴52から漏れ出すことなく、基台部41は、加工槽50に対してX軸方向に往復移動が可能となる。
加工槽50は、その上面に開口部53を有しており、ガイドローラ30fにより送り出されたワイヤRは、開口部53から加工槽50の内部に進入する。加工槽50の内部に進入したワイヤRは、加工槽50内に配設されたガイドローラ30gにより開口部53から加工槽50の外部に送り出される。
マルチワイヤ放電加工装置1Aは、ワイヤRとインゴットIに給電する給電機構60を備えている。給電機構60は、高周波パルス電源ユニット61と、ワイヤ用電極62と、図示しない基台用電極とを備えている。
高周波パルス電源ユニット61は、ワイヤRと、基台部41に固定されたインゴットIとに高周波パルス電力を供給する。例えば、高周波パルス電源ユニット61は、ワイヤ用電極62に接続され、ワイヤ用電極62を介して高周波パルス電力をワイヤRに供給する。ワイヤ用電極62は、棒状に形成され、ガイドローラ30hとガイドローラ30iとの間に張設されるワイヤRに当接されている。また、高周波パルス電源ユニット61は、基台部41に固定される図示しない基台用電極に接続され、基台部41を介して高周波パルス電力をインゴットIに供給する。
高周波パルス電源ユニット61から高周波パルス電力を供給して、ワイヤRとインゴットIとの極間に電圧を印加すると、ワイヤRは、正面に配置されたインゴットIに対して放電を行う。例えば、加工液F中で絶縁状態にあるインゴットIとワイヤRの間隔が数十μm位まで近づくと、両者の絶縁が破壊されて放電が発生する。この放電によってインゴットIが加熱されて溶融され、さらに液体の温度が急激に上昇することにより液体が気化し、体積膨張によって溶融箇所を飛散させる。このように、高周波パルス電力を切断ワイヤ部320のワイヤRに供給することで、インゴットIを溶融すると共に飛散させる処理を断続的に行ってインゴットIの放電加工を実施する。
高周波パルス電源ユニット61は、電圧調整手段610と、パルス調整手段611とを備えている。電圧調整手段610は、高周波パルス電力の電圧を調整する。パルス調整手段611は、高周波パルス電力の周波数を所定の周波数に調整する。
マルチワイヤ放電加工装置1Aは、繰り出しボビン20、巻き取りボビン21、ガイドローラ30a〜30j、駆動手段43及び高周波パルス電源ユニット61を制御する制御手段70を備えている。制御手段70は、繰り出しボビン20、巻き取りボビン21及びガイドローラ30a〜30jにモータ駆動信号を出力し、ワイヤRの繰り出しや巻き取り、ワイヤRの案内をするように制御する。また、制御手段70は、駆動手段43にモータ駆動信号を出力してインゴットIを切断ワイヤ部320のワイヤRに切り込ませるように制御する。また、制御手段70は、高周波パルス電源ユニット61に制御信号を出力して高周波パルス電力の出力時間などを制御する。
マルチワイヤ放電加工装置1Aは、インゴットIの加工屑U(図4参照)を除去するブラシ80と、ブラシ80を付勢する付勢手段90とを備えている。ブラシ80は、切断ワイヤ部320のワイヤRがインゴットIに近接して放電する放電領域Eを通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hに対向して配設されている。放電領域Eを通過して最初にワイヤRを案内するガイドローラ30hに対してブラシ80を配設することで、加工屑Uが並列ワイヤ部310のガイドローラ30c〜30iに行き渡らないようにしている。ブラシ80は、放電領域Eを通過したワイヤRがガイドローラ30hに到達する付近に配設されている。ブラシ80は、ワイヤRがガイドローラ30hに巻き掛けられる初期の段階で、ワイヤRに付着した加工屑Uを除去する。これにより、ワイヤRがガイドローラ30hに巻き掛けられることにより、ワイヤRの加工屑Uがガイドローラ30hに付着することを抑制できる。
ブラシ80は、複数本の毛81と、毛81を固定する固定台82とを備えている。毛81は、樹脂等から所定の長さに形成され、ガイドローラ30hの軸方向(Y軸方向)における略全長に渡って、ガイドローラ30hの軸方向と垂直な方向(X軸方向)にブラシ80の毛先81aが向くように配設されている。ブラシ80の毛先81aは、図2に示すように、ガイドローラ30hの全ての溝31にワイヤRを介して接触している。例えば、毛先81aは、溝31に案内されたワイヤRと溝31との隙間に接触し、かつ、溝31に案内されたワイヤRの露出部分に接触している。ブラシ80は、ガイドローラ30hの溝31にワイヤRを介して接触した毛先81aが、インゴットIの加工屑UをワイヤR又は溝31の少なくともいずれか一方から除去する。
