本発明は、内燃機関の駆動力と電動機の駆動力を組み合わせて走行する車両に用いられ、内燃機関の駆動力を駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、内燃機関の動力を発電機により変換した電力、またはバッテリに蓄えられた電力に基づいて発生した電動機の駆動力を駆動輪へ伝達する第2の伝達経路とを選択または併用することができる車両用駆動制御装置に関する。
内燃機関としてのエンジンの駆動力を駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、電動機としてのモータの駆動力を駆動輪へ伝達する第2の伝達経路とを有し、第1の伝達経路と第2の伝達経路とを選択または併用するようにクラッチを切り換えて走行するハイブリッド車両が知られている(特許文献1)。
このハイブリッド車両では、運転者の意図に沿った走行状態の選択を行うことができるように、第1の伝達経路と第2の伝達経路とを切り換える断接手段(クラッチ)を備えている。そして、断接手段は、所定値より大きな駆動力を引き出すための指令を入力するスイッチから指令を入力したときには、第2の伝達経路を接続したまま第1の伝達経路を切断する開放状態にし、第2の伝達経路によって走行するようにしている。
上記従来技術では、シフトポジションや走行モードなどドライバーが要求する走行状態に応じて、第1の伝達経路と第2の伝達経路とを選択または併用するようにクラッチの切り換えを制御しているため、運転者の意図に従って選択された車両の運転状況によっては動力損失が生じ、運転効率の悪化を招いてしまうおそれがある。
そこで、本発明は、内燃機関や電動機などの動力源の損失を少なくして、運転効率を向上させることができる車両用駆動制御装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するために本発明の態様は、駆動輪へ駆動力を付与する内燃機関と、駆動輪へ付与する駆動力を発生する電動機と、電動機へ電力を供給するバッテリと、内燃機関の動力に基づいて電力を発生させる発電機とを備えた車両に用いられ、内燃機関の駆動力を駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、バッテリまたは発電機から供給された電力によって発生した電動機の駆動力を駆動輪へ伝達する第2の伝達経路と、第1の伝達経路と第2の伝達経路とのいずれか一方を選択または併用するように切り換える切換部とを有する車両用駆動制御装置において、第1の伝達経路と第2の伝達経路のいずれか一方の伝達経路における第1の損失と、第1の伝達経路と第2の伝達経路とを併用した伝達経路における第2の損失とを比較し、第1の損失と第2の損失のうち少ない方の伝達経路となるように切換部による切り換えを制御する制御部を有することを特徴の一つとする。
また、上記課題を解決するために本発明の態様は、駆動輪へ駆動力を付与する内燃機関と、駆動輪へ付与する駆動力を発生する電動機と、電動機へ電力を供給するバッテリと、内燃機関の動力に基づいて電力を発生させる発電機とを備えた車両に用いられ、内燃機関の駆動力を駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、バッテリまたは発電機から供給された電力によって発生する電動機の駆動力を駆動輪へ伝達する第2の伝達経路と、第1の伝達経路と第2の伝達経路とのいずれか一方を選択するように切り換える切換部とを有する車両用駆動制御装置において、第1の伝達経路における第1の損失と、第2の伝達経路における第2の損失とを比較し、第1の損失と第2の損失のうち少ない方の伝達経路となるように切換部による切り換えを制御する制御部を有することを特徴の一つとする。
このように、本発明によれば、エンジン、電動機から損失の少ない伝達経路で駆動輪に駆動力を供給することができるので、運転効率の悪化を防止することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置と、この車両用駆動制御装置が搭載された車両の要部を示す構成図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置のシンクロ機構ギアを示す分解斜視図である。
図3は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の動力伝達機構におけるシンクロ機構ギアの締結解除状態を示す説明図である。
図4は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の動力伝達機構におけるシンクロ機構ギアの締結解除状態のトルクフローを示す説明図である。
図5は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の動力伝達機構におけるシンクロ機構ギアの締結状態を示す説明図である。
図6は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の動力伝達機構におけるシンクロ機構ギアの締結状態のトルクフローを示す説明図である。
図7は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図8は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の制御部のシンクロ機構ギア締結判定処理の手順を示すフローチャートである。
図9は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置におけるMG1、MG2、エンジンのトルク指令を決定する処理を示す説明図である。
図10は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置においてシンクロ機構ギアが締結解除状態におけるMG1の損失、MG2の損失、エンジン損失を算出する手順を示す説明図である。
図11は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置においてシンクロ機構ギアが締結状態と仮定したときのMG2、エンジンの推測したトルク指令を決定する処理を示す説明図である。
図12は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置においてシンクロ機構ギアが締結状態と仮定したときの推測したMG1およびMG2、推測したエンジン損失を算出する手順を示す説明図である。
図13は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置におけるシンクロ機構ギアの締結状態での低損失判定の手順を示すフローチャートである。
図14は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の制御部のシンクロ機構ギア締結解除判定処理の手順を示すフローチャートである。
図15は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置におけるシンクロ機構ギアの締結解除状態での低損失判定の手順を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態の特徴]
図1に示すように、本実施の形態に係る車両用駆動制御装置1が用いられる車両2は、駆動輪2a、2aへ駆動力を付与する内燃機関(以下「エンジン」という)3と、駆動輪2a、2aへ付与する駆動力を発生する電動機(以下「MG1」という)4と、を備えている。
また、車両2は、エンジン3の出力軸3aと直結されエンジン3の駆動力により発電を行う発電機(以下「MG2」という)5と、MG1用のインバータ6と、MG2用のインバータ7と、車両2の電装品に電力を供給するための補助バッテリ8と、エンジン3の駆動力により発電する電力やMG1からの回生電力により充電されるバッテリ9と、このバッテリ9からの電力を降圧して補助バッテリ8を充電するためのDC/DCコンバータ10と、エンジン3の出力軸3aと駆動軸2bとの間に設けられた動力伝達機構11とを備えている。
また、本実施の形態に係る車両用駆動制御装置1は、エンジン3の駆動力を駆動輪2a、2aへ伝達する第1の伝達経路12と、電動機MG1の駆動力を駆動輪2a、2aへ伝達する第2の伝達経路13と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とのいずれか一方を選択または併用するように切り換える切換部(シンクロ機構ギア)14とを有している。
さらに、本実施の形態に係る車両用駆動制御装置1は、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13のいずれか一方の伝達経路における第1の損失と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用した伝達経路における第2の損失とを比較し、第1の損失と第2の損失のうち少ない方の伝達経路となるように切換部14による切り換えを制御する制御部(車両コントローラ)15を有している。
また、切換部14は、ギアの締結および解除を制御可能な機構により構成され、制御部15は、第1の損失と第2の損失との比較の結果に基づいて、ギアの締結または締結の解除を制御する。
また、制御部15は、ギアが締結されており、かつ運転者の要求トルクがエンジン3の最適動作点でのエンジン3のトルクより大きい場合、ギアの締結の解除を禁止するように制御する。
また、制御部15は、第1の伝達経路12における第1の損失と、第2の伝達経路13における第2の損失とを比較し、第1の損失と第2の損失のうち少ない方の伝達経路となるように切換部14による切り換えを制御する。
以下、図面を用いて車両用駆動制御装置1について詳細に説明する。
[動力伝達機構11]
上記動力伝達機構11は、図3乃至図6に示すように、MG1の出力軸4aに固定されたギア22と噛み合うギア23と、このギア22が一側に固定されたカウンタ軸24と、カウンタ軸24の他側に固定され駆動軸2bに固定されたギア25と噛み合うギア26と、カウンタ軸24の中間部にカウンタ軸24に対して空転可能に設けられた空転ギア27と、エンジン3の出力軸3aに固定され空転ギア27に噛み合うギア28と、カウンタ軸24の空転ギア27とギア26との間に設けられたシンクロ機構ギア16とで構成されている。
シンクロ機構ギア16は、図2に示すように、ギア17、シンクロナイザーリング18、キー19、スリーブ20、ハブ21とで構成される。ギア17は空転ギア27に一体に固定され、カウンタ軸24に対しては空転する。ハブ21はカウンタ軸24に固定され、カウンタ軸24と共に回転する。ハブ21の外周にはスプラインが形成されており、スリーブ20はハブ21に対して軸方向に移動可能で、ハブ21とともに一体に回転する。また、スリーブ20は、直動モータ機構(不図示)によりカウンタ軸24の軸方向に移動することでハブ21と噛み合った状態でギア17と噛み合い、空転ギア27とカウンタ軸24とをハブ21を介して連結する。直動モータ機構は、上記制御部15と接続されて、その駆動が制御される。
図3は、シンクロ機構ギア16が未締結(締結解除)の状態を示す。この状態では、図4に示すようにMG1の駆動力は、第2の伝達経路13によって駆動軸2bに伝達される。すなわち、MG1の駆動力は、ギア22、23を介してカウンタ軸24に伝達され、ギア26、25を介して駆動軸2bに伝達される。また、シンクロ機構ギア16が未締結の状態では、スリーブ20はギア17と噛み合っていないので、エンジン3からの駆動力が伝達される空転ギア27はカウンタ軸24に対して空転している。
