JP2016143568A - 電磁誘導加熱装置 - Google Patents

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Mitsuteru Kawamura
光輝 川村
宇留野 純平
Junpei Uruno
純平 宇留野
山田 正明
Masaaki Yamada
山田  正明
山田 清司
Seiji Yamada
清司 山田
康 内藤
Yasushi Naito
康 内藤
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Abstract

【課題】安価で電力制御範囲の広い電磁遊動加熱装置を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の電磁誘導加熱装置では、被加熱物が載置されるトッププレートと、該トッププレートの下側に配置され、前記被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルと共振コンデンサで構成される共振回路と、前記共振回路を駆動する高周波インバータを備えた誘導加熱装置であって、前記高周波電源は電流または電圧インバータであり、周波数を高くすることで電力を低下させる電力制御手段を備え、前記加熱コイルの導体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成し、かつ、前記加熱コイルの導体断面積を4.4mm2〜5.5mm2とする。【選択図】図1

Description

本発明は、電磁誘導加熱装置に関し、安価な構成で電力制御範囲を拡大する技術に関するものである。
近年、火を使わずに鍋などの被加熱物を加熱するインバータ方式の電磁誘導加熱装置が広く用いられるようになってきている。電磁誘導加熱装置は、加熱コイルに高周波電流を流し、コイルに近接して配置された金属製の被加熱物に渦電流を発生させ、被加熱物自体の電気抵抗により発熱させる。家庭で使われる誘導加熱としてはIHクッキングヒータがある。IHクッキングヒータで調理をするためには火力制御(電力制御)が必須となる。一般に、インバータの駆動周波数を高めることで電力を低下させる方法やインバータの導通比を制御するPWM制御がある。しかし、周波数制御やPWM制御ではパルス幅が小さくなると、インバータのスイッチング素子にスパイク上の電流が流れIGBTの損失が増加する問題がある。
このような問題を解決する従来例として、特許第2532565号に開示されるような電磁誘導加熱装置がある。この公知例は、一定の駆動周波数でスイッチング素子の導通期間を変化させ入力電力を制御するものである。
特許第2532565号
しかし、特許文献1では低電力で駆動する場合には、一方のスイッチング素子に発生する損失が大きくなる問題点がある。
本発明は、上述した問題点を解決し、スイッチング素子に発生する損失を抑制でき、電力制御範囲が広く、低コストな電磁誘導加熱装置を提供することである。
前記した課題を解決するため、第1の発明の電磁誘導加熱装置では、被加熱物が載置されるトッププレートと、該トッププレートの下方に配置され、前記被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、該加熱コイルと共振コンデンサで構成される共振回路と、該共振回路を駆動する高周波インバータと、該高周波インバータの周波数を高くすることで誘導加熱に用いる電力を低下させる電力制御手段と、交流電源からの交流電力を直流電力に変換する電源回路と、を備えた誘導加熱装置であって、前記加熱コイルは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成し、かつ、前記加熱コイルの導体断面積を4.4mm2〜5.5mm2とした。
本発明によれば、安価なアルミリッツ線を使用することができ、電力制御範囲が広範になり、使い勝手を向上できる電磁誘導加熱装置を提供できる。
