JP2016155727A - 多面体形状窒化アルミニウム粉末およびその製造方法 - Google Patents

多面体形状窒化アルミニウム粉末およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 有機もしくは無機ポリマー、金属、またはセラミックス等のマトリックスに、配合し、複合化する際の流動性、混錬分散性、充填性に優れる多面体形状窒化アルミニウム粉末を提供することを目的とする。【解決手段】 表面に縞状の凹凸を有し、結晶粒の粒径が0.5μm以上3μm未満である結晶粒の集合体から構成され、集合体の粒径が1μm以上50μm未満であることを特徴とする、多面体形状窒化アルミニウム粉末である。好ましくは、結晶粒の縞状の凹凸の間隔が、0.05μm以上0.5μm未満である。【選択図】 図4

Description

本発明は、多面体形状窒化アルミニウム粉末及びその製造方法に関する。特に、電子電気機器における絶縁性放熱部材として使用するために、有機もしくは無機ポリマー、金属、またはセラミックス等のマトリックスに充填し、熱的特性を改良するための放熱材料として好適な多面体形状窒化アルミニウム粉末およびその製造方法に関する。
窒化アルミニウムは、優れた熱伝導性、高い電気的絶縁性、シリコンに近い熱膨張係数、耐プラズマ特性などから、その焼結体は、高熱伝導電子回路基板、ICパッケージ、パワートランジスタモジュール基板(産業機器インバーター用、電車・自動車のIGBT用基板)、半導体製造装置用部材(静電チャック等)、LED用放熱基板等に利用されている。
一方、窒化アルミニウム粉末を、高分子ポリマーに充填した複合化部材は、電気電子機器の絶縁/放熱、冷却シート等としてプリンター、高輝度白色LED等の用途向けに検討されており、より特性向上が要求されている。特に、多量の熱が発生するパワー半導体素子の封止材においては、複合材料として高充填性、高流動性、混錬性に優れた窒化アルミニウム粉末が求められている。
高分子ポリマー等のマトリックスとの複合化における充填材(フィラー)として要求される特性は、複合化時の混錬性、流動性であり、加工前後での耐湿性である。このため、充填材は、球形状もしくは擬似球形状(楕円、多面体等)であり、表面平滑であると好ましく、さらに、高分子ポリマー等へのマトリックス中への高充填性を得るためには、充填材粒子が独立に分散し、その大きさが0.5μmから50μmの幅広い粒度分布を有すると、より好ましい。
一般に、窒化アルミニウム粉末を製造する方法としては、(1)酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末を混合し、これを窒素ガス雰囲気中で加熱するアルミナ還元窒化方法、(2)金属アルミニウムと高温の窒素雰囲気下で直接窒化反応させる直接窒化法、(3)有機アルミニウムガスとアンモニアガス等の窒素含有ガスで気相反応させる気相反応法が知られている。
従来の(1)アルミナ還元窒化方法および(3)気相反応法で製造される窒化アルミニウム粉末は、粉末形状は球形状に近いが、粉末の大きさはサブミクロンの微粉末となり、流動性および混錬性、更には耐湿安定性に問題がある。また、(2)直接窒化法は、生成物の解砕、粉砕、分級を必要とし、適度の粉末の大きさが得ることができるが、粉末形状が異形状となるため、高分子ポリマー等のマトリックス(以下、マトリックスという)中への高充填が困難であり、また、活性な破砕面が存在するため、耐湿性も劣る、という問題がある。
このため、球形状もしくは擬似球形状の0.5μmから50μmの粒度分布を有する窒化アルミニウム粉末を得るためのいろいろな方法が提案されている。
まず、窒化アルミニウム粉末を、噴霧乾燥して、造粒体を得た後、1600〜1900℃で焼成する球状窒化アルミニウム焼結粉体の製造方法(特許文献1)が提案されている。しかしながら、この球状窒化アルミニウム焼結粉体の製造方法においては、工程が複雑となるため、不純物の混入が避けられない、という問題がある。
また、窒化アルミニウム粉末をフラックス(CaCO粉末)中で、1650〜1900℃で処理する球状窒化アルミニウムフィラーの製造方法(特許文献2)も提案されている。しかしながら、この球状窒化アルミニウムフィラーの製造方法においても、工程が複雑となるため、不純物の混入が避けられない、という問題がある。
球状酸化アルミニウム粉末をカーボンの存在下窒素ガス、アンモニアガスと接触し球状窒化アルミニウム粉末を得た後、解砕、表面処理を行う球状窒化アルミニウム粉末の製造方法(特許文献3の請求項2)も提案されている。しかしながら、この球状窒化アルミニウム粉末の製造方法においては、球状酸化アルミニウム粉末の還元窒化反応の進行が遅いため、粉末同士の焼結が避けらず、解砕・表面処理が必須となり、耐湿性の低下を招く、という問題がある。
平均粒径2μm以下のアルミナに、所定の共融解剤と、所定量のカーボン粉末を含有する組成物を、1620〜1800℃で2時間以上還元窒化する球状窒化アルミニウム粉末の製造方法(特許文献4の請求項2)も提案されている。(平均粒径:2〜30μm)しかしながら、この球状窒化アルミニウム粉末の製造方法においても、窒化反応に長時間を要し、生成物の融着により異形粉末が生成する、という問題がある。
特開2003−267708号公報 特開2004−224618号公報 特開2005−162555号公報 特開2012−56774号公報
