以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置の模式的な縦断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式のレーザープリンタである。また、図2は本実施例の画像形成装置の要部の模式図である。
画像形成装置100は、像担持体としてドラム型(円筒形)の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、OPC(有機光半導体)、アモルファスセレン、アモルファスシリコンなどの感光材料を、アルミニウムやニッケルなどで形成されたシリンダ状のドラム基体上に設けて構成したものである。感光ドラム1は、装置本体Mに回転自在に支持されており、駆動源m1によって図中矢印Rd方向に230mm/秒のプロセススピード(周速度)で回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1の外径は24mmである。
感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、次の各手段が配置されている。まず、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ2が配置されている。次に、露光手段としての露光装置(レーザースキャナ装置)3が配置されている。次に、現像手段としての現像装置4が配置されている。次に、転写手段としてのローラ状の転写部材である転写ローラ5が配置されている。この転写ローラ5は、感光ドラム1との間で記録材Pを挟持すると共に、電圧が印加されることでトナー像を感光ドラム1から記録材Pに転写させる転写手段の一例である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置6が配置されている。
また、装置本体Mの図中下部には、紙などの記録材(転写材、記録媒体)Pを収納した記録材カセット7が配置されている。また、記録材カセット7から記録材Pの搬送経路に沿って順に、給送ローラ8、搬送ローラ9、トップセンサ10、転写前ガイド17、搬送ガイド11、定着装置12、排出センサ13、搬送ローラ14、排出ローラ15、排出トレイ16が配置されている。また、詳しくは後述するように、定着装置12には定着入口ガイド18、定着出口ローラ19が設けられている。
次に、画像形成動作について説明する。感光ドラム1は、駆動源m1によって図中矢印Rd方向に回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に略一様に帯電される。このとき、帯電ローラ2には、図示しない帯電電源(高圧電源)から帯電バイアス(帯電電圧)が印加される。帯電した感光ドラム1の表面は、露光装置(レーザー光学系)3によって、画像情報に基づいた画像露光Lがなされ、露光された部分の電荷が除去されて静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置4によってトナー像として現像される。現像装置4は、トナーを感光ドラム1との対向部(現像部)に供給する現像剤担持体としての現像ローラ4aを有する。そして、この現像ローラ4aに、図示しない現像電源(高圧電源)から現像バイアス(現像電圧)が印加されることによって、感光ドラム1上の静電潜像にトナーが付着されて、トナー像として現像(顕像化)される。本実施例では、一様に帯電された後に露光されることで電位の絶対値が低下した露光部に、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーを付着させる反転現像方式で、トナー像が形成される。
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写ローラ5の作用によって、紙などの記録材Pに転写される。転写ローラ5は、付勢手段としての付勢部材である転写加圧バネ(図示せず)により感光ドラム1に向けて付勢(押圧)され、感光ドラム1に圧接されている。これにより、感光ドラム1と転写ローラ5との間の接触部に転写ニップ(転写挟持部)Ntが形成されている。転写ローラ5は、感光ドラム1の回転に従動して回転する。本実施例では、転写ローラ5の外径は12.5mmである。転写ローラ5は、感光ドラム1との間で記録材Pを挟持して搬送する。このとき、転写ローラ5には、転写電源(高圧電源)21から現像時のトナーの帯電極性(正規の帯電極性)とは逆極性の直流電圧である転写バイアス(転写電圧)が印加される。これにより、感光ドラム1上のトナー像が、記録材P上の所定の位置に転写される。
記録材Pは、記録材カセット7に収納されており、給送ローラ8によって1枚ずつ送り出され、搬送ローラ9によって搬送されて、ガイド部材である転写前ガイド17に沿って転写ニップNtに搬送される。このとき、記録材Pは、トップセンサ10によって先端が検知され、感光ドラム1上のトナー像と同期がとられる。
表面にトナー像が転写された記録材Pは、搬送ガイド11に沿って定着装置12に搬送され、ここで未定着トナー像が加熱及び加圧されて記録材Pの表面に定着される。定着装置12の詳細については後述する。
定着装置12によってトナー像が定着された後の記録材Pは、搬送ローラ14によって搬送され、排出ローラ15によって装置本体Mの図中上面に形成された排出トレイ16上に排出される。このとき、記録材Pは、ジャム(紙詰まり)の有無の確認などのために、排出センサ13によって後端が検知される。
一方、トナー像を記録材Pに転写した後の感光ドラム1は、記録材Pに転写されないでその表面に残ったトナー(転写残トナー)がクリーニング装置6のクリーニングブレード6aによって除去され、次の画像形成に供される。
以上の動作を繰り返すことで、次々と画像形成を行うことができる。
2.定着装置
次に、定着装置12について説明する。本実施例では、定着装置12は、可撓性のエンドレスベルトから成る定着フィルムを有する加圧ローラ駆動方式の定着装置である。