図5は、図4に示す状態からスリーブ20をギア17側に移動させてシンクロ機構ギア16が締結した状態を示す。この状態では、図6に示すようにMG1の駆動力が第2の伝達経路13によって駆動軸2bに伝達されるのに加えて第1の伝達経路12によってエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達される。すなわち、シンクロ機構ギア16が締結した状態では、空転ギア27がシンクロ機構ギア16によりカウンタ軸24と連結され、エンジン3の駆動力がギア28、空転ギア27を介してカウンタ軸24に伝達され、カウンタ軸24からギア26、25を介して駆動軸2bに伝達される。この状態では、第1の伝達経路12、第2の伝達経路13を併用しMG1の駆動力とエンジン3の駆動力で車両2は走行する。また、第2の伝達経路13が選択された場合はMG1の駆動力で車両2は走行する。
上記スリーブ20は、直動モータ機構を制御する制御部15によって軸方向への移動が制御され、シンクロ機構ギア16の締結状態、締結解除状態が選択される。
制御部15は、図7に示すように、シンクロ機構16の締結、締結解除処理を行うシンクロ機構締結、締結解除処理部30と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13のいずれか一方の伝達経路における第1の損失と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用した伝達経路における第2の損失とを比較する低損失判定部31と、第1の損失を算出する第1の損失算出部32と、第2の損失を算出する第2の損失算出部33と、マップ記憶部34とを有している。
また、低損失判定部31は、第1の伝達経路12における第1の損失と、第2の伝達経路13における第2の損失とを比較するようにも機能する。
第1の損失算出部32は、MG1トルク決定部35、MG1必要電力算出部36、エンジン動作点決定部37を有している。
第2の損失算出部33は、エンジン回転速度算出部38、エンジン動作点決定部39、MG1トルク算出部40、MG2トルク算出部45、MG1回転速度算出部46、MG2回転速度算出部47を有している。
マップ記憶部34は、予め求められたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43、エンジン動作点マップ44からなる。
また、制御部15には、バッテリ9の残存容量(SOC)が入力され、車速センサから車両2の車速が入力され、運転者が踏み込んだブレーキの開度が入力される。これらのバッテリ9の残存容量、車速、ブレーキ開度の検知結果は図示しないセンサによって検知される。
[制御部15のシンクロ機構ギア締結判定処理]
次に、車両用駆動制御装置1の制御部15による切換部14の切り換え処理の一例、すなわち、シンクロ機構ギア16を締結状態にするか締結解除状態にするかの判定処理について、図8、図9に示すフローチャートに従い説明する。
車両2は、第2の伝達経路13によってMG1の駆動力が駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動されており、シンクロ機構ギア16は締結解除状態にある。この状態から、制御部15は、ステップS10において、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定の値C1(%)以下であるか否かを判断する。バッテリ9の残存容量が所定の値C1(%)を超えていると判断した場合には、バッテリ9に十分な電力があることを示しているので、MG1の駆動力により車両2は走行する。ステップS10において、バッテリ9の残存容量が所定値C1(%)以下と判断した場合にはステップS11を実行する。
ステップS11において、制御部15は、車速が所定の値V1(km/h)以上であるか否かを判断する。車速が所定の値V1(km/h)以下の場合には、車両2は運転効率の良好な車速で走行しているので、MG1の駆動力により車両2は走行する。ステップS11において、制御部15は、車速が所定の値V1(km/h)以上と判断した場合にはステップS12を実行する。
ステップS12において、制御部15は、ブレーキ操作量が所定の値B2(%)より小さいか否かを判断する。ブレーキ操作量が所定の値B2(%)より小さくないと判断した場合、すなわちブレーキ操作量が所定の値B2(%)より大きいと判断した場合には、車両2は減速状態で走行しているので、MG1の駆動力により車両2は走行する。ステップS12において、ブレーキ操作量が所定の値B2(%)より小さいと判断した場合には、車両2は減速せずに走行しており、制御部15は、ステップS13を実行する。
ステップS13では、制御部15は、MG1の駆動力により走行した場合の第1の損失と、MG1の駆動力とエンジン3の駆動力とで走行した場合の第2の損失とを低損失判定部31が比較する。すなわち、第2の伝達経路13で駆動力を駆動輪2aに伝達する場合での第1の損失と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用した場合での第2の損失とを比較する。
ステップS13における第1の損失と第2の損失との比較において、損失が低いと判定するとステップS14にて、制御部15はシンクロ機構ギア16による締結処理を行い、つまり、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用するようにシンクロ機構ギア16の締結処理を行う。これにより、MG1の駆動力に加えてエンジン3の駆動力が駆動軸2bに付与され駆動輪2a、2aが駆動する。これとともに、エンジン3の駆動力によりMG2が駆動されて発電が行われ、バッテリ9に充電がなされたり、DC/DCコンバータ10によって12Vの電圧に変換されて補機等に電力供給されたりする。
また、車両用駆動制御装置1の制御部15は、次のように制御することもできる。具体的には、ステップS13では、制御部15は、エンジン3の駆動力により走行した場合の第1の損失と、MG1の駆動力で走行した場合の第2の損失とを低損失判定部31が比較する。すなわち、第1の伝達経路12で駆動力を駆動輪2aに伝達する場合での第1の損失と、第2の伝達経路13で駆動力を駆動輪2aに伝達する場合での第2の損失とを比較する。
また、ステップS13における第1の損失と第2の損失との比較において、損失が低いと判定するとステップS14にて、制御部15はシンクロ機構ギア16による締結処理を行い、つまり、第1の伝達経路12を使用するようにシンクロ機構ギア16の締結処理を行う。これにより、エンジン3の駆動力が駆動軸2bに付与され駆動輪2a、2aが駆動する。これとともに、エンジン3の駆動力によりMG2が駆動されて発電が行われ、バッテリ9に充電がなされたり、DC/DCコンバータ10によって12Vの電圧に変換されて補機等に電力供給されたりする。
なお、このとき、MG1は、エンジン3の動力を使用してMG2によって発生した電力により駆動力を発生させている。
次に、ステップS13における第2の伝達経路13における損失と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用した場合における損失との比較判定処理について説明する。
運転者がアクセルペダルを踏んで走行しているとき、MG1、MG2、エンジン3のトルク指令は図9に示す処理を制御部15の第1の損失算出部32が行うことで決定される。
図9において、工程P1において、要求駆動パワー、すなわち運転者が踏み込んだアクセルペダルの開度により検知される要求駆動力と走行している車両2の現在の車速により、制御部15のMG1トルク決定部35が、MG1が発生すべきトルクを決定する。次に、工程P2において、制御部15のMG1必要電力算出部36が、MG1が発生すべきトルクを発生するための必要電力を算出する。また、工程P3において、制御部15が、補機が必要とする電力を算出する。次に、工程P4において、エンジン動作点決定部37がエンジン動作点を決定する。このエンジン動作点の決定では、工程P2において算出したMG1が必要とする電力と、工程P3において算出した補機が必要とする電力との合計電力とでMG2が発電可能なエンジン動作点を決定する。このエンジン動作点は、予め作成してあるマップにより決定される。すなわち、制御部15は、要求された発電電力をMG2によって発電するためにエンジン3がどのような動作点で駆動すればよいかを予め形成してあるマップにより決定する。
そして、工程P5において、制御部15は、決定したエンジン動作点に従ってエンジン3を駆動し、MG2を駆動して発電させる。
上記の各工程P1〜P5において、制御部15が、MG1、MG2、エンジン3のトルク指令を決定する際に、図10に示すように制御部15は、MG1、MG2、エンジン3の損失(パワー[W])を予め用意されたマップから算出し、その合計を第1の損失としての総合損失Aとして算出する。
図10において、MG1の損失は、MG1の回転速度、MG1トルク、MG1に負荷する電圧とMG1損失マップ41とから算出する。エンジン3の損失は、エンジン回転速度、エンジントルク、エンジン3の温度とエンジン損失マップ42とから算出する。MG2の損失は、MG2の回転速度、MG2トルク、MG2が発生する電圧とMG2損失マップ43とから算出する。これらのMG1損失と、エンジン損失と、MG2損失との合計を総合損失A(第1の損失)とする。
上記の処理と並行して、車両2の走行状態が、シンクロ機構ギア16を締結状態として走行すると仮定した場合の第2の損失としての総合損失Bを制御部15は推測する。すなわち、図6に示すように第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを用いて、MG1、エンジン3の発生した駆動力を駆動軸2bに伝達した場合の総合損失Bを推測する。
まず、シンクロ機構ギア16を締結状態として車両2が走行した場合の各トルク指令が、図11に示す処理を制御部15の第2の損失算出部33が行うことで決定される。
図11において、制御部15は、工程P1において、エンジン回転速度算出部38が車速からエンジン回転速度を算出し、工程P2において、補機が必要とする電力を算出する。次に、工程P3において、MG2トルク算出部45が、補機が必要とする電力とMG2の回転速度とに基づいて必要電力を求め、MG2が発電するために必要なMG2必要トルク、すなわち発電トルクを算出する。制御部15は、このMG2必要トルク(発電トルク)の値をMG2のトルク指令値として、MG2に発電を行わせる。
また、工程P4において、要求駆動パワーとエンジン回転速度とに基づいて必要とするエンジン必要トルクAを算出する。次に、工程P5において、工程P3で算出されたMG2必要トルク(発電トルク)と工程P4で算出されたエンジン必要トルクAとを合算してエンジントルクを算出する。制御部15は、このエンジントルクの値をエンジントルク指令値として、エンジンを動作させる。
上記工程P1〜P5にてMG2トルク、エンジントルクのトルク指令を決定する際に、図12に示すように、制御部15は、MG1、エンジン3の損失(パワー[W])、MG2を予め用意された損失マップ41、42、43から算出し、その合計を総合損失B(第2の損失)として算出する。
図12において、MG1の損失は、MG1の回転速度、MG1トルク、MG1に負荷する電圧とMG1損失マップ41とから制御部15が算出する。エンジン3の損失は、エンジン回転速度、エンジントルク、エンジン3の温度とエンジン損失マップ42とから制御部15が算出する。MG2の損失は、MG2の回転速度、MG2トルク、MG2に負荷する電圧とMG2損失マップ43とから制御部15が算出する。これらのMG1損失とエンジン損失とMG2損失との合計を総合損失B(第2の損失)とする。
