JP2016170250A - 液体現像剤 - Google Patents

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浩信 徳永
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Abstract

【課題】定着強度に優れ、低温オフセットの発生を防止でき、さらには、耐熱保管安定性に優れた液体現像剤を提供すること。【解決手段】液体現像剤は、絶縁性液体と、絶縁性液体に分散されたトナー粒子とを備える。トナー粒子は、コア/シェル構造を有する。コア/シェル構造は、コア樹脂を含むコア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部に設けられ且つコア樹脂とは異なる樹脂であるシェル樹脂とを有する。50℃におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率は5×107Pa以上であり、90℃におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率は5×106Pa以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、液体現像剤に関する。
液体現像剤は、絶縁性液体と、絶縁性液体に分散されたトナー粒子とを備える。このような液体現像剤には、様々な性能が要求されている。その中でも、特に、低温での定着(低温定着性)、トナー粒子の小粒径化、および、トナー粒子の粒径の均一化が、液体現像剤に要求されている。
低温定着性については次に示すことが考えられている。液体現像剤では、乾式現像剤とは異なり、トナー粒子の粒径を2μm以下に制御できる。そのため、記録媒体への液体現像剤の付着量を記録媒体への乾式現像剤の付着量よりも大幅に低減させることができる。このことは、低温定着性に対して優位に働く。また、低温での定着を実現させる方法として、例えば、シャープメルト性の高い樹脂(例えばポリエステル樹脂)を用いることが提案されている。
トナー粒子の小粒径化およびトナー粒子の粒径の均一化に対しては、コア/シェル構造を有するトナー粒子を用いることが提案されている(例えば、特開2009−96994号公報(特許文献1)、および、特開2014−66887号公報(特許文献2))。コア/シェル構造とは、コア樹脂を含むコア粒子とシェル樹脂とを有する構造を意味し、コア/シェル構造では、シェル樹脂は、コア粒子の表面の少なくとも一部に設けられ、コア樹脂とは異なる樹脂である。このようなシェル樹脂は、コア粒子の分散性を高める作用を有する。
特開2009−96994号公報 特開2014−66887号公報
ところで、樹脂などの高分子は粘弾性を有することが知られており、その粘弾性は温度依存性を示すことが知られている。例えば、定着温度(記録媒体の温度で80〜100℃程度)におけるシェル樹脂の粘弾性が高い場合、定着時には、シェル樹脂の方がコア樹脂よりも溶融または軟化し難いおそれがあるので、コア樹脂は溶融または軟化しているがシェル樹脂は溶融または軟化していないという状態が発生することがある。
上記状態が発生すると、記録媒体に対するトナー粒子の接着強度が低下するので、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度の低下を引き起こす。それだけでなく、上記状態が発生すると、定着時にはトナー粒子と記録媒体との界面付近に存在する当該トナー粒子の部分(つまりシェル樹脂)が十分に溶融または軟化されないこととなるので、低温オフセットの発生を引き起こす。
一方、液体現像剤の保管温度(50〜60℃程度)におけるシェル樹脂の粘弾性が低い場合、液体現像剤の保管時には、シェル樹脂の一部が絶縁性液体に溶解するおそれがあるので、コア粒子の表面に存在するシェル樹脂の量が低下するおそれがある。ここで、シェル樹脂はコア粒子を分散させるという作用を有する。そのため、コア粒子の表面に存在するシェル樹脂の量が低下すれば、トナー粒子同士の合一化を招き、その結果、液体現像剤の耐熱保管安定性の低下を引き起こす。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、定着強度に優れ、低温オフセットの発生を防止でき、さらには、耐熱保管安定性に優れた液体現像剤を提供することである。
定着強度に優れ、低温オフセットの発生を防止でき、さらには、耐熱保管安定性に優れた液体現像剤を提供するためには、定着温度におけるシェル樹脂の粘弾性と液体現像剤の保管温度におけるシェル樹脂の粘弾性とを最適化することが好ましい、と考えられる。ここで、定着温度と液体現像剤の保管温度とは互いに異なる。また、樹脂の粘弾性は温度依存性を示す。さらに、樹脂の粘弾性を示す物理量としては、一般的には、貯蔵弾性率G’が用いられている。これらのことから、シェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を最適化すれば所望の特性を有する液体現像剤(定着強度に優れ、低温オフセットの発生を防止でき、さらには、耐熱保管安定性に優れた液体現像剤)を提供できる、と考えられる。
また、本発明者らによる鋭意検討により、特定の樹脂をシェル樹脂として用いれば、シェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性が最適化され、よって、所望の特性を有する液体現像剤を提供できることが分かった。以上をふまえ、本発明が完成した。
つまり、本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、絶縁性液体に分散されたトナー粒子とを備える。トナー粒子は、コア/シェル構造を有する。コア/シェル構造は、コア樹脂を含むコア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部に設けられ且つコア樹脂とは異なる樹脂であるシェル樹脂とを有する。50℃におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率は5×107Pa以上であり、90℃におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率は5×106Pa以下である。ここで、「コア樹脂とは異なる樹脂であるシェル樹脂」とは、コア樹脂とシェル樹脂とで化学構造および分子量のうちの少なくとも1つが異なることを意味する。
シェル樹脂は、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
ここで、「低温オフセット」とは、トナー粒子を熱ローラで定着させる場合に、記録媒体に形成されたトナー画像の少なくとも一部が、定着ローラとトナー粒子との間にはたらく接着力または定着ローラとトナー粒子との間にはたらく静電吸着力などによって、当該記録媒体から取り去られることを意味する。
また、本明細書では、「耐熱保管安定性に優れる」、「耐熱保管安定性を高く維持できる」または「耐熱保管安定性を高めることができる」とは、液体現像剤を50〜60℃で1週間、保管した場合であっても当該液体現像剤の性能が維持されていることを意味する。一方、「耐熱保管安定性の低下」とは、液体現像剤を50〜60℃で1週間、保管したことに起因して当該液体現像剤の性能が低下することを意味する。液体現像剤は耐熱保管安定性に優れることが好ましい。なぜなら、液体現像剤は、通常、50〜60℃で保管されるからである。
本発明では、定着強度に優れ、低温オフセットの発生を防止でき、さらには、耐熱保管安定性に優れた液体現像剤を提供することができる。
シェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を示すグラフである。 電子写真方式の画像形成装置の一部の概略概念図である。
以下、本発明の実施の形態(以下では「本実施形態」と記す)について図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さ等の寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
[液体現像剤の構成]
本実施形態の液体現像剤は、複写機、プリンタ、デジタル印刷機若しくは簡易印刷機等の電子写真方式の画像形成装置(後述)において用いられる電子写真用液体現像剤、塗料、静電記録用液体現像剤、インクジェットプリンタ用油性インク、又は、電子ペーパー用インクとして有用である。本実施形態の液体現像剤は、絶縁性液体と絶縁性液体に分散されたトナー粒子とを備え、好ましくは10〜50質量%のトナー粒子と50〜90質量%の絶縁性液体とを備える。本実施形態の液体現像剤は、絶縁性液体及びトナー粒子とは異なる任意の成分を含んでいても良い。かかる任意の成分としては、例えば、トナー分散剤、荷電制御剤又は増粘剤等が挙げられる。
<トナー粒子>
本実施形態のトナー粒子は、コア/シェル構造を有する。コア/シェル構造は、コア樹脂を含むコア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部に設けられ且つコア樹脂とは異なる樹脂であるシェル樹脂とを有する。トナー粒子がコア/シェル構造を有するので、トナー粒子の小粒径化とトナー粒子の粒径の均一化とを実現できる。
本実施形態のトナー粒子では、着色剤は、コア樹脂およびシェル樹脂のうちの少なくとも一方に分散していることが好ましく、より好ましくは50〜90質量%の樹脂(コア樹脂およびシェル樹脂)と10〜50質量%の着色剤とを有する。本実施形態のトナー粒子は、樹脂および着色剤とは異なる任意の成分を含んでいても良い。かかる任意の成分としては、例えば、顔料分散剤、ワックスまたは荷電制御剤などが挙げられる。
好ましくは、トナー粒子の粒度分布を体積基準で測定したときのメジアン径D50(以下では「トナー粒子のメジアン径D50」と記す)は0.5μm以上5.0μm以下である。このメジアン径D50は、従来の乾式現像剤に含まれるトナー粒子の粒径よりも小さく、本実施形態の特徴の一つである。トナー粒子のメジアン径D50が0.5μm以上であれば、トナー粒子の粒径を確保できるので、電界でのトナー粒子の移動性が改善され、よって、現像性を高めることができる。トナー粒子のメジアン径D50が5.0μm以下であれば、トナー粒子の分散性を確保できるので、画質を高めることができる。より好ましくは、トナー粒子のメジアン径D50は1.0μm以上2.0μm以下である。
好ましくは、トナー粒子の平均円形度は0.85以上0.95以下であり、トナー粒子の円形度の標準偏差は0.01以上0.1以下である。これにより、転写性とクリーニング性とが向上する。なお、「円形度」とは、2次元に投影した粒子面積と等しい面積の円の周囲長を粒子周囲長で除した数値を意味する。「平均円形度」とは、算出された円形度の相加平均値を意味する。
例えばフロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製の品番「FPIA−3000S」)等を用いて、トナー粒子のメジアン径D50を計測可能である。この分析装置では、溶剤をそのまま分散媒体として使用することが可能である。よって、この分析装置を用いれば、水系で測定するよりも実際の分散状態に近い状態におけるトナー粒子の状態を計測できる。