本発明は、上記問題を解決するため、有機もしくは無機ポリマー、金属、またはセラミックス等のマトリックスに、配合し、複合化する際の流動性、混錬分散性、充填性に優れる多面体形状窒化アルミニウム粉末を提供することを目的とする。本発明は、縞状構造結晶粒からなる多面体形状粉末であるため、耐湿安定性に優れ、高充填性と良好な粉末同士の接触性を有する。また、この多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造においては、無定型結晶構造の球形状炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を還元窒化反応させることにより、生産効率の改善も併せて図ることを目的とする。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した多面体形状窒化アルミニウム粉末、およびその製造方法に関する。
〔1〕表面に縞状の凹凸を有し、結晶粒の粒径が0.5μm以上3μm未満である結晶粒の集合体から構成され、
集合体の粒径が1μm以上50μm未満であることを特徴とする、多面体形状窒化アルミニウム粉末。
〔2〕結晶粒の縞状の凹凸の間隔が、0.05μm以上0.5μm未満である、上記〔1〕記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末。
〔3〕中実粉末、中空粉末、または開口部を有する中空粉末である、上記〔1〕または〔2〕記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末。
〔4〕さらに、リチウムを、多面体形状窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、0.05質量部以上2.5質量部未満含む、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末。
〔5〕無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を、還元窒化反応させて得られる、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末。
〔6〕(A)加熱分解により炭素を形成可能な糖類、有機カルボン酸とその塩、リグニン酸とその塩、およびアルコール類からなる群より選択される少なくとも1種の水溶性化合物、ならびに酸化アルミニウムを形成可能な水溶性のアルミニウム化合物、を含有する水溶液を得る工程、
(B)得られた水溶液を、微細な液滴に霧化した後、霧化した液滴を、非酸化性雰囲気中、450℃以上1200℃未満で加熱し、無定型球形状の炭素と酸化アルミニウムの複合前駆体粉末を得る工程、
(C)得られた無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を、1300℃以上1800℃未満の温度で、窒素ガスまたはアンモニアガスと加熱反応させ、炭素/多面体形状窒化アルミニウム粉末を得る工程、
(D)得られた炭素/多面体形状窒化アルミニウム粉末を、酸化性雰囲気中、600℃以上1000℃未満で加熱して、多面体形状窒化アルミニウム粉末を得る工程、
をこの順に含むことを特徴とする、多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
〔7〕糖類が、セルロース、ショ糖、麦芽糖、もしくは果糖であるか、有機カルボン酸塩が、酢酸アンモニウムであるか、またはアルコール類が、ポリビニルアルコールである、上記〔6〕記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
〔8〕アルミニウム化合物が、硝酸アルミニウムである、上記〔6〕または〔7〕記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
〔9〕多面体形状窒化アルミニウム粉末が、多面体形状窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、炭素を5質量部未満、および酸素を2質量部未満含む、上記〔6〕〜〔8〕のいずれか記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
〔10〕(A)工程で得られる水溶液が、さらに、水溶性のリチウム化合物を含有する、上記〔6〕〜〔9〕のいずれか記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
〔11〕リチウム化合物が硝酸リチウムである、上記〔10〕記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
本発明〔1〕によれば、高分子ポリマーと流動性、混錬分散性および充填性に優れるため、電気電子機器用の絶縁および放熱に優れる冷却シート等の、高熱伝導性で耐湿安定性が良好な成形品を作製可能な、多面体形状窒化アルミニウム粉末を提供することができる。
本発明〔6〕によれば、無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末は、粉末自体が炭素と酸化アルミニウムとが複合化された無定型粉末であるため、還元窒化の反応性は高く、生産効率が高められる。それと同時に生成する窒化アルミニウム結晶粒の成長も促進され、耐湿性に優れた多面体形状粉末を形成することができる。