付勢手段90は、ブラシ80をガイドローラ30hに向けて付勢するものである。付勢手段90は、ブラシ80をスライド自在に支持する2本のスライド棒91と、スライド棒91を支持する支持台92と、スライド棒91に装着され、リング部材93を介してブラシ80を付勢する弾性部材94とを備えている。弾性部材94は、例えばバネである。ブラシ80の毛81を固定する固定台82には、2本のスライド棒91が差し込まれる図示しない穴部が毛81と反対側に2箇所形成されている。付勢部材90の支持台92に支持されたスライド棒91に弾性部材94及びリング部材93が装着された状態で、スライド棒91の先端部がブラシ80の固定台82の穴部に差し込まれ、弾性部材94が縮んでいる。これにより、縮んだ弾性部材94の弾性力によりブラシ80がガイドローラ30hに向けて付勢され、ブラシ80の毛81がガイドローラ30hに接触してブラシ80が位置決めされる。
弾性部材94によりガイドローラ30hに向けて付勢されたブラシ80は、その毛先81aがガイドローラ30hの周面に沿うように溝31に接触する。ガイドローラ30hに接触したブラシ80は、ガイドローラ30hの回転によりブラシ80の毛先81aが摩耗したとしても、ブラシ80は、弾性部材94の弾性力によりガイドローラ30h側に付勢されているので、摩耗した分だけガイドローラ30h側に移動する。これにより、ブラシ80の毛先81aは、ガイドローラ30hの溝31に対して常に接触する。なお、ブラシ80の毛81の摩耗量が一定量に到達し、弾性部材94が伸びてその弾性力が失われた場合、ブラシ80を交換する必要がある。
次に、ブラシの作用について説明する。図3は、実施形態1に係るインゴットの加工例を示す側面図である。図4は、実施形態1に係る加工屑の発生例を示す拡大図であり、図3の円形部分Kを拡大した図である。
インゴットIを放電加工してウェーハを形成する場合、先ず、制御手段70は、高周波パルス電源ユニット61を制御し、インゴットI及びワイヤRに電圧を印加する。次に、制御手段70は、駆動手段43を制御し、切断ワイヤ部320のワイヤRに対してインゴットIを加工送りし、図3に示すように、切断ワイヤ部320のワイヤRにインゴットIを切り込ませる。例えば、図4に示すように、インゴットIとワイヤRとが接近すると放電Jが発生し、インゴットIが溶融されて飛散される処理が断続的に行われ、インゴットIが放電加工される。インゴットIが放電加工されることにより、インゴットIとワイヤRとの間には、加工屑Uが発生する。加工屑Uの一部は、ワイヤRに付着し、ワイヤRに付着した加工屑Uは、放電領域Eを通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hにワイヤRの走行と共に向かう。ガイドローラ30hに対向して配設されたブラシ80は、ワイヤRに付着した加工屑U及び溝31に付着した加工屑Uを除去する。例えば、加工屑Uが付着したワイヤRがガイドローラ30hの溝31に巻き掛けられる初期の段階で、ブラシ80の毛81がワイヤRに接触して加工屑Uを除去するので、ガイドローラ30hに加工屑Uが付着することを抑制できる。加工屑Uの多くがワイヤRから除去された状態で、ワイヤRがガイドローラ30hに1周巻き掛けられる。
加工屑Uが残ったワイヤRがガイドローラ30hに巻き掛けられ、ワイヤRに残存した加工屑Uがガイドローラ30hの溝31に付着した場合、ブラシ80の毛81が溝31にワイヤRを介して接触しているので、ガイドローラ30hの溝31に付着した加工屑Uもブラシ80により除去される。
以上のように、本発明のマルチワイヤ放電加工装置1Aによれば、下流側のガイドローラ30hに対向して配設されたブラシ80は、ワイヤRに付着した加工屑U及びガイドローラ30hの溝31に付着した加工屑Uを除去するので、加工屑UがワイヤRとガイドローラ30hの溝31との間に介在することを抑制できる。これにより、ガイドローラ30hの溝31が削れることを抑制できるので、ガイドローラ30hの溝31が広くならない。従って、ワイヤRの振動を抑制でき、ワイヤRを精度よく案内できる。また、ガイドローラ30hの損傷を抑えることができるので、ガイドローラ30hが溝31に沿って分断するような事態を回避できる。
