JP2016160501A - 加工性に優れた熱延鋼板とその製造方法 - Google Patents

加工性に優れた熱延鋼板とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】仕上げ圧延後の熱延鋼板の板幅方向及び/又は長手方向における材質を極力均一化し、加工性を高める。【解決手段】熱間圧延終了後、300℃以下に冷却した熱延鋼板を、巻き取る直前に、400℃以上750℃以下の温度域で保熱することにより、炭化物及びの第二相の1種又は2種が結晶粒内に分散したミクロ組織、又は、熱間圧延終了後、300℃以下に冷却して巻き取った熱延鋼板を、巻き戻す工程で、巻き取る直前に、400℃以上Ac3点+20℃以下の温度域で保熱することにより、炭化物及び第二相の1種又は2種が結晶粒内に分散したミクロ組織を有することを特徴とする加工性に優れた熱延鋼板。【選択図】図1

Description

本発明は、加工性に優れた熱延鋼板とその製造方法に関する。
自動車や産業機械の構造材、その他各種用途の基礎材として幅広く使用されている熱延鋼板は、通常、加熱炉で、所定の温度に加熱されたスラブを粗圧延機で粗圧延し、次いで、複数の圧延スタンドからなる仕上げ圧延機で所要板厚に圧延し、圧延後、冷却帯で、所要温度に冷却した後、巻取機で巻き取って製造されている。
巻き取った熱延鋼板には、板幅方向及び/又は長手方向の機械的性質(特に、加工性)が均等であることが求められるが、実際には、その製造過程において、鋼板の板幅方向及び/又は長手方向に温度差が生じて材質が均質にならず、均一な機械的性質が得られないのが実情である。
特に、粗圧延中におけるスラブの長手方向端部及び幅方向端部の温度低下が、仕上げ圧延中の熱延鋼板の耳波や中伸びの原因となる。耳波や中伸びが生じないまでも、板幅方向及び/又は長手方向において均一な材質が得られず、均一な機械的性質、特に加工性が得られない。
これまで、スラブの幅方向及び/又は長手方向の温度分布の不均一に起因する熱延鋼板の材質の不均一を解消する技術が幾つか提案されている。
例えば、特許文献1には、加熱炉で加熱したスラブを粗圧延機で粗圧延し、仕上げ圧延機で仕上げ圧延する鋼板の熱間圧延方法において、粗圧延機と仕上げ圧延機との間に、板幅以上の鉄心幅のトランスバース型誘導加熱装置を、鋼板の上下に対向させて傾動可能に配設し、該トランスバース型誘導加熱装置の上、下、又は、両方を板幅方向に傾動することにより、粗圧延された鋼板の幅方向温度分布が均一化するように加熱昇温量を調整する鋼板の熱間圧延方法が提案されている。
特許文献2には、加熱炉で加熱したスラブを粗圧延し、仕上げ圧延する鋼板の熱間圧延方法において、鋼板幅より幅狭の鉄心幅を有するトランスバース型誘導加熱装置により、鋼板中央低温部だけを加熱し、かつ、鋼板の幅より幅広の鉄心幅を有するトランスバース型誘導加熱装置により、鋼板中央部よりもエッジ部の昇温量が大きい加熱を行う幅方向材質特性のばらつきがない鋼板の熱間圧延方法が提案されている。
特許文献3には、スキッドレールに載置されたスラブを加熱炉で加熱して、これを粗圧延機及び仕上げ圧延機により熱間圧延する熱間圧延装置において、上記粗圧延機から搬出された鋼板における幅方向の温度分布を検出する温度分布検出手段と、上記温度検出手段により温度検出された鋼板の幅方向の中心位置からワークサイド側を幅方向にシフトしながら加熱する第1の誘導加熱コイルと、当該中心位置からドライブサイド側を幅方向にシフトしながら加熱する第2の誘導加熱コイルとを少なくとも有する誘導加熱手段と、上記温度検出手段により検出された温度分布に基づいて、上記誘導加熱コイル毎に電力とシフト量を演算する演算手段と、上記演算手段により上記誘導加熱コイル毎に演算された電力とシフト量に基づいて、上記各誘導加熱コイルによる加熱動作を互いに独立して制御する加熱制御手段とを備える熱間圧延装置が提案されている。
特開2004−034069号公報 特開2004−050183号公報 特開2007−237240号公報
特許文献1〜3の技術は、仕上げ圧延に供する鋼板の温度分布を均一化し、仕上げ圧延後の鋼板の材質の均質化を図る技術であるが、実際には、仕上げ圧延時に生じる圧延速度の変動によって、仕上げ圧延に供する鋼板の温度分布を、板幅方向及び/又は長手方向において、狙い通りに均一化することは難しい。
