以下、各図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル保管用器具の各部の構成を示す図、図2は、バルーンカテーテルを示す図、図3は、包装容器に収容した状態のバルーンカテーテル組立体を示す図、図4は、バルーンカテーテル保管用器具の使用例を示す図である。
本実施形態に係るバルーンカテーテル保管用器具200は、図1(B)に示すように、スタイレット10と、バルーンカバー100と、を備えている。
スタイレット10は、バルーンカテーテル400を保管する際にバルーンカテーテル400にキンク(折れ曲がり)等が発生するのを防止する芯材としての機能を有する。バルーンカバー100は、バルーンカテーテル400のバルーン410を収容して保護することにより、バルーン410に傷等の損傷が発生するのを防止する保護具としての機能を有する。
まず、図2を参照して、バルーンカテーテル保管用器具200の使用対象となるバルーンカテーテル400について説明する。なお、バルーンカテーテル400は、バルーンカテーテル保管用器具200の使用対象の一例として説明するものであり、バルーンカテーテル保管用器具200の使用対象となるバルーンカテーテルがここで説明される構成のものに限定されることはない。
バルーンカテーテル400は、シャフト420を生体器官に挿通させ、シャフト420の先端側に配置されたバルーン410を狭窄部(病変部)において拡張させることにより、狭窄部を押し広げて治療する医療装置であり、いわゆるPTCA拡張カテーテルとして構成している。ただし、バルーンカテーテル400は、その他の治療用途に用いられるものでもよく、例えば、冠動脈以外の他の血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官内に形成された狭窄部の治療および改善を目的とするバルーンカテーテルであってもよい。
図2(A)に示すように、バルーンカテーテル400は、可撓性を備える長尺状のシャフト420と、シャフト420の先端部側に配置された拡張変形および収縮変形可能なバルーン410と、シャフト420の基端部側に配置されたハブ450とを備える。なお、バルーンカテーテル400の説明においては、バルーン410が設けられた側を先端側と称し、ハブ450が設けられた側を基端側と称する。
バルーンカテーテル400は、シャフト420の先端部側寄りにガイドワイヤ480が導出される開口部433が設けられた、いわゆるラピッドエクスチェンジタイプと呼ばれるものである。ただし、バルーンカテーテル400は、ガイドワイヤルーメン431がシャフト420の先端から基端に亘って延在するように形成された、いわゆるオーバーザワイヤタイプと呼ばれるバルーンカテーテルであってもよい。
図2(B)に示すように、シャフト420は、ガイドワイヤ480が挿通されるガイドワイヤルーメン431が形成された内管(内管シャフト)430と、バルーン410を拡張するための加圧媒体が供給される加圧媒体ルーメン441を内管430の外周面との間に形成する外管(外管シャフト)440と、を備えている。
シャフト420は、内管430が外管440に内挿されて、内管430および外管440が同心状に位置合わせてして配置された二重管構造で構成されている。
図2(B)に示すように、内管430は、先端に形成された先端開口部433と、基端に形成された基端開口部435の二つの開口部を備えている。内管430の内部には、各開口部433、435に連通してガイドワイヤルーメン431が延在している。
内管430は、基端側が径方向外側へ湾曲した中空のチューブ材によって構成している。内管430の先端近傍には、溶着等の公知の方法によりバルーン410の先端部413を液密・気密に接合している。また、内管430の基端近傍は、外管440の所定の位置に形成された接続用開口部422と液密・気密に接合している。ガイドワイヤ480は、内管430の先端に設けられた先端開口部433および内管430の基端に設けられた基端開口部435のそれぞれを入口または出口として、ガイドワイヤルーメン431内に挿通される。
内管430の先端には、例えば、バルーンカテーテル400の先端が生体器官(血管の内壁等)に接触した際に、生体器官に損傷が生じるのを防止する先端チップを取り付けることが可能である。先端チップは、例えば、内管430よりも柔軟な管状部材により構成することができる。
内管430を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種ゴム類、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマー、ポリアミド、結晶性ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン等の結晶性プラスチックを使用することができる。これらの材料中に、例えば、ヘパリン、プロスタグランジン、ウロキナーゼ、アルギニン誘導体等の抗血栓性物質を配合し、抗血栓性を有する材料とすることも可能である。
外管440は、バルーン410の基端部415付近からハブ450まで延伸する中空状のチューブ材により構成している。外管440の先端近傍にはバルーン410の基端部415が溶着等の公知の方法により液密に接合されている。
外管440の構成材料には、例えば、内管430と同様の材料を用いることが可能である。また、外管440において血液と接触する部分(例えば、外管440の外表面)に抗血栓性を有する物質をコーティングすることも可能である。
図2(A)に示すように、ハブ450は、加圧媒体を供給するためのインデフレーター等の供給装置(図示省略)と液密・気密に接続可能な接続部451を備えている。ハブ450の接続部451は、例えば、流体チューブ等が接続・分離可能に構成された公知のルアーテーパー等によって構成することができる。
バルーン410の拡張に使用される加圧媒体(例えば、生理食塩水、造影剤等)は、ハブ450の接続部451を介してシャフト420内へ流入させることができる。加圧媒体は、加圧媒体ルーメン441を経由してバルーン410へ供給される。
図2(B)に示すように、バルーン410は、拡張変形に伴い狭窄部を押し広げる拡張有効部(加圧部)416と、拡張有効部416の先端側に連なる先端側テーパー部413aと、拡張有効部416の基端側に連なる基端側テーパー部415aと、を備えている。先端側テーパー部413aの先端側に位置する先端部413は内管430の外表面に固定されており、基端側テーパー部415aの基端側に位置する基端部415は外管440の外表面に固定されている。内管430において拡張有効部416の中央に位置する部分には、拡張有効部416の中央部分を示すX線造影マーカーを設けている。なお、X線造影マーカーは、拡張有効部416の両端部分を示すように、内管430において拡張有効部416の両端に位置する部分に設けられていてもよい。
バルーン410の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等を用いることができる。
次に、バルーンカテーテル保管用器具200が備えるスタイレット10およびバルーンカバー100について説明する。
図1(B)、図4(A)に示すように、バルーンカバー100は、バルーンカテーテル400のバルーン410が挿入される内腔111を備えており、折り畳まれた状態のバルーン410を収納可能に構成されている。ここで言うバルーン410が折り畳まれた状態とは、例えば、バルーンカテーテル400を製造した後、医療現場等において実際に使用を開始するまでの間に、バルーン410を内管430の外周に巻き付けられるようにして折り畳んだ状態のことである。折り畳まれた際のバルーン410の形状は、特に限定されず、医療分野において公知の折り畳み形状を適宜採用することができる。
図1(B)に示すように、バルーンカバー100は、内腔111の先端側に連なる先端開口部113と、内腔111の基端側に連なる基端開口部115と、を備える中空の管状部材によって構成している。