また、ブラシ80は、ワイヤRがインゴットIに近接して放電する放電領域Eを通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hに対向して配設されているので、ガイドローラ30hよりも下流側に配設された並列ワイヤ部310のガイドローラ30i,30c〜30gに加工屑Uが付着することを抑制できる。
〔変形例〕
次に、実施形態1の変形例について説明する。放電領域Eを通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hにブラシ80を配設することが好適であるが、他のガイドローラ30c〜30g,30iのいずれにブラシ80を配設してもよい。この場合、加工液F中に配設されたガイドローラ30gより加工液F中以外に配設されたガイドローラ30c〜30f,30h,30iの方が加工屑Uが付着しやすいので、ブラシ80は、加工液F中以外に配設されたガイドローラ30c〜30f,30h,30iに対して配設することが好ましい。
次に、実施形態1の変形例について説明する。放電領域Eを通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hにブラシ80を配設することが好適であるが、他のガイドローラ30c〜30g,30iのいずれにブラシ80を配設してもよい。この場合、加工液F中に配設されたガイドローラ30gより加工液F中以外に配設されたガイドローラ30c〜30f,30h,30iの方が加工屑Uが付着しやすいので、ブラシ80は、加工液F中以外に配設されたガイドローラ30c〜30f,30h,30iに対して配設することが好ましい。
また、ブラシ80は、ガイドローラ30hに対して1個配設したが、複数配設してもよい。例えば、ガイドローラ30hの他にガイドローラ30iにブラシ80を配設してもよい。放電領域Eを通過した後にワイヤRが順次到達する下流側のガイドローラ30h,30i,30c〜30fにおいて、放電領域Eから到達する順番が早い順に優先してブラシ80を配設することにより、加工屑Uがガイドローラ30c〜30iに行き渡ることを抑制できる。
また、ワイヤ用電極62は、ワイヤRを案内するガイドローラとして機能させてもよい。この場合、ワイヤRを案内するための溝31をワイヤ用電極62に形成し、ガイドローラ30hから送り出されたワイヤRをワイヤ用電極62に巻き掛け、ワイヤ用電極62に巻き掛けられたワイヤRをガイドローラ30iに送り出す。また、ガイドローラの機能を有したワイヤ用電極62が放電領域Eに最も近い下流側に配設された場合、ワイヤ用電極62にブラシ80を配設する。
また、ブラシ80により除去された加工屑Uを回収する図示しない回収箱を配設してもよい。例えば、ブラシ80により除去された加工屑Uが落下する方向に、落下した加工屑Uを受け取る回収箱を配設する。これにより、ブラシ80により除去された加工屑Uが加工槽50内に入り込むことを抑制できる。
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係るマルチワイヤ放電加工装置の構成例について説明する。図5は、実施形態2に係るマルチワイヤ放電加工装置の構成例を示す概略図である。図6は、実施形態2に係るロールブラシの構成例及び配設例を示す上面図である。
次に、実施形態2に係るマルチワイヤ放電加工装置の構成例について説明する。図5は、実施形態2に係るマルチワイヤ放電加工装置の構成例を示す概略図である。図6は、実施形態2に係るロールブラシの構成例及び配設例を示す上面図である。
実施形態2では、ブラシ80の代わりにロールブラシ100を用いる点で実施形態1とは異なる。マルチワイヤ放電加工装置1Bは、インゴットIの加工屑Uを除去するロールブラシ100と、ロールブラシ100を回転させるモータ105と、ロールブラシ100を付勢する付勢手段90とを備えている。ロールブラシ100は、ワイヤRがインゴットIに近接して放電する放電領域Eを通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hに対向して配設されている。ロールブラシ100は、放電領域Eを通過したワイヤRがガイドローラ30hに到達する付近に配設されている。ロールブラシ100は、ワイヤRがガイドローラ30hに巻き掛けられる初期の段階で、ワイヤRに付着した加工屑Uを除去する。これにより、ワイヤRに付着した加工屑Uがガイドローラ30hに付着することを抑制できる。
