JP6275525B2 - 厚鋼板の冷却方法及び厚鋼板の製造方法並びに厚鋼板冷却装置 - Google Patents
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h(x)=hcr+f1・(1−f3・x)0.5−f2・(1−f3・x) ・・・(1)
α(x)={h(x)/h0}ε・α0 ・・・(2)
図1の厚鋼板製造設備は、原料厚鋼板(スラブ)Pを加熱する加熱炉1と、加熱された原料厚鋼板Pを熱間圧延する粗圧延機2と、粗圧延機2で圧延された厚鋼板Pをさらに熱間圧延する仕上圧延機3と、仕上圧延機3で熱間圧延された厚鋼板Pを冷却する厚鋼板冷却装置4と、冷却された厚鋼板Pを矯正するレベラー5とを備える。
厚鋼板冷却装置4は、熱間圧延後の厚鋼板Pを搬送しつつ厚鋼板Pの表面及び裏面に冷却水を散水することにより厚鋼板Pを冷却するものであって、加速冷却装置とも呼ばれる。この厚鋼板冷却装置4において、厚鋼板Pは、目的とする製品に応じて定められるが、
例えば200℃以上650℃以下の冷却停止温度まで急速に冷却される。
搬送装置10は、例えば図2に例示するように、複数のローラー11によって構成されるローラーコンベアーとすることができる。
温度測定装置20としては、表面冷却ヘッダー30の上流側で厚鋼板Pの横断方向の温度分布を測定できるものであればよく、例えば放射温度計を用いることができる。
表面冷却ヘッダー30は、図3(a)に示すように、厚鋼板Pの横断方向(図中左右方向)に長い直方体状であり、底面に開口する複数の吐出口31と、内部空間を横断方向に3つに区分する2枚の隔壁32とを備え、2枚の隔壁32が横断方向に対称、かつ横断方向に対して傾斜して配設されている。これにより、表面冷却ヘッダー30の内部空間は、2枚の隔壁32の内側の中央領域33と2枚の隔壁32の外側の2つの端部領域34とに区分される。この表面冷却ヘッダー30に対して、厚鋼板Pは、図中の矢印D方向に搬送される。
裏面冷却ヘッダー40は、厚鋼板Pの裏面に一様に冷却水を散水する多数のノズルにより構成され、厚鋼板Pを挟んで各表面冷却ヘッダー30に対向するよう配置されている。この裏面冷却ヘッダー40による散水量は、位置にかかわらず一定とされる。
制御装置50は、温度測定装置20によって測定された厚鋼板Pの横断方向の温度分布Ti(x)[K]に基づいて、表面冷却ヘッダー30の水量密度分布W(x)、つまり基準水量密度W0及びクラウン量Cwを調整弁37及び分岐調整弁39によって調節することにより、表面冷却ヘッダー30の水量密度分布W(x)を決定する処理を行う。
レベラー5は、厚鋼板冷却装置4により冷却された厚鋼板Pの歪みをローラーによって補正して平坦化する。
これより、上記厚鋼板冷却装置4の動作、つまり上記制御装置50によって行われる本発明の一実施形態に係る厚鋼板の冷却方法について説明する。
ステップS01の初期条件設定工程において、制御装置50は、水量密度分布W(x)の初期値及びその他の運転条件を設定する。水量密度分布W(x)の初期値としては、基準水量密度W0及びクラウン量Cwが、あらかじめ設定されている値に設定される。また、その他の運転条件としては、厚鋼板Pの板厚、横断方向の長さ、比熱、熱伝導率、変態発熱量等の物性、冷却水の水温、冷却停止温度、搬送装置10の搬送速度などが設定される。このような初期条件は、例えばハードディスクドライブやメモリー等の記憶装置から読み込むことや、外部の制御装置との通信によって設定することができる。
ステップS02の温度分布測定工程において、制御装置50は、温度測定装置20に厚鋼板Pの横断方向位置xでの表面温度の分布Ti(x)[K]を測定させる。この厚鋼板Pの温度分布Ti(x)は、厚鋼板Pの仕様等に応じて差異があり、同じ仕様の厚鋼板Pであっても、加熱炉1での偏熱、スキッドの影響等により一定ではない。例として、図5に、矩形の厚鋼板を上流側において長辺方向に搬送した場合及び短辺方向に搬送した場合の温度分布Ti(x)の測定例を示す。