バルーンカバー100は、例えば、弾性を有する材料により構成することができる。弾性を有する材料としては、例えば、塩化ビニル、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、スチレンーエチレンーブチレンースチレン共重合体(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン共重合体(SEPS)などの熱可塑性エラストマー、ナイロン、PETなどの熱可塑性樹脂、またはゴム、シリコーンエラストマーなどの熱硬化性樹脂などを使用することができる。
図1(B)を参照して、バルーンカバー100の長さ寸法(軸方向の長さ)L3は、例えば、10〜80mmに形成することができる。ただし、バルーンカバー100の長さ寸法L3は、折り畳まれたバルーン410を軸方向に亘って包囲するように収容することが可能であれば特に制限はなく、バルーン410の軸方向の長さ寸法に応じて適宜変更することができる。
バルーンカバー100の内腔111の径d3は、バルーン410をバルーンカバー100内に収容した際に、バルーン410の外表面がバルーンカバー100の内面111aに接して(図4(A)を参照)、バルーン410とバルーンカバー100との間である程度の摩擦力が生じ得るような寸法を有することが好ましい。内腔111の径d3をこのような寸法で形成することにより、摩擦力を利用して、バルーンカバー100に対してバルーン410を固定することが可能になる。ただし、摩擦力が過度に大きくなると、バルーンカバー100からバルーン410を取り出す際に、バルーンカテーテル400に過剰な引っ張り力が作用して、バルーンカテーテル400が引き伸ばされる可能性がある。バルーンカバー100の内腔111の径d3は、このような点を考慮した上でバルーン410の外径寸法に応じた適切な大きさに形成することができ、例えば、0.40〜2.00mmに形成することができる。
なお、バルーンカバー100は、図1(B)に示す形状に限定されることない。例えば、バルーンカバー100の基端部は、基端開口部115に向けて内腔111の径が徐々に大きくなるテーパー形状に形成されていてもよい。このような形状に形成することにより、バルーンカテーテル400のバルーン410をバルーンカバー100内へ挿入し易くなる。
図1(A)、図4(A)に示すように、スタイレット10は、バルーンカテーテル400のガイドワイヤルーメン431に挿通される基部20と、基部20の先端部23側に形成され、バルーンカバー100に対して当該スタイレット10を着脱可能に固定する固定力を作用させる湾曲部(「固定部」に相当する)30と、を備えている。
スタイレット10の説明においては、基部20の延伸方向(長手方向)を軸方向と称し、湾曲部30が設けられた側を先端側と称し、湾曲部30が設けられた側と反対側を基端側と称する。なお、基部20の先端部23とは、基部20における湾曲部30との間の境界部分付近を示すものであり、基部20の先端を含む所定の範囲を意味する。基部20の基端部25とは、基部20の基端を含む所定の範囲を意味する。また、各図に付されたX軸は、スタイレット10の幅方向(湾曲部30が広がる方向)を示し、Y軸はスタイレット10の軸方向(基部20の軸方向と同方向)を示す。また、Z軸は、X軸とY軸がなす平面に対して直交する方向であり、スタイレット10の厚み方向を示す。
スタイレット10は、一つの線材により構成している。線材に対して基部20の長手方向に沿う軸線Aに対して外方側に広がった湾曲形状を付加して形状付けした部分は、湾曲部30を構成し、線材に対して形状が付加されていない部分、つまり、軸方向に略直線状に延在する部分は基部20を構成する。このようにして、基部20および湾曲部30はそれぞれが連続的に連なる一つの線材によって一体的に構成されている。
図1(A)に示すように、スタイレット10は、線材において基部20を構成する部分よりも先端側の部分を基部20の基端部25側へ向けて折り返すように湾曲して構成された折り返し部40を有している。湾曲部30は、折り返し部40から基部20の基端部25側へ延びた部分により構成されている。
湾曲部30は、全体が幅方向(X方向)に広がるように湾曲した形状を有している。また、湾曲部30は、折り返し部40から基部20の基端部25側へ向けて連続的にそれぞれ連なる第1湾曲移行部31aと、第2湾曲移行部31bと、挟持部33と、テーパー部35と、を有している。
第1湾曲移行部31aは、折り返し部40に近接した位置に形成されており、幅方向に最も広がるように湾曲した形状付けがなされた部分である。
第2湾曲移行部31bは、折り返し部40から離間するにしたがって幅方向への広がりが徐々に小さくするように形状付けがなされた部分である。
挟持部33は、第2湾曲移行部31bの基端から基部20の基端部25側に向けて延在し、基部20の長手方向に沿う軸線Aに対して交差する方向に湾曲した形状付けがなされた部分である。
テーパー部35は、挟持部33の基端から基部20の基端部25側に向けて延在し、挟持部33から離間するにしたがって基部20の軸線Aから離間するように形状付けがなされた部分である。
図1(A)および図4(A)に示すように、スタイレット10は、未使用の状態において、挟持部33と基部20との間に所定の隙間33aを有し、テーパー部35と基部20との間にも所定の隙間35aを有する。また、挟持部33と基部20との間の隙間33aよりも基部20の先端部23側には、バルーンカバー100の先端開口部113の開口縁部113aを収容するための空間部37が形成されている。
図4(A)に示すように、バルーンカテーテル保管用器具200を使用する際、バルーンカバー100は折り畳まれた状態のバルーン410を覆う(包囲する)ように配置される。一方、スタイレット10は、基部20の基端部25側の一部がバルーンカテーテル400のガイドワイヤルーメン431内に挿通される。基部20の基端は、バルーンカテーテル400のガイドワイヤルーメン431の基端に連通する基端開口部435を介して、ガイドワイヤルーメン431の外部に導出される。なお、スタイレット10の基部20の基端は、ガイドワイヤルーメン431の基端に連通する基端開口部435を介してガイドワイヤルーメン431の外部に導出せずに、ガイドワイヤルーメン431内に配置してもよい。
また、スタイレット10は、基部20がガイドワイヤルーメン431に挿通された状態において、基部20と挟持部33とによりバルーンカバー100の管壁を挟み込むように挟持して、バルーンカバー100に対して機械的な固定力(挟持力)を作用させる。基部20および挟持部33がバルーンカバー100の管壁に作用させる固定力を介して、スタイレット10全体がバルーンカバー100に対して固定される。そして、バルーンカテーテル400は、バルーン410の外表面とバルーンカバー100の内面との間で作用する摩擦力により、バルーンカバー100に対して固定される。その結果、バルーンカテーテル400とバルーンカバー100とが互いに固定され、スタイレット10とバルーンカバー100とが互いに固定されることにより、バルーンカテーテル400、バルーンカバー100、スタイレット10が一体的に組み付けられた状態となる。
バルーンカバー100にスタイレット10を取り付ける作業は、バルーンカバー100の管壁の先端部を、図4(A)に示すように、テーパー部35と基部20との間の隙間35a、および挟持部33と基部20との間の隙間33aを介して、空間部37内へ挿入する。この際、バルーンカバー100の先端開口部113の開口縁部113aがスタイレット10の折り返し部40付近に挿入されるまで、バルーンカバー100の管壁を空間部37内に押し込む。
バルーンカバー100にスタイレット10を取り付ける作業は、例えば、バルーンカバー100の外表面およびスタイレット10の湾曲部30等を手指等により把持しながら、挟持部33と基部20との間の隙間33aを押し広げつつ、バルーンカバー100とスタイレット10のうちの一方の部材を他方の部材へ向けて相対的に移動させることにより行うことができる。なお、上記の相対的に移動させるとは、バルーンカバー100をスタイレット10に対して移動させること、スタイレット10をバルーンカバー100に対して移動させること、および、スタイレット10とバルーンカバー100の両方を移動させることのいずれかの操作を含むことを意味する。
