JP2016147931A - 可塑性注入材、可塑性注入材の製造方法、及び、可塑性注入材の施工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、潜在水硬性材料と水とを含有する第一混合物と、アタパルジャイトとリン酸塩系混和剤と水とを含有する第二混合物と、前記潜在水硬性材料を硬化させうる硬化助材と水とを含有する第三混合物と、が混合されてなる可塑性注入材等である。
【選択図】なし
Description
かかる可塑性を有する注入材(以下、可塑性注入材ともいう。)としては、例えば、特許文献1に記載されているような可塑化材を含むものがある。
特許文献1に記載の可塑性注入材はセメントミルクと、可塑化材としてのベントナイトとを含むものである。ベントナイトは膨潤性を有するため、セメントミルクと混合するとセメントミルク中の水分によって膨潤し、セメントミルクに可塑性を付与することができる。
そこで、硬化材としてセメントの代わりに、潜在水硬性材料を用いることが特許文献2乃至4に記載されている。
特許文献2乃至4に記載されている潜在水硬性材料とは、高炉スラグ、ポゾラン粉末等のように、単独では水硬性を示さないが、水の存在下で、潜在水硬性材料の硬化を促進する硬化助材と接触すると水硬性を示す材料を意味する。かかる潜在水硬性材料は、硬化助材と接触するまでは粘度が増加し難いため、潜在水硬性材料、可塑化材及び水を含む混合物と、硬化助材及び水を含む混合物とをそれぞれ別々のホースを通じてポンプ等で施工場所付近まで圧送して、施工場所付近で各成分を混合して施工場所に注入することで、ホース内等が混合物で詰まるのを抑制しつつ、所望の施工場所に可塑性注入材を打設することができる。
このように潜在水硬性材料、可塑化材及び水を含む混合物と、硬化助材及び水を含む混合物と別々に調製してから混合して作製される可塑性注入材は、二液式の可塑性注入材と呼ばれている。
また、各混合物は、通常は、作製したときから日数が経過するに従い粘度が高まる。施工に要する期間が数日以上となる場合には、各混合物をホース内等に保持することになるが、各成分の粘度が高まり、長距離圧送することが困難となるので、各混合物としては粘度が高まり難いものが求められる。
本発明者らは、フロー値についての上記要望点、及び、粘性についての上記要望点を満たす可塑性注入材を作製すべく鋭意検討したところ、従来の可塑性注入材において可塑化材の使用量を増すことにより可塑性の上記要望点を満足することができたとしても、可塑化材の増加に伴い可塑化材を含有する混合物の粘度が高まってしまい、両方の要望点を満たすことができなかった。
また、本発明は、斯かる可塑性注入材を製造する可塑性注入材の製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、斯かる可塑性注入材を施工する可塑性注入材の施工方法を提供することを課題とする。
また、本発明によれば、斯かる可塑性注入材を作製する可塑性注入材の製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、斯かる可塑性注入材を施工する可塑性注入材の施工方法を提供することができる。
まず、本発明の可塑性注入材の一実施形態について説明する。
本実施形態の可塑性注入材は、潜在水硬性材料と水とを含有する第一混合物と、アタパルジャイトとリン酸塩系混和剤と水とを含有する第二混合物と、前記潜在水硬性材料を硬化させうる硬化助材と水とを含有する第三混合物と、が混合されてなる可塑性注入材である。
すなわち、本実施形態の可塑性注入材は、第一混合物と、第二混合物と、第三混合物とを別々に調製してから混合して形成される可塑性注入材であり、いわゆる二液式の可塑性注入材よりも1液多い、三液式の可塑性注入材である。
前記第一混合物は、潜在水硬性材料と水とを含有する。
尚、本明細書において、潜在水硬性とは、通常の状態では水和反応を実質的に開始することがなく、硬化助材の存在下で水和反応を開始し硬化性の水和物を生成しうる性質をいう。
第一混合物において、前記潜在水硬性材料の量に対する水の量の比(質量比)は、例えば0.4〜1.2、好ましくは0.5〜1.0である。
この質量比が前記範囲である場合には、第一混合物の流動性をより適度な範囲に調整できる。
前記第二混合物は、アタパルジャイトとリン酸塩系混和剤と水とを含有する。
アタパルジャイトの含有量が前記範囲である場合には、可塑性注入材のフロー値をより適度にすると同時に、第二混合物の流動性をより適度な範囲に調整できるため好ましい。