実施例1の電磁誘導加熱装置の回路構成図である。 実施例1の電磁誘導加熱装置を示す概略の構成図である。 実施例1の電磁誘導加熱装置の動作波形である。 実施例1で使用される加熱コイルの等価インダクタンスと等価抵抗である 実施例1におけるホーロー鍋加熱時の周波数と入力電力の関係である。 ホーロー鍋加熱時のHサイドIGBTのDutyと入力電力の関係である。 銅リッツ線及びアルミリッツ線の周波数と抵抗増加率の関係である。 実施例1における入力電力とIGBT遮断電流の関係である。 実施例1における素線束断面積と素線束の電流密度の関係である。 実施例1における素線束の断面積と加熱コイル温度の関係である。 実施例2の電磁誘導加熱装置の回路構成図である。 実施例2の電磁誘導加熱装置の動作波形である。 実施例2で使用される加熱コイルの等価インダクタンスと等価抵抗である。 実施例2におけるホーロー鍋加熱時の周波数と入力電力の関係である。 実施例3の電磁誘導加熱装置の回路構成図である。 実施例3における加熱コイルの巻数と等価抵抗の関係である。 実施例3における電磁誘導加熱装置のホーロー加熱時の動作波形である。 実施例3で使用される加熱コイルの等価インダクタンスと等価抵抗である。 実施例3における素線束断面積と素線束の電流密度の関係である。
以下、図面を用いながら本発明の実施例を説明する。
図1は、第1の実施例1の電磁誘導加熱装置11の回路構成図である。
商用電源1から整流回路2を介して、フィルタ3に接続され、フィルタ3の出力である正極端子のノードpと負極端子のノードnとの間に、電流共振インバータ4が接続される。
高周波インバータである電流共振インバータ4は、IGBT51とIGBT52とが直列接続されたハーフブリッジ回路に、共振回路8の加熱コイル7が接続されて構成される。
HサイドのIGBT51(第1の半導体スイッチング素子)には、逆並列にダイオードD1(第1のダイオード)が接続され、並列にスナバコンデンサ71(第1のスナバコンデンサ)が接続されている。LサイドのIGBT52(第2の半導体スイッチング素子)には、逆並列にダイオードD2(第2のダイオード)が接続され、並列にスナバコンデンサ72(第2のスナバコンデンサ)が接続されている。ここで、IGBT51、52の接続点をノードaとする。
スナバコンデンサ71、72は、IGBT51、52のターンオフ時の遮断電流によって充放電される。スナバコンデンサ71、72の容量は、IGBT51、52のコレクタとエミッタ間の出力容量より十分に大きい。そのため、ターンオフ時にIGBT51、52に印加される電圧の変化は低減され、ターンオフ損失は抑制される。
共振回路8は、共振コンデンサ81、82(第1および第2の共振コンデンサ)と、加熱コイル7とを含んで構成される。ノードpとノードnとの間には、共振コンデンサ81、82の直列回路が接続されている。共振コンデンサ81、82を接続するノードbと、IGBT51、52を接続するノードaとの間には、加熱コイル7が接続される。加熱コイル7の共振電流ILの向きは、ノードaからノードbへの方向(図1の矢印方向)を正とする。
制御回路6は、IGBT51を駆動するドライブ回路62−1と、IGBT52を駆動するドライブ回路62−2を備えている。ドライブ回路62−1、62−2は、いずれも駆動信号発生回路61によって制御される。
図2は、実施例1の電磁誘導加熱装置11を示す概略の構成図である。
電磁誘導加熱装置11は、整流回路2と、フィルタ3と、電流共振インバータ4と、制御回路6と、加熱コイル7と、トッププレート91と、磁性体92とを含んで構成される。電磁誘導加熱装置11は、トッププレート91に載置された鍋10を誘導加熱する。
鍋10は、加熱対象の調理器具である。鍋10は、トッププレート91に載置されて、加熱コイル7によって誘導加熱される。
トッププレート91は、鍋10を載置するためプレートである。トッププレート91は、磁気損失の少ない耐熱ガラスなどで構成され、加熱コイル7の上面を覆っている。
磁性体92は、例えば高い透磁率を持つフェライトで構成され、加熱コイル7の下面に設けられる。
図3は、実施例1の電磁誘導加熱装置11の動作を示す波形図である。ここでは、鉄鍋加熱時のインバータの通常の加熱動作を示している。
モードM31において、HサイドのIGBT51はオフし、LサイドのIGBT52はオンしている。HサイドのIGBT51のコレクタ電圧は、所定値を保つ。LサイドのIGBT52のコレクタ電圧は、ほぼ0Vである。
このとき、フィルタコンデンサC0から共振コンデンサ81、加熱コイル7、IGBT52の経路に電流が流れ、共振コンデンサ82から加熱コイル7、IGBT52の経路に電流が流れる。HサイドのIGBT51はオフしているので電流は流れない。モードM31において、制御回路6がIGBT52をターンオフすると、モードM32に遷移する。
モードM32において、HサイドのIGBT51とLサイドのIGBT52は、オフしている。加熱コイル7に蓄えられたエネルギーにより、スナバコンデンサ71から共振コンデンサ81、加熱コイル7の経路に電流が流れ、加熱コイル7からスナバコンデンサ72、共振コンデンサ82の経路に電流が流れる。このとき、LサイドのIGBT52のコレクタ電圧は、緩やかに上昇し、ゼロ電圧スイッチングとなり、スイッチング損失は小さくなる。LサイドのIGBT52のコレクタ電圧(ノードaの電圧)が、正極端子のノードpの電圧を超えると、モードM33に遷移する。