実施例1で製造した無定型結晶構造で真球状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末のX線回折図である。 実施例1で製造した無定型結晶構造で真球状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 実施例1で製造した無定型結晶構造で真球状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末のSEM写真である。 実施例1で製造した多面体形状窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。 実施例1で製造した多面体形状窒化アルミニウムの粉末SEM写真である。 比較例3で製造した窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。 比較例3で製造した多面体形状窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
〔多面体形状窒化アルミニウム〕
本発明の多面体形状窒化アルミニウム粉末(以下、多面体形状窒化アルミニウム粉末という)は、表面に縞状の凹凸を有し、結晶粒の粒径が0.5μm以上3μm未満の縞状構造結晶粒の集合体から構成され、集合体の粒径が1μm以上50μm未満であることを特徴とする。集合体の粒径が1μm未満になると、耐湿安定性が問題となり易くなる。一方、集合体の粒径が50μm以上になると、多面体形状窒化アルミニウム粉末を含有するマトリックス複合物の成形加工性および成形物の表面平滑性等が低下し易くなる。縞状の凹凸を有する結晶粒が0.5μm以上3μm未満であるので、多面体形状窒化アルミニウム粉末の耐湿安定性と粉末同士の接触性を、良好にすることができる。
結晶粒の縞状の凹凸は、窒化アルミニウムが六方晶系ウルツ鉱型構造であることに由来する、と考えられる。この結晶粒の縞状の凹凸は、間隔が0.05μm以上0.5μm未満であると、マトリックスとのくい込みおよび粉末同士のくい込みの観点から、好ましい。本発明の多面体形状窒化アルミニウム粉末は、多面体形状の擬似球形状を呈し、独立に分散している粉末が多いため、マトリックスとの複合が容易で、高充填が可能となる。また、多面体形状窒化アルミニウム粉末は、平均粒子径が、1μm以上50μm未満であるであると、好ましい。ここで、結晶粒の粒径、集合体の粒径は、走査型電子顕微鏡写真での長径(多面体形状窒化アルミニウム粉末での最も長い径)である。平均粒子径は、多面体形状窒化アルミニウム粉末の走査型電子顕微鏡写真での長径(多面体形状窒化アルミニウム粉末での最も長い径)の平均径である(n=50)。
多面体形状窒化アルミニウム粉末は、中実粉末であると粉末の熱伝導性の観点から好ましく、中空粉末、または、開口部を有する中空粉末であると、粉末内部からの還元窒化反応の観点から、好ましい。また、多面体形状窒化アルミニウム粉末は、球形状であると、マトリックスとの混練時の流動性、およびマトリックスへの充填性の観点から、より好ましい。ここで球形状とは、ほぼ球状の形状であってもよく、走査型電子顕微鏡写真でのアスペクト比(長径/短径)が、1.0〜1.4であるものをいう。多面体形状窒化アルミニウム粉末のアスペクト比は、1.0〜1.2が好ましく、真球(アスペクト比が1.05以下)であるとより好ましい。アスペクト比が1.4を越え、真球度が低下すると、異形粉末になり易く、マトリックスとの混練時の流動性、およびマトリックスへの充填性を損ない易くなってしまう。
多面体形状窒化アルミニウム粉末は、さらに、多面体形状窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、リチウムを、0.05質量部以上2.5質量部未満含むと、後述する製造方法により、低温短時間で多面体形状窒化アルミニウム粉末を形成することができるため、好ましい。0.05質量部未満であると効果が乏しく、2.5質量部を越えて添加しても効果があまりなく、化学的耐久性が低下し易くなり得る。また、多面体形状窒化アルミニウム粉末は、後述するように、無定型結晶構造の球形状炭素と酸化アルミニウムとの複合前駆体粉末を、還元窒化反応して得られたものであると、好ましい。
〔多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法〕
多面体形状窒化アルミニウム粉末は、噴霧熱分解法により無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を得て、これを、窒素雰囲気等の非酸化雰囲気中(好ましくは非酸化性気体気流中)で還元窒化することにより製造することができる。下記の本発明の製造方法によれば、製造過程での生産効率が高められ、多湿安定性に優れた多面体形状窒化アルミニウム粉末を得ることができる。
本発明の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法は、
(A)加熱分解により炭素を形成可能な糖類、有機カルボン酸とその塩、リグニン酸とその塩、およびアルコール類からなる群より選択される少なくとも1種、ならびに酸化アルミニウムを形成可能な水溶性のアルミニウム化合物、を含有する水溶液を得る工程、
(B)得られた水溶液を、微細な液滴に霧化した後、霧化した液滴を、非酸化性雰囲気中、450℃以上1200℃未満で加熱し、無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を得る工程、
(C)得られた無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を、1300℃以上1800℃未満の温度で、窒素ガスまたはアンモニアガスと加熱反応させ、炭素/多面体形状窒化アルミニウム粉末を得る工程、
