以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.装置構成]
[1−1.駆動系]
本実施形態の制御装置は、図1に示す自動車(車両)10に搭載される。この車両10は、エンジン11を駆動源とした四輪駆動車である。車両10には、パワートレインとして、エンジン11,変速機12,トランスファ装置13,フロントディファレンシャル14(以下、フロントデフ14という),リヤデファレンシャル15(以下、リヤデフ15という)等が設けられる。
エンジン11は、ガソリンや軽油を燃焼とする内燃機関(例えばガソリンエンジン,ディーゼルエンジンなど)である。変速機12は、エンジン11の出力軸に接続された自動変速機(AT)であり、運転手によるシフト操作に応じて変速比が設定される。トランスファ装置13は、変速機12の出力軸に接続された入力軸13aを有し、エンジン11の出力(駆動力,トルク)を前後車軸16,18に分配する動力分配装置であり、その詳細な構成は後述する。
トランスファ装置13は、入力軸13aと同軸上に設けられた中間軸13bと、入力軸13aの駆動力が伝達される後輪側出力軸13cと、前輪側のトランスファスプロケット13dとを有する。後輪側出力軸13cは、リヤプロペラシャフト17Rを介してリヤデフ15に接続される。リヤデフ15からは左右一対の後車軸18が延び、これら後車軸18に左右の後輪RWがそれぞれ接続される。
一方、トランスファスプロケット13dからはフロントプロペラシャフト17Fが延び、その先端部にフロントデフ14が接続される。フロントデフ14からは左右一対の前車軸16が延び、これら前車軸16に左右の前輪FWがそれぞれ接続される。なお、右前車軸16には、右前輪FWをフロントデフ14に対して接続又は分離するフリーホイール機構19が介装される。
トランスファ装置13は、入力軸13aと中間軸13bとの間に設けられた副変速機構13Eと、中間軸13bと後輪側出力軸13cとの間に設けられたセンターデファレンシャル13F(以下、センターデフ13Fという)とを備える。さらに、トランスファ装置13は、副変速機構13Eとセンターデフ13Fとの間に設けられた切替機構13G及びロック機構13Hを備える。
副変速機構13Eは、変速機12の出力側に接続されたハイロー切替機構であり、例えば複数のギヤとカウンタシャフトとカップリングスリーブとから構成される。副変速機構13Eは、ハイギヤ位置とローギヤ位置とを有し、副変速機構13Eを構成する要素の噛み合いが変更されることで、ハイギヤ位置とローギヤ位置とが切り替えられる。ハイギヤ位置では、入力軸13aの回転が中間軸13bに直接的に伝達され、ローギヤ位置では、入力軸13aの回転が中間軸13bに減速して伝達される。
センターデフ13Fは、前後車軸16,18の回転差を吸収するとともに駆動力を分配,伝達するものであり、例えば遊星歯車機構で構成される。切替機構13Gは、二輪駆動と四輪駆動とを切り替える(選択する)ものであり、例えばセンターデフ13Fに連結された複数のクラッチギヤとカップリングスリーブとから構成される。また、ロック機構13Hは、センターデフ13Fの差動をロックするものであり、例えばセンターデフ13Fに連結された複数のクラッチギヤとカップリングスリーブとから構成される。
トランスファ装置13は、切替機構13Gにより二輪駆動のポジションが選択(設定)されると、変速機12からの入力を後車軸18にのみ出力し、車両10を二輪(後輪)駆動状態とする。以下、この状態に対応する車両10の駆動モードを2Hモード(二駆モード)といい、この状態でのトランスファ装置13のポジションを2WD位置という。すなわち、2Hモードに対応するトランスファ装置13のポジションは2WD位置となる。なお、トランスファ装置13のポジションが二輪駆動となる(切替機構13Gにより2WD位置が選択される)のは、ロック機構13Hがセンターデフ13Fを開放しているときだけである。
トランスファ装置13は、ロック機構13Hによりセンターデフ13Fがロックされていない状態で切替機構13Gにより四輪駆動のポジションが選択(設定)されると、変速機12からの入力をセンターデフ13Fのギヤ比に応じた比率で前後車軸16,18にそれぞれ出力し、車両10をセンターデフ13Fが開放された四輪駆動状態とする。以下、この状態に対応する車両10の駆動モードを4Hモード(アンロックモード)といい、この状態でのトランスファ装置13のポジションをフルタイム4WD位置という。すなわち、4Hモードに対応するトランスファ装置13のポジションはフルタイム4WD位置となる。
トランスファ装置13は、センターデフ13Fがロック機構13Hによってロックされると直結状態となる。この状態では、入力軸13aからの駆動力がセンターデフ13Fにより差動されることなく後輪側出力軸13cとトランスファスプロケット13dとに等配分されて伝達される。以下、この状態に対応する車両10の駆動モードをロックモード(Lock mode)といい、この状態でのトランスファ装置13のポジションをロックポジションという。すなわち、ロックモードに対応するトランスファ装置13のポジションはロックポジションとなる。なお、センターデフ13Fが直結状態となるのは、トランスファ装置13のポジションが四輪駆動のとき(切替機構13Gにより四輪駆動のポジションが選択されているとき)のみである。
ロックモードには、副変速機構13Eの位置に応じて、高速ロックモード(以下、4HLcモードという)と低速ロックモード(以下、4LLcモードという)の二種類が存在する。トランスファ装置13は、センターデフ13Fが直結状態であって副変速機構13Eがハイギヤ位置(以下、ハイ直結4WD位置という)に設定された場合に、駆動モードが4HLcモードとなる。言い換えると、4HLcモードに対応するトランスファ装置13のポジションはハイ直結4WD位置となる。
また、トランスファ装置13は、センターデフ13Fが直結状態であって副変速機構13Eがローギヤ位置(以下、ロー直結4WD位置という)に設定された場合に、駆動モードが4LLcモードとなる。言い換えると、4LLcモードに対応するトランスファ装置13のポジションはロー直結4WD位置となる。つまり、上記のロックポジションには、ハイ直結4WD位置とロー直結4WD位置の二つのポジションが存在する。
なお、トランスファ装置13は、ロー直結4WD位置に設定された場合に最も大きな駆動力を前後車軸16,18に伝達し、次いでハイ直結4WD位置に設定された場合に大きな駆動力を伝達する。そのため、4HLcモード及び4LLcモードがオフロードでの駆動モードに対応し、2Hモード及び4Hモードがオンロードでの駆動モードに対応する。言い換えると、オフロードでの走行時には、駆動モードが4HLcモード又は4LLcモード(すなわちロックモード)に設定されることで、高い走破性が実現される。一方、オンロードでの走行時には、駆動モードが2Hモード又は4Hモードに設定されることで、燃費や騒音の悪化が防止され、安定した走行性が確保される。
トランスファ装置13は、後述のトランスファECU1からの指令に従って動作するアクチュエータ(図示略)により、副変速機構13E,切替機構13G及びロック機構13Hが制御されて、そのポジションが変更される。なお、本実施形態のトランスファ装置13は、2WD位置とフルタイム4WD位置との間にハイ直結4WD位置が存在するものである。言い換えると、2WD位置及びフルタイム4WD位置のうち何れか一方から他方にポジションを変更する場合に、必ずハイ直結4WD位置を経由するものである。
フロントデフ14は、左右の前輪FWの回転差を吸収するとともに、フロントプロペラシャフト17Fから伝達された駆動力を左右に分配,伝達するものである。リヤデフ15は、左右の後輪RWの回転差を吸収するとともに、リヤプロペラシャフト17Rから伝達された駆動力を左右に分配,伝達するものである。リヤデフ15は、リヤデフ15の差動をロックするデフロック機構15Hを備える。デフロック機構15Hは、トランスファECU1からの指令に従って動作するアクチュエータ(図示略)によりリヤデフ15をロックして直結状態とする。
[1−2.制動系]
車両10には、運転者によるブレーキペダル(図示略)の操作に応じて車両10にブレーキ力を与えるブレーキ装置が設けられる。本実施形態のブレーキ装置は、一般的な油圧式のディスクブレーキであり、ブレーキブースタ,マスタシリンダ(何れも図示略),ブレーキパッド21等を有する。
ブレーキペダルに与えられた踏力はブレーキブースタで倍増されたのちマスタシリンダに入力され、マスタシリンダの内部に充填されているブレーキフルードに圧力として伝わり、ブレーキ圧を発生させる。このブレーキ圧は、各車輪FW,RWに設けられるブレーキパッド21に供給され、ブレーキパッド21がブレーキディスク22を挟むことで各車輪FW,RWに摩擦制動力(ブレーキ力)が与えられる。
[1−3.補助システム,表示装置]
図2に示すように、車両10は、運転手の運転操作を補助するシステム(運転操作補助装置)として、ABS(Antilock Brake System)31と、ASC(Active Stability Control)32と、ATC(Active Traction Control)33とを備える。運転操作補助装置は、4WD_ECU4からの指令に従って作動するシステムである。
ABS31は、例えば運転手によって急ブレーキ操作がなされた場合にブレーキ圧を調節してブレーキ力を制御するシステムであり、急ブレーキ時の車輪FW,RWのロックを防止してスリップを回避する。ASC32は、例えば運転手によって急なハンドル操作がなされて車両10が横滑りした場合に、エンジン11及びブレーキ装置を統合制御するシステムであり、車両10の不安定な動きや車輪FW,RWのスリップを抑制する。ATC33は、例えば滑りやすい路面での発進時や急勾配での登坂,降坂時において駆動輪のスリップを感知した場合に、エンジン11及びブレーキ装置を統合制御するシステムであり、スムーズな発進,加速を補助する。