モードM33において、ダイオードD1がオンし、ダイオードD1、共振コンデンサ81、加熱コイル7の経路に電流が流れ、ダイオードD1からフィルタコンデンサC0、共振コンデンサ82、加熱コイル7の経路に電流が流れる。制御回路6は、このダイオードD1の通電期間中に、HサイドのIGBT51のゲートをターンオンする。
電流共振インバータ4は、ダイオードD1に電流が流れなくなったならば、モードM34に遷移する。
モードM34において、IGBT51は既にオンしているため、ゼロ電圧スイッチングとなり、スイッチング損失が発生しない。共振コンデンサ82に蓄えられたエネルギーにより、共振コンデンサ81からIGBT51、加熱コイル7の経路に電流が流れ、フィルタコンデンサC0からIGBT51、加熱コイル7、共振コンデンサ82の経路に電流が流れる。これにより、加熱コイル7にエネルギーが蓄積される。
モードM34において、制御回路6がIGBT51をターンオフすると、モードM35に遷移する。
モードM35において、HサイドのIGBT51とLサイドのIGBT52は、オフしている。加熱コイル7に蓄えられたエネルギーにより、フィルタコンデンサC0からスナバコンデンサ71、加熱コイル7、共振コンデンサ82の経路に電流が流れ、スナバコンデンサ72から加熱コイル7、共振コンデンサ82の経路に電流が流れる。このとき、IGBT51のコレクタ電圧は緩やかに上昇し、ゼロ電圧スイッチングとなる。
次にスナバコンデンサ71がノードpの電位まで充電され、スナバコンデンサ72が放電されると、ダイオードD2がオンして、モードM36に遷移する。
モードM36において、ダイオードD2のオンにより、ダイオードD2、加熱コイル7、共振コンデンサ82の経路に電流が流れ、共振コンデンサ81、フィルタコンデンサC0、ダイオードD2、加熱コイル7の経路に電流が流れる。制御回路6は、このダイオードD2の通電期間中に、IGBT52をターンオンする。ダイオードD2に電流が流れなくなったならば、再びモードM31に遷移する。
以上のモードM31〜M36の6種類の動作を繰り返すことで、加熱コイル7に高周波の共振電流ILが流れ、加熱コイル7の上側のトッププレート91上に載置された鍋10を加熱する。
次に電力制御方法について説明する。一例として、図4に鉄・ステンレス用IHクッキングヒータで使用される加熱コイル7の等価インダクタンス及び等価抵抗の一覧を示す。図5にホーロー鍋加熱時の周波数と入力電力の関係、図6にHサイドIGBT51のDutyと入力電力の関係を示す。銅リッツ線を使用した場合、図5に示すように、周波数約20kHzで入力電力約3kW、35kHzで約600Wとなる。さらに入力電力を低下させるためには、図5に示すように、HサイドIGBT51のDutyを小さくする。HサイドIGBTのDutyを0.2とすることで約300Wとなる。さらにDutyを小さくすると、IGBTの遮断電流が小さくなり、スナバコンデンサの充放電ができず、ハードスイッチングとなり、IGBTの損失が増大する。
図7に銅リッツ線とアルミリッツ線の周波数と抵抗増加率の関係を示す。アルミリッツ線は銅リッツ線に比べ、周波数に対する抵抗増加率が小さいことが分かる。図8に入力電力とIGBT遮断電流の関係を示す。本実施例では、加熱コイルにアルミリッツ線を使うことで、高周波での抵抗増加が小さくなり、IGBTの遮断電流が銅リッツ線に比べ大きくなるため、200WにおいてもIGBT遮断電流は銅リッツ線の300Wと同等になり、図6に示す(破線)ようにDutyを0.1まで小さくしてもソフトスイッチング動作できる。また、一般的なIHクッキングヒータの加熱コイルは直径160mm〜200mm程度であり、巻数は16〜20T程度である。図9に加熱コイル素線束の断面積と電流密度の関係を示す。加熱コイルの素線束断面積が増大すると電流密度が低下するが、約4.8mm2を超えると電流密度が増加する。これは断面積が増加することで、加熱コイル巻数が少なくなり、加熱コイル電流が増加するためである。図10に素線束の断面積と加熱コイル温度の関係を示す。アルミの熱容量は銅に比べ、0.7倍程度であり、加熱コイル温度を銅リッツ線(14A/mm2)と同様の200℃以下にするには電流密度を10A/mm2以下にする必要がある。したがって、IHクッキングヒータにアルミリッツ線を使用する場合には素線束断面積を4.4〜5.3mm2にする必要がある。