バルーンカバー100からスタイレット10を取り外す作業は、スタイレット10の基部20および挟持部33によりバルーンカバー100の管壁を挟持した状態を解除することにより行われる。具体的には、バルーンカバー100にスタイレット10を取り付ける作業を行うときと同様に手指等によりバルーンカバー100およびスタイレット10の各部を把持しながら、バルーンカバー100とスタイレット10のうちの一方の部材を他方の部材から相対的に遠ざけるように移動させる。この作業を行うことにより、空間部37内に収容されていたバルーンカバー100の先端開口部113の開口縁部113aが挟持部33と基部20との間の隙間33a、および、テーパー部35と基部20との間の隙間35aを順に通り抜けるように移動する。これにより、基部20および挟持部33によるバルーンカバー100の管壁の挟持が解除される。
スタイレット10に形成された空間部37は、折り返し部40により先端側が閉じられている。このため、取り付け作業を行う際や、バルーン410をバルーンカバー100によって保護している最中に、バルーンカバー100を先端側へ移動させる向きの力が不用意に作用するようなことがあっても、先端開口部113の開口縁部113aが折り返し部40に当接して、その先端側への移動が阻止される。これにより、バルーンカバー100が先端側に抜け出るのを好適に防止することができる。
スタイレット10に形成されたテーパー部35は、基部20と挟持部33との間の隙間33a内へバルーンカバー100の管壁を挿入する際に、その挿入を補助するガイド部としての機能を有する。前述したように、テーパー部35は、基部20の基端部25側へ向けて、基端側が基部20の軸線Aから徐々に離間するように形状付けがなされている。このため、バルーンカバー100に対してスタイレット10を固定するに際し、バルーンカバー100の先端開口部113の開口縁部113aを挟持部33へ向けて移動させると、テーパー部35により、挟持部33と基部20との間の隙間33aへ向かうように開口縁部113aが誘導される。これにより、バルーンカバー100の先端開口部113の開口縁部113aを挟持部33と基部20との間の隙間33a内へ容易に挿入することが可能になる。
スタイレット10とバルーンカバー100を固定する作業やその固定を解除する作業は、主に製造現場や医療現場等において使用者(例えば、製造作業者や医療従事者)の手作業により行われる。スタイレット10は、生体管腔内に挿入されるバルーンカテーテル400に装着されることを前提として製造されているため、一般的に目視での確認に多少の手間を要する程度の外径で構成される。このため、スタイレット10の先端が直線状に延びていると、例えば、医療現場においてスタイレット10を使用する際に、医療従事者等が装着する手袋にスタイレット10の先端が突き当たる等して、手袋を破損させてしまう可能性がある。
上記のような問題に対して、本実施形態に係るスタイレット10には、当該スタイレット10の先端に相当する部分に、基部20の基端部25側へ向けて折り返すように湾曲した折り返し部40を形成している。折り返し部40が形成されていることにより、スタイレット10を取り扱う際にスタイレット10の先端が手指に突き当たるのを防止することができる。これにより、手袋を破損させてしまう等の問題が発生するのを未然に防止することができる。
また、スタイレット10を使用する際には、基部20よりも幅方向(X軸方向)に広がる湾曲部30や折り返し部40の位置を目視により確認することで当該スタイレット10の先端側を容易に把握することが可能になる。このため、スタイレット10は、比較的細径化された線材で構成されているにも関わらず、速やかな作業が要求される製造現場や医療現場においてもその取扱いが容易なものとなる。
スタイレット10を構成する線材は、例えば、弾性を備える公知の樹脂材料や金属材料により構成することが可能である。線材が弾性を備えたもので構成されていると、スタイレット10の各部の形状をある程度変形させながら、スタイレット10をバルーンカバー100に対して着脱させることが可能になる。その結果、一つのスタイレット10で外径が異なるより多品種のバルーンカバー100に対応する(使い回す)ことが可能になるため、スタイレット10の汎用性が向上する。
線材を構成する材料としては、例えば、塩化ビニル、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、スチレンーエチレンーブチレンースチレン共重合体(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン共重合体(SEPS)などの熱可塑性エラストマー、ナイロン、PETなどの熱可塑性樹脂、ゴム、シリコーンエラストマーなどの熱硬化性樹脂、SUS線、銅線、チタン線、ナイチノール線などの金属材料、上記各材料を適宜組み合わせたもの等を使用することが可能である。
なお、本実施形態に係るスタイレット10は、所定の形状が付加された連続的に延びる一つの線材により構成しているが、例えば、複数の線材が接続されて全体として一つの線材を構成したものをスタイレット10の構成部材として用いることも可能である。このような複数の線材が接続されたものを使用する場合、スタイレット10の製造工程数の増加を招くため、製造作業が多少煩雑なものとなるが、スタイレット10の基部20や湾曲部30の各部の機能に応じた所望の材料を用いることが可能になるため、各部の機能の向上や、材料選択の余地を増やすことによる製造コストの削減等を図ることが可能になる。
図1(B)を参照して、スタイレット10の長さ寸法(軸方向の全長)L1は、例えば、250〜350mmに形成することができ、湾曲部30が形成された部分の長さ寸法L21は、例えば、1〜20mmに形成することができ、基部20が形成された部分の長さ寸法L22は、例えば、230〜249mmに形成することができる。また、湾曲部30において最も幅方向に広がる部分の寸法d1は、例えば、1〜3mmに形成することができ、挟持部33と基部20との間の隙間33aの寸法d2は、例えば、0〜0.5mmに形成することができる。ただし、スタイレット10の各部の寸法は、バルーンカテーテル400、バルーンカバー100、および後述するリグルーミング用カバー300の仕様(寸法等)に応じて適宜変更し得るものであり、上記の寸法例に限定されることはない。
また、スタイレット10を構成する線材の断面形状や外径も特に限定されることはない。
次に、リグルーミング用カバー300について説明する。
バルーンカテーテルは、一つの手技において複数回使用されることがある。バルーンカテーテルを複数回使用する場合、生体管腔内に形成された狭窄部を治療するためにバルーンを一度拡張し、その後に収縮した状態とし、バルーンカテーテルを生体外へ取り出す作業が行われる。バルーンカテーテルのバルーンは、折り畳まれた状態から一旦拡張変形がなされると、製造時に付加した折り畳み形状が解かれてしまうため、収縮させても所望の外径まで十分に縮径されないことがある。バルーンの外径を所望の大きさまで縮径することができないと、バルーンカテーテルを生体管腔内へ再度挿入するのが困難になってしまう。このため、医療現場においては、リグルーミング用カバー(リグルーミング用シース)と呼ばれる器具を使用して、バルーンを縮径させる作業を行うことがある。生体外部に取り出されたバルーンは、リグルーミング用カバー内に挿入されることで、リグルーミング用カバーの内腔の径に応じて所定の外径まで縮径される。バルーンをリグルーミング用カバー内に挿入する際、バルーンカテーテルにコシを付加するための芯材としてスタイレットが使用される。
図1(B)に示すように、本実施形態に係るリグルーミング用カバー300は、バルーン410が挿入される内腔311と、内腔311の先端側に連なる先端開口部313と、内腔311の基端側に連なる基端開口部315と、を備える中空の管状部材によって構成している。なお、リグルーミング用カバー300の構成材料としては、例えば、前述したバルーンカバー100の構成材料として例示したものと同様のものを使用することが可能である。
図1(B)を参照して、リグルーミング用カバー300の長さ寸法(軸方向の長さ)L4は、例えば、30〜100mmに形成することができる。ただし、リグルーミング用カバー300の長さ寸法L4は、収縮されたバルーン410を軸方向に亘って包囲するように収容することが可能であれば特に制限はなく、バルーン410の軸方向の長さ寸法に応じて適宜変更し得る。
