JP6367756B2 - 厚鋼板冷却方法及び厚鋼板冷却装置 - Google Patents
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Description
図1の厚鋼板加工設備は、原料厚鋼板(スラブ)Pを加熱する加熱炉1と、加熱された原料厚鋼板Pを熱間圧延する粗圧延機2と、粗圧延機2で圧延された厚鋼板Pをさらに熱間圧延する仕上圧延機3と、仕上圧延機3で熱間圧延された厚鋼板Pを冷却する本発明の一実施形態に係る厚鋼板冷却装置4と、冷却された厚鋼板Pを矯正するレベラー5とを備える。
当該厚鋼板冷却装置4は、熱間圧延後の厚鋼板Pを矢印D方向に搬送しつつ、厚鋼板Pの表面(上面)及び裏面(下面)に冷却水を散水することにより厚鋼板Pを冷却するものであって、加速冷却装置とも呼ばれる。この厚鋼板冷却装置4において、厚鋼板Pの冷却は、予め設定される冷却停止温度まで急速に冷却される。この冷却停止温度としては、目的とする製品(厚鋼板Pの用途)に応じて定められるが、例えば200℃以上650℃以下とされる。
搬送装置10は、例えば図2に例示するように、複数のローラー11によって構成されるローラーコンベアーとすることができる。
温度測定装置20としては、表面冷却ヘッダー30の上流側で厚鋼板Pの横断方向の温度分布を測定できるものであればよく、例えば放射温度計を用いることができる。
表面冷却ヘッダー30は、図3に示すように、横断方向(図中左右方向)に長い直方体状であり、底面に開口する複数の吐出口31と、内部空間を横断方向に3つに区分する2枚の隔壁32とを備える。2枚の隔壁32は、横断方向に対称かつ横断方向に対して傾斜して搬送方向上流側に向けて広がるように配設されている。これにより、表面冷却ヘッダー30の内部空間は、2枚の隔壁32の内側の中央散水領域33と2枚の隔壁32の外側の2つの端部散水領域34とに区分される。この表面冷却ヘッダー30に対して、厚鋼板Pは、図中の矢印D方向に搬送される。
裏面冷却ヘッダー40は、厚鋼板Pの裏面に一様に冷却水を散水する多数のノズルにより構成され、厚鋼板Pを挟んで各表面冷却ヘッダー30に対向するよう配置されている。この裏面冷却ヘッダー40による散水量は、位置にかかわらず一定とされる。
調整機構50は、表面冷却ヘッダー30の主調整弁37及び分岐調整弁39の開度を制御する制御装置である。この調整機構50は、例えばパーソナルコンピューターやプログラマブルコントローラー等により構成することができる。つまり、調整機構50は、制御プログラムに従って、複数の表面冷却ヘッダー30を制御するものとすることができる。
上記水量密度分布決定制御部は、温度測定装置20によって測定された厚鋼板Pの横断方向の温度分布Ti(x)[K]に基づいて、表面冷却ヘッダー30の水量密度分布W(x)を決定する。
上記散水量調整制御部は、厚鋼板Pの平均幅B[m]に対する間隔Lの比(L/B)に基づいて、先端領域Ah及び後端領域Atに対する冷却ヘッダー30の散水量(基準水量密度W1で代表して表わす)を、中央領域Amに対する表面冷却ヘッダー30の散水量(基準水量密度W0で代表して表わす)を基準に増減させる。つまり、散水量調整制御部は、先端領域Ah及び後端領域Atへの散水量W1の中央領域Amへの散水量W0に対する比率(W1/W0)を決定する。
これより、上記厚鋼板冷却装置4の動作、つまり上記調整機構50によって行われる本発明の一実施形態に係る厚鋼板冷却方法について詳しく説明する。
水量密度分布決定処理は、図5に示すように、中央領域Amに対する水量密度分布W(x)の初期値を含む初期条件を設定する工程(ステップS11)と、温度測定装置20により厚鋼板Pの温度分布Ti(x)を測定する工程(ステップS12)と、測定した温度分布に基づいて冷却水散水後の厚鋼板Pの中央領域Amの横断方向の温度分布を予測する工程(ステップS13)と、予測した冷却水散水後の厚鋼板Pの温度偏差の収束を判定する工程(ステップS14)と、予測した冷却水散水後の厚鋼板Pの温度偏差を小さくするよう横断方向の水量密度分布W(x)を調整する工程(ステップS15)とを備える。
ステップS11の初期条件設定工程において、調整機構50は、水量密度分布W(x)の初期値及びその他の運転条件を設定する。水量密度分布W(x)の初期値としては、基準水量密度W0及びクラウン量Cwが、予め設定されている値に設定される。また、その他の運転条件としては、厚鋼板Pの板厚、横断方向の長さ、比熱、熱伝導率、変態発熱量等の物性、冷却水の水温、冷却停止温度、搬送装置10の搬送速度などが設定される。このような初期条件は、例えばハードディスクドライブやメモリー等の記憶装置から読み込むことや、外部の制御装置との通信によって設定することができる。