変形例として、電力制御範囲を従来と同じ300Wまでとした場合には、IGBTの遮断電流が大きいため、スナバコンデンサ容量を大きくすることができる。これによって、IGBTのコレクタ電圧のdV/dtが小さくなりノイズ低減の効果があり、ノイズ低減部品の削減につながる。
図11は、実施例2の電磁誘導加熱装置11Aの回路構成図である。図1と同一の構成要素には同一の符号を付してある。
電磁誘導加熱装置11Aの回路は、整流回路2と、フィルタ3と、電圧共振インバータ4Aと、これを制御する制御回路6Aとを含んで構成される。
整流回路2は、例えばダイオードブリッジであり、商用電源1から供給される交流を整流して、直流としてフィルタ3に出力する。
フィルタ3は、整流回路2が整流した直流を平滑化するフィルタ回路である。フィルタ3の出力側は、電圧共振インバータ4Aに接続される。フィルタ3は、インダクタL0とフィルタコンデンサC0とを含んで構成される。インダクタL0の一端は、整流回路2の正極に接続される。インダクタL0の他端は、フィルタコンデンサC0の一端に接続され、かつ、このフィルタ3の正極に接続される。フィルタコンデンサC0の他端は、整流回路2の負極に接続される。
高周波インバータである電圧共振インバータ4Aは、共振回路8Aと半導体スイッチング素子であるIGBT50とが直列に接続されて構成される。このIGBT50には逆並列に、ダイオードD0が接続される。電圧共振インバータ4Aは、フィルタ3から直流電力が供給されて、高周波の交流電流を出力して加熱コイル7を駆動する。
共振回路8Aは、加熱コイル7と共振コンデンサ80(一の共振コンデンサ)の並列接続を含んで構成される。加熱コイル7は、例えばリッツ線を用いた誘導加熱用のコイルである。IGBT50が所定周期でオンオフを繰り返すことで、加熱コイル7には高周波の交流電流が出力される。
電圧共振インバータ4Aは、フィルタ3の正極と負極との間に、ダイオードD0およびIGBT50の並列接続が共振回路8Aと直列に接続されて構成されて、加熱コイル7を駆動する。
制御回路6Aは、駆動信号発生回路61と、ドライブ回路62と、制御手段64とを含んで構成される。制御回路6Aは、電圧共振インバータ4Aの周波数の調整に加えて、不図示の各スイッチのオンオフや、各部の電圧/電流検出などを行う。
制御手段64は、例えばマイクロコンピュータであり、駆動信号発生回路61を制御する。駆動信号発生回路61は、ドライブ回路62に制御信号を出力する。ドライブ回路62は、制御信号の電圧レベルを変換して、IGBT50をオン/オフさせる。
図12は、実施例2の電磁誘導加熱装置11Aの動作を示す波形図である。ここでは適宜図12を参照して、通常の加熱動作を説明する。加熱コイル7の共振電流ILの向きは、図11の矢印方向を正とする。
モードM11は、IGBT50のターンオフからIGBT50のコレクタ電圧のピークまでの期間である。制御回路6AがIGBT50をターンオフすると、IGBT50に流れていた電流は遮断され、モードM11において0Aを維持する。このとき加熱コイル7に蓄えられたエネルギーにより、加熱コイル7から共振コンデンサ80の経路に電流が流れる。IGBT50のコレクタ電圧は、IGBT50のターンオフ時には0Vであるため、ゼロ電圧スイッチングとなる。
加熱コイル7のエネルギーの放出により、共振電流ILは、次第に減少する。共振コンデンサ80は充電され、それと共にIGBT50のコレクタ電圧は、正弦波状に上昇する。
モードM12は、IGBT50のコレクタ電圧のピークから0Vになるまでの期間である。IGBT50のコレクタ電圧がピークになると、加熱コイル7の共振電流ILが正から負に切り替わり、流れる方向が反転する。このとき共振コンデンサ80から加熱コイル7の経路に電流が流れる。共振コンデンサ80は次第に放電され、それと共にIGBT50のコレクタ電圧は、次第に下降する。
モードM13は、ダイオードD0の通電期間である。モードM12において、共振コンデンサ80が放電して、IGBT50のコレクタ電圧が0Vになると、ダイオードD0がオンし、加熱コイル7からフィルタコンデンサC0、ダイオードD0の経路に電流が流れる。制御回路6Aは、ダイオードD0の通電期間内にIGBT50のゲートをターンオンする。モードM13において、加熱コイル7のエネルギーがなくなると、共振電流ILが負から正に切り替わり、モードM14に遷移する。
