JP2016143447A - リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用電極、及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】α−NaFeO2構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物であって、Liと遷移金属(Me)とのモル比(Li/Me)が1.15≦Li/Me≦1.24であり、前記遷移金属中のMnのモル比(Mn/Me)が0.52≦Mn/Me≦0.66であり、エックス線回折パターンを元に空間群R3−mを結晶構造モデルに用いたときに、(104)面に帰属される回折ピークの半値幅(FWHM(104))が0.285≦FWHM(104)≦0.335である結晶構造を有する、リチウム二次電池用正極活物質。
【選択図】なし
Description
そこで、近年、上記のような「LiMeO2型」活物質に対し、遷移金属(Me)に対するリチウムのモル比Li/Meが1を超え、マンガン(Mn)のモル比Mn/Meが0.5を超え、充電をしてもα−NaFeO2構造を維持できる「リチウム過剰型」の活物質が提案された。
従来から、「リチウム過剰型」正極活物質について、放電容量や高率放電性能、低温特性等についての検討が行われており、X線回折測定において現れるピークの半値幅と、これらの諸特性との関係にも着目されている。
ところで、自動車分野に使用される電池においては、エネルギー密度が大きいだけでなく、電池の充電率(SOC)を正確に把握する必要がある。SOCは、通常、開回路電圧(OCV)を基準として判断される。しかし、上記の活物質を用いた電池には、充放電サイクルを重ねるごとにOCVが低下するという現象が見られる。これに対して、「LiMeO2型」は、OCVに顕著な変動が見られない。したがって、「LiMeO2型」であるLiNi1/2Mn1/2O2やLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2から、より高エネルギー密度の「リチウム過剰型」の活物質に置き換えていくためには、OCVの低下という課題を解決しなければならない。
(1)α−NaFeO2構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質であって、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム(Li)と遷移金属(Me)のモル比(Li/Me)が1.15≦Li/Me≦1.24であり、前記遷移金属(Me)がCo、Ni及びMnを含み、前記遷移金属中のMnのモル比(Mn/Me)が0.52≦Mn/Me≦0.66であり、エックス線回折パターンを元に空間群R3−mを結晶構造モデルに用いたときに、(104)面に帰属される回折ピークの半値幅(FWHM(104))が0.285≦FWHM(104)≦0.335であるリチウム二次電池用正極活物質。
(2)前記(1)の正極活物質を含むリチウム二次電池用電極。
(3)前記(2)の電極を有するリチウム二次電池。
しかし、本発明者は、Li/Meの値が大きくなると、Me層に含まれるLi量が相対的に大きくなるため、充放電サイクルが進むにしたがって、層状型結晶構造からスピネル型結晶構造への構造変化が進行し、OCVが低下する原因になると考えた。そこで、高エネルギー密度を活かしつつ、OCVの安定性に優れる組成比率を探求したところ、1.15≦Li/Me≦1.24の範囲が好ましく、1.15≦Li/Me≦1.20がより好ましいことを知見した。
本発明において、リチウム遷移金属複合酸化物は、典型的には、Li1+α(CoaNibMnc)1−αO2、但し、1.15≦(1+α)/(1−α) ≦1.24(0.07≦α≦0.11)、a+b+c=1、a>0、b>0、0.52≦c≦0.66で表わされるものであり、Li、Co、Ni及びMnからなる複合酸化物である。リチウム二次電池の初期効率及び高率放電性能を向上させるために、遷移金属元素Meに対するCoのモル比Co/Meは、0.05以上0.40以下とすることが好ましく、コストを勘案すると、0.05以上0.24未満とすることがより好ましい。
本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO2構造を有しており、合成後(充放電を行う前)の上記リチウム遷移金属複合酸化物は、空間群P3112あるいはR3−mに帰属される。このうち、空間群P3112に帰属されるものには、CuKα管球を用いたエックス線回折図上、2θ=21°付近に超格子ピーク(Li[Li1/3Mn2/3]O2型の単斜晶に見られるピーク)が確認される。ところが、一度でも充電を行い、結晶中のLiが脱離すると結晶の対称性が変化することにより、上記超格子ピークが消滅して、上記リチウム遷移金属複合酸化物は空間群R3−mに帰属されるようになる。ここで、P3112は、R3−mにおける3a、3b、6cサイトの原子位置を細分化した結晶構造モデルであり、R3−mにおける原子配置に秩序性が認められるときに該P3112モデルが採用される。なお、「R3−m」は本来「R3m」の「3」の上にバー「−」を施して表記すべきものである。
本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、炭酸塩前駆体から作成する場合は、粒度分布測定における50%粒子径(D50)が5〜18μmであることが好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物を水酸化物前駆体から作製する場合はもっと小粒径に制御しないと優れた性能が得られないが、炭酸塩前駆体から作製することにより、粒度分布測定における50%粒子径(D50)が5〜18μm程度であっても、放電容量が大きい正極活物質が得られる。
