JP2016159353A - 厚鋼板冷却方法及び厚鋼板冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の厚鋼板冷却方法は、複数の冷却ヘッダーと、これらの複数の冷却ヘッダー間、最初の冷却ヘッダーの上流側及び最後の冷却ヘッダーの下流側に配設され、厚鋼板の表面に幅方向に傾斜して噴水できる複数の水切りヘッダーとを備える冷却装置を用い、熱間圧延後の厚鋼板を冷却する方法であって、上記冷却装置に投入される厚鋼板の幅方向の温度分布を測定する工程と、上記測定工程で得られる温度分布、上記厚鋼板の物性、冷却ヘッダーから散水される冷却水の温度、及び上記各水切りヘッダーの使用の有無又は各水切りヘッダーの搬送方向位置の違いの水切りパターンに基づいて、冷却開始から終了までの厚鋼板の表面の温度分布を予測する工程と、上記予測工程で得られる温度分布の偏差が小さくなるよう水切りパターンを選択する工程とを備える。
【選択図】図4
Description
図1の厚鋼板加工設備は、原料厚鋼板(スラブ)Pを加熱する加熱炉1と、加熱された原料厚鋼板Pを熱間圧延する粗圧延機2と、粗圧延機2で圧延された厚鋼板Pをさらに熱間圧延する仕上圧延機3と、仕上圧延機3で熱間圧延された厚鋼板Pを冷却する厚鋼板冷却装置4と、冷却された厚鋼板Pを矯正するレベラー5とを備える。
厚鋼板冷却装置4は、熱間圧延後の厚鋼板Pを搬送しつつ厚鋼板Pの表面(上面)及び裏面(下面)に冷却水を散水することにより厚鋼板Pを冷却するものであって、加速冷却装置とも呼ばれる。この厚鋼板冷却装置4において、厚鋼板Pの冷却は、予め設定される冷却停止温度まで急速に冷却される。冷却停止温度としては、目的とする製品(厚鋼板Pの用途)に応じて定められるが、例えば200℃以上650℃以下とされる。
上記搬送装置10は、厚鋼板Pを搬送する。この搬送装置10は、例えば図2に例示するように、複数のローラー11によって構成されるローラーコンベアーとすることができる。
温度測定装置20は、上記搬送装置10により搬送される厚鋼板Pの搬送方向に垂直な幅方向の温度分布を測定する。この温度測定装置20は、表面冷却ヘッダー30の上流側で厚鋼板Pの幅方向の温度分布を測定できるものであればよく、例えば放射温度計を用いることができる。
上記表面冷却ヘッダー30は、厚鋼板Pの搬送方向に列設され、それぞれ幅方向に分布を有する水量密度で厚鋼板Pの表面に冷却水を散水できるよう構成される。
上記水切りヘッダー40は、複数の表面冷却ヘッダー30の間、最初の表面冷却ヘッダー30の上流側及び最後の表面冷却ヘッダー30の下流側にそれぞれ配設され、厚鋼板Pの表面に幅方向に傾斜して噴水することにより、厚鋼板Pの表面に滞留する冷却水を幅方向に押し流して除去する。
上記裏面冷却ヘッダー50は、厚鋼板Pを挟んで表面冷却ヘッダー30に対向するよう配設され、厚鋼板Pの裏面に均等な水量密度で冷却水を散水する。
上記制御装置60は、温度測定装置20の測定結果に基づいて、水切りヘッダー40の使用の有無の組合せにより決定される水切りパターンの選択、及び表面冷却ヘッダー30の水量密度分布の調整を行う。
レベラー5は、厚鋼板冷却装置4により冷却された厚鋼板Pの歪みをローラーによって補正して平坦化する。
これより、上記厚鋼板冷却装置4の動作、つまり上記制御装置60によって行うことができる本発明の一実施形態に係る厚鋼板冷却方法について説明する。
ステップS01の初期条件設定工程において、制御装置60は、水量密度分布W(x)の初期値及びその他の運転条件を設定する。また、その他の運転条件としては、厚鋼板Pの板厚、幅方向の長さ、比熱、熱伝導率、変態発熱量等の物性、冷却水の水温、冷却停止温度、搬送装置10の搬送速度などが設定される。このような初期条件は、例えばハードディスクドライブやメモリー等の記憶装置から読み込むことや、外部の制御装置との通信によって設定することができる。
ステップS02の温度分布測定工程において、制御装置60は、温度測定装置20に厚鋼板Pの幅方向位置xでの表面温度の分布Ti(x)[K]を測定させる。この厚鋼板Pの温度分布Ti(x)は、厚鋼板Pの仕様等に応じて差異があり、同じ仕様の厚鋼板Pであっても、加熱炉1での偏熱、スキッドの影響等により一定ではない。