モードM14は、IGBT50の通電期間である。このときIGBT50はゲートオンしているため、すぐさま電流が流れる。これにより、電圧共振インバータ4Aは、スイッチング損失の発生しないゼロ電圧スイッチングを実現する。電流は、フィルタコンデンサC0から加熱コイル7、IGBT50の経路に流れ、更に商用電源1から整流回路2、インダクタL0、加熱コイル7、IGBT50、整流回路2の経路に流れる。
以上のモードM11からモードM14までを繰り返し動作することで、加熱コイル7に高周波の交流電流が流れ、鍋10を加熱する。
次に電力制御方法について説明する。一例として、図13に電圧共振インバータを使ったIHクッキングヒータで使用される加熱コイル7の等価インダクタンス及び等価抵抗の一覧を示す。図14にホーロー鍋を加熱した時の周波数と入力電力の関係を示す。銅リッツ線を使用した場合、図14に示すように、周波数約50kHzで入力電力約2kW、63kHzで約1.2kWとなる。
実施例1と同様に図6の銅リッツ線とアルミリッツ線の周波数と抵抗増加率の関係より、アルミリッツ線は、銅リッツ線に比べ、周波数に対する抵抗増加率が小さいため、周波数70kHzでの動作においても、IGBTの遮断電流が大きくなり、共振電圧を増大させソフトスイッチングが可能になり、入力電力を1.0kWまで低減することができる。
実施例1と同様に一般的なIHクッキングヒータの加熱コイルは直径160mm〜200mm程度であり、巻数は16〜20T程度である。図9に示すように、加熱コイルの素線束断面積が増大すると電流密度が低下するが、約4.8mm2を超えると電流密度が増加する。また、アルミは銅に比べ、熱容量が0.7倍であり、加熱コイル温度を銅リッツ線と同様の200℃以下にするには電流密度を10A/mm2以下にする必要がある。したがって、電圧共振インバータにアルミリッツ線を使用する場合にも加熱コイルの素線束断面積を4.4〜5.3mm2にすることが望ましい。
図15は、実施例3の電磁誘導加熱装置11Bの回路構成図である。図11に示した実施例1の電磁誘導加熱装置11と同一の要素には、同一の符号を付与している。
実施例3の電磁誘導加熱装置11Bの回路は、実施例1とは異なる電流共振インバータ4Bと、これを制御する制御回路6Bとを含み、実施例1のフィルタ3を含む電源回路21を備える。それ以外は、実施例1の電磁誘導加熱装置11と同様に構成されている。
商用電源1から整流回路2を介して、電源回路21に接続され、電源回路21の出力である正極端子のノードpと負極端子のノードnとの間に、電流共振インバータ4Bが接続される。
高周波インバータである電流共振インバータ4Bは、IGBT51とIGBT52とが直列接続された左上下アーム41と、IGBT53とIGBT54とが直列接続された右上下アーム42で構成されたフルブリッジ回路に、共振回路8Bが接続されて構成される。
左上下アーム41と右上下アーム42とは、ノードpとノードnとの間に接続される。
IGBT51(第1の半導体スイッチング素子)には、ダイオードD1(第1のダイオード)が逆方向に並列接続され、スナバコンデンサ71(第1のスナバコンデンサ)が並列接続される。IGBT52(第2の半導体スイッチング素子)には、ダイオードD2(第2のダイオード)が逆方向に並列接続され、スナバコンデンサ72(第2のスナバコンデンサ)が並列接続される。
IGBT53(第3の半導体スイッチング素子)には、ダイオードD3(第3のダイオード)が逆方向に並列接続され、スナバコンデンサ73(第3のスナバコンデンサ)が並列接続される。IGBT54(第4の半導体スイッチング素子)には、ダイオードD4(第4のダイオード)が逆方向に並列接続され、スナバコンデンサ74(第4のスナバコンデンサ)が並列接続される。
IGBT51、52の接続点、即ち左上下アーム41の出力点をノードdとする。このノードdとノードnとの間には、加熱コイル7と共振コンデンサ83(第1の共振コンデンサ)とが接続される。
加熱コイル7と共振コンデンサ83との接続点をノードcとする。IGBT53、54の接続点、即ち右上下アーム42の出力端子をノードeとする。このノードeとノードcとの間には、共振コンデンサ84(第2の共振コンデンサ)とスイッチSW1とが直列接続されている。
実施例3では、被加熱物の材質に応じてスイッチSW1をオンオフすることで、共振回路8Bの共振コンデンサ容量Cを切替えることができる。
加熱コイル7と共振コンデンサ83、84の接続点(ノードc)は、電源回路21の出力点(ノードp)の電圧にクランプされず、それ以上の高電圧が印加される虞がある。本実施例において、ノードeの電圧は、フィルタ3の正極電圧と負極電圧とでクリップされる。制御回路6Cは、ノードeの電圧を測定するので、電源回路21の出力電圧に耐える程度の低耐圧の素子で構成することができる。
