JP2016163569A - 水産練り製品用粉末油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、やわらかくふっくらとしたソフトな食感を有する水産練り製品を製造するための粉末油脂組成物を提供する。さらに、口溶けがよくひんやりとした食感の水産練り製品又は火ぶくれの発生が防止された水産練り製品を製造するための粉末油脂組成物を提供する。
【解決手段】次の(a)の条件を満たす粉末状の油脂組成物を含有する、水産練り製品用粉末油脂組成物とする。(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である。
【選択図】図1

Description

本発明は、やわらかくふっくらとしたソフトな食感を有する水産練り製品を製造するための粉末油脂組成物に関する。より詳細には、さらに、口溶けがよくひんやりとした食感の水産練り製品又は火ぶくれの発生が防止された水産練り製品を製造するための粉末油脂組成物に関する。また、前記のごとき水産練り製品を製造する方法にも関する。
水産練り製品は、魚肉のすり身を主原料とし、澱粉等の副原料や食塩等の調味料を加えて摺り作業を行い、得られた生地を成形した後、蒸したり、焼いたり、揚げたりして加熱凝固させたものである。近年、食感を改良するため、大豆蛋白が加えられることもある。当初は増量剤でしかなかったが、ここ20年間で、品質改良剤的要素となり得るように各社メーカーが工夫をして、水産練り製品に大豆蛋白が加えられるようになってきた。さらに、粒状大豆蛋白も水産練り製品を膨潤させたり、又その食感を改良するために加えられるようになってきた。このように、水産練り製品は、食感が重要な要素の食品である。また、水産練り製品は、蒲鉾、さつま揚げ、竹輪、はんぺん等の様々な形態で広く消費者に好まれる食品でもある。最近、消費者の嗜好の多様化を受けて、従前の水産練り製品特有の弾力性の強い歯切れの良い食感だけでなく、やわらかくふっくらとしたソフトな食感も好まれるようになってきた。
従来技術をみると、水産練り製品の品質や食感を改良する目的で、これまで粉末油脂を用いる様々な方法が提案されている。例えば、すり身生地に対して、融点が40〜75℃の粉末状油脂を0.1〜5重量%添加する、水産練り製品の製造法が知られている(特許文献1)。また、粉末油脂を有効成分とし、粉末油脂が常温で固体の油脂50〜99重量部、糖及び/又は糖アルコール1〜50重量部とを含有し、粉末状又は顆粒状である、魚肉すり身用品質改良剤が知られている(特許文献2)。
このようにして製造された水産練り製品はいずれも、弾力性の向上を目的として粉末油脂が添加されており、やわらかくふっくらとしたソフトな食感を有する水産練り製品とは本質的に異なるものである。したがって、やわらかくふっくらとしたソフトな食感を有する水産練り製品を製造できる粉末油脂の開発が求められていた。
特開2000−83627号公報 特許第2967491号公報
本発明の課題は、やわらかくふっくらとしたソフトな食感を有する水産練り製品を製造するための粉末油脂組成物を提供することである。より詳細には、さらに、口溶けがよくひんやりとした食感の水産練り製品又は火ぶくれの発生が防止された水産練り製品を製造するための粉末油脂組成物を提供することである。
本発明者らは、様々な粉末油脂を添加した水産練り製品について鋭意研究を行った結果、特定の条件を満たす粉末油脂組成物を用いることによって、やわらかくふっくらとしたソフトな食感を有する水産練り製品が得られることを見出し、本発明を完成させた。さらに、このような粉末油脂組成物を用いることによって、口溶けがよくひんやりとした食感の水産練り製品又は火ぶくれの発生が防止された水産練り製品が製造できることも見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一態様によれば、以下の(a)の条件を満たす粉末状の油脂組成物を含有する、水産練り製品用粉末油脂組成物を提供することができる。
(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である。
また、本発明の好ましい一態様によれば、前記XXX型トリグリセリドが80〜99質量%と、前記1種以上のX2Y型トリグリセリドの合計が20〜1質量%とを含有する、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、前記xが10〜18から選択される整数であり、前記yが、それぞれ独立して、x+2〜x+10から選択される整数でありかつy≦22である、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、前記xが10〜12から選択される整数であり、前記yが、それぞれ独立して、x+4〜x+8から選択される整数でありかつy≦22である、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、ゆるめ嵩密度が0.1〜0.6g/cm3である、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
さらに、本発明の一態様によれば、上記粉末油脂組成物を含有してなる、水産練り製品を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を水産練り製品の生地中に0.1〜10質量%含有してなる、水産練り製品を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を水産練り製品の生地中に2〜10質量%、より好ましくは4〜10質量%、さらに好ましくは8〜10質量%含有してなる、水産練り製品を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、上記粉末油脂組成物を配合する、水産練り製品の製造法を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を水産練り製品の生地中に0.1〜10質量%配合する、水産練り製品の製造法を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を水産練り製品の生地中に2〜10質量%、より好ましくは4〜10質量%、さらに好ましくは8〜10質量%配合する、水産練り製品の製造法を提供することができる
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を塩摺り工程終了前に配合する、水産練り製品の製造法を提供することができる。