特に、仕上げ圧延後の熱延鋼板において、ランアウトテーブル上で実施される冷却条件を制御し、板幅方向及び/又は長手方向における材質を均一にして、機械的性質、特に、加工性を均等化することは困難である。
そこで、本発明は、従来技術の現状に鑑み、仕上げ圧延後の熱延鋼板の板幅方向及び/又は長手方向における材質を極力均一化し、加工性を高めることを課題とし、該課題を解決する熱延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。本発明者らは、仕上げ圧延後、巻き取るまでの間、又は、巻取り後に、熱延鋼板に何らかの熱処理を施せば、ミクロ組織を改善し、材質を均一化できると発想し、仕上げ圧延後、冷却帯で冷却した熱延鋼板に加熱処理を施し、材質及び機械的性質を調査した。
その結果、仕上げ圧延後、冷却帯で冷却した熱延鋼板に加熱処理を施せば、熱延鋼板の板幅方向及び長手方向の材質が均一化し、加工性が顕著に向上することが判明した。この点については後述する。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)熱間圧延終了後、300℃以下に冷却した熱延鋼板を、巻き取る直前に、400℃以上750℃以下の温度域で保熱することにより、炭化物及びの第二相の1種又は2種が結晶粒内に分散したミクロ組織を有することを特徴とする加工性に優れた熱延鋼板。
(2)熱間圧延終了後、300℃以下に冷却して巻き取った熱延鋼板を、巻き戻す工程で、巻き取る直前に、400℃以上Ac3点+20℃以下の温度域で保熱することにより、炭化物及び第二相の1種又は2種が結晶粒内に分散したミクロ組織を有することを特徴とする加工性に優れた熱延鋼板。
(3)前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.001〜0.30%、Si:0.20〜2.00%、Mn:0.50〜3.00%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.10%、N:0.01%以下、O:0.01%以下を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の加工性に優れた熱延鋼板。
(4)前記(1)又は(3)に記載の加工性に優れた熱延鋼板を、連続熱延工程で製造する方法であって、熱間圧延終了後、熱延鋼板を300℃以下に冷却し、巻き取る直前に、急速加熱で、400℃以上750℃以下の温度域に加熱して5秒以下保熱し、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取ることを特徴とする加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
(5)前記(2)又は(3)に記載の加工性に優れた熱延鋼板を、連続熱延工程で製造する方法であって、熱間圧延終了後、熱延鋼板を300℃以下に冷却し、そのまま巻き取り、その後、巻き戻す工程で、巻き取る直前に、急速加熱で、400℃以上Ac3点+20℃以下の温度域に加熱して5秒以下保熱し、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取ることを特徴とする加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
(6)前記巻き戻す工程での巻取り前の冷却過程において、300℃以上500℃以下の温度域で、0.1秒以上300秒以下保熱し、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取ることを特徴とする前記(5)に記載の加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
(7)前記急速加熱を100℃/秒以上の加熱速度で行うことを特徴とする前記(4)〜(6)のいずれかに記載の加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、熱延鋼板のミクロ組織における炭化物の分散態様を制御して、板幅方向及び長手方向における加工性が優れた熱延鋼板を歩留り良く製造することができる。