また、車両10の車室内、例えば図示しないインストルメントパネルには、車両10の状態を表示するメータ(図示略)及び表示部40が設けられる。表示部40は、例えば速度計やエンジン回転速度計などのメータに隣接して設けられた液晶ディスプレイであり、現在の駆動モードや走行モード,シフトポジション,平均車速,燃費,外気温,燃料残量等を表示する。
本実施形態の表示部40は、異なる情報(画面)を切替表示できる多重表示部(マルチインフォメーションディスプレイ)である。表示部40に表示される画面には、例えば初期画面,モード表示画面,航続可能距離/ドライブアシスト画面,平均車速/瞬間燃費画面,お知らせ画面などがあり、後述の表示ECU3により切替制御されるほか、運転手によるスイッチ操作によっても切替可能である。なお、表示を切り替えるためのスイッチ(図示略)は、例えばメータの近傍に配置される。
図3(a)及び(b)に示すように、表示部40は、駆動モードの表示領域(以下、第一領域41Aという)と走行モードの表示領域(以下、第二領域41Bという)とが同一画面上に設定される。以下、この画面をモード表示画面41という。モード表示画面41は、表示部40に切替表示される複数の画面のうちの一つの画面である。表示部40にモード表示画面41が表示されている間は他の画面は表示されず、反対に他の画面の表示中にはモード表示画面41は表示されない。
モード表示画面41の第一領域41Aには、四輪駆動車の形状を模した表示灯42が表示される。表示灯42には、左右の前輪FWに対応した二つの前輪灯42f,左右の後輪RWに対応した二つの後輪灯42r,センターデフ13Fに対応したデフ灯42cが設けられる。さらに、表示灯42には、右の前輪灯42fの右側部分に4L表示灯42aが設けられる。これらの前輪灯42f,後輪灯42r,デフ灯42c,4L表示灯42aは、何れも点灯,点滅,消灯の三つの状態に切替可能に構成されており、表示ECU3によってその状態が制御される。
図3(a)及び(b)は、4LLcモード及び4Hモードのときにそれぞれ表示される内容を例示したものであり、前輪灯42f,後輪灯42r,デフ灯42cの消灯状態を白抜きで表し、点灯又は点滅状態を網目模様で表す。図3(a)に示すように、駆動モードが4LLcモードのときは、前輪灯42f,後輪灯42r,デフ灯42cが全て点灯されるとともに、4L表示灯42aに「4L」という文字が表示される。駆動モードが4HLcモードのときは、4LLcモードの表示状態から4L表示灯42aのみが消灯される。
また、図3(b)に示すように、駆動モードが4Hモードのときは、前輪灯42f及び後輪灯42rが点灯され、デフ灯42c及び4L表示灯42aは消灯される。また、駆動モードが2Hモードのときは、後輪灯42rのみが点灯され、他の表示は全て消灯される。
第二領域41Bは、モード表示画面41において第一領域41Aの下方に設けられ、表示ECU3によって点灯,消灯が制御される。第二領域41Bの点灯時では、現在設定中の走行モード又は後述のオフロードモードの無効が文字表示され、消灯時では何も表示されない。
[1−4.検出系,制御系]
図2に示すように、車両10は、例えば図示しないセンターコンソールに設けられたダイヤルスイッチ5(第一操作部)及びプッシュスイッチ6(第二操作部)と、インストルメントパネルの下部に設けられたR/Dスイッチ9とを備える。
ダイヤルスイッチ5は、車両10の駆動モードを切り替える(選択する)ための操作部であり、乗員(主に運転手)により切替操作される。ダイヤルスイッチ5は、左から2Hモード,4Hモード,4HLcモード,4LLcモードの順に選択可能に設けられ、乗員の操作によってこの順に切り替えられる。ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードは、トランスファECU1に伝達される。
R/Dスイッチ9は、デフロック機構15Hによるリヤデフ15のロック状態を切り替える(選択する)ための操作部であり、乗員(主に運転手)によりプッシュ操作される。R/Dスイッチ9は、駆動モードがロックモード(4HLcモード又は4LLcモード)のときのみ操作可能に構成されている。R/Dスイッチ9に対する入力操作は、トランスファECU1に伝達される。
プッシュスイッチ6は、ダイヤルスイッチ5の近傍に配置され、車両10のオフロードでの走行モード(以下、オフロードモードという)を切り替える(選択する)ための操作部であり、乗員(主に)運転手によりプッシュ操作される。プッシュスイッチ6は、短押し操作と長押し操作とで異なる走行モードを選択(切替)可能に構成されている。プッシュスイッチ6に対する入力操作は、後述のゲートウェイECU2に伝達される。
なお、上記の駆動モードは、トランスファ装置13の状態を表す(ポジションに対応する)ものであるのに対し、ここでいう走行モードは、予め設けられた制御モードを意味し、車両10の走行状況に応じて設定されるものである。走行モードには、オンロードでの走行時に設定される通常モードと、オフロードでの走行時に設定可能なオフロードモードとが含まれ、設定された走行モードに応じて車両10に搭載された様々な装置が制御される。
また、図1及び図2に示すように、車両10には、前後車軸16,18の回転角を検出する車輪速センサ7が車輪FW,RW毎に設けられる。前後車軸16,18のそれぞれの回転角の単位時間あたりの変化量は、各車輪FW,RWの回転数に比例し、スリップが生じていなければ各車輪FW,RWの回転数は車輪速(車速)に比例する。車輪速センサ7で検出された各情報は後述の4WD_ECU4に伝達される。
車両10には、トランスファ装置13のポジションを検出するポジションスイッチ8(検出部)が設けられる。ポジションスイッチ8で検出された情報はトランスファECU1に伝達される。なお、車両10には、上記のセンサ以外にも、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ,ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ,ステアリングの操作角度を検出するステアリングセンサ等の検出手段が設けられる。
図2に示すように、車両10には、通信ラインを介して接続されたトランスファECU1,ゲートウェイECU2,表示ECU3,4WD_ECU4などの複数のコントローラを備えた制御装置が設けられる。これらのコントローラは、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置(Electronic Control Unit)である。なお、車両10には、これらのECU1〜4を備えた制御装置の他に、エンジンECUや変速機ECUなど、様々な電子制御装置が通信可能に設けられる。
[2.制御構成]
本実施形態に係る四輪駆動車の制御装置が備えるトランスファECU1,ゲートウェイECU2,表示ECU3,4WD_ECU4の各構成について、図10,図11に示すタイムチャートを適宜用いながら説明する。図10は、ダイヤルスイッチ5で駆動モードを2Hモード,4Hモード,4HLcモード,4Hモードの順に切り替えた場合を例示し、図11は4Hモード,4HLcモード,4LLcモード,4HLcモードの順に切り替えた場合を例示する。
[2−1.トランスファECU]
トランスファECU1(トランスファ制御部)は、トランスファ装置13及びリヤデフ15に関する制御を実施するものである。トランスファECU1は、ダイヤルスイッチ5から伝達される情報を用いて駆動モードが変化したか否かを判断し、変化したと判断した場合には、選択駆動モードAsとしてダイヤルスイッチ5の切替後の駆動モードを新たに記憶する(選択駆動モードAsを書き換える)。
選択駆動モードAsとは、ダイヤルスイッチ5からの情報に基づき、トランスファECU1が現在の駆動モードとして把握(記憶)しているパラメータである。なお、トランスファECU1は、駆動モードが変化していないと判断した場合には、選択駆動モードAsの書き換え(記憶の変更)は行わずに、それまでと同じ(すなわちダイヤルスイッチ5で選択中の)駆動モードを記憶しておく。そして、トランスファECU1は、選択駆動モードAsに応じたポジションとなるようにトランスファ装置13を制御する。
上記の駆動モードが変化したか否かの判断は、例えば、ダイヤルスイッチ5で駆動モードが切り替えられた時点から、所定の第一判定時間D1以上継続してその駆動モードが選択され続けたか否かで行うことができる。言い換えると、トランスファECU1は、ダイヤルスイッチ5で切り替えられた駆動モードが第一判定時間D1以上継続している場合に、その駆動モードが選択されていると判断する。なお、第一判定時間D1は、ダイヤルスイッチ5のチャタリングを考慮して予め設定されるものであり、例えば数十msのように極短い時間に設定される。これにより、ダイヤルスイッチ5のチャタリングが検出値に与えうる影響が排除される。
トランスファECU1は、新たに選択駆動モードAsを記憶した場合に、その選択駆動モードAsに対応した指令(信号)をトランスファ装置13のアクチュエータへ送信する。これにより、トランスファ装置13の副変速機構13E,切替機構13G及びロック機構13Hが制御され、トランスファ装置13のポジションがダイヤルスイッチ5で選択された駆動モード(選択駆動モードAs)に対応したものとなる。
なお、ダイヤルスイッチ5で駆動モードが変更されてから、トランスファECU1で上記の判断がなされ、アクチュエータへ指令が送信されるまでには少なくとも上記の第一判定時間D1の時間差が生じる。また、トランスファ装置13が指令を受けてから、実際に各機構13E,13G,13Hが制御され、そのポジションが選択駆動モードAsに対応したものに切り替わるまでにも時間差が生じる。つまり、乗員が駆動モードを切り替えてから、トランスファ装置13の実際のポジションがその駆動モードに対応したものに切り替わるまでには、図10に示すように時間差ΔDが生じることになる。そのため、ダイヤルスイッチ5で選択中の駆動モードとトランスファ装置13のポジションとが一致しない(異なる)時間帯(例えば図10の時刻tA1〜tA2)が発生する。なお、時間差ΔDは一定値とは限らない。