ステップS12の温度分布測定工程において、調整機構50は、温度測定装置20に厚鋼板Pの横断方向位置xでの表面温度の分布Ti(x)[K]を測定させる。この厚鋼板Pの温度分布Ti(x)は、厚鋼板Pの仕様等に応じて差異があり、同じ仕様の厚鋼板Pであっても、加熱炉1での偏熱、スキッドの影響等により一定ではない。
ステップS13の温度分布予測工程は、図6に詳しく示すように、現在設定されている水量密度分布W(x)及び厚鋼板Pの横断方向の長さB[mm]を考慮して厚鋼板Pの表面に滞留する滞留水高さの横断方向の分布h(x)を算出する工程(ステップS21)と、この滞留水高さ分布h(x)を用いて熱伝達係数の分布α(x)[W/(m2・K)]を算出する工程(ステップS22)と、上記温度分布Ti(x)の測定値及び熱伝達係数分布α(x)に基づいて厚鋼板Pの冷却水散水後、つまりすべての複数の表面冷却ヘッダー30の下を通過した直後に予測温度分布Te(x)を導出する工程(ステップS23)とを有する。
ステップS21の滞留水高さ分布算出工程では、横断方向の位置xでの滞留水高さh(x)を、限界滞留水高さhcr[mm]と、水量密度分布W(x)及び厚鋼板Pの横断方向の長さB及び厚鋼板冷却装置4固有の特性等に応じて定められる係数f1、f2及びf3とを用い、下記式(1)により算出する。
h(x)=hcr+f1・(1−f3・x)0.5−f2・(1−f3・x) ・・・(1)
hcr={(2+C)・qcr 2/2/g}1/3 ・・・(11)
qcr=γ・(B2+0.25)0.5/4 ・・・(12)
なお、qcrは限界流量[L/min]、gは重力加速度[m/sec2]、γは水量密度、水量クラウン量及びエッジカット量により決定されるノズル群流量[L/min]、Cは定数である。
ステップS22の熱伝達係数分布算出工程では、位置xでの熱伝達係数α(x)を、滞留水高さh(x)と、横断方向中心での滞留水高さ(基準滞留水高さ)h0[mm]及び横断方向中心での熱伝達係数(基準熱伝達係数)α0[W/(m2・K)]と、基準水量密度W0に応じて定められる補正係数εとを用い、下記式(2)により算出する。
α(x)={h(x)/h0}ε・α0 ・・・(2)
α0=10^(c1+c2・logW0+c3・Ti0) ・・・(21)
なお、c1、c2及びc3は定数であり、Ti0は、厚鋼板Pの横断方向中心での表面温度[K]である。
ステップS23の温度分布導出工程では、上記温度分布Ti(x)及び熱伝達係数分布α(x)を用いて、冷却水散水後の厚鋼板Pの予測される横断方向の温度分布Te(x)を導出する。この予測温度分布Te(x)の導出は、厚鋼板Pの表面における熱伝達を上記熱伝達係数α(x)を用いて計算し、厚鋼板Pの内部における熱伝導を厚さ方向の一次元熱伝導方程式を用いて計算することによって行われる。
図5のステップS14の収束判定工程では、ステップS13で予測した温度分布Te(x)の横断方向中心における温度Te(0)との偏差の平均値を算出し、この平均温度偏差の絶対値が所定の閾値以下であるか否かを確認する。ステップS14において平均温度偏差の絶対値が閾値以下である場合、温度偏差が収束したものと判断して、図5の水量密度分布決定処理を終了、つまり現在の水量密度分布W(x)を維持する。一方、ステップS14において平均温度偏差の絶対値が閾値を超える場合、ステップS15に進んで水量密度分布W(x)の調整を行う。
ステップS15の水量密度分布調整工程では、クラウン量Cwを調整する。具体的には、上記平均温度偏差が正の値である場合にはクラウン量Cwを一定量だけ増加し、上記平均温度偏差が負の値である場合にはクラウン量Cwを一定量だけ減少する。
ステップS02の散水量調整処理では、複数の表面冷却ヘッダー30からの厚鋼板Pの先端領域Ah及び後端領域Atに対する散水量(基準水量密度W1)の中央領域Amに対する散水量(基準水量密度W0)の比(W1/W0)を、厚鋼板Pの平均幅Bに対する複数の表面冷却ヘッダー30の間隔Lの比(L/B)に基づいて調整する。
ステップS31の初期条件設定工程では、上位水量密度分布決定処理において決定された中央領域Amへの散水量(基準水量密度W0)、先端領域Ah及び後端領域Atと中央領域Amとの散水量比率(W1/W0)の初期値、及びその他の運転条件を設定する。散水量比率(W1/W0)の初期値としては、特に限定されないが、例えば1とすることができる。また、その他の運転条件としては、厚鋼板Pの板厚、横断方向の長さ、比熱、熱伝導率、変態発熱量等の物性、冷却水の水温、冷却停止温度、搬送装置10の搬送速度などが設定される。このような初期条件は、例えばハードディスクドライブやメモリー等の記憶装置から読み込むことや、外部の制御装置との通信によって設定することができる。