さらに、本発明の一態様によれば、上記粉末油脂組成物を有効成分とする、水産練り製品用の食感改良剤を提供することができる。
本発明によれば、特定の条件を満たす粉末油脂組成物を添加することによって、従前の弾力性が高く歯切れの良い食感でなく、やわらかくふっくらとしたソフトな食感を有する、これまでにない水産練り製品を製造することができる。さらに、このような粉末油脂組成物を用いることによって、口溶けがよくひんやりとした食感の水産練り製品又は火ぶくれの発生が防止された水産練り製品を製造できる。また、揚げ時間を短縮したり、魚肉生地を白くすることもできる。さらに、煮込みのだし汁などの染み込みを良くすることもできる。加えて、粉末油脂組成物が均一に分散することにより、まろやかな風味となり、子供から大人まで幅広い層に受け入れられる水産練り製品を製造することができる。以上により、従来の水産練り製品では満足できなかった人々の需要に応えることができる。特に、本発明の水産練り製品では、口どけよくひんやりとした食感、つまり、独特の冷涼感があるため、夏場の需要低下を抑制し、夏用に好んで食べられる水産練り製品として、新たな需要を創出することが期待できる。
実施例5〜7、比較例5〜7における揚げ蒲鉾の火ぶくれの状態を示す図である。
以下、本発明の「水産練り製品」について順を追って記述する。
本発明において「水産練り製品」とは、魚肉すり身(ここでは場合により、エビ等の甲殻類の水産物のすり身等も含む)を主原料とし、これに食塩、澱粉、砂糖、グルタミン酸ソーダ等の副原料を加え、摺り潰した魚肉生地(以下、水産練り製品の生地ともいう。)を成形し、加熱凝固させた後、適宜、冷却したものであれば、特に制限されない。
魚肉すり身としては、例えば、冷凍すり身がよく用いられ、冷凍すり身は、魚の頭、内臓、尻尾、皮を除き、ペースト状に加工したものである。通常、10kgのブロック状となっており、砂糖(ソルビット)や食塩(リン酸塩)が品質保持のために使用されている。冷凍すり身の原料となる魚の種類は、スケソウダラ、ホキ、ミナミタラ、パシフィックホワイトニング、イトヨリダイ、ホッケ、タチウオ、グチ、ハモ、エソ、連子鯛、黄連子鯛、キチジ等が挙げられる。水産練り製品の主な品種を挙げれば、板付け焼き蒲鉾、板付け蒸し蒲鉾、リテーナー成形板付き蒲鉾、焼通し蒲鉾、ケーシング詰め蒲鉾、竹輪、揚げ蒲鉾(さつま揚げ、天ぷら)、風味蒲鉾(カニ風味蒲鉾、ホタテ風味蒲鉾、エビ風味蒲鉾)、伊達巻等が挙げられる。
<油脂組成物>
本発明は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種類又はそれ以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である条件から選ばれる、油脂組成物に関する。上記2種類のトリグリセリドを上記質量%にて含む当該油脂組成物は、乳化剤、賦形剤等の添加剤を含めることなく、容易に粉末状の油脂組成物となる。本発明の油脂組成物及び粉末油脂組成物については、先に出願したPCT/JP2015/070850(特願2014−149168号)において詳しく説明されているので、詳細は割愛する。なお、前記出願の内容は、本明細書の中に取り込まれる。以下、本発明の油脂組成物及び粉末油脂組成物の特徴を要約して説明する。
<XXX型トリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、その含有量が65〜99質量%である、単一種又は複数種、好ましくは単一種(1種類)のXXX型トリグリセリドを含む。当該XXX型トリグリセリドは、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するトリグリセリドであり、各脂肪酸残基Xは互いに同一である。ここで、当該炭素数xは8〜20から選択される整数であり、好ましくは10〜18から選択される整数、より好ましくは10〜16から選択される整数、更に好ましくは10〜12から選択される整数である。
脂肪酸残基Xは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Xとしては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキジン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸であり、さらに好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸であり、殊更好ましくは、カプリン酸及びラウリン酸である。
XXX型トリグリセリドは、油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、65〜99質量%含まれる。XXX型トリグリセリドの含有量として好ましくは、75〜99質量%であり、より好ましくは80〜99質量%であり、更に好ましくは83〜98質量%であり、特に好ましくは85〜98質量%であり、殊更好ましくは90〜98質量%である。
<X2Y型トリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを1種以上含む。ここで、1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる各脂肪酸残基Xは互いに同一であり、かつXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xとも同一である。当該1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる脂肪酸残基Yの炭素数yはx+2〜x+12でありかつy≦22である条件から選ばれる整数である。炭素数yは、好ましくはy=x+2〜x+10を満たし、より好ましくはy=x+4〜x+8を満たす条件から選ばれる整数である。また、炭素数yの上限値は、好ましくはy≦20であり、より好ましくはy≦18である。本発明の油脂組成物は複数、例えば、2種類〜5種類、好ましくは3〜4種類のX2Y型トリグリセリドを含んでいてもよく、その場合の各X2Y型トリグリセリドの定義は上述の通りである。各X2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yの炭素数yは、上述の範囲内から、各X2Y型トリグリセリドごとにそれぞれ独立して選択される。例えば、本発明の油脂組成物を、トリカプリンとパーム核ステアリン極度硬化油とをエステル交換して製造する場合は、xは共通してx=10であるが、yはそれぞれy=12、14、16及び18である4種類のX2Y型トリグリセリドを含む。