リグルーミング用カバー300の内腔311の径d4は、例えば、0.5〜3.0mmに形成することができる。リグルーミング用カバー300の内腔311の径d4は、収縮した状態にあるバルーン410の外径をどの程度まで縮径させるかといった観点に基づいて適宜設定することができる。一般的に、一旦拡張させた後に収縮されたバルーン410は、製造後に付与される折り畳み形状が解かれているため、折り畳まれた状態(内管430に巻き付けてある状態)よりもその外径が大きくなる。リグルーミング用カバー300は、生体管腔内への挿入性が確保される程度までバルーン410の外径を縮径させる目的で使用されるものであるため、内腔311の径d4を過度に小さく設定する必要はない。このため、リグルーミング用カバー300の内腔311の径d4は、折り畳まれた状態のバルーン410を収容するバルーンカバー100の内腔111の径d3よりも大きく形成している。
なお、リグルーミング用カバー300は、図1(B)に示す形状に限定されることはない。例えば、バルーンカバー100と同様にリグルーミング用カバー300の基端部は、基端開口部315に向けて内腔311の径が徐々に大きくなるテーパー形状に形成されていてもよい。このような形状に形成することにより、バルーンカテーテル400のバルーン410をリグルーミング用カバー300内へ挿入し易くなる。
図4(B)には、リグルーミング用カバー300の使用時の状態を示す。
リグルーミング用カバー300を使用する際は、バルーンカバー100を使用する際と同様にスタイレット10を併用する。スタイレット10の湾曲部30(挟持部33と基部20)を介してリグルーミング用カバー300の管壁に固定力を作用させることにより、スタイレット10とリグルーミング用カバー300を固定させることができる。また、バルーン410は、リグルーミング用カバー300の内腔311に挿入されると、リグルーミング用カバー300の管壁に押え込まれて、内腔311の径に応じた所定の外径まで縮径する。
なお、リグルーミング用カバー300とスタイレット10の固定、およびその固定を解除する具体的な作業手順は、前述したバルーンカバー100とスタイレット10の固定、およびその固定を解除する作業手順と同様であるため、説明は省略する。
前述したように、バルーンカバー100に取り付けられたスタイレット10は、当該スタイレット10の湾曲部30がバルーンカバー100に対して作用させる機械的な固定力を解除することにより、バルーンカバー100から容易に取り外す(分離させる)ことができる。このため、リグルーミング用カバー300を使用する際には、バルーンカバー100から取り外したスタイレット10をそのままリグルーミング用カバー300に使い回すことができる。これにより、バルーンカテーテル400を使用する医療現場等においてバルーンカバー100専用のスタイレットとリグルーミング用カバー300専用のスタイレットを別途に準備する手間を省くことが可能になる。
また、スタイレット10は、バルーンカバー100の管壁やリグルーミング用カバー300の管壁を基部20と挟持部33とにより挟み込むことで固定力を作用させる構造を備えている。このため、スタイレット10は、各カバー100、300の内腔111、311の径の相違に関わらず、各カバー100、300からの不用意な離脱が生じることのない十分な固定力を作用させることができる。つまり、スタイレット10は、バルーンカバー100とリグルーミング用カバー300のような内腔の径がそれぞれ異なる複数種類のカバーに対して共用化される場合においても、その固定機能を保つことができる。
なお、ここでは、スタイレット10をバルーンカバー100とリグルーミング用カバー300において共用化した例を説明したが、例えば、スタイレット10は、複数種類のバルーンカバー100に対して共用化することも可能である。このため、バルーンカテーテルの製造現場等においてバルーン径(品種)の異なるバルーンの種類に応じて内腔111の径が異なる複数種類のバルーンカバー100が用いられるような場合に、バルーンカバー100の種類毎に専用のスタイレットを在庫として準備しておく必要がなくなる。これにより、スタイレット10の製造や管理に要するコストの削減を図ることができ、ひいてはスタイレット10を構成部材として含むバルーンカテーテル保管用器具200の製造コストの削減を図ることが可能になる。
次に、バルーンカテーテル組立体500について説明する。
本実施形態において、バルーンカテーテル組立体500は、バルーンカテーテル400、バルーンカテーテル保管用器具200(スタイレット10およびバルーンカバー100)、およびリグルーミング用カバー300によって構成している。
図3には、バルーンカテーテル組立体500が保管および流通される際の状態を示している。
バルーンカテーテル組立体500は、製造後に搬送や保管される際、ピール袋と呼ばれる包装容器510内に収容することができる。また、バルーンカテーテル400の長尺状のシャフト420は、運搬時や保管時の取り扱い性を考慮して、内腔521を備えるホルダチューブ520と呼ばれる所定の管状部材内に巻き回した状態で収容することができる(図4(A)を参照)。シャフト420の先端側に配置されたバルーン410もシャフト420と同様にホルダチューブ520内に収容される。
バルーンカテーテル400は、この未使用の状態において、図4(A)に示すように、バルーン410がバルーンカバー100により覆われて保護される。これにより、バルーン410がホルダチューブ520の内面などと擦れて損傷するのを防止することが可能になる。なお、図4(A)は、図5に示す4A部分の内部を拡大して示した断面図である。
図3に示すように、ホルダチューブ520には、当該ホルダチューブ520を巻き回した状態に維持するための複数の固定具523と、バルーンカテーテル400のハブ450を固定するためのハブ固定具525と、リグルーミング用カバー300を着脱可能に取り付けるための支持具527とが備えられている。
バルーンカテーテル400をホルダチューブ520に挿入する際、まず、バルーン410をバルーンカバー100に挿入する。次に、スタイレット10の基部20をバルーンカテーテル400のガイドワイヤルーメン431に挿通する。そして、基部20の先端部23側に位置する湾曲部30の空間部37内にバルーンカバー100の先端開口部113の開口縁部113aを押し込むことにより、スタイレット10をバルーンカバー100に対して固定する。このようにして、バルーンカテーテル400、バルーンカバー100、およびスタイレット10を相互に固定した後、バルーンカテーテル400の先端側からホルダチューブ520の内腔521内へバルーンカテーテル400を挿入する。
図3に示すように、バルーンカバー100およびスタイレット10により未使用状態のバルーンカテーテル400を保護した状態とし、さらにホルダチューブ520にリグルーミング用カバー300を取り付けた状態で、バルーンカテーテル組立体500を包装容器510に収容してパッケージングすることができる。そして、バルーンカテーテル組立体500を包装容器510に収容してパッケージングした状態で、バルーンカテーテル組立体500を滅菌する。バルーンカテーテル組立体500は、パッケージングした状態で、医療施設や医療現場等に提供することができる。
以上、本実施形態に係るバルーンカテーテル保管用器具200によれば、スタイレット10に形成された湾曲部30とバルーンカバー100との固定および固定の解除を操作することにより、バルーンカバー100に対するスタイレット10の取り付けおよび分離を容易に行うことが可能であるため、バルーンカバー100やリグルーミング用カバー300に対してスタイレット10を共用化して使用することができる。また、スタイレット10を構成する線材に基部20の長手方向に沿う軸線Aに対して外方側に広がった形状を付加して湾曲部30を形成しているため、固定機能を付加することに伴って部品点数の増加が招かれるのを防止することができる。したがって、製造コストの削減および製造作業の簡易化を図ることができ、かつ、利便性の向上されたバルーンカテーテル保管用器具200を提供することが可能になる。