(D)得られた炭素/多面体形状窒化アルミニウム粉末を、酸化性雰囲気中、600℃以上1000℃未満で加熱して、多面体形状窒化アルミニウム粉末を得る工程、
をこの順に含むことを特徴とする。
本発明の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法は、窒素雰囲気中で、酸化アルミニウム粉末をカーボン粉末により、固相還元し、窒化反応させる方法に分類される製造方法(背景技術に記載した(1)の製造方法)に分類される。従来の方法では、酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末との粉末間の接触により、還元と窒化の反応が進む。しかしながら、この従来の方法では、酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末の混合状態が不均一になり易いため、還元と窒化の反応も不均一になり易い。これに対して、本発明の製造方法の工程中で作製する無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末は、粉末それ自体が無定型の酸化アルミニウムと炭素が均質に一体化されているため、前駆体粉末の表面および内部での還元窒化反応により生成する窒化アルミニウム結晶粒が、大きな結晶粒へと成長し、それに伴い、真球形状から多面体形状の粉末へと変化する。
〈(A)工程〉
(A)工程では、加熱分解により炭素を形成可能な水溶性化合物、および水溶性のアルミニウム化合物を、水中に溶解し、水溶液を得る。後述するように、(A)工程で得られる水溶液は、さらに、水溶性のリチウム化合物、を含有すると好ましい。
炭素を形成する化合物としては、非酸化性雰囲気で炭化熱分解する水溶性化合物から選択される。具体的には、セルロース(カルボキシメチルセルロース)、デンプン、グリコーゲン等の多糖類、麦芽糖(マルトース)、ショ糖(スクロース)、乳糖(ラクトース)等の二糖類、マルトース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類等の糖類;クエン酸、酒石酸、琥珀酸、酪酸、リンゴ酸、酢酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム等の有機カルボン酸とその塩;リグニンスルホン酸カルシウム等のリグニン酸とその塩;ビニルアルコール、多価アルコール等のアルコール類が挙げられる。これらの化合物の中でも、ショ糖、酢酸アンモニウムが、(B)工程における無定型結晶構造の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を、球形状にし、炭素/酸化アルミニウム複合化物を得やすい観点から、好ましい。
酸化アルミニウムを形成する水溶性化合物としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等の水溶性化合物が挙げられるが、熱分解性、腐食性、不純物の分離等から、硝酸アルミニウムが好ましい。
リチウム化合物は、水溶性であればいずれも使用できるが、硝酸リチウムが、熱分解性から好ましい。
〈(B)〉工程
(B)工程では、(A)工程で得られた水溶液を、微細な液滴に霧化した後、霧化した液滴を、非酸化性気流中、450℃から1200℃で加熱し、無定型構造球形状炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を得る。
(B)工程における無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末の生成過程は、炭素を形成可能な水溶性化合物がショ糖であり、水溶性のアルミニウム化合物が硝酸アルミニウムである場合には、以下のように推測される。霧化された微細な水溶液液滴は、まず、水が蒸発気化し、ショ糖/硝酸アルミニウム複合化合物が、液滴表面に濃縮し、析出する。次いで、球形状の液滴表面に析出したショ糖/硝酸アルミニウム複合化合物は、融解、分解し、球形状で、中空構造または中実構造を維持しながら、炭素/酸化アルミニウム(Al)へ転化し、無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を生成する。
噴霧熱分解法における硝酸塩化合物の熱分解過程は、田川博章氏の文献(「硝酸塩の熱分解」、横浜国大環境研紀要、1987年、第14巻、p41−57)によれば、硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)の場合、85℃で自らの結晶水に硝酸塩が融解し、150℃に達すると結晶水の喪失と硝酸塩の熱分解が同時に進行し、HOガス、NOガス、Oガスを発生しながらAlへ転化する。分解は、ほぼ600℃で終了する。
Al(NO・9HO(S)
→ Al(NO・9HO(l)(85℃融解)
→ 無定型Al(S)、HO(g)、NO(g)、O(g)
(150℃から脱水熱分解)
また、硝酸リチウム(LiNO)は、261℃で溶融し、430℃を越える温度で熱分解が進行する。600℃に達すると、Liへ転化する。更に、900℃以上で酸素を放出しながらLiOとなり、熱分解は終了する。
LiNO(s) → LiNO(l)(261℃融解)
→ Li(s)、NO(g)、O(g)(>430℃)
→LiO(s)(>900℃)
大気中での熱分解で生成するこれらの単独の酸化物は、通常無定型の結晶構造を示し、活性な酸化物となる。