脂肪酸残基Yは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Yとしては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸であり、さらに好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸である。
このX2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yは、1位〜3位の何れに配置していてもよい。
X2Y型トリグリセリドは、油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、35〜1質量%含まれる。X2Y型トリグリセリドの含有量としては、例えば、25〜1質量%であり、好ましくは20〜1質量%であり、より好ましくは17〜1質量%であり、更に好ましくは15〜2質量%であり、殊更好ましくは10〜2質量%である。本発明の油脂組成物に複数のX2Y型トリグリセリドが含まれる場合、上記X2Y型トリグリセリドの量は、含まれるX2Y型トリグリセリドの合計量である。
<その他のトリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上記XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリド以外の、その他のトリグリセリドを含んでいてもよい。その他のトリグリセリドは、複数の種類のトリグリセリドであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。合成油脂としては、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル等が挙げられる。天然油脂としては、例えば、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油等が挙げられる。本発明の油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、その他のトリグリセリドは、1質量%以上、例えば、5〜30質量%程度含まれていても問題はない。その他のトリグリセリドの含有量は、例えば、0〜30質量%、好ましくは0〜18質量%、より好ましくは0〜15質量%、更に好ましくは0〜8質量%である。
<その他の成分>
本発明の油脂組成物は、上記トリグリセリドの他、任意に乳化剤、香料、脱脂粉乳、全脂粉乳、砂糖、デキストリン等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜70質量%、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは0〜30質量%である。その他成分は、その90質量%以上が、平均粒径が1000μm以下である紛体であることが好ましく、平均粒径が500μm以下の紛体であることがより好ましい。なお、ここでいう平均粒径は、レーザー回折散乱法(ISO133201及びISO9276-1)によって測定した値である。
但し、本発明の好ましい油脂組成物は、実質的に油脂のみからなることが好ましい。ここで油脂とは、実質的にトリグリセリドのみからなるものである。また、「実質的に」とは、油脂組成物中に含まれる油脂以外の成分または油脂中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、油脂組成物または油脂を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
<粉末油脂組成物>
本発明の粉末油脂組成物は、上記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の上記油脂組成物を得、この油脂組成物を冷却することにより、噴霧やミル等の粉砕機による機械粉砕等特別の加工手段を採らなくても、粉末状の油脂組成物(粉末油脂組成物)を得ることができる。より具体的には、上記XXX型トリグリセリドと上記X2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を任意に加熱・融解して溶融状態の油脂組成物を得、その後冷却して溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固形物を形成する。得られた該固形物を篩にかける等により外部より軽く衝撃を加えて粉砕する(ほぐす)ことで容易に粉末油脂組成物を得ることができる。後述するように、衣の分散性を考慮した場合、本発明では、低融点タイプの粉末油脂組成物を用いることが好ましい。
<粉末油脂組成物の物性>
本発明の粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。
本発明の粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、例えば実質的に油脂のみからなる場合、0.1〜0.6g/cm3、好ましくは0.15〜0.5g/cm3であり、より好ましくは0.2〜0.4g/cm3である。ここで「ゆるめ嵩密度」とは、粉体を自然落下させた状態の充填密度である。ゆるめ嵩密度(g/cm3)の測定は、例えば、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物の適量を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで求めることができる。また、ゆるめ嵩密度は、(株)蔵持科学器械製作所のカサ比重測定器を使用し、JIS K-6720(又はISO 1060-1及び2)に基づいて測定したカサ比重から算出することもできる。具体的には、試料120mLを、受器(内径40mm×高さ85mmの100mL円柱形容器)の上部開口部から38mmの高さの位置から、該受器に落とす。受器から盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100mL)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めることができる。
ゆるめ嵩密度(g/mL)=A(g)/100(mL)
測定は3回行ってその平均値を取ることが好ましい。
<粉末油脂組成物の製造方法>