また、トランスファECU1は、ポジションスイッチ8から伝達される情報を用いてトランスファ装置13のポジションが変化したか否かを判断し、変化したと判断した場合には、実ポジションBpとしてポジションスイッチ8で検出されたポジションを新たに記憶する(実ポジションBpを書き換える)。実ポジションBpとは、ポジションスイッチ8からの情報に基づき、トランスファECU1が現在のトランスファ装置13の状態として把握(記憶)しているパラメータである。なお、トランスファECU1は、トランスファ装置13のポジションが変化していないと判断した場合には、実ポジションBpの書き換え(記憶の変更)は行わない。
上記のトランスファ装置13のポジションが変化したか否かの判断は、例えば、ポジションスイッチ8で検出されたポジションが切り替えられた時点から、所定の第二判定時間D2以上継続してそのポジションが維持され続けたか否かで行うことができる。言い換えると、トランスファECU1は、ポジションスイッチ8によって第二判定時間D2以上継続して同一のポジションが検出されている場合に、そのポジションが検出されている(実際のポジションBpである)と判断する。なお、第二判定時間D2は、ポジションスイッチ8のチャタリングと、ポジション切替時の振動とを考慮して予め設定されるものであり、例えば第一判定時間D1よりも長い数十ms〜数百msに設定される。これにより、ポジションスイッチ8のチャタリング及び切替時の振動が検出値に与えうる影響が排除される。
なお、トランスファECU1は、R/Dスイッチ9に対する入力操作があった場合に、リヤデフ15の状態を切り替える指令(信号)をデフロック機構15Hのアクチュエータへ送信する。これにより、リヤデフ15がロック状態又はアンロック状態に切り替えられる。
トランスファECU1は、選択駆動モードAs及び実ポジションBp(すなわち、ダイヤルスイッチ5及びポジションスイッチ8の各情報を用いた判断結果)を、ゲートウェイECU2,表示ECU3及び4WD_ECU4にそれぞれ伝達する。また、リヤデフ15の状態を表示ECU3へ伝達する。
[2−2.ゲートウェイECU]
ゲートウェイECU2は、走行モードの設定を行うものであり、機能要素として判定部2a及び設定部2bを備える。これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
判定部2aは、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードとポジションスイッチ8で検出されたポジションとに基づいて、走行モードの切替を許可するか否かについて判定するものである。走行モードはダイヤルスイッチ5及びプッシュスイッチ6により切替可能であるが、オフロードモードの設定(切替)に関しては、駆動モードがオフロードモードに適したロックモードのときに実施されるべきである。そのため、判定部2aは、乗員によりダイヤルスイッチ5やプッシュスイッチ6が操作されたとしても、その入力操作に応じて走行モードを切り替えることが適切であるか否かについて判定する。
判定部2aは、この判定において、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モード、及び、ポジションスイッチ8で検出されたポジションとして、それぞれ、トランスファECU1から伝達された選択駆動モードAs及び実ポジションBpを用いる。すなわち、判定部2aは、上記の判定において、乗員の選択した駆動モード(選択駆動モードAs)と、実際のトランスファ装置13のポジション(実ポジションBp)との二つのパラメータを用いる。
具体的には、判定部2aは、実ポジションBpがロックポジションである場合には、選択駆動モードAsがロックモードのときに走行モードの切替を許可すると判定し、選択駆動モードAsがロックモードでないときに走行モードの切替を許可しないと判定する。すなわち、トランスファ装置13の実ポジションBpがハイ直結4WD位置又はロー直結位4WD位置の場合は、選択駆動モードAsもこれに対応する4HLcモード又は4LLcモードであれば、走行モードの切替が許可される。
一方、判定部2aは、実ポジションBpがロックポジションでない場合には、選択駆動モードAsにかかわらず、走行モードの切替を許可しない(切替を禁止する)と判定する。すなわち、トランスファ装置13の実ポジションBpがハイ直結4WD位置又はロー直結4WD位置でない場合は、選択駆動モードAsが4HLcモード又は4LLcモードであったとしても、走行モードの切替は許可されず、プッシュスイッチ6に対する入力操作が無効とされる。以上の判定内容をまとめたものが表1である。
判定部2aは、判定結果を設定部2bに伝達する。
設定部2bは、判定部2aで走行モードの切替を許可すると判定された場合に、ポジションスイッチ8で検出されたポジションとダイヤルスイッチ5及びプッシュスイッチ6に対する各入力操作とに基づいて、車両10の走行モード(オフロードモード)を設定するものである。設定部2bは、この設定において、ダイヤルスイッチ5に対する入力操作、すなわちダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードとして、トランスファECU1から伝達された選択駆動モードAsを用い、ポジションスイッチ8で検出されたポジションとして、トランスファECU1から伝達された実ポジションBpを用いる。また、設定部2bは、判定部2aで走行モードの切替を許可しないと判定された場合には、現在の走行モードを維持する。
走行モードには、上記のように通常モードとオフロードモードとが含まれ、オフロードモードには、オフロードに応じて段階的に設定された複数のモードが含まれる。この複数のモードの中には、駆動モードが4HLcモードのときと4LLcモードのときとで、共通のモードと異なるモードとが含まれる。本実施形態のオフロードモードには、図4に示すように、共通のモードとしてGRAVELモード,MUD/SNOWモード,SANDモードの三つのモードが設けられ、異なるモードとしてROCKモードが設けられる。なお、本実施形態の設定部2bは、走行モードとして通常モードも設定するものとする。
図4は、走行モードの状態遷移図であり、四角の枠は駆動モード(選択駆動モードAs)を表し、楕円の枠は走行モードを表す。また、太実線の矢印は実ポジションBpの変化に伴う走行モードの遷移を表し、細実線の矢印は駆動モードの切替に伴う走行モードの遷移を表す。破線の矢印,一点鎖線の矢印は、それぞれプッシュスイッチ6の短押し,長押しを検出した場合の走行モードの遷移を表す。なお、設定部2bは、プッシュスイッチ6に対するプッシュ操作の継続時間から短押しであるか長押しであるかを判断する。例えば、設定部2bは、プッシュスイッチ6に対するプッシュ操作の継続時間が所定時間tp未満である場合に短押しであり、所定時間tp以上である場合に長押しであると判断する。
GRAVELモードは、オフロードモードの初期モードであり、砂利道での走行に適したモードである。MUD/SNOWモードは泥道や深雪での走行に適したモードであり、SANDモードは砂地での走行に適したモードである。これらの三つのモードは、駆動モードが4HLcモード及び4LLcモードの何れの場合にも設定可能なモードである。一方、ROCKモードは岩石等の凹凸のある路面での走行に適したモードであり、駆動モードが4LLcモードのときにのみ設定可能なモードである。
まず、ダイヤルスイッチ5が操作された場合の走行モードの設定(切替)について説明する。図4中に太実線の矢印で示すように、設定部2bは、ダイヤルスイッチ5によって駆動モードがロックモード以外のモード(2Hモード又は4Hモード)からロックモード(4HLcモード又は4LLcモード)に切り替えられたときは、実ポジションBpがロックポジション以外のポジション(2WD位置又はフルタイム4WD位置)からロックポジション(ハイ直結4WD位置又はロー直結4WD位置)に変化した時点で、走行モードを初期モードであるGRAVELモードに設定する。例えば図10に示すように、時刻tB1でダイヤルスイッチ5により選択駆動モードAsが4Hモードから4HLcモードに切り替えられると、実ポジションBpは時間差ΔDだけ遅れた時刻tB2でハイ直結4WD位置に切り替わる。走行モードは、この時点tB2で設定部2bによりGRAVELモードに設定される。
図4中に細実線の矢印で示すように、設定部2bは、駆動モードが4HLcモード及び4LLcモードの何れか一方であって走行モードが共通のモード(GRAVELモード,MUD/SNOWモード,SANDモードの何れか)に設定されている場合に、ダイヤルスイッチ5によって駆動モードが他方へと切り替えられたときは、走行モードを設定中の共通のモードに維持する。例えば図11に示すように、選択駆動モードAsが4HLcモードであって走行モードがMUD/SNOWモードに設定されている場合(時刻tF4以降)に、時刻tG1でダイヤルスイッチ5が操作されて選択駆動モードAsが4LLcモードに切り替えられたときは、走行モードが現状のMUD/SNOWモードに維持される。
これに対し、設定部2bは、駆動モードが4HLcモード及び4LLcモードの何れか一方であって走行モードが異なるモード(ROCKモード)に設定されている場合に、ダイヤルスイッチ5によって駆動モードが他方へと切り替えられたときは、走行モードを初期モードであるGRAVELモードに設定する。本実施形態では、図11に示すように、駆動モードが4LLcモードであって走行モードがROCKモードに設定されている場合(時刻tH4以降)に、時刻tJ1でダイヤルスイッチ5が操作されて駆動モードが4HLcモードに切り替えられたときは、走行モードがGRAVELモードに設定される。