好ましくは、コア樹脂とシェル樹脂との質量比[(コア樹脂の質量):(シェル樹脂の質量)]は99:1〜30:70である。トナー粒子の粒径の均一性および液体現像剤の耐熱安定性などの観点では、シェル樹脂とコア樹脂との上記質量比は、より好ましくは98:2〜50:50であり、さらに好ましくは97:3〜65:35である。シェル樹脂の質量がコア樹脂の質量とシェル樹脂の質量との合計の1質量%以上であれば、トナー粒子の耐ブロッキング性を高く維持できる。シェル樹脂の質量がコア樹脂の質量とシェル樹脂の質量との合計の70質量%以下であれば、トナー粒子の粒径均一性を高く維持できる。以下では、シェル樹脂を説明した後にコア樹脂を説明する。
<シェル樹脂>
(シェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性)
50℃におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率(以下では「G’(50℃)」と記す)は5×107Pa以上であり、90℃におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率(以下では「G’(90℃)」と記す)は5×106Pa以下である。
G’(50℃)が5×107Pa以上であれば、50℃におけるシェル樹脂の粘弾性は十分高い。これにより、液体現像剤の保管時には、シェル樹脂が絶縁性液体に溶解することを防止できるので、コア粒子の表面に存在するシェル樹脂の量を確保できる。よって、液体現像剤の保管時であっても、コア粒子を分散させるというシェル樹脂の作用が十分に発揮されるので、トナー粒子同士の合一化を防止できる。したがって、液体現像剤の耐熱保管安定性を高く維持できる。
G’(50℃)は、好ましくは1×108Pa以上であり、より好ましくは2×108Pa以上である。なお、一般に、50℃における貯蔵弾性率G’が1×1012Paよりも大きな樹脂の合成は困難である。そのため、G’(50℃)は1×1011Pa以下であることが好ましい。
G’(90℃)が5×106Pa以下であれば、90℃におけるシェル樹脂の粘弾性は十分低い。これにより、定着時には、コア樹脂は溶融または軟化しているがシェル樹脂は溶融または軟化していないという状態の発生を防止できる。
定着時において上記状態の発生を防止できれば、記録媒体に対するトナー粒子の接着強度を高く維持できるので、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度を高く維持できる。また、定着時において上記状態の発生を防止できれば、定着時にはトナー粒子と記録媒体との界面付近に存在する当該トナー粒子の部分(つまりシェル樹脂)が十分に溶融または軟化されることとなる。これにより、低温オフセットの発生を防止できる。
さらに、G’(90℃)が5×106Pa以下であれば、90℃におけるシェル樹脂の粘弾性は十分低いので、90℃よりも低い温度での定着が可能となる。これにより、低温での定着を実現させることができる。
G’(90℃)は、好ましくは1×106Pa以下であり、より好ましくは1×105Pa以下である。なお、一般に、90℃における貯蔵弾性率G’が1×100Paよりも小さな樹脂の合成は困難である。そのため、G’(90℃)は1×101Pa以上であることが好ましい。
本明細書では、シェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製の粘弾性測定装置(商品名「ARES」)を用いて以下に示す条件で測定されたものである。かかる測定によって、シェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を示すグラフ(横軸:温度、縦軸:シェル樹脂の貯蔵弾性率G’、図1参照)が得られ、得られたグラフから、G’(50℃)およびG’(90℃)を読み取る。このようにしてG’(50℃)およびG’(90℃)を求めることができる。
測定に用いる治具:8mmパラレルプレート
周波数:1Hz
歪み率:5%
測定開始温度:40℃
昇温速度:5℃/分。
以下では、従来のトナー粒子に含まれるシェル樹脂(以下では「従来のシェル樹脂」と記す)の貯蔵弾性率G’の温度依存性を説明した後に、G’(50℃)が5×107Pa以上であり且つG’(90℃)が5×106Pa以下であること(以下では「本実施形態におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性」と記す)を実現可能な具体的な方法を示す。図1は、シェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を示すグラフである。図1において、L11及びL12は、従来のシェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を示し、L21は、本実施形態におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を示す。
トナー粒子の形状の制御容易性という観点から、従来、トナー粒子のシェル樹脂としてビニル樹脂が用いられている。ビニル樹脂を構成するビニルモノマーの材料を変更すれば、当該ビニル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を変更することができる。例えば、ビニルモノマーの材料を変更することによって、貯蔵弾性率G’の温度依存性が図1に示すL11で表されるビニル樹脂、または、貯蔵弾性率G’の温度依存性が図1に示すL12で表されるビニル樹脂などを設計することができる。
しかし、貯蔵弾性率G’の温度依存性が図1に示すL11で表されるビニル樹脂では、G’(50℃)を5×107Pa以上とすることが難しい。そのため、液体現像剤の耐熱保管安定性の低下を招くことがある。
また、貯蔵弾性率G’の温度依存性が図1に示すL12で表されるビニル樹脂では、G’(90℃)を5×106Pa以下とすることが難しい。そのため、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度の低下を招くことがあり、低温オフセットの発生を招くことがあり、また、低温での定着の実現が困難となることがある。
さらに、今般、ビニル樹脂を構成するビニルモノマーの材料を変更しても、本実施形態におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を実現できないことが分かった。そこで、本発明者らは、種々の樹脂を合成して当該樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を調べたところ、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂が本実施形態におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性(図1に示すL21)を実現できることが分かった。その理由として、断定できないが、次に示すことが考えられる。
ビニル樹脂はシャープメルト性に優れないと言われている。そのため、G’(50℃)とG’(90℃)との差を大きくすることは難しい。しかし、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂にはポリエステル樹脂に由来する構成単位が含まれており(後述)、ポリエステル樹脂はシャープメルト性に優れると言われている。これにより、G’(50℃)とG’(90℃)との差を大きくすることができる。さらに、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂では、ウレタン変性ポリエステル樹脂に含まれるウレタン結合同士の凝集力が強いので、G’(50℃)が大きくなる。これにより、G’(50℃)が5×107Pa以上となる。以上のことから、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂は本実施形態におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を実現できると考えられる。
なお、シェル樹脂は、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂からなることが好ましいが、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂とは異なる樹脂(例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、または、ケイ素樹脂など)を10質量%以下さらに含んでいても良い。このような場合であっても、本実施形態におけるシェル樹脂の貯蔵弾性率G’の温度依存性を実現できる。以下では、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂について説明する。
(結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂)
「ウレタン変性ポリエステル樹脂」とは、ポリエステル樹脂に含まれるヒドロキシル基(例えば、ポリエステル樹脂に残渣として含まれるヒドロキシル基)とイソシアネート化合物(イソシアネート基を含む化合物)のイソシアネート基との反応によって合成されるものを意味し、ポリエステル樹脂に由来する構成単位とイソシアネート化合物に由来する構成単位とを含む。
ポリエステル樹脂は、カルボン酸(酸成分に由来する構成単位)とアルコール(アルコール成分に由来する構成単位)との重縮合反応により合成されるものである。そのため、カルボン酸に由来する部分が酸成分に由来する構成単位となり、アルコールに由来する部分がアルコール成分に由来する構成単位となり、これらの構成単位が繰り返されることによってポリエステル樹脂が構成される。
「ポリエステル樹脂に由来する構成単位」とは、ポリエステル樹脂に含まれるヒドロキシル基(例えば、ポリエステル樹脂に残渣として含まれるヒドロキシル基)から水素原子が外れたものを意味する。「ポリエステル樹脂に由来する構成単位」には、ポリエステル樹脂に含まれる少なくとも1つのヒドロキシル基から水素原子が外れたものが含まれる。
また、「イソシアネート化合物に由来する構成単位」とは、イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基における窒素原子に水素原子が結合されたものを意味する。「イソシアネート化合物に由来する構成単位」には、イソシアネート化合物に含まれる少なくとも1つのイソシアネート基における窒素原子に水素原子が結合されたものが含まれる。
ポリエステル樹脂に由来する構成単位とイソシアネート化合物に由来する構成単位との両構成単位におけるポリエステル樹脂に由来する構成単位の含有割合は、1質量%以上7質量%以下であることが好ましい。この含有割合が1質量%以上であれば、液体現像剤の耐熱保管安定性を高めることができる。この含有割合が7質量%以下であれば、シェル樹脂を安定に製造できる。より好ましくは、上記含有割合が1質量%以上6質量%以下である。