更に説明すると、定着装置12は、フィルム状の定着回転体である定着フィルム12aを有する。また、定着装置12は、定着フィルム12aに当接された加圧部材としての加圧ローラ12bを有する。また、定着装置12は、定着フィルム12aを介してトナーを加熱する加熱源としてのセラミックヒータ(以下、単に「ヒータ」ともいう。)12cを有する。また、定着装置12は、ヒータ12cを支持する支持部材であるヒータホルダ12dを有する。定着フィルム12a、ヒータ12c、ヒータホルダ12dなどで加熱部材が構成される。
本実施例では、定着フィルム12aは、変形させられていない状態では略円筒形であり、その外径は18mmである。より詳細には、この定着フィルム12aは、次のような3層構成を有する。まず、ポリイミド樹脂に熱伝導フィラーを分散させた厚さ30〜80μmの円筒形ベースフィルムを有する。また、その表面に、フッ素樹脂に導電性カーボンを分散させた、体積抵抗率1×105Ω・cm以下、厚さ1〜6μmのプライマー層が形成されている。さらに、その上に、フッ素樹脂に導電性付与物質を分散させた、厚さ5〜20μmの離型層が形成されている。
本実施例では、ヒータ12cは、アルミナ基板上に発熱体としての銀合金からなる抵抗発熱体を印刷し、その抵抗発熱体の表面にガラスコーティングを施して構成されている。また、ヒータ12cには、温度検知素子としてサーミスタ(図示せず)が設けられている。そして、ヒータ12cは、発熱体としての抵抗発熱体に、本実施例では商用電源とされる交流電源(交流電圧源、ヒータ駆動電源)20から交流電圧が印加されることで発熱する。ヒータ12cへの電力の供給、ヒータ12cの温調は、装置本体Mに設けられ画像形成装置100の動作を統括的に制御する制御部150によって行われる。
本実施例では、加圧ローラ12bの外径は20mmである。この加圧ローラ12bは、金属製の芯金12eの外周面に、シリコーンゴムなどの弾性を有する耐熱性の弾性層12fが設けられ、また最表層にフッ素樹脂などの離型性の高い材料を用いた離型層(図示せず)が設けられて構成されている。加圧ローラ12bは、付勢部材である加圧バネ(図示せず)によって押圧され、離型層の外周面によって、図中下方から定着フィルム12aをヒータ12cに押し付けている。これにより、定着フィルム12aと加圧ローラ12bとの間の接触部に定着ニップ(定着挟持部)Nfが形成されている。
加圧ローラ12bが駆動源m1により図中矢印R12b方向に回転駆動されることで、定着ニップNfにおける加圧ローラ12bと定着フィルム12aとの間の圧接摩擦力により、定着フィルム12aに回転力が作用する。そして、定着フィルム12aは、その内周面がヒータ12cの図中下方を向いた面に密着して摺動しながら、図中矢印R12a方向に、加圧ローラ12bの回転に従動して回転する。
また、ヒータ12cに電力が供給され、ヒータ12cが昇温して所定の温度に立ち上がり、温調された状態が維持される。この状態において、定着ニップNfの定着フィルム12aと加圧ローラ12bとの間に、未定着トナー像を担持した記録材Pが導入される。これにより、定着ニップNfにおいて、記録材Pのトナー像を担持した面側が定着フィルム12aの外周面に密着した状態で、記録材Pは定着フィルム12aと一緒に加圧ローラ12bとヒータ12cとの間に挟持されて搬送されていく。この挟持搬送過程において、ヒータ12cの熱が定着フィルム12aを介して記録材Pに付与され、記録材P上の未定着トナー像が、記録材P上に加熱及び加圧されて溶融定着される。定着ニップNfを通過した記録材Pは、定着フィルム12aから曲率分離される。
ここで、前述のように、ヒータ12cにおいて抵抗発熱体をコーティングしているガラス(ガラスコーティング)は、電気的にはコンデンサと見なされ、その容量は数百pF程度(200pF〜400pF)である。したがって、交流電源20からの交流電圧は、抵抗発熱体からガスコーティングを介して定着ニップNfに伝達される。また、本実施例では、記録材Pの搬送経路において、定着ニップNfと転写ニップNtとに記録材Pが同時に挟持されることがある。
本実施例では、記録材Pの搬送方向において、転写ニップNtの下流側、かつ、定着ニップNfの上流側に、記録材Pを案内するガイド部材として定着入口ガイド18が設けられている。定着入口ガイド18は、転写ニップNtから定着ニップNfへ記録材Pを搬送する際のガイドの役割を果たす。定着入口ガイド18は、記録材Pに接触してその搬送軌跡を規制して、定着ニップNfへ記録材Pを案内する。定着入口ガイド18は、定着ニップNfと転写ニップNtとに同時に挟持された記録材Pに接触する導電部材の一例である。換言すると、定着入口ガイド18は、感光ドラム1に記録材Pが接触しているときに記録材Pが接触する感光ドラム1以外の導電性の部材(導電部材)の一例である。本実施例では、定着入口ガイド18は、導電材料として金属で形成されている。
また、本実施例では、記録材Pの搬送方向において、定着ニップNfの下流側に、記録材Pを挟持して搬送する定着出口ローラ(対)19が設けられている。本実施例では、定着出口ローラ19は、芯金の外周に弾性層を形成して構成されており、弾性層は導電性ゴムから成り、芯金は電気的に接地されている。
本実施例では、定着フィルム12aには、バイアス電源30から制限抵抗31を介して定着バイアス(DCバイアス)が印加されるようになっている。バイアス電源30から負極性の直流電圧が定着フィルム12aに印加されると、定着ニップNfにおいて負極性のトナーを記録材Pに向けて付勢する方向の電界が生じる。これにより、定着ニップNfにおけるトナー像の定着フィルム12aへのオフセットや飛び散りなどを抑制することができる。
本実施例では、定着フィルム12a、加圧ローラ12b、ヒータ12c、ヒータホルダ12d、定着入口ガイド18、定着出口ローラ19などを有して定着装置12が構成される。この定着装置12は、記録材Pを挟持すると共に、交流電圧が印加されることで記録材Pを加熱してトナー像を記録材Pに定着させる定着手段の一例である。
3.制御態様