本発明の粉末油脂組成物は、以下の工程、
(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である、油脂組成物を調製する工程、
(b)前記油脂組成物を加熱し、前記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の前記油脂組成物を得る任意の工程、
(d)溶融状態の前記油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程、
を含む方法によって製造することができる。
また、上記工程(b)と(d)の間に、工程(c)として粉末生成を促進するための任意工程、例えば(c1)シーディング工程、(c2)テンパリング工程、及び/又は(c3)予備冷却工程を含んでいてもよい。さらに上記工程(d)で得られる粉末油脂組成物は、工程(d)の冷却後に得られる固形物を粉砕して粉末状の油脂組成物を得る工程(e)によって得られるものであってもよい。
(a)油脂組成物の調製工程I
工程(a)で調製される油脂組成物は、上述したとおりのXXX型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とX2Y型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とを、上述した質量%で含有するものである。具体的には、例えば、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)と、1位〜3位に炭素数yの脂肪酸残基Yを有するYYY型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とを別々に入手し、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比で90/10〜99/1にて混合して反応基質を得(ここで、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yはx+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である)、前記反応基質を加熱し、触媒の存在下でエステル交換反応する工程を経て得られる。
(a)油脂組成物の調製工程II
本発明の工程(a)で調製される油脂組成物の製造方法としては、さらに以下に示すようなXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを同時かつ直接合成する方法を挙げることができる。すなわち、本調製工程IIは、XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを得るために、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとを別々に合成してエステル交換するということはせず、双方のトリグリセリドを製造するための原料(脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリン)を、例えば単一の反応容器に投入し、同時かつ直接合成する。
(a)油脂組成物の調製工程III
油脂組成物は、さらに65〜99質量%の範囲外にあるXXX型トリグリセリド及び/または35〜1質量%の範囲外にあるX2Y型トリグリセリドを含む油脂組成物を調製した後、XXX型トリグリセリド又はX2Y型トリグリセリドを更に添加することによって65〜99質量%のXXX型トリグリセリドと35〜1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得てもよい(希釈による油脂組成物の調製)。例えば、50〜70質量%のXXX型トリグリセリドと50〜30質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得た後、所望量のXXX型トリグリセリドを添加して65〜99質量%のXXX型トリグリセリドと35〜1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得てもよい。
(b)溶融状態の前記油脂組成物を得る工程
上記(d)工程の前に、上記工程(a)で得られた油脂組成物は、調製された時点で溶融状態にある場合、加熱せずにそのまま冷却されるが、得られた時点で溶融状態にない場合は、任意に加熱され、該油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の油脂組成物を得る。
ここで、油脂組成物の加熱は、上記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特にXXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドを融解できる温度、例えば、70〜200℃、好ましくは、75〜150℃、より好ましくは80〜100℃であることが適当である。また、加熱は、例えば、0.5〜3時間、好ましくは、0.5〜2時間、より好ましくは0.5〜1時間継続することが適当である。
(d)溶融状態の油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物は、さらに冷却されて粉末油脂組成物を形成する。
ここで、「溶融状態の油脂組成物を冷却」とは、溶融状態の油脂組成物を、当該油脂組成物の融点より低い温度に保つことを意味する。「油脂組成物の融点より低い温度」とは、例えば、当該融点より1〜30℃低い温度、好ましくは当該融点より1〜20℃低い温度、より好ましくは当該融点より1〜15℃低い温度である。溶融状態にある油脂組成物の冷却は、例えばxが8〜10のときは最終温度が、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃、更に好ましくは18〜22℃の温度になるように冷却することによって行われる。冷却における最終温度は、例えばxが11又は12のときは、好ましくは30〜40℃、より好ましくは32〜38℃、更に好ましくは33〜37℃であり、xが13又は14のときは、好ましくは40〜50℃、より好ましくは42〜48℃、更に好ましくは44〜47℃であり、xが15又は16のときは、好ましくは50〜60℃、より好ましくは52〜58℃、更に好ましくは54〜57℃であり、xが17又は18のときは、好ましくは60〜70℃、より好ましくは62〜68℃、更に好ましくは64〜67℃であり、xが19又は20のときは、好ましくは70〜80℃、より好ましくは72〜78℃、更に好ましくは74〜77℃である。上記最終温度において、例えば、好ましくは2時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは6時間〜2日間静置することが適当である。場合によっては、例えばXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの炭素数xが8〜12の場合など、比較的粉体化に時間を要するものは、特に以下の(c)工程を使用しない場合、例えば2〜8日間、具体的には3〜7日間、より具体的には約6日間静置しなければならない場合もある。