ポリエステル樹脂に由来する構成単位とイソシアネート化合物に由来する構成単位との両構成単位におけるポリエステル樹脂に由来する構成単位の含有割合は、核磁気共鳴により得られたスペクトルを用いて求められても良いし、GCMS(Gas chromatography mass spectrometry)によって求められても良い。核磁気共鳴により得られたスペクトルを用いて上記含有割合を求める場合には、フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)(商品名:「Lambda400」、日本電子株式会社製)を用いて1H−NMR分析を行い、その積分比より上記含有割合を決定できる。測定溶媒はクロロホルム−d(重クロロホルム)溶剤を用いることができる。
「結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂」を化学構造面から定義すると、ポリエステル樹脂に由来する構成単位がイソシアネート化合物に由来する構成単位によって鎖長されたものと定義される。「鎖長」とは、ポリエステル樹脂に由来する構成単位とイソシアネート化合物に由来する構成単位とが結合されることを意味する。
別の言い方をすると、「結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂」とは、アルコール成分に由来する構成単位と酸成分に由来する構成単位との両構成単位における脂肪族系モノマーに由来する構成単位の含有割合が90質量%以上であることを意味する。この含有割合が90質量%以上であれば、ポリエステル樹脂に由来する構成単位が線形となるので、ウレタン変性ポリエステル樹脂は結晶性を有することとなる。上記含有割合は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは100質量%以上である。
アルコール成分に由来する構成単位と酸成分に由来する構成単位との両構成単位における脂肪族系モノマーに由来する構成単位の含有割合は、核磁気共鳴により得られたスペクトルを用いて求められても良いし、GCMS(Gas chromatography mass spectrometry)によって求められても良い。核磁気共鳴により得られたスペクトルを用いて上記含有割合を求める場合には、フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)(商品名:「Lambda400」、日本電子株式会社製)を用いて1H−NMR分析を行い、その積分比より上記含有割合を決定できる。測定溶媒はクロロホルム−d(重クロロホルム)溶剤を用いることができる。アルコール成分に由来する構成単位と酸成分に由来する構成単位との両構成単位における芳香族系モノマーに由来する構成単位の含有割合(後述)、コア樹脂における非晶性ポリエステル樹脂の含有割合(後述)、および、コア樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合(後述)についても、同様の方法で測定できる。
例えば次に示す方法にしたがって、ウレタン変性ポリエステル樹脂を合成することができる。まず、ポリオール(アルコール成分)と、ポリカルボン酸(酸成分)、ポリカルボン酸の酸無水物(酸成分)またはポリカルボン酸の低級アルキルエステル(酸成分)などとを重合する。このようにして合成されたポリエステル樹脂をジ(トリ)イソシアネート化合物によって鎖長させる。具体的には、合成されたポリエステル樹脂に含まれるヒドロキシル基とジ(トリ)イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基とを反応させる。このようにしてウレタン変性ポリエステル樹脂を合成することができる。本明細書では、「ポリオール」とは、分子内に2個以上のヒドロキシル基を有するアルコールを意味する。「ポリカルボン酸」とは、分子内に2個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸を意味する。また、「ジ(トリ)イソシアネート」とは、ジイソシアネートおよびトリイソシアネートのうちの少なくとも1つを意味する。
上記重合では、公知の重縮合触媒などを使用しても良い。また、ポリオールとポリカルボン酸類(「ポリカルボン酸類」には、ポリカルボン酸とポリカルボン酸の酸無水物とポリカルボン酸の低級アルキルエステルとが含まれる)との比率は、特に限定されない。水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、好ましくは2/1〜1/5となるように、より好ましくは1.5/1〜1/4となるように、さらに好ましくは1.3/1〜1/3となるように、ポリオールとポリカルボン酸類との比率を設定することが好ましい。
(結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂の構成単位)
アルコール成分に由来する構成単位となるポリオールは、炭素数が4以上の直鎖状のアルキル骨格を有することが好ましい。また、酸成分に由来する構成単位となるポリカルボン酸は、炭素数が4以上の直鎖状のアルキル骨格を有することが好ましい(ポリカルボン酸の酸無水物およびポリカルボン酸の低級アルキルのそれぞれにおける「ポリカルボン酸」についても同様のことが言える)。このようなポリオールとポリカルボン酸、ポリカルボン酸の酸無水物またはポリカルボン酸の低級アルキルとを用いれば、アルコール成分に由来する構成単位と酸成分に由来する構成単位との両構成単位における脂肪族系モノマーに由来する構成単位の含有割合を90質量%以上とすることができる。これにより、ウレタン変性ポリエステル樹脂が結晶性を有することとなるので、シェル樹脂が結晶性を発現することとなる。
アルコール成分に由来する構成単位となるポリオールは、脂肪族ジオール(脂肪族系モノマーの一種)であることが好ましい。脂肪族ジオールは、炭素数が4以上10以下のアルカンジオールであることが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、または、1,10−デカンジオールなどであることが好ましい。
酸成分に由来する構成単位となるポリカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸(脂肪族系モノマーの一種)であることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸は、例えば、炭素数が4以上20以下のアルカンジカルボン酸、炭素数が4以上36以下のアルケンジカルボン酸、または、これらのエステル形成性誘導体であることが好ましい。より具体的には、脂肪族ジカルボン酸は、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、または、これらのエステル形成性誘導体などであることが好ましい。
ジ(トリ)イソシアネート化合物によって鎖長されるポリオール(このポリオールもまたアルコール成分に由来する構成単位となる)は、例えば、ポリアルキレンジオールであることが好ましい。ポリアルキレンジオールは、例えば、直鎖状の炭化水素基[炭素数が12以上27以下である(好ましくは炭素数が12以上20以下である)]を有するポリアルキレンジオール、または、分岐状の炭化水素基[炭素数が12以上27以下である(好ましくは炭素数が12以上20以下である)]を有するポリアルキレンジオールなどであることが好ましい。直鎖状の炭化水素基を有するポリアルキレンジオールは、例えば、ドデカン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、ヘキサデカン酸グリセリル、または、アクリル酸エイコシルなどであることが好ましい。分岐状の炭化水素基を有するポリアルキレンジオールは、例えば、2−デシルテトラデカン酸グリセリル、または、イソステアリン酸グリセリルなどであることが好ましい。
ジ(トリ)イソシアネート化合物は、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート化合物、または、環状脂肪族ポリイソシアネート化合物などであることが好ましい。
鎖状脂肪族ポリイソシアネート化合物は、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、または、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどであることが好ましい。これら2種以上を併用しても良い。
環状脂肪族ポリイソシアネート化合物は、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下では「IPDI」と記す)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下では「水添MDI」と記す)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(以下では「水添TDI」と記す)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、または、2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどであることが好ましい。これら2種以上を併用しても良い。
脂肪族ジオールの具体例として上記で列挙した材料のうちの少なくとも1つと、脂肪族ジカルボン酸の具体例として上記で列挙した材料のうちの少なくとも1つと、ジ(トリ)イソシアネート化合物の具体例として上記で列挙した材料のうちの少なくとも1つとを用いてウレタン変性ポリエステル樹脂を合成すれば、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂が得られる。よって、G’(50℃)は5×107Pa以上となり、G’(90℃)は5×106Pa以下となる。したがって、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度を高く維持でき、低温オフセットの発生を防止でき、低温での定着を実現でき、さらには、液体現像剤の耐熱保管安定性を高く維持できる。
より好ましくは、脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールのうちの少なくとも1つを用い、脂肪族ジカルボン酸として、コハク酸、アジピン酸およびセバシン酸のうちの少なくとも1つを用い、ジ(トリ)イソシアネートとして、HDI、IPDI、水添MDIおよび水添TDIのうちの少なくとも1つを用いる。これにより、G’(50℃)は2×108Pa以上となり、G’(90℃)は1×105Pa以下となる。したがって、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度を高めることができ、低温オフセットの発生をさらに防止でき、低温での定着を容易に実現でき、さらには、液体現像剤の耐熱保管安定性を高めることができる。