熱延鋼板の製造工程を示す図である。 熱履歴の一例を示す図である。
本発明の基本思想は、熱間圧延終了後の熱延鋼板に、冷却後、所要の熱履歴を加え、炭化物及び第二相の1種又は2種の結晶粒内での分散態様を均一化して、熱延鋼板の加工性を改善することである。
上記基本思想を実現する、本発明の加工性に優れた熱延鋼板(以下「本発明熱延鋼板」ということがある。)は、
(i)熱間圧延終了後、300℃以下に冷却した熱延鋼板を、巻き取る直前に、400℃以上750℃以下の温度域で保熱することにより、炭化物及び第二相の1種又は2種が結晶粒内に分散したミクロ組織を有する、又は、
(ii))熱間圧延終了後、300℃以下に冷却して巻き取った熱延鋼板を、巻き戻す工程で、巻き取る直前に、400℃以上Ac3点+20℃以下の温度域で保熱することにより、炭化物及び第二相の1種又は2種が結晶粒内に分散したミクロ組織を有する
ことを特徴とする。
また、本発明の加工性に優れた熱延鋼板の製造方法(以下「本発明製造方法」ということがある。)は、本発明熱延鋼板を、連続熱延工程で製造する方法であって、
(i)熱間圧延終了後、熱延鋼板を300℃以下に冷却し、巻き取る直前に、急速加熱で、好ましくは100℃/秒以上の加熱速度で、400℃以上750℃以下の温度域に加熱して5秒以下保熱し、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取る、又は、
(ii)熱間圧延終了後、熱延鋼板を300℃以下に冷却し、そのまま巻き取り、その後、巻き戻す工程で、巻き取る直前に、急速加熱で、好ましくは100℃/秒以上の加熱速度で、400℃以上Ac3点+20℃以下の温度域に加熱して5秒以下保熱し、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取る
ことを特徴とする。
さらに、本発明製造方法は、
(iii)前記(ii)の巻き戻す工程での巻取り前の冷却過程において、300℃以上500℃以下の温度域で、0.1秒以上300秒以下保熱し、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取る
ことを特徴とする。
まず、本発明製造方法について説明する。
図1に、熱延鋼板の製造工程を示す。粗圧延後の粗バーS’に、複数の圧延スタンドF1、F2・・Fnからなる仕上げ圧延機1で仕上げ圧延を施して熱延鋼板Sとし、冷却手段2で冷却した後、巻取機3で巻き取る。
本発明製造方法においては、巻取機3の前に加熱手段4を配置し、巻き取る直前の熱延鋼板を、所要の加熱速度で、所要の加熱温度に加熱して保熱し、熱延鋼板の板厚方向及び長手方向における材質を均質化する。この点が、本発明製造方法の特徴である。
以下、詳細に説明する。
熱間圧延終了後の熱延鋼板を、通常の冷却手段で300℃以下に冷却する。冷却温度が300℃を超えると、次の熱処理(400℃以上750℃以下で保熱、又は、400℃以上Ac3点+20℃以下で保熱)との連携で発現する材質均一化効果の発現程度が不十分となる。好ましくは270℃以下である。
次に、材質均一化効果を得るため、300℃以下に冷却した熱延鋼板を、(i)巻き取る直前に、400℃以上750℃以下に急速加熱するか、又は、(ii)巻き取った後、捲き戻す工程で、巻き取る直前に、400℃以上Ac3点+20℃以下に急速加熱する。
急速加熱手段は、急速加熱が可能な加熱手段が好ましい。急速加熱手段は、応答性のよい電気加熱、例えば、通電加熱や誘導加熱が好ましい。
急速加熱の際の加熱速度は、100℃/秒以上が好ましい。加熱速度が100℃/秒未満であると、加熱装置の加熱帯が長くなり、設備負荷が大きくなり過ぎる。より好ましくは300℃/秒以上である。加熱速度の上限は、特に、限定されないが、1000℃/秒を超えると、電力負荷が大きくなり過ぎるので、加熱速度は1000℃/秒以下が好ましい。より好ましくは900℃/秒以下である。
急速加熱で到達する加熱温度が400℃未満であると、材質均一化効果の発現程度が不十分であるので、加熱温度は400℃以上とする。好ましくは430℃以上である。
300℃以下に冷却した熱延鋼板を巻き取る直前の急速加熱で到達する加熱温度が750℃を超えると、加熱負荷が大きくなり過ぎるので、加熱温度は750℃以下とする。好ましくは720℃である。