また、タップ密度は、高率放電性能が優れたリチウム二次電池を得るために、1.25g/cc以上が好ましく、1.7g/cc以上がより好ましい。
次に、本発明のリチウム二次電池用活物質を製造する方法について説明する。
本発明のリチウム二次電池用活物質は、基本的に、活物質を構成する金属元素(Li,Mn,Co,Ni)を目的とする活物質(酸化物)の組成通りに含有する原料を調整し、これを焼成することによって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
目的とする組成の酸化物を作製するにあたり、Li,Co,Ni,Mnのそれぞれの塩を混合・焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめCo,Ni,Mnを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合・焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはCo,Niに対して均一に固溶しにくいため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難である。これまで文献などにおいては固相法によってNiやCoの一部にMnを固溶(LiNi1−xMnxO2など)しようという試みが多数なされているが、「共沈法」を選択する方が原子レベルで均一相を得ることが容易である。そこで、後述する実施例においては、「共沈法」を採用した。
100℃乾燥品の色相は、標準色F05−20Bと比べて、赤色方向に標準色F05−40Dに至る範囲内にあり、また、標準色FN−10と比べて、白色方向に標準色FN−25に至る範囲内にあることがわかった。中でも、標準色F05−20Bが呈する色相との色差が最も小さいものと認められた。
一方、80℃乾燥品の色相は、標準色F19−50Fと比べて、白色方向に標準色F19−70Fに至る範囲内にあり、また、標準色F09−80Dと比べて、黒色方向に標準色F09−60Hに至る範囲内にあることがわかった。中でも、標準色F19−50Fが呈する色相との色差が最も小さいものと認められた。
以上の知見から、炭酸塩前駆体の色相は、標準色F05−20Bに比べて、dL,da及びdbの全てにおいて+方向であるものが好ましく、dLが+5以上、daが+2以上、dbが+5以上であることがより好ましいといえる。
焼成温度が高すぎると、得られた活物質が酸素放出反応を伴って崩壊すると共に、主相の六方晶に加えて単斜晶のLi[Li1/3Mn2/3]O2型に規定される相が、固溶相としてではなく、分相して観察される傾向がある。このような分相が多く含まれすぎると、活物質の可逆容量の減少を導き、充放電サイクルに伴うOCVの安定性を損なうので好ましくない。このような材料では、エックス線回折図上35°付近及び45°付近に不純物ピークが観察される。従って、焼成温度は、活物質の酸素放出反応の影響する温度未満とすることが好ましい。活物質の酸素放出温度は、本発明に係る組成範囲においては、概ね1000℃以上であるが、活物質の組成によって酸素放出温度に若干の差があるので、あらかじめ活物質の酸素放出温度を確認しておくことが好ましい。特に試料に含まれるCo量が多いほど前駆体の酸素放出温度は低温側にシフトすることが確認されているので注意が必要である。活物質の酸素放出温度を確認する方法としては、焼成反応過程をシミュレートするために、共沈前駆体とリチウム化合物を混合したものを熱重量分析(DTA−TG測定)に供してもよいが、この方法では測定機器の試料室に用いている白金が揮発したLi成分により腐食されて機器を痛めるおそれがあるので、あらかじめ500℃程度の焼成温度を採用してある程度結晶化を進行させた組成物を熱重量分析に供するのが良い。
また、発明者らは、本発明活物質の回折ピークの半値幅を詳細に解析することで750℃までの温度で合成した試料においては格子内にひずみが残存しており、それ以上の温度で合成することでほとんどひずみを除去することができることを確認した。また、結晶子のサイズは合成温度が上昇するに比例して大きくなるものであった。よって、本発明活物質の組成においても、系内に格子のひずみがほとんどなく、かつ結晶子サイズが十分成長した粒子を志向することで良好な放電容量を得られるものであった。具体的には、格子定数に及ぼすひずみ量が2%以下、かつ結晶子サイズが50nm以上に成長しているような合成温度(焼成温度)及びLi/Me比組成を採用することが好ましいことがわかった。これらを電極として成型して充放電を行うことで膨張収縮による変化も見られるが、充放電過程においても結晶子サイズは30nm以上を保っていることが得られる効果として好ましい。
したがって、初期効率、高率放電性能を向上させるために、1.15≦Li/Me≦1.24の本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする場合、焼成温度は780〜870℃とすることが好ましい。
負極活物質としては、限定されるものではなく、リチウムイオンを放出あるいは吸蔵することのできる形態のものであればどれを選択してもよい。例えば、Li[Li1/3Ti5/3]O4に代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料、SiやSb,Sn系などの合金系材料リチウム金属、リチウム合金(リチウム−シリコン、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)、リチウム複合酸化物(リチウム−チタン)、酸化珪素の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)等が挙げられる。