以上のように求められた総合損失A(第1の損失)、総合損失B(第2の損失)を使い、シンクロ機構ギア16の締結状態での損失が現在(シンクロ機構ギア16が締結していない状態、すなわち図4に示す状態)より小さくなるか否かを判定する。ただし、ヒステリシスHysAを設けてハンチングを防止してある。
次に低損失判定の手順について、図13のフローチャートに従い説明する。
制御部15は、低損失判定が0の場合において、ステップS10にて、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きいか否かを判断し、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きいと判断すると、ステップS11にて低損失判定=1と判断し、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きくない、つまり総合損失Aが総合損失B+HysA以下と判断するとステップS12にて低損失判定=0を維持する。
なお、本実施形態では、総合損失Aと総合損失B+HysAとを比較するようにしたが、ヒステリシスHysAを設けずに、総合損失Aと総合損失Bとを比較するようにしてもよい。
制御部15は、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きい場合、すなわち車両2が第2の伝達経路13にてMG1の駆動力のみで走行している状態の損失(総合損失A)が、第1の伝達経路12にてMG1の駆動力とエンジン3の駆動力を併用して車両2を走行させた場合の損失より大きいと判断すると、低損失判定が1と判定する。この場合には、図8に示すフローチャートのステップS14にて,シンクロ機構ギア16の締結処理が成される。この結果、車両2は第1の伝達経路12によってMG1の駆動力とエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動される。
また、制御部15は、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きくない場合、すなわち車両2が第2の伝達経路13にてMG1の駆動力のみで走行している状態の損失(総合損失A)が、第1の伝達経路12にてMG1の駆動力とエンジン3の駆動力を併用して車両2を走行させた場合の損失以下と判断すると、低損失判定は0が維持され、図8に示すフローチャートのステップ13にて低損失判定=1ではないと判断し、シンクロ機構ギア16の締結は行われない。
次に、第2の伝達経路13によるMG1の駆動力と、第1の伝達経路12によるエンジン3の駆動力とが車両2の駆動軸2bに伝達されており、シンクロ機構ギア16が締結状態にある状態から、シンクロ機構ギア16の締結解除判断処理について、図14に示すフローチャートに従い説明する。この状態では、シンクロ機構ギア16が締結状態であって、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用し、MG1の駆動力とエンジン3の駆動力とが駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動している。
この状態で、制御部15は、ステップS10で運転者がブレーキを踏み込んだか否かを検知するため、ブレーキ操作量が検出され、このブレーキ操作量が所定値B1[%]より大きいか否かを判断する。ブレーキ操作量が所定値B1[%]より大きい、すなわち運転者がブレーキを踏み込んで車両2を減速している状態では、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。これにより、車両2は第2の伝達経路13によってMG1の駆動力が駆動軸2bに伝達され、駆動輪2aが駆動される。
制御部15が、ブレーキ操作量が所定値B1[%]より小さいと判断した場合は、ステップS12以下が実行される。ステップS12では車速が所定の速度V2[km/h]より小さいか否かが判断される。車速が所定の速度V2[km/h]より小さい場合、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。一方、車速が所定の速度V2[km/h]より小さくない場合、すなわち車速が所定の速度V2[km/h]以上の場合は、ステップS13において、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定の値C2[%]より大きいか否かを判断する。ステップS13においてバッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きいと判断した場合は、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。一方、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きくない、すなわちバッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]以下と判断した場合は、ステップS14において、低損失判定がなされる。ステップS14において低損失判定=0と判定されると、すなわち、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用している場合の総合損失Bが、第2の伝達経路13を使用している際の総合損失Aより大きいと判断されると、ステップS11にてシンクロ機構ギア16の締結解除処理がなされ、第2の伝達経路13によってMG1の駆動力のみによって車両2は走行する。
一方、ステップS14において、低損失判定=0でない、例えば、低損失判定=1と判定すると、現状の状態を継続して車両2は走行する。具体的には、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用している場合の総合損失Bが、第2の伝達経路13を使用している際の総合損失Aより小さいと判断されると、第2の伝達経路13によってMG1の駆動力が駆動軸2bに伝達されるとともに第1の伝達経路12によってエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達されて車両2は走行する。
上記ステップS14における低損失判定では、運転者がアクセルペダルを踏んで走行しているときMG1、エンジン3のトルク指令は前述した図11の工程による処理で決定する。
その際、前述した図12のように、MG1、エンジン3、MG2の損失(パワー[W])を予め用意されたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43から算出し、その合計を総合損失Bとする。
これと並行して車両2の走行状態が、シンクロ機構ギア16を締結状態として走行すると仮定した場合の総合損失Bを制御部15は推測する。前述したようにシンクロ機構ギア16を締結解除した状態で走行した場合の各トルク指令は図9に示す処理で決定する。
その際、図10のようにMG1、エンジン3、MG2の損失(パワー[W])を予め用意されたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43から算出し、その合計を総合損失Aとする。
以上のように求められた総合損失A、総合損失Bを使い、シンクロ機構ギア16の締結を解除した状態での損失が現在より小さくなるか否かを判定する。ただし、ヒステリシスHysBを設けてハンチングを防止してある。
次に低損失判定の手順について、図15のフローチャートに従い説明する。
制御部15は、ステップS10において、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下か否かを判断する。制御部15は、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下である場合、ステップS11において、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きいか否かを判断し、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きいと判断すると、ステップS12において低損失判定=0と判断する。そして、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きくない、つまり小さいと判断するとステップS13において低損失判定=1と判断する。
なお、本実施形態では、総合損失Bと総合損失A+HysBとを比較するようにしたが、ヒステリシスHysBを設けずに、総合損失Bと総合損失Aとを比較するようにしてもよい。
また、制御部15は、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きい場合、低損失判定を0と判定する。すなわち、制御部15は、車両2が第2の伝達経路13によるMG1の駆動力と、第1の伝達経路12によるエンジン3の駆動力とで走行する場合の損失(総合損失B)が、第2の伝達経路13にてMG1の駆動力で車両2を走行する場合の損失より大きいと判断すると、低損失判定を0と判定する。この場合には、図14に示すフローチャートのステップS11にてシンクロ機構ギア16の締結状態を解除する。この結果、車両2は第2の伝達経路13によってMG1の駆動力で駆動される。
また、制御部15は、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きくない場合、低損失判定を1と判定する。すなわち、制御部15は、車両2が第2の伝達経路13にてMG1の駆動力と、第1の伝達経路12によるエンジン3の駆動力とで走行する場合の損失(総合損失B)が、第2の伝達経路13にてMG1の駆動力で車両2を走行する場合の損失より小さいと判断すると、低損失判定を1と判定する。このとき、図14のフローチャートに示すように、シンクロ機構ギア16の締結解除処理は行われない。
また、制御部15は、図15に示すフローチャートのステップS10において、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下でないとき、すなわち、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルクより大きいときは、MG1もアシストに使われる。その場合、シンクロ機構ギア16の締結状態を解除せず、シンクロ機構ギア16を締結状態のままとする。
また、車両用駆動制御装置1の制御部15は、次のように制御することもできる。具体的には、図8のステップS13における第1の伝達経路12の損失と、第2の伝達経路13における損失との比較判定処理であり、以下に説明する。
図10において、MG1の損失は、MG1の回転速度、MG1トルク、MG1に負荷する電圧とMG1損失マップ41とから算出する。エンジン3の損失は、エンジン回転速度、エンジントルク、エンジン3の温度とエンジン損失マップ42とから算出する。MG2の損失は、MG2の回転速度、MG2トルク、MG2が発生する電圧とMG2損失マップ43とから算出する。これらのMG1損失と、エンジン損失と、MG2損失との合計を総合損失A(第2の損失)とする。
上記の処理と並行して、車両2の走行状態が、シンクロ機構ギア16を締結状態として走行すると仮定した場合の第1の損失としての総合損失Bを制御部15は推測する。すなわち、図6に示すように第1の伝達経路12を用いて、エンジン3の発生した駆動力を駆動軸2bに伝達した場合の総合損失Bを推測する。
まず、シンクロ機構ギア16を締結状態として車両2が走行した場合の各トルク指令が、図11に示す処理を制御部15の第1の損失算出部33が行うことで決定される。なお、図11については、上述した処理と同様のため説明を省略する。