ロールブラシ100は、筒形状のロール本体101と、ロール本体101に配列される複数本の毛102と、ロール本体101を回転自在に支持する支持アーム103とを備えている。毛102は、樹脂等から所定の長さに形成されている。毛102は、ロール本体101の周面から、ロール本体101の軸心を中心として放射状に配列されている。ロールブラシ100の毛先102aは、図6に示すように、ガイドローラ30hの全ての溝31にワイヤRを介して接触している。例えば、毛先102aは、溝31に案内されたワイヤRと溝31との隙間に接触し、かつ、溝31に案内されたワイヤRの露出部分に接触している。ロールブラシ100は、インゴットIの加工屑UをワイヤR又は溝31の少なくともいずれか一方から除去する。
支持アーム103は、ロール本体101を図示しない転がり軸受等により回転自在に支持している。ロール本体101の端部には、その軸を中心として回転させるための歯車104が装着されている。この歯車104には、モータ105の回転軸に固定された歯車105aが噛み合わされている。モータ105が回転することで、ロール本体101に配設された毛102がガイドローラ30hの回転方向と同一方向又は反対方向に回転する。
ロールブラシ100の支持アーム103には、付勢手段90の2本のスライド棒91が差し込まれる図示しない穴部が2箇所形成されている。スライド棒91に弾性部材94及びリング部材93が装着された状態で、スライド棒91の先端部が支持アーム103の穴部に差し込まれて弾性部材94が縮んでいる。これにより、縮んだ弾性部材94によりロールブラシ100がガイドローラ30hに向けて付勢され、ロールブラシ100の毛102がガイドローラ30hに接触してロールブラシ100が位置決めされる。
弾性部材94によりガイドローラ30hに向けて付勢されたロールブラシ100は、その毛先102aがガイドローラ30hの溝31にワイヤRを介して接触する。ガイドローラ30h及びロールブラシ100の回転によりロールブラシ100の毛先102aが摩耗したとしても、ロールブラシ100は、弾性部材94の弾性力によりガイドローラ30h側に付勢されているので、摩耗した分だけガイドローラ30h側に移動する。これにより、ロールブラシ100の毛先102aは、ガイドローラ30hの溝31に対して常に接触する。なお、ロールブラシ100の毛102の摩耗量が一定量に到達し、弾性部材94が伸びてその弾性力が失われた場合、ロールブラシ100を交換する必要がある。また、ロールブラシ100を回転させずにガイドローラ30hに押圧し、毛102の摩耗量が一定量に到達した場合にロールブラシ100を所定の角度だけ回転させ、摩耗していない毛102をガイドローラ30hに押圧させても良い。
以上のように、本発明のマルチワイヤ放電加工装置1Bによれば、下流側のガイドローラ30hに対向して配設されたロールブラシ100は、ガイドローラ30hに対して回転し、ワイヤR及びガイドローラ30hの溝31に付着した加工屑Uを除去するので、実施形態1の効果を有すると共に、ブラシ80よりも効果的にワイヤR及びガイドローラ30hの溝31に付着した加工屑Uを除去できる。
〔変形例〕
次に、実施形態2の変形例について説明する。放電領域Eを通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hにロールブラシ100を配設することが好適であるが、他のガイドローラ30c〜30g,30iのいずれにロールブラシ100を配設してもよい。
次に、実施形態2の変形例について説明する。放電領域Eを通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hにロールブラシ100を配設することが好適であるが、他のガイドローラ30c〜30g,30iのいずれにロールブラシ100を配設してもよい。
また、ロールブラシ100は、ガイドローラ30hに対して1個配設したが、複数配設してもよい。例えば、ガイドローラ30hの他にガイドローラ30iにロールブラシ100を配設してもよい。また、ブラシ80とロールブラシ100を混在させて配設してもよい。例えば、放電領域Eを通過した後に到達する下流側のガイドローラ30hにロールブラシ100を配設し、ガイドローラ30hの次に下流側に位置するガイドローラ30iにブラシ80を配設する。