400℃以上750℃以下の温度域に急速加熱された熱延鋼板を、その温度域で5秒以下保熱する。保熱が5秒を超えると、結晶粒内において、炭化物及びの第二相の1種又は2種が分散せず、所要のミクロ組織が得られないので、保熱は5秒以下とする。好ましくは3秒以下である。保熱後は、熱延鋼板を、そのまま巻き取るか、又は、冷却して巻き取る。
保熱後、冷却して巻き取る際、冷却速度は50℃/秒以上が好ましい。これは、その後に生じる変態や析出を、より短時間で均一に発現させるためである。一方、冷却速度を300℃/秒以上としても、上記効果が飽和するだけであり、生産性が低下するので、冷却速度は300℃/秒以下が好ましい。
また、300℃以下に冷却した熱延鋼板を巻き取った後の捲き戻す工程で、巻き取る直前の急速加熱で到達する加熱温度の上限は、上記上限の750℃とは異なり、Ac3点を基準として、Ac3点+20℃とする。加熱温度がAc3点+20℃を超えると、加熱負荷が大きくなり過ぎるので、加熱温度はAc3点+20℃以下とする。好ましくは850℃以下である。
400℃以上Ac3点+20℃以下の温度域に急速加熱された熱延鋼板を、その温度域で5秒以下保熱する。保熱が5秒を超えると、結晶粒内において、炭化物及びの第二相の1種又は2種が分散せず、所要のミクロ組織が得られないので、保熱は5秒以下とする。好ましくは3秒以下である。保熱後は、熱延鋼板を、そのまま巻き取るか、又は、冷却して巻き取る。
保熱後、冷却して巻き取る際、冷却速度は50℃/秒以上が好ましい。これは、その後に生じる変態や析出を、より短時間で均一に発現させるためである。一方、冷却速度を300℃/秒以上としても、上記効果が飽和するだけであり、生産性が低下するので、冷却速度は300℃/秒以下が好ましい。
本発明製造方法において、300℃以下に冷却した熱延鋼板を、(i)冷却後、巻き取る直前に400℃750℃以下に急速加熱して保熱する熱処理、又は、(ii)冷却後、巻き取った後の捲き戻す工程で、巻き取る直前、400℃以上Ac3点+20℃以下に急速加熱して保熱する熱処理により、熱延鋼板の板幅方向及び長手方向の材質が均一化し、加工性が顕著に向上する理由について、本発明者らは、次のように推察している。
仕上げ圧延中、熱延鋼板のミクロ組織(結晶粒)内に分散した炭化物及び第二相の1種又は2種が、冷却後の上記熱処理により、より分散して、熱延鋼板の板幅方向及び長手方向における材質が均一化するので、熱延鋼板の加工性が顕著に向上する。
さらに、本発明製造方法においては、300℃以下に冷却した熱延鋼板を巻き取った後の捲き戻す工程において、巻き取る前の冷却過程で、図2に示す熱履歴を、熱延鋼板に施してもよい。
即ち、300℃以下に冷却した熱延鋼板を巻き取った後、捲き戻す工程において、400℃以上Ac3点+20℃以下に急速加熱して保熱する熱処理(図2中、保熱A)の後、巻き取る前の冷却過程で、300℃以上500℃以下の温度域で、0.1秒以上300秒以下保熱する熱処理(図2中、保熱B)を行い、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取ってもよい。
この保熱により、一旦巻き取った熱延鋼板において、炭化物及び第二相の1種又は2種がより分散するので、材質が均一化され、ミクロ組織が適切に制御されるので、熱延鋼板の加工性が顕著に向上する。
保熱温度が300℃未満、又は、保熱時間が0.1秒未満では、変態や析出が充分に進行せず、熱延鋼板の加工性が向上しないので、保熱時間は300℃以上、保熱時間は0.01秒以上が好ましい。より好ましくは350℃以上、10秒以上である。
一方、保熱温度が500℃を超える、又は、保熱時間が300秒を超えると、変態や析出が充分に進行しすぎて、熱延鋼板の加工性が低下するので、保熱温度は500℃以下、保熱時間は300秒以下が好ましい。より好ましくは450℃以下、250秒以下である。
保熱後、冷却して巻き取る際、冷却速度は50℃/秒以上が好ましい。これは、その後に生じる変態や析出を、より短時間で均一に発現させるためである。一方、冷却速度を300℃/秒以上としても、上記効果が飽和するだけで、生産性が低下するので、冷却速度は300℃/秒以下が好ましい。