また、より好ましくは、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂の数平均分子量(以下では「Mn」と記す)が50000以下である。これにより、G’(90℃)が1×106以下となる。よって、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度を高めることができ、低温オフセットの発生をさらに防止でき、また、低温での定着を容易に実現できる。なお、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂(Mnが1000未満である)の合成は困難である。そのため、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂のMnは1000以上であることが好ましい。
また、より好ましくは、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂のウレタン基濃度が1質量%以上である。これにより、G’(50℃)が2×108以上となる。よって、液体現像剤の耐熱保管安定性を高めることができる。なお、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂(ウレタン基濃度が11質量%よりも大きい)の合成は困難である。そのため、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂のウレタン基濃度は11質量%以下であることが好ましい。
「ウレタン基濃度」とは、(ウレタン変性ポリエステル樹脂におけるウレタン基の質量)÷(当該ウレタン変性ポリエステル樹脂の質量)×100により求められた値である。ポリエステル樹脂の原料である酸基量と水酸基量との当量比([酸基]/[水酸基])、又は、イソシアネート基量と水酸基量との当量比([イソシアネート基]/[水酸基量])を調整することにより、ウレタン変性ポリエステル樹脂のウレタン基濃度を所定の範囲内(例えば1質量%以上11質量%以下)に制御できる。
ウレタン基濃度は、次に示す方法で測定される。まず、下記(熱分解の条件)に示す条件で、ウレタン変性ポリエステル樹脂を熱分解させる。次に、下記に示す条件(ウレタン基濃度の測定条件)で、GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析計)を用いて、熱分解されたウレタン変性ポリエステル樹脂のウレタン基濃度を測定する。
(熱分解の条件)
装置:フロンティア・ラボ株式会社製の品番「PY−2020iD」
試料の質量:0.1mg
加熱温度:550℃
加熱時間:0.5分
(ウレタン基濃度の測定条件)
装置:株式会社島津製作所製の品番「QP2010」
カラム:フロンティア・ラボ株式会社製の品番「UltraALLOY−5」(内径:0.25mm,長さ:30m,厚さ:0.25μm)
昇温条件:昇温範囲:100℃〜320℃(320℃で保持)、昇温速度:20℃/分。
なお、シェル樹脂が結晶性を発現する限り、シェル樹脂は、芳香族ポリオールに由来する構成単位または芳香族カルボン酸類に由来する構成単位を含んでいても良い。例えば、アルコール成分に由来する構成単位と酸成分に由来する構成単位との両構成単位における芳香族系モノマーに由来する構成単位の含有割合が10質量%以下であっても良い。
(ウレタン変性ポリエステル樹脂の結晶性)
「結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂」を物性面から定義すると、DSC(Differential Scanning Calorimetry)法により測定されたウレタン変性ポリエステル樹脂の溶融熱が下記数式(1)及び(2)を満たすものと定義される。一方、下記数式(1)及び(2)のうちの少なくとも1つを満たさない場合、ウレタン変性ポリエステル樹脂は結晶性を有さないと定義される。同様の方法にしたがって、コア樹脂に含まれる結晶性ポリエステル樹脂および非晶性ポリエステル樹脂(後述)を定義できる。
5≦H1≦100 ・・・数式(1)
0.2≦H2/H1≦1.0・・・数式(2)
上記数式(1)及び(2)において、H1は、DSC法による初回昇温時の融解熱(J/g)を表し、H2は、DSC法による2回目昇温時の融解熱(J/g)を表す。
H1は、ウレタン変性ポリエステル樹脂の溶融速度の指標である。一般に、融解熱を有する樹脂は、シャープメルト性を有するため、少ないエネルギーで溶融する。ウレタン変性ポリエステル樹脂のH1が100を超えると、定着エネルギーの低減を図ることが難しい。そのため、トナー粒子の定着性の低下を招く。一方、ウレタン変性ポリエステル樹脂のH1が5未満であれば、定着エネルギーが少なくなり過ぎるため、ドキュメントオフセットが発生し易くなる。しかし、ウレタン変性ポリエステル樹脂のH1が上記数式(1)を満たせば、ドキュメントオフセットの発生を防止でき、また、トナー粒子の定着性の低下を防止できる。好ましくは15≦H1≦80であり、より好ましくは35≦H1≦70である。
上記数式(2)におけるH2/H1は、ウレタン変性ポリエステル樹脂の結晶化速度の指標である。一般に、樹脂からなる粒子(樹脂粒子)を溶融させた後に冷却して使用する場合、当該樹脂粒子中の結晶成分に結晶化されていない部分が存在していれば、当該樹脂粒子の抵抗値が下がる、又は、当該樹脂粒子が可塑化されるなどという不具合が生じる。このような不具合が発生すると、冷却により得られた樹脂粒子の性能が当初設計した性能と異なることがある。以上のことから、樹脂粒子中の結晶成分を速やかに結晶化させ、樹脂粒子の性能に影響を与えないようにする必要がある。H2/H1は、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.4以上である。また、ウレタン変性ポリエステル樹脂の結晶化速度が速ければ、H2/H1は1.0に近づくため、H2/H1は、1.0に近い値を取ることが好ましい。
なお、上記数式(2)におけるH2/H1は、理論的には1.0を超えないが、DSC法による実測値では1.0を超えることがある。DSC法による実測値(H2/H1)が1.0を超えた場合も、上記数式(2)を満たすものとする。
H1及びH2は、JIS−K7122(1987)「プラスチックの転移熱測定方法」に準拠して測定することができる。具体的には、まず、ウレタン変性ポリエステル樹脂を5mg採取して、アルミパンに入れる。示差走査熱量測定装置(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の品番「RDC220」又はセイコーインスツル株式会社製の品番「DSC20」等)を用いて、昇温速度を毎分10℃として、溶融によるウレタン変性ポリエステル樹脂の吸熱ピークにおける温度(融点)を測定し、吸熱ピークの面積S1を求める。そして、求められた吸熱ピークの面積S1から、H1を算出することができる。H1を算出してから、冷却速度を90℃/分として0℃まで冷却した後、昇温速度を毎分10℃として、溶融によるウレタン変性ポリエステル樹脂の吸熱ピークにおける温度(融点)を測定し、吸熱ピークの面積S2を求める。そして、求められた吸熱ピークの面積S2から、H2を算出することができる。
H1及びH2は、示差走査熱量計(例えばセイコーインスツル株式会社製の品番「DSC210」)を用いて、以下に示す方法にしたがって測定することもできる。まず、0℃から180℃まで10℃/分の速度で標準試料とウレタン変性ポリエステル樹脂とを加熱し、標準試料の熱量とウレタン変性ポリエステル樹脂の熱量との差を測定する。測定された熱量の差がウレタン変性ポリエステル樹脂のDSC法による溶融熱H1である。その後、冷却速度を90℃/分として0℃まで冷却した後、0℃から180℃まで10℃/分の速度で標準試料とウレタン変性ポリエステル樹脂とを加熱し、標準試料の熱量とウレタン変性ポリエステル樹脂の熱量との差を測定する。測定された熱量の差がウレタン変性ポリエステル樹脂のDSC法による溶融熱H2である。
(シェル樹脂のその他の物性)
結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂を含むシェル樹脂の融点が液体現像剤の製造時の温度以上であれば、液体現像剤の製造時におけるシェル樹脂の溶融を防止できる。よって、コア粒子を分散させるというシェル樹脂の作用を高く維持できるので、液体現像剤におけるトナー粒子同士の合一を防止でき、液体現像剤におけるトナー粒子の分裂を防止でき、また、トナー粒子の粒径のバラツキを小さく抑えることができる。したがって、トナー粒子の粒度分布、トナー粒子の形状、液体現像剤の粉体流動性、液体現像剤の耐熱保管安定性および液体現像剤の耐ストレス性などの観点では、シェル樹脂の融点は液体現像剤の製造時の温度以上であることが好ましい。例えば、シェル樹脂の融点は50℃以上90℃以下であることが好ましい。なお、シェル樹脂の融点は、示差走査熱量測定装置(例えばセイコーインスツル株式会社製の商品名「DSC20」または商品名「SSC/580」など)を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法に準拠して、測定可能である。
シェル樹脂のSP値は、7〜18(cal/cm31/2であることが好ましく、8〜14(cal/cm31/2であることがさらに好ましい。本明細書では、SP値は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算された値である。
シェル樹脂のMnは、100以上500000以下であることが好ましく、1000以上50000以下であることがより好ましい。
本明細書では、ウレタン変性ポリエステル樹脂のMnは、GPC(Gel Permeation Chromatography、ゲル浸透クロマトグラフィー)を用い、テトラヒドロフラン(THF)への可溶分に対して、以下の条件で測定されたものである。
測定装置:東ソー(株)製の商品名「HLC−8220GPC」
カラム:商品名「Guardcоlumn α」(1本)と商品名「TSKgel α―M」(1本)
試料溶液:0.125質量%のジメチルホルムアミド溶液
カラムへのジメチルホルムアミド溶液の注入量:100μl
流速:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー(株)製の標準ポリスチレン(TSK standard PОLYSTYRENE)12点(分子量:500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000、2890000)。
本明細書では、ウレタン変性ポリエステル樹脂以外の樹脂のMnは、GPCを用い、テトラヒドロフラン(THF)への可溶分に対して、以下の条件で測定されたものである。
測定装置:東ソー株式会社製の商品名「HLC−8120」
カラム:東ソー株式会社製の商品名「TSKgelGMHXL」(2本)と東ソー(株)製の商品名「TSKgelMultiporeHXL−M」(1本)
試料溶液:0.25質量%のTHF溶液
カラムへの試料溶液の注入量:100μl
流速:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー株式会社製の標準ポリスチレン(TSK standard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000、2890000)。
このようなシェル樹脂は、コア粒子の表面において、粒子状に形成されていても良いし、膜状に形成されていても良い。シェル粒子(シェル樹脂を含む粒子)またはシェル膜(シェル樹脂を含む膜)は、着色剤または任意の成分(例えば、顔料分散剤、ワックスまたは荷電制御剤等)を更に含んでも良い。