一方、炭素を形成する水溶性化合物、例えばショ糖の場合、186℃で融解し、徐々に脱水分解しながら炭化する。800℃以上で炭化が終了し、無定型炭素となる。
122211(s) → C122211(l)(186℃融解)
→ 無定型C(s)、HO(g)(>200℃)
また酢酸アンモニウムにおいては、112℃で融解した後、脱水反応によりアセトアミド(融点82℃)が生成する。溶融したアセトアミドは、221℃で蒸発、分解しながら、炭化する。
CHCOONH(s) → CHCOONH(l)(112℃融解)
→ CHCONH(l)、HO(g)(脱水)
→ 無定型C(s)、NH(g)、CO(g)、H(g)
水溶性化合物の噴霧熱分解温度は、450℃以上1200℃未満であると、好ましい。450℃未満であると、水溶性化合物が未分解となり易く、1200℃を越えると無定型の酸化アルミニウムからγ−Alの結晶相が析出し、(C)工程の還元窒化反応の反応性が低下し易い。
また、硝酸アルミニウムと溶存するリチウム化合物は、450℃以上900℃未満でLiが生成し、900℃以上1200℃未満においては酸素を放出し、LiOとなる。分解生成したリチウム酸化物は、単独では存在せず、酸化アルミニウムの格子間隙にLiイオン(Li2+もしくはLi)侵入型として固溶し、その結果として酸素空孔を有する複合酸化物を形成する、と推測される。
噴霧熱分解方法では、噴霧された微細な液滴が、約1〜60秒間で、水の蒸発と、液滴表面での水溶性化合物の硝酸アルミニウムの析出分解とが瞬時に進行する。このため、硝酸アルミニウム単独の場合においては、生成する酸化アルミニウムは、薄皮状の中空セル構造粉末、または薄片化した粉末となり、本発明の(好ましくは、独立に分散した)中実または中空で球形状の粉末は得られない。ここで、中空セル構造とは、外観は球形状で、内部が薄い壁で不定形に区切られている構造をいう。本発明者らは、種々の試行錯誤を行った結果、ショ糖、酢酸アンモニウム等の加熱した際に溶融しながら炭化熱分解する水溶性化合物を、アルミニウム化合物と併用することによって、本発明の目的とする無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末の作製方法を見出した。
さらに、非酸化性雰囲気にアンモニアガスを添加すると、噴霧液滴中のアルミニウムイオン(Al3+)が加水分解され、析出した水酸化アルミニウムが凝結(ゲル化)を起こし、炭素/酸化アルミニウム複合前駆体の薄片化の抑制と球形状化に効果的であることがわかった。
上述のように、無定型結晶構造球で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末は、球形状で中実もしくは中空であり、開口部を有する。球形状炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末のアスペクト比は、1.0〜1.2が好ましく、真球(アスペクト比が1.05以下)であるとより好ましい。アスペクト比が1.4を越え、真球度が低下すると、多面体形状の窒化アルミニウム粉末が生成しにくくなる。
無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末の粒径は、1μm以上50μm未満である、と好ましい。粒形が1μm未満になると、耐湿安定性が問題となり易くなる。粒径が50μm以上になると、窒化アルミニウム粉末を含有するマトリックス複合物の成形加工性および成形物の表面平滑性等が低下し易くなる。
また、無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末に、リチウムを含有させると、(C)工程での還元窒化反応が促進され、低温、短時間で多面体形状窒化アルミニウム粉末を生成させることができる。リチウムは、多面体形状窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、0・05質量部以上2.5質量部未満が好ましい。0.05質量部未満であると効果に乏しく、2.5質量部以上を添加しても変わらない。このリチウムは、通常、(A)工程で含有させる。
(A)工程で得られた水溶液から液滴を発生させる霧化装置としては、二流体アトマイザー、遠心アトマイザー、超音波アトマイザー等の通常の装置を使用できる。なお、上記いずれの装置を用いる場合においても、化合物の析出による閉塞等のトラブルが生じない水溶液の沸点未満の温度での操作が好ましい。
(B)工程において、霧化した液滴を加熱する温度は、450℃以上1200℃未満であり、好ましくは、600℃以上1000℃未満である。霧化された液滴は、上記温度に加熱した横型加熱炉もしくは縦型加熱炉に噴霧送入し、熱分解を行い、無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を得る。その際、加熱炉の温度は、均等に加熱または勾配をつけて加熱しても良い。縦型加熱炉において、液滴の流れは、ダウンフロー、アッパーフローのいずれでも構わない。
(B)工程において、霧化した液滴を加熱する雰囲気については、炭素を形成する水溶性有機化合物及び分解生成する炭素が燃焼しない非酸化性雰囲気中であり、窒素ガス、アンモニアガス等の気流が好ましい。上述のように、非酸化性雰囲気にアンモニアガスを添加すると、より好ましい。