本発明製造方法においては、300℃以下への冷却、及び、急速加熱と保熱の連携熱処理で、熱延鋼板に、自在に、所要のミクロ組織を作り込み、熱延鋼板の加工性を顕著に向上させることができる。
本発明製造方法では、前述したように、仕上げ圧延後の冷却工程以降において、熱延鋼板に加える熱履歴が重要であるので、本発明製造方法における熱間圧延において、熱間圧延に供する鋼片の加熱温度と粗圧延条件、及び、熱延鋼板の仕上げ圧延条件は、特に、特定の温度、条件に限定されず、通常の温度範囲及び条件範囲で実施し得るが、以下、好ましい条件について説明する。
<加熱温度:1000〜1300℃>
熱間圧延に供する鋼片の加熱温度は、通常の範囲内の1000〜1300℃が好ましい。1000℃未満では、その後の仕上げ圧延において、所要の仕上げ温度を確保できないばかりでなく、スケールの剥離性が劣化し、表面疵の発生が懸念されるので、加熱温度は1000℃以上が好ましい。より好ましくは1050℃以上である。
一方、1300℃を超えると、スケール生成量が多くなり、歩留の低下が懸念されるばかりでなく、製造コストの上昇を招くので、加熱温度は1300℃以下が好ましい。より好ましくは1250℃以下である。
<仕上げ圧延温度:Ar3点〜1000℃>
仕上げ圧延温度も、通常の範囲内のAr3〜1000℃が好ましい。Ar3点未満であると、熱延鋼板のミクロ組織が不均一となり、加工性が劣化するので、仕上げ圧延温度はAr3点以上が好ましい。より好ましくはAr3点+20℃以上である。一方、1000℃を超えると、ミクロ組織が粗大化して、加工性が劣化するので、仕上げ圧延温度は1000℃以下が好ましい。より好ましくは980℃以下である。
次に、本発明熱延鋼板について説明する。
上記連携熱処理で発現する材質均一化効果は、熱延鋼板に熱履歴を付与することにより発現するよる効果であるので、熱延鋼板の成分組成に、直接依らない効果である。それ故、本発明熱延鋼板は、基本的に、特定の成分組成の熱延鋼板に限定されないが、上記材質均一化効果を顕著に確保し得る点で、Cを、質量%で、0.0005〜0.30%を含む熱延鋼板が好ましい。好ましいC量について説明する。なお、以下、%は、質量%を意味する。
<C:0.0005〜0.30%>
Cは、鋼板に要求される強度及び加工性に応じて添加する元素である。0.0005%未満では添加効果が発現しないので、Cは0.0005%以上が好ましい。より好ましくは0.0010%以上である。一方、0.30%を超えると、加工性が低下するので、Cは0.30%以下が好ましい。より好ましくは0.20%以下である。
本発明熱延鋼板は、Cの他、Si:0.20〜2.00%、Mn:0.50〜2.00%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.10%、N::0.01%以下、O:0.01%以下、必要に応じ、Ti、Nb、Mo、V、Cr、Ca、REM、Zr、Cu、Ni及びBの1種又は2以上を合計で0.1%以下を含む熱延鋼板が好ましい。以下に、各元素の限定理由を説明する。
<Si:0.20〜2.00%>
Siは、強度の向上に寄与する元素である。0.20%未満では、添加効果が発現しないでの、Siは0.20%以上が好ましい。より好ましくは0.50%以上である。一方、2.00%を超えると、硬くなりすぎて、加工性が低下するので、Siは2.00%以下が好ましい。より好ましくは1.70%以下である。
<Mn:0.50〜3.00%>
Mnは、強度の向上に寄与する元素である。0.50%未満では、添加効果が発現しないので、Mnは0.50%以上が好ましい。より好ましくは0.80%以上である。一方、3.00%を超えると、硬くなりすぎて、加工性が低下するので、Mnは3.00%以下が好ましい。より好ましくは2.00%以下である。
<P:0.01%以下>
Pは、不純物元素であるので、少ないほど好ましく、0.01%以下が好ましい。より好ましくは0.005%以下である。下限は0%を含むが、0.0001%以下に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
<S:0.01%以下>