なお、GRAVELモードの設定のタイミングは特に限定されず、例えばダイヤルスイッチ5が操作されて選択駆動モードAsが切り替えられた時点tJ1でもよいし、実ポジションBpが切り替わった時点tJ4でもよいし、これら以外の時点でもよい。本実施形態の設定部2bは、選択駆動モードAsが切り替えられた時点tJ1でGRAVELモードに設定するものとする。
設定部2bは、ダイヤルスイッチ5によって駆動モードがロックモード(4HLcモード又は4LLcモード)からロックモード以外のモード(2Hモード又は4Hモード)に切り替えられたときは、走行モードを通常モードに設定してオフロードモードを無効に設定する。例えば図10に示すように、時刻tE1でダイヤルスイッチ5により選択駆動モードAsが4HLcモードから4Hモードに切り替えられると、走行モードが通常モードに設定され、オフロードモードが無効にされる。なお、無効を設定するタイミングは特に限定されず、例えばダイヤルスイッチ5が操作されて選択駆動モードAsが切り替えられた時点tE1でもよいし、実ポジションBpが切り替わった時点tE2でもよいし、これら以外の時点でもよい。本実施形態の設定部2bは、実ポジションBpが切り替わった時点tE2でオフロードモードを無効に設定するものとする。
次に、プッシュスイッチ6が操作された場合の走行モードの設定(切替)について説明する。図4中に破線の矢印で示すように、設定部2bは、プッシュスイッチ6が短押し操作された場合に、同一の駆動モードの中で走行モードを次の段階のモードに切り替えて設定する。また、図4中に一点鎖線の矢印で示すように、設定部2bは、プッシュスイッチ6が長押し操作された場合に、同一の駆動モードの中で走行モードを初期モードであるGRAVELモードに設定する。
具体的には、設定部2bは、駆動モードが2Hモード又は4Hモードから4HLcモードに切り替えられた場合、まずは初期モードであるGRAVELモードに設定する(例えば図10の時刻tB2)。そして、プッシュスイッチ6が短押しされる毎に、MUD/SNOWモード,SANDモード,GRAVELモードの順に走行モードを切り替えて設定する(例えば図10の時刻tC1,tC2及び時刻tD1〜tD4)。また、プッシュスイッチ6が長押しされた場合は、何れのモードに設定されているときでもGRAVELモードに切り替えて設定する。なお、GRAVELモードに設定されている場合にプッシュスイッチ6が長押し操作されたときは、そのままGRAVELモードを維持する。
同様に、設定部2bは、駆動モードが2Hモード又は4Hモードから4LLcモードに切り替えられた場合、まずは初期モードであるGRAVELモードに設定する。そして、プッシュスイッチ6が短押しされる毎に、MUD/SNOWモード,SANDモード,ROCKモード,GRAVELモードの順に走行モードを切り替えて設定する(例えば図11の時刻tH1〜tH4及び時刻tJ2,tJ3)。また、プッシュスイッチ6が長押しされた場合は、何れのモードに設定されているときでもGRAVELモードに切り替えて設定する。なお、GRAVELモードに設定されている場合にプッシュスイッチ6が長押し操作されたときは、そのままGRAVELモードを維持する。
本実施形態の設定部2bは、上記のような走行モードの切替において、リヤデフ15がアンロック状態であるか否かを判定するとともに、ブレーキ装置の状態が正常であるか否かを判定する。そして、リヤデフ15がアンロック状態であり、且つ、ブレーキ装置が正常である場合に、上記の走行モードの切替設定を行う。一方、少なくともリヤデフ15がロック状態ある場合、又は、ブレーキ装置が正常でない場合に、上記の走行モードの切替設定は行わず、走行モードを全てGRAVELモードに設定する。なお、ブレーキ装置が正常でない場合とは、推定ブレーキ装置温度が高温である場合や何らかの異常が発生している場合を意味する。これらの情報は、例えば図示しないブレーキECU等で検出,推定,判定が可能である。
設定部2bは、設定した走行モードを表示ECU3及び4WD_ECU4にそれぞれ伝達する。
[2−3.表示ECU]
表示ECU3(表示制御部)は、ダイヤルスイッチ5に対する入力操作とポジションスイッチ8で検出されたポジションとに基づいて駆動モードを表示部40に表示させるとともに、設定部2bで設定された走行モードを表示部40に表示させるものである。表示ECU3は、この表示において、ダイヤルスイッチ5に対する入力操作、すなわちダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードとして、トランスファECU1から伝達された選択駆動モードAsを用い、ポジションスイッチ8で検出されたポジションとして、トランスファECU1から伝達された実ポジションBpを用いる。
表示ECU3は、ダイヤルスイッチ5により駆動モードが切り替えられた場合、切替後の駆動モードとなるように第一領域41Aの表示内容を制御する。同様に、表示ECU3は、設定部2bにより設定される走行モードが切り替えられた場合、切替後の走行モードが表示されるように第二領域41Bの表示内容を制御する。なお、本実施形態の表示ECU3は、走行モードがオフロードモードに設定されている場合に限ってモード表示画面41に走行モードを表示するものとする。つまり、駆動モードと走行モードとがモード表示画面41に共に表示されるのは、駆動モードがロックモードのときだけである。
表示ECU3は、ダイヤルスイッチ5が操作された場合、切替後の駆動モードに対応するポジションと実ポジションBpとが一致した時点で駆動モードの表示を開始し、少なくとも所定の第一設定表示時間Cs1の間は表示する。例えば図10に示すように、時刻tA1や時刻tB1で選択駆動モードAsが切り替えられたときは、実ポジションBpと一致した時刻tA2又は時刻tB2から駆動モードの表示を開始して、少なくとも第一設定表示時間Cs1が経過するまでは(時刻tA3又は時刻tB3までは)表示したままとする。
言い換えると、駆動モードの表示開始時点は、ダイヤルスイッチ5が操作されて駆動モードが切り替えられた場合に、選択駆動モードAsに対応するポジションと実ポジションBpとが一致した時点である。なお、単に表示という場合は、点灯表示を意味する。すなわち、表示ECU3は、選択駆動モードAsに対応するポジションと実ポジションBpとが一致した時点で、その駆動モードに対応した表示灯42の前輪灯42f,後輪灯42r,デフ灯42c,4L表示灯42aを点灯させる。
本実施形態の表示ECU3は、ダイヤルスイッチ5により駆動モードが切り替えられた時点(例えば図10の時刻tA1)から実ポジションBpが切替後の駆動モードに対応するポジションと一致する時点(図10の時刻tA2)までの間、切替後の駆動モードを点滅表示する。つまり、表示ECU3は、選択駆動モードAsが切り替えられた時点から、切替後の選択駆動モードAsに対応するように表示灯42を点滅表示し、実ポジションBpが選択駆動モードAsに対応するポジションと一致した時点で点滅表示を点灯表示へと変更する。これにより、乗員に対してトランスファ装置13のポジションが切り替え中であることを報知する。
他方、表示ECU3は、設定部2bによって設定される走行モードが切り替えられた時点で走行モードの表示を開始し、少なくとも所定の第二設定表示時間Cs2の間は表示する。例えば図10に示すように、時刻tB2や時刻tC2で走行モードが切り替えられたときは、その時点tB2又は時点tC2から走行モードの表示を開始して、少なくとも第二設定表示時間Cs2が経過するまでは(時刻tB3又は時刻tC3までは)表示したままとする。
言い換えると、走行モードの表示開始時点は、設定部2bによって走行モードが切替設定された時点である。すなわち、駆動モードの表示開始時点と走行モードの表示開始時点とは同一である必要はなく、異なるタイミングとなり得る。なお、上記の第一,第二設定表示時間Cs1,Cs2は、乗員にモードの切替を確認しうる時間を与えつつ煩わしさを与えない程度に予め設定された時間(例えば3〜5秒)であり、同一の値でも異なる値でもよい。本実施形態では、第一,第二設定表示時間Cs1,Cs2が同一の値に設定されている場合を例示する。以下、これらを特に区別しない場合には、単に設定表示時間Csという。
表示ECU3は、切替後の駆動モードがロックモードである場合に、駆動モード及び走行モードをモード表示画面41に共に表示させるとともに、少なくとも各設定表示時間Cs1,Cs2の経過後に二つの表示を同時に消灯する。すなわち、表示ECU3は、二つの表示開始時点が異なるタイミングであったとしても、二つの表示終了時点は同一のタイミングとなるように、二つの表示時間を調節する。
例えば図11に示すように、表示ECU3は、時刻tF2からの駆動モードの表示中に設定部2bにより時刻tF4において走行モードが切り替えられた場合、駆動モードの表示時間を走行モードの表示終了時点tF6まで延長(第一設定表示時間Cs1に延長時間Cy1を加算)し、二つの表示を時刻tF6において同時に消灯する。また、表示ECU3は、時刻tJ1からの駆動モードの点滅表示中に設定部2bにより時刻tJ3において走行モードが切り替えられた場合、走行モードの表示時間を駆動モードの表示終了時点tJ6まで延長(第二設定表示時間Cs2に延長時間Cy2を加算)し、二つの表示を時刻tJ6において同時に消灯する。
また、表示ECU3は、ダイヤルスイッチ5によって駆動モードが4HLcモード及び4LLcモードの何れか一方から他方へと切り替えられた場合に、その切替時点で走行モードの表示を開始する。すなわち、ダイヤルスイッチ5により、駆動モードが4HLcモードと4LLcモードとに切り替えられた場合は、すでにオフロードモードが設定されているため、表示ECU3は、選択駆動モードAsの切替時点で走行モードの表示を開始する。