また、スタイレット10は、線材において基部20を構成する部分よりも先端側の部分を基部20の基端部25側へ向けて折り返すように湾曲して構成された折り返し部40を有しており、湾曲部30は、折り返し部40よりも基部20の基端部25側に形成され、基部20の長手方向に沿う軸線Aに対して交差する方向に湾曲し、基部20との間においてバルーンカバー100の管壁に対して挟持力を作用させる挟持部33を有するため、内腔の径が相違するバルーンカバー100やリグルーミング用カバー300に対して共用化する場合であっても、不用意な離脱が生じることのない十分な固定力を作用させることができる。また、スタイレット10に折り返し部40が形成されていることにより、スタイレット10の取扱い時に医療従事者が装着する手袋に破損を生じさせてしまう等の問題が発生するのを未然に防止することが可能になる。
また、スタイレット10は、挟持部33から基端側に向けて延在し、挟持部33から離間するにしたがって基部20の軸線Aから離間するテーパー部35を有するため、バルーンカバー100やリグルーミング用カバー300に対してスタイレット10を固定するに際し、各カバー100、300の管壁を挟持部33と基部20との間へ容易に挿入することが可能になるため、各カバー100、300とスタイレット10の固定を簡単かつ迅速に行うことができる。
また、バルーンカテーテル保管用器具200(バルーンカバー100およびスタイレット10)と、バルーンカテーテル400と、リグルーミング用カバー300と、を有し、スタイレット10をバルーンカバー100およびリグルーミング用カバー300に対して共用化することが可能に構成されたバルーンカテーテル組立体500を提供することが可能になる。
次に、第1実施形態に係るスタイレットの変形例を説明する。各変形例の説明においては、既に説明した部材と同一の部材、同様に構成し得る点等についてはその説明を適宜省略する。また、各変形例の説明において、同様の機能を有する構成等については、一部の変形例において説明し、他の変形例においてはその説明を適宜省略する。
<変形例1>
図5(A)を参照して、変形例1に係るスタイレット610を説明する。
スタイレット610の湾曲部30は、折り返し部40から基部20の基端部25側へ延びる直線部611と、直線部611の基端から基部20の先端部23側へ向けて折り返すように湾曲した第2折り返し部612と、第2折り返し部612に連なるテーパー部613と、テーパー部613に連なる挟持部614と、を有している。
スタイレット610を使用する際においても、挟持部614と基部20とにより、バルーンカバー100の管壁やリグルーミング用カバー300の管壁に対して挟持力をさせることで、各カバー100、300に対してスタイレット610を機械的に固定させることができる。したがって、各カバー100、300に対するスタイレット10の着脱を容易に行うことができ、異なる種類の各カバー100、300の間でスタイレット10を使い回すことができる。
なお、スタイレット610に形成されたテーパー部613は、挟持部614と基部20との間の隙間内へバルーンカバー100等の管壁を挿入する際に、その挿入を補助する機能を有する。また、スタイレット610においては、挟持部614の先端側に位置する端部615が直線部611側を向くように配置されているため、スタイレット610を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等に端部615が突き当たるのを防止することができる。
<変形例2>
次に、図5(B)を参照して、変形例2に係るスタイレット620を説明する。
スタイレット620の湾曲部30は、折り返し部40から基部20の基端部25側へ延びる第1直線部621と、第1直線部621の基端から基部20へ向けて延びる第1テーパー部622と、第1テーパー部622の基端に形成された挟持部623と、挟持部623から基部20の基端部25側へ延びる第2テーパー部624と、第2テーパー部624の基端から基部20の先端部23側へ向けて折り返すように形成された第2直線部625と、を有している。
スタイレット620を使用する際においても、挟持部623と基部20とにより、バルーンカバー100の管壁やリグルーミング用カバー300の管壁に対して挟持力をさせることで、各カバー100、300に対してスタイレット620を機械的に固定させることができる。なお、第2テーパー部624は、挟持部623と基部20との間の隙間内へバルーンカバー100等の管壁を挿入する際に、その挿入を補助する機能を有する。また、スタイレット620においては、第2直線部625が第1直線部621の直線延長上に配置されているため、スタイレット620を取り扱う際に第2直線部625の先端が手指等に突き当たり難くなる。したがって、医療従事者等がスタイレット620を把持等して取り扱う際に手袋等に破損が生じるのを防止することが可能になる。
<変形例3>
次に、図5(C)を参照して、変形例3に係るスタイレット630を説明する。
スタイレット630の湾曲部30は、折り返し部40よりも基部20の基端部25側に形成された第1挟持部631と、第1挟持部631よりも基部20の基端部25側に形成された第2挟持部632と、第2挟持部632よりも基部20の基端部25側に形成されたテーパー部633と、テーパー部633の基端から基部20の先端部23側へ向けて折り返すように形成された直線部634と、を有している。
各挟持部631、632は、スタイレット630を構成する線材を基部20の軸線Aに対して交差する方向に複数回折り返すように波状に湾曲させて形成している。
第1挟持部631と基部20との間の距離(隙間)は、第2挟持部632と基部20との間の距離と異なるように形成されている。このため、管壁の厚さが異なる複数種類のバルーンカバー100やリグルーミング用カバー300に対してスタイレット630を使用する際においても、第1挟持部631と基部20との間、または第2挟持部632と基部20との間に選択的に各カバー100、300の管壁を挿入することで、管壁に対して十分な挟持力を作用させることが可能になる。つまり、スタイレット630は、管壁の厚さが異なるような各カバー100、300に対しても共用化することが可能に構成されており、利便性がより一層向上したものとなっている。
各挟持部631、632の外形形状は、図示するような湾曲した波形状に限定されることはなく、例えば、基部20の軸線に対してジグザグ状(直線状)に交差するような外形形状であってもよい。また、一つのスタイレット630に設けられる挟持部の数は二つに限定されることはなく、三つ以上の挟持部を一つのスタイレット630に設けることも可能である。各挟持部と基部との間の距離も特に限定されず、任意の寸法に設定することができる。
一つのスタイレットに複数の挟持部が備えられる場合、例えば、基部との間の距離が同一に設定された複数の挟持部を備えさせることも可能である。このように構成すると、管壁の複数箇所に対して挟持力を作用させることが可能になるため、各カバーに対するスタイレットの固定力を向上させることができる。さらに、管壁の厚さが異なる複数種類のバルーンカバーやリグルーミング用カバーに対してスタイレットを共用化する機能が損なわれることのないように、例えば、一つのスタイレットに、基部との間の距離が同一に設定された複数の挟持部、および、基部との間の距離が異なるように設定された複数の挟持部を設けることも可能である。
<変形例4>
次に、図6(A)を参照して、変形例4に係るスタイレット640を説明する。
スタイレット640の湾曲部30は、折り返し部40から基部20の基端部25側へ延びる直線部641と、直線部641の基端から基部20の先端部23側向けて折り返すように湾曲した第2折り返し部642と、第2折り返し部642から基部20の先端部23側向けて延びる軸方向挟持部643と、を有している。
軸方向挟持部643は、スタイレット10が未使用の状態において、基部20と略平行に延在している。スタイレット640をバルーンカバー100やリグルーミング用カバー300に固定する際には、軸方向挟持部643は、基部20の軸線に沿う所定の範囲に亘って、基部20との間で各カバー100、300の管壁を挟持する。したがって、前述した実施形態や各変形例において説明した挟持部に比べて、軸方向挟持部643は、各カバー100、300の管壁のより広範な範囲に亘って挟持力を作用させるため、各カバー100、300に対するスタイレット640の固定力を高めることが可能になる。
軸方向挟持部643の軸方向の長さ寸法は、各カバー100、300に対して作用させる挟持力等を考慮して適宜設定することができ、特に限定されるものではない。