そして、図11の工程P1〜P5にてMG2トルク、エンジントルクのトルク指令を決定する際に、図12に示すように、制御部15は、MG1、エンジン3の損失(パワー[W])、MG2を予め用意された損失マップ41、42、43から算出し、その合計を総合損失B(第1の損失)として算出する。
図12において、MG1の損失は、MG1の回転速度、MG1トルク、MG1に負荷する電圧とMG1損失マップ41とから制御部15が算出する。エンジン3の損失は、エンジン回転速度、エンジントルク、エンジン3の温度とエンジン損失マップ42とから制御部15が算出する。MG2の損失は、MG2の回転速度、MG2トルク、MG2に負荷する電圧とMG2損失マップ43とから制御部15が算出する。これらのMG1損失とエンジン損失とMG2損失との合計を総合損失B(第1の損失)とする。
以上のように求められた総合損失A(第2の損失)、総合損失B(第1の損失)を使い、シンクロ機構ギア16の締結状態での損失が現在(シンクロ機構ギア16が締結していない状態、すなわち図4に示す状態)より小さくなるか否かを判定する。ただし、ヒステリシスHysAを設けてハンチングを防止してある。
次に低損失判定の手順について、図13のフローチャートに従い説明する。
制御部15は、低損失判定が0の場合において、ステップS10において、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きいか否かを判断し、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きいと判断すると、ステップS11において低損失判定=1と判断し、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きくない、つまり総合損失Aが総合損失B+HysA以下と判断するとステップS12において低損失判定=0を維持する。
なお、本実施形態では、総合損失Aと総合損失B+HysAとを比較するようにしたが、ヒステリシスHysAを設けずに、総合損失Aと総合損失Bとを比較するようにしてもよい。
また、制御部15は、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きい場合、すなわち車両2が第2の伝達経路13にてMG1の駆動力のみで走行している状態の損失(総合損失A)が、第1の伝達経路12にてエンジン3の駆動力を使用して車両2を走行させた場合の損失より大きいと判断すると、低損失判定を1と判定する。この場合には、図8に示すフローチャートのステップS14において、シンクロ機構ギア16の締結処理が成される。この結果、車両2は第1の伝達経路12によってエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動される。
次に、第2の伝達経路13によるMG1の駆動力と、第1の伝達経路12によるエンジン3の駆動力とが車両2の駆動軸2bに伝達されており、シンクロ機構ギア16が締結状態にある状態から、シンクロ機構ギア16の締結解除判断処理について、図14に示すフローチャートに従い説明する。この状態では、シンクロ機構ギア16が締結状態であって、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用し、MG1の駆動力とエンジン3の駆動力とが駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動している。
この状態で、制御部15は、ステップS10で運転者がブレーキを踏み込んだか否かを検知するため、ブレーキ操作量が検出され、このブレーキ操作量が所定値B1[%]より大きいか否かを判断する。ブレーキ操作量が所定値B1[%]より大きい、すなわち運転者がブレーキを踏み込んで車両2を減速している状態では、ステップS11において、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。これにより、車両2は第2の伝達経路13によってMG1の駆動力が駆動軸2bに伝達され、駆動輪2aが駆動される。
制御部15が、ブレーキ操作量が所定値B1[%]より小さいと判断した場合は、ステップS12以下が実行される。ステップS12では車速が所定の速度V2[km/h]より小さいか否かが判断される。車速が所定の速度V2[km/h]より小さい場合、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。一方、車速が所定の速度V2[km/h]より小さくない場合、すなわち車速が所定の速度V2[km/h]以上の場合は、ステップS13において、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きいか否かを判断する。ステップS13においてバッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きいと判断した場合は、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。一方、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きくない、すなわちバッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]以下と判断した場合は、ステップS14において、低損失判定がなされる。ステップS14において低損失判定=0と判定されると、すなわち、第1の伝達経路12を使用している場合の総合損失Bが、第2の伝達経路13を使用している際の総合損失Aより大きいと判断されると、ステップS11においてシンクロ機構ギア16の締結解除処理がなされ、第2の伝達経路13によってMG1の駆動力のみによって車両2は走行する。
一方、ステップS14において、低損失判定=0でない、例えば、低損失判定=1と判定すると、現状の状態を継続して車両2は走行する。具体的には、第1の伝達経路12を使用している場合の総合損失Bが、第2の伝達経路13を使用している際の総合損失Aより小さいと判断されると、第1の伝達経路12によってエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達されて車両2は走行する。
上記ステップS14における低損失判定では、運転者がアクセルペダルを踏んで走行しているとき、MG1、エンジン3のトルク指令は前述した図11の工程による処理で決定する。
その際、前述した図12のように、MG1、エンジン3、MG2の損失(パワー[W])を予め用意されたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43から算出し、その合計を総合損失Bとする。
これと並行して車両2の走行状態が、シンクロ機構ギア16を締結状態として走行すると仮定した場合の総合損失Bを制御部15は推測する。前述したようにシンクロ機構ギア16を締結解除した状態で走行した場合の各トルク指令は図9に示す処理で決定する。
その際、図10のようにMG1、エンジン3、MG2の損失(パワー[W])を予め用意されたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43から算出し、その合計を総合損失Aとする。
以上のように求められた総合損失A、総合損失Bを使い、シンクロ機構ギア16の締結を解除した状態での損失が現在より小さくなるか否かを判定する。ただし、ヒステリシスHysBを設けてハンチングを防止してある。
次に低損失判定の手順について、図15のフローチャートに従い説明する。
制御部15は、ステップS10において、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下か否かを判断する。制御部15は、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下である場合、ステップS11において、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きいか否かを判断し、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きいと判断すると、ステップS12において低損失判定=0と判断する。そして、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きくない、つまり小さいと判断するとステップS13において低損失判定=1と判断する。
なお、本実施形態では、総合損失Bと総合損失A+HysBとを比較するようにしたが、ヒステリシスHysBを設けずに、総合損失Bと総合損失Aとを比較するようにしてもよい。
また、制御部15は、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きい場合、低損失判定を0と判定する。すなわち、制御部15は、車両2が、第1の伝達経路12を使用してエンジン3の駆動力で走行する場合の損失(総合損失B)が、第2の伝達経路13にてMG1の駆動力で車両2を走行する場合の損失より大きいと判断すると、低損失判定を0と判定する。この場合には、図14に示すフローチャートのステップS11においてシンクロ機構ギア16の締結状態を解除する。この結果、車両2は第2の伝達経路13によってMG1の駆動力で駆動される。
また、制御部15は、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きくない場合、低損失判定を1と判定する。すなわち、制御部15は、車両2が、第1の伝達経路12を使用してエンジン3の駆動力で走行する場合の損失(総合損失B)が、第2の伝達経路13にてMG1の駆動力で車両2を走行する場合の損失より小さいと判断すると、低損失判定を1と判定する。このとき、図14のフローチャートに示すように、シンクロ機構ギア16の締結解除処理は行われない。
また、制御部15は、図15に示すフローチャートのステップS10において、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下でないとき、すなわち、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルクより大きいときは、MG1もアシストに使われる。その場合、シンクロ機構ギア16の締結状態を解除せず、シンクロ機構ギア16を締結状態のままとする。
以上説明したように、本実施の形態によれば、シンクロ機構ギア16を締結、締結解除する条件を車速、バッテリ残存容量(SOC)、アクセル、ブレーキだけで判断せずに現状の総合損失を算出し、さらに締結して走行した場合の総合損失を予測し、損失が少ないと判断されたときにシンクロ機構ギア16の締結や、締結解除を行うので、エンジン3やMG1などの動力源の損失を少なくして、燃費を向上することができ、運転効率を向上させることができる。
また、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルクより大きいときは、MG1もアシスト制御に使用する。その際には、シンクロ機構ギア16の締結を解除せず、締結状態とすることにより、エンジンパワーとモータパワーを合わせ力強い加速を行うことができる。
なお、本実施の形態では、シンクロ機構ギア16を用いてエンジン3の出力軸3aと駆動軸2bを断続したが、シンクロ機構ギア16に代えて湿式クラッチや乾式クラッチを用いて、エンジン3の出力を駆動輪2aに結合するシステムにおいても成り立つものである。
また、この実施の形態では、MG1、MG2、エンジン3の損失を用いて伝達経路を選択しているが、ギアの損失の推測、予測することができるため、ギアの損失も総合損失を算出する際に含めることも可能であり、総合損失の値をより正確に求めることができる。