ステップS32の滞留水高さ比算出工程では、先端領域Ah及び後端領域Atの滞留水高さh1の中央領域Amの滞留水高さh0に対する比(h1/h0)を、基準水量密度W0毎に予め設定される厚鋼板Pの平均幅Bに対する表面冷却ヘッダー30の間隔Lの比(L/B)の関数として算出する。
ステップS33の温度予測工程では、先ず、冷却後の先端領域Ah及び後端領域Atにおける熱伝達率α1を次の式(3)により算出する。なお、この式は上記横断方向の熱伝達率の分布の計算と同様の手法を搬送方向に適用したものである。
α1=(h1/h0)ε・10^(c1+c2・logW0+c3・Ti0) ・・・(3)
ステップS34の判定工程では、先端領域Ah及び後端領域Atの予測温度Te1と中央領域Amの予測温度Te0との差の絶対値と予め設定される閾値とを比較する。この閾値としては、例えば5K(=5℃)とすることができる。
ステップS35の散水量比率変更工程では、散水量比率(W1/W0)を一定量増減する。この散水量比率変更工程の処理を行った後は、上記ステップS32からステップS34の処理を再度行う。
当該厚鋼板冷却4及び当該厚鋼板冷却方法は、厚鋼板Pの先端領域Ah及び後端領域Atに対する複数の表面冷却ヘッダー30の散水量を厚鋼板Pの平均幅Bに対する冷却ヘッダー30の間隔Lの比(L/B)に基づいて調整するため、実際に厚鋼板Pを冷却して試行錯誤により冷却条件を設定するのではなく、演算によって適切な冷却条件を設定することができる。
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらはすべて本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
厚鋼板のサンプル1として、平均厚さ25mm、平均幅3000mmのものを用いた。この厚鋼板のサンプル1は、搬送方向の長さが500mmである5つの冷却ヘッダーを用い、冷却ヘッダーの間隔を500mmとし、中央領域の散水量(基準水量密度)を580L/min/m2とし、搬送速度を0.48m/secとした。
厚鋼板のサンプル2として、平均厚さ40mm、平均幅2000mmのものを用いた。この厚鋼板のサンプル2は、搬送方向の長さが500mmである5つの冷却ヘッダーを用い、冷却ヘッダーの間隔を500mmとし、中央領域の散水量(基準水量密度)を2450L/min/m2とし、搬送速度を0.48m/secとした。
2 粗圧延機
3 仕上圧延機
4 厚鋼板冷却装置
5 レベラー
10 搬送装置
11 ローラー
20 温度測定装置
30 表面冷却ヘッダー
31 吐出口
32 隔壁
33 中央散水領域
34 端部散水領域
35 中央給水流路
36 端部給水流路
37 主調整弁
38 分岐流路
39 分岐調整弁
40 裏面冷却ヘッダー
50 調整機構
Ah 先端領域
Am 中央領域
At 後端領域
D 搬送方向
L 間隔
P 厚鋼板
Claims (3)
- 熱間圧延後の厚鋼板の搬送方向に間隔Lを開けて列設され、厚鋼板表面に散水する複数の冷却ヘッダーを用い、上記厚鋼板を冷却する方法であって、
上記厚鋼板の搬送方向先端からの距離が上記L以下である先端領域、及び搬送方向後端からの距離が上記L以下である後端領域への散水量と、
上記先端領域及び後端領域を除く搬送方向中間部分である中央領域への散水量とを、
上記厚鋼板の平均幅Bに対する上記間隔Lの比(L/B)に基づいて調整することを特徴とする厚鋼板冷却方法。 - 上記先端領域及び後端領域への散水量の調整が、
上記比に基づき先端領域及び後端領域の滞留水高さの上記中央領域の滞留水高さに対する比を算出する工程と、
冷却後の上記先端領域及び後端領域の温度を上記滞留水高さの比を用いて予測する工程と、
上記先端領域及び後端領域の予測温度と中央領域の予測温度との差が所定の範囲内であるか否かを判定する工程と、
上記判定結果に基づいて、上記先端領域及び後端領域への散水量の上記中央領域への散水量に対する比率を変更する工程と
を有する請求項1に記載の厚鋼板冷却方法。 - 熱間圧延後の厚鋼板の搬送方向に間隔Lを開けて列設され、厚鋼板の表面に散水する複数の冷却ヘッダーを備える厚鋼板冷却装置であって、
上記厚鋼板の搬送方向先端からの距離が上記L以下である先端領域、及び搬送方向後端からの距離が上記L以下である後端領域への散水量と、
上記先端領域及び後端領域を除く搬送方向中間部分である中央領域への散水量とを、
上記厚鋼板の平均幅Bに対する上記間隔Lの比(L/B)に基づいて調整する機構をさらに備えることを特徴とする厚鋼板冷却装置。
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