スタイレット640に形成された第2折り返し部642は、軸方向挟持部643と基部20との間の隙間内へバルーンカバー100等の管壁を挿入する際に、その挿入を補助する機能を有する。また、スタイレット640においては、軸方向挟持部643の先端644が折り返し部40の内面に向かい合わせるように配置されているため、スタイレット640を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等に先端644が突き当たるのを防止することができる。
<変形例5>
次に、図6(B)を参照して、変形例5に係るスタイレット650を説明する。
スタイレット650の基部20は、長手方向に延在する第1部位651と、第1部位651よりも先端側に形成され、軸心(中心軸)A2が第1部位651の軸心(中心軸)A1に対して偏心した位置に配置される第2部位652と、第1部位651と第2部位652の間に形成された移行部653と、を有している。
スタイレット650の湾曲部30は、折り返し部40から基部20の基端部25側へ延びる直線部654と、直線部654に連なるテーパー部655と、基部20の第2部位652との間でバルーンカバー100の管壁に対して挟持力を作用させる挟持部656と、を有している。
図6(B)に示すように、スタイレット650を使用する際、基部20の第1部位651をバルーンカバー100の内腔111の径方向における中心位置に配置し、基部20の第2部位652をバルーンカバー100の管壁の内面111aに沿わせるように配置することにより、バルーンカバー100の中心位置にバルーンカテーテル400の軸心、つまり内管430の軸心を位置決めして配置することが可能になる。このように配置することで、バルーンカバー100の外径がある程度大きく形成されている場合においても、スタイレット650をバルーンカバー100の管壁側に向けて変形させる量を小さく抑えることができる。これにより、バルーンカテーテル400を保管している最中に、バルーン410がバルーンカバー100の管壁の内面111aに過度な力で押し付けられたり、バルーンカテーテル400の内管430に曲げ癖が付いたりするのを防止することが可能になる。
スタイレット610においては、挟持部656の先端側に位置する端部657が直線部654側を向くように配置されているため、スタイレット650を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等に端部657が突き当たるのを防止することができる。
なお、基部20に設けられる各軸部(第1部位や第2部位)の数、各軸部の軸方向の長さ寸法、各軸部の間に形成される移行部が基部20の軸線に対して傾斜する角度等は、図示したものに限定されることはない。
<変形例6>
次に、図6(C)を参照して、変形例6に係るスタイレット660を説明する。
スタイレット660の湾曲部30は、折り返し部40から基部20の基端部25側へ延びる軸方向挟持部661と、軸方向挟持部661の基端から基部20の先端部23側へ向けて折り返すように湾曲した第2折り返し部662と、を有している。
軸方向挟持部661は、基部20の軸線Aに対して交差するように緩やかに湾曲した形状を有している。スタイレット640をバルーンカバー100やリグルーミング用カバー300に固定する際には、軸方向挟持部661は、基部20の軸線に沿う所定の範囲に亘って基部20との間で各カバー100、300の管壁を挟持する。したがって、各カバー100、300の管壁のより広範な範囲に亘って挟持力を作用させることが可能になるため、各カバー100、300に対するスタイレット660の固定力を高めることが可能になる。
スタイレット660においては、第2折り返し部662の先端663が軸方向挟持部661と略平行に先端側に向けて延びるように形状付けされているため、スタイレット660を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等に先端663が突き当たるのを防止することができる。
<変形例7>
次に、図7(A)を参照して、変形例7に係るスタイレット670を説明する。
スタイレット670の湾曲部30は、折り返し部40から基部20の基端部25側へ湾曲して延びる湾曲移行部671と、湾曲移行部671の基端から延在する第1挟持部672と、第1挟持部672の基端から延在する第2挟持部673と、を有している。
各挟持部672、673は、基部20の軸線を跨ぐように折り返された形状を有している。スタイレット670をバルーンカバー100やリグルーミング用カバー300に固定する際には、各挟持部672、673のそれぞれが基部20との間でバルーンカバー100の管壁を挟持する。したがって、各カバー100、300の管壁の複数箇所に対して挟持力を作用させることが可能になるため、各カバー100、300に対するスタイレット670の固定力を高めることが可能になる。
なお、一つのスタイレット670に設ける挟持部の数は二つに限定されることはなく、三つ以上の挟持部を一つのスタイレット670に設けることが可能である。各挟持部の間の距離(間隔)も特に限定されるものではなく、任意の寸法に設定することができる。
<変形例8>
次に、図7(B)を参照して、変形例8に係るスタイレット680を説明する。
スタイレット680の基部20は、長手方向に延在する第1部位681と、第1部位681よりも先端側に形成され、軸心A2が第1部位681の軸心A1に対して偏心した位置に配置される第2部位682と、第1部位681と第2部位682の間に形成された移行部683と、を有している。
スタイレット680の基部20に第1部位681および第2部位682が形成されているため、前述した変形例5に係るスタイレット650と同様に、バルーンカバー100の中心位置にバルーンカテーテル400の軸心、つまり内管430の軸心を位置決めして配置することが可能になる。これにより、バルーンカテーテル400の各部に不要な負荷が掛かるのを好適に防止しつつ、バルーンカテーテル400を保管することが可能になる。
スタイレット680の湾曲部30には、平面視が略円形となる空間部684が形成されている。空間部684は、その内側に閉じられた閉空間を形成しているため、空間部684内に挿入した各カバー100、300が、スタイレット680の先端側へ抜け出るのを防止することが可能になる。また、スタイレット680の先端の形状が丸みを帯びた形状に形成されているため、スタイレット680を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等にスタイレット680の先端が突き当たるのを防止することができる。
<変形例9>
次に、図7(C)を参照して、変形例9に係るスタイレット690を説明する。
スタイレット690の湾曲部30は、挟持部691と、テーパー部692と、を有している。本変形例に係るスタイレット690は、前述したスタイレット10(図1(A)を参照)と比較して、湾曲部30に湾曲した先端形状を付加している点が相違する。このような形状のスタイレット690を使用する場合においても、挟持部691と基部20との間で各カバー100、300の管壁を挟持させることにより、各カバー100、300に対してスタイレット690を固定することができる。
以上のように複数の変形例に基づいて第1実施形態に係るバルーンカテーテル保管用器具200に備えられるスタイレットの形状例を説明したが、当該スタイレットは、基部と、折り返し部と、挟持部と、を備え、基部と挟持部との間でバルーンカバーの管壁を挟持して固定力(挟持力)を作用させることにより、バルーンカバーに着脱可能に取り付けられ得る限りにおいて形状や各部の構造等は特に限定されるものではない。
<第2実施形態>
次に、図8(A)、(B)を参照して、第2実施形態に係るバルーンカテーテル保管用器具に備えられるスタイレット700を説明する。第2実施形態に係るスタイレット700の説明においては、第1実施形態に係るスタイレットについて説明した構成と同様に構成し得る点や同様の機能を有する点等については、その説明を適宜省略する。