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1 車両用駆動制御装置
2 車両
2a 駆動輪
2b 駆動軸
3 エンジン(内燃機関)
4 電動機(MG1)
5 発電機(MG2)
9 バッテリ
12 第1の伝達経路
13 第2の伝達経路
14 切換部(シンクロ機構ギア16)
15 制御部
本発明は、内燃機関の駆動力と電動機の駆動力を組み合わせて走行する車両に用いられ、内燃機関の駆動力を駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、内燃機関の動力を発電機により変換した電力、またはバッテリに蓄えられた電力に基づいて発生した電動機の駆動力を駆動輪へ伝達する第2の伝達経路とを選択または併用することができる車両用駆動制御装置に関する。
内燃機関としてのエンジンの駆動力を駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、電動機としてのモータの駆動力を駆動輪へ伝達する第2の伝達経路とを有し、第1の伝達経路と第2の伝達経路とを選択または併用するようにクラッチを切り換えて走行するハイブリッド車両が知られている(特許文献1)。
このハイブリッド車両では、運転者の意図に沿った走行状態の選択を行うことができるように、第1の伝達経路と第2の伝達経路とを切り換える断接手段(クラッチ)を備えている。そして、断接手段は、所定値より大きな駆動力を引き出すための指令を入力するスイッチから指令を入力したときには、第2の伝達経路を接続したまま第1の伝達経路を切断する開放状態にし、第2の伝達経路によって走行するようにしている。
上記従来技術では、シフトポジションや走行モードなどドライバーが要求する走行状態に応じて、第1の伝達経路と第2の伝達経路とを選択または併用するようにクラッチの切り換えを制御しているため、運転者の意図に従って選択された車両の運転状況によっては動力損失が生じ、運転効率の悪化を招いてしまうおそれがある。
そこで、本発明は、内燃機関や電動機などの動力源の損失を少なくして、運転効率を向上させることができる車両用駆動制御装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するために本発明の態様は、駆動輪へ駆動力を付与する内燃機関と、駆動輪へ付与する駆動力を発生する電動機と、電動機へ電力を供給するバッテリと、内燃機関の動力に基づいて電力を発生させる発電機とを備えた車両に用いられ、内燃機関の駆動力を駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、バッテリまたは発電機から供給された電力によって発生した電動機の駆動力を駆動輪へ伝達する第2の伝達経路と、第1の伝達経路と第2の伝達経路とのいずれか一方を選択または併用するように切り換える切換部とを有する車両用駆動制御装置において、第1の伝達経路と第2の伝達経路のいずれか一方の伝達経路における第1の損失と、第1の伝達経路と第2の伝達経路とを併用した伝達経路における第2の損失とを比較し、第1の損失と第2の損失のうち少ない方の伝達経路となるように切換部による切り換えを制御する制御部を有することを特徴の一つとする。
また、上記課題を解決するために本発明の態様は、駆動輪へ駆動力を付与する内燃機関と、駆動輪へ付与する駆動力を発生する電動機と、電動機へ電力を供給するバッテリと、内燃機関の動力に基づいて電力を発生させる発電機とを備えた車両に用いられ、内燃機関の駆動力を駆動輪へ伝達する第1の伝達経路と、バッテリまたは発電機から供給された電力によって発生する電動機の駆動力を駆動輪へ伝達する第2の伝達経路と、第1の伝達経路と第2の伝達経路とのいずれか一方を選択するように切り換える切換部とを有する車両用駆動制御装置において、第1の伝達経路における第1の損失と、第2の伝達経路における第2の損失とを比較し、第1の損失と第2の損失のうち少ない方の伝達経路となるように切換部による切り換えを制御する制御部を有することを特徴の一つとする。
このように、本発明によれば、エンジン、電動機から損失の少ない伝達経路で駆動輪に駆動力を供給することができるので、運転効率の悪化を防止することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置と、この車両用駆動制御装置が搭載された車両の要部を示す構成図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置のシンクロ機構ギアを示す分解斜視図である。
図3は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の動力伝達機構におけるシンクロ機構ギアの締結解除状態を示す説明図である。
図4は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の動力伝達機構におけるシンクロ機構ギアの締結解除状態のトルクフローを示す説明図である。
図5は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の動力伝達機構におけるシンクロ機構ギアの締結状態を示す説明図である。
図6は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の動力伝達機構におけるシンクロ機構ギアの締結状態のトルクフローを示す説明図である。
図7は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図8は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の制御部のシンクロ機構ギア締結判定処理の手順を示すフローチャートである。
図9は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置におけるMG1、MG2、エンジンのトルク指令を決定する処理を示す説明図である。
図10は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置においてシンクロ機構ギアが締結解除状態におけるMG1の損失、MG2の損失、エンジン損失を算出する手順を示す説明図である。
図11は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置においてシンクロ機構ギアが締結状態と仮定したときのMG2、エンジンの推測したトルク指令を決定する処理を示す説明図である。
図12は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置においてシンクロ機構ギアが締結状態と仮定したときの推測したMG1およびMG2、推測したエンジン損失を算出する手順を示す説明図である。
図13は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置におけるシンクロ機構ギアの締結状態での低損失判定の手順を示すフローチャートである。
図14は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置の制御部のシンクロ機構ギア締結解除判定処理の手順を示すフローチャートである。
図15は、本発明の実施の形態に係る車両用駆動制御装置におけるシンクロ機構ギアの締結解除状態での低損失判定の手順を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態の特徴]
図1に示すように、本実施の形態に係る車両用駆動制御装置1が用いられる車両2は、駆動輪2a、2aへ駆動力を付与する内燃機関(以下「エンジン」という)3と、駆動輪2a、2aへ付与する駆動力を発生する電動機(以下「MG1」という)4と、を備えている。
また、車両2は、エンジン3の出力軸3aと直結されエンジン3の駆動力により発電を行う発電機(以下「MG2」という)5と、MG1用のインバータ6と、MG2用のインバータ7と、車両2の電装品に電力を供給するための補助バッテリ8と、エンジン3の駆動力により発電する電力やMG1からの回生電力により充電されるバッテリ9と、このバッテリ9からの電力を降圧して補助バッテリ8を充電するためのDC/DCコンバータ10と、エンジン3の出力軸3aと駆動軸2bとの間に設けられた動力伝達機構11とを備えている。
また、本実施の形態に係る車両用駆動制御装置1は、エンジン3の駆動力を駆動輪2a、2aへ伝達する第1の伝達経路12と、電動機MG1の駆動力を駆動輪2a、2aへ伝達する第2の伝達経路13と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とのいずれか一方を選択または併用するように切り換える切換部(シンクロ機構ギア)14とを有している。
さらに、本実施の形態に係る車両用駆動制御装置1は、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13のいずれか一方の伝達経路における第1の損失と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用した伝達経路における第2の損失とを比較し、第1の損失と第2の損失のうち少ない方の伝達経路となるように切換部14による切り換えを制御する制御部(車両コントローラ)15を有している。
また、切換部14は、ギアの締結および解除を制御可能な機構により構成され、制御部15は、第1の損失と第2の損失との比較の結果に基づいて、ギアの締結または締結の解除を制御する。
また、制御部15は、ギアが締結されており、かつ運転者の要求トルクがエンジン3の最適動作点でのエンジン3のトルクより大きい場合、ギアの締結の解除を禁止するように制御する。
また、制御部15は、第1の伝達経路12における第1の損失と、第2の伝達経路13における第2の損失とを比較し、第1の損失と第2の損失のうち少ない方の伝達経路となるように切換部14による切り換えを制御する。
以下、図面を用いて車両用駆動制御装置1について詳細に説明する。
[動力伝達機構11]
上記動力伝達機構11は、図3乃至図6に示すように、MG1の出力軸4aに固定されたギア22と噛み合うギア23と、このギア22が一側に固定されたカウンタ軸24と、カウンタ軸24の他側に固定され駆動軸2bに固定されたギア25と噛み合うギア26と、カウンタ軸24の中間部にカウンタ軸24に対して空転可能に設けられた空転ギア27と、エンジン3の出力軸3aに固定され空転ギア27に噛み合うギア28と、カウンタ軸24の空転ギア27とギア26との間に設けられたシンクロ機構ギア16とで構成されている。
シンクロ機構ギア16は、図2に示すように、ギア17、シンクロナイザーリング18、キー19、スリーブ20、ハブ21とで構成される。ギア17は空転ギア27に一体に固定され、カウンタ軸24に対しては空転する。ハブ21はカウンタ軸24に固定され、カウンタ軸24と共に回転する。ハブ21の外周にはスプラインが形成されており、スリーブ20はハブ21に対して軸方向に移動可能で、ハブ21とともに一体に回転する。また、スリーブ20は、直動モータ機構(不図示)によりカウンタ軸24の軸方向に移動することでハブ21と噛み合った状態でギア17と噛み合い、空転ギア27とカウンタ軸24とをハブ21を介して連結する。直動モータ機構は、上記制御部15と接続されて、その駆動が制御される。
図3は、シンクロ機構ギア16が未締結(締結解除)の状態を示す。この状態では、図4に示すようにMG1の駆動力は、第2の伝達経路13によって駆動軸2bに伝達される。すなわち、MG1の駆動力は、ギア22、23を介してカウンタ軸24に伝達され、ギア26、25を介して駆動軸2bに伝達される。また、シンクロ機構ギア16が未締結の状態では、スリーブ20はギア17と噛み合っていないので、エンジン3からの駆動力が伝達される空転ギア27はカウンタ軸24に対して空転している。