(B)工程の後、得られた無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末(生成物)を空気で希釈冷却し、排気ガスから生成物を分離する分離捕集を行う。生成物は、加熱炉外で直ちに100℃以上で希釈冷却した後、生成物を排ガスから通常の分離装置、例えばフィルター、サイクロン、電気集塵機、振動式バッグフィルター等で捕集する。
〈(C)工程〉
(C)工程では、(B)工程で得られた無定型結晶構造で、球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を、1300℃以上1800℃未満、好ましくは1500〜1750℃、より好ましくは1600〜1750℃の温度で、窒素ガスもしくはアンモニアガスと加熱反応させ、多面体形状窒化アルミニウム粉末を得る。すなわち、無定型結晶構造で、球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を、還元窒化反応させて、炭素含有多面体形状窒化アルミニウム粉末を得る工程である。
(C)工程の還元窒化反応では、次の過程を経て、多面体形状窒化アルミニウム粉末が生成すると、推測される。無定型結晶構造で、球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末は、窒素を含有する非酸化性ガス中1300℃以上1800℃未満で、多面体形状窒化アルミニウム粉末へ転化する。1300℃未満では、還元窒化反応が遅く、窒化アルミニウムへの転化が不完全となる。1800℃以上では、生成する多面体形状窒化アルミニウム粉末が塊状化するばかりでなく、加熱装置の構成材料の損耗が著しくなる。加熱時間は、15分以上300分未満であると、好ましい。15分未満では、窒化アルミニウムへの転化が不完全となり易い。300分以上では、生成する多面体形状窒化アルミニウム粉末が塊状化するばかりでなく、加熱装置の構成材料の損耗が著しくなる。
無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末の還元窒化は、酸化アルミニウムの酸素が炭素によって引き抜かれ、同時に窒素によって窒化された酸窒化アルミニウムが生成し、次いで、更に還元窒化が進み窒化アルミニウムへ転化する。具体的には、
Al/C/N → Al2.853.450.55/C/N + CO(g)
→ AlN + CO(g)
が、示されるが、従来の酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末との異固相接触還元窒化反応とは異なり、炭素と酸化アルミニウムとが複合化された前駆体粉末の個々で還元窒化反応が進行するため、酸素アニオンO2−と窒素アニオンN3−の移動が速く、生成する窒化アルミニウムは、0.5μm以上3μm未満の大きな六方晶系ウルツ鉱型の積層された縞状の凹凸を有する(縞状構造)結晶粒へ成長する。縞状の凹凸を有する結晶粒は、縞状の凹凸の間隔が0.05μm以上0.5μm未満で形成され、前駆体粉末の球形状原形を留めながら集合し、大きさが1μm以上50μm未満である(好ましくは、独立分散した)多面体形状の粉末へと成長する。
なお、無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末へのリチウムの添加により、リチウムが酸化アルミニウム結晶格子に酸素空孔を生成させるため、還元窒化反応中に、酸素アニオンおよび窒素アニオンの移動度がより高められ、低温、短時間での窒化アルミニウムへの転化が可能となる。
〈(D)工程〉
(D)工程では、(C)工程で得られた炭素含有多面体形状窒化アルミニウム粉末を、酸化性雰囲気中600℃以上1000℃未満で加熱し、(C)工程で使用されなかった過剰の炭素を除去して、多面体形状窒化アルミニウム粉末を得る。
酸化性雰囲気は、水蒸気、酸素を含む雰囲気で、通常は大気雰囲気で加熱処理を行う。600℃未満では、遊離した過剰の炭素が酸化燃焼せず、1000℃以上では、窒化アルミニウムの酸化が顕著になり、絶縁性酸化アルミニウムが生成し、熱伝導性を阻害する。加熱時間は、30分以上240分未満が好ましい。
酸化性雰囲気中で加熱された多面体形状窒化アルミニウム粉末は、多面体形状窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、炭素を5質量部未満、および酸素を2質量部未満含むと好ましい。上記範囲を越えると、熱伝導性が低下するため、好ましくない。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
〈(A)工程〉
イオン交換水に、硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO、分子量:375.13、関東化学(株)製1級試薬):1.5mol/dm、ショ糖(C122211、分子量:342.2965、関東化学(株)製1級試薬):0.25mol/dm、酢酸アンモニウム(CHCOONH、分子量:77.0825、関東化学(株)製1級試薬):3.0mol/dmの濃度に溶解し、噴霧原料である水溶液を調液した。
〈(B)工程〉
調液した水溶液を、二流体アトマイザー霧化装置に、定量ポンプ(東京理化(株)製)を用いて10cm/minで送液し、窒素ガス流量:25dm/minで液滴状にし、アンモニアガスを1dm/min添加した搬送窒素ガスを40dm/minで流し、900℃に加熱したステンレス管(SUS310S)へ、装入した。液滴は、ステンレス管の加熱領域で溶媒揮発、熱分解され、生成物をサイクロンで分別、捕集した。