Sは、Pと同様に、不純物元素であるので、少ないほど好ましく、0.01%以下が好ましい。より好ましくは0.005%以下である。下限は0%を含むが、0.0001%以下に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
<Al:0.001〜0.10%>
Alは、脱酸のために添加する元素である。0.001%未満であると、添加効果が発現しないので、Alは0.001%以上が好ましい。より好ましくは0.005%以上である。一方、0.10%を超えると、添加効果が飽和するとともに、脱酸生成物が鋼板中に残存し、加工性が低下するので、0.10%以下が好ましい。より好ましくは0.05%以下である。
<N:0.01%以下>
Nは、鋼原料から不可避的に混入する元素であるので、少ないほど好ましく、0.01%以下が好ましい。より好ましくは0.005%以下である。下限は0%を含むが、0.0001%以下に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
<O:0.01%以下>
Oは、鋼板中に不可避的に残留する元素であるので、少ないほど好ましく、0.01%以下が好ましい。より好ましくは0.005%以下である。下限は0%を含むが、0.0001%以下に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
本発明熱延鋼板は、上記元素の他、必要に応じ、Ti、Nb、Mo、V、Cr、Ca、REM、Zr、Cu、Ni及びBの1種又は2以上を、本発明熱延鋼板の特性を阻害しない範囲、例えば、合計で0.1%以下を含有してもよい。
本発明熱延鋼板において、上記成分組成の残部は、Feと不可避的不純物である。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
<実施例1>
表1に示す成分組成の鋳片を連続鋳造で製造し、表2、表3(表2の続き)、及び、表4(表3の続き)に示す熱延−冷却条件で、熱延、冷却、及び、再加熱を行い、そのまま巻き取った。
Figure 2016160501
Figure 2016160501
Figure 2016160501
Figure 2016160501
巻き取った熱延板から、JIS Z 2201に記載の5号試験片を採取し、JIS Z 2241に記載の試験方法に従って引張試験を実施するとともに、結晶粒内においてマイクロビッカース硬度計で硬度:Hv(荷重:100g)を測定し、そのばらつきで、結晶粒内の炭化物の分散状態を評価した。結果を表2〜4に併せて示す。
本発明に従った発明法では、炭化物の析出に起因する硬度のばらつき(Hv-σ)が小さく、その結果、引張強度(MPa)及び伸び(%)のばらつき(σ)が小さい。一方、仕上げ圧延後の熱履歴が本発明の範囲から外れると、炭化物の析出に起因する硬度のばらつき(Hv-σ)が大きくなり、それに伴って、引張強度(MPa)及び伸び(%)のばらつき(σ)が大きくなる。
さらに、C量が本発明の範囲を超えると(表1中、鋼N、参照)、強度が高くなり過ぎて、加工性が劣化するばかりでなく、炭化物の析出が不均一となり、引張強度(MPa)及び伸び(%)のばらつき(σ)が大きい。また、Si量が本発明の範囲を超えると(表1中、鋼O、参照)、炭化物の析出が不均一となり、やはり、引張強度(MPa)及び伸び(%)のばらつき(σ)が大きい。
Mn量が本発明の範囲を超えると(表1中、鋼P、参照)、偏析や析出したMnSの影響を受け、炭化物の析出が不均一となり、やはり、引張強度(MPa)及び伸び(%)のばらつき(σ)が大きい。鋼中のO量が多くなり過ぎると(表1中、鋼Q、参照)、介在物が多くなり過ぎて、引張強度(MPa)や伸び(%)のばらつき(σ)が、発明法におけるばらつき(σ)を超えている。
<実施例2>
表1に示す鋼D及び鋼Mを用い、表5に示す熱延−冷却条件で、板厚:2mmの熱延鋼板を製造し巻き取った。巻き取った熱延鋼板を巻き戻す際に、表5に示す熱履歴で再加熱処理を実施し、1%のスキンパス圧延を実施した。
得られた熱延鋼板から、実施例1と同様に、JIS Z 2201に記載の5号試験片を採取し、JIS Z 2241に記載の試験方法に従って引張試験を実施するとともに、結晶粒内において、マイクロビッカース硬度計で硬度:Hv(荷重:100g)を測定し、そのばらつきで、炭化物の分散状態を評価した。結果を表6(表5の続き)に示す。