図5は、図4に示す状態からスリーブ20をギア17側に移動させてシンクロ機構ギア16が締結した状態を示す。この状態では、図6に示すようにMG1の駆動力が第2の伝達経路13によって駆動軸2bに伝達されるのに加えて第1の伝達経路12によってエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達される。すなわち、シンクロ機構ギア16が締結した状態では、空転ギア27がシンクロ機構ギア16によりカウンタ軸24と連結され、エンジン3の駆動力がギア28、空転ギア27を介してカウンタ軸24に伝達され、カウンタ軸24からギア26、25を介して駆動軸2bに伝達される。この状態では、第1の伝達経路12、第2の伝達経路13を併用しMG1の駆動力とエンジン3の駆動力で車両2は走行する。また、第2の伝達経路13が選択された場合はMG1の駆動力で車両2は走行する。
上記スリーブ20は、直動モータ機構を制御する制御部15によって軸方向への移動が制御され、シンクロ機構ギア16の締結状態、締結解除状態が選択される。
制御部15は、図7に示すように、シンクロ機構16の締結、締結解除処理を行うシンクロ機構締結、締結解除処理部30と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13のいずれか一方の伝達経路における第1の損失と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用した伝達経路における第2の損失とを比較する低損失判定部31と、第1の損失を算出する第1の損失算出部32と、第2の損失を算出する第2の損失算出部33と、マップ記憶部34とを有している。
また、低損失判定部31は、第1の伝達経路12における第1の損失と、第2の伝達経路13における第2の損失とを比較するようにも機能する。
第1の損失算出部32は、MG1トルク決定部35、MG1必要電力算出部36、エンジン動作点決定部37を有している。
第2の損失算出部33は、エンジン回転速度算出部38、エンジン動作点決定部39、MG1トルク算出部40、MG2トルク算出部45、MG1回転速度算出部46、MG2回転速度算出部47を有している。
マップ記憶部34は、予め求められたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43、エンジン動作点マップ44からなる。
また、制御部15には、バッテリ9の残存容量(SOC)が入力され、車速センサから車両2の車速が入力され、運転者が踏み込んだブレーキの開度が入力される。これらのバッテリ9の残存容量、車速、ブレーキ開度の検知結果は図示しないセンサによって検知される。
[制御部15のシンクロ機構ギア締結判定処理]
次に、車両用駆動制御装置1の制御部15による切換部14の切り換え処理の一例、すなわち、シンクロ機構ギア16を締結状態にするか締結解除状態にするかの判定処理について、図8、図9に示すフローチャートに従い説明する。
車両2は、第2の伝達経路13によってMG1の駆動力が駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動されており、シンクロ機構ギア16は締結解除状態にある。この状態から、制御部15は、ステップS10において、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定の値C1(%)以下であるか否かを判断する。バッテリ9の残存容量が所定の値C1(%)を超えていると判断した場合には、バッテリ9に十分な電力があることを示しているので、MG1の駆動力により車両2は走行する。ステップS10において、バッテリ9の残存容量が所定値C1(%)以下と判断した場合にはステップS11を実行する。
ステップS11において、制御部15は、車速が所定の値V1(km/h)以上であるか否かを判断する。車速が所定の値V1(km/h)以下の場合には、車両2は運転効率の良好な車速で走行しているので、MG1の駆動力により車両2は走行する。ステップS11において、制御部15は、車速が所定の値V1(km/h)以上と判断した場合にはステップS12を実行する。
ステップS12において、制御部15は、ブレーキ操作量が所定の値B2(%)より小さいか否かを判断する。ブレーキ操作量が所定の値B2(%)より小さくないと判断した場合、すなわちブレーキ操作量が所定の値B2(%)より大きいと判断した場合には、車両2は減速状態で走行しているので、MG1の駆動力により車両2は走行する。ステップS12において、ブレーキ操作量が所定の値B2(%)より小さいと判断した場合には、車両2は減速せずに走行しており、制御部15は、ステップS13を実行する。
ステップS13では、制御部15は、MG1の駆動力により走行した場合の第1の損失と、MG1の駆動力とエンジン3の駆動力とで走行した場合の第2の損失とを低損失判定部31が比較する。すなわち、第2の伝達経路13で駆動力を駆動輪2aに伝達する場合での第1の損失と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用した場合での第2の損失とを比較する。
ステップS13における第1の損失と第2の損失との比較において、損失が低いと判定するとステップS14にて、制御部15はシンクロ機構ギア16による締結処理を行い、つまり、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用するようにシンクロ機構ギア16の締結処理を行う。これにより、MG1の駆動力に加えてエンジン3の駆動力が駆動軸2bに付与され駆動輪2a、2aが駆動する。これとともに、エンジン3の駆動力によりMG2が駆動されて発電が行われ、バッテリ9に充電がなされたり、DC/DCコンバータ10によって12Vの電圧に変換されて補機等に電力供給されたりする。
また、車両用駆動制御装置1の制御部15は、次のように制御することもできる。具体的には、ステップS13では、制御部15は、エンジン3の駆動力により走行した場合の第1の損失と、MG1の駆動力で走行した場合の第2の損失とを低損失判定部31が比較する。すなわち、第1の伝達経路12で駆動力を駆動輪2aに伝達する場合での第1の損失と、第2の伝達経路13で駆動力を駆動輪2aに伝達する場合での第2の損失とを比較する。
また、ステップS13における第1の損失と第2の損失との比較において、損失が低いと判定するとステップS14にて、制御部15はシンクロ機構ギア16による締結処理を行い、つまり、第1の伝達経路12を使用するようにシンクロ機構ギア16の締結処理を行う。これにより、エンジン3の駆動力が駆動軸2bに付与され駆動輪2a、2aが駆動する。これとともに、エンジン3の駆動力によりMG2が駆動されて発電が行われ、バッテリ9に充電がなされたり、DC/DCコンバータ10によって12Vの電圧に変換されて補機等に電力供給されたりする。
なお、このとき、MG1は、エンジン3の動力を使用してMG2によって発生した電力により駆動力を発生させている。
次に、ステップS13における第2の伝達経路13における損失と、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用した場合における損失との比較判定処理について説明する。
運転者がアクセルペダルを踏んで走行しているとき、MG1、MG2、エンジン3のトルク指令は図9に示す処理を制御部15の第1の損失算出部32が行うことで決定される。
図9において、工程P1において、要求駆動パワー、すなわち運転者が踏み込んだアクセルペダルの開度により検知される要求駆動力と走行している車両2の現在の車速により、制御部15のMG1トルク決定部35が、MG1が発生すべきトルクを決定する。次に、工程P2において、制御部15のMG1必要電力算出部36が、MG1が発生すべきトルクを発生するための必要電力を算出する。また、工程P3において、制御部15が、補機が必要とする電力を算出する。次に、工程P4において、エンジン動作点決定部37がエンジン動作点を決定する。このエンジン動作点の決定では、工程P2において算出したMG1が必要とする電力と、工程P3において算出した補機が必要とする電力との合計電力とでMG2が発電可能なエンジン動作点を決定する。このエンジン動作点は、予め作成してあるマップにより決定される。すなわち、制御部15は、要求された発電電力をMG2によって発電するためにエンジン3がどのような動作点で駆動すればよいかを予め形成してあるマップにより決定する。
そして、工程P5において、制御部15は、決定したエンジン動作点に従ってエンジン3を駆動し、MG2を駆動して発電させる。
上記の各工程P1〜P5において、制御部15が、MG1、MG2、エンジン3のトルク指令を決定する際に、図10に示すように制御部15は、MG1、MG2、エンジン3の損失(パワー[W])を予め用意されたマップから算出し、その合計を第1の損失としての総合損失Aとして算出する。
図10において、MG1の損失は、MG1の回転速度、MG1トルク、MG1に負荷する電圧とMG1損失マップ41とから算出する。エンジン3の損失は、エンジン回転速度、エンジントルク、エンジン3の温度とエンジン損失マップ42とから算出する。MG2の損失は、MG2の回転速度、MG2トルク、MG2が発生する電圧とMG2損失マップ43とから算出する。これらのMG1損失と、エンジン損失と、MG2損失との合計を総合損失A(第1の損失)とする。
上記の処理と並行して、車両2の走行状態が、シンクロ機構ギア16を締結状態として走行すると仮定した場合の第2の損失としての総合損失Bを制御部15は推測する。すなわち、図6に示すように第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを用いて、MG1、エンジン3の発生した駆動力を駆動軸2bに伝達した場合の総合損失Bを推測する。
まず、シンクロ機構ギア16を締結状態として車両2が走行した場合の各トルク指令が、図11に示す処理を制御部15の第2の損失算出部33が行うことで決定される。
図11において、制御部15は、工程P1において、エンジン回転速度算出部38が車速からエンジン回転速度を算出し、工程P2において、補機が必要とする電力を算出する。次に、工程P3において、MG2トルク算出部45が、補機が必要とする電力とMG2の回転速度とに基づいて必要電力を求め、MG2が発電するために必要なMG2必要トルク、すなわち発電トルクを算出する。制御部15は、このMG2必要トルク(発電トルク)の値をMG2のトルク指令値として、MG2に発電を行わせる。
また、工程P4において、要求駆動パワーとエンジン回転速度とに基づいて必要とするエンジン必要トルクAを算出する。次に、工程P5において、工程P3で算出されたMG2必要トルク(発電トルク)と工程P4で算出されたエンジン必要トルクAとを合算してエンジントルクを算出する。制御部15は、このエンジントルクの値をエンジントルク指令値として、エンジンを動作させる。
上記工程P1〜P5にてMG2トルク、エンジントルクのトルク指令を決定する際に、図12に示すように、制御部15は、MG1、エンジン3の損失(パワー[W])、MG2を予め用意された損失マップ41、42、43から算出し、その合計を総合損失B(第2の損失)として算出する。
図12において、MG1の損失は、MG1の回転速度、MG1トルク、MG1に負荷する電圧とMG1損失マップ41とから制御部15が算出する。エンジン3の損失は、エンジン回転速度、エンジントルク、エンジン3の温度とエンジン損失マップ42とから制御部15が算出する。MG2の損失は、MG2の回転速度、MG2トルク、MG2に負荷する電圧とMG2損失マップ43とから制御部15が算出する。これらのMG1損失とエンジン損失とMG2損失との合計を総合損失B(第2の損失)とする。