また、前記リン酸塩系混和剤がテトラポリリン酸ナトリウムである場合には、前記第二混合物は、前記アタパルジャイト100質量部に対して前記テトラポリリン酸ナトリウムを0.5〜3.0質量部含有することが好ましい。
さらに、前記リン酸塩系混和剤がピロリン酸ナトリウムである場合には、前記第二混合物は、前記アタパルジャイト100質量部に対して前記ピロリン酸ナトリウムを0.75〜3.0質量部含有することが好ましい。
前記リン酸塩系混和剤の含有量が前記範囲である場合には、第二混合物の流動性を保持しつつ、第二混合物の沈降分離を抑制することができる。
本実施形態の第三混合物は、潜在水硬性材料を硬化させうる硬化助材と水とを含有する。
本実施形態の硬化助材は、水の存在下で、前記第一混合物中に含まれる潜在水硬性材料と反応して、水和反応を起こして硬化性を発現させるような材料をいう。
具体的には、硬化助材としては、生石灰(酸化カルシウムCaO)、消石灰(水酸化カルシウムCa(OH)2)、苦土石灰(CaCO3・MgCO3)等の石灰、半水石膏、二水石膏等の石膏、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルカリ性塩、リン酸、リン酸塩、セメント水和物等が挙げられる。
前記潜在水硬性材料が高炉スラグの場合には、硬化助材としては、生石灰(酸化カルシウム、CaO)、消石灰(水酸化カルシウム、Ca(OH)2)、苦土石灰(CaCO3・MgCO3)等の石灰が、硬化反応を生じさせやすいため好ましい。
前記潜在水硬性材料がポゾラン粉末の場合には、硬化助材としては、生石灰(酸化カルシウム、CaO)、消石灰(水酸化カルシウム、Ca(OH)2)、苦土石灰(CaCO3・MgCO3)等の石灰、リン酸、リン酸塩等が、硬化反応を生じさせやすいため好ましい。
硬化助材の含有量が前記範囲である場合には、第一混合物、第二混合物及び第三混合物と混合した際に、硬化反応をより生じさせやすいため好ましい。
第三混合物において、前記硬化助剤の量に対する水の量の比(質量比)は、例えば0.8〜4.0、好ましくは1.2〜3.0である。
この質量比が前記範囲である場合には、第三混合物の流動性をより適度な範囲に調整できる。
可塑性注入材における水の含有量が前記範囲である場合には、第一混合物、第二混合物、及び、第三混合物を混合した直後には、可塑性注入材をフロー値が適度なものとすることができる。
第一混合物と第二混合物と第三混合物との混合比は特に限定されるものではないが、例えば、第一混合物と第二混合物との体積比が、50:50〜75:25、好ましくは60:40〜70:30で混合されることが挙げられ、また、第一混合物及び第二混合物の合計の体積と第三混合物の体積との比が80:20〜95:5、好ましくは85:15〜90:10で混合されることが挙げられる。
本実施形態の可塑性注入材の製造方法は、潜在水硬性材料と水とを混合して第一混合物を作製する工程と、アタパルジャイトとリン酸塩系混和剤と水とを混合して第二混合物を作製する工程と、前記潜在水硬性材料を硬化させうる硬化助材と水とを混合して第三混合物を作製する工程と、前記第一混合物と前記第二混合物と前記第三混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程とを備える。
これらの工程を実施した後に、得られた第一混合物、第二混合物、及び、第三混合物を混合して可塑性注入材を作製する工程を実施する。
また、本実施形態の可塑性注入材の製造方法では、第一混合物、第二混合物、及び、第三混合物を同時に混合してもよい。また、施工場所付近に、第一混合物、第二混合物、及び、第三混合物を移送した後であれば、第一混合物及び第二混合物を混合してからこれに第三混合物を混合させてもよく、また、第一混合物及び第三混合物を混合してからこれに第二混合物を混合させてもよく、さらに、第二混合物及び第三混合物を混合してからこれに第一混合物を混合させてもよい。潜在水硬性材料と硬化助材とを後に混合させると十分に混合させやすくなるので、第一混合物(潜在水硬性材料を含有)及び第二混合物を混合してからこれに第三混合物(硬化助材を含有)を混合させること、或いは、第二混合物及び第三混合物(硬化助材を含有)を混合してからこれに第一混合物(潜在水硬性材料を含有)を混合させることが好ましい。