(c)粉末生成促進工程
さらに、上記工程(a)又は(b)と(d)との間に、(c)粉末生成を促進するための任意工程として、工程(d)で使用する溶融状態の油脂組成物に対し、シーディング法(c1)、テンパリング法(c2)及び/又は(c3)予備冷却法による処理を行ってもよい。
ここで、シーディング法とは、粉末の核(種)となる成分を溶融状態にある油脂組成物の冷却時に少量添加して、粉末化を促進する方法である。具体的には、例えば、工程(b)で得られた溶融状態にある油脂組成物に、当該油脂組成物中のXXX型トリグリセリドと炭素数が同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を核(種)となる成分として準備する。この核となる油脂粉末を、溶融状態にある油脂組成物の冷却時、当該油脂組成物の温度が、例えば、最終冷却温度±0〜+10℃、好ましくは+5〜+10℃の温度に到達した時点で、当該溶融状態にある油脂組成物100質量部に対して0.1〜1質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部添加することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
テンパリング法とは、溶融状態にある油脂組成物の冷却において、最終冷却温度で静置する前に一度、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば5〜20℃低い温度、好ましくは7〜15℃低い温度、より好ましくは10℃程度低い温度に、好ましくは10〜120分間、より好ましくは30〜90分間程度冷却することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
(c3)予備冷却法とは、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物を、工程(d)にて冷却する前に、工程(a)又は(b)の溶融状態の温度よりも低く、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で一旦予備冷却する方法である。工程(d)の冷却温度より高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2〜40℃高い温度、好ましくは3〜30℃高い温度、より好ましくは4〜30℃高い温度、さらに好ましくは5〜10℃程度高い温度であり得る。前記予備冷却する温度を低く設定すればするほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間を短くすることができる。すなわち、予備冷却法とは、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げるだけで油脂組成物の粉末化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
(e)固形物を粉砕して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(d)の冷却によって粉末油脂組成物を得る工程は、より具体的には、工程(d)の冷却によって得られる固形物を粉砕して粉末油脂組成物を得る工程(e)によって行われてもよい。
詳細に説明すると、まず、上記XXX型トリグリセリドと上記X2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を融解して溶融状態の油脂組成物を得、その後冷却して溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固形物を形成する。空隙を有する固形物となった油脂組成物は、軽い衝撃を加えることで粉砕でき、固形物が容易に崩壊して粉末状となる。
ここで、軽い衝撃を加える手段は特に特定されないが、振る、篩に掛ける等により、軽く振動(衝撃)を与えて粉砕する(ほぐす)方法が、簡便で好ましい。
<粉末油脂組成物に含まれるその他の成分>
本発明の粉末油脂組成物は、任意に乳化剤、タンパク質、澱粉、酸化防止剤等のその他の成分を含んでいてもよい。例えば、粉末油脂組成物に対し、乳化作用のあるものを加えることによって、粉末油脂組成物の水系への分散性を向上させることができる。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜70質量%、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは0〜30質量%である。
但し、本発明の好ましい粉末油脂組成物は、実質的に油脂のみからなることが好ましい。ここで油脂とは、実質的にトリグリセリドのみからなるものである。また、「実質的に」とは、粉末油脂組成物中に含まれる油脂以外の成分または油脂中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、油脂組成物または油脂を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
<粉末油脂組成物の含有量>
本発明の水産練り製品は、水産練り製品の生地の全質量を100質量%としたときに、水産練り製品の生地中に上記粉末油脂組成物を0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜10質量%含有する。0.1質量%未満では、やわらかくふっくらとしたソフトな食感でない。一方、10質量%を超えると、エグ味が出てしまい好ましくない。さらに、8質量%以上であると、魚肉生地(水産練り製品の生地)が白くなるため、白度が好まれる水産練り製品である場合は、8〜10質量%で含有させることが好ましい。