以上のように求められた総合損失A(第1の損失)、総合損失B(第2の損失)を使い、シンクロ機構ギア16の締結状態での損失が現在(シンクロ機構ギア16が締結していない状態、すなわち図4に示す状態)より小さくなるか否かを判定する。ただし、ヒステリシスHysAを設けてハンチングを防止してある。
次に低損失判定の手順について、図13のフローチャートに従い説明する。
制御部15は、低損失判定が0の場合において、ステップS10にて、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きいか否かを判断し、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きいと判断すると、ステップS11にて低損失判定=1と判断し、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きくない、つまり総合損失Aが総合損失B+HysA以下と判断するとステップS12にて低損失判定=0を維持する。
なお、本実施形態では、総合損失Aと総合損失B+HysAとを比較するようにしたが、ヒステリシスHysAを設けずに、総合損失Aと総合損失Bとを比較するようにしてもよい。
制御部15は、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きい場合、すなわち車両2が第2の伝達経路13にてMG1の駆動力のみで走行している状態の損失(総合損失A)が、第1の伝達経路12にてMG1の駆動力とエンジン3の駆動力を併用して車両2を走行させた場合の損失より大きいと判断すると、低損失判定が1と判定する。この場合には、図8に示すフローチャートのステップS14にて,シンクロ機構ギア16の締結処理が成される。この結果、車両2は第1の伝達経路12によってMG1の駆動力とエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動される。
また、制御部15は、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きくない場合、すなわち車両2が第2の伝達経路13にてMG1の駆動力のみで走行している状態の損失(総合損失A)が、第1の伝達経路12にてMG1の駆動力とエンジン3の駆動力を併用して車両2を走行させた場合の損失以下と判断すると、低損失判定は0が維持され、図8に示すフローチャートのステップ13にて低損失判定=1ではないと判断し、シンクロ機構ギア16の締結は行われない。
次に、第2の伝達経路13によるMG1の駆動力と、第1の伝達経路12によるエンジン3の駆動力とが車両2の駆動軸2bに伝達されており、シンクロ機構ギア16が締結状態にある状態から、シンクロ機構ギア16の締結解除判断処理について、図14に示すフローチャートに従い説明する。この状態では、シンクロ機構ギア16が締結状態であって、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用し、MG1の駆動力とエンジン3の駆動力とが駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動している。
この状態で、制御部15は、ステップS10で運転者がブレーキを踏み込んだか否かを検知するため、ブレーキ操作量が検出され、このブレーキ操作量が所定値B1[%]より大きいか否かを判断する。ブレーキ操作量が所定値B1[%]より大きい、すなわち運転者がブレーキを踏み込んで車両2を減速している状態では、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。これにより、車両2は第2の伝達経路13によってMG1の駆動力が駆動軸2bに伝達され、駆動輪2aが駆動される。
制御部15が、ブレーキ操作量が所定値B1[%]より小さいと判断した場合は、ステップS12以下が実行される。ステップS12では車速が所定の速度V2[km/h]より小さいか否かが判断される。車速が所定の速度V2[km/h]より小さい場合、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。一方、車速が所定の速度V2[km/h]より小さくない場合、すなわち車速が所定の速度V2[km/h]以上の場合は、ステップS13において、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定の値C2[%]より大きいか否かを判断する。ステップS13においてバッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きいと判断した場合は、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。一方、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きくない、すなわちバッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]以下と判断した場合は、ステップS14において、低損失判定がなされる。ステップS14において低損失判定=0と判定されると、すなわち、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用している場合の総合損失Bが、第2の伝達経路13を使用している際の総合損失Aより大きいと判断されると、ステップS11にてシンクロ機構ギア16の締結解除処理がなされ、第2の伝達経路13によってMG1の駆動力のみによって車両2は走行する。
一方、ステップS14において、低損失判定=0でない、例えば、低損失判定=1と判定すると、現状の状態を継続して車両2は走行する。具体的には、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用している場合の総合損失Bが、第2の伝達経路13を使用している際の総合損失Aより小さいと判断されると、第2の伝達経路13によってMG1の駆動力が駆動軸2bに伝達されるとともに第1の伝達経路12によってエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達されて車両2は走行する。
上記ステップS14における低損失判定では、運転者がアクセルペダルを踏んで走行しているときMG1、エンジン3のトルク指令は前述した図11の工程による処理で決定する。
その際、前述した図12のように、MG1、エンジン3、MG2の損失(パワー[W])を予め用意されたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43から算出し、その合計を総合損失Bとする。
これと並行して車両2の走行状態が、シンクロ機構ギア16を締結状態として走行すると仮定した場合の総合損失Bを制御部15は推測する。前述したようにシンクロ機構ギア16を締結解除した状態で走行した場合の各トルク指令は図9に示す処理で決定する。
その際、図10のようにMG1、エンジン3、MG2の損失(パワー[W])を予め用意されたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43から算出し、その合計を総合損失Aとする。
以上のように求められた総合損失A、総合損失Bを使い、シンクロ機構ギア16の締結を解除した状態での損失が現在より小さくなるか否かを判定する。ただし、ヒステリシスHysBを設けてハンチングを防止してある。
次に低損失判定の手順について、図15のフローチャートに従い説明する。
制御部15は、ステップS10において、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下か否かを判断する。制御部15は、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下である場合、ステップS11において、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きいか否かを判断し、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きいと判断すると、ステップS12において低損失判定=0と判断する。そして、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きくない、つまり小さいと判断するとステップS13において低損失判定=1と判断する。
なお、本実施形態では、総合損失Bと総合損失A+HysBとを比較するようにしたが、ヒステリシスHysBを設けずに、総合損失Bと総合損失Aとを比較するようにしてもよい。
また、制御部15は、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きい場合、低損失判定を0と判定する。すなわち、制御部15は、車両2が第2の伝達経路13によるMG1の駆動力と、第1の伝達経路12によるエンジン3の駆動力とで走行する場合の損失(総合損失B)が、第2の伝達経路13にてMG1の駆動力で車両2を走行する場合の損失より大きいと判断すると、低損失判定を0と判定する。この場合には、図14に示すフローチャートのステップS11にてシンクロ機構ギア16の締結状態を解除する。この結果、車両2は第2の伝達経路13によってMG1の駆動力で駆動される。
また、制御部15は、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きくない場合、低損失判定を1と判定する。すなわち、制御部15は、車両2が第2の伝達経路13にてMG1の駆動力と、第1の伝達経路12によるエンジン3の駆動力とで走行する場合の損失(総合損失B)が、第2の伝達経路13にてMG1の駆動力で車両2を走行する場合の損失より小さいと判断すると、低損失判定を1と判定する。このとき、図14のフローチャートに示すように、シンクロ機構ギア16の締結解除処理は行われない。
また、制御部15は、図15に示すフローチャートのステップS10において、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下でないとき、すなわち、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルクより大きいときは、MG1もアシストに使われる。その場合、シンクロ機構ギア16の締結状態を解除せず、シンクロ機構ギア16を締結状態のままとする。
また、車両用駆動制御装置1の制御部15は、次のように制御することもできる。具体的には、図8のステップS13における第1の伝達経路12の損失と、第2の伝達経路13における損失との比較判定処理であり、以下に説明する。
図10において、MG1の損失は、MG1の回転速度、MG1トルク、MG1に負荷する電圧とMG1損失マップ41とから算出する。エンジン3の損失は、エンジン回転速度、エンジントルク、エンジン3の温度とエンジン損失マップ42とから算出する。MG2の損失は、MG2の回転速度、MG2トルク、MG2が発生する電圧とMG2損失マップ43とから算出する。これらのMG1損失と、エンジン損失と、MG2損失との合計を総合損失A(第2の損失)とする。
上記の処理と並行して、車両2の走行状態が、シンクロ機構ギア16を締結状態として走行すると仮定した場合の第1の損失としての総合損失Bを制御部15は推測する。すなわち、図6に示すように第1の伝達経路12を用いて、エンジン3の発生した駆動力を駆動軸2bに伝達した場合の総合損失Bを推測する。