本実施形態の可塑性注入材の施工方法は、潜在水硬性材料と水とを混合して第一混合物を作製する工程と、アタパルジャイトとリン酸塩系混和剤と水とを混合して第二混合物を作製する工程と、前記潜在水硬性材料を硬化させうる硬化助材と水とを混合して第三混合物を作製する工程と、前記第一混合物と前記第二混合物と前記第三混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程と、前記可塑性注入材を所望の施工場所に注入する工程とを備える。
すなわち、本実施形態においては、可塑性注入材の作製場所よりも施工場所から離れた場所から、該作製場所に前記第一混合物を圧送する工程を備える。
圧送手段としては、ポンプに接続されたホース等の移送手段等が挙げられる。
本実施形態の可塑性注入材の第一混合物、前記第二混合物、及び、前記第三混合物は、比較的長期間流動性を維持しているため、例えば、長い圧送手段を用いた長距離圧送の場合にも、ホース内部に詰まりが生じて圧送しにくくなることを抑制できる。
また、本実施形態の可塑性注入材の施工方法は、注入箇所付近に混合装置等を設置しておき、該注入箇所付近において第一混合物、第二混合物及び第三混合物を混合して可塑性注入材を作製する工程を実施する。
本実施形態の可塑性注入材を注入する施工場所としては、地盤やコンクリート構造物の空洞や空隙等が挙げられる。本実施形態の可塑性注入材は、フロー値が適度なものとなるため、施工箇所から可塑性注入材が流出し難くなる。
フロー値は、NEXCO試験方法 JHS A 313に従った方法(静置時のフロー値)(以下、単に「JHS」ともいう。)、及び、JIS R5201:1997に従った方法(打撃時(15秒間に15回の落下運動を与えた時)のフロー値)(以下、単に「JIS15」ともいう。)で測定した。
粘度は、装置ビスコメーター VT−04(リオン社製)を用いて、測定条件20℃で測定した。なお、本実施形態において、好ましい粘度は、4インチ管で2000m分の試料を100L/分で圧送した場合に、圧力損失を考慮してダルシーワイズバッハの式を用いて求められた4インチ管内の圧力が2.0MPa以下となる粘度である。ここで、4インチ管内の圧力とは、4インチ管の入り口(試料の流入口)の内周面における圧力を意味する。
Pロートは、漏斗試験機(商品名プレパクトフローコーン(Pロート)、関西機器製作所社製)を用いて土木学会規準「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)(JSCE−F 521)」の方法に従って測定した。
得られる可塑性注入材が下記表1の配合となるように、ベントナイト(クニゲルV1、膨潤度16ml/2g、クニミネ工業社製)(以下、「V1」ともいう。)、高炉スラグ(高炉スラグ微粉末、日鉄住金鹿島鉱化社製)(以下、「スラグ」ともいう。)、ポリカルボン酸系減水剤(ジオスパーK、フローリック社製)(以下、「GSK」ともいう。)、及び、水を混合して第一混合物を得、また、消石灰(一号消石灰、吉澤石灰工業社製)、及び、水を混合して第二混合物を得た。
そして、第一混合物及び第二混合物を混合し、下記配合1の可塑性注入材を得、作製直後の可塑性注入材のフロー値を測定した。結果を下記表1に示す。
そして、第一混合物、第二混合物、及び、第三混合物を混合し、下記配合2〜4の可塑性注入材を得、作製直後の可塑性注入材のフロー値を測定した。また、配合4については、作製直後の第二混合物の粘度も測定した。結果を下記表2に示す。
ベントナイトの配合割合を大きくすることで、フロー値を小さくすることはできるが、第二混合物の粘度が高くなってしまう。
なお、配合4について、第二混合物の粘度を低下させるために、GSKを増量してみたが、粘度をそれほど低下させることはできなかった。
ベントナイトの配合割合を大きくすることで、フロー値を小さくすることはできるが、第二混合物の粘度が高まりやすくなってしまう。
得られる可塑性注入材が下記表4の配合となるように、アタパルジャイト(以下、「atp」ともいう。)、高炉スラグ、リン酸塩系混和剤としてのピロリン酸ナトリウム(以下、「ピロリン」ともいう。)、ポリカルボン酸系減水剤(GSK)、及び、水を混合して第一混合物を得、また、消石灰、及び、水を混合して第二混合物を得た。
そして、第一混合物及び第二混合物を混合し、下記配合7〜12の可塑性注入材を得、作製直後の可塑性注入材のフロー値を測定した。結果を下記表4に示す。また、配合8〜10については、作製直後及び作製後5日後の第一混合物のPロート及び粘度も測定した。配合8〜10は同様な結果であったので、下記表5には配合8の結果のみを示す。なお、配合11については、第一混合物のスラグが沈降したのでPロート及び粘度の測定は行わなかった。