また、粉末油脂組成物Aを用いる場合、4質量%以上であると、口溶けがよくひんやりとした食感、つまり、独特の冷涼感が得られるので、4〜10質量%で含有させることが好ましい。一方、粉末油脂組成物Bを用いる場合、2質量%以上であると、火ぶくれ防止効果が得られるので、2〜10質量%で含有させることが好ましい。
なお、上記粉末油脂組成物は水産練り製品の製造過程で溶けてしまうので、上記粉末油脂組成物に代えて、溶融状態の上記油脂組成物を加えることも可能である。当該油脂組成物の含有量は上記粉末油脂組成物で定義したのと同様である。
<水産練り製品に含まれる食用油脂>
本発明の水産練り製品は、上記粉末油脂組成物のほか、任意の食用油脂を含むことができる。このような食用油脂としては、食用油、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングなどが挙げられ、これらの一種又は2種以上を併用することができる。前記食用油脂の原料としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、ココアバター等やこれらの混合油、加工油脂等を使用することができる。これら食用油脂の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜100質量%、好ましくは0〜75質量%、より好ましくは0〜50質量%である。
<水産練り製品に含まれる糖又は糖アルコール>
本発明の水産練り製品においては、蛋白質の冷凍変性防止等の品質保持を目的として、好ましくは糖又は糖アルコールが添加される。使用可能な糖又は糖アルコールとしては、砂糖、ブドウ糖、麦芽糖、果糖、乳糖、オリゴ糖、水飴、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、還元オリゴ糖などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。特に、砂糖やソルビトールを含んでいることが好ましい。本発明の水産練り製品に含まれる糖又は糖アルコールの含量は、品質保持効果を見ながら、当業者であれば適宜決定できる。例えば、水産練り製品の生地100質量%に対して、好ましくは0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは3〜8質量%である。
<水産練り製品に含まれる食塩>
本発明の水産練り製品においては、特有の弾力性を出すため、好ましくは食塩が添加される。通常、水産練り製品の生地全体の1〜4質量%程度添加している。これを塩摺りすることによって、足の強い魚肉練り製品が得られる。これは食塩によって魚肉すり身に含まれる筋原繊維タンパク質が溶出し、これが摺り潰し作用によって破壊された魚肉の組織と混ざり合い、この混合物が加熱されることによって足の強い魚肉練り製品となることによる。
<水産練り製品に含まれる澱粉>
本発明の水産練り製品においては、食感の補強、呈味の補強等のために、好ましくは澱粉が添加される。澱粉は、水産練り製品における、足の補強剤、増量剤、又は離水防止剤としての機能が期待されており、多く製品において使用されているものである。澱粉は、通常水産練り製品の生地全体の2〜10質量%程度添加されているが、あまり澱粉の添加量が多いと、水産練り製品がおいしくなくなると考えられている。澱粉としては、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉等の天然澱粉が用いられるが、水産練り製品に、耐熱性、煮込み耐性、冷凍耐性、経時安定性を十分に持たせるためには、澱粉に物理化学的処理を加えた加工澱粉を使用することが好ましい。このような加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸架橋澱粉、湿熱処理タピオカ澱粉等が挙げられる。
<水産練り製品に含まれるその他の副原料>
本発明の水産練り製品においては、更に効果を上げるために、水産練り製品に一般的に配合されるその他の副原料をあわせて使用することができる。具体的には、例えば、グルタミン酸ソーダ、味醂、卵白、大豆蛋白、大豆粒状蛋白、縮合リン酸塩などに加え、乳化剤、増粘多糖類、保存料、調味料、起泡剤、膨張剤、着色料、香料、食物繊維などを適宜使用することができる。もちろん、野菜類、肉類、魚介類なども使用することができる。
本発明の水産練り製品に加える水は通常の水であればよく、特に限定されない。水は水産練り製品に含まれる原材料の配合量によって、適宜、調節して添加することができる。
<本発明の水産練り製品の製造法>
本発明の水産練り製品の製造は、魚肉すり身の入手から始まる。市販の冷凍魚肉すり身を用いればよいが、念のため、魚肉すり身の製造法について述べる。まず原料の魚の頭部、内臓、皮等を除き、洗浄した後、採肉機にかけて、肉を採取する。次に、採取した魚肉の約6〜7倍量の水を用いて、1〜5回程度水晒しを行う。なお、晒し用の水に食塩を加えることもできる。水晒しした魚肉をプレスし脱水し、筋取りをした後、サイレントカッター又は摺り潰し機で摺り、魚肉すり身を得る。その後、魚肉すり身は冷凍され、通常、冷凍すり身となる。
本発明の水産練り製品の製造において、摺り工程は3工程に分かれている。まず、粗摺り工程では、冷凍すり身を細かくし、−2℃〜0℃まで持っていく。これが終了したら、次に塩摺り工程を行う。塩摺り工程では、食塩を添加して、魚肉中の塩溶性蛋白質を溶出させ、全体がペースト状になるまで摺り込んでいく。このとき温度は約5℃である。これが終わったら次に本摺り工程を行う。本摺り工程では、水、砂糖、澱粉、調味料等を添加して、魚肉生地を仕上げる。このとき温度は15℃以下となるようにしなければならない。
本発明においては特定の粉末油脂組成物が添加されるが、基本的に、塩摺り工程終了前に添加することが好ましい。その理由は、本摺り工程で添加すると、混合しにくいからである。他の油脂は、他の調味料等と一緒に本摺り工程で添加することができる。
次に、成形工程を行うが、例えば、板付け(例えば、板付蒲鉾)、竹や笹への巻き付け(例えば、竹輪)、簀巻き、型枠に入れる(例えば、天ぷら、はんぺんなど)、丸めてボール状にする、スティック状にする、延展してシート状にするか、または切断してスライス状にするなどの方法を用いることができる。形状としては、特に制限されないが、ボール状、シートまたはスライス状、スティック状、棒状等を例示することができる。なお、成形にあたっては、押出し成形装置、ドラム成形装置、プレス成形装置などの各種食品成形装置を使用することもできる。