本実施例では、画像形成装置100に設けられた制御手段としての制御部150が、画像形成装置100の全体的な制御を行う。制御部150は、演算処理を行う中心的素子であるCPU、記憶素子であるROM、RAMなどのメモリを有して構成される。RAMには、センサの検知結果、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。制御部150には、画像形成装置100における各制御対象が接続されている。特に、本実施例との関係で言えば、制御部150には、転写電源21、電流検知手段としての電流検知回路40が接続されている。電流検知回路40は、転写電源21が転写ローラ5に直流電圧を印加した際に転写ローラ5に流れる直流電流値を検知することができる。本実施例では、転写電源21は、制御部150の制御により設定される電圧値の定電圧を出力できるように構成されている。そして、制御部150は、電流検知回路40により検知された電流値が所定の電流値となるように、転写電源21の出力の設定値を変化させることで、転写電源21から転写ローラ5に所定の電流を供給する電圧を印加することができる。また、制御部150は、このときの転写電源21の出力の設定値と電流検知回路40の検知結果とから、それぞれ電圧値と電流値の情報を取得することができる。
ここで、画像形成装置100は、一の開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連のプリント動作(画像出力動作)である「ジョブ」を行う。ジョブは、一般に、画像形成工程(印字工程)、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電潜像の形成、トナー像の形成、トナー像の転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに連続して画像を形成する「連続プリント」を行う際の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程時などが含まれる。
本実施例では、画像形成装置100は、連続プリント時の紙間(プリント間隔)を変更することができるようになっている。例えば、画像形成に用いる記録材Pの種類などに応じて複数設けられた画像形成モードによって紙間(プリント間隔)が変更される。なお、ここでは、連続プリント時の記録材Pと記録材Pとの搬送路上の距離間隔を「紙間」という。また、連続プリント時に搬送経路上の所定位置(例えば定着入口ガイドと記録材との接触開始位置)を紙間が通過するのに要する時間のことを「プリント間隔」という。より具体的には、本実施例では、連続プリント時に、一例として、紙間(プリント間隔)12mm(0.05秒)、毎分47枚のプリントスピードで記録材Pが排出される。また、本実施例では、連続プリント時に、他の一例として、紙間(プリント間隔)23mm(0.1秒)のプリントスピードで記録材Pを排出できるようになっている。
4.ACバンディング画像の抑制
図2に示すように、本実施例では、定着入口ガイド18と接地電位との間に、容量素子であるコンデンサ23と抵抗素子である抵抗体22とが並列に接続される。すなわち、定着入口ガイド18は、コンデンサ23、抵抗体22のそれぞれの一方の端子に接続されており、コンデンサ23、抵抗体22のそれぞれの他方の端子は接地電位(グランド)に接続されている。コンデンサ23は、定着入口ガイド18から接地電位に流れる電流ItのAC成分を多くしACバンディング画像を抑制するためのものである。抵抗体22は、定着入口ガイド18から接地電位に流れる電流ItのDC成分を一定範囲内に収めて転写抜け画像及び定着入口ガイド18の帯電を抑制するためのものである。これにより、定着入口ガイド18の帯電を抑制し、記録材Pとの摺擦で発生した電位を下げることができる。
ここで、定着フィルム12aの表面電位を一定以下に保つために、加圧ローラ12bの芯金12eは抵抗体を介して電気的に接地される場合がある。この場合、記録材Pが定着ニップNfに突入すると、定着ニップNfに転写電流が逃げ、記録材Pが定着ニップNfに突入する前後で転写ニップNtでの転写性が異なり、画像全体で一様な転写性を得ることができない場合がある。そのため、転写抜け画像の抑制と画像の一様性とを両立するためには、抵抗体22の抵抗値を大きくしすぎることは望ましくない。つまり、定着入口ガイド18を介した転写電流の逃げによる転写抜け画像を抑制するためには、抵抗体22の抵抗値は一定以上に大きくすることが望まれる。しかし、画像の一様性を確保するためには、記録材Pが定着ニップNfに突入する前後での転写電流が逃げる量の差を小さくするように、抵抗値を一定以下に小さくすることが望まれる。このように、本実施例を適用する画像形成装置100の具体的構成などに応じて、定着入口ガイド18と接地電位との間に接続する抵抗体22には最適な抵抗値がある。
本実施例の画像形成装置100において、定着入口ガイド18と接地電位との間に接続する抵抗体22として、高圧抵抗の抵抗値を20MΩ、30MΩ、40MΩ、50MΩと振り、転写抜け画像及び飛び散り画像の発生の状況を検討した。その結果、30MΩ以下の抵抗値では、定着入口ガイド18の帯電による飛び散り画像の発生は抑制できるものの、転写電流の逃げによる転写抜け画像を抑制する効果は不十分であった。一方、50MΩの抵抗値では、定着ニップNfに突入する前後での転写性の差による濃度差が発生した。そのため、本実施例の画像形成装置100では、抵抗体22の抵抗値は40MΩが最適であることがわかった。
また、定着入口ガイド18と接地電位との間に接続するコンデンサ23の容量は、大きいほどACバンディング画像の抑制に対して効果がある。このコンデンサ23は記録材Pを介してヒータ12cに間接的に接続されるだけなので、落雷などによるサージ電圧がヒータ12cのガラスコーティングなどに過大に印加されること抑制するために、このコンデンサ23と直列に抵抗体を接続する必要はない。そして、そのような直列に接続する抵抗体を設けなくても、コンデンサ22の容量は可及的に高くすることができる。本実施例の画像形成装置100において、コンデンサ23の容量を4700pF、10000pF、30000pF、47000pFと振り、ACバンディング画像の発生の状況を確認した。その結果、コンデンサ23の容量は高いほどACバンディング画像に対して効果が高かった。