得られる可塑性注入材が下記表6の配合となるように、アタパルジャイト、水、及び、リン酸塩系混和剤としてのピロリン酸ナトリウムを混合して第二混合物を得、また、高炉スラグ、及び、水を混合して第一混合物を得、さらに、消石灰、及び、水を混合して第三混合物を得た。
そして、第一混合物、第二混合物、及び、第三混合物を混合し、下記配合13〜22の可塑性注入材を得、作製直後の可塑性注入材のフロー値を測定した。結果を下記表6に示す。
また、ピロリン酸ナトリウムの代わりにテトラポリリン酸ナトリウム(以下、「テトラ」ともいう。)を用い、下記表7の配合となるようにしたこと以外は配合13〜22と同様にして、下記配合23の可塑性注入材を得、作製直後の可塑性注入材のフロー値を測定した。結果を下記表7に示す。
配合13、14については、作製直後の可塑性注入材のフロー値が基準値を超えているが、アタパルジャイト量が少ないことで得られる効果が他の配合に比べて若干小さかったためである。また、また、配合17、18についても、作製直後の可塑性注入材のフロー値が基準値を超えている。一般的に高炉スラグが少なければフロー値が大きくなるので、高炉スラグの量が配合15、16、19〜22よりも少なかった配合17、18では、フロー値が大きくなっている。
このことから、混和剤としてリン酸塩系混和剤を用いれば、流動性を保持できることがわかる。また、特に、リン酸塩系混和剤のうちテトラポリリン酸が特に流動性を保持できることがわかる。
なお、表には示していないが、流動化剤としてGSKを用いた第二混合物において、GSKを増量(3.0/1.2倍の量)したところ、流動性を保持することができたが、沈殿分離してアタパルジャイトの層が形成されたことが見受けられた。このような第二混合物をホースを用いてポンプ圧送した場合には、ホース内で沈殿物が溜まり、ホースが詰まる原因となりかねないので、施工性の観点から判断すると、GSKを用いるよりも、リン酸塩系混和剤を用いるほうがよいことがわかる。
なお、沈降の有無は、第二混合物を作製後容器に移し、10分間放置した後に材料が分離しているか目視で確認した。
ここで、判定は、以下の基準で行った。
◎:Pロートの流下時間が20秒以下、且つ、粘度が5dPa・s以下である場合
×:粘度が40.0dPa・s以上である場合
○:◎、×以外
また、表13に示すように、消石灰の量に対する水の量(水/消石灰)が多いほど粘度を低く保つことができ、流動性を保持できることがわかる。
Claims (6)
- 潜在水硬性材料と水とを含有する第一混合物と、
アタパルジャイトとリン酸塩系混和剤と水とを含有する第二混合物と、
前記潜在水硬性材料を硬化させうる硬化助材と水とを含有する第三混合物と、が混合されてなる可塑性注入材。 - 前記第二混合物は、前記アタパルジャイト100質量部に対して前記リン酸塩系混和剤を0.5〜3.0質量部含有する請求項1に記載の可塑性注入材。
- 前記リン酸塩系混和剤がテトラポリリン酸ナトリウムを含有する請求項1又は2に記載の可塑性注入材。
- 潜在水硬性材料と水とを混合して第一混合物を作製する工程と、
アタパルジャイトとリン酸塩系混和剤と水とを混合して第二混合物を作製する工程と、
前記潜在水硬性材料を硬化させうる硬化助材と水とを混合して第三混合物を作製する工程と、
前記第一混合物と前記第二混合物と前記第三混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程とを備える、可塑性注入材の製造方法。 - 潜在水硬性材料と水とを混合して第一混合物を作製する工程と、
アタパルジャイトとリン酸塩系混和剤と水とを混合して第二混合物を作製する工程と、
前記潜在水硬性材料を硬化させうる硬化助材と水とを混合して第三混合物を作製する工程と、
前記第一混合物と前記第二混合物と前記第三混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程と、
前記可塑性注入材を所望の施工場所に注入する工程とを備える、可塑性注入材の施工方法。 - 前記第一混合物と前記第二混合物と前記第三混合物とを、施工場所付近まで圧送する工程を備える請求項5に記載の可塑性注入材の施工方法。
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