前述した実施形態および各変形例において説明したスタイレットには、バルーンカバー100やリグルーミング用カバー300に対する固定力を作用させる構成として湾曲部(挟持部)が備えられていた(図4(A)を参照)。一方、本実施形態に係るスタイレット700は、挟持部に代えて、バルーンカバー100やリグルーミング用カバー300の管壁の内面に当接して固定力を作用させる当接部731、732が備えられている。
図8(A)に示すように、スタイレット700は、バルーンカテーテル400のガイドワイヤルーメン431に挿通される基部720と、基部720の先端部723側に形成され、バルーンカバー100に対して当該スタイレット700を着脱可能に固定する固定力を作用させる固定部730と、を備えている。また、基部720および固定部730は、線材により一体的に構成されている。
スタイレット700の固定部730は、基部720の長手方向に沿う軸線Aから離間する外方側(X軸方向)に広がって形成された複数の当接部731、732を有する。説明の便宜上、スタイレット700の先端側に位置する当接部から基端側に位置する当接部の順に、第1当接部731、第2当接部732と称する。
第1当接部731および第2当接部732は、基部720の軸線Aと交差する外方側に向けて直線状(ジグザグ状)に突出した直線形状部により構成している。第1当接部731は、基部720の軸線Aに対して対称な位置に配置された一対の突出部731aを有している。同様に、第2当接部732は、基部720の軸線Aに対して対称な位置に配置された一対の突出部732bを有している。
第1当接部731の先端側には、基部720の軸線Aと交差する外方側に向けて凸状に湾曲した抜け防止部733を形成している。抜け防止部733は、スタイレット700を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等にスタイレット700の先端735が突き当たるのを防止する機能や、後述するように、スタイレット700にバルーンカバー100を装着した際に、バルーンカバー100がスタイレット700から抜け出るのを防止する機能を有している。
各当接部731、732は、内腔の径が異なる複数種類のバルーンカバー100、100a、100bに対して、一つのスタイレット700を共用化することが可能となるように、基部720の軸線Aからバルーンカバーの管壁の内面に当接される部分までの距離d6、d7がそれぞれ異なるように形成されている。
図8(B)に示すように、スタイレット700をバルーンカバー100に取り付ける際、抜け防止部733は、バルーンカバー100の先端開口部113の開口縁部113aに基端部の一部が当接されるように配置される。抜け防止部733は、この当接により、バルーンカバー100が先端側へ移動して抜け出るのを防止する。また、バルーンカバー100の先端開口部113から抜け防止部733を露出して配置することにより、スタイレット700をバルーンカバー100から取り外す等の作業を容易に行うことが可能になる。
また、スタイレット700をバルーンカバー100に取り付ける際、第1当接部731をバルーンカバー100内に挿入すると、当該第1当接部731は、バルーンカバー100の管壁の内面111aにその外表面に位置する突出部731aを当接させて、バルーンカバー100との間で摩擦力を作用させる。スタイレット700は、この摩擦力を介してバルーンカバー100に対して固定される。
第2当接部732は、例えば、バルーンカバー100よりも内腔の径が小さいバルーンカバー100aに対してスタイレット700を取り付ける際に、バルーンカバー100aの管壁の内面に突出部732bを当接させる。第2当接部732は、この突出部732bとバルーンカバー100aとの間で摩擦力を作用させることにより、スタイレット700をバルーンカバー100aに対して固定させる。この際、第2当接部732よりも先端側に位置する第1当接部731は、バルーンカバー100aが先端側へ抜け出るのを防止する抜け防止部として機能する。
さらに、第2当接部732は、例えば、バルーンカバー100aよりも内腔の径が小さいバルーンカバー100bに対してスタイレット700を取り付ける際に、バルーンカバー100bの管壁の内面に突出部732bよりも基端側に位置する部分を当接させることにより、バルーンカバー100bとの間で摩擦力を作用させる。これによって、スタイレット700をより内腔の径が小さなバルーンカバー100bに対して固定させることができる。この際、第2当接部732の突出部732bは、バルーンカバー100bが先端側へ抜け出るのを防止する抜け防止部として機能する。
図8(B)を参照して、スタイレット700の長さ寸法(軸方向の全長)L5は、例えば、250〜350mmに形成することができ、固定部730および抜け防止部733が形成された部分の長さ寸法L61は、例えば、3〜30mmに形成することができ、基部20が形成された部分の長さ寸法L62は、例えば、220〜347mmに形成することができる。また、抜け防止部733の最も幅方向(X軸方向)に広がった部分の寸法d5は、例えば、1.5〜3mmに形成することができ、第1当接部731の最も幅方向に広がった部分の寸法d6は、例えば、1.0〜1.5mmに形成することができ、第2当接部732の最も幅方向に広がった部分の寸法d6は、例えば、0.5〜1.0mmに形成することができる。ただし、スタイレット700の各部の寸法は、バルーンカテーテル400、各バルーンカバー100、100a、100b、リグルーミング用カバー300等の仕様(寸法等)に応じて適宜変更し得るものであり、上記の寸法例に限定されることはない。
本実施形態において説明したスタイレット700を使用する際には、固定部730とバルーンカバー100との固定および固定の解除を操作することにより、バルーンカバー100に対するスタイレット700の取り付けおよび分離(着脱)を容易に行うことが可能になる。また、スタイレット700を構成する線材に基部720の長手方向に沿う軸線Aに対して外方側に広がった形状を付加して固定部730を形成しているため、固定機能を付加することに伴って部品点数の増加が招かれるのを防止することができる。このため、第1実施形態において説明した各スタイレットと同様に、スタイレット700を用いることにより、製造コストの削減および製造作業の簡易化を図ることができ、かつ、利便性の向上されたバルーンカテーテル保管用器具200を提供することが可能になる。
また、固定部730がバルーンカバー100の管壁の内面111aに対して外表面を当接させる当接部を有するため、バルーンカバー100内へスタイレット700の固定部730を挿入する簡単な作業により、当接部の外表面とバルーンカバー100の管壁の内面111aとの間に作用する摩擦力を利用してバルーンカバー100に対してスタイレット700を固定すること可能になる。
また、固定部730が、複数の当接部731、732を有し、当接部731、732のそれぞれは、基部720の軸線Aからバルーンカバーの管壁の内面に当接される部分までの距離d6、d7がそれぞれ異なるように形成されているため、内腔の径が異なる複数種類のバルーンカバー100、100a、100bに対して一つのスタイレット700を共用化することができ、利便性がより一層向上したものとなる。
また、各当接部731、732が、基部720の軸線Aと交差する外方側に向けて直線状に突出した直線形状部により構成されているため、スタイレット700の構成部材である線材に対して所定の形状を付加するだけの簡易な作業でスタイレット700に固定機能を備えさせることができる。
なお、各当接部731、732は、例えば、抜け防止部133のような丸みを帯びた湾曲形状に形成することも可能である。
次に、第2実施形態に係るスタイレットの変形例を説明する。各変形例の説明においては、既に説明した部材と同一の部材、同様に構成し得る点等についてはその説明を適宜省略する。また、各変形例の説明において、同様の機能を有する構成等については、一部の変形例において説明し、他の変形例において説明を適宜省略する。
<変形例1>
図9(A)を参照して、変形例1に係るスタイレット810を説明する。
スタイレット810の固定部730は、基部720の軸線Aに対して交差する外方側に向けて直線状に突出した直線形状部によりそれぞれ構成された第1当接部811、第2当接部812、および第3当接部813を有している。