例えば図11に示すように、時刻tG1で選択駆動モードAsが4HLcモードから4LLcモードに切り替えられたときは、その切替時点tG1で走行モードの表示を開始する。なお、この場合は、表示ECU3は走行モードの表示時間を駆動モードの表示終了時点tG4まで延長(第二設定表示時間Cs2に延長時間Cy3を加算)し、二つの表示を時刻tG4において同時に消灯する。
さらに、本実施形態の表示ECU3は、ダイヤルスイッチ5によって駆動モードがロックモードからロックモード以外のモードに切り替えられた場合には、その切替時点(例えば図10の時刻tE1)で走行モードの表示を開始する。そして、実ポジションBpが選択駆動モードAsに対応するポジションと一致した時点(図10の時刻tE2)で、駆動モードを表示するとともに走行モードの表示をオフロード無効表示に切り替える。なお、オフロード無効表示とは、第二領域41Bに「無効」という文字を表示することを意味する。
駆動モードが2Hモード又は4Hモードに切り替えられると、設定部2bによって走行モードは通常モードに設定されてオフロードモードが無効(通常モード)に設定される。そのため、表示ECU3は、選択駆動モードAsが2Hモード又は4Hモードに切り替えられた場合に、実ポジションBpが選択駆動モードAsに対応するポジションに一致するまでの間、これまで設定されていた走行モードを一時的に表示し、一致した時点でその表示を「無効」という表示に切り替えることで、オフロードモードが無効になったことを乗員に報知する。無効表示は、駆動モードの表示終了時点(図10の時刻tE3)で同時に消灯される。
なお、表示ECU3は、実ポジションBpがロックポジション以外のポジション(2WD位置又はフルタイム4WD位置)のときにプッシュスイッチ6に対する入力操作があった場合には、第二領域41Bにオフロード無効表示を行う。
[2−4.4WD_ECU]
4WD_ECU4(システム制御部)は、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モード及び設定部2bで設定された走行モードに従って、運転操作補助装置を制御するものである。4WD_ECU4は、この制御において、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードとして、トランスファECU1から伝達された選択駆動モードAsを用いる。
本実施形態の4WD_ECU4は、ABS31,ASC32,ATC33を、以下の表2のように制御する。具体的には、駆動モードが2Hモード又は4Hモードであれば、通常の制御(以下、制御Aとも表記する)を実施し、駆動モードが4HLcモード又は4LLcモードであれば、走行モードによって各制御内容を変更する。なお、4WD_ECU4は、ATC33に関してはエンジン11及びブレーキ装置に対して異なる制御を実施するため、表2においてエンジン制御は(E)と表し、ブレーキ制御は(B)と表す。
4WD_ECU4は、例えば表2に示すように、ABS31に対して、駆動モードが2Hモード又は4Hモード、あるいは、走行モードがGRAVELモード又はMUD/SNOWモードの場合に、通常の制御(制御A)を実施し、走行モードがSANDモード又はROCKモードの場合に制御Bを実施する。ここで、ABS31に対する制御Bは、砂地や岩場を想定した制御であり、目標スリップ(目標とする車輪スリップ量)を高くすることで砂地等での制動距離を向上させる。
また、ASC32に対する制御B,制御C,制御Dはそれぞれ、砂利,泥濘又は深雪,砂地を想定した制御であり、制御A(通常の制御)と比較して、制御B,制御C,制御Dの順にブレーキ制御量及びエンジン制御量を共に弱めることで走破性を向上させる。また、ATC33に対する制御B,制御C,制御D,制御Eはそれぞれ、砂利,泥濘又は深雪,砂地,岩場を想定した制御であり、制御A(通常の制御)と比較して、制御B,制御C,制御Dの順にブレーキ制御量及びエンジン制御量を共に弱めることで走破性を向上させる。制御Eについては目標スリップを制御Aよりも低くし、さらにブレーキ制御量を強めることで極低速での走行性を重視し、車輪離地時の脱出性,走破性を向上させる。なお、表2中の横棒は制御がオフの状態を表す。
[3.フローチャート]
図5は上述のゲートウェイECU2で実施されるフローチャートの一例であり、図6は図5のサブフローチャートである。また、図7は上述の表示ECU3で実施される駆動モード表示用のフローチャートの一例であり、図8及び図9は上述の表示ECU3で実施される走行モード表示用のフローチャートである。
これらのフローチャートは、キーオン(イグニッションスイッチON)と共にスタートされ、ゲートウェイECU2及び表示ECU3において、それぞれ予め設定された所定の演算周期で繰り返し実施される。なお、トランスファECU1では、所定の演算周期でダイヤルスイッチ5及びポジションスイッチ8からの情報をそれぞれ取得し、選択駆動モードAs及び実ポジションBpを記憶するとともに、これらの情報をゲートウェイECU2,表示ECU3及び4WD_ECU4にそれぞれ伝達する。
[3−1.判定及び走行モード設定フローチャート]
まず、ゲートウェイECU2で実施される判定及び走行モードの設定について説明する。図5に示すように、ステップS10では、トランスファECU1から選択駆動モードAs及び実ポジションBpを取得し、ステップS20では、選択駆動モードAsと実ポジションBpとが対応するか否かが判定される。すなわち、実ポジションBpが選択駆動モードAsに対応するポジションと一致する(以下、これを「As=Bp」とも表記する)か否かが判定され、一致しない(対応しない)ときはステップS30へ進み、一致する(対応する)ときはステップS35へ進む。
ステップS30では、トランスファECU1によって選択駆動モードAsに対応した指令がトランスファ装置13へ送信されたか否かが判定され、送信済みのときはステップS50へ進み、未送信のときはステップS40へ進む。ステップS40では、トランスファECU1によって指令が送信され、ステップS50へ進む。ステップS50では、実ポジションBpがロックポジションであるか否かが判定される。YESのときはステップS60へ進み、NOのときはステップS75へ進む。
ステップS60では、選択駆動モードAsがロックモードであるか否かが判定され、YESのときはステップS70へ進む。この場合、選択駆動モードAsがロックモードであり、且つ、実ポジションBpがロックポジションであるため、ステップS70では走行モードの切替を許可すると判定される。そして、ステップS80へ進み、図6に示す走行モードの設定フローチャートが実施される。
一方、実ポジションBpがロックポジションではなくステップS75へ進んだときは、走行モードの切替を許可しない(禁止する)と判定され、ステップS85で走行モードが通常モードに設定されて、このフローをリターンする。つまり、実ポジションBpがロックポジションでなければ、選択駆動モードAsにかかわらず、走行モードの切替は許可されず、走行モードは通常モードに設定される。
なお、選択駆動モードAsを切り替えてから実ポジションBpが選択駆動モードAsに対応したものに切り替わるまでには時間差ΔDが生じる。そのため、実ポジションBpがロックポジションであるときに、ダイヤルスイッチ5が操作されて、選択駆動モードAsがロックモードからロックモード以外のモードに切り替えられた場合は、ステップS60からNoルートへ進み、このフローをリターンする。この場合、実ポジションBpと選択駆動モードAsとが対応しないため、ステップS30,ステップS40を経由してトランスファ装置13が選択駆動モードAsに対応したポジションとなるように制御される。そして、時間差ΔDが過ぎれば、実ポジションBpもロックポジション以外のポジションに変化するため、いずれはステップS75へ進むことになる。
また、実ポジションBpがロックポジションであるときに、ダイヤルスイッチ5が一瞬だけ操作(誤操作)されて、駆動選択モードAsがロックモードからロックモード以外のモードに切り替えられた場合にも、ステップS60からNoルートに進むことになる。この場合も、やはり実ポジションBpと選択駆動モードAsとが対応しないため、ステップS30を経由して、ステップS40でトランスファ装置13に対して選択駆動モードAsに対応した指令が送信されることとなる。ここで、時間差ΔDが過ぎる前に選択駆動モードAsがロックモードに戻された場合はAs=Bpとなるため、ステップS20からステップS35へ進む。
ステップS35では、トランスファ装置13に対して前回指令した選択駆動モードAsと現在の(今回の演算周期のステップS10で取得した)選択駆動モードAsとが同一であるか否かが判定される。この場合、前回指令した選択駆動モードAsはロックモード以外のモードであり、現在の選択駆動モードAsはロックモードであるため、これらは同一ではないと判断され、ステップS45へ進み、トランスファECU1に対して前回送信した指令をキャンセルするように指示する。
これにより、実ポジションBpがロックポジションであって、一瞬だけ選択駆動モードAsがロックモード以外のモードに切り替えられた場合や、選択駆動モードAsが直ぐにロックモードに戻された場合に、前回状態が維持されることになる。また、走行モードの切替が許可されない(禁止される)のは、実ポジションBpがロックポジション以外のポジション(2WD位置又はフルタイム4WD位置)のときであるため、実際のトランスファ装置13の状態に応じた適切な切替制御が可能となる。
続いて、ステップS80に進んだ場合のモード設定フローチャートについて、図6を用いて説明する。図6に示すように、ステップS90では、前回の演算周期のステップS10で取得された実ポジションBpがロックポジションであるか否かが判定される。すなわち、今回の演算周期で実ポジションBpがロックポジション以外のポジションからロックポジションへと切り替えられたか否かが判定される。前回の実ポジションBpがロックポジションでないときはステップS95へ進み、ロックポジションであるときはステップS100へ進む。