以上から、定着入口ガイド18と接地電位との間に、40MΩの抵抗体22と47000pFのコンデンサ23とを並列に接続することによって、ACバンディング画像、及び、転写抜け、飛び散りのない良好な画像を得られることが確認された。尚、本実施例では定着入口ガイド18に抵抗体22とコンデンサ23を並列に接続する例について説明したが、転写ニップNtの上流側に設けられる転写前ガイドなどに接続した場合でも同様の効果が得られる。
5.転写性の変動の抑制
上述のように、定着入口ガイド18と接地電位との間に抵抗体22とコンデンサ23とを並列に接続することで、ACバンディング画像を抑制することができる。しかし、この構成では、複数の記録材Pに連続してトナー像を転写するジョブにおいて、コンデンサ23の充電の程度によって転写性が変動し、ジョブの全体での画質の一様性が低下する場合があることがわかった。
つまり、例えば高温高湿環境下などで吸湿した紙などの低抵抗紙を使用する時には、この記録材Pを介してコンデンサ23に電荷が溜まるまで転写電流が逃げる。このとき、例えば実際に出力している転写バイアスと、記録材Pへのトナー像の転写に最低限必要な転写バイアスとの幅を十分に確保していない場合には、転写電流が逃げることによって、転写に必要な電流が不足する場合がある。また、コンデンサ23に電荷が一定以上溜まると、コンデンサ23への転写電流の逃げが少なくなる。そのため、コンデンサ23に電荷が溜まる前後で転写性が異なってしまうことがある。結果として、プリント開始からプリント終了までの一連のプリント動作(ジョブ)の全体で画質の一様性を得ることが困難となることがある。
ジョブの全体で画質の一様性を向上するためには、コンデンサ23に電荷が溜まる前後で転写バイアスを変更することが有効である。表1に、コンデンサ23に電荷が溜まる前(ジョブの初期:本実施例では1枚目)と溜まった後(ジョブの初期以降:本実施例では2枚目以降)での良好な転写性が得られる転写電流(必要転写電流値)を調べた結果を示す。転写性は、常温環境下(23℃、50%)で、キヤノン製A4サイズ紙OceRedLabel(坪量80g/m2)を用いて連続プリントを行って確認した。また、紙間(プリント間隔)は12mm(0.05秒)とした。尚、「開直紙」とは、包装紙を開けてすぐの紙であり、例えば含水率が5%以下の紙などの高抵抗紙の一例である。また、「放置紙」とは、高温高湿環境に例えば48時間放置した紙であり、例えば含水率が7%以上の紙などの低抵抗紙の一例である。
表1から、ジョブの1枚目は、開直紙では、転写電流が4μA以下では転写電流が不足するために転写不良が発生し、転写電流が8μA以上では転写電流が多すぎるためにトナーの電荷が反転し感光ドラム1上へ再度転写される再転写が発生することがわかる。したがって、開直紙については転写電流が5〜7μAで良好な転写性が得られる。一方、放置紙では、転写電流が定着入口ガイド18を介してコンデンサ23に逃げるため、開直紙よりも必要な転写電流が多くなり、転写電流が7〜9μAで良好な転写性が得られることがわかる。
また、2枚目以降に関しては、開直紙では転写電流が4〜6μAで良好な転写性が得られ、放置紙では転写電流が5〜7μAで良好な転写性が得られていることがわかる。このように2枚目以降の必要転写電流値が1枚目より減少しているのは、1枚目の通紙時に過渡的に転写電流がコンデンサ23に流れることにより電荷が溜まり、その後の転写電流の逃げが減ったためであり、特に放置紙においてこの傾向が顕著である。
表1の結果から、プリント間隔(紙間)が0.05秒(12mm)の場合、ジョブの1枚目については転写電流7μA、2枚目以降は転写電流6μAで定電流制御を行えば開直紙/放置紙共に良好な転写性が得られることがわかる。
ここで、記録材Pが定着入り口ガイド18と接している区間でコンデンサ23に蓄えられた電荷は、紙間に対応する期間で放電される。しかし、紙間が狭くなるにつれ、コンデンサ23に蓄えられた電荷は紙間で放電されにくくなる。
表2に、プリント間隔(紙間)を変えて連続プリントを行い必要転写電流値を調べた結果を示す。転写性は、常温環境下(23℃、50%)で、キヤノン製A4サイズ紙OceRedLabel(坪量80g/m2)を用いて連続プリントを行って行確認した。
表2から、プリント間隔(紙間)を0.1秒(23mm)に広げるとジョブの1枚目と2枚目以降とでの必要転写電流値が同じなることがわかる。これは、1枚目のプリントでコンデンサ23に溜まった電荷が、プリント間隔(紙間)が広がったことで放出され、1枚目と2枚目とでの転写電流が逃げる程度が同じになったためである。つまり、本実施例では、プリント間隔(紙間)が0.1秒(23mm)以上であれば、1枚目と2枚目とで転写電流を変える必要がないことがわかる。
このように、プリント間隔(紙間)が所定値未満の場合には、ジョブの初期(例えば、1枚目)とそれ以降(例えば、2枚目以降)とで転写バイアスを変更することによって、ジョブの全体で良好な転写性が得られ、画質の一様性を向上することができる。そして、本実施例のように、プリント間隔(紙間)が可変である場合、プリント間隔(紙間)に応じて、その転写バイアスの変更の要否を制御することができる。
なお、記録材Pの電気抵抗によっても、転写電流が逃げる程度(すなわち、コンデンサ23が充電される程度)は異なる。つまり、高抵抗紙の使用時には、転写電流が逃げにくく、コンデンサ23は充電されにくい。一方、低抵抗紙の使用時には、転写電流が逃げやすく、コンデンサ23は充電されやすい。そこで、本実施例では、プリント間隔(紙間)が所定値未満の場合に、ジョブの初期(例えば、1枚目)とそれ以降(例えば、2枚目以降)とでの転写バイアスの変更の要否を、記録材Pの電気抵抗に関する情報に応じて制御する。
6.転写バイアス制御
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施例の転写バイアス制御、すなわちジョブの1枚目と2枚目以降で転写電流の目標値(目標転写電流)を変える制御の一例について説明する。