図16は、各鍋種の巻数と等価抵抗Rの関係である。コイルの巻数を増やした場合、コイルに流す電流が同じでも磁束が増える。そのため、加熱コイル7からみた被加熱物の等価抵抗Rは、コイルの巻数に応じて増加する。また、等価抵抗Rは被加熱物の材質によって大きく異なる。鍋なしの場合、等価抵抗Rは曲線R1のような特性を示す。材質が鉄製の被加熱物の場合、等価抵抗Rは曲線R1のような特性を示す。銅またはアルミ製の被加熱物の場合、等価抵抗Rは曲線R3のような特性を示す。したがって、等価抵抗Rの低い銅やアルミ製の被加熱物の場合には、加熱コイル7のターン数を増大する必要がある。ここで、加熱コイル7のターン数を40ターンとした場合、被加熱物の特性が曲線R3で示される低抵抗ならば、等価抵抗Rは、1[Ω]となる。被加熱物の特性が曲線R2で示される高抵抗ならば、等価抵抗Rは、9[Ω]となる。
以上のように鍋の種類によって等価抵抗が異なるため、本実施例において曲線R2で示される高抵抗の被加熱物では、スイッチSW1をオンして、左上下アーム41と右上下アーム42とを駆動するフルブリッジ形で加熱する。曲線R3で示される低抵抗の被加熱物では、スイッチSW1をオフして、左上下アーム41のみを駆動するハーフブリッジ形とすると、好適に加熱できる。フルブリッジ形では電力が入りすぎてしまうためである。
鉄製の被加熱物を加熱する場合、制御回路6Bは、スイッチSW1をオンしたまま、左上下アーム41と右上下アーム42の各IGBTを交互にオンオフする。すなわちIGBT51とIGBT54とを同期してオンオフさせ、IGBT52とIGBT53とを同期してオンオフさせる。
次に図17に示すタイミングチャートを用いて動作モードを説明する。
ここで図15のノードdの電圧は、電圧Vdとする。IGBT51およびダイオードD1に流れる電流は、電流Ic1とする。IGBT52およびダイオードD2に流れる電流は、電流Ic2とする。IGBT51とIGBT54は同期して駆動されるため、IGBT54およびダイオードD4にも電流Ic1と同様の電流が流れることになる。一方、IGBT53およびダイオードD3にも同様に電流Ic2が流れることとなる。加熱コイル7に流れる共振電流ILとし、図15のノードdからノードcへの方向を、正方向と定義する。
モードM41においては、左HサイドのIGBT51および右LサイドのIGBT54がオンしており、左LサイドのIGBT52および右HサイドのIGBT53がオフしている。電圧Vdは、この期間中に電源回路21の正極電圧を保つ。電流Ic2は、この期間中に0Aを保つ。
共振電流ILは、モードM41の当初、極性が負である。加熱コイル7の蓄積エネルギーがゼロになると、共振電流ILの極性が負から正に反転する。このとき共振電流ILは、電源回路21からIGBT51、加熱コイル7、共振コンデンサ84、スイッチSW1、IGBT54の経路で流れる。よって、この期間中、電流Ic1と共振電流ILとは、ほぼ等しくなる。
IGBT51、54がターンオフすると、モードM42に遷移する。
モードM42においては、IGBT51〜54が全てオフしている。電流Ic1は0Aとなる。このとき共振電流ILは、以下の第1〜第4経路を介して流れる。第1経路は、スナバコンデンサ71、加熱コイル7、共振コンデンサ84、スイッチSW1、スナバコンデンサ74、電源回路21の経路である。第2経路は、電源回路21、スナバコンデンサ71、加熱コイル7、共振コンデンサ83の経路である。第3経路は、スナバコンデンサ73、スナバコンデンサ71、加熱コイル7、共振コンデンサ84、スイッチSW1の経路である。第4経路は、スナバコンデンサ72、加熱コイル7、共振コンデンサ84、スイッチSW1、スナバコンデンサ74の経路である。
このときIGBT51およびIGBT54に印加される電圧は、スナバコンデンサ71〜74の容量と、IGBT51およびIGBT54の遮断電流で決まるdv/dtの傾きで上昇する。したがって、電流と電圧の重なり部分がなくなり、ゼロ電圧スイッチングのターンオフが実現する。
電圧Vdが次第に減少し、その値が負になると、ダイオードD2およびダイオードD3に順方向の電圧が印加される。共振電流ILは、加熱コイル7、ダイオードD3、電源回路21、ダイオードD2、加熱コイル7、共振コンデンサ84、スイッチSW1の経路で流れ続ける。
ダイオードD2およびダイオードD3に電流が流れている期間中にIGBT52およびIGBT53がターンオンすると、スイッチング損失の発生しないゼロ電圧スイッチングのターンオンが実現し、以下のモードM43に遷移する。