ステップS95に進んだときは、今回の演算周期で実ポジションBpがロックポジション以外のポジションからロックポジションへと切り替えられたことになるため、走行モードが初期モードであるGRAVELモードに設定される。ステップS100では、プッシュスイッチ6に対する入力操作(プッシュ操作)があったか否かが判定され、プッシュ操作がなければステップS102へ進み、カウントPが下限値P0以上であるか否かが判定される。
ここで、カウントPは、プッシュ操作が短押しであるか長押しであるかを判断するためのタイマに相当するものであり、カウントPが下限値P0以上かつ所定値Pt未満(P0≦P<Pt)で短押しであると判定され、カウントPが所定値Pt以上(P≧Pt)で長押しであると判定される。なお、下限値P0はプッシュスイッチ6のチャタリングを考慮して設定される値であり、所定値Ptは上記の所定時間tpに相当する値であって所定時間tpと演算周期とに基づき予め設定される。なお、所定値Ptは下限値P0よりも大きい値である。カウントPは、プッシュ操作が継続しているときにステップS125でカウントアップされていく。
ステップS102において、P<P0のときはステップS105に進み、実ポジションBpが変更したか否かが判定される。すなわち、ダイヤルスイッチ5により選択駆動モードAsが切り替えられ、これに伴って実ポジションBpが切り替わったか否かが判定される。実ポジションBpが変更していなければ、ステップS150へ進み、現状の走行モードが維持される。一方、実ポジションBpが変更していればステップS110へ進み、別のロックポジションへの変更か否かが判定される。すなわち、実ポジションBpがハイ直結4WD位置及びロー直結4WD位置の何れか一方から他方への変更であるか否かが判定される。
ステップS110において、NOの場合(すなわち、ロックポジション以外のポジションへの変更の場合)は、ステップS120へ進み、走行モードが通常モードに設定され、ステップS150へ進む。一方、別のロックポジションへの変更の場合は、ステップS115へ進み、現在の走行モードが二つのロックモードに共通しないモードであるROCKモードであるか否かが判定される。走行モードがROCKモードのときはステップS140へ進み、走行モードがROCKモードでないときは現状の走行モードが維持されて、ステップS150へ進む。
ステップS100において、プッシュ操作があった場合は、ステップS125に進み、カウントPが現在のカウントPに1を加算した値に設定される(カウントアップされる)。続くステップS127では、P≧P0であるか否かが判定され、P<P0のときはステップS100へ戻る。プッシュ操作が継続されていれば、再びステップS125でカウントアップされ、ステップS127の判定が行われる。そして、プッシュ操作が下限値P0に達する前に終了された場合は、ステップS100からステップS102,ステップS105へと進む。
一方、ステップS127において、P≧P0であると判定されると、続くステップS130において、P≧Ptであるか否かが判定される。P<PtのときはステップS100へ戻り、プッシュ操作が継続されている限り、ステップS125でカウントアップされる。そして、カウントPが所定値Ptに達する前にプッシュ操作が終了されると、ステップS100からステップS102へ進み、P0≦P<Ptであるか否かが判定される。この場合は、P0≦P<Ptであるため、プッシュスイッチ6が短押し操作されたと判断されてステップS132へ進む。一方、ステップS130でP≧Ptのときは、プッシュスイッチ6が長押し操作されたと判断されてステップS140へ進む。
ステップS140では、走行モードがGRAVELモードに設定され、ステップS150へ進む。ステップS132では、現在の走行モードがGRAVELモードであるか否かが判定され、YESのときはステップS142で走行モードがMUD/SNOWモードに設定され、ステップS150へ進む。GRAVELモードでなければ、ステップS134で現在の走行モードがMUD/SNOWモードであるか否かが判定され、YESのときはステップS144で走行モードがSANDモードに設定され、ステップS150へ進む。MUD/SNOWモードでなければ、ステップS136に進む。
ステップS136では、現在の走行モードがROCKモードであるか否かが判定され、YESのときはステップS140へ進み、NOのときはステップS138へ進む。ステップS138では、実ポジションBpがロー直結4WD位置であるか否かが判定され、YESのときはステップS148で走行モードがROCKモードに設定される。一方、NOのときはステップS140へ進み、走行モードがGRAVELモードに設定される。そして、ステップS150では、カウントPが0リセットされ(P=0)、このフローをリターンし、再び図5のステップS10からの処理が繰り返される。
[3−2.表示フローチャート]
次に、表示ECU3で実施される駆動モードの表示及び走行モードの表示について説明する。図7のフローと図8及び図9のフローとは並行して実施され、カウント情報が互いに伝達される。まず、駆動モードの表示フローについて説明する。
図7に示すように、ステップT10では、トランスファECU1から選択駆動モードAs及び実ポジションBpを取得するとともに、並行して実施する図8のフローから後述のカウントLを取得する。ステップT20では、選択駆動モードAsの切替の有無が判定され、切替があったときはステップT30において、選択駆動モードAsに対応する表示内容が点滅表示されてステップT40へ進む。
ステップT40では、As=Bpであるか否かが判定され、NOのときはこのフローをリターンする。この場合、表示部40には、第一領域41Aに駆動モードのみが点滅表示される。次の周期では、再びステップT10で各情報が取得され、選択駆動モードAsの切替がなければステップT25へ進み、駆動モードが点灯中であるか否かが判定される。この場合、駆動モードは点灯中でなく点滅中であるため、ステップT35へ進み、駆動モードが点滅中であるか否かが判定され、YESルートからステップT40へ進む。
すなわち、選択駆動モードAsが切り替えられてから、As=Bpとなるまでこれらの処理が繰り返し実施されるとともに、第一領域41Aに駆動モードが点滅表示される。そして、As=BpとなるとステップT50へ進み、駆動モードが点灯表示に切り替えられる。続くステップT55では、カウントHが現在のカウントHに1を加算した値に設定される(カウントアップされる)。
ここで、カウントHは、駆動モードの表示時間をカウントするためのタイマに相当するものであり、カウントHが所定値H0を超えると第一設定表示時間Cs1が駆動モードの表示終了時点に達したと判定される。なお、所定値H0は上記の第一設定表示時間Cs1に相当する値であって第一設定表示時間Cs1と演算周期とに基づき予め設定される。また、図8から取得するカウントLは、走行モードの表示時間をカウントするためのタイマに相当するものであり、カウントLが所定値L0を超えると第二設定表示時間Cs2が走行モードの表示終了時点に達したと判定される。なお、所定値L0は上記の第二設定表示時間Cs2に相当する値であって第二設定表示時間Cs2と演算周期とに基づき予め設定される。
ステップT60では、カウントHが所定値H0よりも大きい(H>H0)か否かが判定され、H≦H0のときはこのフローをリターンする。この場合、表示部40には駆動モードが点灯表示されているため、次の周期ではステップT25からステップT55へと進み、カウントHのカウントアップが繰り返し行われる。駆動モードの点灯表示が第一設定表示時間Cs1だけ経過するとH>H0となるため、ステップT60からステップT65へ進み、カウントLがL=0であるか否かが判定される。この判定は、第二領域41Bに走行モードが表示されているか否かの判定である。すなわち、選択駆動モードAsがロックモード以外のモードの場合、走行モードは表示されず、カウントLは0のままである。この場合は、ステップT65からステップT75へ進む。
一方、走行モードが表示されており、カウントLのカウントアップが行われている場合には、ステップT60からステップT70へ進み、カウントLが所定値L0よりも大きいか(L>L0)か否かが判定され、L≦L0のときはこのフローをリターンする。この場合、表示部40には駆動モードが点灯表示されるとともに走行モードが表示された状態となり、L>L0となるまで駆動モードの表示時間が延長される。そして、L>L0となると、ステップT70からステップT75へ進み、カウントH,Lが共に0リセットされる(H=0,L=0)。そして、ステップT80において、駆動モード及び走行モードが同時に消灯されて、このフローをリターンする。なお、選択駆動モードAsの切替がなく、駆動モードが点滅も点灯もされていない場合は、ステップT20からステップT25,T35を経由して、このフローをリターンする。
次に、走行モードの表示フローについて説明する。図8に示すように、ステップX10では、トランスファECU1から選択駆動モードAs及び実ポジションBpを取得するとともに、並行して実施する図7のフローからカウントHを取得する。ステップX20では、選択駆動モードAsが4HLcモードであるかが判定され、4HLcモードのときはステップX30で実ポジションBpがハイ直結4WD位置であるか否かが判定される。実ポジションBpがハイ直結4WD位置でないときは、図9のフローのステップX150へ進む。
一方、実ポジションBpがハイ直結4WD位置のときは、ステップX40で走行モードの切替の有無が判定され、切替があればステップX45でL=0,M=0とされて、ステップX50で切替後の走行モードが表示される。なお、カウントMは、無効表示時間をカウントするためのタイマに相当するものであり、カウントMが所定値M0を超えると無効表示時間が経過したと判定される。無効表示時間は、例えば上記の設定表示時間Csと同一の値に予め設定される。