トナー粒子のメジアン径D50が所望の範囲となるように、シェル分散液に含まれるシェル粒子の粒度分布を体積基準で測定したときのメジアン径D50(以下では「シェル粒子のメジアン径D50」と記す)を適宜、調整することが好ましい。シェル粒子のメジアン径D50は、好ましくは0.0005μm以上3μm以下である。シェル粒子のメジアン径D50の上限は、より好ましくは2μmであり、更に好ましくは1μmである。シェル粒子のメジアン径D50の下限は、より好ましくは0.01μmであり、更に好ましくは0.02μmであり、より一層好ましくは0.04μmである。例えば、メジアン径D50が1μmのトナー粒子を得たい場合には、シェル粒子のメジアン径D50は、好ましくは0.0005μm以上0.3μm以下であり、より好ましくは0.001μm以上0.2μm以下である。また、メジアン径D50が10μmのトナー粒子を得たい場合には、シェル粒子のメジアン径D50は、好ましくは0.005μm以上3μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上2μm以下である。
シェル粒子のメジアン径D50は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製の品番「LA−920」またはベックマン・コールター社製の品番「マルチサイザーIII」)、または、光学系としてレーザードップラー法を用いる粒度分布測定装置(大塚電子株式会社製の品番「ELS−800」)などを用いて測定可能である。異なる測定方法を用いてシェル粒子のメジアン径D50を測定したときにその測定値に差が生じた場合には、粒度分布測定装置(大塚電子株式会社製の品番「ELS−800」)での測定値を採用する。
<コア樹脂>
(コア樹脂の材料)
コア樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ここで、非晶性ポリエステル樹脂では、アルコール成分に由来する構成単位と酸成分に由来する構成単位との両構成単位における芳香族系モノマーに由来する構成単位の含有割合が50質量%以上である。また、一般的には、芳香族系モノマーからなる樹脂は硬度が高いと言われている。これらのことから、コア樹脂が非晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、コア樹脂の硬度を高めることができるので、コア粒子(コア粒子はコア樹脂を含む)の硬度を高めることができる。よって、トナー粒子同士の合一化を防止できるので、液体現像剤の耐熱保管安定性を高めることができる。この効果を有効に得るためには、コア樹脂は、70質量%以上の非晶性ポリエステル樹脂を含むことがより好ましく、75質量%以上の非晶性ポリエステル樹脂を含むことがさらに一層好ましい。
コア樹脂は、95質量%以下の非晶性ポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。これにより、コア樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂とは異なる樹脂を含むことができる。そして、非晶性ポリエステル樹脂とは異なる樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を選択した場合には、低温での定着をさらに容易に実現できる。よって、コア樹脂は、5質量%以上の結晶性ポリエステル樹脂を含むことがさらに好ましい。コア樹脂が70質量%以上の非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましいという点を考慮すれば、コア樹脂は、5質量%以上30質量%以下の結晶性ポリエステル樹脂を含むことがより一層好ましい。
(コア樹脂の酸価)
コア樹脂の酸価は、20mgKOH/g以上であることが好ましい。これにより、コア樹脂に含まれるカルボキシル基残渣の量が多くなるので、コア樹脂が極性を有することとなる。これにより、コア樹脂と絶縁性液体との親和性が低くなるので、転写時に過剰な量の絶縁性液体がコア樹脂とともに記録媒体に供給されることを防止できる。よって、絶縁性液体がコア樹脂と記録媒体との間に侵入することを防止できるので、記録媒体へのトナー粒子の接着強度を高めることができる。したがって、メジアン径D50の小さなトナー粒子を用いた場合であっても(例えば液体現像剤を用いて画像形成を行った場合であっても)、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を高めることができる。
好ましくは、コア樹脂の酸価が30mgKOH/g以上である。これにより、コア樹脂の極性がさらに大きくなるので、メジアン径D50の小さなトナー粒子を用いた場合であっても記録媒体へのトナー粒子の定着強度をさらに高めることができる。なお、実際、コア樹脂の酸価を100mgKOH/gよりも大きくすることは難しい。また、コア樹脂の酸価を100mgKOH/gよりも大きくすることができたとしても、その熱物性を制御するのは困難である。
「コア樹脂の酸価」とは、JIS K 0070:1992(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)に記載の方法に準拠して測定されたコア樹脂の酸価を意味し、コア樹脂に含まれるカルボキシル基の量に基づく。「コア樹脂に含まれるカルボキシル基」とは、脂肪族ポリエステル樹脂および芳香族ポリエステル樹脂を合成する際の縮合重合反応においてヒドロキシル基と反応しなかったカルボキシル基残渣の量に相当する。
(コア樹脂に含まれるポリエステル樹脂の構成単位)
酸成分に由来する構成単位となる脂肪族系モノマーとしては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、又は、1,18−オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。これらの低級アルキルエステルを用いても良いし、これらの酸無水物を用いても良い。ポリエステル樹脂の結晶性が促進されるという観点では、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、又は、1,12−ドデカンジカルボン酸を用いることがより好ましい。このような脂肪族系モノマーとしては、上記のいずれかを単独で用いても良いし、上記のいずれかの2種以上を組み合わせて用いても良い。
アルコール成分に由来する構成単位となる脂肪族系モノマーとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、又は、1,20−エイコサンジオール等が挙げられる。ポリエステル樹脂の結晶性が促進されるという観点では、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、又は、1,10−デカンジオールを用いることが好ましい。このような脂肪族系モノマーとしては、上記のいずれかを単独で用いても良いし、上記のいずれかの2種以上を組み合わせて用いても良い。
酸成分に由来する構成単位となる芳香族系モノマーとしては、芳香族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル、又は、芳香族多価カルボン酸の酸無水物等を挙げることができる。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、又は、トリメリット酸等を挙げることができる。入手容易性の観点では、テレフタル酸、イソフタル酸、又は、5−tert−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
アルコール成分に由来する構成単位となる芳香族系モノマーとしては、芳香族多価アルコール等を挙げることができる。具体的には、下記式(I)で表わされるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
Figure 2016170250
上記式(I)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数2又は3のアルキレン基を示す。m及びnは、それぞれ独立して、0又は正の整数を示す。mとnとの和は、1以上16以下である。
より好ましくは、酸成分に由来する構成単位となる芳香族系モノマーとして、テレフタル酸、イソフタル酸、および、2,6−ナフタレンジカルボン酸のうちの少なくとも1つを用い、アルコール成分に由来する構成単位となる芳香族系モノマーとして、上記式(I)で表わされるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いる。これにより、液体現像剤の保管温度におけるコア樹脂の粘弾性が最適化される。よって、液体現像剤の保管時には、コア樹脂の溶融または軟化をさらに防止できるので、トナー粒子同士の合一化をさらに防止できる。したがって、液体現像剤の耐熱保管安定性を高めることができる。
また、コア樹脂が結晶性ポリエステルを含む場合には、酸成分に由来する構成単位となる脂肪族系モノマーとして、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、および、1,12−ドデカンジカルボン酸のうちの少なくとも1つを用いることがより好ましく、アルコール成分に由来する構成単位となる脂肪族系モノマーとして、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、および、1,10−デカンジオールのうちの少なくとも1つを用いることがより好ましい。これにより、定着温度におけるコア樹脂の粘弾性が最適化される。よって、定着時には、コア樹脂が溶融または軟化し易くなる。したがって、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度を高めることができ、低温オフセットの発生をさらに防止でき、また、低温での定着を容易に実現させることができる。
非晶性ポリエステル樹脂のMnは1000以上25000以下であることが好ましく、非晶性ポリエステル樹脂の質量平均分子量(以下では「Mw」と記す)は2000以上200000以下であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂のMnは1000以上25000以下であることが好ましく、結晶性ポリエステル樹脂のMwは2000以上200000以下であることが好ましい。ウレタン変性ポリエステル樹脂以外の樹脂のMnの測定方法にしたがって、非晶性ポリエステル樹脂のMn及びMwを測定でき、結晶性ポリエステル樹脂のMn及びMwを測定できる。
コア樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂および結晶性ポリエステル樹脂以外の他の樹脂を10質量%未満含んでも良い。非晶性ポリエステル樹脂および結晶性ポリエステル樹脂以外の他の樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂等を挙げることができる。その含有率が10質量%以上となると、ポリエステル樹脂の分子鎖を規則的に配列し難くなることがある。
<着色剤>