1A,1B マルチワイヤ放電加工装置
30a〜30j ガイドローラ
31 溝
320 切断ワイヤ部
41 基台部
50 加工槽
61 高周波パルス電源ユニット
62 ワイヤ用電極
80 ブラシ
81 毛
90 付勢手段
94 弾性部材
100 ロールブラシ
101 ロール本体
102 毛
E 放電領域
F 加工液
I インゴット
U 加工屑
30a〜30j ガイドローラ
31 溝
320 切断ワイヤ部
41 基台部
50 加工槽
61 高周波パルス電源ユニット
62 ワイヤ用電極
80 ブラシ
81 毛
90 付勢手段
94 弾性部材
100 ロールブラシ
101 ロール本体
102 毛
E 放電領域
F 加工液
I インゴット
U 加工屑
Claims (2)
- 間隔を置いて隣接するガイドローラと、該ガイドローラに軸方向に間隔をあけて複数回巻きかけられたワイヤと、インゴットが並列する該ワイヤに切り込むように該インゴットと該ワイヤとを相対移動させる駆動手段と、該ワイヤとインゴットに高周波パルス電力を供給する高周波パルス電源ユニットと、各構成要素を制御する制御手段と、を備えるマルチワイヤ放電加工装置であって、
該ガイドローラ間を走行する該ワイヤが、インゴットに近接して放電する放電領域を通過した後に到達する下流側ガイドローラにはブラシが配設され、
該ブラシは、該ワイヤが案内される該下流側ガイドローラの溝に、該ワイヤを介して接触し、放電加工で発生するインゴットの加工屑を該ワイヤ又は該溝の少なくともいずれか一方から除去することを特徴とするマルチワイヤ放電加工装置。 - 該ブラシは、該下流側ガイドローラに向かって付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のマルチワイヤ放電加工装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015052038A JP2016172288A (ja) | 2015-03-16 | 2015-03-16 | マルチワイヤ放電加工装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015052038A JP2016172288A (ja) | 2015-03-16 | 2015-03-16 | マルチワイヤ放電加工装置 |
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JP2016172288A true JP2016172288A (ja) | 2016-09-29 |
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ID=57007873
Family Applications (1)
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JP2015052038A Pending JP2016172288A (ja) | 2015-03-16 | 2015-03-16 | マルチワイヤ放電加工装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2016172288A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110899578A (zh) * | 2019-12-24 | 2020-03-24 | 贵州银花妆开发有限公司 | 一种多股银丝成型装置 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002113650A (ja) * | 2000-10-05 | 2002-04-16 | Ricoh Co Ltd | 固定砥粒ワイヤ工具のクリーニング方法および装置 |
JP2014168832A (ja) * | 2013-03-05 | 2014-09-18 | Canon Marketing Japan Inc | 加工装置、加工方法 |
-
2015
- 2015-03-16 JP JP2015052038A patent/JP2016172288A/ja active Pending
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