ステップX60では、カウントLがカウントアップされ、ステップX65ではL>L0であるか否かが判定されて、L≦L0のときはこのフローをリターンする。次の周期では、選択駆動モードAs及び実ポジションBpに変化がなく、走行モードの切替も行われていなければ、ステップX55において走行モードの表示中であるか否かが判定される。この場合、走行モードの表示中のため、再びステップX60へ進み、カウントアップが繰り返される。
そして、走行モードの表示が第二設定表示時間Cs2だけ経過するとL>L0となるため、ステップX65からステップX70へ進み、H=0であるか否かが判定される。この判定は、第一領域41Aに駆動モードが点灯表示されているか否かの判定であり、H=0のときはステップX80へ進む。駆動モードの点灯表示中は、ステップX70からステップX75へ進み、H>H0であるか否かが判定され、H≦H0のときはこのフローをリターンする。この場合、表示部40には走行モードが表示されるとともに駆動モードが点灯表示された状態となり、H>H0となるまで走行モードの表示時間が延長される。
H>H0となると、ステップX80でH=0,L=0とされ、ステップX85で駆動モード及び走行モードが同時に消灯されて、このフローをリターンする。なお、選択駆動モードAsが4HLcモードであり、実ポジションBpがハイ直結4WD位置であるときに、走行モードの切替がなく走行モードの表示を行っていないときは、ステップX55からこのフローをリターンする。
一方、選択駆動モードAsが4HLcモードでないときは、ステップX25で4LLcモードであるか否かが判定され、YESのときはステップX35で実ポジションBpがロー直結4WD位置であるか否かが判定される。ここで、実ポジションBpがロー直結4WD位置のときは、上記のステップX40〜X85と同様の処理が実施され、実ポジションBpがロー直結4WD位置でないときは、図9のフローのステップX150へ進む。
ステップX25において、選択駆動モードAsが4LLcモードでもないときは、ロックモードでないことになるため、ステップX90へ進んで前回の選択駆動モードAsがロックモードであったか否かが判定される。つまり、今回の周期で選択駆動モードAsがロックモードからロックモード以外のモードに切り替えられたか否かが判定され、YESのときはステップX100で現在の走行モードが表示される。そして、ステップX120で選択駆動モードAsと実ポジションBpとが対応するか否かが判定される。
選択駆動モードAsの切替当初は実ポジションBpとは対応しないため、このフローをリターンし、次の周期でステップX90からステップX95へ進んで、走行モードの表示中であるか否かが判定される。この場合、走行モードの表示中であるため、再びステップX120へ進み、選択駆動モードAsと実ポジションBpとが対応するまでこれらの処理が繰り返し実施され、対応することになると、ステップX130でオフロード無効表示が行われる。つまり、選択駆動モードAsがロックモードからロックモード以外のモードに切り替えられた場合は、一時的に走行モードが表示された後、オフロードモードが無効であるという表示に切り替わる。
ステップX132では、カウントMがカウントアップされ、ステップX135ではM>M0であるか否かが判定される。M≦M0であればこのフローをリターンし、次の周期ではステップX90からステップX95,X105へと進み、プッシュスイッチ6がプッシュ操作されたか否かが判定される。プッシュ操作があった場合は、ステップX115でM=0とされ、再びステップX130へ進む。つまり、選択駆動モードAsがロックモードでないときのプッシュ操作は無効であることが表示され、カウントMがリセットされることで一定時間(無効表示時間だけ)無効表示が行われることになる。
プッシュ操作がないときは、ステップX125へ進み、オフロード無効表示中であるか否かが判定され、表示中であればステップX132でカウントアップが継続される。そして、M>M0となると、ステップX140でM=0とされ、無効表示が消灯される。なお、オフロード無効表示がされていない場合は、ステップX125からこのフローをリターンする。
ところで、選択駆動モードAsがロックモードであるときに、実ポジションBpがそれに対応するポジションでないときは、図9のフローへ進む。図9に示すように、ステップX150では、実ポジションBpがロックポジションであるか否かが判定される。YESルートに進むのは、As=4HLcモード且つBp=ロー直結4WD位置であるか、As=4LLcモード且つBp=ハイ直結4WD位置であるときである。ステップX155では、ダイヤルスイッチ5が切替直後であるか否かが判定され、今回の周期で選択駆動モードAsが変化したときは、ステップX160でH=0とされて、ステップX170で走行モードが表示される。
ステップX180では、走行モードの切替の有無が判定され、切替がないときは、前述のステップX60〜X85と同様の処理(ステップX200〜X225)が実施される。一方、ステップX155で、今回の周期で選択駆動モードAsが変化したのではないときは、ステップX165へ進み、走行モードの表示中であるか否かが判定され、表示中のときはステップX180へ進む。一方で、走行モードの表示中でなければステップX175へ進み、走行モードの切替の有無が判定される。走行モードの切替がなければこのフローをリターンし、切替があればステップX185でL=0にリセットされて、ステップX200のカウントアップが行われる。
一方、ステップX150で実ポジションBpがロックポジションでないときは、ステップX230でプッシュ操作がされたか否かが判定される。プッシュ操作がされたときは、ステップX235でM=0にリセットされるとともに、ステップX240でオフロード無効表示がされる。つまり、実ポジションBpが2WD位置又はフルタイム4WD位置のときにされたプッシュ操作は無効であると表示される。そして、前述のステップX130〜X145と同様の処理(ステップX250〜X265)が実施される。一方、プッシュ操作がなければ、ステップX245でオフロード無効表示中か否かが判定され、表示中であればステップX250へ進み、表示中でなければこのフローをリターンする。
[4.作用,効果]
したがって、上述の四輪駆動車の制御装置によれば、ゲートウェイECU2の判定部2aによって、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードとポジションスイッチ8で検出されたポジションとに基づいて、走行モードの切替の許否が判定される。そして、設定部2bによって、許可すると判定された場合は走行モードが設定され、許可しないと判定された場合は現在の走行モードが維持されるため、オフロードでの走行モード(オフロードモード)を適切に設定することができる。これにより、四輪駆動車としての走行性能(例えばオフロードでの走破性やオンロードでの安定性)を確保しつつ、安全性を高めることができる。
上述の制御装置では、判定部2aによって、トランスファ装置13のポジションがロックポジションでないときに、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードにかかわらず走行モードの切替を許可しないと判定される。これにより、実際のトランスファ装置13の状態に応じて走行モードが適切に設定されることになり、安全性をより高めることができる。
上述の制御装置では、判定部2aによって、トランスファ装置13のポジションがロックポジションであるときに、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードがロックモードであれば走行モードの切替を許可すると判定される。すなわち、走行モードの切替は、乗員の意思と実際のトランスファ装置13のポジションとが一致した場合に許可されるため、安全性をより高めることができる。
上述の制御装置では、判定部2aによって、トランスファ装置13のポジションがロックポジションであるときに、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードがロックモードでない場合は走行モードの切替を許可しないと判定される。これにより、例えばダイヤルスイッチ5がロックモードから一瞬だけロックモード以外のモードに切り替えられたような場合であっても、走行モードは現状のまま維持されるため、走行モードの不用意な変更を防ぐことができ、走行性能や安全性を高めることができる。
上述の制御装置では、トランスファECU1によって、ダイヤルスイッチ5で切り替えられた駆動モードが第一判定時間D1以上継続している場合にその駆動モードが選択されていると判断され、選択駆動モードAsとして記憶される。これにより、ダイヤルスイッチ5のチャタリングが検出値に与えうる影響を排除することができる。同様に、ポジションスイッチ8によって第二判定時間D2以上継続して同一のポジションが検出されている場合にそのポジションが検出されていると判断され、実ポジションBpとして記憶される。これにより、ポジションスイッチ8のチャタリング及び切替時の振動が検出値に与えうる影響を排除することができる。したがって、判定部2aによる判定精度や各ECU2〜4による制御精度を高めることができる。
本実施形態のトランスファ装置13は、2WD位置及びフルタイム4WD位置のうち何れか一方から他方にポジションを変更する場合に、必ずハイ直結4WD位置を経由するものである(図10の時刻tA1〜tA2の実ポジションBp参照)。そのため、ダイヤルスイッチ5を2Hモード及び4Hモードの何れか一方から他方へと切り替えた場合に、駆動モードと実際のポジションとが一致しない期間(時間差ΔD)が比較的長くなる。これに対し、上述の制御装置によれば、走行モードの切替の許可判定において、必ず実際のポジションをチェックするため、時間差ΔDが長い場合であっても、走行性能の確保と安全性の向上とを両立することができる。