ステップS03の温度分布予測工程は、図6に詳しく示すように、現在設定されている水量密度分布W(x)及び厚鋼板Pの横断方向の長さB[mm]を考慮して厚鋼板Pの表面に形成される水膜高さの横断方向の分布h(x)を算出する工程(ステップS11)と、この水膜高さ分布h(x)を用いて熱伝達係数の分布α(x)[W/(m2・K)]を算出する工程(ステップS12)と、上記温度分布Ti(x)の測定値及び熱伝達係数分布α(x)に基づいて厚鋼板Pの冷却水散水後、つまりすべての複数の表面冷却ヘッダー30の下を通過した直後に予測温度分布Te(x)を導出する工程(ステップS13)とを有する。
ステップS11の水膜高さ算出工程では、横断方向の位置xでの水膜高さh(x)を、限界水膜高さhcr[mm]と、水量密度分布W(x)及び厚鋼板Pの横断方向の長さB及び厚鋼板冷却装置4固有の特性等に応じて定められる係数f1、f2及びf3とを用い、下記式(1)により算出する。
h(x)=hcr+f1・(1−f3・x)0.5−f2・(1−f3・x) ・・・(1)
hcr={(2+C)・qcr 2/2/g}1/3 ・・・(11)
qcr=γ・(B2+0.25)0.5/4 ・・・(12)
なお、qcrは限界流量[L/min]、gは重力加速度[m/sec2]、γは水量密度、水量クラウン量及びエッジカット量により決定されるノズル群流量[L/min]、Cは定数である。
ステップS12の熱伝達係数分布算出工程では、位置xでの熱伝達係数α(x)を、水膜高さh(x)と、横断方向中心での水膜高さ(基準水膜高さ)h0[mm]及び横断方向中心での熱伝達係数(基準熱伝達係数)α0[W/(m2・K)]と、基準水量密度W0に応じて定められる補正係数εとを用い、下記式(2)により算出する。
α(x)={h(x)/h0}ε・α0 ・・・(2)
α0=10^(c1+c2・logW0+c3・Ti0) ・・・(21)
なお、c1、c2及びc3は定数であり、Ti0は、厚鋼板Pの横断方向中心での表面温度[K]である。
ステップS13の温度分布導出工程では、上記温度分布Ti(x)及び熱伝達係数分布α(x)を用いて、冷却水散水後の厚鋼板Pの予測される横断方向の温度分布Te(x)を導出する。この予測温度分布Te(x)の導出は、厚鋼板Pの表面における熱伝達を上記熱伝達係数α(x)を用いて計算し、厚鋼板Pの内部における熱伝導を厚さ方向の一次元熱伝導方程式を用いて計算することによって行われる。
図4のステップS04の収束判定工程では、ステップS03で予測した温度分布Te(x)の横断方向中心における温度Te(0)との偏差の平均値を算出し、この平均温度偏差の絶対値が所定の閾値以下であるか否かを確認する。ステップS04において平均温度偏差の絶対値が閾値以下である場合、温度偏差が収束したものと判断して、図4の水量密度分布決定処理を終了、つまり現在の水量密度分布W(x)を維持する。一方、ステップS04において平均温度偏差の絶対値が閾値を超える場合、ステップS05に進んで水量密度分布W(x)の調整を行う。
ステップS05の水量密度分布調整工程では、クラウン量Cwを調整する。具体的には、上記平均温度偏差が正の値である場合にはクラウン量Cwを一定量だけ増加し、上記平均温度偏差が負の値である場合にはクラウン量Cwを一定量だけ減少する。
当該厚鋼板の冷却方法を行う当該厚鋼板冷却装置4は、厚鋼板Pの表面に形成される水膜高さの分布h(x)を算出し、この水膜高さ分布h(x)に基づいてより正確に熱伝達係数の分布を算出するため、冷却水を散水した後の厚鋼板Pの温度分布を精度よく予測できる。これにより、当該厚鋼板冷却装置4は、水量密度分布W(x)を適正化して、厚鋼板P全体を所望の冷却停止温度に近づけられる。
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらはすべて本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