まず、制御部150は、プリント信号(ジョブの開始信号)を受信すると、前回転工程時に目標転写電流を7μAに設定し(Step101)、ジョブの1枚目は目標転写電流7μAで定電流制御を行う(Step102)。次に、制御部150は、指定されたプリント枚数に到達したか判断し(Step103)、到達していればジョブを終了させる。また、制御部150は、指定されたプリント枚数に到達していなければ、直前のページと次のページとのページ間隔が閾値としての所定値(本実施例では0.1秒)以上か判別(コンデンサ23の充電されているか判断)する(Step104)。制御部150は、ページ間隔が所定値以上の場合は、コンデンサ23が放電されているため、Step101へ進み目標転写電流7μAで定電流制御を行う。
一方、制御部150は、Step104でページ間隔が所定値に満たない場合は、次のようにする。つまり、コンデンサ23が充電されているため、更に直前のページの転写電圧が閾値としての所定値(800V)以下か判断(直前のページの記録材Pが高抵抗紙か低抵抗紙か判断)する(Step105)。尚、本実施例では、目標転写電流7μAで定電流制御した時の転写電圧が800V以下であれば低抵抗紙、800Vを超える場合は高抵抗紙であると判別できることがわかっている。制御部150は、目標転写電流7μAで定電流制御した時の転写電圧が所定値を超える場合は、次のようにする。つまり、直前のページの記録材Pが開直紙又は両面プリント2面目のように抵抗値が高い高抵抗紙であり、コンデンサ23が放電されているので、Step101へ進み目標転写電流7μAで定電流制御を行う。また、制御部150は、直前のページの転写電圧が所定値以下の場合は、次のようにする。つまり、直前のページが放置紙のように抵抗値が低い低抵抗紙であり、コンデンサ23が充電されているので、目標転写電流を6μAに下げて(Step106)、定電流制御を行う(Step102)。その後、指定枚数に到達するまで同様の動作を繰り返す。
このような転写バイアス制御により、コンデンサ23の電荷の状態に応じた適切な転写バイアス制御を行うことができる。
尚、本実施例では、転写バイアスを定電流制御する場合について説明したが、転写バイアスを定電圧制御して、転写電圧を変更することでも同様の効果が得られる。この場合、本実施例において目標転写電流を小さくするのに対応して、目標転写電圧を小さくするようにする。また、本実施例では1枚目と2枚目以降とで転写電流を変更する例について説明したが、転写電流(又は転写電圧)を段階的に変更することが可能である。典型的には、ジョブにおいてより後の記録材Pに対する転写電流(又は転写電圧)ほど小さくするように段階的に変更することができる。例えば、ジョブの1枚目の転写バイアスに対して2枚目の転写バイアスを変更し、該2枚目の転写バイアスに対して3枚目の転写バイアスを変更するように、コンデンサ23の充電状況に応じて徐々に転写バイアスを変更していくことができる。そして、コンデンサ23が一定以上充電された以降の記録材Pに対しては更なる転写バイアスの変更はしないようにすることができる。この場合も、本実施例と同様に、直前の記録材Pとの紙間が長くなった場合や直前の記録材Pの電気抵抗が一定以上高かった場合など(コンデンサ23が放電される場合)に、その放電状況に応じて例えば1枚目の転写バイアスなどに適宜戻すことができる。また、本実施例では、ジョブの初期としてジョブの1枚目に対する転写バイアスに対し、ジョブの2枚目以降に対する転写バイアスを変更したが、これに限定されるものではない。例えば、ジョブの初期の任意の枚数目まではコンデンサ23が十分に充電されないような構成の場合、当該任意の枚数目の記録材Pに対する転写バイアスに対し、次の記録材P以降の記録材Pに対する転写バイアスを変更する構成としてもよい。
このように、本実施例では、画像形成装置100は、導電部材18と接地電位との間に並列に接続された抵抗素子22及び容量素子23と、印加手段21により転写手段5に印加する転写バイアスを制御する制御手段150と、を有する。そして、制御手段150は、一の開始指示により複数の記録材に連続して転写を行うジョブ(連続プリントのジョブ)において、次のような制御を行う。すなわち、N(Nは1以上の自然数)枚目の記録材Pに対する転写のための転写バイアスに対し、N+1枚目以降の少なくとも1枚の記録材に対する転写のための転写バイアスを変更する。特に、本実施例では、制御手段150は、転写バイアスを定電流制御し、N枚目の記録材Pに対する転写のための転写バイアスの電流値よりも、N+1枚目以降の少なくとも1枚の記録材Pに対する転写のための転写バイアスの電流値を小さくする。あるいは、制御手段150が、転写バイアスを定電圧制御し、N枚目の記録材Pに対する転写のための転写バイアスの電圧値よりも、N+1枚目以降の少なくとも1枚の記録材Pに対する転写のための転写バイアスの電圧値を小さくするようにしてもよい。
また、本実施例では、制御手段150は、連続プリントのジョブにおいて、N+1枚目以降のそれぞれの記録材Pと先行する記録材Pとの間の間隔に基づいて、上記転写バイアスの変更の要否を制御する。つまり、上記間隔が所定値未満の場合に、該N+1枚目以降のそれぞれの記録材Pに対する転写のための転写バイアスを、N枚目の記録材Pに対する転写のための転写バイアスに対して変更する。一方、上記間隔が上記所定値以上の場合には、該N+1枚目以降のそれぞれの記録材Pに対する転写のための転写バイアスを、N枚目の記録材Pに対する転写のための転写バイアスに対して変更しない。さらに、本実施例では、制御手段150は、連続プリントのジョブにおいて、N+1枚目以降のそれぞれの記録材Pに先行する記録材Pの電気抵抗と相関する値に基づいて、上記転写バイアスの変更の要否を制御する。本実施例では、記録材Pの電気抵抗と相関する値は、転写バイアスを定電流制御した時の電圧値である。つまり、上記電気抵抗と相関する値が電気抵抗が低い方向に所定値を超えた場合に、該N+1枚目以降のそれぞれの記録材Pに対する転写のための転写バイアスを、N枚目の記録材Pに対する転写のための転写バイアスに対して変更する。一方、上記電気抵抗と相関する値が上記所定値を超えない場合には、該N+1枚目以降のそれぞれの記録材Pに対する転写のための転写バイアスを、N枚目の記録材Pに対する転写のための転写バイアスに対して変更しない。ここで、本実施例ではNは1であるが、これに限定されるものではない。ただし、通常は、Nは5以下、典型的には3以下である。