次に、加熱工程を行うが、水産練り製品の中心温度を75℃以上、好ましくは95℃以上にする方法であれば、特に制限されない。加熱方法としては、水産練り製品の種類に応じて、蒸煮(蒸気・熱風加熱を含む)(例えば、蒸し蒲鉾、焼板蒲鉾、す巻、かに風味蒲鉾)、焙焼(あぶり焼き、蒸し焼き)(例えば、焼き蒲鉾、竹輪、笹蒲鉾、伊達巻き、かに風味蒲鉾)、および湯煮(はんぺん、つみれ、なると)、油揚げ(揚げ蒲鉾)等を挙げることができる。
最後に、冷却工程を行うが、当該冷却工程は、細菌が繁殖しない条件下での冷却工程であれば、特に制限されず、常法に従って行うことができる。例えばコンベア式フリーザーまたはバッチ式フリーザーなどのフリーザーを用いて、0℃で15分間程度冷却し、製品の中心温度が10℃以下になるまで冷却することが好ましい。
<水産練り製品用食感改良剤>
ところで、以上述べたように、本発明に用いる粉末油脂組成物は、水産練り製品の食感をやわらかくふっくらとしたソフトな食感のものにするから、本発明は、上記粉末油脂組成物を有効成分とする、水産練り製品用食感改良剤にも関する。以下に示すように、本発明の水産練り製品用食感改良剤を魚肉生地に配合することにより、水産練り製品をやわらかくふっくらとしたソフトな食感にするから、食感改良効果を達成することができる。
本発明の水産練り製品用食感改良剤は、上述の粉末油脂組成物を含有する。本発明の水産練り製品用食感改良剤は、少量で効果を発揮するため、上記の粉末油脂組成物を、好ましくは60質量%以上含有し、より好ましくは80質量%以上含有し、さらに好ましくは100質量%以上含有する。
また、本発明の水産練り製品用食感改良剤は、有効成分であると上述した粉末油脂組成物を含有したものであればよく、この他に本発明の効果を損なわない範囲で、大豆油、菜種油などの油脂、デキストリン、澱粉等の賦形剤、品質改良剤等の他の成分を含有させたものであってもよい。
但し、本発明の好ましい水産練り製品用食感改良剤は、実質的に当該粉末油脂組成物のみからなることが好ましい。また「実質的に」とは、水産練り製品用食感改良剤中に含まれる粉末油脂組成物以外の成分が、水産練り製品用食感改良剤を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
<原料油脂>
(1)粉末油脂組成物A(融点約28℃):
〔x=10、y=18、テンパリング法〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物60gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:94.0質量%、X2Y型:5.2質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm3、平均粒径116μm)。このようにして製造した粉末油脂組成物を以下の実施例で用いた。
(2)粉末油脂組成物B(融点約44℃)
〔x=12、y=18、テンパリング法〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)38.8g(0.421mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))26.2g(0.092mol)とラウリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))271.3g(1.354mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のラウリン酸を220℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を242g得た(XXX型:78.3質量%、X2Y型:19.2質量%)。得られた反応物60gとトリラウリン(日清オイリオグループ株式会社製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:93.1質量%、X2Y型:5.8質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、28℃恒温槽にて0.5時間冷却した後、35℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm3、平均粒径130μm)。このようにして製造した粉末油脂組成物を以下の実施例で用いた。
ここで、ゆるめ嵩密度は、(株)蔵持科学器械製作所のカサ比重測定器を使用し、JIS K-6720(又はISO 1060-1及び2)に基づいて測定したカサ比重から算出した。具体的には、試料120mLを、受器(内径40mm×高さ85mmの100mL円柱形容器)の上部開口部から38mmの高さの位置から、該受器に落とした。続いて、受器から盛り上がった試料をすり落とし、受器の内容積(100mL)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めた。
ゆるめ嵩密度(g/mL)=A(g)/100(mL)
測定は3回行って、その平均値を測定値とした。
ここで、平均粒径は、日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201、ISO9276-1)に基づいて測定した。
(3)キャノーラ油
キャノーラ油(日清オイリオグループ株式会社製:日清キャノーラ油)
<その他の原材料>
実施例で用いたその他の原材料はすべて市販のものである。例を挙げれば、以下のとおりである。
(1)イトヨリ鯛A
イトヨリ鯛A(Starfish Co.,Ltd.製)
(2)笹谷2級
笹谷2級(株式会社笹谷商店製)
[実施例1〜4]
<粉末油脂組成物Aを用いた揚げ蒲鉾の製造>
下記表1〜4の配合に従って、実施例1〜4、比較例1〜4の揚げ蒲鉾を製造した。それぞれ、油脂は2質量%、4質量%、8質量%、10質量%添加されている。
具体的には、市販の冷凍魚肉すり身(イトヨリ鯛A、笹谷2級)を得て、−3℃前後で解凍した。この冷凍すり身を1/6〜1/8のブロック状にカットし、すり鉢で粗摺りを行った。粗摺り終了後、−2℃〜0℃になった状態で、食塩を加え、塩摺りを行った。塩摺り終了まぢかに、本発明の粉末油脂組成物A(実施例)を添加した(なお、比較例のキャノーラ油は次の本摺り工程で添加した)。次に、塩摺り作業が終了して、温度帯が5℃〜8℃になった時に、水、馬鈴薯澱粉、砂糖、グルタミン酸ソーダを加えて、本摺り工程を行った。得られた魚肉生地(水産練り製品の生地)を40gずつ取り、木型の型枠に入れて成形した。それを160℃〜170℃の油で揚げた(製品の中心温度は82℃以上)。最後に、製品の中心温度が10℃以下となるようにフリーザーで冷却した。以上により、揚げ蒲鉾を製造した。なお、表中(%)は小数点第3位を四捨五入した値を表示している。