Figure 2016160501
Figure 2016160501
本発明に従った発明法では、炭化物の析出に起因する硬度のばらつき(Hv-σ)が小さく、その結果、引張強度(MPa)及び伸び(%)のばらつき(σ)が小さい。一方、一旦巻き取った後に実施する熱処理において、加熱速度が本発明の範囲よりも低く外れると、結晶粒内に析出する炭化物の析出状態のばらつき(Hv-σ)が大きくなり、その結果、引張強度(MPa)及び伸び(%)のばらつき(σ)が大きい。
また、一旦巻き取った後の熱処理において、再加熱温度が本発明の範囲よりも高く外れると、組織が粗大化したり、不均一になるため、引張強度(MPa)及び伸び(%)のばらつき(σ)が大きい。さらに、一旦巻き取った後の熱処理において、冷却途中で実施する保熱における保熱温度が、本発明の範囲より高く外れると、炭化物が粗大化することに起因し、引張強度(MPa)及び伸び(%)のばらつき(σ)が大きい。
前述したように、本発明によれば、熱延鋼板のミクロ組織における炭化物の分散態様を制御して、板幅方向及び長手方向における加工性が優れた熱延鋼板を歩留り良く製造することができる。よって、本発明は、鋼板製造産業において適用可能性が高いものである。
1 仕上げ圧延機
F1、F2、・・・、Fn 圧延スタンド
2 冷却手段
3 巻取機
4 加熱手段
S’ 粗バー
S 熱延鋼板

Claims (7)

  1. 熱間圧延終了後、300℃以下に冷却した熱延鋼板を、巻き取る直前に、400℃以上750℃以下の温度域で保熱することにより、炭化物及びの第二相の1種又は2種が結晶粒内に分散したミクロ組織を有することを特徴とする加工性に優れた熱延鋼板。
  2. 熱間圧延終了後、300℃以下に冷却して巻き取った熱延鋼板を、巻き戻す工程で、巻き取る直前に、400℃以上Ac3点+20℃以下の温度域で保熱することにより、炭化物及び第二相の1種又は2種が結晶粒内に分散したミクロ組織を有することを特徴とする加工性に優れた熱延鋼板。
  3. 前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.001〜0.30%、Si:0.20〜2.00%、Mn:0.50〜3.00%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.10%、N:0.01%以下、O:0.01%以下を含むことを特徴とする請求項1又2に記載の加工性に優れた熱延鋼板。
  4. 請求項1又は3に記載の加工性に優れた熱延鋼板を、連続熱延工程で製造する方法であって、熱間圧延終了後、熱延鋼板を300℃以下に冷却し、巻き取る直前に、急速加熱で、400℃以上750℃以下の温度域に加熱して5秒以下保熱し、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取ることを特徴とする加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
  5. 請求項2又は3に記載の加工性に優れた熱延鋼板を、連続熱延工程で製造する方法であって、熱間圧延終了後、熱延鋼板を300℃以下に冷却し、そのまま巻き取り、その後、巻き戻す工程で、巻き取る直前に、急速加熱で、400℃以上Ac3点+20℃以下の温度域に加熱して5秒以下保熱し、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取ることを特徴とする加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記巻き戻す工程での巻取り前の冷却過程において、300℃以上500℃以下の温度域で、0.1秒以上300秒以下保熱し、保熱後、そのまま、又は、冷却して巻き取ることを特徴とする請求項5に記載の加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
  7. 前記急速加熱を100℃/秒以上の加熱速度で行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
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