正極活物質の粉体および負極活物質の粉体は、平均粒子サイズ100μm以下であることが好ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質電池の高出力特性を向上する目的で10μm以下であることが好ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
本発明に係るリチウム二次電池に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
その他の電池の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
図1に、本発明に係るリチウム二次電池の一実施形態である矩形状のリチウム二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示すリチウム二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本発明に係るリチウム二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
本発明は、上記のリチウム二次電池を複数個集合した蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数のリチウム二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
<試料の合成>
硫酸コバルト7水和物7.04g、硫酸ニッケル6水和物16.59g及び硫酸マンガン5水和物27.05gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mlに溶解させ、Co:Ni:Mnのモル比が12.5:31.5:56.0となる1.0Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2Lの反応槽に750mlのイオン交換水を注ぎ、CO2ガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中にCO2を溶解させた。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたパドル翼を用いて反応槽内を700rpmの回転速度で攪拌しながら、前記硫酸塩水溶液を3ml/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、1.0Mの炭酸ナトリウム及び0.2Mのアンモニアを含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に8.0(±0.05)を保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに3h継続した。攪拌の停止後、12h以上静置した。
共沈炭酸塩前駆体と炭酸リチウムとを、Li/Me=1.20となるように混合した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2に係るリチウム遷移金属酸化物を作製した。
共沈炭酸塩前駆体と炭酸リチウムとを、Li/Me=1.24となるように混合した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3に係るリチウム遷移金属酸化物を作製した。
共沈炭酸塩前駆体と炭酸リチウムとを、Li/Meがそれぞれ1.00、1.05、1.10、1.30、1.35、1.40となるように混合し、焼成温度を800℃に代えた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1〜6に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
遷移金属中のMn比であるMn/Meを0.44〜0.72の範囲で変化させた以外は、実施例2と同様の方法で、実施例4〜10、比較例7〜13のリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。さらにLi/Meを1.30、Mn/Meをそれぞれ0.68、0.70とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例14,15に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
原料の焼成温度を720〜870℃の範囲で変化させた以外は、実施例2と同様の方法で、実施例11〜15、比較例16〜19に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
比較例20として、800℃で焼成されたLiNi0.5Mn0.5O2、比較例21として、920℃で焼成されたLiCo0.1Ni0.38Mn0.52O2を用いた。
全ての実施例および比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、次の条件及び手順に沿ってエックス線回折測定を行い、半値幅を決定した。エックス線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を用いて粉末エックス線回折測定を行った。線源はCuKα、加速電圧及び電流はそれぞれ30kV及び15mAとした。サンプリング幅は0.01deg、走査時間は14分(スキャンスピードは5.0)、発散スリット幅は0.625deg、受光スリット幅は開放、散乱スリットは8.0mmとする。得られたエックス線回折データについて、Kα2に由来するピークを除去せず、前記エックス線回折装置の付属ソフトである「PDXL」を用いて、エックス線回折図上2θ=44±1°に存在する回折ピークについて半値幅を決定した。