<揚げ蒲鉾の評価>
上記で製造した、実施例1〜4と比較例1〜4の揚げ蒲鉾について、以下の評価方法に従って評価した。
<揚げ蒲鉾の評価方法>
(1)食感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。
○:やわらかくふっくらとしたソフトな食感がある
△:上記と比べてソフト感に欠け、やや噛み応えのある弾力性がある
×:噛み応えのあるしっかりとした弾力性がある
(2)冷涼感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した
○:冷涼感が感じる
△:冷涼感をやや感じる
×:冷涼感を感じない
(3)揚げ時間の短縮の評価方法
以下の基準に従って、評価した
○:揚げ時間が30秒以上短縮される
×:揚げ時間が30秒以上短縮されない
表1〜4の結果から明らかであるように、本発明の粉末油脂組成物Aを用いて製造した揚げ蒲鉾(実施例1〜4)は、キャノーラ油で製造した従来のもの(比較例1〜4)と比較して、やわらかくふっくらとしたソフトな食感があり、ある程度、弾力性を抑えた適度に歯切れの良い食感が得られた。従前の水産練り製品には見られない新たな食感である。さらに、本発明の粉末油脂組成物Aを4質量%以上用いた場合は、口溶けが良くひんやりとした、独特の冷涼感のある、水産練り製品が得られることも新たに判明した。このような冷涼感のある水産練り製品はこれまでに存在しないものであり、驚くべき結果であった。また、意外にも、本発明の粉末油脂組成物Aを用いた場合には、比較例に対して、揚げ時間が30秒以上も短縮されることが判明した(詳細は省略)。これは、水産練り製品を工業的に生産する上で、極めて重要な特徴となり得るものである。なお、本発明の粉末油脂組成物Aを8質量%以上添加すると、魚肉生地が白くなり、白度が求められる水産練り製品においては極めて大きな利点がある(詳細は省略)。
[実施例5〜7]
<粉末油脂組成物Bを用いた揚げ蒲鉾の製造>
下記表5〜7の配合に従って、実施例5〜7、比較例5〜7の揚げ蒲鉾を製造した。それぞれ、油脂が2質量%、5質量%、7質量%添加されている。
ここでは、本発明の粉末油脂組成物Bを用いた以外は、上記実施例1〜4及び比較例1〜4と同様に揚げ蒲鉾を製造した。なお、表中(%)は小数点第3位を四捨五入した値を表示している。
<揚げ蒲鉾の評価>
上記で製造した、実施例5〜7と比較例5〜7の揚げ蒲鉾について、以下の評価方法に従って評価した。
<揚げ蒲鉾の評価方法>
(1)食感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。
○:やわらかくふっくらとしたソフトな食感がある
△:上記と比べてソフト感に欠け、やや噛み応えのある弾力性がある
×:噛み応えのあるしっかりとした弾力性がある
(2)火ぶくれの評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した
○:火ぶくれの発生が少ない
△:やや火ぶくれが発生する
×:火ぶくれが多く発生する
表5〜7の結果から明らかであるように、本発明の粉末油脂組成物Bを用いて製造した場合の揚げ蒲鉾(実施例5〜7)は、キャノーラ油で製造した従来のもの(比較例5〜7)と比較して、やわらかくふっくらとしたソフトな食感があり、ある程度、弾力性を抑えた適度に歯切れの良い食感が得られた。従前の水産練り製品には見られない新たな食感である。さらに、キャノーラ油を2質量%以上用いた場合は、火ぶくれの発生が発生し、見た目に美しくない水産練り製品となってしまうが、本発明の粉末油脂組成物Bを2質量%以上用いた場合は、火ぶくれが発生せず、見た目にも美しい水産練り製品が得られることが判明した(図1)。

Claims (13)

  1. 以下の(a)の条件を満たす粉末状の油脂組成物を含有する、水産練り製品用粉末油脂組成物。
    (a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である。
  2. 前記XXX型トリグリセリドが80〜99質量%と、前記1種以上のX2Y型トリグリセリドの合計が20〜1質量%とを含有する、請求項1に記載の粉末油脂組成物。
  3. 前記xが10〜18から選択される整数であり、前記yが、それぞれ独立して、x+2〜x+10から選択される整数でありかつy≦22である、請求項1または2に記載の粉末油脂組成物。
  4. 前記xが10〜12から選択される整数であり、前記yが、それぞれ独立して、x+4〜x+8から選択される整数でありかつy≦22である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末油脂組成物。
  5. ゆるめ嵩密度が0.1〜0.6g/cm3である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末油脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末油脂組成物を含有してなる、水産練り製品。
  7. 前記粉末油脂組成物を水産練り製品の生地中に0.1〜10質量%含有してなる、請求項6に記載の水産練り製品。
  8. 前記粉末油脂組成物を水産練り製品の生地中に2〜10質量%、より好ましくは4〜10質量%、さらに好ましくは8〜10質量%含有してなる、請求項7に記載の水産練り製品。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末油脂組成物を配合する、水産練り製品の製造法。
  10. 前記粉末油脂組成物を水産練り製品の生地中に0.1〜10質量%配合する、請求項9に記載の水産練り製品の製造法。
  11. 前記粉末油脂組成物を水産練り製品の生地中に2〜10質量%、より好ましくは4〜10質量%、さらに好ましくは8〜10質量%配合する、請求項10に記載の水産練り製品の製造法。
  12. 前記粉末油脂組成物を塩摺り終了前に配合する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の水産練り製品の製造法。
  13. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末油脂組成物を有効成分とする、水産練り製品の食感改良剤。
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