ステップS03の温度分布予測工程は、図6に示すように、初期設定されている水量密度分布W(x)及び厚鋼板Pの幅方向の長さB[mm]を考慮して厚鋼板Pの表面に形成される水膜高さの幅方向の分布h(x)を算出する工程(ステップS11)と、この水膜高さ分布h(x)を用いて熱伝達係数の分布α(x)[W/(m2・K)]を算出する工程(ステップS12)と、上記温度分布Ti(x)の測定値及び熱伝達係数分布α(x)に基づいて厚鋼板Pの冷却開始から終了まで、つまり全ての複数の表面冷却ヘッダー30の下を通過する間の予測温度分布Te(x)を導出する工程(ステップS13)とを有する。
ステップS11の水膜高さ算出工程では、幅方向の位置xでの水膜高さh(x)を、限界水膜高さhcr[mm]と、水量密度分布W(x)と、厚鋼板Pの幅方向の長さB及び厚鋼板冷却装置4固有の特性等に応じて定められる係数f1、f2及びf3とを用い、下記式(1)により算出する。
h(x)=hcr+f1・(1−f3・x)0.5−f2・(1−f3・x) ・・・(1)
hcr={(2+C)・qcr 2/2/g}1/3 ・・・(11)
qcr=γ・(B2+0.25)0.5/4 ・・・(12)
なお、qcrは限界流量[L/min]、gは重力加速度[m/sec2]、γは水量密度、水量クラウン量及びエッジカット量により決定されるノズル群流量[L/min]、Cは定数である。
ステップS12の熱伝達係数分布算出工程では、位置xでの熱伝達係数α(x)を、水膜高さh(x)と、基準水膜高さh0(y)[mm]及び幅方向中心での熱伝達係数(基準熱伝達係数)α0[W/(m2・K)]と、基準水量密度W0に応じて定められる補正係数εとを用い、下記式(2)により算出する。
α(x)={h(x)/h0(y)}ε・α0 ・・・(2)
α0=10^(c1+c2・logW0+c3・Ti0) ・・・(21)
なお、c1、c2及びc3は定数であり、Ti0は、厚鋼板Pの幅方向中心での表面温度[K]である。
ステップS13の温度分布導出工程では、上記温度分布Ti(x)及び熱伝達係数分布α(x)を用いて、冷却開始から終了までの厚鋼板Pの予測される幅方向の温度分布Te(x)を導出する。この予測温度分布Te(x)の導出は、厚鋼板Pの表面における熱伝達を上記熱伝達係数α(x)を用いて計算し、厚鋼板Pの内部における熱伝導を厚さ方向の一次元熱伝導方程式を用いて計算することによって行われる。
図5のステップS04の水切りパターン選択工程では、ステップS03で予測した温度分布Te(x)の履歴のうちで、冷却終了時の温度分布Te(x)について幅方向中心における温度Te(0)との偏差の平均値を算出し、この平均温度偏差の絶対値が最も小さい水切りパターンを選択する。
ステップS05の確認工程では、ステップS04の水切りパターン選択工程で選択した水切りパターンについて予測した温度分布Te(x)における上記温度偏差の絶対値が温度分布Te(x)所定の閾値以下であるか否かを確認する。このステップS05において平均温度偏差の絶対値が閾値以下である場合、温度偏差が収束したものと判断して、図5の水量密度分布決定処理を終了、つまり現在の水量密度分布W(x)を維持する。一方、ステップS05において平均温度偏差の絶対値が閾値を超える場合、ステップS06に進んで水量密度分布W(x)の調整を行い、ステップS07で温度分布Te(x)の再予測を行う。
ステップS06の水量密度分布調整工程では、クラウン量Cwを調整する。具体的には、上記平均温度偏差が正の値である場合にはクラウン量Cwを一定量だけ増加し、上記平均温度偏差が負の値である場合にはクラウン量Cwを一定量だけ減少する。
ステップS07の温度分布再予測工程では、冷却後の厚鋼板P表面の温度分布Te(x)を改めて予測し直す。この冷却後の厚鋼板P表面の温度分布Te(x)の予測は、ステップS03の温度分布予測工程と同様に、図6に示す手順で冷却開始から終了までの厚鋼板P表面の温度分布Te(x)を予測することによって行ってもよい。
当該厚鋼板冷却方法を行う当該厚鋼板冷却装置4は、水切りパターンを考慮して冷却開始から終了までの厚鋼板Pの表面の温度分布Te(x)を予測し、温度分布Te(x)の偏差が小さくなる水切りパターンを選択することにより水膜高さの搬送方向の分布を適切化するので、冷却開始から終了までの厚鋼板Pの温度偏差を効果的に抑制できる。従って、当該厚鋼板冷却方法により厚鋼板を冷却する当該厚鋼板の製造方法は、高品質の厚鋼板を製造することができる。