サイクロンで捕集された粒子は、黒色を呈し、凝集塊は無く、良好な分散性を示した。図1に、実施例1で製造した無定型結晶構造で真球状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末のX線回折図を示す。図1からわかるように、捕集された粉末は、無定型結晶構造であった。また、図2、図3に、実施例1で製造した無定型結晶構造で真球状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。走査型電子顕微鏡写真から観察した粒径(n=50、他の実施例においても同様である)は、1.5〜20μmであり、5μm径以上の粉末は中空球形状が多く、5μm未満は中実球形状が多かった。また、図3で、約7μmの粒子が酸化アルミニウムであり、この粒子の表面に存在する0.1〜0.2μm程度の微粒子は、炭素であると考えられる。なお、(B)工程で作製した無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末をエネルギー分散型X線分析(EDX)により定量分析を行った結果、球形状複合前駆体粉末100質量部に対して、アルミニウムが37質量部、酸素が32質量部、炭素が31質量部であった。
〈(C)工程〉
無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を、窒素雰囲気下のカーボン炉内で、加熱温度1700℃、加熱時間180分の還元窒化反応を行った後、室温まで窒素雰囲気で冷却した。取り出した粉末のアンモニア臭は無く、粉末の流動性、分散性も良好であった。
〈(D)工程〉
還元窒化反応させた生成物を、空気雰囲気下において800℃で120分の焼成を行い、窒化アルミニウム粉末を得た。X線回折の結果、窒化アルミニウム単相であった。図4、図5に、実施例1で製造した多面体形状窒化アルミニウム粉末のSEM写真を示す。図5の走査型電子顕微鏡写真からわかるように、縞状の凹凸を有する結晶粒が集合した多面体形状窒化アルミニウム粉末であった。集合体の粒径は、1μm以上30μm未満であり、縞状の凹凸を有する結晶粒の大きさは、0.5μm以上2・5μm未満であり、縞状の凹凸の間隔は、0.07μm以上0.2μm未満であった。EDX定量分析では、アルミニウムが65質量部、窒素が32質量部、酸素が1.2質量部、炭素が1.8質量部であった。
〔実施例2〕
(A)工程で、硝酸リチウムを1.0質量部(窒化アルミニウム100質量部中のリチウム含有量である)添加して噴霧原料を調液し、(B)工程で、アンモニアガスを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、噴霧熱分解を行い、前駆体粉末を得た。前駆体粉末の粒径は、SEM写真の観察から1.0〜25μmであり、EDX定量分析では、前駆体粉末100質量部に対して、アルミニウムが34質量部、酸素が31質量部、炭素が35質量部であった。Li含有量は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)から0.8質量部であった。
(C)工程で、窒素雰囲気中にし、加熱温度1700℃、90分にしたこと以外は、実施例1と同様の還元窒化反応を行った。取り出した粉末は、アンモニア臭は無く、流動性、分散性ともに良好であった。更に(D)工程で、空気雰囲気下において、700℃で120分の焼成を行い、多面体形状窒化アルミニウム粉末を得た。X線回折の結果、窒化アルミニウム単相であった。集合体の粒径は、1.0μm以上35μm未満であり、縞状の凹凸を有する結晶粒の大きさは、0.8μm以上20μm未満であり、縞状の凹凸の間隔は、0.1μm以上0.4μm未満であった。EDX定量分析では、多面体形状窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、アルミニウムが69質量部、窒素が29質量部、酸素が0.9質量部、炭素が1.1質量部であった。Li含有量は、ICP−AESから1.1質量部であった。
〔実施例3〕
実施例1の(B)工程で得た前駆体粉末を用い、(C)工程で、窒素雰囲気中にし、加熱温度1500℃、270分にしたこと以外は、実施例1と同様の還元窒化反応を行った。更に(D)工程で、空気雰囲気下において、700℃で210分の焼成を行い、多面体形状窒化アルミニウム粉末を得た。X線回折の結果、窒化アルミニウム単相であった。集合体の粒径は、1.5μm以上20μm未満であり、縞状の凹凸を有する結晶粒の大きさは、0.5μm以上0.8μm未満であり、縞状の凹凸の間隔は、0.06μm以上0.2μm未満であった。EDX定量分析では、多面体形状窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、アルミニウムが67質量部、窒素が28質量部、酸素が0.8質量部、炭素が4.2質量部であった。
〔比較例1〕
実施例1の(A)工程で調液した原料液を、(B)工程で400℃に加熱し、噴霧熱分解を行った。生成物は未分解で、粉末状で得ることはできなかった。
〔比較例2〕
実施例1の(B)工程のムライト管の加熱温度を1300℃にしたこと以外は、実施例1と同様の噴霧熱分解を行い、前駆体粉末を得た。X線回折からγ−Alの回折ピークが観察された。SEM写真から観察した粒径は、1.0〜20μmであり、4μm径以上の粉末は、中空球形状で、4μm径未満は、中実球形状であった。EDX定量分析では、球形状複合前駆体粉末100質量部に対して、アルミニウムが36質量部、酸素が31質量部、炭素が32質量部であった。更に、(C)工程、(D)工程を、実施例1と同様に反応を行った。X線回折から、窒化アルミニウム(AlN)/酸窒化アルミニウム(Al2.853.450.55)の比率(質量比)が、80/20の混相であり、窒化アルミニウム単相を得ることはできなかった。