2 粗圧延機
3 仕上圧延機
4 厚鋼板冷却装置
5 レベラー
10 搬送装置
11 ローラー
20 温度測定装置
30 表面冷却ヘッダー
31 吐出口
32 隔壁
33 中央領域
34 端部領域
35 中央給水流路
36 端部給水流路
37 主調整弁
38 分岐流路
39 分岐調整弁
40 裏面冷却ヘッダー
50 制御装置
P 厚鋼板
Claims (4)
- 熱間圧延後の厚鋼板を搬送しつつ、上記厚鋼板の搬送方向に対する横断方向に分布を有する水量密度で1又は複数の冷却ヘッダーから上記厚鋼板の表面に冷却水を散水する厚鋼板の冷却方法であって、
上記冷却ヘッダーの上流側で厚鋼板の横断方向の温度分布を測定する工程と、
測定した温度分布及び冷却ヘッダーの水量密度分布に基づいて冷却水散水後の厚鋼板の温度分布を予測する工程と、
予測した冷却水散水後の厚鋼板の温度偏差を小さくするよう上記横断方向の水量密度分布を調整する工程と
を備え、
上記冷却水散水後の温度分布を予測する工程が、
上記水量密度分布及び厚鋼板の横断方向の長さを考慮して厚鋼板の表面に形成される水膜高さの横断方向の分布を算出する工程と、
この水膜高さの分布を用いて熱伝達係数の分布を算出する工程と、
上記温度分布の測定値及び熱伝達係数の分布に基づいて厚鋼板の冷却水散水後の予測温度分布を導出する工程と
を有し、
上記熱伝達係数分布算出工程において、上記厚鋼板表面における中心軸を基準とする横断方向の位置x[mm]での熱伝達係数α(x)[W/(m 2 ・K)]が、位置xでの水膜高さh(x)[mm]と、横断方向中心での水膜高さh0[mm]及び横断方向中心での熱伝達係数α0[W/(m 2 ・K)]と、横断方向中心での水量密度に応じて定められる補正係数εとを用い、下記式(2)により算出されることを特徴とする厚鋼板の冷却方法。
α(x)={h(x)/h0}ε・α0 ・・・(2) - 上記冷却ヘッダーが、上記横断方向に長い直方体状であり、
底面に開口する複数の吐出口と、
内部空間を横断方向に3つに区分する2枚の隔壁とを備え、
上記2枚の隔壁が横断方向に対称、かつ横断方向に対して傾斜して配設される請求項1に記載の厚鋼板の冷却方法。 - 厚鋼板を熱間圧延する工程と、圧延した厚鋼板を請求項1又は請求項2に記載の厚鋼板の冷却方法により冷却する工程とを備える厚鋼板の製造方法。
- 厚鋼板を搬送する搬送装置と、この搬送装置の搬送方向に対する横断方向に分布を有する水量密度で上記厚鋼板の表面に冷却水を散水する1又は複数の冷却ヘッダーとを備える厚鋼板冷却装置であって、
上記冷却ヘッダーの上流側で厚鋼板の横断方向の温度分布を測定する温度測定装置と、
上記温度測定装置の測定結果に基づいて上記冷却ヘッダーの水量密度分布を決定する制御装置とをさらに備え、
上記制御装置が、
上記水量密度分布及び厚鋼板の横断方向の長さを考慮して厚鋼板の表面に形成される水膜高さの分布を算出する制御要素と、
この水膜高さの分布を用いて熱伝達係数の分布を算出する制御要素と、
上記温度分布の測定値及び熱伝達係数分布に基づいて厚鋼板の冷却水散水後の予測温度分布を導出する制御要素と、
予測した冷却水散水後の厚鋼板の温度偏差を小さくするよう上記横断方向の水量密度分布を調整する制御要素とを有し、
上記熱伝達係数の分布を算出する制御要素が、上記厚鋼板表面における中心軸を基準とする横断方向の位置x[mm]での熱伝達係数α(x)[W/(m 2 ・K)]を、位置xでの水膜高さh(x)[mm]と、横断方向中心での水膜高さh0[mm]及び横断方向中心での熱伝達係数α0[W/(m 2 ・K)]と、横断方向中心での水量密度に応じて定められる補正係数εとを用い、下記式(2)により算出することを特徴とする厚鋼板冷却装置。
α(x)={h(x)/h0}ε・α0 ・・・(2)
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