以上、本実施例では、定着入口ガイド18などの転写ニップNtと定着ニップNfの両方に挟持された記録材Pが接触する導電性部材に抵抗体22とコンデンサ23を並列接続する。これによって、ACバンディング画像、及び、転写抜け、飛び散りのない良好な画像を得られる。それと共に、本実施例によれば、転写バイアスを変更することによって、コンデンサ23の電荷状態の違いによる転写バイアスの過不足で生じる転写不良や再転写などの画像不良を抑制できる。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと実質的に同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、画像形成装置100の使用環境に応じて、転写バイアスの変更量を変える。つまり、本実施例では、高温環境のように開直紙と放置紙の抵抗値差が大きく異なる場合と、低温環境のように開直紙と放置紙の抵抗値差が小さく、転写電流の逃げ量が少ない場合とで、転写バイアスの変更量を変える。これにより、使用環境に応じた適切な転写バイアスの設定が可能となり、転写不良や再転写などのない良好な画像を得ることができる。
使用環境による転写性の違いについて、表3、表4を用いて説明する。表3は高温環境(30℃、50%)、表4は低温環境(15℃、50%)における必要転写電流値を調べた結果を示す。紙間(プリント間隔)は12mm(0.05秒)とした。
まず、表3から、高温環境では開直紙と放置紙とで必要転写電流値が大きく異なることがわかる。これは、放置紙の抵抗値が低いために、定着入口ガイド18への転写電流の逃げが大きくなり、開直紙よりも見かけ上の転写電流が多く必要となるためである。また、開直紙では、2枚目以降の必要転写電流値は1枚目の必要転写電流値とほとんど差がないことがわかる。これに対して、放置紙では、1枚目の転写電流の逃げでコンデンサ23に電荷が溜まり、2枚目以降での逃げ電流が大きく減少するため、2枚目以降の必要転写電流値は1枚目の必要転写電流値と大きく異なることがわかる。したがって、高温環境では、1枚目は転写電流9μA、2枚目以降は転写電流7μAで定電流制御することで良好な転写性が得られる。
次に、表4から、低温環境では転写電流が不足して発生する転写不良と転写電流が多すぎて発生する突き抜け画像(転写ニップ部での異常放電による画像不良)に対して、開直紙と放置紙での必要転写電流値にほとんど差がないことがわかる。これは、開直紙と放置紙とで抵抗値の差が少なく、また抵抗値が比較的高いためである。つまり、開直紙と放置紙のいずれでも、定着入口ガイド18への転写電流の逃げがほとんどなく、1枚目と2枚目以降とで必要転写電流値に差はない。したがって、低温環境では、ジョブの1枚目が2枚目以降かによらず、転写電流6μAで定電流制御することにより良好な転写性が得られることになる。
本実施例では、上記高温環境、低温環境、及び、実施例1の常温環境の結果から、目標転写電流を表5のように設定する。なお、本実施例でも、実施例1と同様に、転写バイアスの変更の要否を、プリント間隔(紙間)及び記録材Pの電気抵抗に関する情報に応じて制御する。
次に、図4のフローチャートを用いて、本実施例における転写バイアス制御の一例について説明する。本実施例では、画像形成装置100には、環境検知手段としての画像形成装置100の環境温度を検知する環境温度センサ50(図1)が設けられている。
まず、制御部150は、プリント信号(ジョブの開始信号)を受信すると、前回転工程時に環境温度センサ50の検知結果により画像形成装置100の使用環境の判別を行う(Step201)。そして、制御部150は、高温環境と判別した場合は目標転写電流を9μA(Step202)に設定する。また、制御部150は、常温環境と判別した場合は目標転写電流を7μA(Step203)に設定する。また、制御部150は、低温環境と判別した場合は目標転写電流を6μAに設定する(Step204)。そして、制御部150は、ジョブの1枚目は、設定した目標転写電流で定電流制御を行う(Step205)。次に、制御部150は、指定されたプリント枚数に到達したか判断し(Step206)、到達していればジョブを終了させ、到達していなければ再度使用環境の判別を行う(Step207)。そして、制御部150は、高温環境と判断した場合は、直前のページと次のページとのページ間隔が所定値(本実施例では0.1秒)以上か判別(コンデンサ23に電荷が溜まっているか判断)する(Step208)。制御部150は、ページ間隔が所定値以上の場合は、コンデンサ23が放電されているため、Step201へ進み使用環境に応じた目標転写電流(高温環境では目標転写電流9μA)で定電流制御を行う。一方、制御部150は、ページ間隔が所定値に満たない場合は、コンデンサ23が充電されているため、更に直前のページの転写電圧が閾値としての所定値(600V)以下か判断(直前のページの記録材Pが高抵抗紙か低抵抗紙か判断)する(Step209)。尚、本実施例では、高温環境(30℃、50%)では、目標転写電流9μAで定電流制御した時の転写電圧が600V以下であれば低抵抗紙、600Vを超える場合は高抵抗紙であると判別できることがわかっている。制御部150は、目標転写電流9μAで定電流制御した時の転写電圧が所定値を超える場合は、次のようにする。つまり、直前のページの記録材Pが高抵抗紙(開直紙/両面2面目など)であり、コンデンサ23が放電されているので、Step201へ進み使用環境に応じた目標転写電流(高温環境の場合は目標転写電流9μA)で定電流制御を行う。また、制御部150は、直前のページの転写電圧が所定値以下の場合は、次のようにする。つまり、直前のページが低抵抗紙(放置紙など)であり、コンデンサ23が充電されているので、目標転写電流を7μAに下げて(Step210)、Step205へ進み設定した目標転写電流で定電流制御を行う。その後、指定枚数に到達するまで同様の動作を繰り返す。