まず、シンクロ機構ギア16を締結状態として車両2が走行した場合の各トルク指令が、図11に示す処理を制御部15の第1の損失算出部33が行うことで決定される。なお、図11については、上述した処理と同様のため説明を省略する。
そして、図11の工程P1〜P5にてMG2トルク、エンジントルクのトルク指令を決定する際に、図12に示すように、制御部15は、MG1、エンジン3の損失(パワー[W])、MG2を予め用意された損失マップ41、42、43から算出し、その合計を総合損失B(第1の損失)として算出する。
図12において、MG1の損失は、MG1の回転速度、MG1トルク、MG1に負荷する電圧とMG1損失マップ41とから制御部15が算出する。エンジン3の損失は、エンジン回転速度、エンジントルク、エンジン3の温度とエンジン損失マップ42とから制御部15が算出する。MG2の損失は、MG2の回転速度、MG2トルク、MG2に負荷する電圧とMG2損失マップ43とから制御部15が算出する。これらのMG1損失とエンジン損失とMG2損失との合計を総合損失B(第1の損失)とする。
以上のように求められた総合損失A(第2の損失)、総合損失B(第1の損失)を使い、シンクロ機構ギア16の締結状態での損失が現在(シンクロ機構ギア16が締結していない状態、すなわち図4に示す状態)より小さくなるか否かを判定する。ただし、ヒステリシスHysAを設けてハンチングを防止してある。
次に低損失判定の手順について、図13のフローチャートに従い説明する。
制御部15は、低損失判定が0の場合において、ステップS10において、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きいか否かを判断し、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きいと判断すると、ステップS11において低損失判定=1と判断し、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きくない、つまり総合損失Aが総合損失B+HysA以下と判断するとステップS12において低損失判定=0を維持する。
なお、本実施形態では、総合損失Aと総合損失B+HysAとを比較するようにしたが、ヒステリシスHysAを設けずに、総合損失Aと総合損失Bとを比較するようにしてもよい。
また、制御部15は、総合損失Aが総合損失B+HysAより大きい場合、すなわち車両2が第2の伝達経路13にてMG1の駆動力のみで走行している状態の損失(総合損失A)が、第1の伝達経路12にてエンジン3の駆動力を使用して車両2を走行させた場合の損失より大きいと判断すると、低損失判定を1と判定する。この場合には、図8に示すフローチャートのステップS14において、シンクロ機構ギア16の締結処理が成される。この結果、車両2は第1の伝達経路12によってエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動される。
次に、第2の伝達経路13によるMG1の駆動力と、第1の伝達経路12によるエンジン3の駆動力とが車両2の駆動軸2bに伝達されており、シンクロ機構ギア16が締結状態にある状態から、シンクロ機構ギア16の締結解除判断処理について、図14に示すフローチャートに従い説明する。この状態では、シンクロ機構ギア16が締結状態であって、第1の伝達経路12と第2の伝達経路13とを併用し、MG1の駆動力とエンジン3の駆動力とが駆動軸2bに伝達され駆動輪2aが駆動している。
この状態で、制御部15は、ステップS10で運転者がブレーキを踏み込んだか否かを検知するため、ブレーキ操作量が検出され、このブレーキ操作量が所定値B1[%]より大きいか否かを判断する。ブレーキ操作量が所定値B1[%]より大きい、すなわち運転者がブレーキを踏み込んで車両2を減速している状態では、ステップS11において、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。これにより、車両2は第2の伝達経路13によってMG1の駆動力が駆動軸2bに伝達され、駆動輪2aが駆動される。
制御部15が、ブレーキ操作量が所定値B1[%]より小さいと判断した場合は、ステップS12以下が実行される。ステップS12では車速が所定の速度V2[km/h]より小さいか否かが判断される。車速が所定の速度V2[km/h]より小さい場合、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。一方、車速が所定の速度V2[km/h]より小さくない場合、すなわち車速が所定の速度V2[km/h]以上の場合は、ステップS13において、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きいか否かを判断する。ステップS13においてバッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きいと判断した場合は、ステップS11で、シンクロ機構ギア16の締結を解除する。一方、バッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]より大きくない、すなわちバッテリ9の残存容量(SOC)が所定値C2[%]以下と判断した場合は、ステップS14において、低損失判定がなされる。ステップS14において低損失判定=0と判定されると、すなわち、第1の伝達経路12を使用している場合の総合損失Bが、第2の伝達経路13を使用している際の総合損失Aより大きいと判断されると、ステップS11においてシンクロ機構ギア16の締結解除処理がなされ、第2の伝達経路13によってMG1の駆動力のみによって車両2は走行する。
一方、ステップS14において、低損失判定=0でない、例えば、低損失判定=1と判定すると、現状の状態を継続して車両2は走行する。具体的には、第1の伝達経路12を使用している場合の総合損失Bが、第2の伝達経路13を使用している際の総合損失Aより小さいと判断されると、第1の伝達経路12によってエンジン3の駆動力が駆動軸2bに伝達されて車両2は走行する。
上記ステップS14における低損失判定では、運転者がアクセルペダルを踏んで走行しているとき、MG1、エンジン3のトルク指令は前述した図11の工程による処理で決定する。
その際、前述した図12のように、MG1、エンジン3、MG2の損失(パワー[W])を予め用意されたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43から算出し、その合計を総合損失Bとする。
これと並行して車両2の走行状態が、シンクロ機構ギア16を締結状態として走行すると仮定した場合の総合損失Bを制御部15は推測する。前述したようにシンクロ機構ギア16を締結解除した状態で走行した場合の各トルク指令は図9に示す処理で決定する。
その際、図10のようにMG1、エンジン3、MG2の損失(パワー[W])を予め用意されたMG1損失マップ41、エンジン損失マップ42、MG2損失マップ43から算出し、その合計を総合損失Aとする。
以上のように求められた総合損失A、総合損失Bを使い、シンクロ機構ギア16の締結を解除した状態での損失が現在より小さくなるか否かを判定する。ただし、ヒステリシスHysBを設けてハンチングを防止してある。
次に低損失判定の手順について、図15のフローチャートに従い説明する。
制御部15は、ステップS10において、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下か否かを判断する。制御部15は、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下である場合、ステップS11において、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きいか否かを判断し、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きいと判断すると、ステップS12において低損失判定=0と判断する。そして、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きくない、つまり小さいと判断するとステップS13において低損失判定=1と判断する。
なお、本実施形態では、総合損失Bと総合損失A+HysBとを比較するようにしたが、ヒステリシスHysBを設けずに、総合損失Bと総合損失Aとを比較するようにしてもよい。
また、制御部15は、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きい場合、低損失判定を0と判定する。すなわち、制御部15は、車両2が、第1の伝達経路12を使用してエンジン3の駆動力で走行する場合の損失(総合損失B)が、第2の伝達経路13にてMG1の駆動力で車両2を走行する場合の損失より大きいと判断すると、低損失判定を0と判定する。この場合には、図14に示すフローチャートのステップS11においてシンクロ機構ギア16の締結状態を解除する。この結果、車両2は第2の伝達経路13によってMG1の駆動力で駆動される。
また、制御部15は、総合損失Bが総合損失A+HysBより大きくない場合、低損失判定を1と判定する。すなわち、制御部15は、車両2が、第1の伝達経路12を使用してエンジン3の駆動力で走行する場合の損失(総合損失B)が、第2の伝達経路13にてMG1の駆動力で車両2を走行する場合の損失より小さいと判断すると、低損失判定を1と判定する。このとき、図14のフローチャートに示すように、シンクロ機構ギア16の締結解除処理は行われない。
また、制御部15は、図15に示すフローチャートのステップS10において、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルク以下でないとき、すなわち、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルクより大きいときは、MG1もアシストに使われる。その場合、シンクロ機構ギア16の締結状態を解除せず、シンクロ機構ギア16を締結状態のままとする。
以上説明したように、本実施の形態によれば、シンクロ機構ギア16を締結、締結解除する条件を車速、バッテリ残存容量(SOC)、アクセル、ブレーキだけで判断せずに現状の総合損失を算出し、さらに締結して走行した場合の総合損失を予測し、損失が少ないと判断されたときにシンクロ機構ギア16の締結や、締結解除を行うので、エンジン3やMG1などの動力源の損失を少なくして、燃費を向上することができ、運転効率を向上させることができる。
また、エンジントルクがエンジントルク規定ラインのトルクより大きいときは、MG1もアシスト制御に使用する。その際には、シンクロ機構ギア16の締結を解除せず、締結状態とすることにより、エンジンパワーとモータパワーを合わせ力強い加速を行うことができる。
なお、本実施の形態では、シンクロ機構ギア16を用いてエンジン3の出力軸3aと駆動軸2bを断続したが、シンクロ機構ギア16に代えて湿式クラッチや乾式クラッチを用いて、エンジン3の出力を駆動輪2aに結合するシステムにおいても成り立つものである。
また、この実施の形態では、MG1、MG2、エンジン3の損失を用いて伝達経路を選択しているが、ギアの損失の推測、予測することができるため、ギアの損失も総合損失を算出する際に含めることも可能であり、総合損失の値をより正確に求めることができる。
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1 車両用駆動制御装置
2 車両
2a 駆動輪
2b 駆動軸
3 エンジン(内燃機関)
4 電動機(MG1)
5 発電機(MG2)
9 バッテリ
12 第1の伝達経路
13 第2の伝達経路
14 切換部(シンクロ機構ギア16)
15 制御部