〔比較例3〕
住友化学(株)製酸化アルミニウム粉末(α−Al)(品名:AMS−12、平均粒径:0.49μm(レーザー解析法で測定))と電気化学工業(株)製アセチレンブラック(品名:デンカブラック、平均粒径:35nm)とを、モル比1:4の割合で計量し、三井コークス工業(株)製FMミキサー、およびダルトン(株)製サンプルミルを用いて、粉砕混合した。これを前駆体として、(C)工程で窒素雰囲気にし、加熱温度1700℃、360分にしたこと以外は、実施例1と同様の還元窒化反応、(D)工程の大気焼成を行った。(C)工程で得られた窒化アルミニウム粉末は、反応装置から取り出したとき、アンモニア臭があり、粉末には、凝結、塊状化が見られた。図6、7に、比較例3で製造した窒化アルミニウム粉末のSEM写真を示す。図6、7からわかるように、比較例3の窒化アルミニウム粉末は、縞状の凹凸が無い結晶粒からなる粉末であり、結晶粒の凝結、塊状化が見られた。
本発明の多面体形状窒化アルミニウム粉末は、高分子ポリマーと流動性、混錬分散性および充填性に優れるため、電気電子機器用の絶縁および放熱に優れる冷却シート等の、高熱伝導性で耐湿安定性が良好な成形品を作製可能であり、非常に有用である。

Claims (11)

  1. 表面に縞状の凹凸を有し、結晶粒の粒径が0.5μm以上3μm未満である結晶粒の集合体から構成され、
    集合体の粒径が1μm以上50μm未満であることを特徴とする、多面体形状窒化アルミニウム粉末。
  2. 結晶粒の縞状の凹凸の間隔が、0.05μm以上0.5μm未満である、請求項1記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末。
  3. 中実粉末、中空粉末、または開口部を有する中空粉末である、請求項1または2記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末。
  4. さらに、リチウムを、多面体形状窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、0.05質量部以上2.5質量部未満含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末。
  5. 無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を、還元窒化反応させて得られる、請求項1〜4のいずれか1項記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末。
  6. (A)加熱分解により炭素を形成可能な糖類、有機カルボン酸とその塩、リグニン酸とその塩、およびアルコール類からなる群より選択される少なくとも1種の水溶性化合物、ならびに酸化アルミニウムを形成可能な水溶性のアルミニウム化合物、を含有する水溶液を得る工程、
    (B)得られた水溶液を、微細な液滴に霧化した後、霧化した液滴を、非酸化性雰囲気中、450℃以上1200℃未満で加熱し、無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を得る工程、
    (C)得られた無定型結晶構造で球形状の炭素/酸化アルミニウム複合前駆体粉末を、1300℃以上1800℃未満の温度で、窒素ガスまたはアンモニアガスと加熱反応させ、炭素/多面体形状窒化アルミニウム粉末を得る工程、
    (D)得られた炭素/多面体形状窒化アルミニウム粉末を、酸化性雰囲気中、600℃以上1000℃未満で加熱して、多面体形状窒化アルミニウム粉末を得る工程、
    をこの順に含むことを特徴とする、多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  7. 糖類が、セルロース、ショ糖、麦芽糖、もしくは果糖であるか、有機カルボン酸塩が、酢酸アンモニウムであるか、またはアルコール類が、ポリビニルアルコールである、請求項6記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  8. アルミニウム化合物が、硝酸アルミニウムである、請求項6または7記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  9. 多面体形状窒化アルミニウム粉末が、多面体形状窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、炭素を5質量部未満、および酸素を2質量部未満含む、請求項6〜8のいずれか1項記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  10. (A)工程で得られる水溶液が、さらに、水溶性のリチウム化合物を含有する、請求項6〜10のいずれか1項記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  11. リチウム化合物が硝酸リチウムである、請求項10記載の多面体形状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
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