モードM43においては、左LサイドのIGBT52および右HサイドのIGBT53がオンしており、左HサイドのIGBT51および右LサイドのIGBT54がオフしている。電圧Vdは、この期間中、電源回路21の負極電圧を保つ。電流Ic1は、この期間中、0Aを保つ。
共振電流ILは、モードM41の当初、極性が正である。加熱コイル7の蓄積エネルギーがゼロになると、共振電流ILの極性が正から負へ反転する。このとき共振電流ILは、IGBT53、スイッチSW1、共振コンデンサ84、加熱コイル7、IGBT52、電源回路21の経路に流れる。よって、電流Ic2と電流ILとは、極性が反転した波形となる。
IGBT52、53がターンオフすると、モードM44に遷移する。
モードM44においては、IGBT51〜54が全てオフしている。共振電流ILは、以下の第5〜第7経路で流れる。第5経路は、電源回路21、スナバコンデンサ73、スイッチSW1、共振コンデンサ84、加熱コイル7、スナバコンデンサ72の経路である。第6経路は、スナバコンデンサ74、スイッチSW1、共振コンデンサ84、加熱コイル7、スナバコンデンサ72の経路であり、モードM42の第4経路の逆である。第7経路は、スナバコンデンサ71、スナバコンデンサ73、スイッチSW1、共振コンデンサ84、加熱コイル7の経路であり、モードM42の第3経路の逆である。
このときIGBT52およびIGBT53に印加される電圧は、スナバコンデンサ71〜74の容量と、IGBT52およびIGBT53の遮断電流で決まるdv/dtの傾きで上昇する。したがって、電流と電圧との重なり部分がなくなり、ゼロ電圧スイッチングのターンオフが実現する。
電圧Vdが次第に減少し、その値が電源回路21の正極電圧を超えると、ダイオードD1およびダイオードD4に順方向の電圧が印加される。共振電流ILは、加熱コイル7、ダイオードD1、電源回路21、ダイオードD4、スイッチSW1、共振コンデンサ84の経路で流れ続ける。IGBT51、54がターンオンすると、再びモードM41に遷移する。
以上のような動作を繰り返すことにより、電磁誘導加熱装置11Bは、電源回路21を電源として、加熱コイル7と共振コンデンサ84に高周波電流を供給することができる。被加熱物は、加熱コイル7から発生する磁束によって誘導加熱される。
アルミ鍋などの非磁性材料を加熱する場合、電磁誘導加熱装置11Bは、スイッチSW1をオフ状態として、左上下アーム41と、加熱コイル7と、共振コンデンサ83とで構成されるSEPP(Single Ended Push Pull)インバータとして動作する。この動作は、実施例1で記載したハーフブリッジの動作と同じであるため、説明は省略する。
次に電力制御方法について説明する。図18にオールメタル用IHクッキングヒータで使用される加熱コイル7の等価インダクタンス及び等価抵抗の一覧を示す。オールメタルIHクッキングヒータでは、電源回路21の出力電圧により電力制御を行っている。電力を低下させる場合、電源回路21の出力電圧を50V程度まで下がるため、IGBTに流れる電流が小さくなり、IGBTの遮断電流も同時に小さくなる。このため、スナバコンデンサの充放電ができず、ハードスイッチングとなり、IGBT損失が増大する。そこで、加熱コイルにアルミリッツ線を使用することで、IGBTの遮断電流を増大させ、低電力時でもソフトスイッチングができ、電力制御範囲を拡大することが可能になる。また、アルミ加熱時には動作周波数を80kHz以上の高周波で動作する。80kHz以上の高周波域では、アルミリッツ線は銅リッツ線よりも抵抗が7%程度小さくなる。加熱コイル電流は約43Arms、加熱コイル抵抗は約300mΩであるため、加熱コイル損失は約550Wである。アルミリッツ線にすることで、抵抗が7%低減できるため、38Wの損失低減できる。オールメタルIHクッキングヒータのアルミ鍋加熱時の入力電力は2.6kWであり、加熱効率に換算すると、約1.5%の効率改善になる。
オールメタルIHクッキングヒータの加熱コイルは直径180mm〜220mm程度であり、巻数は35〜42T程度である。図19に加熱コイル素線束の断面積と電流密度の関係を示す。また、実施例1と同様に、素線束断面積が増大すると電流密度が低下するが、約4.8mm2を超えると電流密度が増加する。また、アルミは銅に比べ、熱容量が0.7倍であり、加熱コイル温度を銅リッツ線と同様の200℃以下にするには電流密度を10A/mm2以下にする必要がある。したがって、オールメタルIHクッキングヒータの加熱コイルをアルミリッツ線にする場合には、素線束断面積を4.4〜5.3mm2にすることによって、電力制御範囲の拡大、効率改善、温度上昇の抑制ができる。