着色剤は、コア樹脂およびシェル樹脂のうちの少なくとも一方に分散されており、好ましくは0.3μm以下の粒径を有する。着色剤の粒径が0.3μm以下であれば、着色剤の分散性をより一層高めることができるので、画像の光沢度をより一層高めることができ、よって、所望の色目の実現が容易となる。
着色剤としては、従来公知の顔料等を特に限定されることなく使用できるが、コスト、耐光性、及び、着色性等の観点から以下の顔料を使用することが好ましい。なお、色彩構成上、これらの顔料は、通常、ブラック顔料とイエロー顔料とマゼンタ顔料とシアン顔料とに分類される。基本的には、ブラック以外の色彩(カラー画像)は、イエロー顔料、マゼンタ顔料又はシアン顔料の減法混色により調色される。以下に示す顔料を単独で用いても良いし、必要に応じて以下に示す顔料の2種以上を併用して用いても良い。
ブラック着色剤に含まれる顔料(ブラック顔料)としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック又はランプブラック等のカーボンブラックを用いても良いし、バイオマス由来のカーボンブラック等を用いても良いし、マグネタイト又はフェライト等の磁性粉を用いても良い。紫黒色染料であるニグロシン(アジン系化合物)を単独又は併用して用いても良い。ニグロシンとしては、C.I.ソルベントブラック7又はC.I.ソルベントブラック5等を用いることができる。
マゼンタ着色剤に含まれる顔料(マゼンタ顔料)としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、又は、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
イエロー着色剤に含まれる顔料(イエロー顔料)としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、又は、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
シアン着色剤に含まれる顔料(シアン顔料)としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、又は、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
<トナー粒子における任意の成分(顔料分散剤)>
トナー粒子における任意の成分の一例として、顔料分散剤が挙げられる。顔料分散剤は、トナー粒子において着色剤(顔料)を均一に分散させる作用を有するものであり、塩基性分散剤であることが好ましい。塩基性分散剤とは、以下に定義されるものをいう。すなわち、顔料分散剤0.5gと蒸留水20mlとをガラス製スクリュー管に入れ、そのガラス製スクリュー管をペイントシェーカーを用いて30分間振り混ぜた後、ろ過した。このようにして得られたろ液のpHをpHメータ(商品名:「D−51」、堀場製作所社製)
を用いて測定し、そのpHが7より大きい場合を塩基性分散剤とする。なお、そのpHが7より小さい場合は、酸性分散剤と呼ぶものとする。
このような塩基性分散剤の種類は特に限定されない。塩基性分散剤は、例えば、アミン基、アミノ基、アミド基、ピロリドン基、イミン基、イミノ基、ウレタン基、四級アンモニウム基、アンモニウム基、ピリジノ基、ピリジウム基、イミダゾリノ基、又は、イミダゾリウム基等の官能基を分子内に有する化合物であることが好ましい。なお、分散剤としては、通常、分子中に親水性部分と疎水性部分とを有するいわゆる界面活性剤が該当する。しかし、トナー粒子において着色剤(顔料)を均一に分散させる作用を有するのであれば、界面活性剤に限定されず、種々の化合物を用いることができる。
このような塩基性分散剤の市販品としては、例えば、味の素ファインテクノ株式会社製の「アジスパーPB−821」(商品名)、「アジスパーPB−822」(商品名)又は「アジスパーPB−881」(商品名)等を用いても良いし、日本ルーブリゾール株式会社製の「ソルスパーズ28000」(商品名)、「ソルスパーズ32000」(商品名)、「ソルスパーズ32500」(商品名)、「ソルスパーズ35100」(商品名)又は「ソルスパーズ37500」(商品名)等を用いても良い。
顔料分散剤としては、絶縁性液体に溶解しないものを選択することがより好ましい。この点を考慮すれば、味の素ファインテクノ株式会社製の「アジスパーPB−821」(商品名)、「アジスパーPB−822」(商品名)又は「アジスパーPB−881」(商品名)等を用いることがより好ましい。詳細なメカニズムは不明であるが、このような顔料分散剤を使用すると、所望の形状を有するトナー粒子が得られ易くなる。
このような顔料分散剤は、着色剤(顔料)に対して、好ましくは1〜100質量%添加され、より好ましくは1〜40質量%添加されている。顔料分散剤の添加量が1質量%以上であれば、着色剤(顔料)の分散性を確保できるので、必要なID(画像濃度)を達成でき、また、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を確保できる。顔料分散剤の添加量が100質量%以下であれば、顔料分散剤の添加量が過剰となることを防止できるので、顔料分散剤の余剰分が絶縁性液体へ溶解することを防止でき、よって、トナー粒子の荷電性又はトナー粒子の定着強度等を良好な状態に維持できる。上記顔料分散剤を単独で用いても良いし、必要に応じて上記顔料分散剤の2種以上を併用しても良い。
<絶縁性液体>
絶縁性液体は、その抵抗値が静電潜像を乱さない程度(1011〜1016Ω・cm程度)であることが好ましく、臭気及び毒性が低い溶媒であることが好ましい。絶縁性液体としては、一般的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素又はポリシロキサン等が挙げられる。特に、低臭気、低害性、低コスト等の観点から、絶縁性液体としては、ノルマルパラフィン系溶媒又はイソパラフィン系溶媒を用いることが好ましい。より好ましくは、モレスコホワイト(商品名、松村石油株式会社製)、アイソパー(商品名、エクソンモービル製)又はシェルゾール(商品名、シェルケミカルズジャパン株式会社製)等を用いることであり、IPソルベント1620、IPソルベント2028又はIPソルベント2835(いずれも商品名、出光興産株式会社製)等を用いることである。
<液体現像剤の製造>
本実施形態の液体現像剤の製造方法としては、特に限定されず、例えば造粒法または粉砕法などの従来公知の技法が挙げられる。小径でシャープな粒度分布を有するトナー粒子を得るためには、粉砕法よりも造粒法を採用することが好ましい。溶融性の高い樹脂または結晶性の高い樹脂は、常温でも柔らかく、粉砕され難い。そのため、粉砕法では、トナー粒子の粒径を所望の粒径に制御できないことがある。しかし、造粒法では、所望の粒径を有するトナー粒子を得ることができる。
造粒法には、トナー粒子の形成機構の違いから、懸濁重合法、乳化重合法、微粒子凝集法、樹脂溶液に貧溶媒を添加してトナー粒子を析出させる方法、または、スプレードライ法などが含まれる。
より好ましくは、樹脂溶液に貧溶媒を添加してトナー粒子を析出させる方法を採用する。この方法では、まず、コア樹脂を良溶媒に溶解させてコア樹脂形成用溶液(分散相)を得る。コア樹脂形成用溶液を界面張力調整剤(例えばシェル樹脂(連続相))とともに貧溶媒(SP値が良溶媒とは異なる)に混合した後、せん断を与えて液滴を形成する。その後、良溶媒を揮発させると、トナー粒子を含む液体現像剤が得られる。この方法では、せん断の与え方、界面張力差、または、界面張力調整剤(例えばシェル樹脂)を適宜調整することにより、トナー粒子の粒度又はトナー粒子の形状を高度に制御できる。よって、この方法は、所望の粒度分布および所望の形状を有するトナー粒子を得る方法として好適である。
コア樹脂形成用溶液をシェル樹脂とともに貧溶媒に混合する場合、シェル樹脂を含むシェル粒子が貧溶媒に分散されてなる分散液(シェル用分散液)にコア樹脂形成用溶液を混合することが好ましい。例えば次の[1]〜[7]のうちのいずれかの方法でシェル粒子を製造することが好ましい。シェル粒子の製造し易さという観点では、[4]、[6]または[7]の方法でシェル粒子を製造することが好ましく、[6]または[7]の方法でシェル粒子を製造することがより好ましい。
[1] ジェットミルなどの公知の乾式粉砕機を用いてシェル樹脂を乾式で粉砕させる
[2] シェル樹脂の粉末を有機溶剤中に分散させ、ビーズミルまたはロールミルなどの公知の湿式分散機を用いて湿式で粉砕させる
[3] スプレードライヤーなどを用いてシェル樹脂の溶液を噴霧し、乾燥させる
[4] シェル樹脂の溶液に対して貧溶媒の添加または冷却を行なって、シェル樹脂を過飽和させて析出させる
[5] シェル樹脂の溶液を水または有機溶剤中に分散させる
[6] シェル樹脂の前駆体を水中で乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、シード重合法または懸濁重合法などにより重合させる
[7] シェル樹脂の前駆体を有機溶剤中で分散重合などにより重合させる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に限定されない。
<製造例1>[コア樹脂形成用溶液(C−1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた反応容器に、ビスフェノールAのプロピオンオキサイド2モル付加物674質量部とテレフタル酸324質量部とチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)(縮合触媒)2質量部とを入れた。生成する水を除去しながら、180℃で、窒素気流下で、8時間反応させた。
次に、220℃まで徐々に昇温しながら、また、生成する水を留去しながら、窒素気流下で4時間反応させた。その後、0.007〜0.026MPaの減圧下で1時間反応させた。上記反応容器に無水トリメリット酸54質量部をさらに入れ、180℃で1時間反応させた。このようにして非晶性ポリエステル樹脂(Mn:8000、酸価:30mgKOH/g)を得た。
続いて、得られた非晶性ポリエステル樹脂400質量部とアセトン600質量部とをビーカーに入れて攪拌し、上記非晶性ポリエステル樹脂をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂形成用溶液(C−1)を得た。得られたコア樹脂形成用溶液(C−1)の固形分濃度を測定すると、40質量%であった。また、固形分の酸価(コア樹脂の酸価に相当。以下同様)を前述の方法で測定したところ、30mgKOH/gであった。
<製造例2>[コア樹脂形成用溶液(C−2)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた反応容器に、ヘキサンジオール480質量部とアジピン酸520質量部とチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)(縮合触媒)2質量部とを入れた。生成する水を除去しながら、180℃で、窒素気流下で、8時間反応させた。
次に、220℃まで徐々に昇温しながら、また、生成する水を除去しながら、窒素気流下で4時間反応させた。その後、0.007〜0.026MPaの減圧下で1時間反応させた。上記反応容器に無水トリメリット酸54質量部をさらに入れ、180℃で1時間反応させた。このようにして結晶性ポリエステル樹脂(Mn:4000、酸価:0mgKOH/g)を得た。