第1当接部811は、第2当接部812よりも幅方向(基部20の軸線から離間する方向)の寸法が大きく形成されており、第2当接部812は、第3当接部813よりも幅方向の寸法が大きく形成されている。スタイレット810は、各当接部811、812、813の寸法関係が上記のように設定されているため、内腔の径が異なる複数のバルーンカバー100、100a、100bに対して共用化することができる。
図9(A)に示すように、スタイレット810の使用に際して、バルーンカバー100にスタイレット810を固定するときは、第1当接部811の外表面をバルーンカバー100の管壁の内面に対して当接させて摩擦力を作用させる。また、バルーンカバー100よりも内腔の径が小さく形成されたバルーンカバー100aにスタイレット810を固定するときは、第2当接部812の外表面をバルーンカバー100aの管壁の内面に対して当接させる。また、バルーンカバー100aよりも内腔の径が小さく形成されたバルーンカバー100bに対してスタイレット810を固定するときは、第3当接部813の外表面をバルーンカバー100bの管壁の内面に対して当接させる。
上記のように、各当接部811、812、813を選択的に使い分けることにより、一つのスタイレット810を内腔の径が異なる複数種類のバルーンカバー100、100a、100bに対して共用化することができる。
なお、スタイレット810の先端815は、基部720に対して直交する方向に延在するように折り曲げた形状を有している。このため、スタイレット810を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等に先端815が突き当たるのを防止することができる。また、スタイレット810の先端815は、第1当接部811を介してスタイレット810をバルーンカバー100に固定した際にバルーンカバー100の抜けを防止する抜け防止部として機能する。
<変形例2>
次に、図9(B)を参照して、変形例2に係るスタイレット820を説明する。
スタイレット820の固定部730は、基部720の軸線Aから離間した位置で基部720と略平行に延在する延在部により構成された第1当接部822および第2当接部824を有している。
第1当接部822と第2当接部824との間には、基部720の軸線Aから離間する方向に傾斜して延びる第1移行部822aが形成されており、第2当接部824と基部720との間には、基部720の軸線Aから離間する方向に傾斜して延びる第2移行部824aが形成されている。
図9(B)に示すように、スタイレット820の使用に際して、バルーンカバー100にスタイレット820を固定するときは、第1当接部822の外表面をバルーンカバー100の管壁の内面111aに対して当接させることにより、摩擦力を作用させる。第1当接部822は、軸方向の所定の範囲に亘ってバルーンカバー100の管壁の内面111aに当接するため、バルーンカバー100に対するスタイレット820の固定力が向上する。また、バルーンカバー100よりも内腔の径が小さく形成されたバルーンカバー100aにスタイレット820を固定するときは、第2当接部824の外表面をバルーンカバー100の管壁の内面111aに対して当接させる。第1当接部822と同様に、第2当接部824は、軸方向の所定の範囲に亘ってバルーンカバー100の管壁の内面111aに当接するため、バルーンカバー100に対するスタイレット820の固定力を向上させることができる。
上記のように、各当接部822、824を選択的に使い分けることにより、一つのスタイレット820を内腔の径が異なる複数種類のバルーンカバー100、100aに対して共用化することができる。
なお、スタイレット820の先端825は、平面視において丸みを帯びた形状に形成している。このため、スタイレット820を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等に先端825が突き当たるのを防止することができる。また、スタイレット820の先端825は、第1当接部822を介してスタイレット820をバルーンカバー100に固定した際にバルーンカバー100の抜けを防止する抜け防止部として機能する。
<変形例3>
次に、図9(C)を参照して、変形例3に係るスタイレット830を説明する。
スタイレット830の固定部730は、当該スタイレット830を構成する線材を、基部720の基端部725側へ折り返して凸状に湾曲させた湾曲形状部からなる当接部831を有している。
図9(C)に示すように、スタイレット830の使用に際して、バルーンカバー100にスタイレット830を固定するときは、当接部831の外表面をバルーンカバー100の管壁の内面111aに対して当接させることにより、摩擦力を作用させる。これにより、バルーンカバー100に対して着脱可能にスタイレット830を取り付けることができる。また、バルーンカバー100よりも内腔の径が小さく形成されたバルーンカバー100aにスタイレット830を固定するときは、当接部831の基端部の外表面をバルーンカバー100aの管壁の内面に対して当接させることにより、バルーンカバー100aに対してスタイレット830を固定することが可能になる。この際、当接部831の先端部は、バルーンカバー100aの抜けを防止する抜け防止部として機能する。
本変形例に示すスタイレット830は、当該スタイレット830を構成する線材を一箇所だけ折り曲げて形状を付加しただけの簡易な構造を有するため、製造作業のより一層の簡略化を図ることができ、併せて製造コストの削減を図ることができる。
なお、スタイレット830の先端835は、基部720の基端部725側へ向けて折り返された湾曲形状を有しているため、スタイレット830を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等に先端835が突き当たるのを防止することができる。
<変形例4>
次に、図9(D)を参照して、変形例4に係るスタイレット840を説明する。
スタイレット840の固定部730は、当該スタイレット840を構成する線材を、基部720の基端部725側へ折り返して凸状に湾曲させた湾曲形状部からなる当接部841を有している。
スタイレット840を使用する際は、当該当接部841の外表面をバルーンカバー100の管壁の内面111aに対して当接させることにより、摩擦力を作用させる。これにより、バルーンカバー100に対して着脱可能にスタイレット840を取り付けることができる。また、バルーンカバー100よりも内腔の径が小さく形成されたバルーンカバー100aにスタイレット840を固定するときは、当接部841の基端部の外表面をバルーンカバー100aの管壁の内面に対して当接させることにより、バルーンカバー100aに対してスタイレット840を固定することが可能になる。
本変形例に示すスタイレット840は、変形例3に係るスタイレット830と同様に、比較的簡易な構造を有するため、製造作業の簡略化および製造コストの削減を図ることができる。
なお、スタイレット840の先端845は、基部720の基端部725側へ向けて折り返された湾曲形状を有しているため、スタイレット840を取り扱う際に、医療従事者等が装着した手袋等に先端845が突き当たるのを防止することができる。また、スタイレット840の先端845は、当接部841を介してスタイレット840をバルーンカバー100に固定した際にバルーンカバー100の抜けを防止する抜け防止部として機能する。
以上のように複数の変形例に基づいて第2実施形態に係るバルーンカテーテル保管用器具200に備えられるスタイレットの形状例を説明したが、当該スタイレットは、基部と、当接部と、を備え、当接部の外表面の少なくとも一部をバルーンカバーの管壁に対して当接させて固定力(摩擦力)を作用させることにより、バルーンカバーに着脱可能に取り付けられ得る限りにおいて形状や各部の構造等は特に限定されるものではない。
なお、説明は省略したが、第2実施形態およびその各変形例に係るスタイレットを、第1実施形態に係るスタイレットと同様に、バルーンカテーテル、バルーンカバー、およびリグルーミング用カバーと組み合わせたものをバルーンカテーテル組立体として提供することも可能である。
以上、複数の実施形態および変形例を通じて本発明に係るバルーンカテーテル保管用器具およびバルーンカテーテル組立体を説明したが、本発明は実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。