また、制御部150は、Step207で常温環境と判断した場合は、直前のページと次のページとのページ間隔が所定値(本実施例では0.1秒)以上か判別(コンデンサ23に電荷が溜まっているか判断)する(Step211)。制御部150は、ページ間隔が所定値以上の場合は、コンデンサ23が放電されているため、Step201へ進み使用環境に応じた目標転写電流(常温環境では目標転写電流7μA)で定電流制御を行う。一方、制御部150は、ページ間隔が所定値に満たない場合は、コンデンサ23が充電されているため、更に直前のページの転写電圧が閾値としての所定値(800V)以下か判断(直前のページの記録材Pが高抵抗紙か低抵抗紙か判断)する(Step212)。尚、本実施例では、常温環境(23℃、50%)では、目標転写電流7μAで定電流制御した時の転写電圧が800V以下であれば低抵抗紙、800Vを超える場合は高抵抗紙であると判別できることがわかっている。制御部150は、目標転写電流7μAで定電流制御した時の転写電圧が所定値を超える場合は、次のようにする。つまり、直前のページの記録材Pが高抵抗紙(開直紙/両面2面目など)であり、コンデンサ23が放電されているので、Step201へ進み使用環境に応じた目標転写電流(常温環境では目標転写電流7μA)で定電流制御を行う。また、制御部150は、直前のページの転写電圧が所定値以下の場合は、次のようにする。つまり、直前のページが低抵抗紙(放置紙など)であり、コンデンサ23が充電されているので、目標転写電流を6μAに下げて(Step213)、Step205へ進み設定した目標転写電流で定電流制御を行う。その後、指定枚数に到達するまで同様の動作を繰り返す。
また、制御部150は、Step7で低温環境と判断した場合は、次のようにする。つまり、記録材Pの水分は少なく、コンデンサ23への転写電流の逃げがほとんどないので、Step205へ進み2枚目以降も目標転写電流を6μAから変更することなく指定枚数に到達するまでプリントを継続する。
このような転写バイアス制御により、使用環境によるコンデンサ23の電荷状態に応じた適切な転写バイアス制御を行うことができる。
尚、本実施例では、転写バイアスを定電流制御する場合について説明したが、実施例1で説明したのと同様、転写バイアスを定電圧制御しても同様の効果が得られる。また、本実施例では1枚目と2枚目以降とで転写電流を変更する例について説明したが、実施例1で説明したのと同様、転写電流(又は転写電圧)を段階的に変更することが可能である。また、本実施例では、ジョブの初期としてジョブの1枚目に対する転写バイアスに対し、ジョブの2枚目以降に対する転写バイアスを変更したが、実施例1で説明したように、これに限定されるものではない。また、本実施例では、環境温度条件によって転写電流の変更量を変える例について説明したが、湿度条件と組み合わせることも可能である。つまり、環境の温度又は湿度の少なくとも一方に応じて転写電流(転写電圧)の変更量を変えることができる。
このように、本実施例では、制御手段150は、転写バイアスの変更量を、画像形成装置100の使用環境に基づいて変更する。特に、本実施例では、制御手段150は、画像形成装置100の使用環境の温度が第1の温度の場合よりも、第1の温度よりも低い第2の温度の場合の方が、転写バイアスの変更量を小さくする。あるいは、制御手段150が、画像形成装置100の使用環境の湿度が第1の湿度の場合よりも、第1の湿度よりも低い第2の湿度の場合の方が、転写バイアスの変更量を小さくするようにしてもよい。
以上、本実施例によれば、実施例1による効果に加え、使用環境に応じて転写バイアスの変更量を制御することで、コンデンサ23の電荷状態の違いによる転写バイアスの過不足で生じる転写不良や再転写などの画像不良を抑制できる。
[実施例3]
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと実質的に同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、転写バイアス制御として定電流制御を行う場合に、転写電圧が所定値よりも低くならないように転写電圧の下限値(下限電圧値)を設定する。そして、この転写バイアス制御において、下限電圧値をジョブの初期(本実施例では1枚目)と後半(本実施例では2枚目以降)で変更する。つまり、高温・高湿環境下の放置紙などの低抵抗紙が用いられた場合、転写電流の逃げが多くなり、転写電流が不足することがある。そこで、転写バイアスを定電流制御する場合に下限電圧値を設定し、下限電圧値より低い転写電圧にならないようにすることによって、必要な転写電流を確保できる。本実施例では、高温・高湿環境下の放置紙などの転写電流の逃げが多い記録材Pが用いられた場合は、自動的に転写バイアスは下限電圧値で定電圧制御される。そのため、本実施例の制御は、例えば実施例2のように環境温度センサなどを必要としないため、比較的低コストで実現することができる。
次に、下限電圧値をジョブの1枚目と2枚目以降で変更する必要性について説明する。表6に高温・高湿環境(30℃、50%)における開直紙での転写性、表7に高温・高湿環境(30℃、50%)における放置紙での転写性を示す。紙間(プリント間隔)は12mm(0.05秒)とした。
表6から、開直紙では転写電流の定着入口ガイド18への逃げが少ないためにジョブの1枚目と2枚目以降の必要転写電流値に大きな差がなく、転写電流が7μAで定電流制御することで良好な転写性が得られることがわかる。尚、開直紙で転写電流7μAで定電流制御した場合の転写電圧値は本実施例では約1kV程度である。
次に、表7から、放置紙ではコンデンサ23に電荷が溜まっておらず、定着入口ガイド18への転写電流の逃げが多く、ジョブ1枚目では転写電圧が800〜900Vで良好な転写性が得られることがわかる。また、ジョブの2枚目以降についてはコンデンサ23に電荷が溜まっているため、定着入口ガイド18への転写電流の逃げが少ないため、600〜700Vと1枚目より低い転写電圧で良好な転写性が得られることがわかる。
つまり、転写バイアス制御としては、転写電流7μAで定電流制御を行い、その際に下限電圧値として、ジョブ1枚目については下限電圧値1:800〜900V、2枚目以降については下限電圧値2:600〜700Vの下限電圧値を設定する。これにより、記録材Pの状態(開直/放置)やジョブの1枚目か2枚目以降かによらず良好な転写性が得られる。
次に、図5のフローチャートを用いて、本実施例の転写バイアス制御について説明する。