続いて、得られた結晶性ポリエステル樹脂400質量部とアセトン600質量部とをビーカーに入れて攪拌し、上記非晶性ポリエステル樹脂をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂形成用溶液(C−2)を得た。得られたコア樹脂形成用溶液(C−2)の固形分濃度を測定すると、40質量%であった。また、固形分の酸価を前述の方法で測定したところ、0mgKOH/gであった。
<製造例3>[コア樹脂形成用溶液(C−3)の製造]
上記製造例1で製造された非晶性ポリエステル樹脂320質量部と上記製造例2で製造された結晶性ポリエステル樹脂80質量部とアセトン600質量部とをビーカーに入れて攪拌し、これらのポリエステル樹脂をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂形成用溶液(C−3)を得た。得られたコア樹脂形成用溶液(C−3)の固形分濃度を測定すると、40質量%であった。また、固形分の酸価と固形分のSP値とを前述の方法で測定したところ、固形分の酸価は24mgKOH/gであった。
<製造例4>[脂肪族ポリエステル樹脂(結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂の構成単位となるポリエステル樹脂)の製造]
まず、かきまぜ棒、パーシャルコンデンサ、窒素ガス導入管および温度計を備えた四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール(アルコール成分に由来する構成単位となる脂肪族系モノマー)とセバシン酸(酸成分に由来する構成単位となる脂肪族系モノマー)とを1:1(モル比)の割合で入れた。1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸との混合物を攪拌させながら上記四つ口フラスコに窒素ガスを導入し、約170℃で5時間保持した。このようにして、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを重縮合反応させた。
100℃程度にまで降温させた後、ヒドロキノン(重合禁止剤)0.012質量部を加えた。このようにして上記重縮合反応を停止させ、脂肪族ポリエステル樹脂を得た。JIS K 1557-1:2007(プラスチック−ポリウレタン原料ポリオール試験方法−第1部:水酸基価の求め方)で規定の方法にしたがって上記脂肪族ポリエステル樹脂の水酸基価を測定したところ、30mgKOH/gであった。
<製造例5>[シェル用分散液(S−1)の製造]
まず、上記製造例4で製造された脂肪族ポリエステル樹脂699質量部とイソステアリン酸グリセリル174質量部とに対してHDI(hexamethylene diisocyanate)100質量部を加え、80℃で6時間に亘って反応させた。反応生成物のNCO価が0(ゼロ)になった時点で反応を停止させた。このようにしてウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(A)(Mn:20000、Mw:40000、酸価:0mgKOH/g、ウレタン基濃度:7.2質量%)が得られた。
次に、得られたウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(A)800質量部とアセトン1200質量部とをビーカーに入れて攪拌し、ウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(A)をアセトンに均一に溶解させた。
続いて、ウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(A)のアセトン溶液200質量部を撹拌下の絶縁性液体(出光興産株式会社製の商品名「IPソルベント2028」)300質量部に滴下した後、0.039MPaの減圧下で40℃でアセトンを除去した。このようにしてシェル用分散液(S−1)を得た。
得られたシェル用分散液(S−1)の固形分に対して前述の方法にしたがって貯蔵弾性率G’の温度依存性を測定したところ、G’(50℃)は7×107Paであり、G’(90℃)は3.5×103Paであった。
<製造例6>[シェル用分散液(S−2)の製造]
まず、上記製造例4で製造された脂肪族ポリエステル樹脂700質量部とイソステアリン酸グリセリル150質量部とに対してHDI(hexamethylene diisocyanate)90質量部を加え、80℃で6時間に亘って反応させた。反応生成物のNCO価が0(ゼロ)になった時点で反応を停止させた。このようにしてウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(B)(Mn:20000、Mw:40000、酸価:0mgKOH/g、ウレタン基濃度:6.7質量%)が得られた。
次に、得られたウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(B)800質量部とアセトン1200質量部とをビーカーに入れて攪拌し、ウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(B)をアセトンに均一に溶解させた。
続いて、ウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(B)のアセトン溶液200質量部を撹拌下の絶縁性液体(出光興産株式会社製の商品名「IPソルベント2028」)300質量部に滴下した後、0.039MPaの減圧下で40℃でアセトンを除去した。このようにしてシェル用分散液(S−2)を得た。
得られたシェル用分散液(S−2)の固形分に対して貯蔵弾性率G’の温度依存性を測定したところ、G’(50℃)は5×107Paであり、G’(90℃)は2×103Paであった。
<製造例7>[シェル用分散液(S−3)の製造]
まず、上記製造例4で製造された脂肪族ポリエステル樹脂460質量部とイソステアリン酸グリセリル263質量部とに対してHDI(hexamethylene diisocyanate)127質量部を加え、80℃で6時間に亘って反応させた。反応生成物のNCO価が0(ゼロ)になった時点で反応を停止させた。このようにしてウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(C)(Mn:20000、Mw:40000、酸価:0mgKOH/g、ウレタン基濃度:10.5質量%)が得られた。
次に、得られたウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(C)800質量部とアセトン1200質量部とをビーカーに入れて攪拌し、ウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(C)をアセトンに均一に溶解させた。
続いて、ウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂(C)のアセトン溶液200質量部を撹拌下の絶縁性液体(出光興産株式会社製の商品名「IPソルベント2028」)300質量部に滴下した後、0.039MPaの減圧下で40℃でアセトンを除去した。このようにしてシェル用分散液(S−3)を得た。
得られたシェル用分散液(S−3)の固形分に対して貯蔵弾性率G’の温度依存性を測定したところ、G’(50℃)は5×107Paであり、G’(90℃)は5×106Paであった。
<製造例8>[シェル用分散液(S−4)の製造]
まず、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸338質量部とエチレングリコール162質量部とチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)(縮合触媒)1質量部とを入れた。生成する水を除去しながら、180℃で、窒素気流下で、8時間反応させた。
次に、220℃まで徐々に昇温しながら、また、生成する水を留去しながら、窒素気流下で4時間反応させた。その後、0.007〜0.026MPaの減圧下で1時間反応させた。このようにしてポリエステル樹脂(Mn:3500)を得た。
続いて、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、THF100質量部と得られたポリエステル樹脂192質量部とを入れた。反応容器の気相部を窒素で置換した後、65℃で上記ポリエステル樹脂をTHFに溶解させた。その後、イソシアネート基を有するモノマー(昭和電工株式会社製の商品名「カレンズMOI」)8.5質量部と商品名「ネオスタンU−600」(日東化成株式会社製)0.2質量部とをさらに入れ、70℃で4時間反応させた。このようにしてビニルモノマーが得られた。
続いて、ガラス製ビーカーに、メタクリル酸2−デシルテトラデシル55質量部とメタクリル酸メチル12質量部とアクリルアミド5質量部と得られたビニルモノマー28質量部とアゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.1質量部との混合液を入れ、20℃で撹拌した。これにより、単量体溶液を得た。
続いて、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、脱溶剤装置および窒素導入管を備えた反応容器を準備した。この反応容器にTHF100質量部を入れ、滴下ロートに上記単量体溶液を入れた。反応容器の気相部を窒素で置換した後、単量体溶液を密閉下70℃で1時間かけてTHFに滴下した。単量体溶液の滴下終了から3時間後、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.05質量部とTHF5質量部との混合物を単量体溶液に添加した。70℃で3時間反応させた後、室温まで冷却した。これにより、共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液200質量部を撹拌下の絶縁性液体(出光興産株式会社製の商品名「IPソルベント2028」)300質量部に滴下した後、0.039MPaの減圧下で40℃でTHFを除去した。このようにしてシェル用分散液(S−4)を得た。
得られたシェル用分散液(S−4)の固形分に対して前述の方法にしたがってMnを測定すると、40000であった。また、得られたシェル用分散液(S−4)の固形分に対して貯蔵弾性率G’の温度依存性を測定したところ、G’(50℃)は5×106Paであり、G’(90℃)は2×103Paであった。
<製造例9>[シェル用分散液(S−5)の製造]
まず、ガラス製ビーカーに、メタクリル酸2−デシルテトラデシル40質量部と片末端メタクリロイル酸メチル(Mn=6000、東亞合成化学工業株式会社製の商品名「AA−6」)とメタクリル酸メチル40質量部とアクリルアミド20質量部とアゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.1質量部との混合液を入れ、20℃で撹拌した。これにより、単量体溶液を得た。