実施例1〜3までアルミリッツ線は、アルミ合金を使ったものでも同様の効果がある。
1 商用電源
10 鍋 (被加熱物)
11、11A、11B 電磁誘導加熱装置
2 整流回路
21 電源回路
3 フィルタ
4 電流共振インバータ (高周波インバータ)
4A、4B 電流共振インバータ (高周波インバータ)
L0 インダクタ
C0 フィルタコンデンサ
D0 ダイオード
D1 ダイオード (第1のダイオード)
D2 ダイオード (第2のダイオード)
D3 ダイオード (第3のダイオード)
D4 ダイオード (第4のダイオード)
50 IGBT (半導体スイッチング素子)
51 IGBT (第1の半導体スイッチング素子)
52 IGBT (第2の半導体スイッチング素子)
53 IGBT (第3の半導体スイッチング素子)
54 IGBT (第4の半導体スイッチング素子)
6、6A、6B 制御回路
61 駆動信号発生回路
62 ドライブ回路
64 制御手段
7 加熱コイル
71 スナバコンデンサ (第1のスナバコンデンサ)
72 スナバコンデンサ (第2のスナバコンデンサ)
73 スナバコンデンサ (第3のスナバコンデンサ)
74 スナバコンデンサ (第4のスナバコンデンサ)
8、8A、8B 共振回路
80〜84 共振コンデンサ
91 トッププレート
92 磁性体

Claims (4)

  1. 被加熱物が載置されるトッププレートと、
    該トッププレートの下方に配置され、前記被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、
    該加熱コイルと共振コンデンサで構成される共振回路と、
    該共振回路を駆動する高周波インバータと、
    該高周波インバータの周波数を高くすることで誘導加熱に用いる電力を低下させる電力制御手段と、
    交流電源からの交流電力を直流電力に変換する電源回路と、を備えた誘導加熱装置であって、
    前記加熱コイルは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成し、かつ、前記加熱コイルの導体断面積を4.4mm2〜5.5mm2としたことを特徴とする誘導加熱装置。
  2. 請求項1に記載の電磁誘導加熱装置において、
    前記共振回路は、
    第1及び第2の共振コンデンサの直列回路と、前記第1および第2の共振コンデンサの接続点に一端が接続された前記加熱コイルと、で構成され、
    前記高周波インバータは、
    第1及び第2の半導体スイッチング素子の直列回路と、
    前記第1の半導体スイッチング素子に並列に接続された第1のダイオード及び第1のスナバコンデンサと、
    前記第2の半導体スイッチング素子に並列に接続された第2のダイオード及び第2のスナバコンデンサと、で構成され、
    前記第1及び第2の半導体スイッチング素子の直列回路の接続点に前記加熱コイルの他端が接続されていることを特徴する電磁誘導加熱装置。
  3. 実施例1に記載の電磁誘導加熱装置において、
    前記共振回路は、前記加熱コイルと前記共振コンデンサの並列回路で構成され、
    前記高周波インバータは、前記共振回路とスイッチング素子の直列回路で構成されたことを特徴とする電磁誘導加熱装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の電磁誘導加熱装置において、
    前記共振回路は、第1の共振コンデンサと前記加熱コイルの直列回路で構成される第1の共振回路と、第2の共振コンデンサと前記加熱コイルの直列回路で構成される第2の共振回路からなり、
    前記高周波インバータは、第1及び第2の半導体スイッチング素子の直列回路と、第3及び第4の半導体スイッチング素子の直列回路と、各半導体スイッチング素子に並列に接続されたダイオード及びスナバコンデンサからなり、
    前記第1及び第2の半導体スイッチング素子の直列回路の接続点と、前記第3及び第4の半導体スイッチング素子の直列回路の接続点の間に、前記第1の共振回路とスイッチの直列回路が接続され、
    前記第1及び第2の半導体スイッチング素子の直列回路の接続点と、前記電源回路の負極端子の間に、前記第2の共振回路が接続されたことを特徴とする誘導加熱装置。
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