上述の制御装置によれば、4WD_ECU4により運転操作補助装置が駆動モード及び走行モードに従って制御されるため、走行性能をさらに高めることができる。
また、本実施形態では、駆動モードを切り替える操作部がダイヤルスイッチ5であり、走行モードを切り替える操作部が、ダイヤルスイッチ5の近傍に配置されたプッシュスイッチ6であるため、モード切替操作の操作性を向上させることができる。
上述の制御装置によれば、駆動モードがロックモード以外のモードからロックモードに切り替えられたときは、設定部2bによって、ポジションスイッチ8で検出されたポジションがロックポジションに変化した時点で走行モードがオフロードモードの初期モード(GRAVELモード)に設定される。つまり、ロックモードに突入して初期モードを設定するのは、ダイヤルスイッチ5の切替時点ではなく実際のトランスファ装置13のポジションがロックポジションに切り替わった時点とされるため、オフロードでの走行モードを適切に設定することができる。なお、ダイヤルスイッチ5をロックモードに切り替えるだけで、設定部2bにより自動的に走行モードがロックモードの初期モードに設定されるので、乗員の負担を軽減することができる。
上述の制御装置では、駆動モードが4HLcモード及び4LLcモードの何れか一方であって走行モードが異なるモード(上記のROCKモード)に設定される場合に、ダイヤルスイッチ5が操作されて別のロックモードに切り替えられたときは、設定部2bによって走行モードが初期モードに設定される。これにより、オフロードモードを適切に設定することができる。
また、駆動モードが4HLcモード及び4LLcモードの何れか一方であって走行モードが共通のモード(上記のGRAVELモード,MUD/SNOWモード,SANDモードの何れか)に設定される場合に、ダイヤルスイッチ5が操作されて別のロックモードに切り替えられたときは、設定部2bによって走行モードが維持される。これにより、不用意に走行モードが切り替わることを防ぐことができ、オフロードモードを適切に設定することができる。
上記の制御装置では、設定部2bによって、プッシュスイッチ6に対するプッシュ操作の継続時間がカウントされ、この継続時間から短押しであるか長押しであるかが判断される。そして、短押しのときは走行モードを次の段階のモードに切り替え、長押しのときは走行モードを初期モードに設定するため、一つの操作部(プッシュスイッチ6)で簡単にオフロードモードを切り替えることができ、操作性を向上させることができる。
また、設定部2bは、ダイヤルスイッチ5によって駆動モードがロックモードからロックモード以外のモードに切り替えられたときに、オフロードモードを無効に設定する(走行モードを通常モードに設定する)ため、オンロードでの走行性能も確保することができる。
上述の制御装置では、表示ECU3によって、駆動モードがロックモードであって、実際のトランスファ装置13のポジションがこれに対応するロックポジションである場合に、設定部2bで設定中の走行モードが表示部40に表示されるため、運転手に対して適切な報知(表示)を行うことができる。
また、本実施形態では、表示部40が異なる情報(画面)を時間差で表示できる多重表示部であり、駆動モードの表示領域(第一領域)41Aと走行モードの表示領域(第二領域)41Bとが同一の画面(走行モード画面)41に設定されている。そのため、運転手がほとんど視線を動かすことなく、駆動モードと走行モードとを確認することができ、視認性を高めることができる。
さらに、上述の制御装置では、表示ECU3によって、ダイヤルスイッチ5による切替後の駆動モードがロックモードである場合に、駆動モード及び走行モードが走行モード画面41に表示されるとともに、所定時間の経過後に二つの表示が同時に消灯される。したがって、運転手に対して煩わしさを与えることなく、適切な報知(表示)を行うことができる。
本実施形態では、駆動モードの表示開始時点が、ダイヤルスイッチ5の切替後、駆動モードに対応するポジションとポジションスイッチ8で検出されたポジションとが一致した時点とされる。また、走行モードの表示開始時点が、設定部2bで設定される走行モードの切替時点とされる。つまり、駆動モード,走行モードの表示開始時点が、実際のポジションや走行モードの切替時点とされるため、運転手に対して適切な報知(表示)を行うことができる。さらに、駆動モードの表示中に走行モードの切替があったときは、駆動モードの表示時間が走行モードの表示終了時点まで延長されるため、煩わしさを与えることがない。
上述の制御装置によれば、ダイヤルスイッチ5によって駆動モードが4HLcモード及び4LLcモードの何れか一方から他方へと切り替えられた場合に、その切替時点で走行モードの表示が開始されるので、運転者に対して速やかに走行モードを報知(表示)することができる。
また、この場合に、走行モードの表示時間が駆動モードの表示終了時点まで延長されるため、二つの表示を同時に消灯させることができ、運転手に煩わしさを与えることがない。
本実施形態では、ダイヤルスイッチ5で駆動モードが切り替えられた場合に、実ポジションBpがその駆動モードに対応するポジションと一致するまでの間、駆動モードが点滅表示され、一致後は点灯表示に切り替えられる。そのため、運転手に対し、現在の車両10(特にトランスファ装置13)の状態を報知(表示)することができる。
上述の制御装置では、ダイヤルスイッチ5で駆動モードがロックモードからロックモード以外のモードに切り替えられた場合に、その切替時点で走行モードが表示され、実ポジションBpと駆動モードのポジションとが一致した時点で、駆動モードが表示されるとともに走行モードの表示がオフロード無効表示に切り替えられる。すなわち、駆動モードが4HLcモード又は4LLcモードから2Hモード又は4Hモードに切り替えられたときは、一時的に走行モードが表示された後、オフロード無効表示に切り替えられるため、運転手に対して駆動モードとオフロードモードが無効であることとを適切に報知(表示)することができる。
なお、本実施形態では、実ポジションBpがロックポジション以外のポジションのときにプッシュ操作がされた場合に、オフロードモードが無効であることが表示されるため、実際のトランスファ装置13の状態を考慮しつつ運転手に対して適切な報知を行うことができる。
[5.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上記実施形態で説明した駆動モード及び走行モードは一例であって、上記したモードの一部のみが設けられていてもよいし、上記以外のモードが設けられていてもよい。例えばトランスファ装置13が副変速機構13Eを備えていないものであってもよいし、2WD位置とフルタイム4WD位置との間にハイ直結4WD位置のないトランスファ装置であってもよい。
また、判定部2aは、走行モードの切替の許可判定において、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードと実際にポジションスイッチ8で検出されたポジションとを用いて行う構成であればよく、走行モード切替の許可条件,禁止条件(許可しない条件)は上記したものに限られない。例えば、実ポジションBpがロックポジションでないときに、ダイヤルスイッチ5で選択された駆動モードをチェックした上で切替を許可するか否かを判定してもよい。
また、設定部2bによる走行モードの設定手法については上記のものに限定されない。例えば、ダイヤルスイッチ5により、ロックモード以外のモードからロックモードに切り替えられた時点では通常モードのままとしておき、プッシュスイッチ6の操作がされたら初期モードに設定するようにしてもよい。また、4HLcモードと4LLcモードとが切り替えられた場合は、走行モードを常に初期モードに設定するようにしてもよいし、プッシュスイッチ6を長押しした場合に、走行モードを一つ前のモードに戻すような構成としてもよい。なお、4HLcモードと4LLcモードとで、異なる走行モードが含まれていなくてもよい。
上記実施形態では、トランスファECU1が、第一判定時間D1,第二判定時間D2を用いて選択駆動モードAs及び実ポジションBpを記憶(把握)するものを例示したが、二つの判定時間D1,D2を用いずに、駆動モード,トランスファ装置13の実際のポジションを把握する構成としてもよい。また、各ECU2〜4が、トランスファECU1から伝達された選択駆動モードAs,実ポジションBpに基づいて各種制御を実施するのではなく、ダイヤルスイッチ5及びポジションスイッチ8から直接情報を取得して制御を行ってもよい。この場合に、二つの判定時間D1,D2を用いずに駆動モード,実際のポジションを把握する構成としてもよい。
上記実施形態では、運転操作補助装置としてABS31,ASC32,ATC33の三つのシステムを例示したが、これらに代えて、或いはこれらに加えて、他のシステムが搭載されていてもよい。また、4WD_ECU4による運転操作補助装置の制御内容は上記の表2に示すものに限られない。
また、車両10の駆動モード及びオフロードモードを切り替えるための操作部は、ダイヤルスイッチ5及びプッシュスイッチ6に限られず、他の構成の操作部であってもよい。また、これら操作部の位置も上記の位置に限られない。また、プッシュスイッチ6が短押し操作と長押し操作とで異なる走行モードを選択(切替)可能に構成されているものでなくてもよい。
また、表示部40が多重表示部でなくてもよく、走行モード画面41に表示される内容も上記のものに限られない。例えば、表示部40の一部に多重表示領域が設けられたディスプレイであってもよいし、駆動モードと走行モードとそれぞれ表示する二つの表示部が設けられていてもよい。
なお、上記実施形態では、複数のECU1〜4にそれぞれの機能が分担されているものを例示したが、上記の機能を別のECUに設けてもよいし、また、一つのECUでこれらの制御を全て実施するように構成してもよい。