まず、制御部150は、プリント信号(ジョブの開始信号)を受信すると、前回転工程時に第1の下限電圧値1(850V)を設定し(Step301)、目標転写電流7μAで定電流制御を開始する(Step302)。次に、制御部150は、定電流制御中の電圧が下限電圧値1以上かどうか判断する(Step303)。制御部150は、下限電圧値1以上であれば、高抵抗紙(開直紙/両面2面目など)が用いられているため、目標転写電流7μAで定電流制御を行う(Step304)。また、制御部150は、下限電圧値1より小さい場合は、低抵抗紙(放置紙など)であるので、下限電圧値1で定電圧制御を行う(Step305)。次に、制御部150は、指定されたプリント枚数に到達したか判断する(Step306)。制御部150は、指定されたプリント枚数に到達していればジョブを終了させ、到達していなければ直前のページが定電流制御であったかどうか判別(コンデンサ23の充電されているか判断)する(Step307)。制御部150は、直前のページが定電流制御であれば、高抵抗紙(開直紙/両面2面目など)が用いられているため、コンデンサ32は放電されているので、Step301へ進み下限電圧値1を設定して目標転写電流7μAの定電流制御を行う。また、制御部150は、直前のページが定電流制御でなければ(つまり、定電圧制御であれば)、次のようにする。つまり、低抵抗紙(放置紙など)が用いられているため、コンデンサ23が充電されているので、次に直前のページと次のページとのページ間隔が所定値(本実施例では0.1秒)以上か判別(コンデンサ23の充電されているか判断)する(Step308)。制御部150は、ページ間隔が所定値以上の場合は、コンデンサ23が放電されているため、Step301へ進み下限電圧値1を設定し目標転写電流7μAで定電流制御を行う。一方、制御部150は、ページ間隔が所定値に満たない場合は、コンデンサ23が充電されているため、下限電圧値2(650V)を設定した後(Step309)、Step302へ進み目標転写電流7μAで定電流制御を行う。そして、Step303で転写電圧が下限電圧値2未満であれば、下限電圧値2で定電圧制御が行われることになる。その後、指定枚数に到達するまで同様の動作を繰り返す。
このような転写バイアス制御により、コンデンサ23の電荷状態に応じたに適切な転写バイアス制御を行うことができる。
このように、本実施例では、制御手段150は、転写バイアスを所定の電流値で定電流制御すると共に、その所定の電流値で定電流制御すると電圧値が所定の下限電圧値未満になる場合には転写バイアスをその下限電圧値で定電圧制御する。また、制御手段150は、連続プリントのジョブにおいて、N枚目の記録材Pに対する転写のための転写バイアスの下限電圧値に対し、N+1枚目以降の少なくとも1枚の記録材に対する転写のための転写バイアスの下限電圧値を変更する。特に、本実施例では、制御手段150は、連続プリントのジョブにおいて、N枚目の記録材Pに対する転写のための転写バイアスの下限電圧値よりも、N+1枚目以降の少なくとも1枚の記録材Pに対する転写のための転写バイアスの下限電圧値を小さくする。
以上、本実施例によれば、実施例1と同様に、ACバンディング画像、及び、転写抜け、飛び散りのない良好な画像を得られる。それと共に、本実施例によれば、記録材Pの吸湿状態に応じて転写バイアスを変更することで、コンデンサ23の電荷状態の違いによる転写バイアスの過不足で生じる転写不良や再転写などの画像不良を抑制できる。
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
例えば、上述の実施例では、ACバンディング画像は定着装置のヒータに印加される交流電圧に起因して発生するものとして説明した。しかし、交流電圧を駆動源とする加熱源を有することなどにより交流電圧が記録材に印加される構成であれば、本発明は同様に適用することができ、同様の効果が得られる。
また、上述の実施例においては、定着挟持部と転写挟持部とに同時に挟持された記録材に接触する導電部材として、転写前ガイドを用いた。しかし、この導電部材は、定着挟持部と転写挟持部とに同時に挟持された記録材に接触するものであれば、任意の態様をとることができ、同様の効果を得られる。つまり、記録材を案内する機能或いは記録材を搬送する機能を有する導電部材を用いることで、別途導電部材を設けることなく、簡易で安価な構成を実現しやすい。ただし、本発明の効果を得るために、当該導電部材が記録材を案内する機能或いは記録材を搬送する機能を有していることは必須ではない。上述の実施例における転写前ガイドに加えて又は代えて、記録材を案内又は搬送するガイド部材又は搬送部材の機能を有していない導電部材を設けてもよい。
また、上述の実施例では、定着ニップから、像担持体としての感光体と転写部材とで形成される転写ニップに伝達される交流電圧の影響を抑制する場合について説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、定着ニップから、像担持体としての中間転写体と転写部材とで形成される転写ニップに伝達される交流電圧の影響を抑制するためにも等しく適用することができる。つまり、第1の像担持体としての感光体に形成されたトナー像を、無端状のベルトなどとされる第2の像担持体としての中間転写体に転写(一次転写)した後に、該中間転写体から記録材にトナー像を転写(二次転写)する中間転写方式の画像形成装置がある。二次転写は、中間転写体に接触して転写ニップ(二次転写ニップ)を形成する二次転写部材に二次転写電圧が印加されることで行われる。この場合、定着装置に印加される交流電圧が二次転写ニップにおける二次転写電圧に影響して、濃度ムラなどの画像不良が発生することが懸念される。したがって、導電部材の配置とコンデンサ及び抵抗体の接続に関し、上述の実施例における転写ニップを二次転写ニップと読み替えて、実質的に上述の実施例と同じ構成を適用することで、そのような画像不良を抑制することができる。
また、本発明は、モノクロ/カラー画像形成装置において共通の課題を解決するものであり、本実施例による効果は、モノクロ画像形成装置のみでなく、カラー画像形成装置に対しても同様の効果が得られるものである。
また、転写手段は、ローラ状の転写部材に限定されるものではなく、ブラシ状やブレード状などの任意の態様の転写部材であってよい。