次に、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、脱溶剤装置および窒素導入管を備えた反応容器を準備した。この反応容器にTHF100質量部を入れ、滴下ロートに上記単量体溶液を入れた。反応容器の気相部を窒素で置換した後、単量体溶液を密閉下70℃で1時間かけてTHFに滴下した。単量体溶液の滴下終了から3時間後、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.05質量部とTHF5質量部との混合物を単量体溶液に添加した。70℃で3時間反応させた後、室温まで冷却した。これにより、共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液200質量部を撹拌下の絶縁性液体(出光興産株式会社製の商品名「IPソルベント2028」)300質量部に滴下した後、0.039MPaの減圧下で40℃でTHFを除去した。このようにしてシェル用分散液(S−5)を得た。
得られたシェル用分散液(S−5)の固形分に対して前述の方法にしたがってMnを測定すると、40000であった。また、得られたシェル用分散液(S−5)の固形分に対して貯蔵弾性率G’の温度依存性を測定したところ、G’(50℃)は1×108Paであり、G’(90℃)は5×107Paであった。
<製造例10>[着色剤分散液の製造]
ビーカーに、銅フタロシアニン(DIC株式会社製の商品名「Fastogen Blue FDB-14」)(着色剤(顔料))25質量部と顔料分散剤(味の素ファインテクノ株式会社製の商品名「アジスパーPB−821」)4質量部とアセトン75質量部とを入れて撹拌し、銅フタロシアニンを均一に分散させた。ビーズミルを用いて銅フタロシアニンを微分散して着色剤分散液を得た。着色剤分散液における銅フタロシアニンのメジアン径D50は0.2μmであった。
<実施例1>[液体現像剤(1)の製造]
ビーカーに、コア樹脂形成用溶液(C−1)410質量部と着色剤分散液190質量部とを入れた。得られた溶液を25℃でTKオートホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて16000rpmで撹拌した。このようにして、着色剤が均一に分散された樹脂溶液を得た。
別のビーカーに、絶縁性液体(出光興産株式会社製の商品名「IPソルベント2028」)670質量部とシェル用分散液(S−1)60質量部とを入れた。得られた溶液を25℃でクレアミックス(エム・テクニック株式会社製)を用いて20000rpmで撹拌しながら、上記樹脂溶液600質量部を入れ、2分間、撹拌した。
得られた混合液を、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および脱溶剤装置を備えた反応容器に入れ、35℃に昇温した。同温度で、0.039MPaの減圧下で、アセトン濃度が0.5質量%以下になるまで、アセトンを混合液から除去した。これにより、液体現像剤(1)を得た。液体現像剤(1)では、トナー粒子における着色剤(顔料)の含有量が20質量%であり、液体現像剤におけるトナー粒子の含有量が24質量%であった。
<実施例2>[液体現像剤(2)の製造]
シェル用分散液(S−1)の代わりにシェル用分散液(S−2)を用いたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって液体現像剤(2)を製造した。
<実施例3>[液体現像剤(3)の製造]
シェル用分散液(S−1)の代わりにシェル用分散液(S−3)を用いたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって液体現像剤(3)を製造した。
<実施例4>[液体現像剤(4)の製造]
コア樹脂形成用溶液(C−1)の代わりにコア樹脂形成用溶液(C−2)を用いたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって液体現像剤(4)を製造した。
<実施例5>[液体現像剤(5)の製造]
コア樹脂形成用溶液(C−1)の代わりにコア樹脂形成用溶液(C−3)を用いたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって液体現像剤(5)を製造した。
<比較例1>[液体現像剤(6)の製造]
シェル用分散液(S−1)の代わりにシェル用分散液(S−4)を用いたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって液体現像剤(6)を製造した。
<比較例2>[液体現像剤(7)の製造]
シェル用分散液(S−1)の代わりにシェル用分散液(S−5)を用いたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって液体現像剤(7)を製造した。
<耐熱保管安定性の評価>
まず、振動式粘度計を用いて液体現像剤の粘度(保管前の粘度)を測定した。次に、その液体現像剤10ccをスクリュー管に入れ、そのスクリュー管を封じた後に当該スクリュー管を50℃で1週間、保管した。その後、振動式粘度計を用いて液体現像剤の粘度(保管後の粘度)を測定した。結果を表1に示す。
表1では、下記式で表される粘度変化率が1.5以下であった場合に「A1」と記し、下記式で表される粘度変化率が1.5よりも大きく5以下であった場合に「B1」と記し、下記式で表される粘度変化率が5よりも大きかった場合に「C1」と記す。粘度変化率が小さい方が、高温下での保管による液体現像剤の性能低下が防止されていると考えられ、よって、液体現像剤は耐熱保管安定性に優れると言える。
(粘度変化率)=[{(保管後の粘度)−(保管前の粘度)}の絶対値]÷(保管前の粘度)。
<低温オフセットの評価>
まず、後述の方法にしたがって、記録媒体(王子製紙株式会社製の商品名「OKトップコートプラス」(128g/m2))に画像を形成した。記録媒体へのトナー粒子の付着量は3g/m2であった。熱ローラ定着器を用いて、未定着画像を記録媒体に定着させた。ここで、ローラの設定温度は100℃であり、定着NIP時間は10msecであり、熱ローラ定着器を通過した直後の記録媒体の温度は80℃であった。
上記定着の直後に、熱ローラ定着器に対して別の記録媒体(王子製紙株式会社製の商品名「OKトップコートプラス」(128g/m2))を通紙させた。その後、その記録媒体に対するトナー粒子の付着状態を目で確認した。結果を表1に示す。
表1では、トナー粒子が上記別の記録媒体に付着していなかった場合に「A2」と記し、トナー粒子が上記別の記録媒体に付着していた場合に「C2」と記す。トナー粒子が上記別の記録媒体に付着していなければ、低温オフセットが発生していないと言える。また、低温オフセットが発生していなければ、低温定着性が実現されていると言える。
<画像の形成>
図2に示す画像形成装置を用いて画像を形成した。図2に示す画像形成装置の構成を以下に示す。液体現像剤21は、アニロックスローラ23により現像槽22内から汲み上げられる。アニロックスローラ23上の余剰の液体現像剤21は、アニロックス規制ブレード24により掻き取られ、残余の液体現像剤21は、ならしローラ25に送られる。ならしローラ25上では、液体現像剤21は厚さが均一且つ薄くなるように調整される。
ならしローラ25上の液体現像剤21は、現像ローラ26へ送られる。現像ローラ26上の液体現像剤21は現像チャージャー28により帯電されて感光体29上に現像され、余剰の液体現像剤は現像クリーニングブレード27により掻き取られる。詳細には、感光体29の表面は、帯電部30により一様に帯電されており、感光体29の周囲に配置された露光部31は、所定の画像情報に基づく光を感光体29の表面に照射する。これにより、感光体29の表面には、所定の画像情報に基づく静電潜像が形成される。形成された静電潜像が現像されることにより、トナー像が感光体29上に形成される。なお、感光体29上の余剰の液体現像剤はクリーニングブレード32に掻き取られる。
感光体29上に形成されたトナー像は一次転写部37において中間転写体33に一次転写され、中間転写体33に転写された液体現像剤は二次転写部38において記録媒体40(例えば上質紙)に二次転写される。二次転写されずに中間転写体33に残った液体現像剤は、中間転写体クリーニング部34により掻き取られる。
本実施例では、感光体29の表面は帯電部30によりプラスに帯電しており、中間転写体33の電位は−400Vであり、二次転写ローラ35の電位は−1200Vであった。記録媒体40の搬送速度は400mm/sであった。
<結果>
結果を表1に示す。
Figure 2016170250
表1において、「ウレタン系*11」は、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂(実施例では「ウレタン変性脂肪族ポリエステル樹脂」と記載)を意味する。「ビニル系*12」は、ビニルモノマーの重合体(ビニル樹脂)を意味する。
<考察>
表1に示すように、比較例1では、実施例1〜5に比べ、耐熱保管安定性が低下した。その理由としては、G’(50℃)が5×106Paであったことが考えられる。
比較例2では、実施例1〜5とは異なり、低温オフセットが発生した。その理由としては、G’(90℃)が5×107Paであったことが考えられる。
実施例1〜5では同様の結果が得られた。この結果から、ウレタン変性脂肪族ポリエステルの材料に依らず、G’(50℃)が5×107Pa以上であり且つG’(90℃)が5×106Pa以下であれば、液体現像剤の耐熱保管安定性を高く維持でき、低温オフセットの発生を防止でき、また、低温での定着を実現できる、と考えられる。
実施例1及び5では、実施例4に比べて、液体現像剤の耐熱保管安定性を高めることができた。この結果から、コア樹脂は非晶性ポリエステル樹脂を含むことがより好ましいと言える。
なお、本発明者らは、実施例4〜5では、実施例1に比べて、低温での定着(熱ローラ定着器を通過した直後の記録媒体の温度:80℃)を容易に実現できたことを確認している。
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
21 液体現像剤、22 現像槽、23 アニロックスローラ、24 アニロックス規制ブレード、25 ならしローラ、26 現像ローラ、27 現像クリーニングブレード、28 現像チャージャー、29 感光体、30 帯電部、31 露光部、32 クリーニングブレード、33 中間転写体、34 中間転写体クリーニング部、35 二次転写ローラ、37 一次転写部、38 二次転写部、40 記録媒体。

Claims (2)

  1. 絶縁性液体と、前記絶縁性液体に分散されたトナー粒子とを備える液体現像剤であって、
    前記トナー粒子は、コア/シェル構造を有し、
    前記コア/シェル構造は、コア樹脂を含むコア粒子と、前記コア粒子の表面の少なくとも一部に設けられ且つ前記コア樹脂とは異なる樹脂であるシェル樹脂とを有し、
    50℃における前記シェル樹脂の貯蔵弾性率は5×107Pa以上であり、
    90℃における前記シェル樹脂の貯蔵弾性率は5×106Pa以下である液体現像剤。
  2. 前記シェル樹脂は、結晶性を有するウレタン変性ポリエステル樹脂を含む請求項1に記載の液体現像剤。
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