また、全てのリチウム遷移金属複合酸化物がα−NaFeO2構造を有することをエックス線回折測定により確認した。
全ての実施例および比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物をそれぞれ正極活物質として用いて、以下の手順で試験電池を作製し、電池特性を評価した。
試験電池は、25℃の下、初期充放電工程に供した。充電は、電流0.1CA、電圧4.6Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。この充放電を2サイクル行った。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設けた。
次に、充電電圧4.45Vに変更したことを除いては上記初期充放電工程と同一の条件にて、3サイクル目の充放電を行った。
次に、放電電流を1.0CAに変更したことを除いては上記3サイクル目の充放電と同一の条件にて、4サイクル目の充放電を行った。4サイクル目の放電後、10分の休止過程の後に、放電電流を0.1CAに変更して、残放電を行った。
放電電流として1.0CAを採用した上記4サイクル目の放電時の放電容量(mAh/g)及び平均放電電圧(V)からエネルギー密度(mWh/g)を求め、「1Cエネルギー密度」として記録した。
上記エネルギー密度測定を行った電池において、引き続きOCV測定を行った。まず、上記3サイクル目の充電と同一の条件にて定電流定電圧充電を行った後、放電終止電圧は設定せず、放電電流を0.05CAとして、1時間放電後12時間休止する工程を20回繰り返す間欠放電を行い、放電容量(mAh/g)を表す横軸に対して開回路電圧(V)をプロットすることにより、第一のOCV曲線を得た。
続いて、45℃環境下において、充電電流及び放電電流を共に1.0CAとして充放電サイクルを20回行った。その後、25℃環境下において、上記と同一の電流値を用い、同一の手順でOCV測定を行い、第二のOCV曲線を得た。
第一のOCV曲線から求められる平均放電電圧に対する、第二のOCV曲線から求められる平均放電電圧の百分率を「OCV維持率(%)」とした。
なお、前記平均放電電圧(V)は、上記の手順で得られるOCV曲線と前記横軸とで囲まれる部分の面積からエネルギー密度(mWh/g)を算出し、これを全放電容量(mAh/g)で除することによって求める。
Li/Meの確認は、放電末状態の正極活物質で行う必要がある。合成後のリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、電池用電極に用いる前の活物質材料は放電末状態であるから、原料の仕込み量によってLi/Meが定まっている。
充電電圧を4.45Vとして電流0.1CmAでの定電流充電を行った後、30分の休止をはさんで0.1CmAにて2.0Vに至るまで定電流放電を行い、放電末状態とした。再び取り出した正極板をジメチルカーボネート(DMC)で洗浄し、室温で30分真空乾燥した。乾燥後の正極から、正極活物質とABとPVdFとが混合している正極合剤50mgを剥がし取り、35wt%塩酸中に加え、150℃で10分間煮沸することによって正極活物質のみを溶解した。この溶液をろ過することによってABとPVdFを取り除いた。得られたろ液についてICP発光分光分析を行った。その結果、モル比Li/Meは、合成後(充放電を行う前)のリチウム遷移金属複合酸化物のモル比Li/Meに対して97%であった。
これに対して、Li/Meの範囲が1.15〜1.24であり、FWHM(104)が0.302〜0.320である実施例1〜3の電池は、「リチウム過剰型」活物質の特徴である高エネルギー密度を維持しつつ、高いOCV維持率を有している。
また、この条件下において、Mn/MeとFWHM(104)には、正の相関がみられ、0.52≦Mn/Me≦0.66に対応するFWHM(104)は、0.285≦FWHM(104)≦0.335である。
したがって、高エネルギー密度を有し、かつOCV維持率が高い活物質は、0.52≦Mn/Me≦0.66及び0.285≦FWHM(104)≦0.335を満たす実施例2、4〜10の電池である。
焼成温度が720〜920°の範囲であれば、OCV維持率は、いずれでも良好である。しかし、高エネルギー密度の発現に好適なのは、実施例11〜15における焼成温度が780〜870°の範囲であり、この温度範囲の焼成によって得られた結晶構造におけるFWHM(104)が、0.285〜0.335に含まれることが確認できる。
1 リチウム二次電池
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
Claims (3)
- α−NaFeO2構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質であって、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属(Me)がCo、Ni及びMnを含み、
Liと遷移金属(Me)のモル比(Li/Me)が1.15≦Li/Me≦1.24であり、
前記遷移金属中のMnのモル比(Mn/Me)が0.52≦Mn/Me≦0.66であり、
エックス線回折パターンを元に空間群R3−mを結晶構造モデルに用いたときに、(104)面に帰属される回折ピークの半値幅(FWHM(104))が0.285≦FWHM(104)≦0.335であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。 - 請求項1に記載の正極活物質を含むことを特徴とするリチウム二次電池用電極。
- 請求項2に記載の電極を有することを特徴とするリチウム二次電池。
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