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
図2に準じ、4つの表面冷却ヘッダーと5つの水切りヘッダーとを備える冷却装置を用いて、水切りヘッダーの使用の有無の組合せが異なる水切りパターンにおいて、厚鋼板を冷却し、表裏の温度差を確認した。具体的には、水切りヘッダーを全て使用する水切りパターンと、水切りヘッダーを1つおきに使用する水切りパターン(1番目の表面冷却ヘッダーと2番目の表面冷却ヘッダーとの間の水切りヘッダー及び3番目の表面冷却ヘッダーと4番目の表面冷却ヘッダーとの間の水切りヘッダーを不使用)とで厚鋼板を冷却し、厚鋼板の表裏面の平均温度差がどのように異なるかを確認した。
2 粗圧延機
3 仕上圧延機
4 厚鋼板冷却装置
5 レベラー
10 搬送装置
11 ローラー
20 温度測定装置
30 表面冷却ヘッダー
31 吐出口
32 隔壁
33 中央領域
34 端部領域
35 中央給水流路
36 端部給水流路
37 主調整弁
38 分岐流路
39 分岐調整弁
40 水切りヘッダー
50 裏面冷却ヘッダー
60 制御装置
P 厚鋼板
Claims (5)
- 熱間圧延後の厚鋼板の搬送方向に列設され、搬送方向と垂直な幅方向に分布を有する水量密度で散水できる複数の冷却ヘッダーと、これらの複数の冷却ヘッダー間、最初の冷却ヘッダーの上流側及び最後の冷却ヘッダーの下流側に配設され、厚鋼板の表面に幅方向に傾斜して噴水できる複数の水切りヘッダーとを備える冷却装置を用い、熱間圧延後の厚鋼板を冷却する方法であって、
上記冷却装置に投入される厚鋼板の幅方向の温度分布を測定する工程と、
上記測定工程で得られる温度分布、上記厚鋼板の物性、冷却ヘッダーから散水される冷却水の温度、及び上記各水切りヘッダーの使用の有無又は各水切りヘッダーの搬送方向位置の違いの水切りパターンに基づいて、冷却開始から終了までの厚鋼板の表面の温度分布を予測する工程と、
上記予測工程で得られる温度分布の偏差が小さくなるよう水切りパターンを選択する工程と
を備えることを特徴とする厚鋼板冷却方法。 - 上記冷却開始から終了までの厚鋼板の表面の温度分布の予測が、上記水切りパターン毎に予想される搬送方向の水膜高さ分布に基づく各冷却ヘッダー毎の水膜高さの代表値を用いて行われる請求項1に記載の厚鋼板冷却方法。
- 上記予測工程で、冷却開始から終了までの厚鋼板の裏面の温度分布をさらに予測し、
上記選択工程で、上記予測工程で得られる厚鋼板の表面の温度分布と裏面の温度分布との差が小さくなるよう水切りパターンを選択する請求項1又は請求項2に記載の厚鋼板冷却方法。 - 予測した冷却後の幅方向の温度偏差を小さくするよう上記水量密度分布を調整する工程をさらに備え、
上記冷却開始から終了までの温度分布を予測する工程が、
上記水量密度分布及び厚鋼板の幅方向の長さを考慮して厚鋼板の表面に形成される水膜高さの幅方向の分布を算出する工程と、
この幅方向の水膜高さ分布を用いて熱伝達係数の幅方向の分布を算出する工程と、
上記温度分布の測定値及び熱伝達係数分布に基づいて厚鋼板の冷却開始から終了までの幅方向の予測温度分布を導出する工程と
を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の厚鋼板冷却方法。 - 熱間圧延後厚鋼板を搬送する搬送装置と、
上記厚鋼板の搬送方向に列設され、搬送方向と垂直な幅方向に分布を有する水量密度で散水できる複数の冷却ヘッダーと、
これらの複数の冷却ヘッダー間、最初の冷却ヘッダーの上流側及び最後の冷却ヘッダーの下流側に配設され、厚鋼板の表面に幅方向に傾斜して噴水できる複数の水切りヘッダーと、
上記冷却ヘッダーの上流側で厚鋼板の幅方向の温度分布を測定する温度測定装置と、
上記温度測定装置の測定結果に基づいて上記各水切りヘッダーの使用の有無又は各水切りヘッダーの搬送方向位置の違いの水切りパターンを選択する制御装置と
を備え、
上記制御装置が、
温度測定装置が測定した温度分布、上記厚鋼板の物性、冷却ヘッダーから散水される冷却水の温度、及び上記水切りパターンに基づいて、冷却開始から終了までの厚鋼板の表面の温度分布を予測する制御要素と、
上記予測した温度分布の偏差が小さくなるよう水切りパターンを選択する制御要素と
を有する厚鋼板冷却装置。
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